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ワシントンDCメトロ便り 第4回 2010年10月

2010年10月27日
植村 展生

  2010年2月中旬から、米国東海岸のワシントンDC近郊(正確には、ワシントンDCから地下鉄のメトロでいけるメリーランド州ロックビル市)にある、USP(United States Pharmacopeia:米国薬局方)事務局(以下「USP」という)に、MHLW/PMDAのLiaison Officialとして派遣され、USPのVisiting Scientistとして米国薬局方の総則のチーム内に籍を置いております。

  8月30日付けの前号に引き続き、USPとFDAの活動の概要をお伝えします。

  なお、この便りは、USPに派遣されている植村がUSP,FDA等に関する情報を個人の立場でとりまとめたものであり、USP、FDA等の米国関係機関あるいは派遣元である厚生労働省(MHLW)、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の見解等を示すものではないことにご留意下さい。

  また、日本語版は英文版よりも多少言葉を補っていますので、同一の翻訳ではないことをご承知おきください。

第4回 ワシントンDCメトロ便り

目次

  1. USPの標準品
  2. ペンディングモノグラフ
  3. NON-USモノグラフ(米国以外の医薬品各条)
  4. 暫定継続予算
  5. FDA等米国連邦政府機関の業績報告
  6. CDER/CBERの業績報告
  7. CDRHの業績報告
  8. FY2012予算要求に向けて(機関横断的重点要求項目)

1.USPの標準品

  USPは米国薬局方等に関連した標準品を販売していますが、USPの標準品は,医薬品が米国薬局方の医薬品各条及びその他の基準に本質、力価、品質、純度の点で適合していることを保証するために、そして米国薬局方-医薬品集(USP-NF)の公的基準に示されている試験法を実施する際に必要とされる品質管理上の標準(性能・特性)を提供するものです。

  USPの公的標準品の種類は,医薬品、医薬品添加物、不純物質、分解物、栄養補助食品成分、公定書掲載試薬、測定標準に及びますが、いずれも高度に品質管理されたものです。また、USPの標準品の中には、米国薬局方-医薬品集(USP-NF)以外にも、他のUSP公定書であるFood Chemical Codex、栄養補助食品公定書、薬剤師薬局方に掲載されている試験法の実施のためなどに使用されるものがあります。

  USPは現在(2010年5月現在)医薬品、医薬品添加物、栄養補助食品成分について、2500種類以上の標準品を提供しており、これらは世界130各国以上で利用されています。

USPの標準品は、主に、以下の4つの用途に使用されています。
1)定量試験用(検定、限度試験)
2)定性試験用(同定試験、測定用マーカー、システム適合性試験)
3)特性検証用(溶出試験用標準、融点測定用標準、不溶性微粒子計測用標準)
4)力価単位測定用(抗生物質、エンドトキシン、酵素等)

  USPは自ら試験室と標準品製造施設を保有していますが、標準品を作成するに当たっては、外部の3つ以上の試験施設と共同で試験を行ったうえで標準品を提供しています。具体的には、USPの本部(ロックビル)、中国、インド、ブラジルの支部の各試験室の他、米国FDA、ヘルスカナダ、英国の国立生物学的製剤研究所(NIBSC)、オーストラリアTGA、上海市食品医薬品検験所、中国薬品生物製品検定所と協力活動を行っています。また、いくつかの力価の特定された生物製品の標準品については、USPは世界保健機関(WHO)の国際標準品と自らの標準品との検証も行っています。

  USPの標準品は、直接USPに申し込む以外にも、米国以外の提携先供給機関に申し込むことによって購入することができます。

USPの標準品

Reprinted with permission from the United States Pharmacopeial Convention, 12601 Twinbrook Parkway, Rockville, MD 20852, October 2010

2.ペンディングモノグラフ

  USPでは2007年から、企業がFDAにジェネリック申請または一般用医薬品(OTC)申請して承認審査中の医薬品の申請内容に基づいて作成された医薬品各条の内容をウェッブ上に公開して提供しています。この承認前の情報での医薬品各条を「ペンディングモノグラフ」と呼んでいますが、これは正式な公定書の内容ではなく、従って法的強制力も持ちません。

  このような「ペンディングモノグラフ」を作成する目的は、FDAがその申請を承認した場合に公式の公定書に掲載する医薬品各条を速やかに準備できるようにするためです。承認前から「ペンディングモノグラフ」を準備しておくことで、FDAが最終的に承認してからその医薬品各条の作成作業を開始するのに比べてより速やかに公的基準を作成することができるようになるからです。

  USPが示しているガイダンスに従い、FDAに対して簡略新薬申請(ANDA)か、バイオシミラーまたは後発の生物製品許可申請(BLA)を申請したか又は申請しようとしている企業、あるいは、FDAに対してドラッグマスターファイルの申請を行った企業、さらには、FDAのOTCモノグラフの対象になっているかそこに含まれることになる成分を保有する企業のいずれかから、「ペンディングモノグラフ」の作成の申し出があった場合に、その申し出が受理され、作業が開始されます。

