独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
メニュー
閉じる
閉じる
閉じる

添付文書、患者向医薬品ガイド、
承認情報等の情報は、
製品毎の検索ボタンをクリックしてください。

安全対策業務

平成22年度 第2回医薬品・医療機器安全使用対策検討結果報告(医薬品関連事例) 別添1

本文|別添1|別添2別添3別添4

医薬品の安全使用に関して製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられた事例(事故事例「薬剤」)

No. 報告回 事故の
程度
段階 事例の内容 背景・要因 改善策 調査結果
【薬剤間違い】
1 第19回 障害
の可能性
なし
指示段階 患者はパクリタキセルの3回目投与目的で外来点滴室に来院(過去2回は病棟での投与)した。担当医師が化学療法剤投与予定表に本来投与予定のパクリタキセル112mgと記載したが、タキソテールと既存印刷された専用の注射指示票を使用し指示を出した。その後、化学療法剤投与予定表と注射指示票2つの伝票を薬剤部外来ミキシングルームへFAXにて送信した。送信された投与予定表と登録レジメン(weekly パクリタキセル)との照合の後、薬剤師による鑑査、薬品取り揃えが行われた。このとき化学療法剤投与予定表と注射指示票を確認せず注射伝票のみで確認したため、誤って記載されたタキソテール112mgを混合調製し外来化学療法室に払い出した。点滴ラベルは前歴データから打ち出されたためパクリタキセルが表示された。外来化学療法室で処方医師と看護師が点滴ラベルと注射指示票および調整後の空容器との照合を行ったがラベルの薬品名が違うにもかかわらず、間違いに気付かず投与した。外来化学療法室では、これまでも、実施時には、注射伝票との確認はしていたが、化学療法剤投与予定表と注射伝票との照合はしていなかった。 「ドセタキセル」については、タキソテールの商品名で指示をすることになっているが、「パクリタキセル」はそのまま成分名で表記するルールであるため、実施する人の頭の中で名前を変換する作業が生じ、混乱する可能性がある。
当院では、タキソテールがまず使用認可され、その後タキソール「パクリタキセル」が導入された。間違い防止のため後から認可されたタキソールは「パクリタキセル」の名称を使用するルールになっていた。照合や確認する機会が複数回あるため、確認者それぞれの責任の認識が薄くなり、かえって照合や確認がおろそかになっていた。外来化学療法室での照合に投与予定表が使用されていなかった。当院外来には、薬剤ごとに一般的なプロトコールを既存印刷した注射伝票が10種類程度あり、医師はそれを用いて処方している。一連のクールの投与予定表が入院、外来で分かれてしまうため治療法の認識が薄くなってしまう。抗癌剤への確認の重要性、リスク意識が低い。
  • 「タキソテール」は、「パクリタキセル」と同様に成分名で「ドセタキセル」とすることに表記のルールを変更する。
  • 外来での化学療法点滴時にも、予定表との照合できるように薬剤部がコピーして、ミキシングした点滴と一緒に搬送する。
  • 照合する機会が複数回あるが全て通り抜けている。照合するポイントを明確にし徹底する。
  • 初回鑑査時にレジメン、投与予定表、注射指示票の照合確認を、最終鑑査時にレジメン、投与予定表、注射指示票、薬剤本体との照合確認を徹底する。
  • 投与予定表との照合を外来、入院を通してシステム的に連動して行う。
  • 抗癌剤の危険性を再認識してもらうため、部署内の勉強会等で周知の徹底を行う。
タキソテールとタキソールの名称類似性については、平成15年11月27日付医政発第1127004号・薬食発第1127001号連名通知「医療機関における医療事故防止対策の強化について」及び平成20年12月4日付医政発第1204001号・薬食発第1204001号連名通知「医薬品の販売名の類似性等による医療事故防止対策の強化・徹底について(注意喚起)」により、医療機関に注意喚起しているところであり、製造販売業者においても誤用防止のために製品に関する情報提供及び表示の変更等を実施しているところである。
しかしながら、過去より死亡を含む同様事例が繰り返し報告されており、また、平成14年8月29日付医薬発第0829006号「医療安全推進総合対策への取り組みの推進について」においても企業は、患者の安全を最優先に考えた医療安全を確保するための積極的な取り組みが求められており、今般、再発防止の観点から名称の変更が必要であると考える。
 

 

医薬品の安全使用に関して製造販売業者等による対策が必要又は可能と考えられた事例(事故事例「その他の薬剤」)

No. 報告回 事故の
程度
段階 事例の内容 背景・要因 改善策 調査結果
【薬剤間違い】
2 第20回 障害
の可能性(低い)
準備段階 切迫早産の患者は、ウテメリン1日3回(8時・12時・18時)内服していたが、患者用の処方が出されていなかった。日勤の看護師は、当番医に確認し、15時と眠前に内服するよう指示を受けた。看護師は、病棟定数薬から2回分を持っていき、患者へ渡した。準夜勤の看護師は、妊婦から「お腹が張ったのでもう1錠飲みました。同じ薬ですよね」と空シートを受け取ると、ウテメリンではなく、メテルギンであった。 病棟定数薬から使用する事が日常から行われていた。病棟定数薬の見直しが定期的に行われていなかった。患者個人としての処方がなかった。医師へ依頼したが、医師には伝わっていなかった。患者へ説明する際、飲み方を伝えただけで薬剤の説明をしなかった。ウテメリンが白い錠剤であるため、あえて間違いを防ぐため薬剤科では赤い錠剤「メテルギン」を採用していた(メテナリンは白い錠剤)が当該病棟看護師は意識していなかった。病棟定数薬の引き出しは、使用頻度の高いウテメリンを手前に、使用頻度の低いメテルギンを一番奥に配置していた。当事者は患者に渡す薬は「ウテメリン」と認識していたが、病棟定数薬の引き出しの一番奥にある「メテルギン」を取った。エラー行動の背景は本人もわからないが、あえて言うなら直前に分娩の別患者の対応をしていたため、混乱していたのかもしれない。
  • 患者への与薬の際の手順を遵守する(患者氏名・薬剤名・投与量・日付などを指差し呼称する)。
  • 患者への説明、指導を行う(薬剤名・作用・服用方法など)。
  • 病棟定数薬の見直す(ウテメリン、メテルギンを病棟定数薬から削除する)。
  • 医師へ受け持ち患者の処方切れのないように、事前に確認して処方することを徹底する。
  • 看護師は処方切れに気付いたら、医師へ伝える。
  • 内服薬の薬袋に薬効を記載し、患者にもわかりやすいようにした。
メテルギン(一般名称:マレイン酸メチルエルゴメトリン)とウテメリン(一般名称:塩酸リトドリン)の両薬剤は逆の薬理作用を有することから注意が必要な薬剤である。 当該事例のメテルギンを確認したところPTPシートに「妊婦禁忌」等の表示がなされていないこと判明したため表示等の医療安全対策が必要と考える。