ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第19回事故事例「人工呼吸器」)
No. | 発生分類 | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
1 | 回路 | 深夜帯に業務を看護師3人で行っていた。患者Aはナースステーション横のリカバリールームに人工呼吸器装着し、観察管理下にあった。深夜、最初の1名の看護師が休憩のためナースステーションを離れ、次の看護師はその5分後に、3人目の看護師は15分後にそれぞれナースステーションを離れ、ナースステーション横のカンファレンスルームで休憩していた。3人目の看護師が休憩を取り始めて30分後に、ひとりの看護師が生体監視モニターのような音に気付いた。看護師3人で患者Aの部屋に行った。訪室すると、患者Aの気管に挿入されたチューブと人工呼吸器の回路が外れており、患者は心臓停止の状態だった。すぐに心臓マッサージを開始したが、患者は蘇生後脳症となった。 | 同じ時間帯に3名で休憩し、ナースステーション内に30分間誰もいなかった。 |
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2 | 回路 | 患者は気管切開部より気管カニューレ挿入されレスピレーター装着し、SIMVにより呼吸管理を行い自発呼吸が認められていた。また、患者は自力で体動が不可であった。看護師3名にてシーツ交換施行中、気管カニューレが抜けかけている状態であった。医師に報告し救命処置を行った。 | シーツ交換を看護師3名で行ったが、役割分担ができていなかった為、患者観察が不十分であった。声かけが不足し、早く終了しなければという焦りがあった。当日11時に気管カニューレのカフ確認を行ったが、シーツ交換直前には行わなかった。 |
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3 | 回路 | 患者は意識状態がJCS1群であり、人工呼吸器を装着していた。 また、体動が激しく、両上下肢抑制を行っていた。患者を見ると、挿管チューブが抜けているのを発見した。その後、主治医により経鼻挿管を施行した。 |
人工呼吸器装着し、体動が激しく両上下肢抑制中の患者であった。首を横にふったりなど、顔を動かす動作も見られていたため、止めていたテープがはずれ、挿管チューブが抜けていたのではないかと考える。 |
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4 | 設定・ 操作部 |
患児は、手術終了後ICUへ入室予定であった。予め臨床工学技士は人工呼吸器(SLE5000)の作動状態の確認を行った。患児は術後ICUで人工呼吸器を装着し、輸液・動脈圧等の多数のラインを接続していたが、患児の血圧低下と心電図異常を認めたため、直ちに用手換気に切り替えた。人工呼吸器を確認したところ、吸気時間が0.1秒と短く設定されていた。 | ICUでの小児患者(新生児、乳幼児を含む)に対する人工呼吸器管理については、状態によって呼吸器設定に微調整が必要であるが、設定及び確認に関する役割分担が不明確になっていた。 |
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5 | その他 | 患者は、数日前より気管切開部に感染による潰瘍形成がみられ、気切孔が大きめな状態だった。更に、全身状態が悪化し、全身に浮腫が著明にみられ、カニューレが抜けかけてしまうような危険性があった。日中に医師と確認し、感染が疑われる部位にヨードホルムガーゼを詰めるなどして処置を実施し、体位交換時などは抜去を予防するため十分注意しながら行っていた。準夜勤でも十分注意を払っていたが、体位交換後にエアーリークが出現し、カフ圧計にてカフ圧調整するとともにカニューレの位置を調節した。しかしエアーリークは改善せず増強し、人工呼吸器も、喚起不全様(アラームは鳴らなかったが送気できない状態)に動作変化した為、近くにいた医師に応援を要請した。医師は、バックバルブマスク喚起を試みるが換気不良であった。気切孔に詰めていたヨードホルムガーゼを除去したところ、気切孔よりカフが、肉眼で確認できる状態であり、気管より抜けていると判断し、カニューレの入れ替えを行った。 | 気管切開孔が広がっていたことの確認に不備と、浮腫が強く、下額や首がカニューレを押し上げるような状態になっていた。 |
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ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第20回事故事例「人工呼吸器」)
No. | 発生分類 | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
6 | 回路 | 患者は、右肺全摘後の気管支瘻を造設し、ダブルルーメン気管支内チューブを挿入し、人工呼吸器管理を行っていた。ダブルルーメン気管支内チューブは左右を色で表示し、白色が右肺側(切除側)、青色が左肺側(健側)で区別をしていた。気管内吸引のため、担当看護師1名と、ペア看護師1名で訪室した。右側臥位に体位変換を行い、その後、ダブルルーメン気管支内チューブの青色キャップ部分よりアーガイル8Fr. 55cmの吸引カテーテルを45~50cm程度挿入し、吸引を行った。吸引後、ダブルルーメン気管支内チューブに接続されている蛇腹に水が溜まっていたため、接続を外し、蛇腹内の水滴を除去後、ダブルルーメン気管支内チューブと呼吸器回路を装着した。その後SpO2が徐々に低下してきたため、リーダー看護師に報告し、医師に連絡した。血圧、心拍数低下しリーダー看護師が胸骨圧迫を開始した。すぐに医師が到着し、ジャクソンリースにて換気を実施した。その際に、ダブルルーメン気管支内チューブの白側(右肺側)に呼吸器回路が接続されていたことに気付いた。 | 呼吸器とダブルルーメン気管支内チューブの接続時に、確認せずに接続した。接続後は、心電図モニターと人工呼吸器のモニター画面に注目し、接続側を確認しなかった。人工呼吸器のモニター上、換気量が30mLまで下がり、気道内圧は40mmHgまで上昇していたが、蛇腹の水抜きで一時的に変動したと思い込んだ。蛇腹の水抜きをする際に通常の挿管チューブの取り扱いと、同様に考えており、ダブルルーメン気管支内チューブに接続する際の確認が不足した。 |
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7 | 回路 | 患者は、人工呼吸器による呼吸管理を行っていたが、患者は意識障害があり、両上肢の動き活発で、チューブ類に手をかけるため両手にミトンを装着していた。看護師Aは、家族面会中にミトンを外し、席を外す時には自分に伝えて欲しいと家族に説明した。その後、家族は看護師に席を外すこと、ミトンを装着したことを伝えた。40分後、看護師Bは廊下でアラームが鳴っているのに気付いた。確認すると患者が挿管チューブと胃チューブを抜管し、呼吸停止の状態を発見した。 | 看護師Aが家族より報告を受けた後に、抑制の状況を確認していない。 |
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8 | 回路 | 患者は、加療目的のため当院に転院となった。転院後より不穏による体動が著明であるため、鎮静目的にてディプリバンを開始した。その後も患者は体動が活発であった。患者は、自己抜管及びその他チューブ類の抜去防止、転落防止のため、両上下肢、体幹抑制、適宜ミトンを着用していた。準夜から深夜にかけて、同様の状態継続していた。2時間毎のカフ圧の確認、抑制状態確認を実施していた。その後、患者の挿管チューブが口腔内から抜けかかっており、呼吸状態が悪化した。 | 鎮静剤の最大投与量の検討と使用するタイミング、量についてのより細かな指示と実施の確認が必要であった。再挿管については、口蓋が目視確認できない、患者呼吸状態の急速な悪化、食道挿管となった後の皮下気腫の発症など予測不能な状態が続き、少人数での対応では困難であった。抜管が起こった後、自発呼吸がありSpO2 90台の時に吸引、アンビューマスクの使用、当直医師への連絡ができており、抜管時の対応としては適切であった。 |
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9 | 回路 | 患者は人工呼吸器による呼吸管理を行っていた。不穏無く意識クリアにて抑制せずに管理していた。患者ケアー中に空気の漏れる音がした。患者を見ると気管チューブを自己抜管しチューブを手に握っていた。アンビューにて換気、ICU当直医師にて再挿管した。 | 患者アセスメント不足。 |
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10 | 回路 | アラームが鳴り訪室したところ、人工呼吸器の蛇管とともに気管カニューレが抜かれていた。発見時、酸素飽和度88%であり、直ぐ用手換気バックにより人工呼吸を行うと共に、気管カニューレを挿入し、酸素飽和度100%を確認し人工呼吸器に装着した。その後問題なく経過した。 | 患者は体動が著明であり、自己抜管予防目的で両手にミトン、肩抑制などの対策を講じていたが、ベッドアップをしていたことから体がよじれ蛇管に手が届いてしまったものと推測された。抜管後の対応は適切であった。ベッドアップと体の位置ずれがあった。 |
