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国際関係業務

ワシントンDCメトロ便り 第8回 2011年6月

2011年6月30日
植村 展生

  2010年2月中旬から、米国東海岸のワシントンDC近郊(正確には、ワシントンD.C.から地下鉄のメトロでいけるメリーランド州ロックビル市)にある、USP(United States Pharmacopeia:米国薬局方)事務局(以下「USP」という)に、MHLW/PMDAのLiaison Officialとして派遣され、USPのVisiting Scientistとして米国薬局方の総則のチーム内に籍を置いております。

  4月27日付けの前号に引き続き、USPとFDAの活動の概要をお伝えします。

  なお、この便りは、USPに派遣されている植村がUSP、FDA等に関する情報を個人の立場でとりまとめたものであり、USP、FDA等の米国関係機関あるいは派遣元である厚生労働省(MHLW)、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の見解等を示すものではないことにご留意下さい。

  また、日本語版は英文版よりも多少言葉を補っていますので、同一の翻訳ではないことをご承知おきください。

第8回ワシントンDCメトロ便り

目次

  1. EDQM(EP事務局)との協力関係
  2. USPの最近の活動(2011年度) 
  3. CDERの教育研修プログラム
  4. FDAのクリティカルパスイニシアティブの現状

1.EDQM(EP事務局)との協力関係

  欧州医薬品品質部門(EDQM)は1996年に設立された組織で、安全な医薬品の品質基準の設定とその安全な使用の推進を目指した組織です。EDQMの中に組み込まれた欧州薬局方部局は1964年にスタートした欧州薬局方(EP)の事務局を務めています。
    (注:日米欧三極薬局方調和検討会議(PDG)はEDQMが設立される前の1990年からスタートしています。)
  欧州薬局方(EP)はEU加盟国に対して法的拘束力を持つものであり、EDQMは欧州薬局方の策定にかかる代表者会議に署名して参加している加盟国の中での医薬品の製造と品質管理に適用される公的基準を設定し普及する役割を担っています。
  また、EDQMはこうして策定された公的基準の適用遵守の役割も果たしており、公的医薬品管理試験機関(OMCL)のネットワークを調整し、国内、欧州域内、あるいは国際的な試験機関と協力して、模造医薬品やその他の不正医薬品の排除、欧州域内での医薬品の安全使用に向けた方針と対応モデルの提供などを進めています。
  1991年に当時の欧州共同体(EC)と欧州理事会が覚書(MOU)に署名し、欧州薬局方(EP)の事務局が生物製品の基準の策定作業にも携わることとされました。また、2006年にはEDQMが輸血や臓器移植の活動にも責任を持つようになるとともに、WHOが行っていた抗生物質の国際標準(ISA)の活動を引き継ぎました。さらに2010年には、WHOの国際化学標準品(ICRS)の作成、調整、保管、分配の業務も引き継ぎました。
  欧州薬局方の委員会には、現在、36の加盟国とEUがメンバーとして参加している他、欧州の8カ国と欧州以外の14カ国、世界保健機関(WHO)がオブザーバーとして参加して、欧州薬局方委員会の科学的議論に参加しています。具体的には、米国、カナダ、オーストラリア、ロシア、中国などが主要な参加国です。
  1990年に日米欧三極薬局方調和検討会議(PDG)が設置されて欧州薬局方(EP),日本薬局方(JP)、米国薬局方(USP)の間で国際調和活動としてスタートし、また、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)にもEDQMは参加していますが、これらの活動において、EDQMは欧州薬局方(EP)を代表するとともに、その関係する専門家が国際調和活動に参加しています。
  2009年には、EDQMは、米国FDA、オーストラリアTGAとの間で、医薬品に使用される有効成分と添加物の製造に関する情報交換についての覚書を締結しました。
  また、欧州薬局方(EP)と米国薬局方(USP)の間では、2008年に、主旨に賛同する2社の協力を得て、4つの医薬品各条(モノグラフ)と標準品を共同で策定するパイロットプロジェクトがスタートしました。共通のデータがEP事務局のEDQMとUSP事務局とに提出され、検討後の共通の質問事項が製造企業に送られた上で、まず、EDQM側で企業への回答が準備され、EDQM-P4手順(1企業の特許期間中の製品の収載手順)の専門家グループとUSP専門家委員会委員との合同の検討のための案が準備されます。また、各条案は、EDQM、USP、公的医薬品管理試験機関(OMCL)、米国FDAの各試験機関で並行して検討され、その試験報告が交換されます。合意された案は、EDQMでは「Pharmaeuropa」に、USPでは「Pharmacopeial Forum」にそれぞれ掲載され、外部からの意見が公募されます。寄せられた意見はEDQM側のP4手順報告者(ラポーター)が取りまとめ、合同の専門家グループにて検討されます。そして、共通の最終案がEPの委員会とUSPの専門家委員会に付託されます。
  (このような手順で、初めからEPとUSPとの間で調和された医薬品各条作成の試みがスタートしています。)
  このプロジェクト以外にも、欧州薬局方(EP)やEDQMの専門家が多数、USPの開催する専門家委員会、専門家パネル会議、ワークショップ等を通じて、USPの基準策定作業に参加し、協力しています。

