独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

平成18年度 厚生労働省 第12回医薬品・医療機器等対策部会 別添1

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第12回医薬品・医療機器等対策部会

◎ 医薬品の製造販売業者による対策が必要又は可能と考えられたヒヤリ・ハット事例

 

具体的内容

背景・要因

誤り又は影響を与えた薬剤

検討結果

1

麻酔導入のために、筋弛緩薬を投与する過程で、溶解 すべき薬剤を入れ忘れ、液体(溶媒)のみを静脈注射した。麻酔の効果が現れないことから誤りに気づいた。

  • 新人等の院内事故防止教育の問題点。
  • 業務手順・ルール、チェックの仕組みの問題点。

不明

薬剤名の記載がないが、溶解液が添付される筋弛緩薬としてはマスキュラックス及びマスキュレート(臭化ベクロニウム)、又はレラキシ ン(塩化スキサメトニウム)がある。溶解液にはマスキュラックス、マスキュレートでは日本薬局方注射用水としか表示がなく、間違うことは考えにくい。レラ キシンの溶解液にはレラキシンと表示の上日本薬局方生理食塩液の表示があり、容易に取り違えることは考えにくいが、溶解液と分かれて包装されていることを 知らなければ間違えることがあると考えられる。このように溶解液の取り扱いが異なるいくつかの製品群があることから、包装方法及び表示方法について企業を 含めた検討が望まれる。

2

人工呼吸器使用時の加温加湿用蒸留水に、吸入液注入量を間違えて準備し施行した。患者への影響はなかった。

  • 加温加湿器用蒸留水1000mLに対しビソルボン10mLを加える指示が出ていたが、呼吸器変更後加湿器用蒸留水は500m1の設 定となっていた
  • 以前から1000mLへの混合量の思い込みがあって、本来ビソルボン5mLを混合すべきところ、10mL注入した。
  • ・カーデックスの指示量の確認を怠った。

ビソルボン

ビソルボン吸入液を加温加湿器に入れることは適切ではないことの周知について検討が望まれる。

3

患者は18:25と20:10に喘鳴を認めた。医師より喘鳴が生じた場合に実施する臨時指示として指示さ れていた吸入を実施するが、十分な呼吸状態の改善を図ることができなかった。20:30に、もうひとつの臨時指示であるステロイドの静脈点滴(生食 100mL+ソ ル・メドドール40mg)を実施した。21時過ぎに点滴が終了し、点滴の針を抜針した。抜針後に、点滴に混ぜたのは「ソル・メドロール 40mg」ではなく、「ソル・メドロール40mgを溶解する液のみであった事に気付いたが、患者の呼吸状態は安静であり、また既に入眠していたため、十分 観察を続けつつ様子を見た。翌日朝まで呼吸状態は悪化することはなかった。起床後、再度呼吸状態が悪化し、喘鳴が出現したが、この時は吸入により改善し た。

  •  「ソル・メドロール」は粉末を封じたバイアルとそれを溶解する溶解液とに分かれている事を知らず、溶解液のみの表示を見て点滴内に混入してしまった。

ソル・メドロール

溶解液と表示があり、容易に取り違えることは考えにくいが、溶解液にもソル・メドロールと表示の上、日本薬局方注射用蒸留水と表示さ れていることから、判別しにくいことも考えられる。このように溶解液の取り扱いが異なるいくつかの製品群があることから、包装方法及び表示方法について企 業を含めた検討が望まれる。

4

「ヒューマリンR」(インスリン)30単位の入った点滴500mlを、9時~翌朝9時までキープ(持続的に点滴すること)であった が、23時の時点で終了してしまっていた。点滴の速度を確認するため通常訪室時に観察する時間当たりの滴下数を確認していなかった。発見時、インスリンの 作用が過剰となり血糖が低くなることが懸念されたので測定したところ、血糖値140mg/dLであり低血糖ではなかった。当直医師にそのことを報告したと ころ、「(これ以上の点滴は行わず)ヘパリンロック(点滴は行わないが、点滴の再開に備えルートを確保しておくために血液がルート内で固まらないようにヘ パリンを通しておくこと)で様子をみる。」との指示で経過観察した。

  • 点滴の速度を確認するという基本的なことができていなかった。特にこの患者の点滴滴下数には変動があるという情報をもっていながらできていなかった。
  • 他の業務のサポートを行わねばならなかったりして、業務が多忙であり余裕もなかった。
  • 自分では安易に考えていたこともあった。

ヒューマリンR

インスリンは通常、皮下注射で用いられるものである。静脈内投与は、糖尿病性昏睡時の特殊な用法であるが、その際は投与量に誤りがな い方法を用いるよう注意喚起するなどの検討が望まれる。

5

膵 臓癌術後の患者で、血糖値を管理するために「ヒューマリンR注U-100」(インスリン)を24単位と生理食塩水24mlを混ぜた ものをCV(中心静脈)ラインからシリンジポンプ(注射器をセットし少量の注射液を持続投与するポンプ)で持続注入していた。しかし、そのヒューマリンを シリンジに吸い上げる際、専用注射器(微量の液体の吸引が可能なシリンジ)ではなく普通のシリンジを使用し、24単位のところ24ml吸引してしまった。 また、ワークシートの注射指示には生理食塩水20ml2A使用と書いてあったため、計64mlとなった。液量が多すぎるので何かおかしい、と思い先輩に確 認して、間違いが判明した。

