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ワシントンDCメトロ便り 第2回 2010年6月


2010年6月25日
植村 展生

  2010年2月中旬から、米国東海岸のワシントンDC近郊(正確には、ワシントンDCから地下鉄のメトロでいけるメリーランド州ロックビル市)にある、USP(United States Pharmacopeia:米国薬局方)事務局(以下「USP」という)に、MHLW/PMDAのLiaison Officialとして派遣され、USPのVisiting Scientistとして米国薬局方の総則のチーム内に籍を置いております。

  4月16日付けの前号に引き続き、USPとFDAの活動の概要をお伝えします。

  なお、この便りは、USPに派遣されている植村がUSP,FDA等に関する情報を個人の立場でとりまとめたものであり、USP、FDA等の米国関係機関あるいは派遣元である厚生労働省(MHLW)、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の見解等を示すものではないことにご留意下さい。

  また、日本語版は英文版よりも多少言葉を補っていますので、同一の翻訳ではないことをご承知おきください。

第2回 ワシントンDCメトロ便り

目次

  1. USP代表者会合(USPコンベンション)
  2. USP2005-2010年活動報告(専門家評議会関係)の概要
    1)名称専門家委員会関係
    2)医薬品各条関係
    3)生物製品各条関係
    4)総則関係
    5)添加剤関係
  3. FDAの諮問委員会について(その2)
  4. FDAのホワイトオークへの移転と統合
  5. 米国公衆衛生部隊(PHSCC)について

1.USP代表者会合(USPコンベンション)

  USP代表者会合(USPコンベンション)は各界・各分野の代表で組織される会合で、決議の採択、規則の改訂、理事や専門家委員の選出などにより、USPの活動を方向付けて促進していく機関です。その運営は、USPの憲章と規則で規定されていますが、その中で代表者総勢約500名は、米国医科大学、米国薬科大学、各州の医学界、各州の薬学団体、医療・医学関係団体、政府関係機関、健康科学関係団体、薬局方関係団体、消費者関連団体、製造販売業関係団体から構成されることとされています。また、米国以外の政府関係機関、薬局方関係団体及び製造販売業関係団体からも代表者が選任されています。

  2010年の代表者会合から、日本の厚生労働省/医薬品医療機器総合機構も日本薬局方の関係団体として、欧州医薬品品質理事会と並んで、参加することとなりました。なお、政府関係機関の中には、FDAの各センターや米国標準技術研究所(NIST)、米国国立衛生研究所(NIH)はもちろん、カナダ、オーストラリア、ロシア、ブラジル、中国の代表も招かれています。

  2010年4月21-24日に開催されたUSP代表者会合(コンベンション)では、2005-2010年の活動が報告されるとともに、参加した各機関の代表者により、2010-2015年の次期5カ年計画に向けての決議の採択、新たな定款の承認と、執行部、評議員、審議会委員の選出などが行われました。(2010-2015年決議は別紙参照)

  そこで、今回はこのコンベンションでの情報に基づいて、最近のUSPの活動内容と、今後の活動についてご紹介することとします。

2.USP2005-2010年活動報告(専門家評議会関係)の概要

  専門家評議会に関係した活動の報告(USPが科学的専門性をもって行う中心的活動)は、各分野ごとのチームと各専門家委員会の活動で整理されています。

  USPの活動分野としては

1)専門家評議会委員会

2)米国薬局方関係

3)医薬品集関係

4)栄養補助食品集関係

5)食品規格関係

6)薬剤師薬局方関係

7)標準品関係

8)国際保健関係

9)関係者フォーラム

 の9分野に分けられ、
 その中の薬局方関係、医薬品集関係は

1)名称専門家委員会関係

2)医薬品各条関係

3)生物製品各条関係

4)総則関係

5)医薬品添加物関係

 に分けられています。

    以下、薬局方関係の活動について2005-2010年の活動の概要をご紹介します。

1)名称専門家委員会関係
  2007年に医薬品の「塩」の命名方針を変更し、その力価は活性成分で表記することとされました。また、まだUSPに掲載されていない医薬品の名称の決定を多数行っています。

2)医薬品各条関係
  化学製品(力価試験を要しない医薬品)グループは10の専門家委員会(抗生物質、抗ウイルス薬、循環器系用薬、解熱鎮痛・かぜ用薬、消化器・腎・内分泌系用薬、眼科・皮膚科用薬・抗がん剤、精神神経系用薬、呼吸器系用薬・ステロイド、画像診断用薬、動物用医薬品)を運営し、試験法の近代化(抗生物質の微生物力価試験からHPLC法への変更など)を図りながら、250以上の新規収載と540以上の各条改訂を行ってきました。
  また、新薬の各条収載申請を促進する暫定版各条の作成、米国以外で使用される抗HIV/AIDS薬,マラリア用薬、結核用薬の各条作成、さらには今後の調和活動の試行としてEPと調和を図りながらの各条作成作業に取り組んでいます。

