情報不足等のため製造販売業者による対策が困難と考えられた事例(事故事例)
No. | 事故の程度 | 事故の内容 | 事故の背景要因の概要 | 改善策 | 調査結果 |
1 | 障 害 残 存 の 可 能 性 が あ る | 高 い |
MRI室で検査直前に、患者が心肺停止状態となった。患者は挿管・人工呼吸管理中で、バックバルブマスクでMRI室に向かう。検査中も換気必要、技師に「バックバルブマスクですか」と聞かれ、そうだと答えると、延長用のジャバラを渡され繋いで待つように言われたので、挿管チューブとバックバルブマスクの間に繋いだ。SPO2は移動中から94%前後であったが、ジャバラを繋ぐと90~92%となり、患者の体動も増したが、ジャバラの死腔の影響と考え、様子を見た。その後MRI室へ入り、体動増加していたのでホリゾン1/2A投与、少し落ち着きMRIの中へ。MRI室用のモニターを見ると、SPO2が80~86%を示したり、測定できなかったりしており、患者自身の自発呼吸も弱かった。大腿動脈確認してみるが拍動触れず、すぐにMRIトンネルより引き出し頚動脈確認するも拍動触れないため、心臓マッサージ開始、バックバルブマスクも直接挿管チューブへ取り付け換気。ボスミン2回使用、ER移動後二次心肺蘇生法継続、モニター上PEA、その後頚動脈拍動再開。 | 挿管チューブとバックバルブマスクを繋ぐジャバラの使い方を知らなかった。検査の移動のためSPO2の低下を許容した。自発呼吸あり、簡易呼吸器は使いづらいと思った。延長ジャバラの誤った組み立てを防ぐテープが外れていた。 | 知識の共有。予防措置の徹底。確認作業。医学的判断の向上。 | 蘇生バックと気管挿管チューブの間に蛇管を入れて換気したとのことであり、換気は行われていたが、蛇管に貯留したCO2を再呼吸したためにSpO2が低下したものと考える。しかし、当該報告には蘇生バックと気管挿管チューブとを接続する蛇管の使い方を知らなかったと記載されており、実際にどのように接続していたのか、あるいはどのように換気を行っていたのか等の手技が不明であり検討困難と考える。 |
2 | 障 害 残 存 の 可 能 性 な し |
検査前日に入院。別の患者で超音波気管支鏡を使用し、SPDへ洗浄にまわっていたが、その際に気管支鏡の漏水が判明し、翌日の検査に使用できなくなった。超音波気管支鏡は高価であり当院には1本しかなく、ただちに業者に代替機の手配を依頼したが、あいにく手配できず。やむなく検査は延期せざるを得なくなった。 | 当院を含めて一部の施設でしか行われていない特殊な検査で、機器が高価で当院に1台しかなく、業者側もたまたま代替機も出払っているという要因が重なったものと思われる。内視鏡自体も使用開始から5年で初めての故障であり、経年劣化が起こっていたと思われる。 | 院内、他施設から超音波気管支鏡で診断してほしいという依頼が急増しており、精密機器であるがゆえの故障も増えてくる。 | 製造販売業者に問い合わせたところ、漏水は主に気管支鏡の湾曲部で発生し、使用時や洗浄時の取り扱いによる外装の破損等が原因とのことであるが、当該事例においては使用状況やメンテナンス状況等の詳細が不明であり検討困難と考える。 |
3 | 障 害 な し |
術直後のレントゲン写真で左膝内に異物を確認した。器械を点検したところ、電動式骨手術装置に装着する刃のコネクター部の破損が見つかった。患者の患部を透視撮影し、関節内の金属片が確認され再手術し除去した。患者家族に説明し、了解の元に当日手術を行い、患者の回復に影響はなかった。メーカーで破損状況の調査を行った結果、電動式骨手術装置の刃を装着する部分の摩耗があり関与が考えられた。刃の装着や使用に問題は無かった。通常は、コネクター部が術野に届くことはない。考えられることとして、手術中に3回、刃を替える操作を器械台付近で行っていたので、落下してガーゼ等に付着してガーゼを介して体内に移動、遺残したことが予測された。 | 人工骨のメーカーのメンテナンスで使用していた。 刃の交換場所が定まっていない。 |
