目次
- 塩酸ピオグリタゾンと急激な水分貯留による心不全について
- インフルエンザ脳炎・脳症患者に対するジクロフェナクナトリウム製剤の使用について
- 医薬品による重篤な皮膚障害について
- ニューキノロン系抗菌剤と肝機能障害について
- 塩酸フェニルプロパノールアミン含有医薬品の適正使用について
- 医薬品・医療用具に関連する医療事故防止対策について
- 使用上の注意の改訂等について(その122)
この医薬品・医療用具等安全性情報は、厚生省において収集された副作用情報をもとに、医薬品・医療用具等のより安全な使用に役立てていただくために、医療関係者に対して情報提供されるものです。
平成12年(2000年)11月
厚生省医薬安全局
No. | 医薬品等 | 対策 | 情報の概要 |
---|---|---|---|
1 | 塩酸ピオグリタゾン | 緊 使 症 | 塩酸ピオグリタゾン投与との関連性が否定できない心不全の増悪あるいは発症例が5例報告されたことから、心不全の患者及び心不全の既往歴のある患者を「禁忌」とするとともに、心不全発症のおそれのある心筋梗塞、狭心症、心筋症、高血圧性心疾患等の心疾患のある患者を「慎重投与」とするなどの添付文書の改訂を行い、併せて「緊急安全性情報」の配布を行い、医療現場への情報提供の徹底を図った。 |
2 | ジクロフェナクナトリウム製剤 | 緊 使 | 「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」において、ジクロフェナクナトリウムについては、その使用群について有意に、死亡率が高いと報告されたこと、また、基礎研究においてインフルエンザ脳炎・脳症に特徴的な脳血管損傷の修復に働く酵素を強く阻害するとの報告があることから、インフルエンザ脳炎・脳症患者に対するジクロフェナクナトリウムの投与を「禁忌」とするなどの添付文書の改訂を行い、併せて「緊急安全性情報」の配布を行い、医療現場への情報提供の徹底を図った。 |
3 | 重篤な皮膚障害 | 医薬品の副作用に皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症等の重篤な皮膚障害がある。発生頻度は極めて低いものの、発症すると予後不良となる場合があり、また、皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器官等に障害を残すことがある。皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症について改めて注意を喚起するため、厚生省への副作用報告症例や文献等をまとめて紹介する。 | |
4 | ニューキノロン系抗菌剤 | 症 | ニューキノロン系抗菌剤に肝機能障害等の副作用が報告されていることから、改めて注意を喚起するため、厚生省への副作用報告も踏まえて紹介する。 |
5 | 塩酸フェニルプロパノールアミン含有医薬品 | 使 | 米国イェール大学において、塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)含有医薬品服用と出血性脳卒中の発生リスクに関する大規模疫学調査結果が報告された。食欲抑制剤としてPPAを使用した女性群において、出血性脳卒中の高いリスクが示唆されたなどの結果が得られている。 検討の結果、我が国において直ちに販売中止とする必要はないものの、過量服用をしないことなどの適正使用の徹底を図った。 |
6 | 医療事故防止対策 | 「医薬品・医療用具等関連医療事故防止対策検討会」の討議内容を踏まえ、実施することとした医薬品・医療用具に関連する医療事故防止対策について紹介する。 | |
7 | 塩酸ピオグリタゾン他(23件) | 使用上の注意の改訂等について(その122) |
緊:緊急安全性情報の配布 使:使用上の注意の改訂 症:症例の紹介
塩酸ピオグリタゾンと急激な水分貯留による心不全について
成分名 該当販売名 |
成分名 | 該当販売名 |
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塩酸ピオグリタゾン | アクトス錠15、同30(武田薬品工業) | |
薬効分類等 | インスリン非依存型糖尿病治療剤 | |
効能効果 | インスリン非依存型糖尿病 (ただし、食事療法、運動療法のみで十分な効果が得られずインスリン抵抗性が推定される場合あるいはスルホニルウレア剤が効果不十分な場合に限る) |
(1)経緯
塩酸ピオグリタゾンは、インスリン受容体のインスリン結合部以降に働いてインスリン抵抗性を軽減し、血糖降下作用を示す内服薬で、平成11年12月の販売開始以来(平成11年9月承認)、インスリン非依存型糖尿病(ただし、食事療法、運動療法のみで十分な効果が得られずインスリン抵抗性が推定される場合あるいはスルホニルウレア剤が効果不十分な場合に限る)に対して用いられている。海外においては、米国等11ヵ国で販売されている。
本剤投与中の心不全の発現は臨床試験の段階では認められていなかったが、循環血漿量の増加によると考えられる浮腫の発現が認められたことから、承認時に使用上の注意として「重大な副作用」の項に浮腫を記載するとともに、「慎重投与」の項に重篤な心疾患のある患者を記載するなどの注意喚起及び情報提供を行ってきた。
しかし、本剤の投与との関係が否定できない心不全の発現が5例(死亡例なし)報告されたことから、心不全の患者及び心不全の既往歴のある患者を「禁忌」とするとともに、心不全発症のおそれのある心筋梗塞、狭心症、心筋症、高血圧性心疾患等の心疾患のある患者を「慎重投与」とするなどの添付文書の改訂を行い、併せて「緊急安全性情報」の配布を行い、医療現場への情報提供の徹底を図った。
(2)症例の紹介
報告された本剤投与中の心不全の増悪又は発症症例5例のうち3例を表1に紹介する。
(3)安全対策
本剤についてはこれまでも浮腫が発現すること、重篤な心疾患のある患者への投与は慎重に行うことなどの注意がなされてきたが、報告された心不全の増悪又は発症は、循環血漿量の増加による心臓への影響として発現すると考えられることから、投与にあたっては、患者に対し、浮腫(むくみ)、急激な体重の増加、息切れ、動悸などの症状に注意するよう適切な説明を行っておくことが重要である。
《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
〈塩酸ピオグリタゾン〉
禁忌 (1)心不全の患者及び心不全の既往歴のある患者[動物試験において循環血漿量の増加に伴う代償性の変化と考えられる心重量の増加がみられており、また、臨床的にも心不全を増悪あるいは発症したとの報告がある。] |
慎重投与
(1)次に掲げる患者又は状態
1)心不全発症のおそれのある心筋梗塞、狭心症、心筋症、高血圧性心疾患等の心疾患のある患者[循環血漿量の増加により心不全を発症させるおそれがある。](「重要な基本的注意」、「重大な副作用」の項参照)
重要な基本的注意
(1)循環血漿量の増加によると考えられる浮腫が短期間に発現し、また心不全が増悪あるいは発症することがあるので、下記の点に留意すること。(「禁忌」、「慎重投与」の項参照)
1)心不全の患者及び心不全の既往歴のある患者には投与しないこと。
2)投与中は観察を十分に行い、浮腫、急激な体重増加、心不全症状等がみられた場合には投与中止、ループ利尿剤(フロセミド等)の投与など適切な処置を行うこと。
3)服用中の浮腫、急激な体重増加、症状の変化に注意し、異常がみられた場合には直ちに本剤の服用を中止し、受診するよう患者を指導すること。
(11)心電図異常や心胸比増大があらわれることがあるので、定期的に心電図検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を一時中止するかあるいは減量するなど慎重に投与すること。(「その他の副作用」の項参照)
副作用
(1)重大な副作用
2)心不全が増悪あるいは発症することがあるので、投与中は観察を十分に行い、浮腫、急激な体重増加、心不全症状等がみられた場合には投与を中止し、ループ利尿剤等を投与するなど適切な処置を行うこと。特に心不全発症のおそれのある心疾患の患者には注意すること。(「慎重投与」、「重要な基本的注意」の項参照)
(2)その他の副作用
2)循環器:心胸比増大、心電図異常(注4)
(注4)「重要な基本的注意」(11)参照
表1 症例の概要
No. | 患者 | 1日投与量 投与期間 |
副作用 | 備考 | ||||||||||||||||||||
性、 年齢 |
使用理由 〔合併症〕 |
経過及び処置 | ||||||||||||||||||||||
1 | 女 60代 |
糖尿病 〔うっ血性心不全(拡張型心筋症疑い)、心室頻拍、洞不全症候群、完全房室ブロック、永久ペースメーカー植込後〕 |
30mg 28日間 |
うっ血性心不全増悪、下腿浮腫、労作時息切れ、体重増加、心胸郭比増大、左胸水 41日前 心室頻拍コントロール入院中であったが、退院し以後外来通院。体重52kg。 投与開始日 外来受診の際には自覚症状はなく、体重51kg。本剤投与開始。 2-3週後 下腿浮腫著明、労作時息切れ増強。 28日後 受診。体重60kgに増加。胸部レントゲン上、心胸郭比増大、左胸水を認め、本剤投与中止。入院勧めるも患者の希望により、フロセミド投与し経過観察。 35日後 外来受診。うっ血の改善なく、労作時息切れも不変のため、入院。体重59kg。 塩酸ドパミン(600mg/200mL:3mL/hr)、カルペプチド(4000μg/日)点滴、フロセミド(20mg)静注投与開始。順調に利尿つき1-2kg/日の体重減少あり。フロセミド静注は1日のみで終了し、経口投与は継続。 41日後 塩酸ドパミン投与中止。体重52.2kg。下腿浮腫軽快。心拡大、胸水不変。カルペプチド点滴、フロセミド経口は継続。 42日後 フロセミド減量(40mg→20mg)。 45日後 体重52-53kgと軽快。下腿浮腫はわずかに残存。胸部レントゲン上、改善なし。ペースメーカーの心室rateを50~60bpmに増加。カルペプチド増量(8000μg/日)し、経過観察中。 46日後 その後うっ血性心不全の増悪は軽快。 |
企業報告 | |||||||||||||||||||
臨床検査値
併用薬:グリベンクラミド(3年前~継続中)、マレイン酸エナラプリル(3年前~継続中)、塩酸アミオダロン(2ヵ月前~継続中) |
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2 | 女 60代 |
糖尿病 〔高血圧、高脂血症、狭心症〕 |
30mg 26日間 |
