独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

平成23年度 第3回医薬品・医療機器安全使用対策検討結果報告(医療機器関連事例) 別添3

本文別添1別添2|別添3

情報不足等のため製造販売業者による対策が困難と考えられた事例(医療事故)

No. 事故の
程度
販売名 製造販売業者名 事故の内容 事故の背景要因の概要 改善策 調査結果
1 障害なし ディスポーサブル回路 MG101 佐多商会 人工呼吸器(840)の回路に8mmの亀裂があり、空気がもれ換気量が低下した。 回路を破損するようなことはしておらず、アラーム直前まで作動していた。原因不明。 ME部に相談した。
取扱いには十分に気を付けていき、アラームが鳴ったときには速やかに対応し早期発見に努める。
当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、回路に亀裂があったとのことであるが、使用状況等が不明であり検討困難と考える。
2 障害なし 不明 フクダ電子 SPO2アラームがオフになっていたため、SPO2低下に30分気が付かなかった。 原因不明でアラームがオフになっていた。 各勤務帯始業時にアラーム設定がされていること、オンになっていることを確認して業務開始することをルール化した。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、SpO2アラームがオフになっていたとのことであるが、使用された製品名や使用状況等が不明であり検討困難と考える。
3 死亡 不明 フィリップス・レスピロニクス 事故当日の19:30には患者本人よりナースコールあり。訪室し訴えに対処し退室。その時にはNIPPVマスク装着されており不穏な動作は見られなかった。20:55に心電図モニター上HR40台になっているところをスタッフステーションで発見し、すぐ訪室。訪室時、NIPPVマスクが完全に外れ顔の横にある状態を発見し、すぐにNIPPVマスクを装着。意識なし、顔面蒼白、自発呼吸なし。心臓マッサージ開始。アンビューマスクにて人工換気開始。当直医にて主治医へ連絡しDNRであること確認し、心停止確認し死亡確認される。
  1. NIPPVのアラーム設定がされていなかったことが周知されていない
  2. マスクのもれがひどく常時アラームが鳴るため、本人の希望でNIPPVのアラームを切っていた
  3. 担当看護師は他患者の対応も行っており、訪室時間に間隔があり病状を考えての巡視やモニター観察が行えていなかった
  4. NIPPVの実測値の観察はしているが、数値について異常・正常に対する認識・知識不足
  5. NIPPVのアラーム設定の有無の確認ができていない。アラームに対する看護師の認識が薄い
  6. 慢性呼吸不全の悪化に伴い急変のリスクが高く、CO2ナルコーシスになりやすい
  7. マスクが何故外れていたかは不明。巡回時にはマスク装着はできていた
  1. NIPPV装着時には、臨床工学技士と共に器機の設定値・アラームの設定値について一緒に確認し記録に残す
  2. 臨床工学技士のカルテ記載の権限
  3. 患者情報の共有化ができるシステムの構築
    →MEとの連携が在宅人工呼吸に関しては出来ていなかったため、患者が入院後はMEと看護師で設定を共に確認し、アラーム設定の確認を行い、電子カルテ上に残すようにした。
  4. 原疾患・合併症の病態理解の勉強会の企画・実施
当該企業に確認したところ、当該事象と考えられる事例は情報入手されておらず、使用されたマスクの製品名や装着状況等が不明であり検討困難と考える。
4 障害なし オスピカ ハートワイヤー 平和物産 慢性心不全の患者にCT検査を施行したところ、肺動脈に異物を認め、カテーテルにて除去したところ、ペースメーカーリードの一部であった(オスピカハートワイヤー、 型式TME61T)。ペースメーカー装着は異物発見の9ヶ月前であった.異物による健康被害は発生していない。 開胸心臓手術時に、右心房と右心室に一時ペーシングワイヤーを装着した.当該製品の心筋側部分は、右心室の心筋中層に刺入された.約1ヵ月後にワイヤーを抜去しようとした際に抵抗があり、無理に引き抜くと心筋組織などを損傷する恐れがあったため、体内にハートワイヤーが一部遺残する形で、体外部分のワイヤーを切断した.このように体内にワイヤーの一部を残すことは一般的に心臓血管外科にて行われている方法である。遺残させた場合には、まれに感染を生じることはあっても、今回のように心腔内、肺動脈に入るケースは経験がない.