独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

平成24年度 第2回医薬品・医療機器安全使用対策検討結果報告(医薬品関連事例) 別添3

本文別添1別添2|別添3|別添4

 

ヒューマンエラーやヒューマンファクタ-に起因すると考えられた事例(医療事故)

No 事故の程度 販売名等 製造販売業者等 事故の内容 事故の背景要因の概要 改善策 調査結果
1 障害残存の可能性なし オリベス 塩野義 早朝に心肺停止状態で救急外来に搬送された。心肺蘇生を行い蘇生後メイロンを投与を中止し、オリベスを4ml/hrで開始の指示があった。輸液ポンプにセットして2人で確認して開始した。他にイノバン、ドブポンや点滴が施行されていた。メイロンの接続を外していた。造影検査のために手術室に移動した。緊急時で通常の手術室の入口でなく造影検査室側から直接に患者搬入となった。手術室看護師は通常の入口から患者入室をモニターで見てすぐに麻酔医師と造影検査室に移動した。造影検査室では医師が検査台に患者を移動し、輸液類をポンプなどにセットしていた。外来のストレッチャーと輸液ポンプ類が廊下に出されていた。患者の輸液オリベスがポンプ無で全開状態になっているのを見た。心電図モニター等を装着し、波形が描出されず、再び心停止状態になった。メイロンを投与しようとしたら輸液ポンプに接続されていた。すぐ心拍再開し、PCPS挿入後PCIを施行した。 緊急搬送で手術室への入室経路が通常と異なった。
そのために引継ぎや点滴IN量の確認などができていなかった。
搬送中は輸液ポンプでオリベスは滴下していた。
造影検査室入室後救急外来の輸液ポンプから手術室の輸液ポンプに付け替えられていた。
緊急状況で搬入され、医師のみで移動が行われ詳細や状況が不明であった。
搬入経路について事前に情報がわかれば手術室に1報する。
緊急時に部門間で輸液ポンプの交換などを行わなくてよいように話し合いを持ち、共通認識を持つ。
移動中はオリベス点滴を使用しない。(循環器内科)キシロカインショットで対応する。
IN量の線を引き、投与量の確認を行う。
ポンプや輸液セットなどに関する知識を持つ。
確認が不十分であった

連携
2 障害残存の可能性がある(低い) 1%プロポフォール注「マルイシ」 丸石 1%プロポフォールを注入指示が口頭で行われ、注入量の指示が聞こえなく、意識レベルが鎮静するまでゆっくり13ml注入した。しかし医師の指示は3mlであった。過鎮静となりノルアドの増量、呼吸器の設定変更、DCは100Jで1回施行した。その後3時間後に覚醒した。 口答指示の復唱ルールが守られなかった。不慣れなスタッフであったが、他のスタッフに応援を頼まなかった。 口答指示のルールの徹底を図る。サポート体制について再度周知をする。 確認が不十分であった
3 障害残存の可能性なし ニカルピン 沢井 CVラインよりニカルピン開始の指示があり、注射指示箋の2ml/hと4ml/hと流量指示が2カ所にあり、ダブルチェックしたが気づかず4ml/hで開始した。その後血圧の下降があり、医師の診察の際に流量の間違いに気づきアルブミンとヘスパンダー開始し、カテコラミンで調節し回復された。 流量指示が2カ所に記載されていた理由は不明、記載内容を指さし呼称での確認がされていない。ダブルチェックが正しくされていなかった。 確認方法の再度徹底を周知する。朝のミーティングでの通知を継続して行う。 確認が不十分であった
4 障害残存の可能性なし KCL補正液1mEq/mL 20mL1管 大塚製薬 KCLの投与を1時間かけて投与するべきところ、誤ってワンショット静注が行われた。
電子カルテシステムでのオーダー上、KCL注射処方セットが「ショット薬」に分類されるため、医師が指示簿にその都度「1時間かけて中心静脈から投与」などと記載しているが、今回はその記載がされていなかった。看護師はワンショット静注禁止の薬剤と知っていたが、医師に急ぐよう言われたために、ワンショットで使用するほど急いでいるのだと思いこみ、医師に確認を行わずワンショット静注を行った。
  • 担当看護師は、職種経験5ヶ月で、3ヶ月前より夜勤に入っており独り立ちしていた。当日は、4床(ICU非加算床)を一人で受け持っていた。
  • ICUでは、21時頃に定時採血があり、22時前後に結果が返ってくるため、その結果を確認した後の指示であった。
  • 担当看護師は、日勤で投与済のKCLの指示が画面上では終了になっていなかったため、フリーコメントに「1時間かけて投与」と記載があるのを見ていた。新たに夜勤で出たKCL原液5mL投与の指示には、フリーコメントに「1時間かけて投与」などの投与方法が記載されていなかったため、ワンショットに指示変更されたのだと思った。
  • 医師は、患者が以前にも血清カリウム値が低下し不整脈を誘発した既往があったため、KCLの投与を急いでいた。
  • 担当看護師は、指示後も他の業務があり、KCLの業務がなかなかできなかった。そのため、医師は作業を早くして欲しい意味で「急いで」と3回くらい言ったが、看護師は「急いで」の意味を指示で確認した通りワンショット(速く投与する)だと思った。
  • 当院のICUでは、一般的な点滴は「一般維持輸液」、カテコラミンなどの微量で使用する薬剤は「微量持続点滴」などに分類し、ワンショットや1時間程度の時間をかけて投与して使用するなど一時的に使用する薬剤を「ショット薬」に分類していた。KCLは、この分類の中では「ショット薬」に分類されていた。
  • 「ショット薬」などのカテゴリーが、処方する際に視認性を良くするためにICUマスタ上の分類として決めたものであり、画面上には表示されないため薬剤部では把握していなかった。また、ICU以外の病棟では使用していない名称であった。
  • 薬剤部で処方せんの指示を受けた薬剤師は、ICU内で投与方法の指示があると思ったため、「KCL原液 5L投与」に対して疑義照会は行わなかった。当院では、KCLの処方が20mEq以上になることはないため、20mEq以上の指示に対しては疑義照会をするようになっている。

    (以下次ページ)
  • 当院では、ダブルチェックを行わず、個人で5Rチェックをすることにしている。しかし、ICUではハイリスク薬の取扱いも多く、厚生労働省から出されている「集中治療室(ICU)における安全管理指針」内に、「薬剤の投与時に可能な限り複数の医療従事者によって確認すること」と記載があるため、ダブルチェックを行う薬剤(麻薬、免疫抑制剤、カテコラミン、血管拡張剤、インスリン)を決めていたが、事故発生当時はその中にKCLは入っていなかった。
  • 当院に病棟専属の薬剤師はいない。手術室やICUのみ配置薬のチェックを行っている。
  • ICUでは、緊急時の対応のために薬剤カートを採用し、定数を決めた薬剤をその中に配置している。病棟薬剤師が週2回チェックを行い、薬剤を管理している。カート内にトレイが8セットあり、緊急入院時に1患者1トレイを使用する。また、ICUで薬剤ラベルの発行ができるため、バーコード付きラベルとトレイ内の薬剤を併せて使用することになっている。
  • ICU内での、看護師-医師間、医師間、若い医師-上級医師間など、コミュニケーションが円滑でない事実がある。
  • 電解質補正液の投与時には指差し呼称に加え必ずダブルチェックを行うこととし、投与時確認マニュアルを作成する。
  • ICUでは、KCLもダブルチェックを行う薬剤にした。
  • KCLを「ショット薬」から「一般時間注」のマスタ項目に変更した。また、「ショット薬」という言葉を「その他」に変更する予定である。
  • ICUでは、カリウム値の補正のためにKCLを原液で使用していたが、5%ブドウ糖で2倍に希釈して1時間以上かけて投与することにした。また、その内容をマニュアルに記載し、「ワンショットはいかなる場合でも禁止」と追記した。
  • 処方システムを修正し、「一般時間注」からKCLの処方が出されると、希釈液(5%ブドウ糖注)も一緒に処方されるようになった。
  • 薬剤部では、KCLの表示を「KCL点滴注」から「【禁静注】 KCL点滴注」に変更した。また、KCLの払い出しの際、「静注・ワンショット禁止」と注意事項を記載した紙を入れたチャック付ビニール袋に1本毎に封入する手払出にすることにした。
  • 指示の出され方に疑問がある場合は、自分で判断せず医師等に確認する。
確認が不十分であった

判断に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
5 障害なし アナペイン注2mg/ml 100ml アストラゼネカ株式会社 腹腔鏡下胃全摘出術の術後疼痛コントロール目的にて、手術室で末梢静脈ルートのシリンジェクターポンプからフェンタニル0.3mg/生食42mlが2ml/時間にて投与されていた。術後1日目12時45分、看護師はシリンジェクターポンプ内のフェンタニルの残量が少なったため、追加分を医師と準備した。しかし、その際、手術中に硬膜外チューブを入れる可能性もあり、手術前にあらかじめ処方されていた硬麻用のアナペインを準備した。医師と看護師は患者のベッドサイドに行き、シリンジェクターを確認し、静脈ルートのシリンジェクターポンプにアナペインを充填した。その後、15時25分に訪床した看護師が間違いに気付いた。幸いアナペインの注入量は少なく、患者に影響はなかった。
  • 最近、シリンジェクターポンプが静脈ラインに使用されることが多くなってきていたが、院内に周知されていなかった。硬膜外投与に使用するシリンジェクターポンプと全く同様の形状であった。
  • シリンジェクターポンプには薬剤名(フェンタニル)を表記していたが、硬麻か静脈ルートであるかの表記をしていなかった。
  • 病棟で薬剤を準備・充填した医師と看護師は、シリンジェクターポンプの形状を見て硬麻チューブと認識し、ルートをたどっての刺入部の確認、シリンジェクターポンプに表記されている薬剤名と処方箋を確認しなかった。
  • 硬膜外投与であるか静脈内投与であるかが明確に判断できるように、シリンジェクターポンプ本体とラインの途中に、「硬麻」「静注」を印字したラベル(硬麻は青ラベル、静注は白ラベルに印字)を貼付することとし、緊急安全情報として院内周知を図った。
    硬膜外・静脈内投与に同様のシリンジェクターを使用していていたため、今後、静脈内投与時のシリンジェクターポンプを変更することを検討している。
確認が不十分であった
6 障害残存の可能性なし ラステットSカプセル(25mg) 不明 ラステットSカプセルの過剰投与。ラステットSカプセル25mg 1日1カプセルで処方する予定であったが、ラステットSカプセル25mg 1日7カプセルで処方をした。 頭部血管肉腫、頚部リンパ節転移に対し、放射線治療、Monthlyタキソテール12クール施行したところ、肺転移が出現した。
エトポシドの低用量長期内服療法の効果があったというケースレポートがあったため、家族に説明し、当院、臨床倫理委員会の承認を得てラステットSカプセル(25mg)1C×1×で処方することになった。
患者には手書きで、適応外の使用のため、ラステットSカプセル25mg 1日1カプセルで服用することを説明したが、実際の処方で皮膚科医が7C×と間違えた。その後、担当医不在時の処方の際にも誤って追加処方をした。
診察時に骨髄抑制が進行しているため、入念に患者と話をしたところ、7C1×で内服していることがわかり、処方ミスに気が付いた。
ダブルチェックでの処方を徹底する。
処方システム上の初期設定が標準容量で設定されているため、薬の処方システムの変更を検討→内服抗がん剤の1日投与量の自動表示を「0」に設定した。
情報の共有。
電子カルテの運用のみなおし(前出した処方をコピーして処方をしたため、間違えたまま処方をしてしまったため(コピーでの処方はよく行われている) )。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
7 障害なし アナペイン 不明 自然妊娠であったが,子宮壁の菲薄化が見られ帝王切開術目的で入院。帝王切開術が行われ15時に病棟へ帰室。疼痛コントロールのために手術時に留置された硬膜外カテーテルよりフェンタニルの持続注入が行われていたが,疼痛が持続するため16時よりアナペイン(0.1%,4ml/hr)が追加された。アナペインは,医師が一足先に病室に行きラインに接続した。間もなくして看護師が到着したが,接続先のラインの十分な確認が行われなかった。深夜帯(1時30分)のルート確認時に,静脈ルートの三方活栓にアナペインが接続されており,誤って静脈投与されていることが発見された。患者に投与されたアナペインの総量は約35mgであったが,患者のバイタル変化や神経症状などの副作用は観察されなかった。 手術当日は人手が少なく,他にも多くの仕事を抱えており術後の病棟業務をほとんど1人でこなしており,看護師もルートの確認をすると思っていた。看護師は医師を信頼しラインの接続確認を行わず,ルートの確認が不十分であった。ルートの接続は薄暗い病室で行われいた。 病棟作業を分担し,ルートは必ず医師と看護師2人でダブルチェックする。硬膜外ルートと静脈ルートの径を変える。ルートを接続する際は病室の照明は明るくする。 確認が不十分であった