3)生物製品各条関係
  生物製品(力価試験を要する医薬品)グループは4の専門家委員会(血液製剤、細胞・遺伝子・組織治療用、タンパク・ポリサッカライド、ワクチン・ウイルス学的製品)と25のアドホック作業委員会を運営し、16の新規収載、18の各条改訂、14の新規総則作成、5の総則改訂を図るとともに、製品横断的なモノクローナル抗体製造用原料の章や生物学的力価試験法の章の作成を開始してきました。
  また、2006年にヘパリン諮問委員会を組織して以降、未分画ヘパリンの各条の改訂を加速して行うほか、関係のワークショップの開催や調査の実施も行っています。

4)総則関係
  総則関係グループは10の専門家委員会(総則、生体薬理、一般毒性・生体適合性、微生物・無菌検証試験、包装・保存、輸液・注射剤、医薬品剤形、エアロゾール、製薬用水、統計)を運営し、27の新規総則作成、58の総則改訂を行ってきました。
  これまでに、残留溶媒の章のICH Q3C(R4)をベースとしたFDAガイダンスとの調整、不純物限度と試験法、金属不純物の章の提案、医薬品剤形の見直しの提案、保存・搬出の章のICH - Q10と整合した見直しなどを行ってきました。

5)医薬品添加物関係
  医薬品添加物グループは各条と総則に関する3つの専門家委員会を運営し、28の新規収載、122の各条改訂、6の新規総則作成、4の総則改訂を行ってきました。
  FDAの要求に基づいてグリセリンの各条の改定を行い、ジエチレングリコールとエチレングリコールに0.10%の限度値を設定したことは、これら2種類の不純物標準品の供給の基礎情報ともなっています。

USP 2010 - 2015年 決議
  2010年4月24日 USP代表者会合にて採択

決議1    憲章指名組織
  USPは、改正された規則が採択される以前にUSPの憲章において指名されている組織は、自動的に新たな規則の下での投票権を持った代表者会合メンバーとなることを決議する。この参加組織は、自ら辞任するか改正規則に従った理由により解任されるまでの間は、メンバーが継続される。

決議2    中核的公定書活動の強化
  USPは、学会、産業界、規制当局その他の関係者と協力しながら、確固たる品質管理体制をUSP及び評議会にて発揮し、適時適切で正確な公的基準を確立するよう、中核的公定書活動に焦点を当てて強化することを決議する。

決議3    FDAとの連携の強化
  USPは、FDAとの連携を強化し、FDA及び官民の関係者と協同して、米国内で合法的に流通する医薬品及びその成分についての最新の国家基準をUSPが提示し堅持していくことができるようメカニズムの探究に努めることを決議する。

決議4    世界規模での公衆衛生増進への寄与と貢献
  国、地域、世界レベルの関係者との対話と協力を得ながら、USPは、世界規模での公衆衛生増進を図る上での能力と適格性を評価していくことを決議する。USPは、その能力と適格性の範囲において、米国法の下での任務を果たしながら国際的活動を支援していくために、認識された需要と現時点での可能性に立脚して、これらの増進のための資金と人員を拡大することを目指していく。

決議5    調和活動の強化拡大
  USPは、世界中の局方関係機関、産業界、学会、規制当局、国際機関その他の関係者と協同し、調和の採れた世界的基準の開発を目指してその活動を強化拡大していくことを決議する。

決議6    食品添加成分の品質基準への貢献の継続・強化
  USPは、学会、産業界、規制当局、その他関係者との対話と協力を得ながら、食品添加成分の世界的公定書である食品規範(フードコーデックス)の役割を強化し、認識された需要に基づいて文書による基準と標準品の数を拡大し、食品規範の内容を広めていく支援活動の可能性を探究していくことによって、食品添加成分の品質基準への貢献を継続し強化していくことを決議する。

決議7    栄養補助食品の品質基準の啓発、利用、普及の拡大
  USPは、学会、産業界、規制当局その他関係者との対話と協力を得ながら、栄養補助食品の製品及び成分のUSP基準の役割を強化し、当該基準の啓発と利用を推進することにより、栄養補助食品の品質基準の作成への貢献を継続していくことを決議する。