右心室の筋層に刺入されたワイヤーが心腔内に貫入していた可能性、さらには、心拍によって心腔内に移動した可能性がある.それが肺動脈に拍出されたのではないかと推測する。 抜去できず、やむを得ず遺残させる場合には、遺残が判明した時点で、患者に事実を告げ、今後生じるリスクについて説明し、インシデントレポートを報告する。 当該事例については企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、当該製品を30日間留置していたために、心筋組織との癒着により抜去困難となったとのことである。当該製品の添付文書には留置後10日以内(上限30日以内)の抜去を推奨する旨が記載されているが、心筋組織に刺入して使用するものであることから、患者の状態等によっては抜去困難となることも避けられない有害事象と考えられ、モノの観点からは検討困難と考える。
5 障害残存の可能性なし シリンジポンプTE-131

イノバン注シリンジ
テルモ


協和醗酵キリン
HR80代で経過中だったが、HR70代となり医師に連絡し処置中にイノバンのシリンジポンプの閉鎖アラームが鳴り、注入が終了しているのを発見した。残量アラームが鳴らず交換が遅れてしまった。シリンジ交換後はバイタル安定した。 シリンジポンプは中央管理となっていて、臨床工学科での点検を行っている。点検は臨床工学科に返品されたときに行われている。ICUでは担当看護師はマンtoマンで看護していて、イノバンシリンジは時間どおりに注入されていた。 医療機器の管理は臨床工学科で行われていて、今回の不具合を報告する。機器を過信する傾向があり、自分の目での確認を行う。 当該企業に確認したところ、当該事象と考えられる事例は情報入手されておらず、残量アラームが鳴らなかった原因等の詳細が不明であり検討困難と考える。
6 障害残存の可能性がある(低い) ドリル シンセス 全身麻酔下で観血的に骨折部を整復し、プレートをスクリューにて固定するため、専用ドリルにてドリリングを行ったところ、ドリルの先端(約6mm)が破折し骨内に迷入した。その後、術中X線にて確認したところ骨内(上顎洞粘膜内)にドリルの先端を認めたが、除去するためには大幅な骨削除を必要とし再度のプレート固定が困難になると判断されたこと、放置しても問題を生じる可能性が低いと考えられたことから、約半年後に予定している「プレート除去術」時にドリル先端の除去を行うこととし、手術を終了した。 φ1mmの細いドリル(メーカー指定の専用のもの)を使用した。 不明 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、プレートをスクリューにて固定する際の専用ドリルが破損したとのことであるが、使用された製品名や使用状況等が不明であり検討困難と考える。
7 障害なし 不明 不明 左内頚CVカテーテル固定の影響による水胸。 知識不足。 確認を徹底し、対応していく。 中心静脈カテーテルの固定の影響による胸水とのことであるが、留置手技や固定方法等が不明であり評価困難と考える。
8 障害残存の可能性がある(低い) 不明 不明 患者は呼吸困難、末梢冷感著明で酸素飽和濃度38%と低値を認めたため救急隊により酸素投与を開始し本院に救急搬送されてきた。本院の高度救命救急センター入室後、気管内挿管を施行し、胸部X線撮影を施行した。両測肺野全体と肺門部で増強する浸潤影を認めた。左内頚よりエコーガイド下に中心静脈ルートを確保。
確保後、酸素飽和濃度の低下、血圧が100台まで低下し、胸部X線にて左気胸を認めた。直ちに左側胸部から胸腔ドレーンを挿入し、カテコラミンの投与を開始した。メジャーリークあるも血圧改善せず、左側胸部ドレーンを28Frに交換し位置調整後、ドレーン挿入試みるもリークは不十分であったため、最初の切開部より再挿入して固定した。CTにて気胸の改善を認めたが、両測の圧排性の無気肺は残存しており、両測背側に浸潤影、右胸水あり。左皮下気腫あり。腎萎縮を認めた。人工呼吸管理下、ラシックス投与を開始し、利尿を図り、反応は良好であった。酸素化も入室時と比較して改善を認めた。抜管、酸素化良好、中心静脈ルート確保時の気胸はドレーン挿入にて改善を認めた。
明らかな原因は不明である。中心静脈ルート確保後、確認のため施行した胸部レントゲン写真にて左気胸が判明したものである。本事象は中心静脈確保後に行った事象であり、中心静脈ルート確保時の手技に伴う合併症の可能性が考えられるが、患者はもともと肺気腫もあり肺が脆弱で、気管挿管後の人工呼吸の影響も否定できない。 患者の状態を確認し、中心静脈ルート確保により合併症が考えられる患者に対しては、そけい部からのルートも検討する。 中心静脈カテーテル留置後に気胸を認めたとのことであるが、人工呼吸による影響や患者の要因も考えられ、検討困難と考える。