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11 | その他 | 患者は人工呼吸器(LTV1000)により呼吸管理を行っていた。深夜、突然モニターのアラームが鳴り、心拍数40台でSpO2は維持できていた。緊張が強く顔面蒼白、喀痰吸引し多量に引けるが、改善せずアンビュー使用し医師に連絡し、心マッサージを実施した。胸郭の動きはなかった。医師が気管カニューレ(GBアジャストフィット)を一旦抜くと先端が折れ曲がり口腔内の方を向いていた。再挿入し人工呼吸器を装着した。医師は「筋緊張出現時に姿勢が変わり一旦抜けかけたカニューレが逆方向に反転したかもしれない」と患者の両親に説明した。 | 筋緊張出現時に姿勢が変わり一旦抜けかけた気管カニューレが逆方向に反転したかもしれない。 |
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ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第19回事故事例「放射線検査」)
No. | 事故の 程度 |
分類 | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【MRI検査】 | ||||||
12 | 障害 の可能性(低い) |
検査準備 | 腰部MRIをオーダーされた患者は、ペースメーカー挿入後であり当院循環器に定期的に通院していた。ペースメーカーの有無の確認を怠ったため、本来、禁忌であるMRI検査のオーダーを行ってしまった。検査室で家族立会いの下、財布、貴重品などの金属類などがないか確認し、検査を開始した。次の検査をする患者にペースメーカーを装着していないかの確認をしている時、近くで聞いていた家族より、当該患者はペースメーカー植込み術をしていると言われ、ただちに検査を中止した。循環器主治医による診察と、ペースメーカー業者によるペースメーカーの検査点検をした。 | 整形外科医師による確認不足があった。患者は整形外科が初診に近い状態だった。放射線科技師による入室前のチェックも抜けてしまった。 |
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13 | 障害なし | 検査準備 | 外来カルテの表紙には「メドトロ」(メドトロニック植え込み式ペースメーカー)、病名欄には完全房室ブロックと記載されていたが、脳外科の医師はカルテを確認せずMRIをオーダーした。看護師もカルテ、患者、家族に確認をしなかった。MRI室においては放射線技師が患者の左前胸部を触って確認したが、脂肪で気付かなかった。撮影中、放射線技師が外来カルテを確認し、完全房室ブロックの既往歴、ペースメーカー挿入がわかり、検査を中止した。その後ペースメーカーに不具合はなかった。 | 医師・看護師・放射線技師はペースメーカー挿入患者であるかどうかを検査前に患者・家族に確認しなかった。放射線技師はチェックは済んでいると思い込んでいた。 |
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14 | 障害なし | 検査準備 | 単純検査が終了したため、担当技師がベッドをマグネットから出し、続いて担当医師(研修医)が造影剤を投与するためマグネットに近づいた際、髪の毛をとめていた髪留め(金属性)がマグネット内に飛び込んだ。患者へ危害はなかった。 | 当事者は研修医で、MRI検査を担当する前に、放射線科担当医師によるオリエンテーションを受けており危険性の認識は十分にあった。しかし、実際にMRI検査業務前の金属類の取り外しの際、髪留めである金属類の一つを取り外し忘れた。その後、髪留めをつけたまま、MRI検査室に入室し、引き付けられることに気がついた時にはマグネット内に髪留めが飛び込んでいた。この経過を見ると、認識はあるが、金属類のチェックが確実に履行できなかったことがトラブルに繋がった要因と考えられる。 |
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15 | 障害なし | 検査準備 | 救急外来で意識障害にて救急搬送された患者のMRI検査を施行することになった。救急担当医は当直放射線技師にMRI検査をオーダーした。救急外来看護師AはMRI用ストレッチャーに患者を移し、身体に磁性体となる物が付いていないか他の看護師Bとダブルチェックを行った。そして点滴をMRI用スタンドに替えた。また患者には酸素が経鼻カニューレで投与中だった為、カニューレを中央配管から移動用酸素ボンベに替えた。酸素ボンベはストレチャーの下の架台へ収納した。看護師Aは患者をMRI室に搬送し全室で待っていた放射線技師と再度磁性体の有無について確認した。この時、院内で決められたチェックリストを使用せずに口頭で行った。又マニュアルで決められている金属探知棒も使用しなかった。放射線技師は看護師Aに対しても磁性体がないかの確認を行い、患者をMRI室内へストレッチャーの頭の方から搬送した。ストレッチャーが検査台に近づいたところで「ドーン」という大きな音がしてストレッチャーの下にあった酸素ボンベがMRIガントリー内の4時の方向に吸着した。その際、放射線技師は吸着を防止しようと思わず右手を出しガントリーと酸素ボンベとの間に右手を挟まれ、手背の打撲を負った。患者に障害はなかった。 | 院内で決められたマニュアル(チェックリストによる2名でのダブルチェック、金属探知棒の使用)が守られなかった。酸素ボンベがMRI対応の物でなかった。酸素ボンベがストレチャーの下にあり視界に入りにくかった。緊急のMRI検査であったため放射線技師は緊張していた。看護師Aは育児休明けだった為、入室時のマニュアルがあることを知らなかった。 |
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16 | 障害 の可能性 なし |
患者の 観察・管理 |
患者は意識障害があり、誤嚥性肺炎で気管内挿管にて酸素投与し呼吸管理していた。MRI検査のため、9L35%ベンチュリーマスクで酸素投与にて搬送した。その際、SPO298%、顔色良好であった。検査が終了し病棟看護師が迎えに行くと、酸素ボンベが空になっていた。患者は顔面、四肢紅潮し、速拍努力様呼吸となっていた。 | 当日はエレベーターが修理のため、従来の運用がされず、搬送に時間を要した。検査終了の報告を受け迎えにいくまで、スタッフ間での連携がとれずに時間を要した。スタッフ間の連携不足、情報の伝達不足、酸素ボンベの酸素供給量の把握不足があった。また患者はMRIの後にレントゲン検査を行っており、連続した検査の実施もあった。患者観察が不十分であった。 |
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17 | 障害 の可能性 なし |
その他 | MRI検査を受けた患者は4日後、整形外科受診した際に「MRI検査を受けていた時に、左腰部がチクチクした。家に帰ってみたら、チクチクしたところが火傷みたいになっていた。」と話した。患者が検査時に身に着けていた着衣は金糸を使ったようなジャージだった。患者の身体には、ジャージの金糸模様と一致する「四角模様の発赤痕」が4箇所認められた。これまでジャージでこのような事故は無かったが、洋服に金糸が織り込まれていたことが原因だったことが判明した。 | 手順の非遵守、マンパワーの不足、着替えの確認をする職員の配置などがあった。 |
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18 | 不明 | 検査準備 | 患者が頭部MRI検査の際に使用する薬剤(プルポフォール)を、小児科外来看護師がトレイに準備した。準備した2つのトレイのうちの1つがホーロー製であった。小児科外来で説明・血管確保後、医師と看護師がトレイを持って、患児を検査室に案内した。診療放射線技師2人は、医師が、回診衣のポケットから持ち物を取り出すのを確認し、患児の衣服等の金属確認を行った。医師は撮影室に入室する際、準備してあった薬剤の入ったトレイを持って入り、撮影台に置き(患児の足元約50cmの所)、鎮静処置を開始した。患児が入眠し、撮影のため台を頭側へ移動、それとともにプロポフォール、注射バイアルなどを入れた鉄製トレイがMRIの磁力に引き付けられ飛んだ。トレイに置いてあった物が患児の顔面に当たり口内裂傷を起こした。 | 安全確認の不備(金属持込禁止と、撮影テーブルスライド前の安全確認の徹底が出来ていなかった。 ホーロトレイはほとんど目にすることがなく、準備した者、持ち込んだ者ともに金属という認識がなかった。 |