勤務状況
8 障害残存の可能性がある(低い) 不明 不明 当事者が主治医の患者で、病歴からセレネースによるジストニアの既往があることが判明、電子カルテに記載しておいた。当事者とは別のCCU当直医が、この確認をせずに、不眠に対してセレネースを使用し、ジストニアを生じせしめた。当事者が回診に訪れた際、この事実に気づき、抗パーキンソン薬で対応した。 禁忌薬剤の確認を当直医と看護師の双方が怠った。 当直医に注意を喚起し、申し送りをしてもらった 確認が不十分であった
9 障害なし 硫酸アトロピン「ホエイ」 マイラン 17時40分頃、救急外来担当看護師Aは、整形外科医師より「今から脱臼整復をするので、ソセアタ1A筋注の準備と、ソルアセトFでルートの準備をして放射線科までもってきて欲しい」と電話を受け、医師へ指示内容を復唱し確認した。
看護師Bへ指示内容を伝言し、看護師Bは、ソセゴンとアタラックスPと認識していたが、救急カートから硫酸アトロピン1Aを間違って取り出し、薬品棚からソセゴン1Aを取り出して準備をした。看護師AはソルアセトFと点滴セットを準備し、看護師Bが準備したアンプル2本を持って放射線科へ行った。看護師Aは医師からすぐに注射するよう指示され、アンプルの確認をせずに注射器に準備し、「ソセゴン、アタラックスP筋注ですね」と声を出して実施した。その後患者は帰宅し。20時30分頃、看護師Aは医師の処方せんを薬剤科へ持参し、薬剤を受け取った。その後、救急外来の救急カートと薬品棚に薬剤を戻すときに、アタラックスPは定数あり、硫酸アトロピンが1A不足していることで、間違って注射を実施したことが判明した。
  • 薬剤準備時、使用前・使用後の薬剤確認を怠った
  • 準備者、実施者の連携・ダブルチェックがされなかった
  • 声だし、指差し確認を怠った
  • 薬剤使用時の5Rの徹底
  • 口頭指示での復唱の徹底とダブルチェックの確実な実施
  • 注射準備時、実施前、実施後の薬剤の確認の徹底
確認が不十分であった
10 障害なし プレドニン 塩野義 患者が当日部屋移動を行った。病棟のルールでは移動してもその勤務時間帯はもともとの受け持ちが担当する事となっていた。そのため担当の看護師が、医師の指示通りにプレドニンの静脈注射を16時に行った。しかし、移動した部屋の担当であった看護師が、「自分が注射をしないといけない」と思い、16時35分にカルテを見て再度注射を実施した。注射薬は翌日分の薬剤があったため、それを使用した。16時に注射をした看護師が、注射箋控えを持っており、それに実施したサインもされていた。
  • 入院の受け入れ、指示受けなど冷静な判断ができていなかった。
  • カルテだけの確認だけで、従来のルールである注射箋控えの確認を怠った。
  • 決められた手順を遵守する(病棟ルール、注射確認時のルール)
確認が不十分であった

連携
11 障害残存の可能性なし テグレトール ノバルティス 本院に帯状疱疹後神経痛で外来通院中の患者へ、来院の際に「テグレトール細粒150mg(成分量) 分3」から「120mg(成分量) 分3」に減量して併せて錠剤に切り替えようとした際に、換算を誤り「テグレトール錠(200mg)6錠【成分量1200mg】 分3」と10倍量で処方してしまった。同患者は、同日夜に400ミリグラム、翌日朝に400ミリグラムを内服し、その後、嘔吐、意識障害をきたし、11時32分に本院へ救急車により搬送され、経過観察のため入院となった。 薬剤の剤形を変更しようとして,急いでいたため,用量を間違えた。 処方内容を再度確認してから,処方オーダーをする。 確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
12 死亡 ワーファリン エーザイ 構音障害,左不全麻痺を認め,頭部CT上出血なく,脳梗塞として神経内科入院となった患者。2ミリグラムだったワーファリン投与を1.5ミリグラムに変更との継続指示あったが,照合の手違いもあり実施入力ができたために,ワーファリン2.5ミリグラムの誤投与を行った。1週間後に,ワーファリンの減量を意図して1.5ミリグラムから1ミリグラムに投与変更予定としたが,指示の複雑さ,連携不足と照合未実施で変更前日に2.5ミリグラムが投与された。この間,プロトロンビン時間検査は若干高めであったが,誤投与によってより高くなることはなかった。投与2日後の朝から意識レベル低下と嘔吐,麻痺の増悪を認め,CTの結果,脳梗塞の拡大と出血性梗塞を認めた。ワーファリン過剰投与との因果関係は不明である。その後血圧低下,主治医により死亡確認した。
  1. ワーファリン2mgを1.5mgに変更する予定が2.5mgの誤投与になった件について
    • 主治医がワーファリン2mgを1.5mgに減量する意図で、それまで服用していたワーファリン2mgを1mgに変更した上で、追加でワーファリン0.5mを処方し、併せて1.5mを服用とする指示を入力した。両薬剤とも粉砕指示となっていたことから、病棟には1包2mg(以前から服用)と1包0.5mg(追加分)のワーファリンが存在し、看護師が前者を1包1mgと思い込み与薬したため計2.5mgの誤投与となった(2mg→1mgに変更してあると思った)。
    • 主治医は継続指示により、1.5mgに変更する旨記載していたが、指示受けは別の看護師が行っており、当日与薬を行った看護師は把握していなかった。
    • ワーファリンが粉砕されていたため、病棟では2mgから1mgに変更できなかった。
    • 医師は臨時指示を出した場合、看護師に指示書を手渡す(出来ない場合は口頭で)ことになっているが、伝えていなかった。
    • 当院では与薬前に、患者リストバンドと薬袋でバーコード照合を実施しており、処方が変更になっている際は、照合時に警告表示される。今回照合を1包2mgの薬剤と照合せず、1包0.5mgの薬剤とのみ照合したため、警告が表示されなかった(1包0.5mgは変更されていないため照合OK)。
  2. 1週間後、1.5mgを1mgに変更予定が2.5mgの投与になった件について
    • 主治医がワーファリン1.5mgを1mgに減量する意図で、それまで服用していたワーファリン1mgとワーファリン0.5mgの服用期間を変更し、新たにワーファリン1mgを処方した。薬剤部よりワーファリン1mg(翌日開始分)が病棟に届き、主治医より処方変更の連絡を受けていた看護師が当日よりワーファリン増量と思い込み、指示のあったワーファリン1.5mgに加え翌日開始分のワーファリン1mgを与薬した。
    • 一連の処方変更操作により、当日の処方実施入力画面に未実施のワーファリン1mgが表示された(不具合、改修済)。別の看護師がこれを見てワーファリン増量と思い込み与薬する看護師に伝達した。
    • 与薬した看護師は主治医より変更がある旨は聞いていたが、変更時期・変更内容については把握していなかった。また、主治医は継続指示により、翌日より1mgと記載していたが与薬した看護師は見ていなかった。
    • 翌日開始のワーファリン1mgについて、与薬の際、照合を行わなかった(照合を行っていれば、警告が表示される)。
指示受けをしたら,指示を印刷し,チームのファイルにはさむか,その場で指示どおりに分包を行う。指示どおりに減量できない場合は,薬剤部に返却し,主治医に伝え,処方をし直してもらう。出血性梗塞については,起こりうる合併症等について十分な注意と説明が必要である。 確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)

連携
13 障害なし オビソート 第一三共 検査担当外来看護師がアセチルコリン負荷試験のマニュアルに則って必要物品と薬剤を準備した。
  • A液:オビソート1Aを蒸留水2mlで溶解+生食98ml(オビソート100倍希釈液)
  • B液:A液1ml+生食99ml(オビソート10000倍希釈液)
 15:30負荷試験が開始となり医師よりオビソートの指示があり、看護師はA液とB液の溶解方法を医師に伝えた。本来B液を使用するところ、看護師はA液のボトルを医師に差出し、医師はA液のボトルから2ml吸引し患者に投与した。投与直後、患者は意識消失し心拍停止状態となった。医師は速やかに心臓マッサージを開始し硫酸アトロピンを投与し10秒程で意識回復、心拍も再開した。
 15:45患者の状態も安定し負荷試験が継続され2回目のオビソートを指示されたとき、看護師はB液のボトルを医師に差し出した。医師はB液のボトルから2ml吸引し患者に投与したが、その際心電図上何の変化も見られなかったため、医師が再度看護師に溶解方法と1回目に使用した薬剤について確認し間違いに気づいた
  • オビソート10000倍希釈液を作るために、2段階で薬剤を溶解している。
  • アセチルコリン負荷試験のマニュアルに手順は記載されているが、オビソート使用時の注意点やその根拠について書かれていない。
  • マニュアル上でB液作成後、A液を破棄することになっていなかった。
  • 介助に付いた看護師はアセチルコリン負荷試験が始めて介助につく検査であったが、検査の目的や注意点について理解不足だった。
  • 医師はオビソートの溶解方法について理解不足の点があった。
  • アセチルコリン負荷試験のマニュアルに手順のみでなく、オビソート使用時の注意点やその根拠について記載する。
  • マニュアル上、A液作成後に速やかにA液を破棄する手順を加える。
  • 不慣れな検査の介助はの初回は補助者をつけるなどの配慮をする
確認が不十分であった
14 障害なし ヒューマログ注ミリオペン 日本イーライリリー 昼の血糖値が高かったためインスリンを投与しようと血糖指示ファイルを開いたところ、朝に投与するはずであったインスリン入りの注射シリンジが挟まっていた。患者に確認したところ朝にはインスリンは投与していないとの事であった。看護記録・温度板にはインスリン投与を実施した記録があった。 実施前に実施済みの記録にサインしてしまった。
  • 実施済みのサインがあったためにダブルチェックが機能しなかった。
  • 多忙時に発生。
必要な検査や処置が実施されないことは、重篤な有害事象を招く危険があることを再確認する。
  • 実施記録は適切な処置・検査等が確実に実施されているかを確認する重要な手段である事を再確認して、実施記録のサインは、必ず実施後に記載することを徹底する。
  • 多忙時でも手順を遵守して、それぞれの処置を確実に実施していくことを心がける。
確認が不十分であった

記録等の記載
15 障害残存の可能性なし ワーファリン錠1mg
アレグラ錠60mg
メルカゾール錠5mg
リリカカプセル25mg
アイトロール錠20mg
エクア錠50mg
メトグルコ錠250mg
グリミクロン錠40mg
エーザイ サノフィ・アベンティス
中外
ファイザー
トーアエイヨー
ノバルティス
大日本住友
大日本住友
夜勤看護師は、担当の患者の夕食後薬の配薬を行うため、与薬カート、PCを持参した。患者Aのベッドサイドで家族を患者Bの家族と思い込んだ。そのため、与薬車の患者Bのボックスを引き出しから薬を取り出しPCで患者Bのカルテを開き薬剤を確認した。その後患者の家族に薬を渡した。家族から「内服薬の数が多い」「量が増えたのですか」と2回確認された。その都度患者Bのカルテを開き確認し間違いないと返答した。患者の妻は、看護師から薬を受け取り患者に渡し内服を与薬させた。その後隣室のB患者の元にいき患者Aの内服薬を渡した。B患者からは何も聞かれなかった。患者Aは20過ぎに吐気を訴えた。当直医が診察後プリンペランの内服が処方された。21時すぎには腹痛を訴え診察後ブスコパンが処方された。翌日14時すぎに患者Aの家族から昨日の夕方の薬を調べてほしいと日勤看護師は依頼された。患者のカルテや状況から患者Aと患者Bの薬剤が間違っていることが判明した。
  • 思い込みや過信から、患者本人との最終確認が実施されなかった。
  • 薬剤に患者氏名が記載されていない。
  • 「患者確認」のマニュアルが遵守されていなかった。
  • 職員への安全教育が不十分であった
  1. 全ての行為の最終確認の段階で、患者本人に名乗ってもらう。患者が名乗れないなどの場合は、リストバンドによる確認を徹  底する。疑問を感じた場合や疑義があった場合は、複数で確認する。
  2. 配薬の方法等(患者氏名入り容器の使用など)について、看護部で調査・検討を行い、決定したものを本委員会で報告する。
  3. 患者確認のマニュアルを一部改定する(疑問を感じた場合や疑義があった場合は、複数で確認する)。
  4. 患者誤認防止に関する啓発活動を定期的に行う。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
16 障害残存の可能性なし ジスロマックSR 成人用DS 2g ファイザー製薬 当直時間帯、咳嗽を主訴に来院した患者に、医師が「ジスロマックSR 成人用 DS 2g」をオーダした。薬剤師は、同じ薬品棚に配置していた【ジスロマック600mg 30錠】が入ったボトルを「DS 2g」と思い込み、患者家族に渡した。家族は、以前同じ薬剤を服用したことがあったため、外観等が異なると思い、薬に間違いはないかと確認したが、薬剤師は間違いないと説明、ジスロマック600mg30錠のボトルを薬袋から取り出し、「1瓶を水で溶解して1回で服用すること、1回の服用で1週間の効果がある」と説明した。家族は、2回間違いがないことを確認したが、病院で間違いないといわれたため、おかしいと思いながらも自宅で、指示されたとおりに溶解し服用させた(家族からの情報では、瓶では溶けずコップに移して溶かして7~8割程度服用したとのこと)。服用直後から、患者が嘔吐・腹痛を訴え、病院に連絡があり、調剤間違いが発覚した。再度来院し、胃洗浄等の処置を実施、入院し経過観察することとなった。薬剤による急性期の副作用は認めず、食事開始となったが、時々腹痛の出現があり鎮痛剤を服用した。また、整腸剤の服用により経過した。
  1. 当直時間帯での一人監査であった。
  2. 同薬剤が同じ薬品棚に配置されていた(離して配置していた)
    (ジスロマック600mgの使用実績は少なく(HIVの予防内服)特殊な使用であったが、一般薬と同じ棚に配置)
  3. 同じボトル(瓶)の製剤ということからの思い込みがあった
  4. 規格が異なる薬剤についての知識不十分
  5. 「お薬説明書」に写真の添付がなく、薬剤師・患者側とも確認の手段に活用できなかった
  1. 休日・夜間に調剤時は、可能な限り看護師(長)が薬剤師とともにダブルチェックを行う。
  2. 薬剤の配置場所を変更する。
    DSと錠剤、それぞれ場所を変更した
  3. 全ての薬剤について【お薬説明書】の写真を挿入する。
  4. 職員のレベルアップのための機会教育を行う(当時者には再教育)。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
17 障害なし アマリール サノフィ・アベンティス 胃がんESD出血後治療目的で入院した糖尿病フォロー中の患者で、入院中に低血糖が認められ、アマリールの処方を変更し併用薬も減量していた。退院後外来において入院前と同じ処方をしたため、低血糖をきたし入院加療となった。 糖尿病薬減量が診療録に記載されていたが、その確認を怠ったことが要因である。 入院前後で処方が変わることがあるため、退院時の確認や退院後外来においても注意するよう注意喚起を行う。 確認が不十分であった
18 障害残存の可能性がある(低い) BSSプラス500とキシロカイン点眼液4% 未記入 術後の経過が本来の手術経過と異なっており、キシロカインが前房内に混入した可能性があることがわかった。
眼科手術4例目の硝子体手術で、Drに「BSSちょうだい。」と言われ、外回り看護師に、2.5ccシリンジと鈍針を出してもらい、薬杯に準備してあるBSSを吸いDrに渡し眼内に注入したが、その薬液が他の薬杯に入っていた4%キシロカインの可能性があった。
眼科の手術は4件あり、手術の始まる前に4件分の手術機械を並べ準備していた。その際4例目の硝子体手術の器械台に4%キシロカインの入った薬杯(青色)の残りをとっていた。
手術開始前にDrと共にアキュラス(手術機器)のセッティングを行い、BSSは還流ルートから薬杯(透明)に採取し準備していた。
4%キシロカインは4%キシロカインと明記されたシール付き2.5ccシリンジに鈍針をつけ準備し、2%E入りキシロカインは2%キシロカインと明記されたシール付き2.5ccシリンジにテノン下針をつけ準備していた。
硝子体キット内の5ccシリンジ(緑色押す子タイプ)にBSSを吸いヒーロン針をつけ、手術中眼内にBSSをかける準備をしていた。Drに「BSSちょうだい。」と言われた際に、器械出し看護師が眼内に注入するためのBSSが必要だと思い、水かけ用(シール付き5CCシリンジ)とは別にシリンジが欲しいと考え、外回り看護師に2.5CCシリンジを出してもらった。鈍針は医師にゲージ数を確認し、鈍針を出してもらい、BSSを薬杯から吸ってDrに渡したが、4%キシロカインを間違えて吸った可能性がある。
準備の際に使用した、4%キシロカインなど薬液を入れた薬杯は破棄し、使用時は再度準備する。
シリンジに薬液の記載をする。
確認が不十分であった
19 障害残存の可能性がある(低い) テオドール 田辺三菱 入院時よりテオドール錠100mg2錠を朝・夕で内服していた。本日の遅番看護師がパソコンで内服を確認したところ、テオドールのオーダーが入っているが、実物が病棟にないことを発見。新しい処方が出た3日前の朝から、テオドールが薬局から届いておらず、内服していないことが発覚した。 以前の処方箋のテオドールは、4日前の夕で飲みきっていた。その処方箋には「次回処方すみ」と書かれていた。3日前からの薬をセットする際に薬と処方箋はないが、パソコン上処方が出ていたので、遅番の勤務であった私は勤務終了までに薬が上がってきたか確認しセッティングをするか、またあがってきていなければその日の夜勤のナースに申し送りしなければならなかった。
しかし、気づいたときにすぐにメモを取らずその日のチームナースに送らず後で送ろうとしていたため、その後送りを忘れてしまい怠ってしまった。通常、次の処方箋と内服薬が薬局から上がってきたら、以前の処方箋と内容を確認した後、以前の処方箋をカルテポケットに入れるが、上がってきてないのにカルテに入れられていたこともほかのナースが確認することができなかった原因であった。
 3日前の遅番看護師が他の薬(フロセミド)の処方がなくなるのでパソコンで処方されているかを確認したところ、患者様がテオドールも飲んでいることに気づく。病棟の薬棚に本人用に処方されたテオドールがなく、薬局に確認したところ処方オーダーそのものが薬局の端末に飛んできていないということであった。
 師長が再度薬局に確認すると、以前パソコンでのオーダー入力に切り替わった頃、同じようなことがあり、システム担当者にみてもらいシステムを変更してもらったとのこと。しかし、変更後も同じようなことが今回あったということは、再度確認が必要ではと薬局に話した。
 テオドールを約3日間、内服していないことは血液内科のDrへ報告し、再度夕分より処方を依頼した。
  • オーダーリングシステムの確認(薬局より担当システムへ連絡してもらうこととする)
  • 病棟では、次の内服薬が来るまでは飲みきった処方箋はカルテにいれない。
  • 次回処方箋が来たら、前回の処方箋と内容を確認し、誤薬を予防する。
  • 次の日の朝から内服薬がない場合は、必ず受け持ち看護師に申し送る。
  • 次回からの処方の指示がパソコンで出ていても、あとでやろうとすると忘れてしまうので、気づいた時にすぐメモ用紙に、セッティング未の患者を記入し、遅番の勤務終了時までに確認し、あがってきていればセッティング、薬局から届いていなければ、薬局に確認しあげてもらい夜勤のナースに申し送り(内服薬のセッティング)をする。
確認が不十分であった

