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ワシントンDCメトロ便り 第7回 2011年4月

2011年4月27日
植村 展生

  2010年2月中旬から、米国東海岸のワシントンDC近郊(正確には、ワシントンDCから地下鉄のメトロでいけるメリーランド州ロックビル市)にある、USP(United States Pharmacopeia:米国薬局方)事務局(以下「USP」という)に、MHLW/PMDAのLiaison Officialとして派遣され、USPのVisiting Scientistとして米国薬局方の総則のチーム内に籍を置いております。

  2月28日付けの前号に引き続き、USPとFDAの活動の概要をお伝えします。

  なお、この便りは、USPに派遣されている植村がUSP、FDA等に関する情報を個人の立場でとりまとめたものであり、USP、FDA等の米国関係機関あるいは派遣元である厚生労働省(MHLW)、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の見解等を示すものではないことにご留意下さい。

  また、日本語版は英文版よりも多少言葉を補っていますので、同一の翻訳ではないことをご承知おきください。

第7回ワシントンDCメトロ便り

目次

  1. ファーマコピアフォーラム(PF)
  2. 医薬品各条の近代化
  3. USPによる認証サービス
  4. オバマ政権の規制に関する基本姿勢(大統領令)
  5. 2011会計年度歳出予算
  6. 2012会計年度大統領予算教書
  7. FDAの2012会計年度予算要求

1.ファーマコピアフォーラム(PF)

  ファーマコピアフォーラム(PF)は2カ月毎の機関誌で、新規又は改正基準案を掲載して一般からの意見や見解を求めることを目的としています。その構成は以下のような項目です。

    

  以前は、PFは米国薬局方-国民医薬品集(USP-NF)の購読契約者のみが見ることができましたが、2011年1月3日より、オンライン上で一回登録すると誰でも無料で見ることができるようになりました。

  PFは米国薬局方-国民医薬品集(USP-NF)の改正や追加収載に対して関係者が意見を提示することができる場としての役割を担っていることから、USPはPFへのアクセスを広く公開し、企業、医療関係者、規制当局、消費者その他の関係者が提案に対する見解や意見を90日間のコメント期間に提示できるようにしたものです。
   無料のオンラインPFはUSPが一般からの意見を募集する対案項目と、その関係情報、及びPFをどのように活用するかについての情報を掲載しています。24時間のオンラインサービスは米国薬局方-国民医薬品集(USP-NF)改正項目の最新の提案、改正関係中間情報、三薬局方調和検討会議における国際調和検討項目(ステージ4又は6)、改正作業対応状況、名称に関する改正項目(USANの追加項目,INNの提唱項目)を含んでいます。また、2002年1月から現在までの過去の掲載項目を検索可能です。

  2010年以降のPFに掲載された総則改正案の項目一覧は別添参照。

2.医薬品各条の近代化

  2010年4月24日にUSP代表者会議が採択した決議の中で、USPはFDAとの連携を強化し、FDAその他官民の関係者と協同して、米国内で合法的に流通する医薬品及びその成分についての最新の国家基準をUSPが提示し堅持していくことができるよう、メカニズムの探求に努めることが述べられています。(「FDAとの連携の強化」の項目)。

  2010年5月、USPは米国薬局方-国民医薬品集(USP-NF)の医薬品各条と医薬品添加物各条の近代化に積極的に取り組むことを表明し、もはや利用されなくなった技術を利用している項目、安全性や環境影響に懸念のある項目、不純物など重要な事項が欠如している項目などの見直しを開始しました。また、医薬品添加物では、非特異的な確認試験項目を特異的な確認試験に改めることが近代化の主な項目となっています。
   各条の近代化の作業を推進するために、USPでは近代化が必要な各条項目のリスト(スプレッドシート)を作成し、FDAが承認した品目やその中に含まれている成分・添加物の製造業者、あるいは、契約試験施設、学術研究機関、分析機器製造業者などからの更新のための改正案を求めています。提案はUSPの薬局方改正要求提出に関するガイドラインに従い、必要なデータや関係情報を添えて提出されます。また、近代化のための改正内容によっては、新たに標準品を作成することが必要になる場合もあります。

  FDAは内部にUSPの医薬品各条を近代化する取り組みに焦点を当てた医薬品各条近代化作業グループ(MMTG)を組織し、今日では適当でない分析方法によって医薬品や添加物が経済的意図による品質汚染(EMA)の脅威にさらされていることから近代化が必要な項目の選定に取り組んでいます。