9 障害なし 不明 不明 気切カニューレの自然抜去 2日前に新しい機械に入れ替えており、知識が不十分であった。 使用方法を熟知してから使用する。 気管切開チューブが自然抜去されたとのことであるが、使用された製品名等が不明であり検討困難と考える。
10 障害残存の可能性がある(高い) 不明 不明 細菌性脳炎、脳出血により意識障害、脳幹反射消失、人工呼吸管理中。全身管理を行っていたが血圧は徐々に低下しsBP50-80mmHgで推移、平坦脳波を認め脳死に近い状態であった。
気管切開後、初めての気切チューブ交換日であった。10:25最初の挿入(7.5Fr)でSpO2安定、加圧で抵抗なかったが吸引チューブが入らず一旦抜去。10:35 2度目も吸引チューブが10cmまでしか入らず徐々にSpO2低下、加圧で抵抗あり。
不明 不明 気管切開チューブに吸引チューブが挿入できなかったとのことであるが、使用された製品名や手技を含めた原因等の詳細が不明であり検討困難と考える。
11 障害残存の可能性がある(高い) 不明 不明 IVHと点滴ラインの接続部が外れ(原因は不明)意識レベル低下。空気が体内に入り脳梗塞発症が判明。 IVHカテーテルの外れた原因は不明。医師の診察後25分間の間に外れている。ミトンを装着していたが、2日前から外していた。点滴ラインを引っ張るような行動もなかった。座位の状態でカテーテルが外れていたため、頭部に空気が入っていったものと考えられる。 訪室時には、カテーテルの挿入部、接続部の確認を徹底する。身体拘束のミトン等の解除について再検討する。 中心静脈カテーテルと点滴ライン接続部が外れたとのことであるが、使用された製品名や接続の状況等が不明であり検討困難と考える。
12 障害なし J-VACドレナージシステム ジョンソン・エンド・ジョンソン 胸腔ドレーンとJ-VACの接続部が外れていた。 テープの補強が不完全であった。 体交時は、チューブの確認を確実に行う。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、胸腔ドレーンチューブとドレーンバックの接続が外れたとのことであるが、固定方法等の詳細が不明であり検討困難と考える。
13 障害残存の可能性なし トロッカーアスピレーションキット 8Fr 日本コヴィディエン 実施前に心エコーにて心臓の位置、肺の位置を確認し最も安全に穿刺可能と考えられる部位と角度を選択しマーキングした。19:30頃より、病室にて、局所麻酔下に左胸部より、トロッカーアスピレーションキット8Frを挿入した。挿入後、アスピレーションキットから、拍動性の血液の流出を認めた。動脈性と考えられたため即座にカテーテルを遮断した。患者の状態は変化無く、血圧110/60mmHgであった。キットをその状態から動かさず、絹糸で皮膚に固定し、カテーテルの末端を三活で閉じた。CT室に移動し、単純CT胸腹部を施行した。
アスピレーションキットは左胸壁より胸腔内に入り、さらに心膜を通過して左室側壁より左室内に挿入されていた。CT室での血圧117/60mmHg心拍数75で症状もまったく変化なかった。緊急手術(正中切開)にてカテ抜去の必要があると判断し本人、家族に事態を説明し緊急手術を施行した。胸部正中創を再開胸し、左室心尖部側壁に刺入したアスピレーションキットを抜去した。術後の血行動態は安定していた。
処置の手技には問題が無く、トロッカーアスピレーションキット8Frによる胸腔ドレナージのまれな合併症と考えられる。 今後の見通しは、朝の時点で患者の血行動態は安定しており、本事象を原因として永続的な障害や後遺症の遺残または有意な機能障害や美容上の問題、患者の死亡を伴う可能性はないと考えられる。対策としては、本例は肥満が高度であり、胸壁が厚く皮膚から胸腔までの距離が長い場合は、穿刺針先端の位置や方向をやや推定しづらい症例である可能性があるので、今後は同様な症例への左胸水穿刺時にはトロッカーカテーテルによるドレナージ等、他のより安全で実施可能な方法についても考慮する。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、胸腔ドレナージチューブが左室側壁から左室内に挿入されてしまったとのことであるが、手技の詳細等が不明であり検討困難と考える。
14 死亡 不明 不明 胸水穿刺を両側行い、12 Fr Aspiration kitにてエコーガイド下に施行した。ドレナージ直後に両側ともに奬液性の胸水が1000ml以上排出され、satも改善した。しかし、右穿刺後30分後より血圧低下/呼吸状態の悪化を認めた。