2.USPの最近の活動(2011年度) 

  USPの会計年度は7月1日から翌年6月30日までとなっています。2010年4月24日にUSP代表者会合にて採択された2010-2015年の決議の実施に向けて、USPがこの1年間(2011年度)に取り組んできた活動を簡単に紹介すると以下のようになります。 

決議1(憲章指名組織)関係

  • USPは2010年11月時点で、既存の参加組織を引き続きUSP代表者会合の参加メンバーの資格を有するものとの認証し、代表者との契約を2011年11月までに取り交わすこととしました。

決議2(中核的公定書活動の強化)関係

  • USPは医薬品各条のデザインをより整然と配列されたものに移行しました。
  • USPは基準文書策定過程において品質保証関係機関の参加を増大させました。
  • USPはワークショップ、Webinar(ネット上のウェッブセミナー)、専門家パネル会議、ウェブサイト、公的基準普及事業を通じて、関係者の参加・交流の機会の増大を引き続き図りました。
  • USPはFDAの求めに応じ、医薬品各条の近代化に取り組みました。

決議3(FDAとの連携の強化)関係

  • USPとFDA/CDERとの間で双方のスタッフが主導する運営委員会を設置し、USPとCDERの共同活動の進捗状況をモニターすることとしました。
  • FDAは現時点で88名のリエゾンがUSPの専門家委員会、専門家パネル会議に参加することで、USPの基準策定活動に引き続き連携しています。
  • FDAは医薬品各条近代化作業グループを設置し、USPに対し、近代化の優先順位などを示すこととしています。
  • FDAとUSPは新たな共同研究開発協定(新CRADA)に署名し、医薬品の品質、本質、純度、力価の基準となるUSP標準品の開発を支援することとされました。この協定では、USPとFDAの試験室で、麻薬規制物質を含む科学的標準品の共同での試験、試験法・検定法の近代化、FDAの査察官が汚染が起こった現場で医薬品のスクリーニングに使用できる持ち運び式の機材での試験法の開発などが規定されています。

決議4(世界規模での公衆衛生増進への寄与と貢献)関係

  • USPはインドのハイデラバードに100人以上のスタッフを収容する新たな移転施設を建設中。
  • USPは世界で流通する医薬品の品質基準を含む新たなオンライン無料公定書情報(Medicines Compendium:MC)を掲載。
  • USPは中国の活動拠点の拡大を検討中。
  • USPはUSP-中国薬局方合同委員会、バンコックでのASEANとの会議、インド、エジプト、ヨルダン、トルコでの会議を開催。
  • USPはアフリカ南サハラでの技術協力プロジェクトに参加し、エチオピア、ガーナ、ケニヤ、セネガル、シエラレオネの5カ国の公的医薬品管理試験機関を支援。
  • USPはUSAID(米国国際開発庁)の資金援助を受けて、エチオピアでの医薬品品質向上プログラム(PQMプログラム)の拡大を展開中。

決議5(調和活動の強化拡大)関係 

  • 日米欧三極薬局方検討会議(PDG)は、EP,JP,USPの間でのPDG協力活動の改善と強化の方策について検討。
  • USPはEPとの間で、4つの医薬品の各条と標準品を共同で開発する調和パイロットプロジェクトを推進。
  • USPと英国薬局方委員会(BP)は2つの医薬品各条の情報を交換。
  • USPはウクライナ、カザフスタンの薬局方と採択協定を締結し、これらの薬局方がUSP-NFの基準を自国の公定書に取り入れることができるようにすることに合意。
  • USPが新たに設けた公定書情報(Medicine Compendium)、科学基準シンポジウム、国際交換研修生の取り決めにより、薬局方と規制当局の品質基準に関する活動の国際調和に関する情報交換を増大。
  • USPは,ASEANの標準品作業グループによるASEAN地域内への認証標準品の供給活動を支援。