決議8    調剤薬の品質基準の開発・利用の促進
  USPは、調剤に関係する地域組織、規制当局、その他関係者と協同しながら、適切な手順と調剤方法を開発して提示し、当該基準の調剤技術者及び規制当局における利用の促進をはかることによって、調剤に関する基準への貢献を継続していくことを決議する。

決議9    医療関係者及び公衆に対する品質確保のための行動基準の開発
  USPは、医療関係者及び国民に対する品質確保のための判断基準を開発するために、医療関係者及びその他の関係者を支援する能力と適格性を探究していくことを決議する。

3.FDAの諮問委員会について(その2)

  前号に引き続き、FDAの諮問委員会について紹介します。

  FDAが開催する49の諮問委員会には、大きく分けて、新薬・新医療機器の承認に関連した議題について意見を聞く諮問委員会、既存の製品の安全性やFDAの安全対策に関連した議題について意見を聞く諮問委員会、その他FDAの活動に関して外部の意見を聞く諮問委員会があります。

  このうち、新薬・新医療機器の承認に関連して開かれる諮問委員会では、単に審査の最終段階で申請品目の承認の可否の賛否を議決するというのではなく、安全性や有効性、それらのバランスについて、データと情報に基づく科学的な立場からの意見で議決に参加するように運営されています。こうしたやり方は、先般、4月26日にCDRHの方針としても示されましたが、既にCDERでは、諮問委員会に対するFDAの質問事項の設定と議決はこのようなやり方で行われています。

  一例を示すと、FDAが議決のために用意した3項目の質問は

1)データを総合的に勘案して、申請品目XXXは***の効能に対する効果について十分な根拠を示しているか。

2)申請品目XXXの***の効能に対しての安全性に関する情報は承認を支持するに値するか。

3)効果と安全性に関するデータは、申請品目XXXの***の効能についての承認を支持するのに十分な根拠を提供しているか。

 これらの議決の質問の前に、FDAはその前提となる点を議論をするための質問項目を設定することもあります。

 こうしたやり方は、審議すべき申請品目が増えてきている中で、諮問委員会の効率的運営と透明性の向上に寄与することも期待されています。

  一方、FDAの安全対策やその他の施策について紹介し、今後の対応についての専門家の意見を聞く諮問委員会の場合は、FDA側が施策の背景、経緯と内容を説明し、その上で今後の対応についての質問項目について、委員会の委員の意見を聞くケースが多いようです。また、議題の内容によっては、関係企業からの報告が委員会に対して追加して行われることもあります。

  このようなケースでは、質問項目は、「討議のための質問」、あるいは「討議ポイント」としてFDA側から委員会に対し設定され、委員はそれぞれの立場からの意見を表明し、FDAはそれを聞いて、今後の施策の参考に持ち帰ることが多いようです。

4.FDAのホワイトオークへの移転と統合

  FDAが、これまでのロックビル市などから、なぜシルバースプリング市のホワイトオーク(メリーランドの州の木の名前にちなんだ地名)に移転することになったのか。なぜ、海軍施設と併設しているのか。こうした疑問に答えるために、FDA移転の経緯についてお知らせします。

  ホワイトオークにあった662エーカーの海軍地上軍事センターの閉鎖・縮小にあたり、それまで分散していたFDAのオフィースと試験室を統合して跡地に移転する計画が立てられました。

  連邦政府のビルなどの国有財産を管理する連邦調達庁(GSA)にとっても、海軍の跡地の有効利用とともに、27に分散していたFDAのビルの民間施設利用借料、とりわけ試験室の借料の軽減は、経費削減の上で意義のあることでした。

  ホワイトオークのこの地は1944年に海軍が軍需品試験室の基地として連邦政府が確保し、その後統合された施設は海軍地上軍事センターと呼ばれるようになりましたが、1995年の軍施設の再編と縮減により、ホワイトオークの軍事センターは閉鎖されることとなりました。海軍は売却を考えたものの、地域住民や代表者が連邦政府による利用の継続を希望し、そこにFDAの統合とワシントンDC近郊への移転の構想が合致したというわけです。議会の後押しもあり、連邦調達庁(GSA)はFDAを統合してワシントンDCから北へ約5マイルのホワイトオークに移転し、軍需品試験室以外の海軍の旧施設を取り壊して、ニューハンプシャーアベニュー沿いの130エーカーに新しいビルディングを建設することを決定しました。