連携
20 障害なし カリメート
酸化マグネシウム
興和 夕食後の内服薬をA看護師が配薬を行い、病室はまだ食事中の方がいたため、後回しとなった。食事はB看護師が下膳した。C看護師(夜勤リーダー)は、ホールで食事介助や与薬を行っていた。その後、ステップIで管理していた。与薬の確認は行われず、翌日の夕食時、家族が隅のほうに寄せて残っていたいた内服薬を発見し、発覚した。 配薬した看護師、下膳した看護師、リーダーだった看護師それぞれが確認を行わなかった。特に、リーダーだった自分の行動としてステップIの患者の内服の最終確認を実施するという意識に欠けていた。 患者にステップIの内服管理について、再度説明を行う。
配薬時に確認を行うためのチェックボードを作成する。
配薬を確認した看護師は、リーダーに報告を行う。
リーダーは最終確認を行う。
確認が不十分であった
21 障害残存の可能性なし カプロシン皮下注用2万単位/0.8ml 沢井 5000単位の製剤(ヘパリンカルシウム皮下注5000単位/0.2mlシリンジモチダを1日2回皮下注と処方するところを20000単位の製剤(カプロシン皮下注用2万単位/0.8ml)を2回(4倍量)と処方され、2日間そのまま4倍量が投与された。ドレーンからの出血の増加にて過量投与に気づき、輸血、プロタミンの投与を行い、特に合併症はなく軽快した。 カプロシン2万単位/0.8mlは通常に採用されている医薬品であったが、ヘパリンカルシウム皮下注5000単位/0.2mlシリンジモチダは特別購入医薬品でオーダリング画面からオーダーができなかった。また、同様に手術であってもカプロシンが分割投与で用いられることがあり、薬剤師の処方鑑査で疑義の対象とならず、また、投与した看護師も違和感を覚えなかった。 皮下注用のヘパリン製剤には2剤型あることを緊急職員集会、ヒヤリハットニュース等にて改めて周知した。汎用されているヘパリンカルシウム皮下注5000単位/0.2mlシリンジモチダを正規採用医薬品とした。さらに、カプロシンを特別購入医薬品としてオーダリング画面からは処方できないようにした。 確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
22 障害なし アイトロール
アダラートCR
ロプレソール
シグマート
コメリアンコーワ
ムコダイン
ユリノーム リバロ
アムロジン
ワーファリン
アステラス
バイエル
ノバルティスファーマ
中外
興和
杏林
鳥居
興和
共和
エーザイ
患者Aの薬の封が切ってあり、サインペンで患者Aの名前が書いてあった。患者Aの内服薬を手に持ち、患者Bに「患者Bですね」と確認し(患者Bはうなづいたのみ)、患者Aの薬を飲ませた。他看護師が患者Aの内服をしようとした時誤薬が発覚した。 手に持っていた薬の名前と声に出した名前が違っていた。
患者Bの薬と思い込んだまま服薬させた。
与薬の基本的な動作、手順ができていなかった。
夕食後の与薬、トイレ誘導を行いながら、ナースコール対応をしており、業務が繁忙であった。
夜勤のダブル勤務が終わり、初めての夜勤であったため、心理的に緊張し余裕がなく焦っていた。
服薬時は、患者の名前を指差し確認しながら、患者に名前を見せ、名前を言っていただき確認する。自分でも名前を声に出して読む。
夜勤業務の内容や手順など、しっかり覚えることと慣れること。心理的には良い意味での緊張感を常に持ち、繁忙時こそ、基本動作、手順を確実に行っていく。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
23 障害なし アスパラカリウム
スローケー
田辺三菱 ノバルティス 入院前から経口カリウムを服薬している患者であるが、入院時に、従来の服薬量6.8mEq(アスパラカリウム300mg1錠(1.8mEq)+グルコン酸K1錠(5.0mEq))の服薬量を計算ミスで17.8mEq(アスパラカリウム300mg(1.8mEq)+スローケー600mg2錠(16mEq))に増量してしまった。患者は高カリウム血症となり、因果関係は明らかではないが、一時心停止を生じた。 入院時に内服していたカリウム製剤が、院内採用されていないものがあったため院内採用のものに代替する際に単位の計算を誤って増量したことが原因。
単位表記がmg表示であったためmEqで単位を計算しなおす際に計算ミスが発生した。
経口カリウム製剤の薬剤名は、mEq表記とmg表記のものが混在しており、含有されるカリウムの量がわかりにくくなっていた。
カリウム製剤の単位について、服薬指示システム上の表記をmgとmEqを併記するようにした。
服薬指示上でmEq表記での量を追加することとした。
確認が不十分であった


 
24 障害なし リスパダール内用液1mg/ml ヤンセンファーマ 夜間不安・不眠・せん妄症状ありリスパダール(0.5ml)やレキソタン(2mg1錠)などの抗不安薬が開始となる。開始後は夜間の睡眠も確保できるようになり症状も軽快していた。当事者本人は、当患者の受け持ちを夜間帯で2回していた。インシデントに気づいたのは、2回目の受け持ちの時である。当事者はリスパダールは内服薬であるという事を認識していたが、薬液が皮下注用の注射器に入っていたため、そのまま内服ではなく皮下注で投与経路を誤って与薬してしまった(シリンジが針が付いたまま内服薬の薬杯に入っていた)。当事者本人は誤りに気づかないままでいた。そのことを日勤者+夜勤者が気づき、当事者へ薬剤の投与経路について確認の電話あり。そこで、当事者は投与経路を誤っていたことに気づく。主治医へ報告後、皮下注した部位の皮膚の観察を厳重に行うよう指示あり。師長と一緒に患者の穿刺部位の観察を行なうが、事故発生24時間後の時点で刺入部疼痛や発赤などは見られない。 薬剤管理の問題
  • 内服薬を注射用シリンジに入れ保管していた。
  • 用法の違う薬剤を安易にシリンジに入れ保管するという土壌があり、ローカルルールであるという認識がない。
  • 針付きシリンジに保管していた。(皮下注射用製剤と誤認しやすい状態)
  • 添付文書には、1回使い切りの文言があるが、2分割使用していた。
  • 使用頻度の少ない薬剤であったにもかかわらず、添付文書の確認を怠った。

処方に関する問題
  • 処方そのものが内服指示期間の半量しか出されていなかった(14日間の投与指示でありながら、7日分の処方)。
  • 上記の理由により、否応なしに残薬を保管しなければならない現状。
  • 前医では0.5mgOD錠の投与であったが、当院では採用しておらず、採用中の1mg内用液が処方されていた。薬剤部より主治医宛に疑義照会を行った(半量使用にすべきではない旨)が、「できるだろう」という医師の強い意見が優先された。

与薬の問題
  • 投与時、処方箋との確認がないまま実施された。
  • 与薬ルールが遵守されていない。
  • 注射以外の用法の薬剤はシリンジ保管を絶対にしない。(ローカルルールの点検と廃止)
  • 0.5mg処方に備え、リスパダールOD錠の採用をする。(1mgの規格であるが、薬剤部で半量に分割し払い出し可能)
  • 薬剤師の疑義照会を再考のキッカケとするような、医師の意識改革。(ヒエラルキーを容認しない)
  • 薬剤投与時のルールを遵守する。(処方箋の確認と患者・家族、同職種者とのダブルチェック)
  • 添付文書の参照を習慣化する。
確認が不十分であった

判断に誤りがあった
25 障害なし フラグミン 不明
  1. 冠動脈バイパス術後1日目、急性腎不全患者に対し、持続的血液ろ過透析を導入。
  2. 最初にコアヒビター注射指示を出していたが、MEより使用されているのはフラグミンであった。
  3. 注射の指示を口頭指示で行い、そのままフラグミンを指示した。
  4. 術後、第2病日にドレーン出血が増加し、RCC・FFP・プロタミン投与し、出血は減少した。
  5. その後、再びドレーンからの出血が増加し、開胸止血術を施行。
  6. 薬液の違いと出血の因果関係は不明。
  1. コアヒビター注射指示を出していたが、MEより使用されているのはフラグミンであり、指示変更を要求され、そのままフラグミンを指示した。
  2. 術後の出血を助長する可能性のあるフラグミンより、コアヒビターのほうが望ましいが、確認をしないまま治療が継続された。
  3. 使用する薬剤の確認を怠った。
  4. 医師からMEへの指示が口頭で行っていることがあった。
  5. 指示簿が記載されていなかった。
  • CHDF施行の場合、フラグミンは標準使用薬剤であるが、術後では出血を考慮してコアヒビターを投与する。
  • 緊急以外は口頭指示をしない、受けないことを周知する
  • 医師は指示簿に記載する
  • MEは指示簿やオーダーリング画面の指示を確認してから実施する
  • 薬液を使用したMEが、実施入力を行うようにシステムを変更する
確認が不十分であった
26 障害残存の可能性がある(低い) メソトレキセート錠2.5mg ファイザー株式会社 外傷性クモ膜下出血で脳神経外科に入院中の80歳代女性。既往に関節リウマチがあり、過去にリウマトレックスを内服していたが現在は中止中であった。患者の状態も安定したためリウマチでかかりつけだった腎臓内科に受診し、主治医よりメトトレキサート(2)の処方を指示される。その際カルテに『MTX(2)3tab(2-0-1)/週』と記載されていた。脳外科医師は、この指示を基にメソトレキセート(2.5)だと思い込み、2日後の朝より、3錠(2-0-1)4日分とその後3日分の定期処方日までのつなぎ処方をした。合計7日間、連日投与された。採血データにて汎血球減少が認められ、メソトレキセート(2.5)の投与中止し、輸血やG-CSF製剤投与を行った。汎血球減少は改善みられたが、誤嚥による肺炎が出現し抗生剤投与を開始した。肺炎による低酸素状態から不整脈(VT)出現し心室細動となりCPR開始後6分で心拍再開した。現在ICUにて加療中である。
  • 腎臓内科医は、週1回外来のみ担当している医師であった。
  • 腎臓内科医は、患者にRA治療としてメトトレキサート(2)の投与指示
    『MTX(2)3tab(2-0-1)/週』と手書きで記載し、処方は脳外科医師に依頼した。処方意図は、メトトレキサートを朝2錠、昼0錠、夕1錠 週1回で投与、であった。
  • 腎臓内科の指示「3tab(2-0-1)/週」の指示が外科領域ではほとんど使われない指示であり、担当医は1日投与量と勘違いした。
  • 脳外科では脳外科医(主治医)は、腎臓内科医がカルテに「MTX」と記載していたのを見て「メソトレキセート」を処方した。脳外科では「MTX」といえば「メソトレキセート」の処方のほうが一般的であった。
  • 脳外科医師は処方入力画面に「メソトレ」と入力しメソトレキセート2.5mgを選択した。
  • 脳外科医師は、腎臓内科の指示『MTX(2)3tab(2-0-1)/週』は外科領域では殆ど使用されないため1日投与量と勘違いした。また、脳外科医師は「3tab(2-0-1)/週」の記載に疑問を抱くも確認を怠った。