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19 | 障害なし | 検査準備 | 前の週MRI検査を実施した際に、体内にある金属は確認していたため、今回は金属探知器によるチェックは行わず、口頭による確認のみで検査を行った。しかし検査終了後、携帯電話を所持していたことが判明した。携帯電話は一時使用できず、その後しばらくして使用可能となった。患者には特に実害はなかった。 | 前の週MRI検査を実施していたため、今回は大丈夫だろうという思い込みにより金属探知器によるチェックを怠った。 |
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20 | 障害なし | 検査準備 | MRI検査終了後、担当医(研修医)が、技師の指示なしにMRI室に酸素ボンベ付きのストレッチャを検査室に持ち込み、酸素ボンベはMRI本体に吸着した。 | 看護師が気をきかせ、MRI専用のストレッチャをMRI専用ストレッチャー格納場所にもどしていたが、その場にいた医師は一般のストレッチャーしか目にとまらなかった。 検査中も医師は、患者の容態が気になっていた。医師は検査終了後、少しでも早く退出させて患者対応するため自分でドアを開け、一般ストレッチャーを持ち込んだ。 |
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21 | 障害なし | 検査準備 | MRI検査終了後、患者を検査装置から出そうとしたが寝台が動作不良であった。リセットを行ったが回復しないため、メーカーに修理を要請した。メーカーが到着し、修理作業を開始した。室内から大きな音がしたため駆けつけてみると、金属部品(10cm程度のベアリング)が2個ガントリー部に吸着していた。メーカーの作業員が吸着した金属を引き剥がそうとしたが無理であった。結局磁場を落として吸着した金属を取り外した。被害状況は、ボディコイルと装置カバーの破損が確認された。直ちに修理を開始したが、磁場の立ち上げ、ボディコイルの手配、シミングなどに数日を要した。停止期間中の予約患者の対応については、他のMRI装置をフル稼働し、またスタッフ全員で時間外業務で対応し、患者からのクレーム等、問題も無く処理できた。 | MRIメーカーの作業員の確認ミス。 |
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22 | 障害なし | 検査準備 | 緊急MRI検査後、技師は患者をガントリー内より外に移動しようとしていた。医師が患者を退室させるために酸素ボンベを積んだストレッチャーをMRI検査室内に入れてしまった。技師は制止したが、酸素ボンベが飛び出し、検査台の直下のガントリーに吸着した。酸素ボンベはストレッチャーの寝台の下に床に平行にセットするタイプであったので、検査台の下側に飛んで行き、患者に危害は及ぼさなかった。 | 医師は検査前には金属類を外すことを知っていたが、MRI検査より他の検査(心臓カテーテル等)に入ることが多く、検査後ストレッチャーを検査室に入れる動作が習慣となっていた。前室や柵など物理的な防護壁がなかった。金属禁止の表示はドアや床等にあったが眼に入らなかった。技師1名と医師1名だけで他に気付く人がいなかった。 |
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【X線検査】 | ||||||
23 | 障害 の可能性(低い) |
機器 | 診療放射腺技師2名で患者をイスから寝台に移動させる際に、床にある寝台移動スイッチを技師が誤って踏み、寝台の縁を握っていた患者の左手小指を挟み出血させてしまった。 | 技師2名で寝台への移動を行なっていたが、片方の技師が移動の際、床にある寝台移動スイッチを気付かずに踏んでしまった。 移動の際、患者様の手の位置の確認を怠った。 |
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ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第20回事故事例「電気メス」)
No. | 事故の 程度 |
分類 | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【熱傷】 | ||||||
24 | 障害 の可能性(低い) |
使用方法 の誤り |
レーザーで病変部を含む子宮頚部の切除を開始し、子宮頚部を切断した。切除断端から出血を認めたため、レーザーで蒸散を行ったが、止血困難なため、電気メスによる凝固止血も併用しながら、レーザーと電気メスを交互に使用し止血を行った。電気メスを使用している際に、誤ってレーザーのフットスイッチを押してしまい、レーザーのハンドピースを入れていたプラスチック容器が穿孔、覆布に引火、すぐに消火したが、患者の右大腿部に熱傷を負った。10×4cmの皮膚表皮剥離を伴う熱傷を認めた。直ちに皮膚科医による、ステロイド軟膏塗布の処置を行った。 | レーザーと電気メスを併用して止血を行っていた。 |
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25 | 障害 の可能性 なし |
使用方法 の誤り |
患者に対しレーザー円錐術施行した。終了後、ドレーピングを外したところ、左ソケイ部に三箇所点状の熱傷を発見した。直ちに冷却してリンデロンVG軟膏を塗布し、キュティポアを貼用して保護した。 | レーザー使用中はプローブの先端が非常に高熱を発していることへの配慮が足りなかった。プローブ先端の高熱がドレーピングを通して伝わっていることに気付かなかった。 |
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26 | 障害 の可能性 なし |
使用方法 の誤り |
腹腔鏡補助下子宮体癌根治手術を行うこととなった。体外用のハンドピース型電気メスと体内用のフットスイッチ型モノポーラー電気メスを準備した。手術開始後、体内用モノポーラー電気メスを使用するために、口頭で確認後、フットスイッチを押したが通電しなかったため、3秒ほどでフットスイッチを解除した。この際、下腹部の覆い布上に置いてあった体外用ハンドピース型電気メスに通電していることが判明、覆い布の下の皮膚が7mmほど凝固切開されてしまった。接続を確認すると、電気メスのコードがフットスイッチ用とハンドスイッチ用が逆に接続されていた。切開部の深さは3mmほどで出血は認めず、閉腹時に修復することとして、接続を直して手術を続行、その他のトラブルはなく手術は終了した。閉腹時に同部位を4-0バイクリルで3針結節縫合して修復した。 | 電気メスのコードがフットスイッチ用とハンドスイッチ用が逆に接続されていた。 |
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27 | 障害 の可能性(低い) |
使用方法 の誤り |
午前中に手術を行った。夜、右側腹部に約1cm弱の発赤があることを発見した。超音波凝固メス(CUSA)、電気メスの誤操作による熱傷が疑われた。手術中断が出来なかったため、患部を冷却しながら続行した。患部をデブリードメントし、2針縫合した。 | 手術器具を腹部に置いたまま、CUSA等のフットスイッチを誤って踏んだ際に発生した可能性がある。 |
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ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第19回事故事例「薬剤」)
No. | 事故の 程度 |
分類 | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【速度間違い】 | ||||||
28 | 障害なし | 準備段階 | 患者は、輸液ポンプ(テルフュージョン輸液ポンプTE-171A)を使用してメインの輸液(フルカリック2号)を86mL/hで投与し、側管からはシリンジを使用して、ヒューマリンR50単位+生食50mLを1.5mL/hで投与していた。メインの輸液を交換する際、輸液ポンプの表示が外からの光に反射して見えづらかったため、右手で影を作るようにかざしながら流量、予定量の設定を行い、輸液ポンプのチェックリストを使用し、2度表示を確認した。1時間後、血糖値が「Hi:血糖500以上」であり、主治医に報告した。確認すると、点滴本体の輸液ポンプの設定量が「860mL/h」になってることに気付いた。 | 輸液ポンプの表示が見えづらいと感じた際、一時的にカーテンで光を遮るなどの措置をとらずに、輸液ポンプの表示が不明瞭である状態で流量、予定量の設定を行った。 輸液ポンプの設定確認において、滴下している状態はどうかといった意識は持たず、10秒程度見て“滴下している”という確認のみで終わっていた。ポンプの表示面が患者側に向いており、表示を確認しにくい状態であったため、何度も入室していたが発見が遅れた。 |
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29 | 障害 の可能性 なし |