心不全、全身浮腫、体重増加、呼吸困難 2年前 労作時前胸部圧迫感発現。マスターダブル負荷心電図実施し、陽性であったので他院(循環器内科)紹介。心臓血管造影をすすめられたが、患者は強く拒否。硝酸イソソルビド、ニコランジル、ニトログリセリン開始し、以後労作時圧迫感は軽減。 投与開始日 外来で血糖コントロールしていたが、食後2時間血糖が200-250mg/dLと高値のため、本剤投与開始。 26日後 全身浮腫を訴え来院。体重増加(26日間で56.5kg→61kg)を認める。本剤投与中止(15日目から3日間休薬されていた)。 27日後 14:00 入院加療となる。独歩入院。マルトース加乳酸リンゲル+グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤点滴開始(1.5hrかけて約500mLを滴下)。 16:30 輸液終了前フロセミド筋注投与。 17:10 突然呼吸困難を訴える(心不全)。酸素飽和度 73%、血圧 169/88mmHg。胸部レントゲンにて両側胸水貯留を認める。利尿剤投与、酸素4L吸入施行。ヒト脳性ナトリウムペプチド 343.8(基準値<18.4)と著明に増加。膀胱導尿バルーン留置。 19:00 1500mLの排尿を得る。酸素5L経鼻下に酸素飽和度 97%と改善するも、ルームエアー下では88~90%と低下。 33日後 軽快。その後症状の再発を認めず。 |
企業報告 | |||||||||||||||||||
併用薬:ニフェジピン、シンバスタチン、硝酸イソソルビド、グリベンクラミド、ボグリボース(いずれも2年前から服用し、本剤中止後も継続) | ||||||||||||||||||||||||
3 | 女 80代 |
糖尿病 〔労作性狭心症(PTCA術後)、洞機能不全(ペースメーカー植込後)、心房細動、閉塞性動脈硬化症〕 既往歴:骨関節症(右膝人工関節) |
30mg 25日間 |
うっ血性心不全、体重増加、呼吸苦、動悸、胸水、心胸郭比拡大、下肢浮腫 以前より糖尿病を認めていた。 約2年前 労作性狭心症、閉塞性動脈硬化症を認める。 1年半前 心臓血管造影にて RCA #1:90%、LAD #6:90%、#12:90%。労作性狭心症に対し、経皮経管的冠血管形成術施行。#6:90%→0%、#12:90%→0%となる。ステント施行(2.5mm)。 2ヵ月前 洞機能不全症候群、心房細動を認める。 42日前 心臓血管造影にて RCA #1:70%、#2:75%、D #9-2:71%、EF 62%。再狭窄ないことを確認、EF 良好(RCA の1枝病変)。 40日前 洞機能不全に対し、ペースメーカー(VVI)植込術施行。 投与開始日 近医にて本剤投与開始(30mg/日、分2)。 不明 体重増加、労作時呼吸苦、動悸出現。 21日後 近医受診し、アテノロール投与開始するもその後症状改善せず。 25日後 当院受診。胸部レントゲン上、うっ血、胸水(少量)、心胸郭比拡大、下肢浮腫、呼吸苦も認め、うっ血性心不全の診断で入院。本剤、アテノロール投与中止。フロセミド(20mg)静注投与にて速やかに改善。 その後うっ血性心不全は軽快。 |
企業報告 | |||||||||||||||||||
併用薬:アテノロール(本剤開始3週間後~同時中止)、塩酸イミダプリル、ベシル酸アムロジピン、アスピリンダイアルミネート、ファモチジン、カルバマゼピン、ブロチゾラム、プラバスタチンナトリウム、ワルファリンカリウム(他の併用薬の投与期間はいずれも不明) |
インフルエンザ脳炎・脳症患者に対するジクロフェナクナトリウム製剤の使用について
成分名 該当販売名 |
成分名 | 該当販売名 |
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ジクロフェナクナトリウム | アスピゾンズポ50mg(共和薬品工業) アデフロニック錠、アデフロニックズポ12.5、同25、同50(大洋薬品工業) アナバン坐剤12.5、同25、同50(富士化学工業) イリナトロン錠(辰巳化学) サフラック錠(日本新薬) サンナックス錠(三恵薬品) ジクロニックズポ50(大興製薬) ジクロフェナクナトリウム錠「ホクエイ」(大原薬品工業) ジクロフェノン坐剤25、同50(オリエンタル薬品工業) シーコレン錠(日本医薬品工業) ジフェナック坐剤(小林化工) ソファリン錠(日本ケミファ) ソレルモン錠(東和薬品) ダイスパス錠(ダイト) チカタレン錠(イセイ) ドセル錠(日本化薬) ニフレリール錠(模範薬品研究所) ネリオジン錠、ネリオジン坐剤12.5、同50(帝国化学産業) バレタン錠(東菱薬品工業) ピナナック坐剤25、同50(東光薬品工業) フェナシドン錠、フェナシドン坐剤25、同50(竹島製薬) フェニタレン坐剤12.5、同25、同50(長生堂製薬) ブレシン錠(沢井製薬) プロフェナチンカプセル(菱山製薬) ベギータ坐剤12.5、同25、同50(シオノケミカル) ボナフェック錠、ボナフェック坐剤12.5、同25、同50(日新製薬) ボラボミン錠、ボラボミン坐剤12.5mg、同25mg(鶴原製薬) ボルタレン錠、ボルタレンサポ12.5mg、同25mg、同50mg(日本チバガイギー) ボルマゲン錠、ボルマゲン坐剤25、同50(大正薬品工業) ボンフェナック坐剤12.5、同25、同50(京都薬品工業) メクロフェン坐剤25、同50(日本ガレン) メリカット坐剤12.5、同25、同50(太田製薬) ヨウフェナック錠(陽進堂) ワンフェロン錠(東邦新薬) |
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薬効分類等 | 解熱鎮痛消炎剤 | |
効能効果 | (内服) 1)下記の疾患並びに症状の鎮痛・消炎 慢性関節リウマチ、変形性関節症、変形性脊椎症、腰痛症、腱鞘炎、頸肩腕症候群、 神経痛、後陣痛、骨盤内炎症、月経困難症、膀胱炎、前眼部炎症 2)手術後並びに抜歯後の鎮痛・消炎 3)下記の疾患の解熱・鎮痛 急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む) (坐剤) 1)下記の疾患並びに症状の鎮痛・消炎 慢性関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、後陣痛 2)手術後の鎮痛・消炎 3)他の解熱剤では効果が期待できないか、あるいは、他の解熱剤の投与が不可能な 場合の急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)の緊急解熱 |
(1)経緯
重篤な疾病であるインフルエンザ脳炎・脳症については、平成11年度より、「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」(班長:森島恒雄名古屋大学医学部教授)において、その発症機序等の解明のための研究(厚生科学研究)が行われている。
平成11年度の同研究では、インフルエンザ脳炎・脳症例181例についての解析が行われたが、特に52例の死亡例のうち、ジクロフェナクナトリウム又はメフェナム酸の使用群と未使用群とを比較した結果、使用群について、わずかながら有意に死亡率が高いと報告された。(平成12年1月発行の医薬品・医療用具等安全性情報 No.158「インフルエンザの臨床経過中に発症した脳炎・脳症の重症化と解熱剤の使用について」参照)
平成12年度の調査では、91例のインフルエンザ脳炎・脳症発症例について検討が行われ、ジクロフェナクナトリウム使用群と他の解熱剤使用群とを比較した結果、使用群について昨年より高い有意性をもって、死亡率が高い(他の解熱剤使用群38例中5例に対しジクロフェナクナトリウム使用群12例中7例)ことが報告された(表2)。
また、今年度の調査では、頭部断層撮影(CTスキャン)や剖検による病理学的検査が行われ、脳血管に損傷が生じていることが特徴的所見として見出された。
明確な因果関係は不明であるものの
1)ジクロフェナクナトリウム使用群については、昨年度に引き続き今年度も有意に死亡率が高いことが示されたこと、
2)今年度行われた脳炎・脳症患者の病理学的検査で、脳血管の損傷が特徴的に認められているが、これはジクロフェナクナトリウムは血管内皮の修復に関与する酵素(シクロオキシゲナーゼ)を抑制する作用が強いとする海外の臨床的研究結果(資料)と矛盾しないことから、インフルエンザ脳炎・脳症患者に対するジクロフェナクナトリウムの投与を「禁忌」とするなどの使用上の注意の改訂を行い、併せて「緊急安全性情報」の医療関係者への配布を行い、医療現場への情報提供の徹底を図った。
インフルエンザ脳炎・脳症の重症化と解熱剤との因果関係等について、更なる調査研究を実施する予定である。
《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
〈ジクロフェナクナトリウム〉
禁忌(次の患者には投与しないこと) インフルエンザの臨床経過中の脳炎・脳症の患者(「その他の注意」の項目参照) |
その他の注意
1)インフルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発症した患者(主として小児)のうち、ジクロフェナクナトリウムを投与された例で予後不良例が多いとする報告がある。
2)インフルエンザ脳炎・脳症例の病理学的検討において脳血管の損傷が認められるとの報告があり、また、ジクロフェナクナトリウムは血管内皮修復に関与するシクロオキシゲナーゼ活性の抑制作用が強いとの報告がある。
表2 インフルエンザ脳炎・脳症における解熱剤の影響
生存 n=57 | 死亡 n=15 | ||
解熱剤使用 | 無 有 |
19(33.3%) 38(66.7%) |
3(20%) 12(80%) |
アセトアミノフェン | (n=36) | 32(88.9%) | 4(11.1%) |
ジクロフェナクナトリウム | (n=12) | 5(41.7%) | 7(58.3%) |
メフェナム酸 | (n=8) | 6(75.0%) | 2(25.0%) |
その他の解熱剤 | (n=6) | 3(50.0%) | 3(50.0%) |
Logistic Model(SPSS)による多変量解析 (性、月齢、最高体温、発症までの日数を調整) |
||
Odds Ratio |
95%CI | |
アセトアミノフェン | 0.21 | 0.04-1.03 p=0.0548 |
ジクロフェナクナトリウム | 13.86 | 2.22-86.40 p=0.0049 |
メフェナム酸 | 0.88 | 0.12-6.31 p=0.8956 |
その他の解熱剤 | 1.87 | 0.19-18.68 |
資料
ジクロフェナクナトリウムのシクロオキシゲナーゼに対する作用に関する臨床的研究の概要
Cryer, B. et al.:Am. J. Med. 104:413-421、1998
汎用されている非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)のシクロオキシゲナーゼ1及びシクロオキシゲナーゼ2に対する選択性
〔要約〕
目的:シクロオキシゲナーゼの2つのアイソフォームであるCOX-1とCOX-2は、すべてのNSAIDsにより種々の程度で阻害される。NSAIDsによるCOX-1の阻害は胃腸の潰瘍形成に関連しており、選択的COX-2阻害を有するNSAIDsは胃腸への毒性が少ないと思われる。ヒトにおけるNSAIDsと他の抗炎症性鎮痛剤のCOX-1とCOX-2の阻害の程度を測定した。
主題と方法:16人の健常人全血を用い、25種類の抗炎症剤又は鎮痛薬剤を0(コントロール)から100μM(n=5各々に対し)の間の6つの濃度について検討した。COX-1はトロンボキサンB2の合成活性で、COX-2はプロスタグランディンE2合成活性により分析した。また、胃粘膜のプロスタグランディンE2合成についても測定した。