  2010年11月、FDAは近代化が必要な項目として、アセトアミノフェン、ジフェニルヒドラミン、医薬品添加物(ポビドン、クロスポビドン、コポビドン、タルク)を含めたリストを提示しました。USPは、この提案を受けて、FDAや他の関係者と協同して、データの収集を進めるとともに、関係専門家委員会の下に討議委員会を設置することや、OTCに関するワークショップの開催を計画しています。また、USPでは、改正の実施に向けてアセトアミノフェンに関する試験室での作業も行っているところです。

3.USPによる認証サービス

  USPは医薬品成分(医薬品有効成分と医薬品添加物)や栄養補助食品最終製品、栄養補助食品構成成分の品質、純度、力価を認証するサービスを行っています。このUSPによる認証サービスでの要件、すなわち、GMP監査、製品や成分の試験、製造工程の文書の検査などの要件に適合した製品や成分は、特別のUSP認証マークを付与されます。

-  USP認証医薬品成分のマーク
-  USP認証栄養補助食品のマーク
-  USP認証栄養補助食品構成成分のマーク

この認証サービスは任意のもので、米国国内のみならず世界各国の製造業者が利用可能です。

  医薬品有効成分の認証の要件としては、以下の項目が挙げられています。

-  各製造施設がICH-Q7の原薬GMPガイドラインに適合していることの監査
-  連製造及び品質管理関係文書の検査
-  医薬品有効成分の選定したロットからのサンプルを試験して、分析結果や要求項目についての表示や検査証明と一致することの確認
-  認証後の追跡試験、監査、変更等によって、医薬品有効成分が要求項目に引き続き適合していることの確認が行われていることの確認

  医薬品添加物の認証の要件としては、有効成分と同様の項目が要求されますが、製造施設の監査については、USP総則第1078章「医薬品添加物のバルクの優良製造規範(GMP)」及び国際医薬品添加剤協議会(IPEC)医薬品品質グループの医薬品添加物GMPガイドに適合することが求められます。

4.オバマ政権の規制に関する基本姿勢(大統領令)

  オバマ大統領は2011年1月18日に、規制と規制に基づく審査を改善するための大統領令を発令しました。この発令はクリントン元大統領による1993年9月30日の大統領令12866号「規制の計画及び審査」に示されていた理念、構造、定義を見直すものです。今回の大統領令の中では、米国の規制システムは国民の健康、福祉、安全と、環境を保護するとともに、経済成長、革新的開発、競争力確保、雇用創出を促進するものでなければならないこと、そして、現時点での最善の科学に基づくものでなければならないことを求めています。
  大統領令は、各連邦機関に対し、1)規制の提案と採択は、得られる便益がコストに適うものであることを合理的に示した場合に限ること、2)積み重ねられる規制のコストを勘案し、設定される規制の目的に沿いながらも、社会に与える障壁を最小限のものとするよう規制を見直すこと、3)実質的に最大の便益をもたらすよう、規制方法の選択肢の中から規制を選択すること、4)実行可能な範囲において、規制対象が従わなければならない行動や手法を示すこと以上に、達成すべき目標を具体的に示すこと、5)規制の目指す方向に進めるための可能な選択肢として、例えば手数料や売買許可、あるいは市場が何を選択するかといった情報の提供など、期待する行動が促進される経済的インセンティブを与えることも含めた選択肢を検討し評価すること、を求めています。
  また、大統領令は以下のことを求めています。

  規制は広く一般からの参加が得られるプロセスで採択されなければならないこと。法の許す下で、また、実行可能な範囲において、各連邦機関は一般市民に対し、提案される規制に関して意見を述べることができる実質的な機会として、インターネットを通じて、通常最低60日間のコメント提出期間を確保しなければならないこと。かつ、規制の初めの提案と最終案の両方について、オンラインの規制作成過程工程表に、関連する科学的、技術的知見とともに提示して公開しなければならないこと。

  規制を提案する通知の発出の前に、各連邦機関は、規制の恩恵を受ける人や規制に従うことになる対象者など、規制の影響を受けるであろう人々の意見を求めなければならないこと。

  規制の行動をとろうとする場合や必要な手段を検討する場合は、各連邦機関は他の機関との間で、規制の過剰、不一致、重複が起こらないように調整、簡素化、調和を進めるよう努めなければならないこと。

  規制の目的に関連し、実施可能であり、その目的に沿う範囲内において、法の許す限り、各連邦機関は障壁を削減し、一般市民の柔軟な対応と選択の自由を確保する規制の手法を検討しなければならないこと。