実施段階 | 患者は、動悸、嘔気、発汗を訴えた。確認すると、中心静脈点滴フルカリック2号1003mLを4時間で約800mL、指示の約3倍の速度で投与していた。このため、患者は、低血糖状態となり、血糖値が83mg/dLとなった。その後、更に血糖値が低下し35mg/dLとなった。 | ラウンドでカテーテルの固定方法の確認をしなかった。更に、滴下速度の調整時、クレンメを全開にし、滴下具合を確認しなかった。その為、頭部の角度により滴下速度に変化があり、過量投与となった。 |
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【その他】 | ||||||
30 | 障害なし | 準備段階 | 持続投与中のエピネフリンのルートが下の段のシリンジポンプのクランプにはさまっていた。ルートがはさまっていたことがわかった際にそのまま解除したしたため、ルート内に停留していたエピネフリンが血管内に一度に流入した。血圧上昇・不整脈を認め除細動にて改善した。 | 複数台ポンプを使用していたが、ルートを手でたどって確認していなかった。接続を外した後圧迫を解除すべきところ、圧迫を先に解除した。 |
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31 | 障害なし | 実施段階 | 患者は、深夜PCI実施後病室へ戻った。ラクテック500mLと生食100mL+シグマート1Vの2ルートから点滴を実施していた。そのうちシグマートは輸液ポンプ4mL/hで投与していた。 帰室後生食100mL+ダルテパン5000単位4mL/hを開始する指示があり、注射薬準備後、輸液ポンプにセットした。ダルテパンのルートのつもりで接続したラインはシグマートの点滴ラインであり、同じ輸液ラインを2台の輸液ポンプにセットした。約1時間後、巡視時にラインを確認すると、ダルテパン用の生食ボトルが空になっていることを発見した。ルートを確認した所、輸液ポンプにセットされていないことがわかった。 |
帰室時の移動や点滴ラインの管理を複数の看護師が照明を落とした状況で行った。心臓カテーテル検査のため、点滴ラインは長めに準備されていた。マニュアル内確認手順を逸脱した。輸液ポンプ2台を垂直に設置したことにより、点滴ラインが輸液ポンプにセットされていると錯覚しやすい状況だった。 |
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32 | 障害 の可能性(低い) |
実施段階 | 患者は、左鎖骨下静脈よりCVポート留置術を施行した。1ヶ月後、化学療法を開始した。開始時、ポート針留置後の滴下が不良であったものの、体位の調整で滴下可能であったため、退院後は外来にて化学療法を継続していた。化学療法開始から約2ヶ月後、化学療法施行中に左肩痛が出現したためポート造影を行ったところ、造影剤の漏出を確認した。胸部X線撮影及び胸部CTを施行したところ、左鎖骨前方でカテーテルが切断され、切断されたカテーテルの先端が肺動脈本幹から左肺動脈下葉枝A6にかけて存在していることを確認した。 | CVポート挿入の位置の関係からカテーテルに圧がかかり、切断を招いたものと考える。本症例でもCV挿入後の胸部X線上CVポートのカテーテルの屈曲を鎖骨下で認めた。 |
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33 | 障害 の可能性 なし |
実施段階 | 11時患者は3回目の針交換を自ら行ったが、看護師は説明書を見ていたため穿刺の確認が出来ていない。血糖値は時間毎測定し追加インシュリンの指示があり実施していた。17時血糖値445mg/dLと下がらず、17時40分に医師と看護師は穿刺部とポンプ作動状況を確認し異常なしと判断した。20時血糖値581mg/dLと高値であったため、医師は患者に針交換を行うことを説明した。患者は自ら穿刺固定テープをはがしたところ、キャップが付いたままであったことが分かり看護師に伝えた。看護師はすぐに主治医に報告20時20分看護師立会いのもと針交換を行った。 | CSII針交換の操作確認が不十分であった。看護師は初回の説明対応であった。説明会にも参加できていなかった。3交替の勤務であり、1回の説明会では対応が不十分であった。穿刺に対しての患者実施・理解度のアセスメント不足であった。今回3回目の穿刺であることと、ミニメドの経験があったため穿刺ができるとアセスメントしていた。看護師が早期に穿刺部(針先)を確認していなかった。患者に用いたパンフレットは字が小さく、英語で記入されれおり、理解しずらい(患者用の説明書を作成中であった)今回針が腹壁に刺さっていないにも関わらず、閉塞や故障などを示すアラームがならなかった。 |
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ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第20回事故事例「薬剤」)
No. | 事故の 程度 |
分類 | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【速度間違い】 | ||||||
34 | 障害 の可能性(低い) |
準備段階 | 患者は、心臓血管カテーテル検査を実施し、終了後、「シグマート12mg生理食塩水50mLを6時間かけて投与」の指示あり、7.2mL/hで投与していた。「シグマート48mg生理食塩水100mLを24時間かけて投与」の指示に変更となり、4.1mL/hで投与すべきところ、41mL/hで投与した。シグマートの投与を中止し、担当医へ報告後、0.3%イノバン開始し、酸素カヌラ4Lへ変更した。 | シグマート48mg、生食100mLを24時間かけてという指示に変更となり、4.1mL/h投与とすべきところ2回計算したが、41mL/hで開始した。深夜であり、暗い部屋のわずかな明かりの下で計算していた。また、全体量が増えるという思い込みがあった。 |
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35 | 障害 の可能性 なし |
実施段階 | フルカリック1号にツインパル500mLを混注したものを15時~24時間でCVカテーテルより投与していた。0時に患者の部屋に行くと輸液が全て終了していた。 | 21時に抗生剤の投与が終了し、ベースの輸液を側管ラインに満たした後、ベースの輸液を調整せず、退室した。 |
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【その他】 | ||||||
36 | 障害 の可能性(高い) |
その他 | 僧帽弁置換術後の患者は、せん妄を認め、ディプリバンの静脈投与による鎮静が行われていた。術後2日目の夜、心房細動となった。また、せん妄もさらに悪化し、薬物療法を行ったが、心房細動持続、せん妄も軽減しなかった。患者の安静を得るため、ディプリバンを投与することとなった。一般病棟には在庫として常備されていなかったため、ICUに借りた。輸液セットをつけて三方活栓につなぎ注射器に4mL(40mg)吸引し、ワンショット静注した。医師はディプリバンを接続した三方活栓をロックした(つもりであった)。上級医も到着し、血液ガス検査の結果を確認し、他の処置をしていたところ、患者の呼吸停止に気付いた。すぐに心肺蘇生を開始し、数分後に心拍が再開した。確認すると、ディプリバンのつながれた三方活栓は実際にはロックされておらず、100mL(ディプリバン500mg)が数分間で注入されたことが判明した。 | ワンショットするつもりなのに点滴用のボトルを借りた。20mLのアンプルを借りることもできたが、ICUの看護師が渡したのは100mLのボトルだった。輸液ポンプをつけることなく三方活栓に接続した。患者が暴れていたので焦っていた。注射器に4mL吸引後、三方活栓をロックしたつもりであったがロックされていなかった。他の処置もあったため、再確認はしなかった。看護師も2人いたが、暴れる患者を押さえることに気を取られ、輸液等確認する余裕がなかった。夜間であり人も少なかった。 |
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ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第19回ヒヤリ・ハット事例「人工呼吸器」)
No. | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【電源】 | ||||
37 | 人工呼吸器LTV-1000使用中、コンセントが抜けかけておりバッテリー運転になっていた。 | 機器に関する知識不足。 |
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【加温加湿器】 | ||||
38 | 人工呼吸器の点検後、加温加湿器のスイッチをOFFにしたまま、貸出可能にしていた。 | チェックする手順がなかった。 |