  • 当院で使われている「ヒューマリンR」の規格は1mlが100単位であることや、インスリンは少量の薬液を使用することが多いため、微量の液を吸引できる 専用注射器で吸引することは分かっていたのだが、他のことを考えており注意力が散漫であった。
  • また、「ヒューマリン」は血糖を降下させる作用があり使用量を誤れば重大な悪影響を及ぼすという危機意識が低かった。

ヒューマリンR

インスリン製剤は種類が多く、現場での理解が十分でない上に、平成12年9月19日付医薬発第935号医薬局長通知「医療事故を防止 するための医薬品の表示事項及び名称について」別添5及び平成16年6月2日付薬食発第0602009号医薬食品局長通知「医薬品関連医療事故防止対策の 強化・徹底について」別添1において示されているにもかかわらず、販売名及び表示が整備されていないことから、企業を含めた早急な対策が望まれる。

6

人工呼吸器で呼吸管理中の患者に、臨時の指示で「プロスタグランディンF2α」の静脈注射の指示が出た。指示した医師は、ワンショッ ト(一度に急速に静脈注射すること)で注射することは危険な薬剤であることを知らなかった。指示された看護師も知らず、「プロスタグランディンF2α」を 生食20mlに希釈し、ワンショットで注入。患者は一時的に2段脈(不整脈の一種)が発生、動脈血酸素飽和度の低下を認めた。幸いこれらの症状は一過性の ものであり、酸素濃度を挙げ経過観察したところ数分で症状は改善した。

  • 医師は外来の診療があるので急いでいた。
  • また、薬剤の効能等について理解はしていたが、使用方法について知識が不足していた。
  • 指示を受けた看護師も卒後2年目であり、薬剤に関する知識が不足していた。
  • 看護師は、今回の「プロスタグランディンF2α」は緊急使用のケースではないので、薬局からの配薬を依頼するべきであった。
  • 当薬剤に関しては、使用頻度は少なく、経験年数のある看護師であれば未然に防げた事例かもしれない。

プロスタグランディンF2アルファ

用法は点滴又はシリンジポンプを用いた持続注入であるにもかかわらず、本体に「静」の表示があり、誤解を生じやすい。メーカーにおい て表示を検討中である。

7

「フ ルカリック」(輸液・栄養製剤)薬液が1つのバッグの中で大・中・小の3つの室に区分けされて保管さ れており、使用時にはこれらの室の隔壁を開通させて混合する仕組みとなっている。最上部の突起状の小室には、あらかじめキャップが被せてあり、使用時には まずキャップを外し、さらに突起状の小室を折ることにより混合する仕組みとなっている。ところが使用時に、このキャップだけを外し折ることを忘れてしまっ たため小室内の薬液が混合できなかった。結局、そのまま点滴交換を実施してしまい、日勤の受持ち看護師が点滴交換を実施したときに発見した。

  • 点滴の本体と指示表との確認と時間の線引きにばかり気を取られてしまっていた。
  • いつもやっていることであるため、点滴交換時の「慣れ」から生じたものだと考えられる。
  • そして、点滴交換時に再度折れているか確認しなかった事が大きい要因だと考えられる。

フルカリック

隔壁開通忘れ。すでに、隔壁部分への赤線表示、開通確認シールなど対策はとられているが、企業を含めたさらなる検討が必要。

8

「アミノフリード」(輸液・栄養製剤)を準備、施行した。準備の際に上下の薬液を混合するために、それら の間に設けられている隔壁を十分破壊していなかったため隔壁が開通しておらず、上部の薬液が残ってしまっていた。14時の点滴更新時他の看護師が発見し た。主治医と師長に報告。そのまま経過観察となった。

  • 日勤の点滴準備の時、深夜勤務の看護師が点滴ミキシング(混合)を手伝ってくれた。その時「アミノフリード」を開通していないのに「開通シール」貼ってお り、開通していると思っていた。
  • 施行中の点滴終了後に接続できるように点滴台にかけたが、その際、開通を確認しなかった。
  • また点滴更新時に確認しなかった。

アミノフリード

隔壁開通忘れ。すでに、隔壁部分への赤線表示、開通確認シールなど対策はとられているが、企業を含めたさらなる検討が必要

9

「アミノレバン」(肝不全用アミノ酸製剤)のところ「アミノフリード」(末梢用糖・アミノ酸・電解質液) を払い出した。病棟で発見し取り替えた。

  • 薬剤名が似ていた。同時に10%NaCl 40ml×2との処方の記載もあったことから、10%NaCl 20mlを4本払い出さなければならず、そちらに気が取られていた。