レントゲンにて気胸を認めたため、すでに挿入されているdrainより脱気を試みようとした際、血液が吸引された。穿刺時には血液は吸引されず、当初の排液は奬液性であったが、肋間動脈損傷や肺損傷が考えられた。すぐさま、32Frのトロッカーに交換し、血液製剤を使用した(MAP、FFP)。長期の急性呼吸促迫症候群であり、胸膜との癒着は存在していたことは十分考えられ、穿刺時というよりは、ドレーンを胸膜に沿って、挿入した際に癒着を盲目的にはがした可能性と、コンプライアンスが不良な肺のため、高圧で呼吸管理しており、胸水が排出された後の再膨張時に、肺が裂けた可能性が考えられた。これにCHDFのための抗凝固や、慢性の凝固異常が出血を助長させたのではないかと思われる。保存的に経過を観察し、翌日には止血が得られた。このため、その翌日にCHDFを再開する予定であったが、13時すぎより血圧低下を認めた。この際、貧血の進行やドレーン排液の増加は認め無かった。カリウムも正常範囲であった。その後、さらにバイタルサインは悪化し、次第に徐脈となり、死亡を確認した。最終的には長期カテコラミン投与による心筋疲弊が影響したと考えられた。
aspiration kitが先が鋭的であること。また手技時にも人工呼吸器で高圧で管理していたこと。ARDS、長期人工呼吸器管理患者の胸膜癒着の評価が困難であったこと。 このような患者の胸腔ドレナージは適宜、短時間、呼吸器を停めて施行する。 胸水穿刺後に気胸を認めたとのことであるが、人工呼吸による影響や患者要因も考えられるとのことであり、また手技の詳細等が不明であり検討困難と考える。
15 障害残存の可能性がある(高い) 不明 不明 右側腹部から腹腔内へ留置してあったドレーンが腹腔内に落ち込んだため、緊急手術にて摘出した ドレーン留置後日数が立っており、皮膚へ縫合固定してあった糸が外れた。通常ドレーンに刺入固定している安全ピンをつけると、ドレーンが細くフィブリンが絡んで流出を妨げるため安全ピンを直接ドレーンに刺入固定していなかった カットドレーンの安全ピンははずさない。はずさなくてはならない不都合があるときは、ドレーンの入れ替え等他の処置を行う。 皮膚に縫合固定していた糸が切れドレーンが腹腔内に脱落したとのことであるが、使用された製品名や使用状況等が不明であり検討困難と考える。
16 障害残存の可能性がある(低い) 不明 不明 両下肢の痺れ、頻尿、背部痛、微熱が出現。腹腔内膿瘍を疑い、腹部CT施行するも異常なし。
2日後、両下肢の知覚異常と排尿障害の増悪・運動障害を認め、MRI施行。
硬膜外腔に血腫または膿瘍と思われる貯留物を認め、整形外科コンサルトし緊急手術となった。
貯留物は膿瘍であり、MRSA検出された。
胸椎椎弓切除し、硬膜外腔の洗浄・ドレナージを行って抗生剤による(VCM)治療開始となった。
術後14日目の状態:知覚障害は改善。運動障害もリハビリで室内歩行できるまで改善。
排尿障害は泌尿器科医コンサルト中、尿意は出現したが、自力排尿はなく導尿に至っている。
患者側要因としては、高度肥満でカテーテル挿入を困難にしたこと、糖尿病による易感染性があること、4000mL近くの出血を伴う大手術直後の免疫低下状態であることがあげられる。
医療者側の要因としては硬膜外カテーテルを長期留置する必要があったこと、
局所麻酔薬を毎日追加する必要があったことが挙げられる。
硬膜外カテーテルに関連する硬膜外膿瘍の発生ではあるが、すべての手技において清潔操作を徹底している。
硬膜外カテーテル留置中だけではなく、抜去後にも硬膜外血腫や膿瘍が発生する可能性があるため、早期治療が行えるよう、早期発見。清潔操作は徹底を継続。 硬膜外カテーテル抜去後に膿瘍形成を認めたとのことであるが、当該カテーテル留置に伴う合併症と考えられ、モノの観点からの検討は困難と考える。
17 死亡 不明 不明 B-Aカテーテルが長期留置となっており、また透析離脱の可能性もあったため、血液透析を一旦終了し、5日後に抜去した。刺入部には明らかな感染徴候はなく、そのため培養は行われなかった。
しかし採血データの悪化を認め、再度の血液透析が必要と判断され、左鼠径部にB-Aカテーテルを再挿入した。