結果:血液中のCOX-1とCOX-2活性に対するNSAIDsの阻害の程度と選択性はさまざまであった。あるNSAIDs(例えばフルルビプロフェン、ケトプロフェン)はCOX-1選択で、あるもの(例えばイブプロフェン、ナプロキセン)は基本的に非選択性で、またあるもの(例えばジクロフェナク、メフェナム酸)はCOX-2選択であった。胃のプロスタグランディンE2合成のNSAIDsの阻害効果は血液中のCOX-1阻害活性(P<0.001)とCOX-1選択性(P<0.01)に相関していた。しかしCOX-2阻害活性とは相関していなかった。またCOX-2“選択”NSAIDsはin vivoの濃度で胃のプロスタグランディンE2合成の阻害効果を起こすに十分なCOX-1活性をもっていた。
結論:現在市場にあるNSAIDsはCOX-2の選択性があるものであっても治療域濃度で胃のCOXを抑えない薬剤はない。
表 血中及び胃粘膜(μM)においてシクロオキシゲナーゼ
(COX)活性を50%阻害する薬剤濃度(IC50)
Drug | COX-1 in Blood (Rank) |
COX-2 in Blood (Rank) |
Gastric Mucosa (Rank) |
Ketoprofen | 0.11(1) | 0.88(8) | 0.08(2) |
Indomethacin | 0.21(2) | 0.37(7) | 0.85(11) |
Diclofenac | 0.26(3) | 0.01(1) | 0.23(4) |
Ketorolac | 0.27(4) | 0.18(6) | 0.33(6) |
Flurbiprofen | 0.41(5) | 4.23(13) | 0.23(5) |
Tolmetin | 1.08(6) | 2.25(11) | 3.50(16) |
Mefenamic acid | 1.94(7) | 0.16(4) | 0.70(10) |
Piroxicam | 2.68(8) | 2.11(10) | 0.87(12) |
Fenoprofen | 2.73(9) | 14.03(17) | 0.17(3) |
Aspirin | 4.45(10) | 13.88(16) | 0.03(1) |
Ibuprofen | 5.90(11) | 9.90(14) | 0.70(9) |
Nimesulide | 10.48(12) | 0.18(5) | 1.49(13) |
Oxaprosin | 14.58(13) | 36.67(23) | 2.62(14) |
Etodolac | 19.58(14) | 2.47(12) | 3.20(15) |
NS-398 | 21.93(15) | 0.92(9) | 100.00(18) |
6-MNA | 31.01(16) | 19.84(19) | 0.48(7) |
Naproxen | 32.01(17) | 28.19(22) | 0.52(8) |
Valeryl salicylate |
32.64(18) | 0.04(2) | >100.00(21) |
Nabumetone | 33.57(19) | 20.83(20) | 20.09(17) |
Sulindac | 41.26(20) | 24.94(21) | >100.00(19) |
Acetaminophen | 42.23(21) | 10.69(15) | >100.00(23) |
Dexamethasone | 59.95(22) | 0.13(3) | >100.00(25) |
Bismuth subsalicylate |
75.24(23) | 37.50(24) | >100.00(22) |
Salicylic acid | >100.00(24) | 14.08(18) | >100.00(20) |
Salsalate | >100.00(25) | 39.90(25) | >100.00(24) |
6-MNA=6-methoxy napthalene acetic acid
検討した25種類の薬剤はすべてCOX-2活性の阻害作用がみられたが、その強さは約4000倍の差があった。
NSAIDsであるジクロフェナクは血中でのCOX-2阻害作用がデキサメタゾンよりも更に強く、最も強い(IC50=0.01μM)。
医薬品による重篤な皮膚障害について
- 序論
医薬品による皮膚に対する重篤な副作用として、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症等が知られている。皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症の発生頻度は、人口100万人当たりそれぞれ年間1~6人、0.4~1.2人1、2)と極めて低いものの、発症すると予後不良となる場合があり、また、皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器官などに障害を残すことがある重篤な副作用である。今般、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症について改めて注意を喚起するため、厚生省への副作用報告症例や文献等をまとめて紹介することとした。
- 皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症とは
皮膚粘膜眼症候群は、1922年にStevensとJohnsonが報告したことから、スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)とも呼ばれ、重症型多形滲出性紅斑(erythema exsudativum multiforme major:EEMM)と同義語とされている。これらの皮膚疾患の中で最も重篤とされているのが中毒性表皮壊死症である。SJS、EEMMは中毒性表皮壊死症へと移行する場合もある。近年、SJSとEEMMがその原因や程度によって区別でき、SJSと中毒性表皮壊死症は同一カテゴリーの疾患とする報告が多い3、4)。
中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)は、1956年、Lyellが初めて報告したことからライエル症候群(Lyell syndrome)とも呼ばれる。類似症状を示す疾患としてブドウ球菌性TEN(staphylococcal scalded skin syndrome:SSSS)や輸血後の移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)などがある。
(1)初期症状と臨床経過
SJSの初期症状は、発熱、左右対称的に関節背面を中心に紅斑(target lesion等)が出現し、急速に紅斑の数を増し、重症化するにつれ、水疱、びらんを生じ、融合する。眼、口腔粘膜、外陰部などの粘膜疹を伴うことも多く、検査所見では白血球増多、赤沈亢進、CRP陽性などを示す。発熱などの全身症状とともに、多形滲出性紅斑様皮疹(target lesion)、広範な粘膜疹が急激に生じることより診断は困難ではない。呼吸器障害(肺炎等)や肝障害などの合併症を来し、その死亡率は6.3%との報告がある5)。
一方、TENは、発熱や腋窩、外陰部、体幹などに広範囲な紅斑が出現した後、急速に水疱を生じ、水疱は破れやすく(ニコルスキー現象)、全身びらん症状を呈する。II度熱傷に似て、疼痛も著明である。検査所見では、血液、肝、電解質などに異常を認めることが多い。多臓器障害の合併症(肝障害、腎障害、呼吸器障害、消化器障害等)を来し、死亡率も高く20~30%とする報告が多い5、6)。
(2)発症原因と機序
単純疱疹ウイルス、肺炎マイコプラズマ、細菌、真菌などの種々のウイルスや細菌による感染症、医薬品、食物、内分泌異常、悪性腫瘍、物理的刺激などによって起こるアレルギー性の皮膚反応(III型アレルギー)と考えられているが、医薬品が原因となる場合が多いとされており、文献によるとSJSの59%が医薬品が原因と推定されたとする報告5)や、TENでは、90%以上が医薬品が原因と推定されたとの報告もある5、6)。一般に医薬品のように比較的簡単な構造を持った化学物質は、単独では免疫原性を有しないハプテンとしての性格を持っており、蛋白質のような高分子化合物と結合し免疫原となって重症な皮膚疾患を起こすものと推定されているものの、これら皮膚疾患の発症機序の詳細は未だ明確にされていない。したがって、これら重篤な皮膚疾患の発症を予知することは非常に困難である。
(3)原因医薬品
原因医薬品は、抗生物質製剤、解熱鎮痛消炎剤、抗てんかん剤、痛風治療剤、サルファ剤、消化性潰瘍用剤、催眠鎮静剤・抗不安剤、精神神経用剤、緑内障治療剤、筋弛緩剤、高血圧治療剤などであり、その他種々の医薬品で発生することが報告されている1、5~8)。
(4)治療
医薬品によるSJS、TENに対しては、発熱や発疹等の初期症状を認めた場合、原因と推定される医薬品の投与を中止することが最も重要で最良の治療法である。しかし、投与を中止してもSJS、TENへと重症化する場合があるので注意が必要である。一般にSJS、TENが発症した場合、副腎皮質ホルモン剤の全身投与、あるいは血漿交換療法、ビタミン類の投与、更に二次感染予防の目的で抗生物質製剤投与が行われ、皮膚面に対しては外用抗生物質製剤、外用副腎皮質ホルモン製剤が用いられている。粘膜面にはこれらとともに、うがい、洗眼など開口部の処置が行われている7~9)。なお、これらの治療は、皮膚科の入院施設のある病院で行うことが望ましいとされている10)。
- 添付文書への記載状況と厚生省への副作用報告症例について
(1)添付文書への記載状況
医療用医薬品については、発生が示唆されている医薬品の「使用上の注意」に、「皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症」について記載することによって医療関係者に注意を喚起している。添付文書への記載状況は、医薬品情報提供ホームページ(http://www.pharmasys.gr.jp/)に掲載されている添付文書情報9,786枚のうち、「皮膚粘膜眼症候群」、「中毒性表皮壊死症」の記載のあるものは、各々1,097枚、913枚である(平成12年9月末日)。
一方、一般用医薬品については、市販の解熱剤やかぜ薬を飲み、高熱やショック状態、眼に異常を及ぼす重篤な副作用が報告されたことを受け、平成7年9月に、製薬企業に対し「使用上の注意」の追記を指示し、テレビCMなどで注意を促すことを求め、薬局にも服薬指導の徹底を要請した。また、平成11年8月に、医薬品の重要な情報が一般使用者にわかりやすく伝達されるよう、「一般用医薬品の添付文書記載要領」を定め周知を図っているところである。
一般用医薬品添付文書の記載例(抜粋)