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39 | 日中Tピースで過ごし、夜間は人工呼吸器を使用していた患者。医師の指示で21時から人工呼吸器を使用する指示があった。人工呼吸器使用開始のため、他のスタッフと呼吸器の設定を医師の指示をもとにダブルチェックを行おうとした。その際、人工呼吸器の設定内容について不明な点があったため、医師に電話をかけ確認した。また、別の患者の危険行動があったため、一旦ベッドサイドを離れた。危険回避対応後、再度他スタッフとダブルチェックを行い、人工呼吸器使用を開始したが、加湿器のスイッチをONにするのを忘れた。 | 人工呼吸器の設定はダブルチェックを行い間違いがないことを確認したが、それに安心して加湿器を作動させることを忘れた。作業中に、中断しなければならない状態となった。ダブルチェックの機能が十分に果たされていない。ダブルチェックをした時点で作動されていなければダブルチェックをした意味がない。 |
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40 | BiPAP装着の患児。日中酸素投与下にて離脱した後準夜帯でBiPAP装着したが加湿器のスイッチを入れ忘れてしまっていた。次の勤務帯に設定を送る際に発見された。約6時間程加湿がかかっていなかった。 | 装着時は忙しくダブルチェックはできていなかった。 |
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41 | 人工呼吸器DPAP使用中の患児の加湿器が加温されていないことを勤務交代時に発見した。クベース交換を行った時に一度電源を落とした。再着したとき電源を押したがonにはなっておらず、加温されていることを確認していなかった。1時間半ほど加湿されていなかった。 | 加湿器の電源を入れ、加湿かける。 |
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【設定・操作部】 | ||||
42 | 加温加湿器で使用中の呼吸器を、人工鼻使用の呼吸器に機器ごと変更したが、アラーム設定値が低く、回路が外れてもならない状態だった。翌日別のMEによって発見された。 | ダブルチェックの仕組みがない。 |
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【その他】 | ||||
43 | 人工呼吸器を使用している患者であり、体動が激しいことから鎮静の為ドルミカムを持続的に使用していた。昼夜逆転傾向であり、日中覚醒させる為この日よりドルミカムを減量していた。低換気アラームが頻回に鳴り訪室すると、ギャッジアップしていた体が体動によりずれており、気切カニューレが抜けかけていた。 | 患者の体勢保持が困難であることを予測できなかった。人工呼吸器を患者へ近付け、回路へ余裕をもたせていなかった。アラームが鳴った際、詰所に人はいたがアラーム音に気付かず すぐに訪室できなかった。 |
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44 | 気切カニューレにて人工呼吸器管理していた。気管切開カニューレはGBアジャストフィットを使用中であった。数日前より声が出ると患者から訴えがあったが経過観察していた。耳鼻科にてカニューレ交換の際、アジャスターが緩んでおりカニューレが抜けかけていたと報告があった。 | カニューレの挿入深度が分かるようにマーキング施行した。 |
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ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第20回ヒヤリ・ハット事例「人工呼吸器」)
No. | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【酸素供給】 | ||||
45 | DPAP使用中の患児で、医師が酸素の設定を25%から23%に下げ、呼吸器指示票にも記入をしたが、看護師には指示出しをしていなかった。複数の看護師が指示表票を確認し忘れたり見落とし、翌日まで変更に気付かなかった。 | 直ちに医師へ確認し、設定を戻す。 |
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【回路】 | ||||
46 | SpO290%まで低下し訪室すると気道内圧10cmH2Oと低く顔色不良状態だった。リークと考え回路点検実施、呼気弁ラインを接続し直すとSpO2、気道内圧ともに回復した。 | 各勤務での点検時、接続部を実際に手で触ってみるという確認をしていなかった。PLV102は呼吸器全面にカバーがあり、点検の都度開閉するため、隣接しているラインがぶつかって接続が緩んだ可能性がある。 |
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47 | バイパップを使用後MEセンターに返却した。臨床工学技士より3つの呼気用の孔のうち1つがビニールテープで塞がれていたと指摘を受けた。調べると、トータルフェイスと回路の接続部が抜けてしまう為にビニールテープで固定していたことが分かった。呼気孔の2つが機能していたため患者には影響はなかった。さらに接続部が外れてしまう原因がトータルフェイス側の接続部の亀裂である事が分かった。 | 使用後であった為患者への対応はなし。 |
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48 | 前日に回路交換を行っていた。翌日深夜帯よりヒーターセンサーは繋がっていたが白色の呼吸器蛇腹に水がたまっており蛇腹が暖かくなっていなかった。MEに報告、ヒーター感知センサーの回路側の金属ピンが折れているのことを発見された。 | 回路交換を実施した。その間呼吸状態の悪化はなかった。 |
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49 | 人工呼吸器(加温加湿器使用)装着中の患者。深夜帯入室し同日の準夜帯に引き継ぐ際、回路内に水が溜まっているのを発見した。回路を調べると、呼気側のヒーター用のコードが接続されていなかった。 | 回路内に水が溜まっていること、各勤で行う呼吸器チェックは行っていたにも関わらず未接続であったことに気付けなかった。アラームも鳴らないし、患者のバイタルサインにも変化がなかったこと、加温加湿器使用の人工呼吸器の回路接続について知識がほとんどなかったこと、またそれが前勤務帯から使用されていたので、問題ないだろうという過信が今回の原因と考える。 |
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50 | 準夜勤務者と深夜勤務者で呼吸器の回路と設定をダブルチェックした。温度センサーが電熱線入りの蛇管ではなく、呼気側の蛇管に設置されているのを発見した。口元温度センサーの表示を確認すると、通常39度に温度管理されているはずが、44度を示していた。 | 日勤帯の時点で、温度センサーが蛇管の上ではなく、下側に配置されていた。受け持ち看護師に、結露が溜まることにより温度センサーが狂うため、蛇管の上に配置するように指導する。電熱線のある吸気につけるところを呼気側につけてしまっていた。また、正しい組み立て・口元温度表示の観察・異常値の知識不足により発見が遅れた。呼吸器の使用頻度が少なく、正しい呼吸器の使用方法の認識ができていないことと、他者が設定したことが正しいと認識してしまい、本来の違った目できちんと確認を行うことができていなかった。 |
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【加温加湿器】 | ||||
51 | 痙攣重積で挿管管理の児が入室するため、呼吸器やベッドの準備をして入室を待った。児が入室し呼吸器をつないだ。準夜帯に勤務を引き継ぎ呼吸器管理からオキシベントに変更した際、蒸留水が加湿器に入っていない状態で加湿器の電源が入っており3時間経過していたことがわかった。 | 呼吸器に専用蒸留滅菌水を準備したが加温加湿器には接続していなかった。酸素・空気の配管を接続し加温加湿器のスイッチを入れるが滅菌水が接続されているかを確認していなかった。 |
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52 | 人工呼吸器KV-1の加湿器スイッチが入っておらず、約4時間加湿されていない状況であった。 | KV-1のチェックリストに沿って観察を行ったが、隣の作動ランプを加湿器のランプと間違えていた。またKV-1を使用するのは初めてであり、知識に不足があった。入室時複数の看護師が関わり、確認の注意が散漫となったことと、機械本体と加湿器の向きが同方向を向いていなかったことも事故発見が遅れた原因と考える。 |
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【その他】 | ||||