13時頃に医師A(後期研修医)から受け持ち看護師AにB-Aカテーテル再挿入指示があった。B-Aカテーテル挿入の介助をするのは初めてであり、医師Aにはその旨を伝えたが、先輩看護師には声をかけずに医師Aの介助についた。準備は医師Aと共に行い、B-Aカテーテルの保管場所のみ先輩看護師に聞いた。カテーテル挿入は医師Aが一人で行い、指導医はいなかった。医師Aのカテーテル挿入経験数100件以上、B-Aカテーテル経験数4~5件。まず、B-Aカテーテルを挿入(20cm)し、カテーテルの止め具部分2ヶ所を、2cm程度の余裕を持って皮膚へ縫合し固定した。一連の手技の中で出血はほとんどなく、また術野が不潔になることなく終了した。15:40頃にB-Aカテーテルの挿入が終了し、B-Aカテーテル挿入は病棟内処置室で施行され、マキシマムプリコーションは実施されていた。同日準夜と翌日深夜看護師は直接刺入部の観察は行っていなかった。また、同日夕と翌朝の回診時、医師も刺入部の観察を行っていなかった。
翌日14時頃、受け持ち看護師Bが全身清拭と陰部洗浄を行うために病室を訪れた。患者の病衣を脱がせたところ前日に挿入された左鼠径部のB-Aカテーテルの挿入部とB-Aカテーテルが糸固定以外の保護・固定がされておらず、剥き出しの状態であるところを発見する。発見後、処置の準備のため患者の元を離れた。14時過ぎ患者家族が車椅子を押して車椅子トイレに向かっていたため、看護師Cが声をかけ、車椅子でトイレに行った。患者が車椅子から立ち上がり、手すりにつかまり便座の前に立ち、看護師Cが車椅子を寄せている数十秒の間に患者は病衣(下)と下着を下げて便座に座っていた。患者が、血が出てきた、と話したため、確認すると鼠径部から出血があり、看護師Cは圧迫止血し、ナースコールで応援を呼んだ。抜去されたB-Aカテーテルは病衣の中にあった。
2日後6時から38.4℃の発熱がありB-Aカテーテル刺入部からの感染を疑い、同日より抗生剤を開始したが、状態改善せず血圧低下(収縮期血圧50~70mmHg台)も認めたため補液・昇圧剤投与を開始したところ、徐々に血圧は安定してきたため補液・昇圧剤は中止した。血液培養では、MRSAが検出されたためバンコマイシン投与を開始した。感染は改善傾向であったが、透析中に著明な血圧低下を認めた。透析を早く終了して対処したところ、血圧は改善し安定していた。カテーテル再挿入の3週間後、午前10時頃にモニター上、心拍数30~40徐脈になっているのを看護師が発見する。その場にいた医師、看護師ら駆けつけるとまもなく心停止となり、すぐに心臓マッサージを開始、アンビュバッグによる人工呼吸等を開始した。意識レベルは300。血液検査にてHb3.3と極度の貧血を認めたが、下血なく、胃チューブからも血液は引かれず。透析中の腎不全患者であるがKは4.5mol/lと正常範囲であった。緊急輸血として濃厚赤血球を計8単位施行した。緊急CTを施行したところ、腹部大動脈付近に血腫を認め、腹部大動脈の破裂による出血と考えられた。その後、手術となった。麻酔等の処置を行っている際に急激な血圧の低下、腹部膨満を認め再出血と考えられた。その時点で手術は不能と考えられ手術室より帰室、その後は補液などを行い保存的に経過観察し、死亡確認に至った。
カテーテル再挿入日には、炎症反応は上昇しており、既に感染に罹患していた可能性もある。不適切な管理と患者が亡くなったことについての因果関係は不明である。
  • B-Aカテーテル挿入をはじめとした、感染リスクの高い手技では手技終了後も医師はその場を離れず、感染対策が確実に行われたことを確認する。
  • 感染のリスクを考えると、緊急時以外カテーテル挿入は出来る限り環境が整った透視室で挿入することが望ましい。病棟内で実施する場合は確実なマキシマムプリコーションを実施し、処置室のドアを閉鎖して行う。また施行中の処置室の出入りを制限する。
  • 医師はB-Aカテーテル挿入日の夕回診、翌日の朝回診時にはB-Aカテーテル刺入部の保護状態を確認する。
  • 感染のリスクに関する知識と技術を全スタッフが習得する。
  • 危険予知の感度を高め、正しい優先順位で業務を遂行する。
    ・必要な観察項目、看護ケアを経過票にカーデックス登録し、実施する。
  • マニュアルを整備し、遵守する。
  • 具体的な指示出しと指示受けを行いコミュニケーション不足によるインシデント・アクシデントを防ぐ。
  • 経験したことがない業務を行う場合は経験者の指導を受けて行う。
バスキュラーアクセスカテーテルが自己抜去され、その後、刺入部感染や腹部大動脈付近の血腫が認められたとのことであるが、使用された製品名や留置手技及び留置状況等の詳細が不明であり検討困難と考える。