    (以下次ページ)
  • メトトレキサート(2)は、オーダーできる診療科が限定されているため脳外科医師はオーダーできないが、メソトレキセート錠2.5mgは科限定にされていないためオーダーできてしまった。
  • 薬剤部ではハイアラート薬確認の際、適応疾患を確認していなかった。また、病棟で他科医師の指示通りに脳外科医師が処方したと思い込み、規格や日数が相違しているとは考えなかった。
  • 薬剤部は、処方鑑査・計数担当薬剤師、一次鑑査、最終鑑査薬剤師等での複数の鑑査体制があったが機能していなかった。
  • 病棟薬剤師は、薬剤管理指導記録作成時、入院カルテに「RA」「MTX3T(2-0-1)」とあるのと、緊急処方の日数、定期処方の有無を確認したが、入院カルテの他科指示コメントを確認した際、「MTX(2)3錠(2-0-1)/週」の「2mg」、「/週」を見落としていた。
  • 当該医療機関では、ハイアラート薬処方されている場合は薬歴が処方せんに写しで表示されているが、病棟薬剤師は確認しなかった。
  • 病棟薬剤師はリウマチに対してMTX使用を認識していたが連日投与であったことを見逃していた。
  • 病棟薬剤師は後任者への引き継ぎがあり、後任者は当該患者がリウマチで他科指示によりメソトレキセートを開始していることを把握していたが疑問に思わなかった。
  • 病棟看護師は以前患者が外来で「リウマトレックス」と「メトトレキサート」を交互に内服しているのかは知っていた。
  • 脳外科では腫瘍の患者にメソトレキセートを注射薬で使用する頻度が高いが、メソトレキセートが内服薬で処方されたため、看護師は脳外科医に確認し「そういう使い方もあるのだ」と理解した。
  • 看護師はメソトレキセートの薬効について知識がなかった。処方があった際に医師に対して何に対する治療薬かを確認しリウマチの治療との情報を得ていたが、医薬品情報の検索をしなかった。
  • メトトレキサート(2)の処方は診療科限定のオーダーシステムとなっており、脳外科は処方できなかったが、メソトレキセートが処方できたため逆効果となった。
  • 内容が不明な時は、思い込みはせず、周囲や指示を出した本人に確認することを徹底する。
  • 薬剤部において処方監査でハイアラート薬については全件、病名の確認を行い何に対して処方されているのかを確認することとする。
  • メソトレキセート(2.5)は血液内科以外は処方できないように診療科限定とする。
  • メトトレキサート(2)の処方は医療安全上の考慮により登録削除としていたが、リウマチ・膠原病内科の希望により処方登録医師を限定することとした→「メトトレ」と入力すると使用者限定のアラートが出る仕組み。
  • 薬剤部でハイアラート薬管理手順を見直し部内で周知する。
  • メソトレキセート製剤についてDIニュースを発行し、適応疾患、用法・用量等の情報を院内に提供する。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
27 障害残存の可能性なし オルメテック錠10mg 第一三共株式会社 本日手術患者が2名いた。7時に術前チェックリストの名前を確認せずに、薬をバインダーに挟んであるチェックリストにホッチキス止めしてあるのを取り、薬のみを患者の所に持って行き、術前の内服指示薬プレドニゾロンではなく別の術前患者の内服薬であるオルメテック、リバロを内服させてしまった。その後他の看護師がもう1人の患者に内服すべき薬がないことに気づき誤薬が発覚し、主治医に報告する。その後麻酔科に確認し、本来の指示薬であるプレドニゾロンを内服する。 術前内服薬を確認し、チェックリストを棚に置いた。その時棚にはチェックリストがこの患者のものだけであった。そのためチェックリストが棚には1つしか置いていないと思い込んでしまい、内服指示の時間となり、棚にあるチェックリストに付けてある薬を名前を確認せずに持っていき、内服させてしまった。 術前チェックリストから薬を外さずに患者の所へ行き、渡す前に名前を確認してから渡す。患者が薬の名前がわかるならば、薬の名前を確認してから内服薬を渡す。術前チェックリストを確認する時に、自分で持っている受け持ち一覧に薬の名前を書き、目立つようにマーキングする。そして、患者の所に持って行くとき、渡すときと確認する。 確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
28 障害なし ノルアドレナリン注1mg 第一三共 胃癌、癌性腹膜炎のため人工肛門造設手術した患者。術中から低血圧あり、ノルアドレナリン注(3mg+生食47ml)を使用していた。病棟帰室後は比較的安定していたが、ノルアドレナリン注(3mg+生食47ml)3ml/hrで継続としていた。血圧は100位であった。手術室からのノルアドレナリン注(3mg+生食47ml)が夜中になくなる計算だったため、ノルアドレナリン注原液(50mg/50ml)3ml/hrで注射指示をオーダーし、夜勤帯11時頃につなぎ直した。その後、看護師がカルテ記載(ノルアドレナリン3A入りなので、0.06γ)と異なる事を発見し、当直医に相談し対応。自覚症状、バイタルに大きな変化なく、漸減することとなった。 多忙、認識不足、循環器薬使用の危険性の認識不足。
ノルアドレナリン注原液は、この患者の担当医の指示で研修医がオーダリングシステムでオーダーした。ノルアドレナリン注原液を3ml/hrで投与(希釈なし)とオーダーしている。 担当医にはオーダーしたことを口頭で伝えているが、担当医は確認していない。
医師・看護師で事例検討会実施。
  1. 手術室から病棟に継続する点滴についての申し送りマニュアルの検討。
  2. 手術室から継続する薬剤の指示書に関するシステムの検討。
  3. 麻酔科医から担当医への薬剤の申し送りの改善。
  4. 循環管理のための薬剤の使用と注意点について明文化し、周知した。また、ノルアドレナリンの使用量の上限10mgとし、オーダー時に警告を出すようにシステムを変更した。
  5. 医師、看護師ともに出された指示が間違いないかを確認することを徹底する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
29 障害残存の可能性なし 治験薬 製薬会社 治験の薬剤指示については、治験登録確認書により、治療の薬剤量などを臨床試験コーディネーター(CRC)が確認し、治験分担医師がさらに確認をして薬剤指示を行うシステムになっていた。
治験依頼者と治験分担医師・CRCが事前に話し合い、コホート3に変更する予定だった。
誤)コホート2:治験薬:1406mg/body投与(Day1とDay15)
正)コホート3:治験薬:1054mg/body投与(Day1とDay8)
登録確認票が送信されてきたのでCRCが確認をしたが、これまで間違って送信されたことはなく、「3」と思い込んでおり、変更前のコホート「2」で連絡が来ていることに気付かず、そこに記されている薬剤量のみを確認して治験分担医師に連絡をした。
治験分担医師は、登録票の内容を直接確認せず、CRCからの連絡どおりに処方した。
その結果、2週間目にCRCがレポート作成中に登録確認票のコホート番号が「3」ではなく「2」になっており、間違っていることを発見した。さらにコホート3の予定だったのでDay1とDay8に薬剤を使用していた。「2」であればDay1とDay15 であった。
1回の量も「2」の方が多く、投与間隔も短くなってしまい、予定より、33%多い薬剤が投与されてしまった。
その状況に気付いた頃、患者の症状に血圧低下・貧血の進行・CTにて肝表周囲に液体の貯留を認め、過去2回肝腫瘍からの出血の既往があることから肝腫瘍からの出血が疑われ、夜間に血管造影及び肝動脈塞栓術を施行した。今回の過量投与との因果関係を否定できないため治験中止になった。その後、患者の症状は軽快し、次の治療を求めて退院した。
登録センターが割付コホート番号が変更になったことを知らなかった。予定でない変更前の番号で送信してきた。
治験依頼者と登録センター、治験依頼者と登録施設の連携ができていなかった。
当施設の問題:
  1. CRCが思い込みで確認作業をしたために登録確認票の間違いに気付かなかった。
  2. さらに治験分担医師が本来実施すべき登録確認票とCRCが連絡してきた薬剤量や投与間隔について確認を怠った。
    CRCも医師も間違っていないかという思いでは確認をしていない。
  3. 登録確認票のコピーは病棟看護師や薬剤師のところにも配布されていたが、どちらも医師の指示に従い、CRCと報告・連絡・相談をしながら進めていたのでそこまで確認するようにはなっていなかった。
CRC・治験分担医師がそれぞれに登録確認票を元に確認し、それぞれの役割を果たす。
入力の際には、コホート・投与間隔・投与量を声に出して読み上げそれぞれ別に投与量を再計算して間違いのないことを確認してから入力する。
登録センターへのFax送信を14時までに行い結果票返信後の作業に支障がないようにする。
薬剤部では、化学療法のレジメン確認同様のシステムの構築を検討する。
治験モニタリングを可能な限りリアルタイムに行うようにして、適切に投与されているか再チェックしていく。

登録センター側からも対策の報告があった。
  1. 登録確認票は作成者が作成後登録責任者にダブルチェックしてもらい押印して確認の証跡とする。
  2. 写しは登録センターからCOLおよび担当モニターに回送され内容を確認し、不備間違いがある際はただちに登録センターに電話及びメールで連絡する。
  3. センターは不適格例を除く3例の症例が追加登録される毎にクリニカルリードに登録状況を文書で連絡する。クリニカルリードは登録の休止またはコホートの移行(コホート拡大プロセスを含む)を同文書の返信欄へ記載し返信することでセンターに指示する。DLTの発言などの理由により各コホートの予定症例数に達する前に登録を休止する場合、クリニカルリードはEメールにてセンターに登録休止を指示する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
30 障害残存の可能性なし パクリタキセル注100mg/16.7mL「NK」
パクリタキセル注30mg/5mL「NK」
日本化薬株式会社 日本化薬株式会社 胃癌再発にて化学療法中の患者。
腹痛にて救急外来受診。その際、CRP16.9であったが、翌日外来受診予定であったため帰宅。翌日、外来にて化学療法を予定どおり実施。後日CT上、腹腔内膿瘍が疑われたため、US下ドレナージ施行。結果、開腹手術となる。
感染徴候(CRP高値)患者に対し、化学療法を指示 関係診療科内での検討および医療安全部門への報告(報告書作成)を行った。 確認が不十分であった