決議6(食品添加成分の品質基準への貢献の継続・強化)関係

  • USPはFood Chemical CODEXの基準に基づく標準品を連邦規制に基づくものに格上げするようFDAに請願を提出。
  • USPは中国北京の国家栄養食品安全研究所と覚書を締結し、USPのFood Chemical CODEXの中国語への翻訳の作業中。

決議7(栄養補助食品の品質基準の啓発、利用、普及の拡大)関係

  • 2012年改定の第二版栄養補助食品公定書にデザインを新たにした各条を取り入れ、添加物を含めるとともに、新たな植物由来物についてのカラーの挿絵と写真のセクションを新設。
  • USPは中国、インドと共同で、栄養補助食品の各条と標準品の関連性を改善し、中国の漢方、インドのアユルベーダ医薬品(Ayurvedic medicine)の天然物由来製品との関連を密にすることに取り組み中。

決議8(調剤薬の品質基準の開発・利用の促進)関係

  • USPはFDAとの間で、調剤医薬品の基準に関する情報と見解を交換。USPとFDAは共同してUSPの各条の方法で調整された調剤医薬品の試験を実施。
  • USPは薬局調剤認定委員会(PCBA)の活動を引き続き支援し、米国薬剤師会その他の薬局関係団体による指導を受けた認定活動を支援。

決議9(医療関係者及び公衆に対する品質確保のための行動基準の開発)関係

  • USPは「処方せん薬の容器の表示」に関する総則(第17章)案を公表し、患者の適正服用と投薬の安全性確保のための表示の適正化に関する基準を策定。
  • USPは2011年4月に消費者・患者サミットを開催し、消費者/ステークホルダーに関係する健康関連活動とUSPの医薬品及び栄養補助食品の基準がどう貢献するかについての理解の増進を図る。
  • USPは医薬品各条名称諮問グループを組織し、USPの示す新たな医薬品各条名称についてのポリシーの実施に向けての医療関係者の理解増進のための計画を策定。
  • USP最高経営責任者が薬学教育機関を訪問。

3.CDERの教育研修プログラム

  FDAのCDERはスタッフのための様々な教育・研修プログラムを有しています。CDERの中にある研修啓発課が年間の前後期(秋期と春期)をベースとした一年間の教育プログラムを提供しています。
  (注:FDAのCBER,CDRH等もそれぞれスタッフのための教育研修プログラムをオンラインでのプログラムを含めて行っていますが、ここでは体系的な説明の情報が得られているCDERの教育研修プログラムを紹介します。)

  新たな審査官に対して推奨しているコースは、審査の質と時間的対応を向上させて審査を進める上での基本的な情報を提供するものです。新たに審査官となった者は、推奨されている順番に従い、各自の学習経験をもっとも効率よいものとするべく、提供されたコースを終了することが求められます。審査官を対象としたカリキュラム(18ヶ月プラスアルファ)は以下の内容のプログラムで構成されています。

-   新規採用職員オリエンテーション
-   新規審査官ワークショップ
-   治験申請(IND)に関する規制とポリシー
-   新薬申請(NDA)に関する規制とポリシー
-   交渉成功術
-   医薬品関係の基本的な法規
-   現行GMP(cGMP)
-   ジェネリック医薬品に関するイントロダクション
-   生物製品関係法規

臨床担当の審査官に対するコースでは、上記に加えて以下のコースが追加されます。

-   統計の基本
-   医薬品開発における臨床試験(治験):デザイン、実施、審査のイントロダクション
-   臨床試験(治験)におけるトピック
-   監視疫学部(OSE)における分析手法とツール
-   市販前安全性審査の実践的アプローチ

プロジェクトマネージャーは次のコースを履修します。

-   会議と記録の成功術

以下のコースの選択は必要に応じてのオプションです。

-   時間の管理
-   プレゼンテーション術
-   第二言語としての英語
-   審査官のための技術的書法
-   文法向上法

CDERでは以下のコースも用意しています。

-   実薬対照試験コース
-   CDER科学ラウンド
-   CDERセミナー
-   化学者以外のための化学
-   他者のための編集、校正
-   FDAの生物製品審査
-   ゲノミクス審査コース
-   新マネージャーセミナー
-   監督者の素質
-   非処方せん薬の規制と安全性概要
-   審査官以外の者への技術的書法
-   出版・公表のための書法
-   CDISC標準推進プロジェクト
-   DARRTS-追跡システムの安全性への適用
-   判断支援システム(DSS)
-   課のファイルシステム(DFS)
-   電子申請データ解析トレーニング(eDAT)
-   企業内情報検索
-   GS審査
-   JMPソフトウェア
-   JMP表入力
-   JMP臨床試験(表結合、ベースラインからの優位差解析、垂直から水平へのデータ変換、文字からデータ形式への変換、試験データの正常域との比較)

