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PMDA国際ビジョン 解説

 

1.総論

(1)現状 (日本当局を三極の一と呼びうるか)

    ICHが設立された頃(1990年)、日本の薬事規制当局は、その規制対象であった我が国の医薬品産業等の開発力や国内市場の規模、そしてその規制の整備の程度の観点から見て、欧米と並んで世界でも突出した3当局の一つ、すなわち三極の一つと言い得たであろう。しかし現在は、医薬品の開発(臨床試験等)や製造は当時より多数の国で行われており、それに伴い、整備された薬事規制を有する国々も増えている。経済成長を背景として、新興国の医薬品市場の拡大も著しく、その中で突出していた3当局とそれ以外の規制当局との格差は縮小し、日本の相対的地位が低下していることは否めない。

    また現在、厚生労働省/PMDAの行っている承認審査、安全対策、地域協力、情報発信、国際調和活動等の量や質、スピードを世界でも高水準にあると評される欧(EC/EMA)、米(FDA)のそれと比較すると、欧米に及ばない分野も多いことはやはり認めざるを得ない。

    しかし一方、欧米規制当局と同水準、さらには先行していると自負できる分野もある。その上、日本は、(1)高水準の医療制度を有する、(2)国民の健康志向、公衆衛生観念が強い、(3)トップレベルの創薬・医療機器開発力がある、(4)WHOにおける貢献など世界の保健衛生向上のための国際協力を活発に行っている、(5)医薬品等の開発・製造、そしてその市場として大きいポテンシャルを持つアジアに属する、といった特徴を有し、最先端の医薬品等の開発やそれに適した先進的な薬事規制を実現しうる十分な下地がある。

    これらの現状認識を踏まえ、我々PMDAは、個々の分野(例えば特定領域の医薬品の審査や市販後対策、或いはそれらに関する研究)において、現状が既に欧米と比肩する水準にあるのであればさらに高みをめざし、もし劣っているのならば彼らに並ぶ高水準のパフォーマンスを目指し、その総体の結果として欧米当局と比肩しうる世界でも最高水準の規制当局たることを目指して努力すべきである。

(2)本ビジョンの性格

    「PMDA国際ビジョン」は、以上を踏まえ、国際的薬事規制において今後5-10年の間に達成すべきPMDAの姿を明確にするものである。PMDAが、アジア地域の一規制当局として埋没するのではなく、アジアのみならず、世界でも日米欧三極を形成するトップレベルの規制当局として国際的地位を確立する姿を表現して いる。

(3)国内業務と国際業務の関係

    PMDAの業務は、国内の要請に対応する業務(国内業務)と国際的な要請に対応する業務(国際業務)に分けて理解されがちであるが、国際業務は海外の規制情報の活用などを通じて自国民の健康・安全確保や自国の行政的効率を高めることに役立つものであって、国内業務との関係で互いに独立したものではない。
    具体的には自国民の健康・安全確保を図る側面については、

海外の規制措置とその根拠等に関する情報等を速やかに共有することにより、例えば同じ又は類似の医薬品等に関する安全対策を我が国でも早期に講じることが可能となること
2008年に発生したヘパリン事件が顕著に示すように、医薬品流通が国際化するなかで、GMP査察の共同実施等の国際的協調を図ることにより、我が国の医薬品の一層の品質確保が可能となること
国際的・地域間(たとえば東アジア)の規制調和や治験環境整備等を通して、日本を含む国際共同治験やそれに基づく同時開発が進めば、優れた医薬品や医療機器が日本国民に早く届くこと

 自国の行政的効率を高める側面については、

海外の臨床試験データの積極的な活用や、GCP、GMP等の共同査察の実施、規制ガイドラインの共同策定などにより、限られたリソースを有効活用することが可能となること

などが挙げられる。このように、国内業務と国際業務は、一体的かつ不可分の関係にあるという理解で業務に取り組むべきである。

    一方、国内業務を振り返ると、セーフティ・トライアングルの各機能(たとえば承認審査の質やスピード)が国際的な水準に達していなければ他国機関との審査協力の実は上がらない。このように、国内業務と国際業務は相互に強化しあい、PMDAの国際的な地位を高めると同時に日本の優れた薬事規制(承認審査、安全対策等)の実現を可能にするものである。

2.各論

(1)世界トップレベルの実力を確保する

    PMDAは「世界のPMDA」となるために、厚生労働省とともに、自らのパフォーマンス及び他国との関係においては地域協力・国際貢献において世界水準を達成し、欧米の当局と並んで世界をリードする規制当局たることを目指す。パフォーマンスは総合的に評価されるべきであるが、主要な観点として(ア)~(ウ )が挙げられる。

    とりわけ、レギュラトリー・サイエンスについては、国としてその充実、強化に取り組み、医薬品、医療機器の有効性、安全性、品質評価をはじめ、科学的合理性と社会的正当性に関する根拠に基づいた審査指針や基準の策定等につなげることとされており、PMDAとしても研究機能の充実、 これらに精通した人材の養成及び確保を推進する。   (※ 国際戦略1.及び5.)

