独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

第13回医薬品・医療機器等対策部会 別添1

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第13回医薬品・医療機器等対策部会

 医薬品の製造販売業者による対策が必要又は可能と考えられたヒヤリ・ハット事例(プレフィルドシリンジ関連)
 
  事例の内容 背景・要因 誤り又は影響を
与えた医薬品名
検討内容
1 当院では、モルヒネ製剤をアンプルからプレフィルドタイプに変更し、専用微量ポン プを使用して注入する態勢を整えた。 2ヶ月後、専用微量ポンプでプレペノン(塩酸モルヒネのプレフィルドタイプ)を三方活栓から点滴静注で使用していた肺がん末期の患者で、12時間で注入す る設定になっていたのに、2時間で全量注入されてしまった事実が判明した。 プレペノンの微量ポンプへの装着に問題はなく、空のプレペノンを使用した事態ではない事も確認できた。使用されていたプレペノンをよく観察すると、シリン ジ内筒の先端のゴム製部と内筒が分離していることが判明した。 即ち、微量ポンプは設定通りに作動しており、内筒は2時間相当の位置に存在していたにも拘わらず、内筒先端のゴム製部分が内筒から分離し、外筒先端まで移 動して薬液は全量注入状態になっていた。

 新しいプレペノンを微量ポンプに装着する際に、エアーが混入する場合があるので、使用前にエアーを抜いて装着するように、病院内のマニュアル が定められており、今回の患者の場合にもこのマニュアル通りに装着前にエアーを抜いていたが、その時点では、シリンジ内筒と先端ゴム部分は分離していな かった。 なお、点滴刺入部位と微量ポンプの位置は、50~60cmの落差があった。 また、シリンジをポンプへ装着・設定する時は確認をしている。発見時、患者の状態に著変は認めなかったが、予定量の6倍量が注入された可能性があるため に、一時的にプレペノンの注入量を減量した。 その後、患者の疼痛の訴えがあったので、注入量を漸増していった。 プレペノン業者の説明では、プレフィルド製剤を製造過程で、内筒先端のゴム部分は薬剤を外筒に注入した後の蓋の役割をしており、内筒は薬液注入後にゴム部 分と接続される。この接続は、簡単なねじ込み式になっており、強固な接続にはなっていない。

 従って、わずかな外力(ねじれ、引く力)で、簡単に分離されるという事であった。 実際に、空のプレペノンシリンジで試してみると、製品によって多少の差はあるが、内筒と先端ゴム部分は簡単に分離した。
当院では、モルヒネ製剤をアンプルからプレフィルドタイプに変更し、専用微量ポン プを使用して注入する態勢を整えた。この時、業者からの説明を受けている。 当院の医療機器の保守・管理は臨床工学科にて施行している。 プレペノンの微量ポンプへの装着に問題はなく、空のプレペノンを使用した事態ではない事も確認できた。 使用されていたプレペノンをよく観察すると、シリンジ内筒の先端のゴム製部と内筒が分離していることが判明した。 即ち、微量ポンプは設定通りに作動しており、内筒は2時間相当の位置に存在していたにも拘わらず、内筒先端のゴム製部分が内筒から分離し、外筒先端まで移 動して薬液は全量注入状態になっていた。

新しいプレペノンを微量ポンプに装着する際に、エアーが混入する場合があるので、使用前にエアーを抜いて装着するように、病院内のマニュアルが定められて おり、今回の患者の場合にもこのマニュアル通りに装着前にエアーを抜いていたが、その時点では、シリンジ内筒と先端ゴム部分は分離していなかった。 なお、点滴刺入部位と微量ポンプの位置は、50~60cmの落差があった。内筒は予定どおりの位置に固定されていたのでアラームは鳴らなかった。 
プレペノン1%注シリンジ  当該プレフィルドシリンジを製造販売している企業によると、プレフィ ルドシリンジは通常のシリンジと異なり、製造上の制限から内筒は先端のゴムのガスケットにねじ込まれているので、反時計回りに回すと外れることがあるとの ことであった。 企業は本事例を把握(第5回報告書で公表)したことから、添付文書の取扱い上の注意を改訂し、エア抜きの際等に押し子を回さないように注意喚起を開始し た。
 また,平成18年3月にガスケットと押し子(プランジャー)の部分を接着剤により接着する方法への製品変更申請を行い、平成19年1月より変 更した製品の製造を開始し、回してもはずれない構造に改善を行っている。