判断に誤りがあった
31 障害なし プレベナー
アクトヒブ
ファイザー
第一三共
アクトヒブ接種を希望して来院したが、薬剤を取り違えてプレベナーを実施してしまった。 問診票、カルテ、母子手帳を、予防接種の種類毎に色別ファイルに入れて受け付け、薬剤準備、接種実施への回す業務手順になっていた。受付にて、アクトヒブ用の緑ファイルにいれるべきところプレベナー用のオレンジファイルに誤って入れてしまった。薬剤を準備する看護師は、ファイルの色をみてプレベナーを準備し、医師に渡した。医師は、接種対象小児が怖がって泣くため、薬剤を自らの後ろに隠し、小児に見えないようにして素早く接種した。その際、手に持った薬剤の確認はしなかった。接種後に空バイアルを見て誤りに気づいた。 色ファイル使用は中止とした。予防接種専用診療外来には、数十人の接種希望小児が受診し、予防接種の種類も様々であるため、誤認防止策の強化を行った。具体的には、『予防接種シール』を作成し、保護者に「接種対象小児名」「希望予防接種」「小児の年齢」を受付で記入してもらい、小児の大腿あたりに貼付していただく。最終的に接種する場面で、保護者に小児の名前と年齢、希望の予防接種を言っていただき、保護者と医師で『予防接種シール』の内容の確認をし、接種することとした。また、「お願い」として、以上の事を待合室に掲示した。 確認が不十分であった
32 障害残存の可能性なし ノボヘパリン注1万単位/10CC バイアル 持田製薬株式会社 心房細動による血栓症予防のため、ワーファリンの内服を周術期にヘパリン2万単位・生理食塩水30ccに変更し、シリンジポンプで2cc/Hrで投与していた。更新分のへパリンをリーダー看護師、担当看護師の2名で処方箋と確認し別の看護師がカクテルした。その際50ccのシリンジには患者氏名及びカクテルした薬剤名・量を記載したテープを貼り、トレイに入れ処置台に置いていた。11時頃担当看護師が検温を終了し詰所に戻った際、処置台の上に担当患者の薬剤が残っていたためベッドサイドに持参し、患者に「血をサラサラにする薬を注射します」 と声をかけ患者確認をし、50cc全量を静脈注射した。担当看護師は静脈注射を実施した後、へパリンの持続点滴をしていることを思い出し、注射したことを疑問に思い、リーダーに確認し過剰投与の誤薬に気付いた。報告を受けたリーダーが師長に報告、持続点滴のへパリンを中止し主治医に連絡、血液内科医にコンサルトし、12時に心電図をモニタリングし、ショックに注意しながら拮抗薬のプロタミン50mg ・生理食塩水 100ml を投与した。その後 13時に ACT 249秒、14時の ACTが 234秒にて再度プロタミン 30mg ・生理食塩水 50ml を投与、16時の ACTが 161秒、APTT が36.8となりへパリンの持続投与を再開した。
  1. 担当看護師はへパリン2cc/Hr をシリンジポンプにて投与していたことは知っていたが、ルート確認をした際に残量と更新時間のみ確認し、薬剤名を見ておらず。また投与する際に処方箋との照合確認をしなかったため、シリンジポンプで投与している薬剤がへパリンという現場での認識をしなかった。
  2. シリンジポンプにて投与している薬剤は微量投与が必要な身体への影響が大きい薬剤であるという認識がなかった。へパリン 2万単位と生理食塩水 30cc の記載をみた際もへパフラッシュと比べ、シリンジ 1本内の単位が 20倍であるという認識や、 2万単位という量がもたらす身体への影響を理解していなかった。
採血データも問題なく、創部やその他の部位の出血所見もなかった。対応としては、
  1. 自分が準備、確認した薬剤であっても、他の看護師がカクテルし表示した薬剤を投与する際は、処方箋との照合確認を必ず行うよう看護師全員に周知した。
  2. ルートの確認をする際は患者側から実際にルートを手でたどりながら、何が、どこから、どのように挿入・留置・投与・ドレナージしているのかを確認する。またシリンジポンプで投与している薬剤の確認をする際は、シリンジに貼用したテープに記載された患者氏名、薬剤名、流量が、事前にカルテから得た情報と合っているかどうかを照合するよう指導した。
  3. シリンジポンプで投与する薬剤は微量で投与する必要があるもので、例えばフェンタネストは麻薬(法律で取り扱いが決められているもの)、へパリンは過剰投与で全身の出血(特に脳出血や術後 1日目であれば手術部位の出血)、過少投与でこの患者の場合は心臓内の血栓が引き起こす全身の血栓症の危険がある、カテコラミンであれば頻拍発作や血圧上昇、狭心症発作などを引き起こす危険があることを説明し、慎重に取り扱う必要性を周知した。
確認が不十分であった
33 障害なし ミドリンP 参天 患者はミドリンP点眼に対するアレルギーと判断された。アレルギー情報はカルテ記載(電子カルテではない)はされていた。通常はミドリンM点眼を処方していたが、今回、ミドリンP点眼を処方した。患者は指示通り来院3日前から点眼した。来院時に充血を発見し、アレルギー性結膜炎と診断された。ステロイド点眼治療を開始し、予定通り外来手術室で硝子体内注射を受けた。3日後、軽快する。 アレルギーの確認不足 アレルギー情報に留意し、処方する。 確認が不十分であった
34 障害なし レミナロン 小野 転科時よりDICを合併していたため、中心静脈カテーテルより「レミナロン1500mg+生食48ml」が開始されていた。 しかし、その後のCT上、CVカテ先に15mm大の血栓付着を認めたこと、DICが改善し食事摂取可能となったため、中心静脈カテーテルを抜去し、左前腕アンギオカット針より同じ指示内容でレミナロンを接続し14時開始した。
点滴開始3時間後にレミナロン点滴挿入部の疼痛があり(6.5ml注入されていたが悪化なし)、17時 右前腕に血管確保し点滴を入れ替えた。翌日10時に右前腕の血管に沿って発赤を認めたため、担当医へ報告し、血管確保ラインを抜去した(右手から入ったレミナロンの量は937.5mg)。皮膚科紹介を行い、血管外漏出性血管炎の返事があり、皮膚科指示にてステロイド軟膏を塗布し、生食ガーゼを貼付した。翌日皮膚科受診。処置は、デルモべート外用と生食湿布を継続し、皮膚科再診。その後右前腕の血管炎部疼痛が増強、硬結を認め、皮膚科再診の際、硬結の一部が自潰し、内部は真皮から脂肪層まで壊死していた。そのため2か所を切開し、創部洗浄を毎日行った。
DICに対し、末梢血管よりレミナロンが投与された。低アルブミン血症、2型糖尿病を合併しており、創部の治癒が遷延した。薬剤濃度管理。 レミナロンの薬効、副作用、末梢使用時の濃度について注意喚起(各委員会、ポスター配布・掲示、日本医療機能評価機構安全情報配布)、 確認が不十分であった
35 障害残存の可能性なし 高カロリー輸液 不明 食道癌と喉頭癌にて入院し、化学放射線治療を開始した。既往歴は胃がんで、胃全摘施行されている。放射線治療は54Gy終了、化学療法はFP2回が終了していた。放射線治療中の咽頭炎、食道炎により経鼻管で経腸栄養を行っていた。慢性的な栄養不良もあり活動性は低く、日中のほとんどをベッド仰臥であった。
また胃全摘後で栄養剤の逆流による誤嚥性肺炎を起こしやすいため、高カロリー輸液を開始した。当事者医師の指示でフルカリック1号から徐々に増量し、フルカリック3号を1日2袋投与していた。経過中の血糖チェックは無し。化学療法の2回目が開始となり、6日間抗癌剤が投与された。また抗癌剤投与に伴うhydrationも4日間行った。従って、1日尿量が2700~4000mlと多かった。抗がん剤終了後2日目の早朝から患者が気分不良を訴え、6時30分にトイレに移動しようとして足に力が入らず、尻もちをついた。Vitalsignに問題なく経過観察としたが、同日16時10分に原因精査のため血糖チェックを行ったところ、600以上の高血糖を確認。輸液とインスリンによる補正を開始するも高浸透圧利尿、高度脱水により高浸透圧性昏睡となり、19時30分頃から血圧測定不能となり、呼吸も微弱となり、20時10分に気管内挿入を行った。20時45分にICUに入室し、全身管理を行った。輸液とインスリン投与を開始した。
高カロリー輸液開始5の血糖管理が不十分であった。また、高カロリー輸液を増量した時期と抗癌剤投与によるhydrationの時期が重なり、尿量の増加が実際は高浸透圧利尿によるものであったことに気づくのが遅れた。 高カロリー輸液開始時には血糖チェックをルーチン化して行うシステム作りが必要である。 確認が不十分であった
36 障害残存の可能性がある(低い) オピスタン注射液35mg 田辺三菱工場 小児外科専修医はオピスタン1mlの静注を口頭で指示した。小児外科指導医は0.5mlへ指示を改めた。小児科専修医はオピスタン35mg(1ml)を1mlシリンジに吸い、そのうち常用量の6.9倍の17.5mg(0.5ml)を静注した(小児に対するオピスタンの常用量1mg/kg/dose(新 小児薬用量 改定第4版、診断と治療社、2006年)。患児は体重2.52kgに対しての常用量は2.52mgとなるが実際に投与された量が17.5mgなので、6.9倍)。その後胸腔穿刺のため、皮膚消毒をしている際にチアノーゼを認めたため、胸腔穿刺を中止した。SPO2は40%台、心拍数は70台に低下し、バッグマスク換気施行、回復に2~3分要した。換気中に四肢強直を認め、フェノバルビタール20mg/kg/dose静注。オピスタン投与量を再確認したところ、過量投与に気づき、ナロキソン0.04mg/kg/doseを静注した。投与後速やかに四肢強直は消失した。その後、SpO2の低下、強直なく経過した。 オピスタン0.5mlの希釈内容はオピスタン35mg/1ml/1Aを9mlの生理食塩水に希釈し(3.5mg/ml)使用ということであった。
小児外科医師は前回、オピスタン注射薬が2ml投与されたと記憶していた。前回の薬剤が10倍希釈されている薬剤だとは認識していなかった。小児外科指導医師はオピスタンはすでに希釈され、用意されたものと認識していた。当該事例では、一般注射点滴オーダーへの入力をせずに、口頭指示で投与し、投与後にカルテにオピスタンの投与量を記載した。薬剤のオーダー入力がなく、ワークシートと薬剤を確認しなかった。口頭指示の原則である指示内容を正確に伝えることをしなかった。小児科専修医は用量の確認をせず、また投与量の適量の判断が出来なかった。
注射・点滴を行う際には、緊急時を除き、必ずワークシートにより指示する。 確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
37 障害残存の可能性がある(低い) アザニン錠(50mg) 2錠
プレドニン錠(5mg) 5錠
ワイパックス(0.5mg) 3錠
田辺三菱 塩野義
ワイス-武田
既往に心房細動があり、心原性脳梗塞にて入院し現在、抗凝固療法中。薬は1回配薬を行っている。朝食後薬を配薬し内服介助を行った。その後、朝食後薬の内容を他看護師に確認され、内服薬(ワイパックス・アザニン・プレドニン)を誤投薬したことに気がついた。患者は通常ガスターD錠、ワソラン錠、アルダクトンA錠、ラシックス錠、マグミット錠のみを内服していた。患者が内服している薬の内容はケアスケジュールシートに記入して確認していたが、朝の内服薬の確認時に処方箋と薬袋を照らしあわせて確認していなかった。また、薬袋の名前を確認せず、薬箱に入っていた内容と薬袋の中身があっているかのみを見てしまっていた。翌日の採血にてPT-INR:1.5となり、ヘパリンが持続投与開始となり、転院が延期されることとなった。 まとめている薬袋に他患者の薬袋が挟まれているはずはないと思いこみ、その患者の薬であるかを確認を怠ったことにある。また、患者への配薬時に、何のために薬が使用されているか確認を怠ってしまった。
  • 内服薬の確認時、処方箋と薬袋を照らし合わせ、6R(正しい患者、正しい薬剤、正しい投与量、正しい方法、正しい時間・投与速度、正しい記録)を確認を手順通りに行うことを徹底する。
確認が不十分であった
38 障害なし カルボプラチン点滴静注液450mg
ジェムザール注射用1g
不明
不明
肺癌(TlaN1 p-stageIIA)術後補助化学療法としてカルボプラチン700mg(day1)+ジェムザール1900mg(day1)を投与,以後有害事象無く経過し,(day8)に採血結果を確認してからのジェムザール1900mg(day8)投与を予定していた。day8朝,看護師が化学療法に関して「開始して良いですか。」と医師Aに確認を行った。医師Aは,同日の採血結果が未着であったため,「メインルート用のソルデム3Aを開始してもよいか。」という問合せと思い込んでしまい開始の指示を出した。その後,採血結果にて好中球減少を認めたため,医師Aと医師Bは指導医Cに確認,その結果ジェムザール投与を1週間延期しday15に予定変更もしくは中止する方針となり,医師Aと医師Bがその旨を患者に伝えに行ったところ,day8のジェムザールが既に2/3程度投与されており,直ちに投与を中止し,患者及びその妻に説明した。化学療法終了後,一般的有害事象である白血球・血小板減少を呈していたが,全身状態は安定。 看護師は抗癌剤の開始を確認したつもりだったが,医師は「メインルート用のソルデム3Aの開始」と受け止めてしまい,医師と看護師間で投与についての解釈の相違があり,相互のコミニュケーション不足があった。(本来,化学療法時のルート確保も化学療法を行うと決まってから開始すべきであるが,確認された段階で医師は本院ではルート確保だけは先に行うようなシステムであると受け止めてしまった。)従来呼吸器外科化学療法レジメンではday7といった前日に採血し,問題がなければday8はそのまま化学療法を開始していたため,このような事例は起きていなかった。しかし,外来化学療法と同様に同日の採血結果を確認してから化学療法を開始するのが一般的と思われ,前月の異動で病棟担当となった医師としては,同日の採血結果を確認してからday8化学療法開始の判断を行うという認識があったため,day8朝に採血指示を出していた。この変更されたシステムの説明を患者にはしていたが,看護師への連絡及び治療ステップの説明が不十分であった。 基本的には抗癌剤の投与是非は,前日の採血にて判断し,判断に迷う場合には当日採血を行ってから薬剤部に抗癌剤のミキシングを依頼する。また,互いに知識を共有し,コミニュケーションを強化する。また,言葉だけでの確認では解釈の食い違いを生じる可能性があり,開始に際してサインなどのステップを追加する。 確認が不十分であった

連携
39 障害残存の可能性なし ヒューマリンR イーライリリー 医師Aの注射指示 「ヒューマリンR 50単位 + 生食49.5ml で 調整」 医師B(当事者1)の処方 「ヒューマリンR 100単位 0.5V 生食 49.5ml 2ml/時間 で投与」の 指示を受けた看護師(当事者2)がヒューマリンRは0.5Vで5mlであるから合計50mlにならないと報告し、B医師の指示にて「ヒューマリンR 5ml +生食45ml」と修正。 本来は1単位/mlであるが10単位/mlのヒューマリンR+生食の投与を13時間20分行ってしまった。血糖値が33mg/dlまで低下したが投与中止とブドウ糖投与にて患者は回復し低血糖による後遺障害はないと考えられる。 当院ではインスリンに限り、紙ベースのインスリン指示書(注射指示書)を作成し、運用をしている。指示を出した医師と処方を入力した医師が異なるため2つの指示が出てしまった。
インスリン指示書(注射指示書)では医師Aより正しく「ヒューマリンR 50単位+生食49.5mLで調製」と手書きの記載が行われた。当院では、持続投与の場合には、ヒューマリンR 50単位+生食49.5mLで調製することはあらかじめ決められている事項である。

実際の薬剤が必要なため、医師Bはオーダリングシステムにて注射薬の処方を行う必要があり、「ヒューマリンR100単位/mL 0.5V+生食49.5mL 2mL/時間で投与」という誤った処方入力を行ってしまった。(ヒューマリンR100単位/mL は処方オーダー時に選択される薬剤名)このときにも、注射指示書が発行してしまうため、事故が起こってしまった。
ヒューマリンRは処方箋ではなく指示書に基づいて投与されるため、処方した医師は物品の払い出しの感覚でとにかく1Vを病棟に上げる目的で1Vの容量を確認せずに処方した。当院の決まりはインスリンの持続点滴はヒューマリン0.5mL+生食49.5mlで行うこととなっており、印刷された指示書もあるが指示を受けた看護師は投与単位よりも投与容量の合計に気が行ってしまい、医師の処方どおりでは合計が50mlとならないのでヒューマリンRを5mlのままにして生食を45mlに減量し結果、10倍投与となってしまった。また、ヒューマリンRは1V10mlであり、この中に致死量にも相当する1000単位のインスリンが入っていることも大きな問題である。
医師Aにより「ヒューマリンR50単位+生食49.5mL」と正しく記載されていたが、医師Bから誤った指示を受けた看護師がヒューマリンRは5mL(0.5V)が正しい量であると思い込み、正しいインスリン指示書を二重線で書き直し、全量50mLとするため、生食も45mLに変更し調製してしまった。
ヒューマリンRは静注専用とし、インスリン製剤も処方と注射指示の内容が同一となるようにした。緊急集会を開催し、マニュアルを徹底した。(病棟に常備されている皮下注用のインスリンはペン型のものにし、原則としてヒューマリンRを常備しないようにした)。:これまでヒューマリンRの処方時には、インスリン量を必要単位・バイアル単位で選択できる形式がとられていた。今回の事例でも、0.5Vと誤った量の入力が行われている。また、皮下注用として使用する場合にも、別にインスリン指示書があるため、1バイアル単位で処方することもできていた。 今回の事例を受け、インスリン製剤の皮下注はペン型のインスリンで対応し、ヒューマリンRは静脈注射専用とした。これに伴い、ヒューマリンR単独(1バイアル)での払い出しを不可とし、ヒューマリンRを処方する際には、必ず輸液と合わせて必要単位数を入力する形式に変更した。 確認が不十分であった