  各連邦機関は、自らの規制行動の根拠となる科学的、技術的情報や規制過程の客観的妥当性を確保しなければならないこと。

  各連邦機関は、既存の規則について、もはや時代遅れになったもの、非効果的なもの、不十分なもの、過剰な負担となっているものの遡及的な分析をどのように進め、得られた見解に沿って如何に修正、合理化、拡大、廃止をするか、検討しなければならないこと。

  この大統領令発出の日から120日以内に、各連邦機関は、法と人的金銭的資源と規制の優先項目に沿って、当該機関が既存の主要な規制について、規制の目的を実行していく上でより効果的で障壁の少ないものとするべく、修正、合理化、拡大、廃止が必要かどうかを決定するための定期的な見直しを規定した準備行動計画を作成して、大統領府行政管理予算局情報規制部に提出すること。

5.2011会計年度歳出予算

  2011会計年度(2010年10月1日~2011年9月30日)の予算については、昨年の中間選挙の結果、下院で多数となった共和党の政府経費(支出)削減要求の影響で、議会での決定がずれ込み、期間を区切った暫定継続予算がこれまで6回にわたって作成され、連邦政府機関が閉鎖される事態だけは回避されてきました。
  3月18日に可決された3週間の暫定継続予算では、前年度と同額の政府予算の継続とともに、総額61億ドルの支出削減も盛り込まれました。支出が削減された項目には、25の事業の削減又は中止が盛り込まれ、大統領予算要求で終了が予定されていたもの、大統領予算要求に含まれなかったもの、前年度からの繰越で2011年度は支出の必要がなくなったものもあります。インフルエンザ対策費のように、今年度の発生状況から、通常期のインフルエンザに対する対策費6500万ドルと前年度からの繰越を残すことで、2億7600万ドルのパンデミック対策を削減するといった項目も含まれています。
  さらに3週間延長されて4月8日までとされていた継続予算の期限ぎりぎりの8日に、共和党と民主党との間で、2011会計年度予算をさらに約390億ドル削減することで合意に達し、その額での歳出予算の法案策定に要する1週間の暫定継続予算を採択しました。4月11日に起草された歳出予算の法案は14日に両院での採択を経て、4月15日に大統領の署名により発効し、約380億ドル削減された2011会計年度予算が最終的に成立しました。
  この法律により、FDAの歳出予算は、処方せん薬ユーザーフィーによる歳出は約6億6700万ドル、医療機器ユーザーフィーによる歳出は6200万ドル、タバコ製品ユーザーフィーによる歳出は4億5000万ドルをそれぞれ上限とすることなどの条件とともに、総額で約36億6000万ドルの歳出予算とされました。
  この額は、2010会計年度の32億8000万ドルよりは増額されているものの、2011会計年度の大統領当初要求額約40億3000万ドルからは10%弱削減されています。

6.2012会計年度大統領予算教書

  大統領は翌2012会計年度の予算教書を2011年2月14日に議会に提出しました。この予算教書は深刻な財政赤字の削減のための対策を示したもので、安全保障に関わらない裁量経費の5年間の凍結と長期的財政改革のための支出削減を含むものです。
  一方で、この予算は将来の経済成長と雇用創出に欠くことのできない分野である教育、革新的開発、クリーンエネルギーや、社会的生活基盤(インフラストラクチャー)への投資を含む内容となっています。予算教書の中で大統領は、生物医学(バイオメディシン)、サイバーセキュリティー(電脳安全保障)、ナノテクノロジー、先端製造技術など、様々な分野に貢献する研究開発(R&D)への投資を拡大する意向を表明しています。
  しかしながら、こうした分野においても、優先度が低いとされたプログラムは、優先度の高いプログラムに投資するために削減されています。

7.FDAの2012会計年度予算要求

FDAに関する連邦政府の2012会計年度予算要求は以下の重点項目を立てています。

 食品安全と栄養の改革
 健康危機管理医療対応の推進
 患者の保護
 FDAのレギュラトリーサイエンスと施設整備

1) 食品安全と栄養の改革        2億1800万円増/435人増(正規職員相当) 

 食品安全と栄養の改革イニシアティブは、昨年12月に成立した食品安全強化法(食品安全近代化法)の施行を実現させるものです。FDAは、危害の未然防止(予防)に重点を置いた食品安全システムを構築すること、州あるいは地方レベルでの関係機関の業務を強化すること、アメリカ国民がメニューや自動販売機の製品の栄養表示を利用してより健康的な食品を選択できるようにすることに取り組むこととしています。

2) 健康危機管理医療対応の推進        7000万ドル増/165人増(正規職員相当) 