次の場合は、直ちに服用を中止し、この説明書を持って医師、歯科医師又は薬剤師に相談してください。 (1)服用後、次の症状があらわれた場合 皮ふ:発疹・発赤、かゆみ まれに下記の重篤な症状が起こることがあります。その場合は直ちに医師の診療を受けてください。 皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症:高熱を伴って、発疹・発赤、火傷様の水ぶくれ等の激しい症状が、全身の皮ふ、口や目の粘膜にあらわれる。 |
(2)厚生省への副作用報告症例について
平成9年4月1日から平成12年3月31日の3年間に、薬事法に基づく企業からの企業報告、医療機関から直接厚生省へ報告される医薬品等安全性情報報告制度によって報告された件数は69,872件であった。それらのうち副作用がSJSあるいはTENとされた報告は約1.3%の882件であり、そのうち一般用医薬品が被疑薬に含まれている報告は約6%の54件であった。882件の転帰は、約76%の668症例は“軽快”あるいは“回復”とされた症例であり、61症例(約7%)が何らかの後遺症を来し、81症例(約9%)が医薬品が関連した死亡とされた症例であった。残り約8%の72症例については、医薬品以外の原因による死亡、あるいは転帰不明とされた症例であった。なお、これらの報告症例については重複症例があること、医薬品との因果関係が明確でない症例も含まれていることにご留意いただきたい。
被疑薬として報告があった医薬品は259成分であり、報告数の多かった医薬品10品目を表3と表4に示す。なお、報告数順位については、各医薬品の販売量が異なること、また、使用法、使用頻度、併用医薬品、原疾患、合併症などが症例により異なるため、単純に比較することはできないことにご留意いただきたい。
- まとめ
SJS、TENはその発生頻度は極めてまれではあるものの、いったん発症すると皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器官などに障害を残したり、多臓器障害の合併症などにより致命的な転帰をたどることがある重篤な皮膚疾患である。厚生省への副作用報告症例の調査の結果、3年間でSJS、あるいはTENの被疑薬として報告のあった医薬品はおよそ260成分にものぼり、幅広い医薬品が原因になり得ることがうかがえた。また、それらのうち報告の多かった医薬品は、汎用されている医薬品(抗生物質製剤、解熱鎮痛消炎剤等)や長期使用される医薬品(抗てんかん剤等)などであり、約7%が何らかの後遺症を来し、約9%が死亡という転帰であった。SJS、TENの発症の予知は現在において極めて困難であるとされている。これらの皮膚障害は、非常に稀とはいえ、個人や医薬品を問わず起こり得る可能性がある。薬疹に対しては、被疑薬の投与を中止することが最も重要で最良の治療法とされており、医薬品投与後に高熱を伴う発疹等を認めた時は、直ちに被疑薬の投与を中止するとともに、SJS、TENの発症を疑った場合には、皮膚科の専門医を紹介することが必要と思われる。
表3 報告の多い推定原因医薬品(医薬品別)
カルバマゼピン |
ジクロフェナクナトリウム |
ゾニサミド |
アロプリノール |
セフジニル |
サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・メチレンジサリチル酸プロメタジン |
フェニトイン(含フェニトインナトリウム) |
塩酸セフカペンピボキシル |
フェノバルビタール |
セフテラムピボキシル |
(平成9年4月1日から平成12年3月31日までの報告症例より)
表4 報告の多い推定原因医薬品(薬効分類別)
抗生物質製剤 |
解熱鎮痛消炎剤 |
抗てんかん剤 |
総合感冒剤 |
合成抗菌剤 |
痛風治療剤 |
消化性潰瘍用剤 |
催眠鎮静剤・抗不安剤 |
サルファ剤 |
眼科用剤 |
(平成9年4月1日から平成12年3月31日までの報告症例より)
〈参考文献〉
1)Roujeau J-C., et al.:Medication Use and The Risk of Stevens-Johnson Syndrome or Toxic Epidermal Necrolysis. N. Engl. J. Med., 333:1600-1607(1995)
2)Rzany B., et al.:Epidemiology of Erythema Exsudativum Multiforme Majus, Stevens-Johnson Syndrome, and Toxic Epidermal Necrolysis in Germany(1990-1992): Structure and Results of a Population Based Registry. J. Clin. Epidemiol., 49:769-773(1996)
3)Assier H., et al.:Erythema Multiforme With Mucous Membrane Involvement and Stevens-Johnson Syndrome Are Clinically Different Disorders With Distinct Causes. Arch. Dermatol., 131:539-543(1995)
4)Cote B., et al.:Clinicopathologic Correlation in Erythema Multiforme and Stevens-Johnson Syndrome. Arch. Dermatol., 131:1268-1272(1995)
5)相原道子、池澤善郎:本邦におけるToxic Epidermal Necrolysis(TEN)死亡例の臨床的検討-TEN生存例およびStevens-Johnson syndrome(SJS)死亡例との比較検討-、日皮会誌、109(11):1581-1590(1999)
6)南光弘子:本邦におけるToxic Epidermal Necrolysis126例の臨床的解析-輸血後GVHDとの鑑別は可能か否か-、皮膚科の臨床、33:1249-1263(1991)
7)高橋隆一 監修:薬の重大な副作用がわかる本(ミクス)
8)伊崎誠一:TEN(中毒性表皮壊死融解症)、川越クリニカル・カンファレンス KCCシリーズ No.39(1998)
9)池田重雄、荒田次郎、西川武二 編集:標準皮膚科学 第5版(医学書院)
10)塩原哲夫:診断と治療、87:37-41(1999)
ニューキノロン系抗菌剤と肝機能障害について
- 序論
現在、医療の場では種々の感染症を適用とする「ニューキノロン系抗菌剤」と呼ばれる合成抗菌剤が広く用いられている。これらの薬剤の使用に伴う副作用は比較的少ないといわれているが、近年、肝機能障害等の副作用が報告されていることから、厚生省への副作用報告も踏まえここに紹介する。
- ニューキノロン系抗菌剤
(1)開発の経緯
ピリドンカルボン酸(キノロン)系抗菌剤は、1962年に開発されたナリジクス酸を嚆矢とし、それまでのサルファ剤や抗生物質に交差耐性を示さないことから長年尿路感染症等の治療に用いられてきた。その後の開発により、ピリドンカルボン酸の6位にフッ素を、7位にピペラジニル基あるいはその置換基が導入された広い抗菌スペクトラムを有するいわゆる「ニューキノロン系抗菌剤」が開発された。
現在、国内において販売されている代表的なニューキノロン系抗菌剤は表5のとおりである。
(2)副作用
従来比較的安全性が高いと考えられていたこれらの薬剤も、使用量が増加するに伴い、種々の副作用が報告されている。重大な副作用の代表的なものとしては、1)偽膜性大腸炎等の消化器症状、2)ショック、アナフィラキシー様症状、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症等の過敏症、3)痙攣等の中枢神経系症状、4)急性腎不全、5)低血糖、6)関節症状、7)横紋筋融解症、アキレス腱炎やアキレス腱断裂等である。ただし、一口にニューキノロン系抗菌剤といっても、その抗菌作用や薬物動態にそれぞれの薬剤で違いがあるように副作用についても多少の相違がみられている。
- 症例の紹介
ニューキノロン系抗菌剤の肝機能障害の副作用報告のうち、1997~1999年度に厚生省に報告のあった件数を表6に示す。
副作用報告件数をみると、今回、使用上の注意の改訂を行ったレボフロキサシンに肝機能障害の報告数が多いが、レボフロキサシンの年間推定使用者数は約1,861.6万人と多く、トシル酸トスフロキサシンの約174.4万人と比較して、必ずしも発生頻度が高いというものではない。
1997~1999年度に厚生省に報告された症例を解析すると、肝機能障害の発生頻度に男女差はなく、また、高齢者に多く発生するといったような年齢差もみられていない。発生した肝機能障害の経過についてみると、約80%の症例では回復または軽快しており、多くの場合は投与を中止することにより回復または軽快している。しかしながら、一方では死亡に至る症例も報告されており、これらの症例をみると比較的高齢者に発生している。投与開始から肝機能障害の発現までの期間は、1週間以内が約60%、2週間以内では約80%となっており、比較的早期に発現している。
参考として報告のあった症例のうち2例を表7に紹介する。
- 安全対策
今回取り上げた肝機能障害に関する副作用については、先に述べたようにニューキノロン系抗菌剤全般において発生する副作用としての捉え方はなされていなかったが、近年、これらの副作用報告が集積され、その結果、現在臨床の場で使用されているニューキノロン系抗菌剤についてはその発生状況に応じてその成分ごとに肝機能障害、黄疸等の副作用に関する注意喚起がなされている。肝機能障害に関する現在の使用上の注意の記載状況を表8に示す。
最近の使用上の注意の改訂の状況について述べると、レボフロキサシン、オフロキサシンについては従来より「重大な副作用」の項に黄疸、「その他の副作用」の項にはAST、ALT等の上昇の記載はなされていたが、今回「重大な副作用」の項に肝機能障害を追記する使用上の注意の改訂を行った。また、トシル酸トスフロキサシンについては従来より「その他の副作用」の項にAST、ALT等の上昇の記載がなされていたが、本年8月に「重大な副作用」の項に肝機能障害、黄疸を追記し注意喚起を行っている。更に、ノルフロキサシンについても「重大な副作用」の項に肝機能障害、黄疸を記載するよう指示しており、塩酸シプロフロキサシンは従来より肝壊死の記載がなされているが、報告された症例より肝機能障害、黄疸と変更するよう指導している。
ニューキノロン系抗菌剤は、その抗菌スペクトル、抗菌力、薬物動態などの特徴から広く用いられるようになった。これに伴い各薬剤間で発現頻度や程度は異なるものの肝機能障害の副作用が報告されていることから、従来からの副作用に加え、肝機能障害の発現にも十分注意して使用することが必要である。
〈参考文献〉
1)嶋田甚五郎:ニューキノロン薬の副作用、化学療法の領域、11(7)、1443-1455(1995)
2)副島林造、二木芳人、渡辺正俊:経口抗菌剤の現状と展望、p7-15.原耕平編集、ニューキノロン、ライフ・サイエンス第1版(1989)
3)力富直人、松本慶蔵:キノロン系薬剤の使い方(改訂版)p287-300 嶋田甚五郎編集(1993)
表5
成分名 | 主な販売名 |
レボフロキサシン | クラビット錠(第一製薬)他 |