53 | 患児はカニューレ挿入し、人工呼吸器による呼吸管理が行われており、カニューレバンドを隔週交換していた。今月から首ケアで、左側のテープを外し固定を行っており、カニューレバンドはきつめに固定されていた。シーツ交換、更衣後に自発呼吸出現したが、アンビュー加圧を行うことで、SpO2上昇スムーズであった(胸のあがり有、バギングの抵抗なし)。5分ほどしたところで、左側臥位にすると、SpO286%に低下し、アンビュー加圧実施。胸が上がらず、アンビューが押せなかったため、カニューレを確認すると、カニューレバンドの固定テープ(本人の右側)が切れており、カニューレが浮いた状態で抜けていた。 | 他チームのリーダーを呼び、カニューレ挿入した。カニューレ挿入に時間がかかり、児が嫌がったため、SpO242%まで低下した。カニューレ挿入後、酸素フラッシュ、アンビュー加圧を行った。医師診察中、再度カニューレ抜去あり、カニューレ再挿入行った。その際、自発呼吸あり、SpO2100%を維持した。 |
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ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第19回ヒヤリ・ハット事例「放射線検査」)
No. | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【X線検査】 | ||||
54 | 患者はイレウスのためイレウスチューブが挿入され、持続で点滴を行っていた。放射線撮影のためストレッチャーにて撮影室に移動し、ストレッチャーから撮影台に移動する際、放射線技師は、患者が自力で立位困難のためマットごと移動した。点滴は気をつけていたため介助したが、イレウスチューブは、固定されていることに気付かず移動したため抜けてしまった。移動には病棟の看護助手が介助していた。 | 放射線技師の患者全体の把握が不十分だった。病棟から、チューブ管理上の問題点を放射線技師に十分申し送りがなかった。チューブ管理が重要な患者の介助に看護師が付いていなかった。 |
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55 | 入院患者の単純X線撮影を行った。臥位で全脊椎の撮影時に体位変換を行ってもらった。その際にカセッテ(フィルム入れ)とグリッド(散乱線除去用鉛板)の隙間に前腕部の皮膚が挟まれて、皮膚から出血した。すぐに外来看護師を呼び、ガーゼを貼る、消毒をするなどの処置を行い止血した。また、この旨を患者が所属する病棟に連絡を行い、経過観察するよう依頼した。 | 通常サイズのグリッドは、カセッテに一体で挟むことのないタイプを使用している。全脊椎は特殊サイズであった。 |
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56 | 乳房撮影で左右乳房をそれぞれ2方向ずつ、圧迫撮影を行った。患者は終了後、胸部前上部が赤くなっていることに気付いて放射線科受付に戻った。看護師と相談し、撮影前後に使用した弱酸性、エタノール含有のウェットティッシュが刺激になったのでは、と考え水で湿らせたガーゼで発赤部分を患者本人に拭いてもらい看護師が軟膏を塗って処置した。しばらくして、ヒリヒリするので皮膚科を受診したい、と再度戻られ皮膚科受診となった。診察の結果、特に異常はなかった。 | 患者の撮影オーダー記載情報ではアルコール禁ではなかったが、体調の影響でウェットティッシュが刺激になったのかもしれない。乳房撮影後に圧迫した部分が発赤した場合、撮影で皮膚が発赤することは珍しくなく、時間がたてば自然に治まることを説明していなかった。乳房撮影は乳腺を広範囲に描出させるために圧迫板で圧迫し撮影を行う。その際、乳房のあたりの皮膚を引っ張りながら圧迫するため、撮影後、皮膚が発赤することは珍しいことではない。 |
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【CT線検査】 | ||||
57 | 造影CT撮影の際に管電流を本来よりもかなり低く設定してしまった。その後気付きすぐに撮影プランを組み見直した。 | 業務手順を遵守せず、事例ごとの設定に注意がいかなかった。本来の画像よりも造影効果の低い画像になってしまった。 |
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【MRI線検査】 | ||||
58 | MRIの造影検査で、医師が造影剤を注入する際に手の置き場がなく注射しにくそうだった。手台があれば便利だろうと技師が磁性体と知らずMRI室に持ち込み、MRI装置に吸着させた。患者、医師、技師に怪我はなかったが、ガントリーの中へ吸着したため検査が中断し、もう一台の装置で検査することになった。機器の販売名:フィリップス、機種:Achieva3.0T、型番:なし、製造年月日(設置年月日):H20,12 | MRI装置取り扱いの知識不足。 |
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59 | MRI検査の前処置の点滴介助を行った。点滴固定のためMRI用と明記してあるシーネを使用した。このシーネは小児用としては長くほとんど使用したことがなかったが、なぜかMRI用と記載してありおいてあった。点滴をしながらMRI室に入り、主治医と放射線技師により患者を台に移動させたところ、シーネ固定した上肢が突然浮いた。主治医が患者の上肢を押さえ、放射線技師がスイッチを切りシーネを確認した。シーネが金属製であるとわかった。 | 金属製のシーネにMRI用と明記してあった。ほとんど使用していなかったシーネが、いつも使用するシーネと同じところに置いてあった。 |
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60 | MRIの検査で車椅子の患者を支えながら撮影室に入室した時、たまたま胸に触ったら突起物が触れた。安全確認項目の中でペースメーカー埋め込みの項目は「無し」となっている事は事前に確認していたが、本人に再度確認しても答えられる状態の患者ではなかった。主治医に連絡し確認すると、ペースメーカー埋め込みをしているとの事であり、検査は中止となった。 | 不明 | ・MRIに対する安全項目確認は事故のないように必ず記載を依頼しているが、記載内容が今回のように間違っていると即、大きな事故につながる。 ・機械的にチェックせず、必ず確認をする。 ・撮影時にも主な項目は確認を行うようにする。 |
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61 | 入墨のある患者であった。MRI検査前の外来看護師による問診時に入墨についての確認がされていなかった。また、カルテには問診の結果異常無しにチェックがついていた。直前の放射線技師による問診時に入墨がある事がわかった。当院の基準では入墨は、発熱や変色の可能性がある事を説明し、同意を得た事をカルテに記載した上で検査する事になっていたが、カルテに記載はなかった。放射線技師が同意をもらい、外来診療科に連絡した上で、検査を施行した。検査中も違和感がないか確認し、問題なく検査を終了した。 | 問診確認の重要性の認識が薄い。問診者が確実に問診後カルテに記載し、放射線技師が検査前にそれを確認して検査する流れであるが、カルテが信頼できないものであってはならない。 |
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62 | 4・1稼働の超高磁場装置と呼ばれる3テスラMRI装置で肩の検査を行った。患者は膝にMRI対応の人工関節があり放射線科医師の判断で検査を行った。検査終了後、人工関節部に熱感を感じたと患者より報告を受けた。放射線科医師より主治医、病棟看護師に連絡した。熱感が治まるまでMRI待合室にて経過観察した。 | 検査前に緊急の呼び出しブザーを手渡し、どのようなことでも鳴らすように指示したが我慢したとのことであった。高磁場であるほど電波照射は強くなり発熱のリスクは高まる。 |
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63 | 23時ごろ、医師から手術後のMRI依頼の連絡があった。患者は医師2名でMRI室に連れてきた。ストレッチャーの患者は病棟の布団をかけていたため前室で技師が患者の布団を取り、頭と胸(補聴器、ペースメーカー)をチェックし、医師に何もついていないか(磁性体)確認したところ「何もない」との返事だった。MRIの問診票は持参していなかった。MRI室に入り布団ごとMRIベットに乗せ代えてベットを移動した所「ピー」と警報音が鳴った。足元の布団を取るとシリンジポンプが乗せられていた。シリンジポンプを外して検査を行い、MRI室に持ち込まれたシリンジポンプは動作が保障できないので、MEでチェックすることを勧めた。 | 頭と胸(補聴器、ペースメーカー)をチェックし、医師に何もついていないか(磁性体)確認したが、足元のチェックを怠った。MRIの問診票は持参していない。全身布団で覆われていた。 |