 また,当該製品に限らず、ねじ式構造によりガスケットとプランジャーが接続されているプレフィルドシリンジには同様の事象が発生する可能性が 否定できないため、ヒヤリ・ハット検討会では,関係製造販売業者と対策を検討する必要性が示唆され,現在総合機構においてシリンジポンプに装着して使用す るプレフィルドシリンジ製造販売企業等対し、同様事象の発生の有無や、類似クレーム等の調査を実施し,ヒアリングを行うこととした。 調査結果やヒアリングでの問題点を分析し、プレフィルドシリンジの識別性の対策とも併せて,総合的なプレフィルドシリンジに対する安全対策を協議していく 予定である。

 医薬品の製造販売業者による対策が必要又は可能と考えられたヒヤリ・ハット事例(インスリン関連)
 
  事例の内容 背景・要因 誤り又は
影響を
与えた
医薬品名
検討内容
1 外来処方箋にて、ノボリン30R注フレックスペン300単位 1瓶のところ、、ノボリンR フレックスペンを渡してしまった。業務が忙しく、確認不十分で、規格に○印をつけることなく調剤してしまった。患者はいつもと違うことに気が付いていたよ うだが、大丈夫だろうと思って帰り、2回投与した。2日後に当院に透析で来院された際、看護師が過誤に気付いた。30Rに比較して、Rはより速効性のた め、低血糖が起こる可能性があった。 糖尿病薬の調剤は、従来より最も注意を払っている部類であり、他の薬剤師がいれば確認してもらい、一人の時は何度も確認していた。当 日は業務開始より休みなく働いており、早く調剤をしてしまいたい気持ちが先立ってしまった。Rとフレックスペンが同じだったので○印を付けず、それで安心 してしまった。又、事故発生前に、注射処方箋のプリンターが30分位作動せず、臨時注射薬について病棟からの問い合わせに処方箋をめくったり、1階と2階 のフロアを何度も行き来したことも影響があったと思われる。 ノボリンRフレックスペン
インスリン製剤には、ヒトインスリン製剤とインスリンアナログ製剤があり、それぞれについて、カートリッジ製剤とプレフィルド(キット)製剤及びバイアル 製剤がある。またインスリン製剤は、その多くが同一成分同一含量でありながら、その作用が速効型、その中間型ならびにその比率を変化させたシリーズ製剤と なっている。インスリン独特のローマ字表示「R」「N」の意味の解釈や、名称上の数値表記の単位が示されていないため、濃度表示なのか、全量表示なのか現 行のインスリン製剤のネーミングは解釈のばらつきを引き起こす可能性がある。                                                              インスリン製造販売企業と面会を行い,企業に対しても名称がまぎらわしい等の苦情が医療機関から寄せられていることから、現在企業間でインスリン製剤の販 売名等について,取り間違えに対する対策として可能な点を検討中である。また,販売名を変更するには,平成12年9月19日付医薬発第935号通知の別添 5に則ることとなるが,インスリンが糖尿病専門病棟のみならず広く処方されることや,患者が直接個人で使用する実態も踏まえ、誤処方・誤使用を避けるた め、インスリン製剤の販売名をネーミングするルールについて,関係企業各社ならびに医療関係者等と十分話し合い調整を行う予定である。
 
2 ノボラピッド30ミックス注300単位-3ml、6バイアル(カートリッジ製品)を取り揃えるべきところ、ノボラピッド30ミックス フレックスペン(インスリンカートリッジが注入器にセットされた製剤)6本を取り揃えてしまった。 カートリッジ製品よりも、プレフィルド製品が処方される頻度が高いための思い込み。ノボラピッド注300単位-3ml、ノボラピッド 300フレックスペンという製品もあり、間違いを誘発しやすい。 ノボラピッド30ミックスフレックスペン