トシル酸トスフロキサシン | オゼックス錠75(富山化学)、トスキサシン錠75mg(ダイナボット)他 |
塩酸シプロフロキサシン | シプロキサン錠100mg(バイエル薬品)他 |
スパルフロキサシン | スパラ錠100mg(大日本製薬)他 |
ノルフロキサシン | バクシダール錠100mg(杏林製薬)他 |
オフロキサシン | タリビッド錠(第一製薬) |
フレロキサシン | メガロシン錠100mg(杏林製薬)他 |
塩酸ロメフロキサシン | バレオン錠200mg(北陸製薬)、ロメバクトカプセル100mg(塩野義製薬)他 |
エノキサシン | フルマーク錠100mg(大日本製薬)他 |
表6
成分名 | 1997~1999年度報告件数 |
レボフロキサシン | 55 |
トシル酸トスフロキサシン | 16 |
塩酸シプロフロキサシン | 15 |
スパルフロキサシン | 9 |
ノルフロキサシン | 8 |
オフロキサシン | 5 |
フレロキサシン | 4 |
塩酸ロメフロキサシン | 1 |
エノキサシン | 1 |
表7 症例の概要
〔成分名〕レボフロキサシン
No. | 患者 | 1日投与量・投与期間 | 副作用 | 備考 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
性、 年齢 |
使用理由 (合併症) |
経過及び処置 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1 | 男 70代 |
急性上気道炎〔心不全〕 | 600mg 5日間 |
飲酒歴のない患者が、急性上気道炎のため本剤投与開始。 投与5日目 全身倦怠感発現。受診時、頻脈及び心房細動を認めたため入院。入院時検査にて肝機能障害を認めたため、本剤投与中止。 ウイルス検査:陰性(HA・HB・HCウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス 投与中止2日目 グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤にて治療開始。 中止20日目 グリチルリチン・グリシン・システイン配合剤投与終了。 中止30日目 回復。 |
企業報告 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
臨床検査値
併用薬:なし |
〔成分名〕トシル酸トスフロキサシン
No. | 患者 | 1日投与量・投与期間 | 副作用 | 備考 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
性、 年齢 |
使用理由(合併症) | 経過及び処置 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2 | 男 50代 |
前立腺炎 | 450mg 6日間 |
肝障害 投与1日目 本剤及び併用薬を投与開始。 投与5日目 全身そう痒感出現。 投与6日目 本剤及び併用薬を投与中止。 中止6日後 全身そう痒感のため救急外来受診。 肝機能異常、中等度黄疸のため入院。 中止8日後 DLST実施。本剤:陰性 中止9日後 肝生検実施。 (所見) 急性肝炎による胆汁うっ滞の像がみられ、薬剤性肝障害の組織像と一致する。 中止23日後 全身そう痒感消失しないため、ウルソデスオキシコール酸投与開始。 中止51日後 肝機能検査値はほぼ正常化。 中止52日後 退院。 |
企業報告 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
臨床検査値
併用薬:トラネキサム酸、アズレンスルホン酸ナトリウム・L-グルタミン |
表8
成分名 | 使用上の注意への記載状況 |
レボフロキサシン | (重大な副作用)肝機能障害、黄疸 (その他)GOT、GPT、Al-P、γ-GTP上昇等 |
トシル酸トスフロキサシン | (重大な副作用)肝機能障害、黄疸 (その他)GOT、GPT、Al-P、LDH、γ-GTP、ビリルビン上昇 |
塩酸シプロフロキサシン | (重大な副作用)肝壊死 (その他)GOT、GPT、Al-P、LDH、γ-GTP上昇 |
スパルフロキサシン | (重大な副作用)肝機能障害、黄疸 (その他)GOT、GPT、Al-P、LDH、γ-GTP、総ビリルビン上昇 |
ノルフロキサシン | (重大な副作用)肝機能障害、黄疸 (その他)GOT、GPT、Al-P、LDH、ビリルビン上昇 |
オフロキサシン | (重大な副作用)肝機能障害、黄疸 (その他)GOT、GPT、Al-P、LDH、γ-GTP、ビリルビン上昇 |
フレロキサシン | (その他)GOT、GPT、Al-Pの上昇等の肝機能異常、黄疸 |
塩酸ロメフロキサシン | (その他)GOT、GPT、Al-P、総ビリルビン上昇等 |
エノキサシン | (その他)GOT、GPT、Al-P、ビリルビンの上昇 |
塩酸フェニルプロパノールアミン含有医薬品の適正使用について
(1)はじめに
塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)は交感神経作用薬であり、エフェドリンに似た薬理作用を持つが、中枢性の作用はエフェドリンより弱いとされる。循環器系への作用としては、心臓刺激や血管収縮による血圧上昇や脈圧増大があり、また鼻充血や結膜充血を除去する。心拍数は変化しないが、心筋収縮力は増大し、心拍出量は増加する。また、腎など内臓血液量は減少するが、冠・脳・骨格筋血量は増加する。平滑筋に対しては弱い気管支筋弛緩作用があり、軽症の急性気管支喘息や慢性喘息に効果を示す。
我が国では、一般用医薬品として鼻炎用内服剤及び鎮咳去痰用剤をはじめ、感冒用剤で配合され、医療用医薬品としては上気道炎治療剤がある。
(2)経緯
米国では、鼻炎用内服剤、鎮咳去痰用剤及び感冒用剤のほか、一般用医薬品の食欲抑制剤の有効成分としても使用され、不適正な使用(過量服用や乱用)とそれに伴う副作用が報告され、出血性脳卒中のリスク増大の可能性が指摘されていた。
イェール大学出血性脳卒中プロジェクト(HSP)によりPPA服用と出血性脳卒中の発生リスクに関する大規模疫学調査が1994~1999年にかけて実施され、その結果報告が本年5月とりまとめられた。最終的調査コホートは、症例群702例とコントロール群1,376例であった。出血性脳卒中との相関を示すオッズ比は、食欲抑制剤として服用した場合に有意に高く、男女別では女性が高かった。HSPは「PPAが出血性脳卒中のリスクを増大させる」と結論づけている。
FDAは諮問委員会において、この臨床疫学的研究の結果からPPAは一般用医薬品の成分として安全とはいえないとの答申を受け、2000年11月3日、製薬企業に対し、PPAを含有する医薬品の米国内における自主的な販売中止を要請し、11月6日、米国の一般消費者に向けてPPA含有医薬品に関連するリスクについて注意喚起を行った。今後PPAは、規則改正等の手続きを経て一般用医薬品から削除される見込みである。
(3)我が国における状況
我が国では、PPAは一般用医薬品では鼻炎用内服剤、鎮咳去痰用剤及び感冒用剤(いずれも配合剤)として販売されている。また、医療用医薬品としては上気道炎治療剤(配合剤)が1品目ある。成人の1日用量は100mg/日(鎮咳去痰用剤では90mg/日)を限度としている。
昭和36年11月にPPA含有医薬品が承認となって以来、我が国でPPA含有医薬品の服用後発生が報告されている脳出血が1例ある。患者は20歳代女性、PPA含有鼻炎用カプセル剤2カプセル(PPAとして80mg、定められた用量の2倍量)を服用後、激しい頭痛と嘔気を自覚し、医療機関を受診、2日間改善がなかったため頭部CTを実施したところ脳出血と診断されたものである。その後、治療を受け回復し、退院している。薬剤との関連について検討したところ、本例の報告のみでは情報不足であり、「因果関係は不明」とされた。
PPA含有医薬品に対する安全対策としては、平成8年10月「塩酸フェニルプロパノールアミン含有医薬品の適正使用について」(医薬品副作用情報No.139)において、服用にあたり注意すべき基礎疾患等、過量服用を防止するための留意点、及び、服用中又は服用後にあらわれた場合に服用を中止し医師又は薬剤師に相談すべき自覚症状等(脳出血の初期段階でもある「激しい頭痛」を含む)について使用上の注意を改訂し、注意喚起を行った。
(4)安全対策
今般、FDAが措置を発表して以降、各国において、PPA含有医薬品についてその使用状況に照らして安全性の検討がなされつつある。例えば、英国医薬品庁(MCA)は、11月8日の医薬品安全性委員会で検討を行い、「関連性は低く、主に英国内で許可されていない適用によるものである」としている。
厚生省においては検討の結果、次の理由から、我が国において鼻炎用内服剤等として使用されているPPA含有医薬品を直ちに販売中止とすることは必要ないものの、米国の研究において、服用量が多い場合に出血性脳卒中の発生リスクが高まる傾向が示されていることを踏まえ、使用上の注意の改訂を行い、定められた用法用量に従い、過量服用をしないことなどの適正使用を徹底することとした。
1)米国の研究において、PPA含有医薬品服用後の出血性脳卒中の発現は、食欲抑制剤として服用された場合に高い関連性が認められたが、我が国では食欲抑制剤としては承認されておらず、また、食欲抑制の目的で使用されている実態もないこと
2)我が国における1日最大服用量は米国より低く定められていること
特に一般用医薬品にあっては、以下の注意事項を消費者に伝え、服薬指導等を徹底することが重要であり、統一的な注意喚起文書を薬局・薬店等に配布するよう関係企業に指示したところであるので、適正な使用の徹底にご留意願いたい。
|
《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
〈一般用医薬品(感冒用剤、鼻炎用内服剤、鎮咳去痰用剤:塩酸フェニルプロパノールアミンを含有する製剤)〉
「してはいけないこと」の項
○次の人は服用しないこと
- 次の診断を受けた人
高血圧、心臓病、甲状腺機能障害 - 脳出血を起こしたことがある人
○過量服用しないこと(外国において、脳出血の危険性が高くなるおそれがあるとの報告がある。)
「相談すること」の項○次の薬剤で治療を受けている人は医師又は薬剤師に相談すること
- モノアミン酸化酵素阻害剤(塩酸セレギリン等)
○次の場合は、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師又は薬剤師に相談すること
(1)服用後、次の症状があらわれた場合
まれに下記の重篤な症状が起こることがあります。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
症状の名称 | 症 状 |
脳出血 | 激しい頭痛、それに伴う悪心・嘔吐、めまい、動悸等があらわれる。外国において、過量服用により脳出血の危険性が高くなるおそれがあるとの報告がある。 |
〈外部の容器又は外部の被包〉
- 「過量服用しないこと」と記載する。
- 1回服用量を目立つように記載する。
〈医療用医薬品(上気道炎治療剤:ダン・リッチ)〉
禁忌(次の患者には投与しないこと)