  このモノグラフの作成手順としては、新たに作成されるか又は修正された「ペンディングモノグラフ」の原案が準備できた段階で一旦USPのウェッブサイトに掲載され、コメントが募集されます。寄せられたコメントが検討され、関係専門家委員会の了承が得られると、確定した「ペンディングモノグラフ」がUSPのウェッブサイトに掲載されることになります。また、申請中だった医薬品がFDAの承認を得た時点で、「ペンディングモノグラフ」の内容を公式の米国薬局方又は国民医薬品集に掲載する作業を企業の協力を得て開始します。

  2010年9月現在、FDAの承認を待っている段階の「ペンディングモノグラフ」は、確定した段階のものが43、原案の段階のものが18です。また、12のモノグラフが公式の医薬品各上に移行したか移行作業段階にあります。

3.NON-USモノグラフ(米国以外の医薬品各条)

  2007年からUSPは、米国以外でのみ流通する医薬品成分及び最終製品についても、その医薬品がこれまで治療法が十分開発されてこなかった疾病(いわゆる顧みられない病気)に対する治療薬の場合には、その医薬品の基準文書(各条)をUSPが率先して作成し、公開しています。このモノグラフは、医薬品製造者、使用者、政府管理試験機関などが実施する試験を支援することを目的としています。また、可能な場合には、この米国以外のモノグラフに相当する物質の試験を支援するために標準品を供給することもあります。

  この米国以外のモノグラフは公式の米国薬局方-国民医薬品集(USP-NF)に含まれるものではありませんが、この基準が示されていることによって、その医薬品の成分や製品を製造する企業が、モノグラフの基準に適合した製品又は成分であることを示すために、分析証明書や包装表示に「S-USP」という称号を使うことができるようになっています。

  米国以外のモノグラフはUSPのウェッブサイトでのみ見ることができますが、2010年9月時点で、医薬品とその組み合わせの計約200種類がHIV/AIDS治療、AIDS合併日和見感染症、その他のいわゆる顧みられない病気の治療薬として掲載されています。

その対象疾患の具体例を挙げると、

アフリカトリパノソーマ症、ハンタウイルスによる腎性症候群を伴った出血熱、ラッサ熱、リーシュマニア症、マラリア、住血吸虫症、結核、シャガス病、ハンセン病、リンパ性フィラリア症、オンコセルカ症(糸状虫症)等です。

4.暫定継続予算

  今年は11月の中間選挙がある関係か、9月末までに歳出法案が成立しなかったことから、米国議会は9月下旬に予算継続決議(Continuing Resolution)を成立させ、市民生活のうえで継続が必要な行政サービスなど、基本的に前年度(2010会計年度)執行された項目の予算要求が今年度(2011会計年度)も提出されている項目について、暫定的に10月1日から12月3日までの予算の執行を認める決議(法律と同効力)を成立させました。

  このことで、FDAも2011会計年度に継続要求しているこれまでの活動を続けることができています。

5.FDA等米国連邦政府機関の業績報告

  米国政府業績成果法(GPRA)(1993年成立、Pub. L. No. 103-62)は、連邦政府機関に対して、戦略計画(Strategic Plan)、年次業績計画(Annual Performance Plan)、年次業績報告書(Annual Performance Report)を作成し提出することを求めています。政府業績成果法に基づく年次業績報告書では、各政府機関の戦略計画と事業予算の目標に照らして、実際の業績と実施の進捗状況に関する情報が提示されます。

  FDAの場合も、予算要求に付属するオンライン業績報告にある業績報告書が、保健福祉省の求める業績計画と業績報告に該当する文書のひとつとして提示されています。

  2011会計年度の議会予算要求書(予算教書の細目)とそれに付属するオンライン業績報告は、2009会計年度の年次業績報告書と2011年度の年次業績計画を含んだものとなっています。
  連邦政府機関の業績報告書と会計報告書は、大統領、議会、行政管理予算局長官に提出されます。

6.CDER/CBERの業績報告

  医薬品評価研究センター(CDER)及び生物製品評価研究センター(CBER)の2008会計年度から2012会計年度までの主な業績目標は以下のとおりです。

1) 医薬品関係の項目

長期目標:医薬品審査過程を改善し、最善の科学に基づく決定の予見性と透明性を向上させる。

223201番 新薬申請の標準審査の期間が10ヶ月以内であった割合

223202番 新薬申請の優先審査の期間が6ヶ月以内であった割合

223205番 簡略新薬申請の毎年度の処理件数

223207番 新有効成分含有医薬品申請の承認までの期間の中間値の削減度(2005-2007会計年度申請品目実績との対比)

223208番 ジェネリック薬新規申請の承認または暫定承認までの期間の70%値の削減度(2005-2007会計年度申請品目実績との対比)