 医薬品の製造販売業者による対策が必要又は可能と考えられたヒヤリ・ハット事例(その他の医薬品)
 
  事例の内容 背景・要因 誤り又は
影響を
与えた
医薬品名
検討内容
1 前病棟にてオリベスKを開始。転棟後、午前中にオリベスKを交換。翌日の午前中に輸液ポンプの気泡混入アラームが鳴った為、訪室する と、輸液ルートがつぶれており、気泡が多量に混入している状態で発見した。よく見るとエア針が入っていなかった。積算量と実際に入った量にかなりの誤差が あった。 薬剤ボトル交換時にエア針を刺し忘れた。その後の検温や巡視などでもエア針がないことが発見されなかった。 オリベスK点滴用1%(販売終了) オリベスKはエア針が必要なガラス瓶からバッグ製剤「オベリス点滴用1%」に変更になった。
2 医師が顔面神経麻痺の患者に対してソルコーテフ(ステロイド)を点滴入力する際、アンプルの100mgと500mgを間違え、 300mgと入力すべきところを1500mgと入力してしまった。看護師が約600mg投与したところで中止した。患者には点滴の内容を変えると話した。 結果として明らかな副作用はなかった。 医師・看護師の確認不十分、連携不足。 ソル・コーテフ500 今回の事象はオーダリングシステムの入力ミスの事例と推察される。本事例の直接的対策とはならないが、変則的な販売名であるソル・ コーテフ、ソルコーテフ250、ソル・コーテフ500、ソル・コーテフ1000とは、平成12年9月19日付医薬発第935号通知別添5に従った措置が必 要であり、現在メーカーは名称変更の予定で準備を進めている。
3 FFP(新鮮凍結血漿)2単位を解凍する予定で、手洗い用のシンクにぬるま湯を入れた桶を置いていた。解凍できた頃に確認したとこ ろ、桶の湯が熱くなっていた。当直科長と主治医に報告し、FFPを確認してもらうがFFPのパック内で凝固し使用できなくなり、在庫のFFP2単位を解凍 し使用した。他のチームやスタッフに確認したが湯は使用していなかった。 FFPを解凍していた場所は手洗いと同じである。解凍に一定の温度で解凍できる条件でない。解凍できる時間までの途中の状況を確かめ ていなかった。 新鮮凍結血漿 添付文書に「容器のまま30~37℃で融解し、融解後3時間以内にろ過装置を具備した輸血用器具を用いて、静脈内に必要量を輸注す る。」「不適切な加温  不適切な加温により蛋白変性を起こすことがあるので取扱いに注意すること。」と記載がある。また、日本赤十字社のホームページにも具体的解凍の方法等の 情報が掲載されている。
4 不眠の訴えあり。指示のアタラックスPを静脈注射で施行しようとし、シリンジ内へ本体のアミノトリパ2号を引くと、白濁し、施行を中 止した。 配合変化をおこした可能性があった。薬剤師に問い合わせメーカーに聞いてもらったが、メーカーの配合変化の情報には載ってないとのこ とであった。 アタラックス-P25mg
アミノトリパ2号
メーカーの配合変化情報に追加を依頼し、情報提供出来るよう両メーカーに対応を依頼した。

◎ 医療機器の製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられたヒヤリ・ハット事例(人工呼吸器関連)
 
    事例の内容 背景・要因 関与した機器の種類 検討内容
1 電源に関する事例 人工呼吸器(モデルHT50)で内部バッテリーを稼働して使用していた。内部バッテリーの残量は使用前が95%で、2時間後は25% であった。本来内部バッテリーの使用時間は10時間と説明書に記載されているが、予想以上に急速にバッテリーが減少した。患者に影響はなかった。 ・ 医療器械の保守・管理に課題がある。 人工呼吸器  今後作成される予定のJIS規格ではバッテリーの充電不足を3段階のアラーム で、徐々に警告のレベルをあげていくことが基準となる予定であるが、平成13年7月30日厚生労働省告示第264号により人工呼吸器警報基準が制定され, 平成14年8月1日以降は人工呼吸器警報基準に適合しないものは販売,製造,輸入等が禁止されたが,これ以前から使用している機種の場合、アラームの鳴り 方は様々であり、また当該告示においても、バッテリーに切り替わった際のアラームについては規定されていない。