|
重大な副作用
- 脳出血:脳出血があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。(外国において、過量投与により脳出血の危険性が高くなるおそれがあるとの報告がある。)
過量投与
- 外国において、過量投与により脳出血の危険性が高くなるおそれがあるとの報告がある。
Phenylpropanolamine(PPA)Exposure and Risk of Hemorrhagic Stroke
Cases (n=702) No. % |
Controls (n=1376) No. % |
Unadjusted Matched OR |
Adjusted Estimates1 Matched OR LCL2 p-value |
|
No use3 | 664 94.6% | 1310 95.2% | - | - - - |
Any PPA4 | 27 3.8% | 33 2.4% | 1.67 | 1.49 0.93 .084 |
Cough/cold remedy Appetite suppressant |
22 3.1% 6 0.9% |
32 2.3% 1 0.1% |
1.38 11.98 |
1.23 0.75 .245 15.92 2.04 .013 |
1 Adjusted for smoking, hypertension, race and education.
2 Lower limit of one-sided 95%confidence interval.
3 No PPA use in 2-week period before focal time ; 11 cases and 33 controls used PPA between 2
weeks and 3days before focal time.
4 One female case used PPA in both a cough/cold remedy and appetite suppressant in 3-day window.
Analyses Stratified by Gender;Phenylpropanolamine(PPA)Exposure and Risk of Hemorrhagic Stroke
WOMEN
Cases (n=383) No. % |
Controls (n=750) No. % |
Unadjusted Matched OR |
Adjusted Estimates1 Matched OR LCL2 p-value |
|
No use3 | 355 92.7% | 713 95.1% | - | - - - |
Any PPA4 | 21 5.5% | 20 2.7% | 2.15(p=.014) | 1.98 1.12 .024 |
Cough/cold remedy Appetite suppressant |
16 4.2% 6 1.6% |
19 2.5% 1 0.1% |
1.70(p=.089) 12.19(p=.006) |
1.54 0.85 .116 16.58 2.22 .011 |
MEN
Cases (n=319) No. % |
Controls (n=626) No. % |
Unadjusted Matched OR |
Adjusted Estimates1 OR LCL2 p-value |
||
No use3 | 309 96.9% | 597 95.4% | - | - - - | |
Any PPA4 | 6 1.9% | 13 2.1% | 0.90(p=.529) | 0.62 - .203 | |
Cough/cold remedy Appetite suppressant |
6 1.9% 0 0.0% |
13 2.1% 0 0.0% |
0.90(p=.529) - |
0.62 - .203 - - - |
1 Adjusted for smoking, hypertension, race and education.
2 Lower limit of one-sided 95%confidence interval.
3 No PPA use in 2-week period before focal time.
4 One female case used PPA in both a cough/cold remedy and appetite suppressant in 3-day window.
医薬品・医療用具に関連する医療事故防止対策について
厚生省では、医療事故防止のため、種々の取り組みを進めているが、医薬品、医療用具その他医療現場で使用される製品の名称や容器、仕様について、医療事故を引き起こしにくいものに改めることも防止対策のひとつになるものと考え、これを具体化していくシステムの構築を進めている。
具体的には、これら製品に関連した医療事故事例の情報を医療の現場から幅広く収集し、これらの事例をもとに、医薬品の名称や医療用具の仕様などについて改善できる点はないか検討し、製品の改良を実現していこうとするもので、具体的な検討の場として「医薬品・医療用具等関連医療事故防止対策検討会」を平成12年5月に設置して検討を行っている。
これまでの本検討会での討議内容を踏まえ、医薬品・医療用具に関連する医療事故防止対策として以下の対策を実施することとしたので、情報提供するとともに、これらの対策を医療の現場で医療事故防止に真に役立てていただくようお願いする。
I 医薬品に関連する医療事故防止対策について
- 誤用を招きやすい剤型をした医薬品の注意表示の改善
容器、剤型などから投与方法を誤りやすい以下の薬剤について、注意表示の方法を改善することとした。対象製品については、順次表示ラベルの改善が行われる予定である。
(1)バイアル又はアンプル入り経口剤及び外用剤
バイアル又はアンプル入りの経口剤、外用剤は、注射剤であるとの先入観を与え、また、容器から薬剤を採取するのに注射筒が用いられるため、誤って注射してしまうおそれがあることから、このような誤用を防止するために以下の対策を実施する。
1) 直接の容器に「禁注射」の文字、使用方法又は投与経路を表す文字を記載する(図1)。
図1
2) 注射筒を用いて薬液を採取した後、誤って注射されることがないように、注射筒に貼付可能な「禁注射」の文字を記載したシールを医薬品のパッケージごとに添付する(図2)。
図2
(2)錠剤、カプセル剤等の剤型をした外用剤
錠剤やカプセル剤の剤型をした外用剤は、経口剤であるとの先入観を与えるため、誤飲を招くおそれがあることから、これまでもPTPシートなどの内袋に「飲まないで下さい」などの表示がなされてきたが、注意表示を「のまないこと」の文字に統一し、より目立つように表裏に記載するよう改善を図る(図3記載例1)(図3記載例2)。
図3記載例1
図3記載例2
(3)点眼剤に類似した容器の外用液剤
点眼剤に類似した容器の外用液剤については、誤って点眼されるおそれがあり、これまでも水虫薬の直接の容器に「目には入れない」旨の表示が行われているが、誤用防止対策として、「目には入れない」旨の表示を販売名が記載されている付近に目立つように赤枠内に赤字で記載するよう改善を図る(図4)。
- PTPシート等の内袋への販売名、規格・含量等の明記
医薬品の誤投与を防止するためには、調剤時、投薬時及び患者の服用時に容易に確認できるよう、PTPシートに販売名、規格などが記載されていることが重要であることから、医薬品の内袋であるPTPシートなどに和文販売名、英文販売名、規格・含量等が記載されるよう改善を図る(図5)。
今後承認される品目については、一定のルールに基づく表示が行われる予定であり、既存の製品についても可能なところから順次改善される予定である。
- 誤認されやすい医療用医薬品の販売名の改善
医療用医薬品の販売名については、販売名の一部を省略して記載した場合に、省略された販売名と同一の販売名の医薬品があることが誤投与を招く原因となるおそれがあることから、医薬品の販売名は、ブランド名に剤型及び規格・含量の情報を付記したものとすることを原則として定め、今後承認申請を行うものについてはこれに従い命名することとなる。
例)○○○カプセル25mg
II 医療用具に関連する医療事故防止対策について
- 輸液ラインに接続不可能なシリンジ等の経腸栄養ライン関連製品
経腸栄養ラインに投与されるべき薬剤が誤って輸液ラインに投与されることがないように、経腸栄養ラインの関連製品を輸液ラインとは物理的に接続が不可能な規格とする基準を制定した(図6)。
現在入手可能な製品については別表のとおりであり、今後、順次導入される予定である。
会社名 | 品名 | |
---|---|---|
(1)注射剤以外の液剤の採取、投与等に使用されるシリンジ | 株式会社ジェイ・エム・エス | JMS注入器 |
テルモ株式会社 | テルモシリンジカテーテルチップ型 | |
株式会社ニッショー | ニプロ経腸栄養用シリンジGA | |
(2)薬液採取用針 | 株式会社ジェイ・エム・エス | JMS EN採液針 |
テルモ株式会社 | カテーテルチップ吸引針 | |
(3)経腸栄養ラインの構成品 1)経腸栄養用セット(バッグ、ボトル付含む) |
株式会社ジェイ・エム・エス | JMS経口用イルリガートル |
JMS経口用イルリガートルボトル式 | ||
JMS点滴栄養セット | ||
JMS E. D. ボトル | ||
日本シャーウッド株式会社 | EDバッグ | |
株式会社ニッショー | ニプロEDセットA | |
ニプロ経腸用輸液セット | ||
ニプロCPチャンバーセットE | ||
2)経腸栄養用チューブ/カテーテル (胃瘻用含む) |
アトムメディカル株式会社 | アトム多目的チューブ |
アトム栄養カテーテル | ||
クリエートメディック株式会社 | 胃カテーテル | |
株式会社ジェイ・エム・エス | JMS栄養カテーテル | |
JMS栄養カテーテル(造影剤入り) | ||
JMS EDチューブ | ||
JMS ストマックチューブ | ||
日本シャーウッド株式会社 | ガストロミィ フィーディングチューブ | |
ニューエンテラル フィーディングチューブ | ||
エンテラル フィーディング キット | ||
カンガルーボタン | ||
カンガルーPEGキット | ||
アーガイルPEGキット | ||
テルモ株式会社 | サフィードフィーディングチューブ | |
サフィード胃管カテーテル | ||
株式会社ニッショー | ニプロEVA経腸栄養カテーテル | |
ニプロフィーディングチューブ | ||
株式会社メディコン | ガストロボタン | |
ガストロボタン フィーディングチューブ | ||
バードジェニーシステム | ||
バード ガストロチューブ | ||
バード ガストロミーチューブ | ||
富士システムズ株式会社 | 栄養カテーテル | |
マーゲンゾンデ | ||
日本ゼオン株式会社 | ゼオンENカテーテルE | |
3)延長チューブ | 株式会社ジェイ・エム・エス | JMS栄養点滴セット(EN延長チューブ) |
株式会社ニッショー | ニプロエクステンションチューブ | |