CDERでは他にも以下のようなトレーニングコースを実施しています。

-   健康改善に向けて
-   CDER看護師ネットワーク
-   先端科学教育委員会
-   臨床審査官教育プログラム
-   簡素化プログラム
-   ジョ-ジタウン大学公衆衛生認証プログラム
-   ジャーナルクラブ
-   リーダーシップ、マネージメント啓発プログラム
-   業務支援推進部トレーニングコース
-   指導者プログラム
-   薬理学、毒性学教育小委員会
-   支援スタッフ教育プログラム
-   南カリフォルニア大学認証プログラム-患者と製品の安全性のためのレギュラトリーサイエンス
-   特任教授レクチャーシリーズ

参考)

  CDRHでは公開のweb上でCDRHの各活動に関する教育ツールとして「CDRH Learn」コースを英語、スペイン語、中国語で公開しています。

  また、CDERでも、CDERの活動に関して各対象者向けに教育ツールを「CDER Learn」コースとしてwebに公開しています。

4.FDAのクリティカルパスイニシアティブの現状

  FDAのクリティカルパスイニシアティブは2004年3月に提唱されましたが、それは医療製品の開発促進にはIn Vitroの確認試験法、コンピューターモデリング、適切なバイオマーカー、革新的な臨床試験のデザインといったことが必要であることを指摘したレポートとともに提唱されたものでした。FDAは長官オフィス内にクリティカルパスプログラムの部を設置し、関係者から医療製品開発のための科学的な障壁に関する見解を聞くサイトを設けて活動が開始されました。2006年3月にはFDAとHHSが共同して作成した報告書が公表され、特定された活動項目として6分野の計76項目のリストが公表されました。それ以降、2006年からの活動はこの76項目に沿って進められています。
  76項目の内容は分野ごとに以下のとおりです。

生物製品関係(ワクチン、血液製剤)

-   ワクチンの安全性向上
-   がん、再生医療分野での革新的治療法の開発推進
-   血液の安全性確保
-   アレルギー疾患の治療法の開発支援

医薬品、治療用タンパク製剤関係

-   小児に対する吸入又は静脈注射での麻酔薬の安全性評価(SAFEKIDSプロジェクト)
-   薬物関連心毒性の評価
-   腎、肝、筋肉障害の評価
-   C型肝炎及び多発性硬化症の治療薬の開発と審査の促進
-   安全で効果的な新たな鎮痛薬の開発の推進
-   新たな製造技術の利用の推進

臨床試験(治験)の近代化

-   重篤な副作用の発見、報告プロセスの改善
-   治験責任医師に対する第二回の年間コース

医療機器関連活動

-   椎間板代替材料の評価
-   医療材料による血液への影響評価
-   生体吸収性埋め込み材料の開発支援
-   小児用心血管系医療機器の開発促進
-   医療診断、医療機器開発に応用されるナノテクノロジーに対する科学的規制手法の開発
-   医療機器の設計、評価に利用される医用画像処理、シミュレーション技術の評価
-   患者個人への適量投与と安全性の改善のための自動薬剤投与機器の開発
-   臨床試験(治験)の生体評価指標として利用する機能的MRIの脳への利用の標準化
-   乳児の健康に対する搾乳ポンプの評価のためのモデルの開発

食品分野

-   サルモネラ・エンテリカの解析
-   栄養補助食品の抗酸化活性に対する影響要因の研究
-   疫学研究に関連した手法での微生物の検出
-   腸管病原性の遺伝的検出や胃腸障害の解析のためのマイクロアレイ手法の開発

動物用医薬品分野

-   遺伝子改変動物により供給される食品の公衆衛生の確保のための規制手法の開発
-   人及び動物への抗菌薬の使用に関するリスク評価を可能とするためのサルモネラ菌での研究データの収集
-   イヌに対する医薬品の未知の毒性影響をコントロールするための手法の改善