判断に誤りがあった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
40 障害残存の可能性がある(高い) ヒューマリンR リリー GI療法の指示は、50%ブドウ糖液40ml+ヒューマリンR4単位であり、10時に点滴から側注を行った。14時の血糖測定以降、血糖値は20mg/dlで推移し、ブドウ糖液を繰り返し投与したが、血糖値の上昇には困難を窮めた。22時くらいより血糖値は安定してきた。同日夜、10時に投与したヒューマリンRが過剰投与であることが判明した。
GI療法の指示が出た際、看護師はヒューマリンR(開封済)1バイアル、50%ブドウ糖20mL 2アンプル、インスリン用注射器1本、50mL注射器1本をトレイに入れ準備した。研修医は自分で準備すると看護師に伝え、薬剤を調製した。薬液準備の際、50mlの注射器で50%ブドウ糖液を40ml吸い上げ、同じ注射器でヒューマリンRをバイアルから全量吸い上げ投与(約9mL(900単位))した。患者は鎮静下であったため、低血糖時の意識レベルの判定は困難であった。約4時間血糖値が20mg/dl台であったと推測され、脳障害を懸念し、CTを施行したが明らかな異常所見は認めなかった。重篤な呼吸不全のため、長期の人工呼吸器管理をしており、今後鎮静を解除した時に、意識レベルに問題を生じたとしても、原因が低血糖か原疾患かの判定は困難であるということである。
薬液を準備し、投与したのは研修医であった。研修医はヒューマリンRを扱ったことはなく、バイアルに入っている量を全て投与すると4単位であると思っていた。研修医は、病棟内が忙しそうだったため、準備された薬剤と注射器を受け取り、自ら薬剤の調製を行うと看護師に言った。
準備した看護師は、研修医が自分で調製すると言ったため、薬剤や注射器の入ったトレイを渡した。その際、方法などは確認しなかった。看護師は、研修医から返却されたトレイを片付ける際にヒューマリンRのバイアルが空になっていたこと、インスリン用注射器が使用されていなかったことに気付いたが、確認することなく破棄した。
当該病棟では、看護師同士のダブルチェックは行っていたが、医師と看護師のダブルチェックは行っていなかった。今回のインスリン投与前のダブルチェックも施行されなかった。
研修医の指導は、それぞれのローテーション先の担当指導医に任されているのが現状で、研修医の知識技術面に関しての到達レベルを、診療科がしっかり把握できておらず、また把握する仕組みもなかった。
研修医は4月から本院で研修しており、内分泌・糖尿病内科の研修も1ヶ月間していたが、自己注射の指導が主でヒューマリンRに関しては指導や教育がなされていなかった。
研修医全員に対して、医療安全管理部レターを配布した。今回の内容は、インスリン編として、ヒューマリンRやロードーズシリンジの説明、薬剤のダブルチェックに関して記載した。
内分泌・糖尿病内科は研修医対象に基本的な講義を開催している。
研修システムの問題に関しては、研修医がローテートする時の各診療科間の申し送りや、研修内容の見直しなどを、卒後臨床研修センターに検討を依頼した。

以前は、自己注射としてヒューマリンRのバイアルが使用されていたが、現在は医療者が使用することがほとんどである。10ml(1000単位)ではなく、2ml程度の量の製品が製造される事で、超多量のインスリンの投与防止や、バイアルへの針の刺入回数を減少させることができるのではないか。
確認が不十分であった

判断に誤りがあった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
41 障害なし プレドニン錠5mg 塩野義 微熱と全身痛ありADLが低下したために救急搬送され精査加療目的でA病棟入院。W8500 CRP12.22 D-D5.6 プレドニン5mg プレドニゾロン2mg 内服中。A病棟でプレドニン7mg 1T/1と救急部医師が持参薬伝票に記載。
入院翌日より5日間プレドニゾロン1mg/日投与
プレドニゾロン1mg/日投与4日目に夕方B病棟転床。
転床翌日に薬剤師の薬剤監査を依頼したが患者の倦怠感が強くN95マスクを使用したため面談せず。カルテの確認行わず。
5日間のプレドニゾロン1mg/日終了翌日、プレドニゾロン1mg/日処方(A病棟で起票された持参薬表をもとにオーダ)※このオーダは間違った内容であったため薬剤部へ返却されるはずであったが返却されず、翌月5日分として服用されてしまった。
感染制御部の医師が往診した際に自宅で7mg内服していたことが発覚。プレドニン5mg プレドニゾロン2mgの内服に処方変更。
プレドニゾロン1mg/日(5日間)投与終了の3日後より、プレドニン5mg・プレドニゾロン2mg5日間で投与。
翌月プレドニゾロン1mg/日(前月、プレドニゾロン1mg/日投与終了の翌日に既に処方されていたもので、本来薬剤部へ返却されるべきであったもの)を5日間投与後、全身状態悪化。意識レベル低下。食事・水分摂取できず。胸水の貯留認め胸水穿刺施行。感染が原因と考えるためバンコマイシン投与。主治医がプレドニンの量を確認したところプレドニンが1mgしか投与されていない事が発覚。主治医と師長が家族に状況を説明し謝罪。
処方内容訂正し、プレドニン5mg・プレドニゾロン2mg内服。意識レベル清明。関節痛軽減。車椅子移乗可能までに軽快。
  • 持参薬一覧表の起票、処方内容の確認、与薬時の各工程で思い込みで業務が進んでおり、情報源を正しく整理し投薬内容へ反映できていなかった。
  • 複数の職種で確認しているがチェック機構が働いていなかった。
  • スタッフ間で、当該患者の治療背景、処方内容、事例発生後の処方内容変更に関する情報共有ができていなかった。
  • 思い込みで業務が進んでいた。
  • 指摘、伝達事項に対しての、申し送りが不十分であった。
  • 持参薬確認の際には、情報源の整理、患者への確認を確実に行う。
  • 当該患者の治療背景、処方内容に関する情報をスタッフ間で共有する。
  • 発生事例の情報を共有し、次回オーダ時に内容が適正に反映されているかを責任を持って確認する。
  • 申し送りは、患者状態のみではなく他職種から提供された情報も含めて行う。
  • 不要薬は速やかに薬剤部へ返却するシステムを構築する。
    →病棟に返却薬BOXを設け、病棟薬剤師が返却内容について把握する
  • 薬剤部から上がってきた薬は、速やかに処理する。
  • 持参薬表の記載見本を作成し、病棟/救急スタッフに対して、担当薬剤師より持参薬表 の起票方法について指導を行なう。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)

記録等の記載
42 障害残存の可能性がある(低い) ベネトリン吸入液0.5% GSK 調剤者(薬剤師)はビソルボン吸入液を調剤するところ、誤ってベネトリン吸入液を調剤し、ビソルボン吸入液のラベルを貼った。鑑査者(薬剤師)は間違いに気が付かず払い出した。病棟看護師は間違いに気が付かず、1回分ビソルボン2ミリリットルの指示どおりにベネトリンを2ミリリットル使用した。その後別の看護師が瓶のラベルの下にベネトリンと書いてあることにきずき事故が発覚した。すぐに医師に報告し、副作用としての頻脈や血圧低下、電解質異常の出現がないか注意深く観察したが、幸い異状は認められなかった。すぐに両親に医師・看護師・薬剤師から状況を説明し謝罪、再発防止に努めることを伝えた。 ビソルボン吸入液とベネトリン吸入液は形状が似ている。
一緒の棚に置かれている。
調剤者と鑑査者の確認不足
看護師は、処方箋とラベルの薬品名は確認するが、薬剤本体とラベルがあっているかを確認することは困難。
ベネトリンは使用量が微量であるにもかかわらず、ビソルボンと同じような量の瓶に入って、通常は分割して調剤することが多い。その場合、間違いに気付けなかった可能性がある。
薬剤の保管場所を別々にし徹底する。
調剤時に機械による水剤監査システムを用いて、薬品のバーコードの照合を行い、調剤者が正しい薬品であるか確認できるようにする。
患者氏名、服薬方法が書かれた薬品ラベルは貼付時に確実に薬品名が確認できるようにサイズを工夫する。
製薬会社に薬品瓶の形状を検討してもらったり、必要量が適切に払い出される量の薬剤になるよう協力を依頼する。
確認が不十分であった
43 障害なし ノボリン50R注フレックスペン
アピドラ注ソロスター
ノボ
サノフィ・アベンティス
夜勤帯で糖尿病の患者を受け持った。A患者は17時30分にノボリンR50注フレックスペン6単位、B患者は食直前にアピドラ注ソロスター5単位実施予定であった。看護師は他の患者の排泄介助を行っていたため、A患者の注射が遅くなった。食事が配膳されたので急いで、患者確認を行わずA患者にB患者のインシュリンが入っていたバットを持参した。バットには注射箋とインシュリンが入っていたが、A患者のインシュリンだと思い、確認しないまま実施した。実施終了後にB患者のインシュリンを実施したことに気が付いた。主治医報告、低血糖症状の観察、眠前血糖測定を実施した。 注射実施時の患者確認のマニュアル違反
決められた時間に実施出来ない場合の対策について連携が不十分であった
注射実施マニュアルの患者確認厳守 確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
44 障害残存の可能性なし セファゾリンNa 大塚 午前9時に看護師Aは、担当患者C(バスキャスフラッシュ)、担当患者D(バスキャスフラッシュ、セファゾリンNa1gキットの準備をしていた。看護師AはセファゾリンNa 1gキットを準備し手に持ち、準備室を出て、カンファレンスルームにいる研修医Bに「患者Cさんのバスキュラーアクセスに抗生剤の点滴をお願いします」と依頼した。看護師Aと研修医Bは二人で患者Cの部屋に行き、研修医は渡された点滴を接続した。5分後他の看護師から患者Dの点滴で間違いであることを指摘された(約10ml位)。直後より気分不快吐気などを認めた。すぐに抗生剤を取り外し研修医はそれをヘパフラッシュした。他の医師も駆けつけてサクシゾン200mg+50mlを点滴を開始。頚部、前胸部に発疹、かゆみあり。バイタルサインは特に異常は認めなかった。1時間後、アナフィラキシー症状は改善した。
  1. 研修医は、看護師から渡された薬剤を患者のものと過信し、最終確認をしないまま点滴(最終行為)を実施した。
  2. 看護師は、注射投与時間が気になり、早くしなければと焦りなどから、注射準備、医師への依頼時の確認行為を省略するなどの不安全行動をとった。
  3. 研修医は、禁忌薬剤を中止した同一ルートでヘパフラッシュを実施し、ルート内に残っていた薬剤を押し込んでしまった。
  4. 看護師は、残った禁忌薬剤を破棄してしまい使用量の確認ができなかった。
  1. 注射や点滴実施時は、最終確認として、フルネームでの呼称確認とバーコード照合を遵守する。
    (当該科では、最終実施時は、医師、看護師間でダブルチェックする)
  2. 全ての与薬のプロセスで、6R(正しい患者・薬剤・投与量・方法・時間・速度)、アレルギー確認を実施する。
    • 教育の徹底を図る。
    • 注射や点滴の照合歴を定期的に確認する。
  3. 誤薬に気づいた際に実施する行為等、誤薬事故発生時に関するマニュアルの改正を行う。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
45 障害残存の可能性なし 不明 不明 患者と看護師が付き添いで入室してきた後、看護師が持参したイソゾールを注射した。後から他の患者の同一処方を投与したことがわかった。 同じ処方を行っていた。開始時間に患児が到着せず慌てていた。 投与前の薬剤のみならず名前の確認を自分で行う。できれば同時にダブルチェックも行う。バーコードを読み取る。 確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
46 不明:事故発生後一次状態安定したが、8時間30分後急変しその後死亡 イノバン注100mg 協和発酵キリン株式会社 ICU担当看護師が休憩に入り、交替に入った看護師が、13時右脇下に留置中のPIカテーテル紫ラインより注入中のシリンジポンプのアラームが鳴りシリンジの更新となった。更新すべきメインの薬剤(ソルデム3A50ml+ヘパリン0.05ml)20ml/hシリンジを取り出さず、別の薬剤シリンジ(イノバン4ml+生食36ml)を接続した。13時30分、40度の発熱、心拍230台に上昇し、モニター上VT様の波形変化が見られたため主治医へ報告。13時55分別のシリンジポンプより注入中の(イノバン4ml+生食36m)1.5ml/hの中止の指示あり。14時15分主治医が気管内挿管の為、点滴スタンドを動かそうとした時に、メインのシリンジポンプにイノバンのシリンジがセットされ、20ml/時間で施行されているのを発見。ICU担当看護師に確認があり、アクシデントが発覚する。 5Rの確認ができておらず、薬品名・薬液量・指示経路の確認をしていない。医師の指示簿の確認ができていない。薬剤更新5分後の確認、観察ができていない。院内規定のシリンジポンプチェックリストの使用、記録の記載ができていない。患者の情報収集が十分できていない。申し送りを受けた後、交替時の引継ぎができていない。
  • 医師による指示の確認のもと実施する。
  • 5Rの徹底、声だし、指出し、確認を必ず行う。(正しい患者・薬剤・時間・量・経路)
  • 準備をする時、薬剤を手に取った時、患者へ与薬する時、与薬した後、薬剤を元の場所に戻す時に確認する。
  • 院内規定のチェックリストは必ず使用。
  • 申し送り前後のダブルチェック。
  • 更新しないといけない薬剤がある場合は、作りおきしない。実施者が準備を行う。
  • 5R確認、指差し・声だし確認をしていない時には、互いに注意しあえる環境をつくる。
  • ラインの表示の工夫
確認が不十分であった