長期目標:医薬品の安全性に関する情報の察知と公開・対話のための情報システムの改善

222303番 FDA近代化法に基づき、同法の求める期間内での安全性情報の変更による患者及び医療従事者による医薬品の安全な使用への改善

222201番 副作用情報(有害事象報告)を検証済み記録としてデータベースに登録するための単価

222202番 予期された副作用情報(有害事象報告)を電子的に提出した製造企業の割合(企業報告として受理された予期された副作用情報(有害事象報告)の全数との対比)

長期目標:消費者への危害を防止するための安全性問題の早期探知と善処策

224201番 ハイリスク医薬品の国外・国内での査察件数

222302番 45日以内に審査されたテレビ広告申請の割合

2) 生物製品関係の項目

長期目標:安全で有効な医療製品が患者に利用できる数の増加。

233201番 新薬申請の標準審査と対応が完了するまでの期間が申請受理から10ヶ月以内であった割合

233202番 新薬申請の優先審査と対応が完了するまでの期間が申請受理から6ヶ月以内であった割合

233203番 効能追加申請の標準審査と対応が完了するまでの期間が申請受理から10ヶ月以内であった割合

233205番 血液バンク及び原料血漿の申請の審査と対応が完了するまでの期間が申請日から12ヶ月以内であった割合

233206番 血液バンク及び原料血漿の変更申請の審査と対応が完了するまでの期間が申請日から12ヶ月以内であった割合

長期目標:最新の科学に基づく基準と手法によって製造、格好、供給を行うことによる安全性の問題発生の防止

234101番 パンデミックインフルエンザワクチンの生産施設数と生産量の増加


長期目標:消費者への危害を防止するための安全性問題の早期探知と善処策

234202番 登録されている血液銀行及び生物製品製造施設の査察件数

234203番 ヒト組織を取り扱う国内外の施設の査察件数

  主な項目に関する2009会計年度の業績とその2008会計年度との比較は以下のとおりです。(2009年9月30日現在)
   

7.CDRHの業績報告

  医療機器・放射線保健センター(CDRH)の2008会計年度から2012会計年度までの主な審査関係業績目標は以下のとおりです。

  これらは、米国保健省(HHS)全体の戦略目標である、1)ヘルスケアの改善、2)公衆衛生確保、疾病予防、危機管理の推進、3)科学的研究開発の推進等、に沿ったものです。

1) 新医療機器承認(PMA)、変更、市販前報告の申請

FDAは、受理された通常品目申請の60%について180日以内に、90%について295日以内に決定を下す。

2) 優先品目での新医療機器承認(PMA)、変更の申請

FDAは、受理された優先品目申請の50%について180日以内に、90%について280日以内に決定を下す。

3) 新医療機器(PMA)モジュール申請

FDAは、PMAモジュール申請の75%について90日以内に、90%について120日以内に、対応をとる。

4) 180日PMA変更申請

FDAは、180日PMA変更申請の85%について180日以内に、95%について210日以内に決定を下す。

5) リアルタイム変更申請

FDAは、リアルタイムPMA変更申請の80%について60日以内に、90%について90日以内に決定を下す。

6) 510(k)市販前届出

FDAは、510(k)市販前届出の90%について90日以内に、98%について150日以内に決定を下す。

7) 現状の作業効率の維持

当局は、治験用機器(IDE)の申請と30日通知のように、特に定量的目標が定められていない審査関係の業務については、最低でも、現状の審査実績を維持する。

  また、これらの項目以外に、FDAは申請者と連絡を取り合い、会議を持ちながら審査を進めることや、四半期ごとの実績報告、新たな事項はガイダンスで提示すること、ガイダンス文書の作成を続けていくこと、審査官の研修の実施などについても、ユーザーフィー法に基づく努力目標を掲げています。

  2009会計年度の実績とその2008会計年度との比較は以下のとおりです。(2009年9月30日現在)
   

  また、各申請区分ごとの総審査期間(日数)の中間値は以下のとおりです。
   

8.FY2012予算要求に向けて(機関横断的重点要求項目)

  オバマ政権はいくつかの機関横断的共同プログラムを設け,大統領の掲げる優先事項を各機関が効果的に協力して実施できことを推進しています。  行政管理予算局(OMB)は、予算が最大の効果を発揮し、かつ、不適切な重複がないように、これらの項目の予算案作成段階から各機関の間の調整を支援しており、2012会計年度の予算案の申請に向けてワーキンググループがまとめた以下の項目について、調整を行うこととなっています。

科学・技術・工学・数学教育
大規模生態系修復
気候科学、気候技術
クリーンエネルギー
ナノテクノロジー
コンピューター計算科学
ホームレス削減
地域貧困対策
肥満削減

  この作業は、行政管理予算局の今年(2010年)6月の発表により開始されています。

以上

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