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安全対策業務

Cypherステントの適正使用について

薬食審査発第0730001号
薬食安発第0730001号
平成16年7月30日

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社

代表取締役社長 松本 晃 殿

厚生労働省医薬食品局審査管理課長

厚生労働省医薬食品局安全対策課長

Cypherステントの適正使用について

 本年3月に承認した薬剤溶出型冠動脈ステント「Cypherステント:承認番号21600BZY00136」に係る標準的な抗血小板療法の期間は、その製品特性に鑑み、従前の冠動脈ステント(以下、「ベアメタルステント」という)治療における標準的な抗血小板療法期間(1ヶ月程度)より長い3ヶ月と設定され、当該療法に際しては、塩酸チクロピジン製剤の使用が推奨されたところです。
 当該ステントの適正使用はもとより、併用される塩酸チクロピジン製剤による血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害等の重大な副作用の発現防止のために一層の注意の徹底を行う必要があります。
 当該ステントの販売にあたって、下記の通り対応を徹底するようお願いします。

  1. 用語の定義
     以下の事項を警告欄に追加記載すること。

    1)冠動脈造影法、PTCA、冠動脈用ステント留置術、抗血小板療法に十分な経験を持ち、本品に関する所要の講習を受けた医師が使用すること。

    2)留置から1年を超える長期予後は現在のところ十分な確認はされていないこと、留置後の抗血小板療法である塩酸チクロピジン製剤の投与が、薬剤塗布のないベアメタルステントに比べて長期にわたって必要であり、塩酸チクロピジン製剤による出血及び重篤な副作用の発現のリスクが高まること等を踏まえ、本品の使用に当たっては、各患者における利点とリスクを考慮し、使用患者を慎重に選定すること。患者の選定に当たっては、病変部(血管)の位置、対照血管径、病変長とその特徴、急性又は亜急性血栓症により危険にさらされる心筋領域の大きさを考慮すること。

    3)使用前に、本品の特性(利点とリスク)とともに、留置後の抗血小板療法に伴うリスク等について患者に十分に説明し,理解したことを確認した上で使用すること。留置後、胸痛等の虚血症状が見られる場合は、医師に連絡するよう十分指導するとともに、特に塩酸チクロピジン製剤の投与については、生命に関わる重篤な副作用が発生する場合があることを説明し、以下について患者を指導すること。

    (1)投与開始後2ヶ月間は定期的に血液検査を行う必要があるので、原則として2週間に1回、来院すること。

    (2)副作用を示唆する症状が現れた場合にはただちに医師等に連絡すること。

    4)留置後は定期的なフォローアップを行うとともに、使用に当たっては、適切な抗血小板療法、抗凝固療法を行うこと。特に抗血小板療法については、留置時に十分に効果が期待できる状態になるよう、十分な前投与を行うこと。なお、塩酸チクロピジン製剤の投与においては、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害等の重大な副作用が、主に投与開始後2ヶ月以内に発現し、死亡に至る例も報告されているので、以下の点に十分留意すること。

    (1)投与開始後2ヶ月間は、特に上記の副作用の初期症状の発現に十分留意し、原則として2週間に1回、血球算定(白血球分画を含む)、肝機能検査を行い、上記副作用の発現が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。本剤投与期間中は、定期的に血液検査を行い、上記副作用の発現に注意すること。

    (2)本剤投与中、患者の状態から血栓性血小板減少性紫斑病、顆粒球減少、肝障害の発現等が疑われた場合には、必要に応じて血液像もしくは肝機能検査を実施し、適切な処置を行うこと。

    (3)投与開始後2ヶ月間は、原則として1回2週間分を処方すること。

    5) 患者の生命に関わる合併症が発生した場合のため、冠動脈ステント留置術は、緊急冠動脈バイパス手術が迅速に行える施設のみで行うこと。

  2. 患者手帳及び説明同意に関する文書等の整備について
    上記1.に掲げる警告事項3)及び4)の内容を徹底するため、患者手帳及び説明同意文書を整備し、これらを用いて患者へのインフォームドコンセントが適切に行われるよう医療機関への情報提供を徹底すること。
    なお、以下の記載につき、特に目に付くように文書作成上、特段の配慮を行うこと。

    1)当該ステントの使用における利点及びリスク

    2)塩酸チクロピジン製剤の投与開始後2ヶ月間、原則として2週間毎の血液検査が必要であること

    3)万が一当該血液検査が実施されていない場合には、医師に申し出ること

    4)自覚症状があった場合には、ただちに医師に連絡すること

  3. 患者の転院時の情報提供文書等について
    当該ステント治療中に患者が転院する場合に、転院先の主治医に対して、以下の情報を的確に伝達することができるよう適正な情報提供文書等を作成し、当該ステントを販売する全ての医療機関に配布すること。

    1)当該患者が当該ステントを用いた治療中であること

    2)当該ステント治療において併用される抗血小板療法(塩酸チクロピジン製剤)においては、投与開始後2ヶ月間は、原則として2週間に1回、血球算定(白血球分画を含む)が必要であること

    3)自覚症状があった場合には、ただちに医師に連絡することを患者に指導すること

  4. 講習会及び医局説明会等の実施について
    上記1に係る情報を網羅した当該ステントの適正使用のための講習会及び医局説明会等を実施し、講習会及び医局説明会等が終了した医療機関のみに販売を限定すること。
    なお、当該講習会及び医局説明会等においては、自覚症状があった場合の患者からの照会に対して、適切に対応ができる体制を整えることについても十分な説明を行うこと。
  5. 医療機関への注意喚起の徹底について
    上記2において整備した文書等を当該ステントを販売する全ての医療機関に配布し、適切に当該文書等が利用されているかを定期的に確認するとともに、不足のないように管理すること。
    また、当該文書等を用いて適切なインフォームドコンセントを実施すること、必要な血液検査を実施すること、亜急性及び遅発性血栓症の発症又は塩酸チクロピジン製剤の副作用の発生に十分注意し、発生した場合には、ただちに連絡されたい旨を定期的に医療機関に注意喚起すること。