連携
47 障害残存の可能性がある(低い) 5-FU 協和醗酵工業株式会社 FOLFOX6+アバスチン14クール目目的にて入院。エルプラット・レボホリナートを2剤同時に2時間で投与の指示をレボホリナートと当日最後に46時間かけて投与予定だった5-FUを取り違えて投与。残50mlで間違えに気付き医師に報告。以後の抗癌剤は全て中止となった。 当日は入院患者1名、他4名の患者を受け持っていた。院内化学療法認定看護師である事を確認し当日化学療法の本患者の受け持ちをリーダーが依頼。当事者は他の化学療法は経験があり、本治療は初めてではあったが確認しながら実施してしくこととした。当日他病棟でも化学療法予定者が多数おり予定通りに製剤後の治療薬が病棟に届かず、お昼休憩中に1剤目の治療が開始された。休憩後当事者は1剤目が開始されていたのでダブルチェックが全てすんでいるものと思い込みその後の治療を続けた。エルプラット交換時製剤室から運ばれてきた箱ごとベッドサイドに持ち込んだ。箱の中にエルプラットとiv用の5-FU 500mlの生食でミキシングされた5-FUがありその中からエルプラットと5-FUを取り出して投与した。箱に2剤あったものをエルプラットとレボホリナートと思い込んで投与してしまった。
  • ミキシングが出来上がってきたら受け持ちが(患者名・薬剤名・薬剤量・投与順番・投与速度)をダブルチェックしラベルに順番を記載する。
  • 実施する時は指示簿と患者と再確認後に投与する。
  • 輸液ポンプの速度はダブルチェック後に開始する。(院内ルールの徹底)
  • ベッドサイドには次につなげる物だけ持参する。
  • 抗癌剤フローシートを取り出す時、抗癌剤種類別シールも出し、ダブルチェックした際ラベルにシールを貼り付ける。(院内ルールの徹底)
  • 化学療法に関する知識の習得
  • 見やすい指示簿の検討
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
48 不明:感染症の有無を6ヵ月後に再確認する ノボラピッド
ノボラピッド30Mix
ノボノルディスクファーマ
ノボノルディスクファーマ
同姓の患者Aに対し患者Bに指示されていたノボラピッド30Mix22単位を皮下注。その後患者Bにインスリンを皮下注しようとして間違いに気がつく。看護師は、感染の可能性について失念しマイクロファインプラスを新しいものにして患者Bにノボラピッド30Mixを皮下注した。患者A、患者Bは、インスリン自己注射を指導中の患者でありそれぞれ本人もちのインスリンが処方されていたが自己注射の指導中だったためインスリンは看護師が預かっていた。事例発覚後患者Aと患者Bに対し状況を説明し謝罪した。患者Aは本来ノボラピッド3単位皮下注の予定だったため朝までフィジオ35 500ml +10%グルコース1Aを朝まで持続投与し1時間おきの血糖測定を行った。血糖は90-100mg/dlで経過。翌日患者Aと家族、患者Bと家族に改めて説明し謝罪。感染症の有無を調べるための採血を行う。両患者とも感染症は陰性。ウィンドウピリオドを考え6ヵ月後に再度採血を行う予定。ノボノルディスクファーマに対してノボラピッド30Mixに血液の混入がなかったか調査を依頼中。",確認を怠った 判断を誤った" 既設の医療安全に関する委員会等で対応   確認が不十分であった

患者の外見(容貌・年齢)・姓名の類似
49 障害残存の可能性がある(低い) オキシコンチン錠 塩野義 石綿肺で本院呼吸器内科で治療中であったが、1年前に肺癌を指摘され、1年前に本院呼吸器外科で左上葉切除を行った患者。本年に大腿骨、胸壁への転移を認めたため、大腿骨への放射線治療と化学療法を開始し、その後入退院を繰り返しながら化学療法を行っていた。また、骨転移による癌性疼痛に対しオキシコンチンを使用しており、5mg9錠分3で内服していたが、化学療法のため入院していた期間(2日間)、疼痛コントロールが不良であったことから、5mg12錠分3に変更した。外来受診時にオキシコンチンの処方が切れるため、同量の60mgを20mg3錠分3で処方した。2日後、呼吸困難が増悪したため救急部を受診し、肺炎の診断で入院となったが、入院後の病棟看護師の聴取でオキシコンチン20mgを12錠分3で内服していたことが判明した。その後、肺炎の治療を行っていたが、間質性肺炎の増悪と呼吸不全のため、死亡した。 処方変更についての患者説明が不十分であったため、患者の服用についての理解ができていなかった。 処方変更時には医師及び薬剤師から患者への説明を十分行うこと。 患者・家族への説明
50 障害なし ノルアドレナリン注 第一三共 全身状態悪くVTから心停止に移行し心マッサージにて蘇生。抗不整脈剤(シンビット静注用50mg製造・販売ホスピーラ・ジャパン)とノルアド2A+生食48mlがシリンジポンプで投与開始された。その後血圧低下あり医師へ報告時に口頭で指示変更ありノルアド5A+生食45mlへ濃度が増量された。指示受け看護師はすでに払い出されていたノルアド2A分を薬剤科へ返納したが電カル上、古い指示が削除されていなかったため翌日に休日分のノルアド2A分が払い出されてきた。当日勤務の看護師は通常通り電カル画面で指示を確認し、削除し忘れのノルアド2Aの指示で準備した。(ノルアド5Aの指示は画面をスクロールしないと見られない)。更にWチェックではノルアド濃度については省略してしまい誤りを発見できず、認証画面でも○の表示がでたため正しいと判断し10時に開始した。交換前のシリンジにはノルアド5Aと記載されたシールが貼られていたが交換時にも気付けなかった。過小投与シリンジに交換し2時間後に血圧50台まで低下し医師の指示にてノルアド注3mlフラッシュしたが、同ラインから接続されていたシンビットも同時にフラッシュされた形となった(シンビット急速投与は心停止を招く危険性もあり接続ラインについては医師に確認しているが3ルーメンのどのラインもカテコラミン等で塞がっておりノルアド接続している同ラインで注入許可を得ていた)。フラッシュ後、心室頻拍となり心マッサージ開始、まもなく同調律となる。来棟した医師がノルアド2Aのシリンジに気付き、過小投与が発見された。3日後患者の容態は更に悪化し担当医にてノルアド量の調整を行うが家族と治療について相談、死亡した。
  1. 電子カルテの古い指示を削除するには画面をかなりスクロールしなければ確認できないため消し忘れが多い。
  2. 看護師も新しい指示を確認するには画面をかなりスクロールしないと見られない。
  3. 指示受け看護師は古い指示が削除されていないことは知っていたが(いつものことという思いもあった)すぐに削除操作をしてくれない医師が多いため積極的にはなれなかった。継続指示であったことに思い当たれず自分の返納処理で全て処理できたと思い込み当日分が払い出されるとは思わなかった。
  4. 重症患者ではカテコラミン配合禁忌薬などを使用することが多くCV3ルーメンでは不足することが度々ある。またルーメン毎に薬剤をソートする機能も電子カルテにはないためチェックがしにくい。
  5. 通常はノルアド2Aで使用するパターンのため添付シールの5Aに気付かず2Aと思い込んだままWチェックしたので濃度のチェックが漏れてしまった。
  6. マニュアル通りに口頭指示受け用紙を使用していなかった。
  1. 注射をシリンジにセットする際の確認(5R)の徹底
  2. 古い指示削除に関する医師へのアナウンス(医局会にて副院長より)及び管理診療会議での警鐘事例報告
  3. 循環器重症患者にはCV4ルーメンを用いる事とする
  4. 口頭指示受け用紙を使用し古い指示は確実に削除されるよう医師へ依頼する。また口頭指示受け用紙に古い指示の削除について注意事項を掲載する。
  5. 削除操作については退院時や転科時にも漏れが多いためシステム上で一括操作ができないかメーカーに問いあわせ確認する。
確認が不十分であった

システム

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
51 障害残存の可能性がある(低い) フエロン注射用300万 ロカイン注1% 東レ
第一三共 アルフレッサファーマ
扶桑薬品工業
本来は医師が腫瘍部位に直接局所注射するが、病棟の看護師が誤ってヒダリ上腕に皮下注射してしまった。
  • 注射の指示に「皮下注射」と印字されていたため看護師が行う皮下注射だと思い込んだ。
  • 悪性黒色腫の化学療法に関する知識不足
  • 指示を受けたリーダーは投与方法を誰が見ても理解できるような表記の依頼をしなかった。
  • 注射の指示上に皮下注射だけでなく誰が見ても理解できるような「患部に局注・医師が施行」のコメントを入力する
  • 悪性黒色腫に関する学習会を実施し、疾患及び薬剤についての知識を高める
  • 化学療法の初日や初めて実施される治療やケアに関してはウォーキングカンファレンスで情報共有と必要時注意喚起する
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
52 障害なし アルダクトンA錠25ミリグラム ファイザー(株) 肝細胞癌に対するカテーテル治療のため、入院。入院時に行われる薬剤師による持参薬管理票に記載する際、本来ならアルダクトンA細粒10%12.5mg分1と成分量を記載するところを、実際にはアルダクトンA細粒10%0.125g分1と製剤量を記載した。これがスピロノラクトンの処方量12.5mgを0.125と、本来処方されている量の10倍となっていた。持参薬は他院で12.5mgと処方されていた。主治医は持参薬管理票を確認時にお薬手帳との照らし合わせを行わなかった。もう一人の主治医が持参薬管理票を元に、入院中の内服をタから処方した(通常投与量 50 ~ 100 mg の薬剤) 。患者は12.5mgの処方に対して 125 mg処方したため、処方時に薬剤部から確認の電話があったが、持参薬管理票と一致していたため問題ないと判断し、そのまま処方した。翌日朝から10倍量の投薬がされていたが、気づかず、退院時にも同量の処方を持ち帰った。退院から数時間後に薬剤師からの指摘で判明した。
  • 医師が持参薬管理票に記載された製剤量(アルダクトンA細粒10%0.125g分1)を成分量と誤解して処方した。
  • 製剤量と成分量の記載について、特に取り決めはない。通常、処方オーダーが成分量表記となっているため、持参薬管理票に薬剤師は成分量で記載していた。(薬剤によっては製剤量表記となっているものもある)。
  • 持参薬管理票の確認を行う際に再度、お薬手帳との照らし合わせ(成分量と製剤量の取り違えであること)を行っていなかった。内服を処方時に投与量を薬剤部から確認された際、持参薬管理票でのみ確認を行った。
持参薬管理票を確認する医師は再度、お薬手帳や診療情報提供書との照らし合わせを行う。持参薬管理票の用量記載は、オーダーリングシステムと同じ単位に合わせる。処方鑑査者と病棟担当者の連携を強化する。
薬剤師は疑義照会時、疑問があれば病棟担当薬剤師と情報交換を行う。
確認が不十分であった
53 不明:院内調査委員会で患者の死亡は疾患の自然経過によるものと判断した。 ネオーラル内用液10% ノバルティス 6年前、C型肝硬変に対し生体肝移植を実施した患者。本年感染症を契機に高度の腎障害を併発し、腎不全・肝不全が進行していた。免疫抑制剤であるネオーラルカプセルの内服が困難になり、医師はネオーラルカプセルから内用液へ処方変更した。投与量減量(120mg/日から100mg/日)を意図し、その旨を口頭で看護師へ伝えた。その後、処方オーダーをしたが、オーダー内容は「ネオーラル内用液10%(100mg/ml) 10ml 2×朝夕食後 5日分」というものであった。薬剤部では処方通りに薬剤を払い出した。看護師は投与量に疑問を抱く者もいたが、結果的には処方箋の指示通りに薬剤を患者へ計4回投与した。
処方2日後のネオーラル血中濃度トラフ値が異常高値を示したことから、患者にネオーラルが過剰投与されたことが判明した。
その時点で、ネオーラル過剰投与に起因する症候は認めていなかったが、ご家族に状況をお話しし、同意の上腎不全の更なる増悪への対策及びネオーラルの血中濃度を低下させるために持続血液濾過透析を緊急で導入した。同日21時から集中治療室で持続血液濾過透析を開始、翌日の血液検査では腎機能及び代謝性アシドーシスは改善傾向を認めていた。また、ネオーラル血中濃度は依然高値であったが低下傾向を示していた。しかし、透析開始2日目朝よりは移植肝機能の急速な増悪を認め、10時頃からは循環および呼吸不全を併発し、血圧低下・呼吸状態の悪化及び意識レベルの更なる低下を認めた。呼吸不全に対する気管内挿管及び人工呼吸器の装着をご家族にお話しした所、かねてよりの申し合わせ通り鎮静による苦痛除去のみを希望されたため、鎮静剤の増量を行った。徐々に血圧・呼吸状態が低下し、永眠された。
要因1.
意図した指示量と処方箋情報との乖離
ネオーラルは血中濃度によって投与量を変更することが多いこと、50ml製剤単位での払い出しが慣行であったため処方オーダーの際は1回内服量を入力しない、あるいは処方オーダーした1回内服量と実際の投与指示量が異なっていることが多かった。このため、薬剤部での疑義照会対象にならなかった。
要因2. 薬品成分量への認識不足
剤形変更前の投与量は120mg/日であったが、変更後の投与量が処方箋上では1000mg/日になっていることに注意が払えていなかった。
本事例を深刻に受け止め、院内全体のシステムを見直した結果以下の再発防止策を講ずることとした。
  1. ネオーラル内用液処方時、医師は実際の投与量を処方箋へ入力する。
  2. 処方画面を ml単位からmg単位で入力するよう改善する。(患者の目に触れる薬袋へはmlが印字される。)
  3. 薬剤部は処方鑑査を行い、疑義照会を行う。
  4. 内服量に注意を向けることができるリーフレットを薬剤につけて払い出す。
  5. 薬品の成分量に対する認識を高める教育を行う。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
54 障害残存の可能性なし エルプラット注射用150mg 凍結乾燥材 ヤクルト本社 エルプラット150ml+5%G250mlを左前腕から開始。5分、10分、15分後と刺入部観察するが異常なかった。45分後にナースコールあり刺入部にピリピリした痛みありと訴える。逆血確認でき腫脹も無いが刺入部やや発赤あり。点滴中止し主治医に電話報告するが逆血あるなら続行してよいと指示あり。研修医に刺入部診てもらい問題ないと本人に説明され再開した。30分後観察に行くと相変わらずピリピリ痛むとのこと。刺入部腫脹しており腫脹・発赤もあるため点滴中止し主治医に報告。その後主治医にて吸引しながら抜針。デキサート患部に使用後、皮膚科にて診察してもらい軟膏塗布処置が行われた。
  1. 主治医の意見を過信した。
  2. 痛みに対する継続した観察が出来ていなかった
  1. 痛みを訴えた時点で漏れの確認が出来なくても患者の苦痛につながっているため差し替えを依頼をする。
  2. 異常の判断が困難な場合はしばらく患者の傍で経過をみる、または5分後に再確認等を行う。
判断に誤りがあった
55 障害残存の可能性なし メソトレキセート ファイザー・武田 子宮内容清掃術を施行後に妊娠反応が陰性化しないため、再度子宮内容清掃術を施行。その際の病理組織診断にて胞状奇胎が確認され、CTにて肺転移を認めた為、侵入胞状奇胎と診断した。その後メソトレキセート単剤を開始した。その際、事前に登録されていた「絨毛性疾患に対するMTX」のレジメンを使用したが、体表面積当たりで計算し、予定量の1.5倍の45mg/日で5日間投与した。レジメン登録時に誤って「/body」とするところ、「/平方メートル」入力していた。投与後、口内炎(grade3)、骨髄抑制(grade4)、発熱性好中球減少症、脱毛(grade2)など副作用が強く、原因等調べていたところ、登録されたレジメンに間違いがあったことが判明。患者、家族に過量投与の説明と謝罪を行った。副作用は順調に改善し退院となった。
要因1
「がん化学療法レジメン新規採用申請書」の基準値の欄が「薬剤量」「/body」に分かれておらず、その結果、MTX療法を申請した医師は「/body」を記入しなかった。
要因2
化学療法委員会で新規レジメンを検討する際に、薬剤量の検討が主になり、その結果「/body」の未記入を確認せず承認した。
要因3
薬剤師がホームページに新規レジメンを登録する手順が決まっておらず、その結果レジメンに「/body」の記載がなかったが添付文書の確認、申請した医師への問い合わせをせず、既登録レジメンを修正して「/平方メートル」と誤登録し、その後、他の薬剤師のWチェックでも誤りに気付かなかった。
 