  新しい機種においては内部バッテリーに切り替わる際にはアラームが鳴るものがすでに市場にあるが、以前として旧機種のものを使用している場合もある。この ように、新旧複数の機種が併存する医療現場において注意喚起を促すため、バッテリー切り替わり時にアラームが鳴らない機種には、「注意:AC電源が抜けて も、非常用電源の内臓バッテリーが自然に駆動し、アラームが鳴りません」といった趣旨のステッカー等を人工呼吸器本体に貼付してはどうか等、ヒヤリ・ハッ ト検討会では対策案が議論され,現在業界で検討中である。 また、医療従事者の保守・管理等の安全使用に対しては,今春の医療法施行規則の改正により、医療機関の管理者は医薬品及び医療機器に係る安全管理のための 体制の確保が規定される予定である。         

 よって,従来の上記のような現場のエンドユーザーへの直接的な情報提供に加え、内臓バッテリーの搭載目的を例えば、非常用電源のみ、非常用電 源+外部バッテリーとの併用により院内の移送を想定したもの、その他等、バッテリー搭載の目的別に、機種名を整理した一覧表を作成し、医療安全管理者に対 し情報提供を行うことで、人工呼吸器の適正使用推進に有効な活用ができると考えられる。よって、現在人工呼吸器業界の協力を得て具体的な対策内容を検討し ているところである。
2 呼吸器装着であり、酸素を2L/分で送気されていた患者を車椅子よりベッドへ移動した。2時間30分後、夜勤看護師が呼吸器のコンセ ントが入っておらず、内部バッテリーで呼吸器が動作していることに気が付いた。 ・ 酸素の送気を確保することばかりに注意を払っていた。
・ 介助者間での声掛けによるコミュニケーションがなかった。
・ 移動後の、最終的な呼吸器の点検を行っていなかった。
人工呼吸器
3 車椅子に呼吸器を搭載していたが、2時間後に接続されているはずの外部バッテリーが接続されていないことを発見した。 ・ 呼吸器のセットが終わっていない状態で、同室者に移動介助対象者が1名おり、そちらの対応を行ったために意識がそれてしまった。
・ 看護師同士の声掛けによるコミュニケーションがなかった。
・ 再確認していない。ダブルチェックを忘れていた。
人工呼吸器
4 回路に関する事例 人工呼吸器の加温加湿モジュールへの給水時、蛇管と蛇管とを接続して行ったが、作業終了後、蛇管をモジュールへ接続するのを忘れた。 ・ 作業終了後の確認を怠った 加温加湿器   平成16年11月26日付薬食審査発第1126009号薬食安発第 1126001号厚生労働省医薬食品局審査監理課長及び安全対策課長連名通知の「加温加湿器の使用上の注意改訂について」において、加温加湿器の給水用 ポートの使用の徹底を図るため、各製造販売業者を通じて医療従事者へ情報提供を行う等の対策がとられている。

  加温加湿器は、加温加湿器チャンバーに蒸留水を充填し、加温することにより人工呼吸器による送気ガスを加温加湿する医療機器であり、加温加湿器の注水部の 構造は,人工呼吸回路に接続するための2つのポート(以下、「ガスポート」という)の他に、小さな給水用のポート(以下、「給水用ポートという)がある。 この給水用ポートは、通常専用の給水チューブに接続し、蒸留水を充填するように設計されているが,実際の医療現場においては人工呼吸回路に接続するための ガスポートから人工呼吸回路を外し、蒸留水を注ぐことが多いとされている。人工呼吸回路を外している間、人工呼吸回路が開放されているが、人工呼吸器の警 報が感知する時間よりも短い時間で給水するか、あるいは給水中人工呼吸回路をバイパスし、シャント接続しておくことがある。 当該医療機器を使用する患者の安全を確保するため、今回のような加温加湿器の給水用ポートの誤使用の事例や滅菌蒸留水以外のものを注入する事例について は、医療機関における適正使用を確保するため再度注意喚起を行う必要がある。