4)三方活栓(分岐管含む) | 株式会社ジェイ・エム・エス | JMS栄養点滴セット(EN Yジョイント) |
日本シャーウッド株式会社 | メディカット ストップコック | |
株式会社ニッショー | ニプロカテーテル用三方活栓 | |
5)キット(上記製品を組み合わせたもの) | 日本シャーウッド株式会社 | エンテラル フィーディングキット |
(1)注射剤以外の液剤の採取、投与等に使用されるシリンジ
注射剤以外の液剤の採取、投与等に使用されるシリンジについて、筒先を注射筒のものより太くし、着色するなどの基準を制定し、通常の注射筒が接続できる輸液ラインには物理的に接続できないシリンジの供給を促す。
なお、本基準に適合するなど、表示、形状、色により、通常の注射用の注射筒と明確に区別できる場合には、薬事法上の承認は不要とし、迅速な提供ができるようにする。
(2)薬液採取用針
バイアル入り経口剤などの採取にあたってはシリンジとともに針が不可欠であるので、以下の条件を満たした薬液採取用針の開発及び供給について積極的に取り組んでいただくことを医療用具の関係業界に依頼した。
1) 注射筒に接続できないこと
2) (1)のシリンジに接続できること
3) 人に容易に刺さらないこと
4) バイアルに刺さること
(3)経腸栄養ラインの構成品
栄養チューブ、三方活栓等経腸栄養ラインを構成する医療用具間の接続部について、(1)のシリンジが接続できる太さのものとする基準を制定し、輸液ラインの接続部とは物理的に明確に異なるものとする。
なお、基準に適合する製品は迅速に承認審査を行い、これら製品の早期供給を図る。
- 輸液ラインの接続部の離脱防止
輸液ラインの離脱による出血などの事故を防止するため、輸液ラインを構成する医療用具の接続部について、ねじ式のロック式接続部とする基準を制定し、離脱防止機能付き製品の普及を図る。
なお、基準に適合する離脱防止機能を新たに付与した製品については、迅速に承認審査を行い、これら製品の早期供給を図る。
〈関連通知〉
- 「医療事故を防止するための医薬品の表示事項及び販売名の取扱いについて」
(平成12年9月19日医薬発第935号)
- 「医療事故を防止するための医療用具に関する基準の制定等について」
(平成12年8月31日医薬発第888号)
- 「医療事故防止に資する医療用具(注射筒型手動式医薬品注入器用針)の開発及び供給の促進について」
(平成12年9月8日医薬審第1049号、医薬安第107号)
使用上の注意の改訂について(その122)
医薬品・医療用具等安全性情報No.162掲載分以降に改訂を指導した使用上の注意等について、改訂内容、主な該当販売名、参考文献等をお知らせいたします。
1 〈インスリン非依存型糖尿病治療剤〉 塩酸ピオグリタゾン |
||
[販 売 名] | アクトス錠15(武田)他 | |
[禁 忌] |
|
|
[慎重投与] | (1)次に掲げる患者又は状態 1)心不全発症のおそれのある心筋梗塞、狭心症、心筋症、高血圧性心疾患等の心疾患のある患者[循環血漿量の増加により心不全を発症させるおそれがある。](「重要な基本的注意」、「重大な副作用」の項参照) |
|
[重要な基本的注意] | (1)循環血漿量の増加によると考えられる浮腫が短期間に発現し、また心不全が増悪あるいは発症することがあるので、下記の点に留意すること。(「禁忌」、「慎重投与」の項参照) 1)心不全の患者及び心不全の既往歴のある患者には投与しないこと。 2)投与中は観察を十分に行い、浮腫、急激な体重増加、心不全症状等がみられた場合には投与中止、ループ利尿剤(フロセミド等)の投与など適切な処置を行うこと。 3)服用中の浮腫、急激な体重増加、症状の変化に注意し、異常がみられた場合には直ちに本剤の服用を中止し、受診するよう患者を指導すること。 (11)心電図異常や心胸比増大があらわれることがあるので、定期的に心電図検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を一時中止するかあるいは減量するなど慎重に投与すること。(「その他の副作用」の項参照) |
|
[副作用 (重大な副作用)] |
2)心不全が増悪あるいは発症することがあるので、投与中は観察を十分に行い、浮腫、急激な体重増加、心不全症状等がみられた場合には投与を中止し、ループ利尿剤等を投与するなど適切な処置を行うこと。特に心不全発症のおそれのある心疾患の患者には注意すること。(「慎重投与」、「重要な基本的注意」の項参照) | |
[副作用 (その他の副作用)] |
2)循環器:心胸比増大、心電図異常(注4) (注4)「重要な基本的注意」(11)参照 |
2 〈解熱消炎鎮痛剤〉 ジクロフェナクナトリウム(経口剤、坐剤) |
||
[販 売 名] | ボルタレン錠、ボルタレンサポ12.5mg(チバガイギー)他 | |
[禁 忌] |
|
|
[その他の注意] | 1)インフルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発症した患者(主として小児)のうち、ジクロフェナクナトリウムを投与された例で予後不良例が多いとする報告がある。 2)インフルエンザ脳炎・脳症例の病理学的検討において脳血管の損傷が認められるとの報告があり、また、ジクロフェナクナトリウムは血管内皮修復に関与するシクロオキシゲナーゼ活性の抑制作用が強いとの報告がある。 |
3 〈ニューキノロン系抗菌剤〉 オフロキサシン(経口剤) |
|
[販 売 名] | タリビッド錠(第一製薬) |
[副作用 (重大な副作用)] |
肝機能障害、黄疸、血小板減少 |
[副作用 (重大な副作用(類薬))] |
レボフロキサシン(類薬)で劇症肝炎が報告されているので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 |
[副作用 (その他の副作用)] |
(血液:血小板減少を削除) |
〈参 考〉 | 企業報告 |
4 〈ニューキノロン系抗菌剤〉 レボフロキサシン(経口剤) |
|
[販 売 名] | クラビット錠(第一製薬)他 |
[副作用 (重大な副作用)] |
肝機能障害、黄疸(劇症肝炎があらわれることがある)、血小板減少 |
[副作用 (その他の副作用)] |
(血液:血小板減少を削除) |
〈参 考〉 | 企業報告 |
5 〈上気道炎治療剤〉 塩酸フェニルプロパノールアミンを含有する製剤 |
||
[販 売 名] | ダン・リッチ(住友) | |
[禁 忌] |
|
|
[副作用 (重大な副作用)] |
脳出血:脳出血があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。(外国において、過量投与により脳出血の危険性が高くなるおそれがあるとの報告がある。) | |
[過量投与] | 外国において、過量投与により脳出血の危険性が高くなるおそれがあるとの報告がある。 |
6 〈一般用医薬品(感冒用剤、鼻炎用内服剤、鎮咳去痰用剤)〉 塩酸フェニルプロパノールアミンを含有する製剤 |
|||||
[してはいけないこと] | ○次の人は服用しないこと
|
||||
[相談すること] | ○次の薬剤で治療を受けている人は医師又は薬剤師に相談すること
(1)服用後、次の症状があらわれた場合 まれに下記の重篤な症状が起こることがあります。その場合は直ちに医師の診療を受けること。
|
7 〈向精神作用性てんかん治療剤、躁状態治療剤〉 カルバマゼピン |
|
[販 売 名] | テグレトール錠100mg(チバガイギー)他 |
[副作用 (重大な副作用)] |
再生不良性貧血、汎血球減少、無顆粒球症、溶血性貧血、赤芽球癆、血小板減少 |
[副作用 (その他の副作用)] |
(血液:血小板減少を削除) |
〈参 考〉 | 企業報告 |
8 〈非ステロイド性消炎鎮痛剤〉 モフェゾラク |
|
[販 売 名] | ジソペイン錠75(ウェルファイド) |
[副作用 (重大な副作用)] |
消化性潰瘍、消化管出血:消化性潰瘍又は吐血、下血、血便等の消化管出血が出現し、それに伴うショックがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、これらの症状があらわれた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。 肝機能障害、黄疸:肝機能障害(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、LDH、Al-P上昇等)、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。 血小板減少:血小板減少があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 |
〈参 考〉 | 企業報告 |
9 〈不整脈用剤〉 塩酸アミオダロン |
|
[販 売 名] | アンカロン錠100(大正製薬) |
[重要な基本的注意] | 循環器:既存の不整脈を重度に悪化させることがあるほか、Torsades de pointes等新たな不整脈を起こすことがある。また、本剤の薬理作用に基づく徐脈(心停止に至る場合もある)、房室ブロック、脚ブロック、QT延長、洞機能不全等があらわれることがある。不整脈の悪化は投与開始初期又は導入期にあらわれることが多いため、入院にて投与開始し、頻回に心電図検査を行うこと。 |
[副作用 (重大な副作用)] |
既存の不整脈の重度の悪化、Torsades de pointes、心不全、徐脈、心停止、完全房室ブロック、血圧低下:既存の不整脈を重度に悪化させることがあるほか、Torsades de pointes、心不全、徐脈、徐脈からの心停止、完全房室ブロック及び血圧低下があらわれることがある。定期的に心電図検査等を行い、異常が認められた場合は、投与を中止する等の適切な処置を行うこと。 |
10 〈α、β-遮断剤〉 カルベジロール |
|
[販 売 名] | アーチスト錠10mg(第一製薬)他 |
[副作用 (重大な副作用)] |
下記の重大な循環器系の副作用があらわれることがあるので、心機能検査(脈拍、血圧、心電図、X線等)を定期的に行い、このような症状があらわれた場合には減量または投与を中止するなど適切な処置を行うこと。 1)高度な徐脈 2)完全房室ブロック 3)心不全 肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。 |
〈参 考〉 | 企業報告 |
11 〈血圧降下剤〉 メシル酸ドキサゾシン |
|
[販 売 名] | カルデナリン錠0.5mg(ファイザー)他 |
[副作用 (重大な副作用)] |
血小板減少:血小板減少があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。 |
〈参 考〉 | 企業報告 |
12 〈高脂血症用剤〉 セリバスタチンナトリウム |
|
[販 売 名] | セルタ錠0.1(武田)、バイコール錠0.1mg(バイエル)他 |
[副作用 (重大な副作用)] |
肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇等を伴う重篤な肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 |
〈参 考〉 | 企業報告 |
13 〈選択的抗トロンビン剤〉 アルガトロバン |
|
[販 売 名] | スロンノン注(第一製薬)、ノバスタン注(三菱東京)他 |
[副作用 (重大な副作用)] |
ショック・アナフィラキシーショック:ショック、アナフィラキシーショック(蕁麻疹、血圧低下、呼吸困難等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。 |
〈参 考〉 | 企業報告 |
14 〈H2受容体拮抗剤〉 塩酸ラニチジン |
|
[販 売 名] | ザンタック錠75(グラクソ・ウエルカム)他 |
[副作用 (重大な副作用)] |
汎血球減少(骨髄形成不全を伴うこともある)、無顆粒球症、血小板減少があらわれることがあるので、初期症状として全身けん怠感、脱力、皮下・粘膜下出血、発熱等がみられたら、その時点で血液検査を実施し、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し適切な処置を行うこと。 肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの上昇を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止すること。 横紋筋融解症:筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止すること。 |
[副作用 (重大な副作用(類薬))] |
他のH2受容体拮抗剤で、間質性腎炎、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)、再生不良性貧血、房室ブロック等の心ブロックがあらわれたとの報告がある。 |
〈参 考〉 | 企業報告 |
15 〈止血剤〉 オレイン酸モノエタノールアミン |
|
[販 売 名] | オルダミン注射用(富士化学) |
[副作用 (重大な副作用)] |
胃潰瘍:重篤な胃潰瘍(巨大胃潰瘍)があらわれることがあるので、患者の状態を十分に観察するとともに、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。 |
〈参 考〉 | 企業報告 |
16 〈痛風治療剤〉 アロプリノール |
|
[販 売 名] | ザイロリック錠(グラクソ・ウエルカム)他 |
[重要な基本的注意] | 本剤の投与により皮膚症状又は過敏症状が発現し、重篤な症状に至ることがあるので、発熱、発疹等が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。(「重大な副作用」の項参照) |
[副作用 (重大な副作用)] |
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)、剥脱性皮膚炎等の重篤な発疹又は過敏性血管炎があらわれることがあり、皮膚剥脱、発熱、リンパ節症、関節痛、肝障害、腎機能異常、好酸球増多等を伴うこともある。特に肝障害又は腎機能異常を伴うときは、重篤な転帰をたどることがある。従って、発熱、発疹等が認められた場合には直ちに投与を中止し、再投与しないこと。また、ステロイド剤の投与等適切な処置を行うこと。 ショック、アナフィラキシー様症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 重篤な肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し適切な処置を行うこと。 (発熱、発疹に引き続き肝障害、腎機能異常等が認められ、さらに皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)等の重篤な発疹があらわれることがあるので、発熱、発疹等が認められた場合には、直ちに投与を中止し、再投与しないこと。 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)、剥脱性皮膚炎があらわれることがあるので、発熱、発疹等が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。 発熱、悪寒、頻脈、皮疹、白血球増多、肝障害、腎機能異常等を伴う過敏性血管炎があらわれることがあるので、発熱、発疹等が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。を削除) |
[副作用 (その他の副作用)] |
(肝臓:黄疸、肝障害を削除) |
〈参 考〉 | 企業報告 |
17 〈抗悪性腫瘍代謝拮抗剤〉 カルモフール |
|
[販 売 名] | ヤマフール錠(山之内)、ミフロール錠(三井)他 |
[副作用 (重大な副作用)] |
肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、Al-Pの上昇等を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 間質性肺炎:間質性肺炎があらわれることがあるので発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸症状があらわれた場合には、速やかに胸部X線等の検査を実施し、異常が認められた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。 |
[副作用 (重大な副作用(類薬))] |
テガフール製剤等にて劇症肝炎、肝硬変、心室性頻拍、急性膵炎、ネフローゼ症候群、嗅覚脱失があらわれることが報告されているので、観察を十分に行い、異常が認められた場合は投与を中止し、適切な処置を行うこと。 |
〈参 考〉 | 企業報告 |
18 〈抗悪性腫瘍・ビスジオキソピペラジン誘導体〉 ソブゾキサン |
||
[販 売 名] | ペラゾリン細粒(全薬) | |
[禁 忌] |
|
|
[重要な基本的注意] | 骨髄抑制等の重篤な副作用が起こることがあり、致命的な経過をたどることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には、減量、休薬等の適切な処置を行うこと。また、これらの副作用は使用が長期間にわたると遷延性に推移することがあるので、投与は慎重に行うこと。 他の抗悪性腫瘍剤、放射線照射を併用する場合には、骨髄抑制等の副作用が増悪することがあるので、患者の状態を観察しながら、減量するなど慎重に投与すること。(「相互作用」の項参照) |
|
[相互作用 (併用注意)] |
抗悪性腫瘍剤、放射線照射[併用により骨髄抑制等の副作用が増強することがある。副作用が増強した場合には、減量、休薬等の適切な処置を行うこと。] | |
[副作用 (重大な副作用)] |
汎血球減少、白血球減少、好中球減少、血小板減少、貧血:このような副作用が発現した場合には、減量、休薬等の適切な処置を行うこと。 | |
〈参 考〉 | 企業報告 |
19 〈前立腺癌治療剤〉 ビカルタミド |
|
[販 売 名] | カソデックス錠(アストラゼネカ) |
[副作用 (重大な副作用)] |
本剤により重度肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査の実施を考慮し、観察を十分に行うこと。また、臨床的に重度と考えられる異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 |
20 〈アレルギー性疾患治療剤〉 塩酸セチリジン |
|
[販 売 名] | ジルテック錠5(UCB)他 |
[副作用 (重大な副作用)] |
肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、LDH、Al-Pの上昇等の肝機能障害(初期症状:全身倦怠感、食欲不振、発熱、嘔気等)、黄疸があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 |
〈参 考〉 | 企業報告 |
21 〈ペネム系抗生物質〉 ファロペネムナトリウム |
|
[販 売 名] | ファロム錠150mg(サントリー)他 |
[副作用 (重大な副作用)] |
ショック、アナフィラキシー様症状:ショック、アナフィラキシー様症状を起こすことがあるので、観察を十分に行い、不快感、口内異常感、喘鳴、呼吸困難、眩暈、便意、耳鳴、発汗、全身潮紅、血管浮腫、血圧低下等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 間質性肺炎:発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常等を伴う間質性肺炎があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。 肝機能障害、黄疸:AST(GOT)・ALT(GPT)・Al-P等の上昇、黄疸があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 |
[副作用 (重大な副作用(類薬))] |
PIE症候群:類似化合物(セフェム系又はカルバペネム系薬剤等)で、発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常、好酸球増多等を伴うPIE症候群があらわれることが報告されているので、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。 |
〈参 考〉 | 企業報告 |
22 〈消化管運動賦活調整剤〉 シサプリド |
|
[販 売 名] | アセナリン錠(ヤンセン協和)、リサモール錠(ウェルファイド)他 |
[供 給] | 出荷の一時停止 |
〈参 考〉 | 企業情報 |
23 〈X線造影剤〉 アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン、アミドトリゾ酸メグルミン、イオタラム酸ナトリウム、イオタラム酸メグルミン |
|
[販 売 名] | ウログラフィン60%(日本シエーリング)他 アンギオグラフィン(日本シエーリング) アンギオコンレイ注(第一製薬)他 コンレイ注(第一製薬)他 |
[効能・効果] | 血管内投与に係る適用(静脈性尿路撮影、脳血管撮影、血管心臓撮影(肺血管撮影を含む)、大動脈撮影等)の削除 |
〈参 考〉 | 企業情報 |
お知らせ NTTのファクシミリ通信網サービス「Fネット」を通じ、最近1年間の「医薬品等安全性情報」「医薬品・医療用具等安全性情報」がお手元のファクシミリから随時入手できます(利用者負担)。 「Fネット」への加入等についての問い合わせ先:0120-161-011 なお、医薬品情報提供ホームページ(http://www.pharmasys.gr.jp/)又は厚生省ホームページ(http://www.mhw.go.jp)からも入手可能です。 |