  FDAの移転計画は首都ワシントン郊外のバイオテクノロジーのハブの基盤となることを期待して11億5000万ドルのプロジェクトとして計画され、渡り廊下でつながれた14のビルを建設する予定となっていますが、これまでに10のビル(No1,2,21,22,51、62,64,66、31,32)が完成し、2003年以降、順次移転が進められていますが、今現在(2010年時点)、これまでにCDERがNo.21,22,51ビルに、CDRHがNo.66ビルに、試験室がNo.62,64ビルに、OC(Office of Commissioner)とORAがNo.1,31,32ビルに入っており、ビルNo.2が共用施設となっています。現在も工事が進められ、2013年までにはCBERが移転する予定とされています。現在、約5500人のFDA職員が働く規模となっていますが、最終的には8900人規模にまで拡大するとされています。

  ホワイトオーク移転にかかる費用は毎年、連邦調達庁(GSA)が主として予算計上します。地域の代表者は、FDAの移転によって地域の雇用が拡大し、また、政府の運営する研究施設が来ることで、FDAの近隣でのバイオテクノロジーのセンターの誘致や病院の移転などの地域のバイオ、医療関係の発展に寄与することを期待しており、移転に要する政府予算(2010会計年度予算では1億3700万ドル強)についても後押しする意見が表明されています。

  一方、FDA職員内での移転による最大のメリットとしては、CDER,CDRHの職員が違うセクションの人のオフィースに出向いて直接話をすることができるようになったことが言われています。

  FDAはホワイトオークのキャンパス等の施設をGSAから借りていることになりますが、その借料の一部にはユーザーフィーが充当されています。また、現在7割完成した当初のホワイトオークへの移転計画に加えて、タバコセンターをホワイトオークに移転することもGSAとの間で予算化の検討が始まっています。

5.米国公衆衛生部隊(PHSCC)について

  FDAに勤務する職員の中で、青色、白色(夏用)またはカーキ色(作業用)の海軍と同じような制服(紋章、ボタンと記章は独自のもの)を着用している人を見かけます。これらの人は米国公衆衛生部隊(PHSCC)に所属するいわゆる制服組の身分の人で、政府の関係機関(HHSのFDA,CDC,NIHなど)で各人の専門性を発揮して国民が直面する疾病と劣悪な健康条件に立ち向かうために、第一線での任務に当たっている人たちです。

  ちなみに連邦政府の制服組の職員とは、陸軍、海兵隊、海軍、空軍、沿岸警備隊、公衆衛生部隊、海洋大気局部隊の7つの組織に属する人たちです。行政府としては、陸軍、海兵隊、海軍、空軍は国防省の、沿岸警備隊は国土安全保障省の、公衆衛生部隊は保健社会福祉省の、海洋大気局部隊は商務省のそれぞれ管轄となっています。

  公衆衛生部隊の歴史的起源は、1798年の海軍病院ネットワークの設立に遡ることになります。これまでにスペイン戦争、第一次・第二次世界大戦やカリフォルニア地震(1994年)、9月11日(2001年)、ハリケーンカトリーナ(2005年)、ハイチ地震(2010年)の災害救援活動に参加するなどしています。通常は、主に保健社会福祉省(一部は他の部隊や他省の関係機関)に所属して、国民の健康と安全の保護、増進、発展に寄与することを目的として活動し、ヘルスケアの支援、疾病の予防、健康的生活の増進、精神保健の向上、医薬品、医療機器、の安全性と有効性の確保、食品の安全性確保、生命医学や健康関連の研究などのほか、世界規模での健康問題の解決に向けて国内外の機関と協力した活動も行っています。

  現在、部隊は選抜された6000人以上の公衆衛生分野の人員を有し、次の12の職種から構成されています。

  医師、歯科医師、看護師、薬剤師、栄養士、工学者、環境衛生士、精神衛生専門家、公衆衛生行政官、科学者、療法士、獣医師

  公衆衛生部隊の隊員の採用は一般のHHS職員の採用とは異なり、部隊が職種ごとに独自に採用して関係機関に派遣されますが、軍関係者並の特別待遇(昇進と勤続年数による給与の増額、初年度からの30日有給休暇、住宅無税、食費手当、医療費歯科治療費本人無料・家族は減額負担、退職後プラン、生命保険減額負担、軍関係施設や店舗の利用等)が適用されます。

  日本でもしたとえて言うならば、防衛省の医務官や検疫所の職員が厚生労働省内で勤務する時に防衛省や検疫所の制服を着て霞ヶ関のオフィースで業務に当たっていると想像すれば良いでしょうか。

以上

法人番号 3010005007409

〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル

地図・交通案内

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ワシントンDCメトロ便り 第2回 2010年6月
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