 よって、過去に加温加湿器の使用方法に関して製造販売業者が行った注意喚起を集約し、総合機構HPや医療関係団体HPに掲載し情報提供を行っ ていく予定である。また、人工呼吸器の回路の一部として加温加湿器を正しく認識し、適切に接続していただくための視認性の高い簡易手引き書を人工呼吸器委 員会で作成し、呼吸器本体に常に付帯させられるような形で情報提供していくことについても現在検討中である。
5 患者の人工呼吸器の回路にネブライザーを接続する ために回路を一通り確認した。その時加湿器の水が減っていることを確認し、追加するために吸気側チューブを外した。チューブの中には加温コードが入ってお り、チューブを接続する時、加温コードが少しはみ出していたが気が付かず、はみ出したまま接続していた。そのためエアー漏れを生じ、約1時間後に医師が SpO2は96%、1回換気量、分時換気量の低下を発見した。MEの機器点検によりチューブ接続部からのエアー漏れが原因であることが分かったが、人工呼 吸器のアラームは鳴らなかった。患者の状態は変わらず、安全確認のための検査等はされなかった。 ・ チューブ接続時に患者の状態観察や人工呼吸器チェックリストに添って設定、作動の確認を怠った。
・ 2時間毎の人工呼吸器に関連した観察は、チェックリストに基づいて行うように業務手順がある。
・ その他の処置を行った後は、チェックリストに基づいて行うという認識が薄かった。
・ 7時の時間帯は業務多忙のためあせりがあり、確認不足であった。
・ 人工呼吸器のアラームを過信していた。
加温加湿器
6 加温加湿器に関する事例 準夜で人工呼吸器を後始末しようとしたところ、モニターのカゴの中に使いかけ状態の2%のボール水(残190ml)のビンが入ってい るのを確認した。人工呼吸器には通常滅菌水が使用されているが、滅菌水の棚にボール水500mlのビンが1本置かれていた。この事実より人工呼吸器の加湿 用として2%のボール水が使用された可能性がある。 ・ ボール水は冷蔵庫の中で定位置であることは、助手達も理解されている。
・ 滅菌水もボール水も同じように上がってくるため、定位置に置く段階で誤って置いてしまった。滅菌水が置かれている棚に20本ほどあり、確認せず持っていっ て使用していた。確認が不足していた。
・ 滅菌水は人工呼吸器の上、モニターのカゴの中、床頭台の上など定位置がきまっていない。
加温加湿器
7 人工呼吸器使用中、加湿器に注水後、気道内圧値が低値になったが、酸素飽和度、バイタルサイン等に影響はなかった。看護師は気道内圧 低値の原因を探すことができずに医師に相談したところ、そのまま様子観察するとの指示であった。約9時間後、加湿器に注水する際、回路(インビーダンスバ ルブ)が上下、逆接続であることを発見した。直ちに正しい位置に接続したところ、患者の気道内圧は元の値に戻った。結果として、患者への身体的障害はな かったものの、この間、目的の呼吸管理が行われなかったことになる。長時間、発見されないと徐々に患者への呼吸状態悪化という影響が出た可能性がある。 ・ 原因は、加湿器注水後の回路誤接続の可能性が高い。
・ 通常、誤接続防止のため回路に色識別表示を行っていたが、今回使用された回路の識別が薄れていたため、誤って接続したと思われる。
・ 呼吸器回路の消毒、使用点検時に色識別薄れがあったにも関わらず、そのことを訂正しようとしていなかったことも重要な問題である。
・ また、回路交換後に呼吸器作動状況点検を確実にしていなかった。また、医師に報告相談したが、医師も適切な対応をしていない。
・ そのため、原因追求が遅れ発見に時間を要している。看護師の知識不足と医師の重要性認識の問題もある。
呼吸回路
加温加湿器
8 在宅人工呼吸器装着した患者の緊急入院の際、自宅より持ち込まれた人工呼吸器の加湿器に蒸留水を入れるところ、誤って5%ブドウ糖を 入れた。10時間後に発見、患者に異常はなかった。 ・ 緊急入院で早く呼吸器を装着しなければならないと思い慌てて、近いところにあった容器を取りラベルを確認しなかった。
・ 蒸留水と5%ブドウ糖はどちらも院内で精製されたもので、ラベルの色は異なるが同じ形態の容器に入っていた。
・ 病棟での収納場所は別にしてあった。
・ 当院では数年前に使用中止となったタイプの加湿器であった。投与時に最終確認を怠った。
加温加湿器