 健康危機管理医療対応(MCM)イニシアティブは、FDAの能力を強化して、化学兵器、生物兵器、放射性物質、核兵器(CBRN)の脅威やパンデミックインフルエンザのような自然界での新興感染症に対応するための健康危機管理医療対応の強化を進めるものです。このイニシアティブを通じて、FDAは健康危機管理のための医療対応を検証し、その強化を促進するための新たな手法・製品や基準の開発に取り組むこととしています。
  このイニシアティブのための予算により、FDAは公衆衛生安全対策チーム(PHSATs)の組織化、国防省他、健康危機管理医療対応(MCM)関係事業者との協力関係の構築、MCM対応関係のレギュラトリーサイエンスプログラムの推進、緊急支援の準備や対応を確実に実施するためのMCMに関する法的枠組みや規制制度、対応方針の開発と利用の検討を進めることとしています。
  MCM対応に関連するレギュラトリーサイエンスの例としては以下のテーマが想定されています。

-  MCM手法・製品の開発と評価のための動物モデル
-  MCM手法・製品の承認を促進するための臨床バイオマーカーや免疫学
-  MCM製品の品質
-  放射線障害の保護と対応
-  化学兵器、生物兵器、放射性物質、核兵器(CBRN)やその他の緊急的脅威に対する診断基準
-  公衆衛生緊急対応時のMCMの安全性と効果を評価するための健康関連情報基盤
-  公衆衛生緊急時のMCMのためのリスクコミュニケーション   等

3) 患者保護イニシアティブ        1億2400万ドル増/265人増(正規職員相当) 

 患者保護イニシアティブは、バイオシミラーとも言われている生物製品後発品の承認の過程を整備するものです。また、このイニシアティブでは、最近増加している複合的な医薬品、医療機器、ワクチンその他の生物製品の安全性を強化するための新たな科学的手法や連携のために経費を投じるものです。
  要求予算は以下の項目の推進のために組まれたものです。

-  バイオシミラー製品の規制過程の構築(方針、判断基準、作業計画、規制とガイダンスの関係文書、情報システムなど)
-  違法な医薬品の輸入を防止するための医薬品電子登録リスト化システムの開発
-  諸外国の関係施設の監視を行うための諸外国規制当局との緊密な連携
-  諸外国査察の拡大
-  国際的レベルでの治験における被験者保護のための対策の拡大
-  主要医療機器の安全対策についての国際協力の準備
-  血液供給における安全性の改善
-  ワクチンの安全性の改善
-  人組織及び臍帯血の安全性の改善
-  国家医療機器登録簿の構築
-  ハイリスク医療機器の査察件数の増加
-  大規模患者データにアクセスできる民間パートナーとの協力による市販後監視システムの拡大
-  国家画像診断薬剤投与登録簿の開発による医療放射線被爆の削減
-  小児中毒、高齢者過剰投与、薬物相互作用の件数の削減
-  小児用医薬品・医療機器の安全性の改善
-  動物用医薬品の市販後安全性の改善
-  ジェネリック医薬品申請の審査体制の強化
-  医療製品関係施設への再査察の権限強化
-  国際郵便物の監視におけるFDA担当官による輸入検査の実施   など

4) FDAのレギュラトリーサイエンスと施設整備        4900万ドル増/50人増(正規職員相当)

 FDAのレギュラトリーサイエンスと施設整備イニシアティブでは、FDAがホワイトオークのキャンパスに科学的基盤を整備することを目指すものです。また、このイニシアティブでは、新たな技術に対する基準の開発、製品評価の基準の近代化、重要な治療法の開発の促進も目指しています。
  要求予算は以下の項目の推進のために組まれています。

-  CBER-CDER生命科学バイオディフェンス研究所の建設
-  科学長官局の設置による科学的リーダーシップの強化
-  新技術(ナノテクノロジー)に中心的に対応するための体制確保
-  次世代科学技術スタッフの確保
-  国家医療機器登録簿を構築するための健康関連電子情報とユニークディバイス識別コード(UDIs)との連結
-  重点的な協力関係の育成による、医療製品の開発と評価のための科学の改革、個別化医療の推進、新たな診断・医療製品の開発の促進
-  新技術に対する審査基準の更新と規制対応の整備
-  動物用バイオテクノロジー製品のガイダンスの整備
-  より健康的な食品の開発とその選択の促進   など

 2012会計年度予算(2011年10月1日から2012年9月30日までの期間の予算)の要求は、FDA関係を含め連邦政府全体の要求として2011年2月14日に議会に提出され、既に上院と下院のそれぞれの関係委員会では予算要求に関するヒアリング(証言)が始まっていますが、今年の場合は2011会計年度の予算が最終的に4月15日に決定する前から翌年度の予算要求のヒアリングが始まることとなりました。

以上

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