18 障害残存の可能性がある(低い) 不明 不明 術後挿入したはずのセンサーが抜けていることに帰室後に気付き、再度手術室で同一の創部を開創してセンサーを挿入した。 もともと材質自体が細くて滑りやすく脳実質に穿頭で刺した場合には抜けやすい。十分に皮下を通して固定をしたが抜けてしまった。 固定に使用した糸がナイロンであったが、多少の感染riskは上がるが摩擦係数の高い絹糸での固定の方が安全と思われた。また固定法について再検討が必要と思われた。
 
脳圧センサが抜けていたとのことであるが、使用された製品名や固定方法等が不明のため検討困難と考える。
19 障害なし ベネット840 回路 不明 ベネット840の呼気回路に穴が開いていた。 不明。回路を破棄してしまったため、原因究明未。 現物を保管していく。 当該事例に使用された呼吸回路の製品名等が不明であり、また、報告者によると当該品を破棄したために原因究明ができないとのことであり、検討困難と考える。
20 障害残存の可能性なし 造影用耐圧チューブ 東郷メディキット 体格よく、ルート確保困難な方で、ご本人からも「左正肘部からしか注射はできない」と申し出あり。同部に採血痕は存在したが、止血されていたため、左正肘部より22Gスーパーキャスにてルート確保。CT造影用メディキットエキステンションチューブとdynamic造影用シリンジ(マグネビスト)を接続。接続後の血液逆流良好。テストインジェクションにても疼痛や明らかな皮下漏出を確認できなかったために造影を施行した。造影プロトコルに従い。2ml/秒の流速にて注入開始。左肘は伸展したままで検査を行った。
注入開始後20~30秒程度経過しても大動脈内への造影剤流入を確認できず。注入中止か続行かを検討し始めたところで、ご本人より異常を知らせるブザーが鳴ったために注入中止。確認すると刺入部付近より血液が床に流れ落ちていた。抜針後、ルートを確認すると接続部よりやや中枢部に裂け目があり、同部より逆流した血液が流出していた。プリモビストの残量が2ml程度。生食の残量が50ml程度。→プリモビスト約8ml + 生理食塩水約50mlが皮下漏出もしくはルート破損部より流出したと考えられる。
EOBプリモビストでの造影MEI時には留置針にて血管確保、耐圧チューブ接続の上、インジェクタを用いて設定された注入量の造影剤を注入する。MRI検査室では患者の横での付き添いはせず、担当技師が検査室外でモニタにより患者を観察する。患者には異常時発生を知らせるブザーを渡してある。ルート確保は当院では慣例的に検査室にて放射線科医が行っている。当該患者は体格もよく、今回穿刺部以外の場所ではルート確保困難な方であった(ご本人からも同様の申し出があり)。 現状ではルート破損の原因不明で、対策も不明。耐圧チューブのメーカーに連絡し、今後の対策を検討する。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されていないが、点滴ラインおよび留置針に閉塞がある状態で、造影剤注入装置を使用して薬剤注入した場合、同様事象が確認されるとのこと。しかしながら、当該事例においては点滴ラインの閉塞の有無を含めた原因等の詳細が不明であり検討困難と考える。
21 障害残存の可能性なし 不明 不明 右足背部腫脹を発見。
足首から足背広範囲に腫脹あり、点滴抜去すると液がでてくるため医師の指示により経過観察。
時間が経過するにつれて、水泡形成、表皮剥離、浸出液あり。
観察の手順が守られていない。
チェックポイントに刺入部の観察項目がなかった。
輸液ポンプはリスクが高いことを十分理解していなかった。
輸液ポンプ使用はリスクが高いことを再認識。
患者も高齢で全身状態が良好でない場合はリスクが高いことを再認識。
決められたことは守る。何をしないといけないかを考えながら行動する。
血管外漏出を認めたとのことであるが、手技を含めた原因等の詳細が不明であり、検討困難と考える。
22 死亡 トラキオソフト コヴィディエン ジャパン 気管切開施行後19日目。呼吸状態は自発呼吸でカフ付きの気管切開チューブ挿入中、加湿は人工鼻を使用していた。酸素投与はしていなかった。気管吸引施行後、SpO2低下、心肺停止状態になった。気管切開チューブを交換すると換気可能となり、交換したチューブを確認すると内腔が喀痰様の物質で閉塞していた。蘇生は成功したが、全身状態は改善せず4日後に死亡した。
気管切開後2週間目に第1回目のカニューレ交換がなされていた。第1回目の交換はチューブの閉塞が疑われたために行われている。今回の閉塞は第1回目の交換から5日目に起こった。