(2)アジア諸国との緊密なパートナーシップ

    アジアは、医薬品の臨床開発、製造(特に原薬)の現場として重要性を増している。同地域で製造される医薬品の品質はダイレクトに国民の健康に影響するほか、民族的な類似の観点から、日本人を含むアジア人のための医薬品がアジアで開発されることは国民の健康に資すると期待される。PMDAは、これらの実現のためにアジア諸国と協力すべきである。

    加えて、このような直接のベネフィットを超えた視点も重要である。アジア諸国の人口、従って医薬品・医療機器の市場規模の拡大や、医薬品開発や製造における重要性の増大に鑑みれば、中長期的には日本単独での医薬品開発や製造、また薬事制度の発展はありえないことは明らかである。日本はアジア地域の医薬品開発等を底上げし、アジアと共に発展していく方針を採るべきである。

    また、「三極」がリーディング・エージェンシーとしてのトップ3であることに加え、ヨーロッパ、アメリカ、アジアという地政学的な区分に立脚すべきことにも着目すべきである。アジアで中核的役割を果たすことは、世界的にも大きな影響力を及ぼすことを意味し、PMDAが、欧米と対等な三極の一つとしての地位を達成する上で重要である。

    このような考えの下、PMDAはアジア諸国の規制当局と緊密に連携して、アジア全体の医薬品等の開発や生産、薬事制度の底上げをめざした情報提供・助言、人材育成等に向けた協力を行う。さらに、日本とアジア諸国の共通の利益は何かを考え、それを実現すべく、主張し、行動する。日本と他のアジア諸国に共通する利益は、例えばアジアに多い疾病の治療薬開発など多いはずである。(※ 国際戦略1.)

    なお、アジア全体を対象とするには、現時点ではPMDAのリソースが不十分であることから、当面は、東アジア(中国、韓国)及び東南アジア諸国(インドネ シア等)に選択・集中することが現実的である。

(3)基準等の国際調和への貢献

    PMDAは、基準等の国際調和活動において、受動的に応分の負担を果たすだけではなく、欧米と対等な三極の一つとして、また、アジア(そして日本)の利益を反映するように、積極的に調和すべき課題を提案し、調和のための議論の過程において会議の議長を務める等、主導的役割を担う。その際、無数の国際調和案件がある中、日本にとっても利益の大きい国際調和課題に重点を置いて調和を進めるべきである。(※ 国際戦略2.)

    以上、課題ごとに解説したが、各課題は独立したものではなく、相互に関係する。例えば世界でトップレベルのパフォーマンスを保つためには、国際標準の作成に参加した上でこれを採用することが不可欠であるし、また、トップレベルのパフォーマンスがあってこそ、アジア諸国の医薬品規制当局が日本当局とのパートナーシップに積極的になってくれるであろう。

3.実現のための前提条件

    いずれの国際ビジョンを達成するにおいても、その前提として、PMDA職員が、国際感覚を磨き、英語で欧米の審査官等と対等に議論できることが不可欠で ある。例えば、

各国の規制当局の担当者とともに審査や安全対策に関して議論すること
海外の審査官等の人材を積極的に受入れること
欧米のアドバイザリー・コミッティーや国際会議に対面のみならず電話会議等でも言語の壁(英語を母国語としていないことによるハンディ)を越えて、問題なく参画すること

    などが挙げられる。

    また、PMDAとしては、世界各国規制当局と双方向的かつ良好な協力関係を構築することが、国際的なコミュニケーションの前提として不可欠である。(※ 国際戦略1.、3.及び4.)


(※は、関連する国際戦略を示す)

 

(参考)

PMDA国際戦略

○ 達成すべき目標
1.欧米アジア諸国、諸国際機関との連携の強化・協力関係の構築
2.国際調和活動への主体的な参画と、より一層の貢献
3.海外への情報発信の充実・強化

○ 基本方針
国際戦略1.欧米アジア諸国、諸国際機関との連携強化
国際戦略2.国際調和活動に対する取り組みの強化
国際戦略3.人的交流の促進
国際戦略4.国際感覚、コミュニケーション能力を備えた人材の育成・強化
国際戦略5.国際広報、情報発信の充実・強化

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