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64 | 頭部造影MRI検査のため患者を検査台の上にのせ、点滴ルートの延長チューブを伸ばして、ガントリーの中へ送った。患者の「引っ張られている」との訴えに、確認するとベッドの隙間にチューブが挟まれていた。直ちにチューブを取り出し穿刺部を確認するとサーフロー針が抜けかけていた。医師に報告後、改めて針を刺し直し造影検査を続行した。 | 業務手順や確認手順が、明確にされていない事による確認不足と確認不備。撮影を行う技師と他職種との連携不備。 |
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【超音波検査】 | ||||
65 | 心不全にて酸素7L投与中の患者であった。出棟時ストレッチャーに移動するため酸素ボンベにルートをつなぎ直し、心電図・血管超音波へ出棟した。血管超音波に移動したところで、発汗を伴う呼吸苦が出現した。検査技師が酸素ボンベの残量が0であることに気付き、病棟看護師がボンベを交換しに行き、サチュレーションフォロー、一時的に酸素9Lまであげ、呼吸苦が消失しサチュレーション安定したことを確認し帰室した。帰室後はバイタル安定し、症状悪化なく、SPO2100%保てていたため、最終的に酸素7Lとなった。 | 酸素ボンベに酸素をつなぐ際、酸素の出る音と、指で酸素が流れていることを確認したが、酸素残量を見ていなかった。患者の検査にかかる時間と、今患者に投与されている酸素の量を考え、どれくらいの酸素が必要であるかに対する意識が不足していた。 |
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ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第20回ヒヤリ・ハット事例「電気メス」)
No. | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【近隣組織(臓器)の損傷】 | ||||
66 | 手術中、電気メスを適切な位置に戻さなかったため、ドレープに穴が空き、患者の左大腿部に潰瘍を形成した。 | 電気メスを適切な場所に戻さなかった。 |
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【熱傷】 | ||||
67 | 入院患者の背部腫瘍摘出術中、医師は電気メスを使用し、術野に置いた。電気メスはスイッチが入ったままの状態で置いていたため、電気メスの先が当たっていた皮膚に米粒大の表皮剥離が出来た。 | 不明 |
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68 | 創縁ガーゼをコッヘル鉗子で把持する時に電気メスのコードも把持してしまいショートし、患者の皮膚に軽度(0.3×0.3mm)の熱傷を生じた。 | 創縁ガーゼにコッヘル鉗子をかける際の確認不足。 |
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69 | 看護師は胃全摘術の直接介助で、ハーモニック(超音波の摩擦熱でたんぱく質を凝固し、止血する機器)を使用していた。先端が60度~100度に上昇する為、使用後の受け取りや先端の管理には手で受け取る様に注意していた。術者医師が使用後、患者の下腹部上に置かれ、ハーモニックの先端が浮いた状態となり、その上に介助医師が手を置き、「熱い」という声で気付いた。ガウンに小さな穴が開いており、皮膚は1mm程度の小さな発赤があり、痛みはないとのこと。患者には影響はなかった。先端が熱くなる事は医師は理解していた。 | 医師と看護師の距離が長く、手渡しができなかった。事前に医師・看護師間での打ち合わせ不足。 |
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70 | 閉創後、直接看護師が、創部の周囲に電気メスが原因と思われる小豆大の熱傷の跡を1ヵ所発見した。同部位には水泡も形成されていた。執刀医に報告・確認したが、いつ形成されたかは不明であった。 | 医師が電気メスを使用した後、シーツの上に無防備に置いてしまった。そして、術中操作の際、電気メスのスイッチに触れ、患者の皮膚にメスの先が当たったと考える。同様の事例は以前にも発生しており、看護師・医師共に注意を促していた。 |
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71 | 肝臓切除の手術中に執刀医が電気メスを使用後、電気メスを患者の腹部に置いた。スイッチを押していないが皮膚が焼けた。すぐに皮膚から離し、医師が確認すると血液凝固によりスイッチがONになった状態で固まっていた。看護師と助手をしていた医師で確認した時にはスイッチが正常に戻ったがその後、新しい電気メスを使用した。熱傷に対して創処置(炭化部分を掻破し縫合)を行った。 | 手術機器取扱いの確認不足。注意力、観察力の不足。 |
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72 | 手術時、医師がシーツの上に電気メスを置いた。その部分に穴が開き、シーツを捲くると患者の左大腿内側に約1mmの発赤を確認した。 | 電気メス使用後、医師がシーツの上に置いた。 |
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73 | 手術時、電気メスが術野の外に置かれた際に作動して患者の腹壁に熱傷をきたした。 | 助手と患者の間に挟まれる形で電気メスが置かれていたため、電気メスのボタンが押されていることに誰も気付かなかった。 |
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【患者への影響なし】 | ||||
74 | 手術後器械を片付けた際、リユースのバイポーラ電気メスコードを破棄してしまった。片付け担当の補佐が不足に気付いた。 | 電気メスや、対極板がバイポーラコードと絡まり、確認しにくい状況になっていた。また患者のベッド移動の手伝いをしようと焦っており、コードを分けて捨てることを後回しにした。その後、追加器械記入表・単品カードで確認することなく絡まったままの状態で捨ててしまった。 |
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75 | 全身麻酔下で、電気メス使用経過中パチンと音が鳴った。術野周囲を調べたら電気メスの替え刃の接続部分のプラスチックが欠けていた。術終了間際だったので体内確認後閉創した。 | ディスポ製品を再滅菌して使用していた。滅菌回数は不明。 |
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76 | 手術中、電気メス使用時に発火した。理由として、電気メスの先端をネラトンカテーテルで被服絶縁し使用していた結果、術野付近に置かれていたガーゼに引火した。それに伴う熱傷等の影響は無かった。 | 医療用機器の保守・管理の問題。安易にネラトンカテーテルを代替品として使用していた。 |
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【その他】 | ||||
77 | 病棟看護師から、患者が皮膚が弱いという申し送りもなく、観察時も特に弱そうではなかったため、電気メスの対極板をいつも通り患者の右大腿へ貼布した。手術終了後、対極板を医師が患者の右大腿より剥がした。剥がした後の右大腿部を見ると、内出血を認めた。表皮剥離は無かったため、処置はせずそのまま経過観察となった。 | 対極板を剥がす際、皮膚を抑え、ゆっくりと剥さなかった。医師等、他の人が剥がす際に、ゆっくり剥がすよう声かけを行わなかった。患者の皮膚の状態を観察できていなかった。 |
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【不明】 | ||||
78 | 全身麻酔下で胃全摘術であった。術前、器械出し看護師は電気メスの刃が破損していないことを確認していた。術中、電気メスの刃をクリニートにて削った際、電気メスの刃の一部が破損していることに気付いた。医師に確認したが、破損部は小さく発見できなかった。 | すでにかなり消耗されているものだった。 |
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79 | 手術の患者が手術開始後30分経過したところ電気メスより水分がたれてきた。手術室看護師、医師が気付き電気メス交換するとともに術野生食で洗浄後ドレープを交換した。 | ディスポの電気メスを再生利用している。ステライド滅菌は水分に反応しやすいため、終了後の器材は安心だと思っていた。電気メスは内腔があるため水分が貯留する構造である。水洗い後乾燥・エアーガンで水分を除去し滅菌しているが不完全であった。 |
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80 | 局所麻酔下での手術中に電気メスのエラーメッセージが表示されたと連絡が入った。確認すると、大腿部に貼付してあった対極板が多量の発汗で剥がれかけていた。直ちに対極板を交換し四辺をテープで固定した。そのまま放置し手術が続行されると熱傷などの事故が発生したと考えられた。 | 電気メス使用時は対極板を表示するが、対極板が密着していないと皮膚に熱傷がおきる危険性がある。手術室スタッフ全員が教育、周知されていたか確認し教育する。臨床工学技士に機器の全てを任せるのではなく医療従事者として必要な知識は認識しておかなければならない。 |