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当該事象について企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、手技中に鋸刃が金属等と接触し過剰な負荷が掛ったために破損したものとのことであった。 また、当該機器の鋸刃の装着部品が摩耗していたことも要因とのことであった。通常、当該部品については製造販売業者において点検されるものであるが、当該企業には当該機器に対してメンテナンスを行った記録はなく、実際の使用状況も不明であり検討困難と考える。 |
4 | 障 害 な し |
緊急入院後、気管内挿管をして人工呼吸器管理を開始した。夕方ウォータートラップの貯留水を廃棄し、ウォータートラップを下方に引いて接続を確認した。その30分後、日勤看護師と夜勤看護師で人工呼吸器の設定条件や作動状態を確認したが異常は無かった。1時間後、心電図モニターがHR130/minのアラームで訪室した。患者の顔面・四肢にチアノーゼがあり、Spo2 68%であった。直ちにSIMVモードに切り替え、Fio2 1.0に変更し、Spo2 98%と改善した。しかし、人工呼吸器の分時換気量が0を示すなど異常が見られたため、バックバルブで換気を行いながら、人工呼吸器ベネット7200に交換した。人工呼吸器の作動状態もよく、呼吸状態・チアノーゼの改善を認めた。意識レベルの低下は見られていない。その後、初めに使用していたサーボ900Eを確認したところ、吸気側のウォータートラップは外観的に問題は無かったが触れると何か違和感があった。下方に引いてみたがウォータートラップのカップを下方に引いてみたが外れなかった。 |
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ウォータートラップの勘合不良等が考えられるが、ウォータートラップの製品名や勘合状態等が不明であり検討困難と考える。 |
情報不足等のため製造販売業者による対策が困難と考えられた事例(ヒヤリ・ハット事例「皮下用ポート及びカテーテル」)
No. | 事例 | 調査結果 |
5 | 患者は、左乳癌手術後、リンパ節転移陽性のため術後補助化学療法をすすめられ当科紹介となり、術後補助化学療法を開始した。当初、末梢から行っていたが、確保が困難となったため、右鎖骨下静脈より中心静脈カテーテルリザーバーを留置し、化学療法を継続、1ヶ月で完遂した。以降、アロマターゼインヒビター内服で90日毎に外来で経過観察されていた。 中心静脈カテーテルからの化学療法終了6ヵ月後、外来受診時にリザーバーをフラッシュしたところ右前胸部の疼痛を訴え、胸部レントゲンを撮影したところ、カテーテルが断裂、その先端が右肺内にあることが判明した。自覚症状や理学所見上の異常や、血液検査上の異常もなかったが、放置によって重大な合併症が起こりうることが懸念されたため、放射線科でカテーテルインターベンションによって摘出した。 留置したカテーテルの先端が、鎖骨と肋骨に挟まれてちぎれてしまい、心臓を通って肺の中に入ってしまったと考えられる。 |
皮下植込み型ポート用カテーテルが鎖骨と第一肋骨間に挟み込まれたために血管内で断裂し、肺に迷入したとのことであるが、製品名等が不明であり、検討困難と考える。 |
情報不足等のため製造販売業者による対策が困難と考えられた事例(ヒヤリ・ハット事例「放射線検査」)
No. | 事例の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
6 | 撮影した腹部臥位の写真が左右反転で出力され、医師の指摘で気付いた。診察は左右反転していることを認識の上行われ、無事終了となった。その他の画像は担当医師に連絡の上、差し替えを行った。 | 装置が新規導入され、稼動して間もないこともあり、反転出力に変更された原因は不明。 |
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撮影した写真が左右反転して出力されたとのことであり、当該製品の不具合が疑われるが、製品名等が不明であり、検討困難と考える。 |