ファーマコゲノミクス・毒性学プロジェクト

-   FDAに対する申請に添付される複合的なファーマコゲノミクスデータの評価の支援
-   肝毒性知見の集積による疾病と遺伝子とタンパクと医薬品の関係解析研究の支援

2010会計年度予算(総額1835万ドル)を利用して取り組まれた活動の中で、2010会計年度報告に成果が挙げられた主な項目は以下の分野の活動です。

-   バイオマーカー、その他のツールによる個別化医療の推進
-   臨床試験(治験)の近代化
-   安全性評価と監視の改善のための健康情報システムの利用

2010会計年度の活動成果の具体例をいくつか以下に紹介します。

バイオマーカー、その他のツールによる個別化医療の推進

-   重篤副作用国際コンソーシアムが薬剤関連肝障害及び薬剤関連重篤皮膚反応の副作用の遺伝的データを公開。
-   安全性予測試験コンソーシアムが医薬品開発に利用可能な新たな手法の受け入れ、評価、承認のために必要な企業間でのデータの共有を促進。7つの新たなバイオマーカーが尿試験により解析され、これらの新たな試験法が薬剤による急性の腎毒性の試験室での検出に利用可能であることを解明。
-   クリティカルパスイニシアティブが資金提供した研究プロジェクトにより、遺伝子解析に基づくワルファリンの投与量の指導、遺伝子検査の情報に基づくワルファリン投与量を検討する臨床試験の計画立案の促進、他に新たに薬剤の投与を受ける患者個人のワルファリン投与量決定アルゴリズムに結びつく臨床試験のための計画立案の促進が進められる。これらワルファリンを使用した患者の遺伝子に関する大学、研究機関との共同研究により、ワルファリンの表示に、追加投与の際の投与量に関する情報を記載することが可能となった。

臨床試験(治験)の近代化

-   2010年2月にFDAは革新的な臨床試験デザインとしてアダプティブデザインと非劣勢デザインに関する推奨ガイドラインを2種類公表。
-   FDAとデューク大学との間で2008年に創設された臨床試験改革イニシアティブ(CTTI)はクリティカルパスイニシアティブで実施する治験責任医師に対する年間研修コースに資金提供。

安全性評価と監視の改善のための健康情報システムの利用

-   2010年、抗ウイルス薬情報管理システム(オラクルデータベース)をFDAスタッフが用いることでC型肝炎のプロトコールの審査が迅速化され、慢性C型肝炎に対する新薬の迅速な審査が可能とされた。
-   2009年度後半、FDAはハーバードピルグリムヘルスケアとの契約を交わし、電子的な市販後安全性モニターのセンチネルシステム(ミニセンチネル)のパイロットプログラムを創設。
-   メディケアー・メディケイドサービスセンター(CMS)、アシスタントセキュリティプランニングエバリュエーション社(ASPE)と共同したパイロットプロジェクトにより、医療製品の安全性に関するモニターのための実働的な積極的監視システムの開発を促進するとともに、この共同プロジェクトは退役軍人健康庁(VA)、国防総省(DoD)等の他の連邦機関を含む拡大したものとなった。
-   メディケアー・メディケイドサービスセンター(CMS)、FDA、アシスタントセキュリティプランニングエバリュエーション社(ASPE)との共同プログラム(SafeRx)により、これまでのFDAの監視能力が強化され、季節性及びH1N1インフルエンザのワクチンに関するほぼリアルタイムの電子的安全性情報を得られるようになった。
-   プライベートセクター、アカデミアセクター、FDAの共同により、心電図保管施設が設置され、医薬品の心毒性の研究に利用可能とされた。このことにより、FDAは異常な心電図を検索し、それが医薬品と関連があるかどうかを判定することができるようになった。

2010会計年度のクリティカルパスイニシアティブの報告書には、熱帯病、特に結核に対する以下の5つの取り組みへの競争的資金提供が記述されています。

-   結核ワクチンのための生物学的又は免疫学的バイオマーカーの発見
-   臨床試験検体保管施設の開発と、結核治療薬の組み合わせの開発のための新たな前臨床モデルの評価
-   潜在性の結核の診断法の開発
-   結核治療、再発、治癒を評価する低分子バイオマーカーの評価
-   結核の現場での試験法の開発とバリデーション

  以上のようなクリティカルパスイニシアティブの活動に関する最近の状況は、FDAの科学諮問委員会に報告され、進捗状況が確認されています。

以上