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81 | 電気メスの設定を間違えた。上部消化管手術であったが下部消化管手術と同様の設定となっていることに、看護師が手術開始30分後に気付いた。 | 術衣の介助待ち医師がいたため焦っていた。電気メスコードを接続する際に設定を読み上げて医師に確認する手順を飛ばした。設定した際に上部消化管手術の設定にしたと思い込んでいた。 |
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ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第19回ヒヤリ・ハット事例「薬剤」)
No. | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【その他】 | ||||
82 | 上腕から中心静脈カテーテルを挿入し、輸液ポンプとシリンジポンプを使用し点滴が施行されていた。ヒューマリンR48E+生食48mL、1.5mL/hで16時より施行されていた。4時間後、閉塞アラームが鳴り、訪室すると2時間前に確認したところよりシリンジが進んでいなかった。患者は右側臥位になっていること、右腕を頭の上に上げる動作が多かった。生食でフラッシュし再開。1時間後に再度アラームが鳴り、シリンジ内にメインが逆流し、1mL戻っていた。薬剤を作り直し、シリンジポンプも交換したが、更に1時間後アラームが鳴らず、全くシリンジが進んでいなかった。血糖測定結果より0.5mL/hに変更する。その後アラームが鳴らなく、8時間で3mLシリンジは進んでいたがシリンジの中に少し黄色いものが混じっているようであった。医師に報告し、投与方法が変更となった。 | 患者は右上腕から中心静脈カテーテルが挿入されており、右側臥位をとることが多くカテーテルが右鎖骨で屈曲している可能性があった。シリンジポンプの流量が少なく、圧力が負けてしまったと考えられる。以前同じ事故が起こり、調査依頼したが、結果の周知の間に同じ方法でインシュリンが投与されていた。その後、シリンジポンプの解析では上腕PICCのため体位により閉塞した際、ポンプはボーラス注入を回避するよう作動するため薬液が戻るため量が進まないことが判明した。 |
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観察が不十分であった 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った |
ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(第20回ヒヤリ・ハット事例「薬剤」)
No. | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【薬剤量間違い】 | ||||
83 | 塩酸モルヒネ3A+セレネース1A+蒸留水2mL持続皮下注行っている患者。咳嗽と呼吸苦あり、指示にて1時間量の0.3mLをフラッシュ(3回目)し、フラッシュ後0.35mL/hへベースアップしようとするが、誤って早送りボタンを押してしまい、さらに0.02mLフラッシュしてしまった。結果、患者に0.02mL多く投与されてしまった。 | 患者が苦しそうなため、早く操作しなければと思い焦っていた。夜間のため病室が暗く手元の照明も薄暗くPCAポンプの表示が見えにくかった。以前、PCAポンプとデュロテップパッチを併用している患者のときに、フラッシュ量が時間流量よりも多く、PCA機能が使えなかったため早送りでフラッシュ対応をしたことがあり、今回の患者もフラッシュの操作をPCAスイッチで行わずに早送りボタンで行っていた。 |
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確認が不十分であった 心理的状況(慌てていた・思い込み等) |
【速度間違い】 | ||||
84 | 点滴管理中の児の、流量間違い。前日に5%糖液0.5mL/hから20%糖液0.3mL/hへ変更の指示があった。深夜勤務の点滴ラウンドの際、20%糖液が0.5mL/hで投与されているのを発見した。 | 点滴の変更指示は他チームのリーダーが受け、該当チームのリーダーへ渡すときには、沢山変更内容があるとだけ伝えられワークシートが渡された。変更部位に医師の赤印はされていなく、他チームのリーダーが付けた蛍光ペンでの印が変更の所にも変更でない所にもされていた。その後も指示が次々変わり計3回ワークシートが出され、ワークシートを差し替えた。蛍光ペンでの印部位には、同じように印を付けていたが流量が減量になっていることには気が付かなかった。 |
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確認が不十分であった 記録等の記載 |
85 | 50%ブドウ糖50mL+ヒューマリンR10単位+グルカゴンG・ノボ1mgを25mL/hで設定するところを2.5mL/hで設定してしまい、次勤務者が発見した。135mLの過少投与となった。 | 新しい薬剤開始時にはダブルチェックをすることを知らず、一人でシリンジポンプを設定してしまった。 |
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確認が不十分であった |
【その他】 | ||||
86 | 患者の容態が急変し、病棟にストックしてあった輸液ポンプ3台とシリンジポンプ2台を使用した。病棟ストックの際にはポンプの充電はしていない。そのポンプは中央機材室からメンテナンス後に持ってきたものか、患者に使用後、ストックしていたかは不明であった。病棟にて使用開始したが、その際はコードをさして使用した。使用開始1時間後、カテ室へ移動した。約3時間カテ室でポンプを使用し(その際にはコードをさしていたと考える)カテーテル室からCT室へ移動した。その際に全てのポンプから充電切れのアラームが鳴り、病棟でのポンプの充電に関して不備があったことが判明した。CT室では新しいポンプへ交換した。微量の薬品について充電が切れ、薬品が投与できなくなった場合には生命の危機の可能性もあった。 | 日ごろは患者に使用後は中央機材室へ返却しているようにしている。ベッドサイドではコンセントに接続している。上記のことに対しての徹底が不十分であったと思われる。病棟ストックについての管理不十分。 |
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保守・点検の不備 |
87 | 患者は5FUをバクスターインフュージョンポンプにて5日間持続投与していた。ポンプ除去の朝、「今日でこれ終わりですね。」と患者が受け持ちの看護師に聞き、受け持ち看護師が中身を確認すると、ポンプ内の抗癌剤が減っておらず、左鎖骨窩静脈ルートの板クランプがクランプされたままであった。すぐにリーダーに報告、チューブの逆血確認し逆血みられた。「すぐに入れてくれ」と患者が言ったので、オープンにし主治医に報告した。主治医より再開し残りの抗癌剤を入れるよう指示があり、予定より5日遅れでポンプを除去する事となった。 | 数ヵ月前から抗癌剤投与方法をシリンジポンプからバクスターインフュージョンポンプに変更した。自然に投与されるとのことで、入っているだろうと思い込み、十分な確認をしていなかった。ポンプにより注入速度が異なる事例の経験があり、5日間のうちに確認した2人の看護師は、少し遅いがこのくらいかと判断し、ルートを十分に確認しなかった。通常は肘関節からCV挿入するが鎖骨窩から挿入しており、いつもと異なるルートであった。接続した医師、メンバー看護師の何人かは板クランプを知らなかった。板クランプは三方活栓と一緒にガーゼに包まれており、板クランプがあると思わず十分な確認をしなかった。 |
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確認が不十分であった 心理的状況(慌てていた・思い込み等) |
88 | ジェムザール投与中の患者。ジェムザールを108mL投与したところで、患者より濡れていると訴えあった。確認すると、コアレスニードルとルートの接続が斜めに入っておりそこから薬剤が漏れてシーツにまで達していた。 | 延長チューブをつけた状態でルートを交換することに慣れていた。カイトリル・デカドロンの投与後、ジェムザールに付け替えた後に針の刺入部は漏れていないことを確認したが、ルートの接続部位の確認を怠っていた。 |
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確認が不十分であった 観察が不十分であった 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った |