◎ 医療機器の製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられたヒヤリ・ハット事例(経管栄養チューブ関連)
 
 
 
事例の内容 背景・要因 関与した機器の種類 検討内容
1


養チ


ブの栄養剤等の注入に関する事例

手術当日の患者でプロポフォールで鎮静をし、浅眠中であった。経鼻栄養チューブより内服薬を注入したが、白湯でフッシュする際閉塞した。チューブを抜去 し、再挿入した。患者には食道静脈瘤があり出血はしなかったが出血のリスクがあった。
内服薬が完全に溶解したことを確認せず注入した。 栄養用滅菌済みチューブ及びカテーテル 経腸栄養チューブ等の事例についての対策としては、 誤挿入を防止するための使用上の注意  スタイレット付きチューブのスタイレットの取扱いに係る使用上の注意  詰まり予防のためのフラッシュの方法及び詰まり発生時のトラブルシューティングの注意 について,ヒヤリ・ハット検討会の検討をふまえ,チューブ製造販売関係業界とチューブ使用に際しての適正使用を盛り込んだ業界統一の添付文書改訂による注 意喚起行うよう対応を検討中である。

  また,薬剤の粉砕投与による詰まり事例が多いことから、チューブによる投与が可能な薬剤の剤型の開発を医薬品製造販売業者に要望するとともに,薬理作用上 粉砕してチューブを通して経腸投与された際,吸収部位等や製剤構造上の問題で薬効の期待できない医薬品も投与されている可能性があることから、日本製薬団 体連合会と協力し「胃を通過しなければ薬効を期待できない薬」について調査を実施し,医療関係者に医薬品の適正使用に関する医薬品情報の提供も併せて行っ ていく予定である。
2
経鼻栄養チューブ挿入中の患者の与薬時、カテーテルチップに薬剤が吸ってあったため、注入するよう患者の担当をしていた新卒看護師に言った。新卒看護師は カテーテルチップに吸い上げた薬剤をそのまま注入したが、途中でチューブが閉塞し、再挿入となった。
注射器に薬剤を吸い上げ30分以上が経過していた。注入直前に薬剤を溶解していない。溶解し時間が経つことで、薬剤の粘性がでること を知らなかった。夜勤の申し送り後に与薬ができていなかったため焦ってしまった。上記内容を経験の少ない新卒看護師に対して確認ができていなかった。 栄養用滅菌済みチューブ及びカテーテル
3 胃瘻の栄養剤の注入に関する事例
 
前日深夜でも閉塞し、解除した。腸瘻からの経管栄養がクリニミールからラコールへ変更となり、注入を行った。朝分のラコールを終了 後、白湯が滴下できず、一旦解除するが速度が遅くなり、閉塞、透視下にて閉塞を解除した。 閉塞した際、ルート全域を観察せず、ラコールの残渣がルート内にある状態で開通したのみで白湯を注入し、結果として、ルート内のラ コールの残渣が完全閉塞の原因となったと考えられる。経腸栄養剤による凝固が原因であった。 栄養用滅菌済みチューブ及びカテーテル
4 経腸栄養24時間持続投与中の患者。栄養剤がルートの内筒にこびりつきやすいため閉塞し、漏れ防止のためプランニングされていた。当 日薬剤注入し、白湯で流そうとしたところ抵抗が強く、全く注入できなくなってしまった。透視下で開通された。 クリニミール2液は24時間持続投与では固まりやすく、閉塞や漏れへの対処はされていたと考えられる。しかし、医師とそのことについ てのやりとりはなされていなかった。 栄養用滅菌済みチューブ及びカテーテル
5 腸瘻の閉塞があった。原因は経腸栄養剤のタンパク凝固が考えられる。透視下でのガイドワイヤーにて閉塞を除去した。 脂肪を入れたかったため栄養剤をエレンタールからクリニミールへ変更した。クリニミールがタンパク凝固しやすいことを知らなかった。 栄養用滅菌済みチューブ及びカテーテル
6 カリーメートを注入中、腸瘻チューブが詰まった(マレーコカテーテル)。 溶解しにくい薬剤(カリメート30g分3)
が投与されており、チューブが詰まる要因になったと考える。100ml以上で溶かしていたが、実施者は50ml位でよいと考えた。
栄養用滅菌済みチューブ及びカテーテル