当院では気管切開チューブの交換は1週間を目安に行われていることが多かった。しかし、明らかなルールは策定されていない。気管切開チューブの予備を病室に準備していなかった。これも明文化されたルールはなかった。第1回目の交換が閉塞を疑う状況でなされたことの情報共有が十分ではなかった。 交換用チューブを病室に完備すること。加湿のマニュアル、チューブ交換の目安のマニュアルを作成予定である。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、気管切開チューブが喀痰により閉塞したとのことであるが、2回目の閉塞に至るまでの喀痰の状態や吸引の頻度等が不明であり、モノの観点からの検討は困難と考える。
23 死亡 コーケンシリコーンカニューレ 高研 1.17:15 病室訪室時呼吸状態変わりなし
2.18:00 パルスオキシメーターのアラーム音に気が付き訪室
3.気管切開カニューレが抜け、SPO2測定不可で顔面蒼白となっているところを発見する
1.気管内の肉芽が大きくなって気道を閉塞してきている
2.肉芽の状態をみながら気管切開カニューレの種類を変更しており、現在はカフの無いコーケンシリコーンカニューレを使用していた。耳鼻科医師にて喉頭ファイバーも行っている。
3.気管切開カニューレは紐で固定したうえに気管切開カニューレの両側のつばをテープで皮膚に固定していた。テープの交換は3回/週行い、入浴後や汚染時適宜交換していた。
4.パルスオキシメータは付けていたがアラームは病室で鳴るのみで、セントラルモニターは使用していなかった。
1.今まで気管切開カニューレから痰が吹き出すことは無く人工鼻が取れたことも無い。気管切開カニューレ周囲が痰で汚染されてテープがとれたことも無かったが、固定しにくい気管切開カニューレの場合固定方向を考えていく必要がある。
2.他に人工呼吸器装着患者が多いためこの患者はセントラルモニターを装着していなかったが気管切開カニューレの固定が不安定であり優先してセントラルモニターを使用する必要があったと考え優先度を検討する。
当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されていないが、気管切開チューブが抜けた状態で発見されたとのことである。当該患者は気管内の肉芽の状態により気管切開チューブの固定が困難であったとのことであるが、固定方法等の詳細が不明であり、モノの観点からの検討は困難と考える。
24 障害残存の可能性がある(高い) GBアジャストフィット 富士システムズ バッキングの音で訪室すると、気管カニューレが3~4cm抜けていた。

患者の確認は1~1時間30分間隔で実施し、異常行動ないことの確認はしている。
吸引も同様の時間帯で実施しており、酸素飽和度は100~99%保持できていた。
抜けた理由は不明。患者の意識レベルに問題なく、疎通も良好であった。自己抜去の可能性と、気管の至る所が狭窄するリスクがあり、カニューレから先の気道閉塞により圧が必要以上にかかり、抜けてしまった可能性もある。
患者は、脊椎カリエス後遺症のため首が前に屈曲している状態であった。また、気管内もかなり狭窄しており、入院時に挿管チューブの挿入も困難で、気管支鏡を使用し時間をかけて挿入している状況であった。そのため、気管切開は通常ICU内で実施するところ、呼吸器外科に依頼し、手術室で4時間かけてやっと挿入できるカニューレを選択し挿入している。事象発生当時は、気管カニューレに人工鼻を装着し、酸素チューブが接続され酸素3Lが投与されていた。(人工呼吸器使用なし)患者は、もともと気管の狭窄が急激に起こる状況(原因不明)があり、いずれステントを挿入しなければ、抜管は無理であろうと考えていた。
患者は意思疎通に問題なく、危険行動もなかったため、身体拘束はしていない。吸引のため1~1時間30分で訪室し、異常がないことの確認はできていた。(ICUであるため、常に患者の観察はできる良状態にもあった)。最後の吸引から1時間30分後、バッキングがあり訪室すると、気管カニューレが3~4cm抜けていた。
抜去の原因が明確でないため改善策は困難であるが、自己抜去の可能性もあると考えると、抜けた場合の患者に与える影響を十分に考え、身体拘束の必要性もあったのではないかと考える。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、気管切開チューブが抜けかけていたとのことであるが、患者の解剖学的特徴も関係しているとのことであり、また固定方法等も不明であり、モノの観点からの検討は困難と考える。
25 障害なし JMS栄養カテーテル ジェイ・エム・エス 栄養注入のためMチューブ留置中であったが嘔吐時に自然抜去してしまった。 患児の病態。 嘔吐を考慮した抜去防止の工夫。(固定、体位) 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、嘔吐時の胃管カテーテルの自然抜去とのことであるが、原因は患児の病態と記載されているものの、チューブの固定方法や体位等の詳細が不明であり検討困難と考える。