アミノフリード

アミノ酸輸液製剤は販売名の頭に「アミ(ノ)」とつくものが多く、取り違えが多い。アミノレバンの適応から考えると、患者は肝不全に よる肝性脳症であった可能性が高く、アミノフリードは禁忌であり、投与してしまうと危険であった。メーカーで対策検討中とのこと。

10

持続点滴でTPN(Total Parenteral Nutrition、中心静脈栄養)を投与する患者の、輸液内に混合するアミノ製剤が、「アミパレン」から「アミノレバン」に指示変更になっていることに 気付かず、「アミパレン」と注射簿に転記ミスをしていた。そのため注射伝票も「アミパレン」と書いて請求されていた。輸液を混合し終わった後、リーダーが 転記間違いに気付いたため、薬品破損として処理することとなった。

  • 指示受け後にダブルチェックを行う際、リーダーが指示簿を読み上げて他の看護師がチェックするが、リーダーが思い込みをしている場合は、間違いに気付きに くい手順であると思う。
  •  業務手順、ダブルチェックの方法、ルールの問題。

アミパレン

本来は、医療機関の情報伝達等のシステムの問題。ただし、アミノ酸輸液製剤は販売名の頭に「アミ(ノ)」とつくものが多く、取り違え が多い。アミノレバンの適応から考えると、患者は肝不全による肝性脳症であった可能性が高く、アミパレンは禁忌であり、投与してしまうと危険であった。 メーカーで対策検討中とのこと。

11

点滴ルートの主管は生理食塩水を点滴し、側管はシリンジポンプを用いて「ベプシド原液(抗がん剤)2. 8ml/時間」で投与する指示がなされた。投与開始後30分たってもシリンジ残量が変わらなかった。閉塞アラームも鳴らず、器械をかえても注入されないた め医師へ報告する。

  • 「ベプシド」が高濃度で粘稠性が高いため、2.8ml/時間ではシリンジポンプで押せなかったのが原因。

ベプシド

添付文書の適用上の注意に、その他の項目として、希釈せずに用いる場合、カテーテル、フィルタ等の素材で使えないものが多く記載され ている。注意喚起のレベルが低いので、用法関連注意に必ず規定量以上の輸液等で希釈して用い、原液をポンプによって投与ルート中で混和しないよう記載する 等の添付文書の改訂等が必要と考えられる。

12

CVライン(中心静脈ライン)から主管は生理食塩水、側管はベプシド原液の注入を行った。投与開始1時間 後にシリンジの残量が減っておらずルート接続部に亀裂が入り漏れているのに気づいた。患者へは殆ど投与されていなかった。医師へ報告した。

  • 塩化ビニル製・ポリウレタン製の点滴ルートでは、粘稠性が高いベプシド原液を注入すると亀裂が入ることに気がつかなかった。

ベプシド

添付文書の適用上の注意に、その他の項目として、希釈せずに用いる場合、カテーテル、フィルタ等の素材で使えないものが多く記載され ている。注意喚起のレベルが低いので、用法関連注意に必ず規定量以上の輸液等で希釈して用い、原液をポンプによって投与ルート中で混和しないよう記載する 等の添付文書の改訂等が必要と考えられる。

13

点滴パックの開封をせずに施行してしまった。その後主治医に報告し再度「チエナム」(抗菌薬)を施行する ようにと指示があり施行する。

  • 「チエナム」と「アミノフリード」を同じ処置台に載せていた。その後、「アミノフリード」は隔壁を開通させたが、同じ構造になっている「チエナム」は開通 させていなかった。
  • しかしチエナムも開通したと思い込んで施行してしまった。点滴終了の際開封されていない事に気付いた。

チエナム

隔壁開通忘れ。すでに、隔壁部分への赤線表示、開通確認シールなど対策はとられているが、企業を含めたさらなる検討が必要

14

血糖チェックの患者に定刻どおり測定しようとしたところ、「アドバンテージテストストリップS」(専用測 定センサー)が不足していた為新しいものを使用した。その際、機器にコードナンバーを登録するためのチップを取り替えて設定し直す必要があるが、取り替え るのを忘れそのまま使用し測定した。その3時間後、またチェックの時間になったため、他のスタッフが測定したところ(測定する前)ストリップと機器のコー ドナンバーが違っている事に気付き取り替えてくれた。

  • 血糖チェックの時間通りの測定ではあったが、他チームの入院も重なり、他の患者の対応など複数の事が頭をめぐって気持ちは焦っていた。
  • しかし、新しいテストスリップへの変更の際だけでなく、根本的に血糖測定する時はテストストリップと機器のコードを確認する事が原則であり、それを忘れて しまった自身の行動を改める必要がある。

アドバンテージ
テストストリップS

基本的にアドバンテージテストストリップS(体外診断薬)はアキュチェックコンフォート(ロシュ・ダイア グノスティクス社製個人用血糖測定器(SMBG))で使用するものであり、マルトースによる偽高値を示すことが知られている。基本的にSMBGを病棟での 患者の血糖管理に使用するべきではないことの徹底について検討する必要がある。なお、当該メーカーは病棟での自己血糖測定器の使用中止の推奨と院内使用の ための小型電極式血糖専用測定器の普及啓発を開始している。