◎ 医療機器の製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられたヒヤリ・ハット事例(その他の医療機器関連)
 
  事例の内容 背景・要因 関与した機器の種類 検討内容
1 胸腔ドレーン持続吸引を開始した。開始時よりリークが点滅していた。胸部レントゲンにて他 の部位にも気胸あり、リークがあるのではということで経過をみていた。その後、排液バックとドレーンの接続部位の緩みに気付いた。呼吸器病棟に電話をし確 認したが、同様に接続していると言われ、その時点でもアダプターをつけて接続するという事に気付かなかった。テープを接続部で固定し一時吸引圧が上昇、 SPO2も60%代から90%以上に上昇した。日勤にて再びリークアラームが鳴っているため、他の看護師が訪室し、アダプター使用がされていないのが原因 とわかり接続した。胸腔ドレーン挿入時にアダプターがついてきたにもかかわらず、気付かなかった。 接続部より気胸によるものと思っていた。メラバック変更のお知らせが配布されていたが、読んでいなかった。 排液バック
カテーテルコネクタ
当該ドレーン及びチューブは、接続部の規格変更が行われた際に、旧製品でも接続できるアダプターを添付したが、その存在について周知 が十分ではなく、誤接続が多発したため自主回収が行われた。対策済み。
2 胃瘻チューブ(カンガルーボタン)交換のため、オプチュレーターを挿入してバンパーを伸展させようとしたところ、ポキッと小さな音が して、その後抵抗がなくなった(抜去不能となった)。レントゲン透視下でバンパーの状態を確認しながら、ネラトンチューブ内にゾンデを入れた物を、オプ チュレーター代わりに胃瘻チューブへ挿入し抜去した。出血は軽度であった。 胃瘻チューブの不具合。 栄養用滅菌済みチューブ及びカテーテル 当該胃瘻用ボタンは長期使用目的のものであるが、使用中に材質のウレタン樹脂の劣化が起こったか、バンパーを強く伸展させすぎたもの と思われる。当該事例では約150日留置されていたことがわかっており、製造販売業者は4ヶ月を目安に交換するよう添付文書の改訂を行っており、対応済 み。
3 定時のオムツ交換時に、下腹部上に、PEG(胃瘻)が抜けているのを発見。チューブのバルーン部は、蒸留水がなく、バルーン部分が破 れた状態。発見30分前は、異常はなかった。発見後、直ちに、PEGを挿入し、交換後、胃液の逆流を確認。注入時は、要観察を行うが、異常なく経過した。 PEG:ネオフィード、ガストロストミーチューブ20Fr、20ml。 18日前に、PEG交換を実施(交換目安1ヶ月)。4日前には、バルーン水(蒸留水)の確認と蒸留水(18ml)入れ換えを行ってい た。製品メーカに提示後、製造工程中の製品の取り扱い時の傷等が発生したとの回答があった。同一患者の場合、胃酸の影響によりバルーン表面が劣化する。 栄養用滅菌済みチューブ及びカテーテル 当該胃瘻チューブのバンパーバルーンは10mLが推奨容量となっており、最大容量(20mL)に近いバルーン水が入れられていたこと がわかっている。このため、材質劣化により、早めに破裂したものと思われる。製造販売業者は、バルーンへの注入量を最大容量ではなく推奨容量で行うよう添 付文書を改訂しており、対策済み。