26 障害なし JMS栄養カテーテル ジェイ・エム・エス チューブ固定を2か所行っていたが、児が嘔吐した際にチューブが抜けてしまった。 患児の病態によるもの。 嘔吐を予測した体位、固定方法の工夫。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、嘔吐時の胃管カテーテルの自然抜去とのことであるが、原因は患児の病態と記載されているものの、チューブの固定方法や体位等の詳細が不明であり検討困難と考える。
27 障害残存の可能性がある(高い) バード シルバーフォーリートレイB 12Fr メディコン 尿道留置カテーテル挿入時、少し抵抗あったが、尿流出あり。血尿なし。その後心臓カテーテル施行。ヘパリン5、000単位使用。カテ室より病棟帰室後、血尿出現、フォーレが詰まり腹満著明。泌尿器科医師へ診察依頼された。膀胱癌術後放射線療法後の慢性膀胱炎の診断。止血剤の投与や膀胱洗浄施行するも夜間血尿増悪、膀胱タンポナーデ発症。翌日、経尿道的凝固術(止血術)施行。 膀胱癌術後の放射線治療による慢性膀胱炎である。膀胱内に新生血管が多数あり、尿留置カテーテルの刺激やカテ中のルチンのヘパリン使用が出血の要因となった可能性はある。 1.心臓カテーテル前の膀胱癌に対する過去の治療(放射線性膀胱炎)の情報不足と予測
2.泌尿器科医師への適切なコンサルト、院内での相談、支援
3.検査前の合併症を含むインフォームド・コンセントの徹底
当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、膀胱癌術後に放射線治療を行った患者において、当該尿道カテーテル留置後に血尿及び膀胱タンポナーデを認めたとのことであるが、当該製品との因果関係を含め詳細が不明であり検討困難と考える。
28 死亡 オキシゲンチューブ

JMS延長チューブ(JV-PNP2025L)

プラネクタ(JV-PGB)
アコマ医科工業

ジェイ・エム・エス



ジェイ・エム・エス
患者は悪性胸腺腫の末期で、3日前に下肢疼痛のため来院し入院中(麻薬投与で疼痛は緩和)。患者は意識清明で、食欲良好。会話も問題なく困った時はナースコールできていた。右末梢に点滴1本と、鼻から酸素投与(カヌラ3リットル)していた。心電図モニターのアラームが鳴り、看護師二人で訪室すると患者が顔面蒼白となっており、意識がない状態でいるのを発見。 「末梢点滴接続」と「酸素チューブ接続部」(酸素は、患者から窓を見たいという希望があり、カヌラに延長チューブ<オキシゲンチューブ>を接続し、窓まで移動できる長さになっていた)の両方の接続が外れ、患者側の点滴ラインに流量計に接続されているオキシゲンチューブが接続されていた。発見し、直ちに接続を外し医師をコールして救命処置が行われたが、発見から約4時間30分後、死亡確認された。
直ちに所轄警察へ報告し、警察からの正式な回答はまだだが、自殺の可能性が高いとの返答が聞かれている。実際に、点滴とオキシゲンチューブを接続しようとすると、看護師でもスムーズに接続できず、単純なヒューマンエラーは考えにくい。
看護師が誤って接続したと考えるには、接続するために力を加える必要があり、その工程で間違いに気付くと思われる。患者が誤って接続したと考えるには、「点滴ライン」と「酸素チューブ」の両方の接続が同時に外れなければ、間違えは起こりにくいと考える。
また、接続しようとしても困難であれば、ナースコールで知らせていた可能性は高い。
 患者は6年前に癌の告知を受けており、最近になり腹水が著明で下肢の痛みも強くなり、転移の可能性も高い状況であった。利尿剤でコントロールしても、腹水が改善しない状況となっており全身状態としてはかなり厳しくなっていた事を考えると、故意に二つのチューブの接続を外し、接続した可能性もゼロではないと考える。(しかし、家族の面会は毎日あり、家族も病院スタッフも、患者と接する中で悲観的になっている様子は1度も見受けられなかった)
目的があり酸素チューブを延長するのは良いが、使用目的が終了した時点で延長を外す。
癌患者の看護について、マニュアルの見直しを図る。
当該企業によると、酸素カニューラに接続していた当該酸素チューブが点滴ラインのコネクタに接続された状態で発見されたとのことである。当該酸素チューブとコネクタを無理に押し込むことは可能であるが、事故の背景等の詳細が不明であり検討困難と考える。