  1. 「がん化学療法レジメン新規採用申請書」の基準値の欄に「/平方メートル」「/kg」「/body」を記入する枠を追加する。
  2. 薬剤師は、新規レジメンの申請書を受け取った後、添付されたエビデンスと比較する。
  3. 新規レジメンマスター登録後は、テスト患者に代挿して2名の薬剤師が内容の確認を行い、更に申請医師が内容を確認してから使用できるようにする。
  4. 化学療法委員会では、新規レジメン申請書に記載漏れがないか確認する。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
56 障害残存の可能性がある(高い) サイレース1A エーザイ株式会社 甲状腺癌頸部リンパ節廓清術後、22時指示に従いサイレース1A+生食水100ml(100ml/h)を点滴投与。30分後、喘鳴著明、呼吸状態も悪化したため、22時45分、当直医師が喉頭鏡・気管支鏡を使用して痰の吸引を繰り返した。Spo260~70%台で酸素を15リットルに増量。23時サイレースの点滴が終了したが、患者の意識レベル(JCS)100~200であり、鼻腔・口腔内から多量の痰が吸引される。23時08分、当直医師の指示でソルメドロール250mg+ネオフィリン250mg+生食水100mlを1時間かけて開始。23時31分、呼吸停止状態心電図モニター装着で(HR37回/分洞調律)Spo2 20~30%JCB300で当直医師は経口挿管計6回(経口5回+気管支鏡ガイド1回)を試みたが挿管できなかった。23時30分看護師判断で院内の「救急コール」を実施。23時38分、救命医師が経口挿管施行。胸骨圧迫開始し、アドレナリン1mg静脈注射後、HR12回/分、血圧91/61mmHg、Spo291%胸骨圧迫中止し人工呼吸器装着しICU に搬送し低体温療法と濃厚治療を行った。
  1. 術後管理体制について(不眠時指示とモニタリング)
     不眠時指示で,サイレース2mg+生食100ml(100ml/時)が点滴で投与されるクリニカルパスで決められており,急速に注入されないよう安全面からも配慮されていた.しかしオリジナルのパスでは,30分経過時に効果判定を行い,睡眠導入に成功していれば中止することになっていたが,今回の病棟においてはその指示が消えていた。睡眠導入剤の点滴後,30分過ぎて,喀痰排出困難が出現し,当直医Aが対応にあたったが,睡眠導入剤が点滴中である情報が当初伝わらず,本剤は中止されなかった。頸部手術術後において、ベッドサイドに喀痰を吸引する吸引器は常時用意されていなかった.
  2. 呼吸状態の急変に対する対応(当直医→救急コールへ)
     当直医Aは,来棟後気管支鏡での吸痰を繰り返し行っていたが,すべての痰を取り切ることが出来ず,その間に患者は呼吸停止を来たし,気管挿管(経口 5回+気管支鏡ガイド 1回)も不成功で,蘇生に時間がかかってしまった.白色痰が多量に口腔内にあるなかで,吸引を繰り返しながらの気管内挿管は必ずしも容易ではなく救急コールは,当直医が来棟してから約50分後であり、1名の医師で対応できる医療行為には限界がある。また、当直医は挿管手技にこだわりすぎたため,バッグマスク換気を全く行っていなかった。適時バックマスク等で十分な換気が行われていれば,蘇生後の低酸素脳症が軽減できた可能性がある。
  1. 危機への対応と院内教育
     危機管理の二大原則は,自分の身の安全確保と応援を呼ぶことにある.一人で対応できない事態は往々にして出現するものであり,周囲とのコミュニケ-ションにより,複数の医療者が対応することで患者の安全性は高まる.当初の状態では主治医グループへの指示を仰ぐことで対応が可能であったかもしれないが,危機発生時には,迷わず積極的に患者急変時の救急コールシステムを利用したい(効果的なRapid Response System).救援隊の到着後には診療科を超えた助力がタイムリーに得られた.「無理をせず助けを呼ぶ」ことが最重要である.  また当直業務に携わる医師においては,院内救命救急における心肺蘇生法である ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)コースの受講を必須としたい.AHA(アメリカ心臓協会)ガイドラインは頻繁に見直され,日々進歩している.一次救命処置(BLS: Basic Life Support)に習熟することのみならず,「状況と自分の技能に応じた気道管理法を選択し実施できる」「気道が確実に確保できているかどうかを判断できる」「治療可能な心停止の原因を知り原因検索を行動にできる」などは,重要な行動目標である.

    (以下次ページ)
  2. 睡眠導入剤投与後のモニタリング
     本事例では睡眠導入剤の点滴静注(サイレース2mg+生食100ml)後,約30分後から喀痰排出困難が始まり呼吸状態も悪化した.前述したように急速に注入されないよう安全面からの配慮がなされていたが,オリジナルのパスに存在していた「30分経過時の効果判定」が消えてしまっていた.30分経過時すなわち半量投与時の効果判定システムは非常に良いと思われるので,これは絶対の前提とすべきである.また呼吸数他の観察指示もなかったので,こうした睡眠導入剤の使用にあたっては,モニタリング方法など至急の見直しを望みたい.さらにベンゾジアゼピン系睡眠導入剤以外の他の睡眠導入剤の使用を検討することも含め,薬剤の使用に関して関係するスタッフ内での情報共有が必要である.危機への対応と院内教育
観察が不十分であった

判断に誤りがあった

環境
57 障害なし クロザリル錠剤(25) ノルバティスファーマ株式会社 「自己管理」夕薬与薬時、A氏から自己管理の袋を持って来て、「夕食後に飲むくすりがない」と訴える。薬を確認すると毎食後に服用する処方薬がVDSにセットされている。カルテの医師指示票を確認すると毎食後になっており、前回処方と変更はなかった。本人へ謝罪しセットし直す。 処方箋と薬の照合確認不足 薬と処方箋の内容を確実に照合する、ダブルチェックの徹底。 確認が不十分であった
58 障害なし リスペリドン 錠剤 (2)
ピレチア錠剤(25)
アロプリノール錠剤(100)
アンデプレ錠剤 (25)
マイラン
塩野義製薬
共和製薬
共和製薬
「自己管理」(1週間分)の患者。眠前薬の時間には熟睡しており、促しに覚醒せず、患者が服薬したか不明の患者から 朝の内服確認に来たNsに、昨夜の日付の就薬を見せ、「昨日早くから寝てしまってのんでない」と自ら伝えてきた 確認手順が曖昧であった。 確認サインの徹底
必ず声かけして与薬を確認する
確認が不十分であった
59 障害なし リスパダール 八王子製薬 4日分の内服自己管理している患者へ就薬の確認をしようと看護師が声かけすると、「薬がなくなっている」と訴える。本人の自己管理している袋を確認するが、本日の就薬は、入っておらず自室やゴミ箱・本人のポケットなど探すが、見つからず。服用したか尋ねると「飲んだはず」と曖昧な返答である。当直医より不眠時薬での対応との指示となった。 保管・管理が整理されていなかった 保管場所の再確認。鍵のかかる引き出しの利用。 患者・家族への説明
60 障害残存の可能性なし ビジクリア配合錠 ゼリア新薬工業株式会社 大腸ポリープ切除術目的にて入院。前処置としてニフレック、ラキソベロン液が処方されており、初回面談時に使用目的および注意事項について患者に説明を行った際に、患者から、以前に多量の液体の下剤を飲んで吐き気があったことおよび外来の先生から良い薬が出ているので大丈夫と言われたことについてお話があった。ビジクリア錠へ変更となったが、ビジクリア錠でも嘔吐があり、50錠中25錠のみ服用され検査は終了した。検査翌朝、急性高P血症が原因と見られるテタニー症状が出現した。 腎機能が低下していることは処方歴からも認識していたが、ビジクリア錠が重篤な腎機能障害のある患者に禁忌であることを認識していなかった。 警鐘事例として院内周知を行った。 知識が不足していた・知識に誤りがあった
61 障害なし アロチーム錠100mg 沢井製薬 ○日分まで残りがある持参薬のアロチーム100mg(ザイロリックのジェネリック)を配薬していた。
以降は院内処方のザイロリック100mgに変更予定であった。
院内処方のザイロリック100mgに変更予定の当日、2:30深夜勤の看護師Aが内薬ボックスに準備したが、アロチームとザイロリックを重複して準備してしまった。
8:30日勤の看護師Bは内薬ボックスから同上の2剤を与薬してしまった。
持参薬が主として泌尿器科で多く使用される薬剤で、院内には在庫がなかった。通常であればすぐに薬剤師が納品の手続きをとっているが、正確に伝達が行われていなかった。 基本的に持参薬は全て中止とし、院内処方による薬剤に変更する。 確認が不十分であった
62 障害残存の可能性がある(低い) アピドラ注ソロスター ランタスソロスター サノフィ・アベンティス
サノフィ・アベンティス
患者は経管栄養投与中(7時、11時、16時投与)。1日4回の血糖測定を行っており、16時の経管栄養前の血糖値が68mg/dLであった。医師指示では血糖値51‐70mg/dLの場合、インスリンは食後投与との指示であった。日勤リーダーからは、低血糖(68mg/dL)であり「夕分のインスリンは食後打ちとなるためお願いします」との申し送りを受けた為、インスリンは夜勤者(Aチーム看護師、フリー看護師)で確認し投与するものと解釈した。経管栄養の投与が終了していたため、17時45分‐17時55分の間に血糖実施状況を開き、実施入力がされていないことを確認し、インスリンの準備(アピドラ:12単位、ランタス24単位)を行い、夜勤看護師2名(Aチーム看護師、フリー看護師)でダブルチェックを行った。確認後すぐにインスリンの投与を行った。
18時30分‐19時の間に日勤看護師より夕分のインスリンを日勤者で18時前に投与したとの報告を受け、重複投与が発覚する。
発覚後、糖尿病・代謝内科医師、主治医へ報告し、指示をうけた。
  • 日勤看護師と夜勤看護師の業務の引き継ぎが不十分であり、お互いに自分で投与しなければならないと思い込みがあった。
  • 日勤業務を夜勤看護師に引き継がなければならない場合のルールが確定していない。(日勤看護師が行うか夜勤看護師が行うか)
  • インスリンが投与済みであるか日勤看護師に確認できていなかった。
  • 血糖実施状況の実施入力が未実施のままであった。
  • どちらが実施するのか日勤担当看護師にも確認し明確にしておく。
  • 投与直前に再度日勤者に確認する。
  • 業務が延長する場合はどちらが責任をもつかを確定しておく。
  • インスリンを準備し、確認した時点で確実に実施入力を行う。

【検討】
ケア・処置の重複防止のため、17:00~8:59を夜勤業務、9:00~16:59を日勤業務として明確にした。
注射を実施した時点ですぐに、電子カルテ上、「実施確認」を行う。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)

連携

記録等の記載
63 障害なし テオドール 田辺三菱 休日に、風邪症状を訴えられた患者に、診察後処方が出された。看護師がカルテを見て薬を準備し、他の看護師に確認を依頼したが、結果的に誤った薬を渡してしまった。 看護師がカルテの読み間違いで誤った薬を準備したことは、仕事に対する注意力散漫であったと考えられる。また、2人目の看護師が確認を行ったが、何を確認するのかが曖昧であった。このことは毎日の業務に緊張感が無かったことと、薬を取り扱う時の基本的動作を忘れていたことが原因であった。 カンファレンスを開催し、以下の事項を統一認識とした。
  • カルテの記入された薬を、必ず声を出し準備する。
  • 必要な数の確認
  • 薬袋に必要事項を記入
*必ず2人以上の者が確認すること。
出された薬の知識を持ち、正しい薬が処方されているかカルテとチェックする。
確認が不十分であった
64 障害なし デュロテップMTパッチ ヤンセン 麻薬製剤は、病棟の金庫で管理するものであったため看護師はすぐに金庫へ入れようとしたが、ちょうどそのタイミングでナースコールが鳴ったため、その麻薬製剤(デュロテップMTパッチ)をフィルムケースに挟んだ状態でナースステーションの机の上に置いて患者対応のため席を離れた。その後、麻薬製剤(デュロテップMTパッチ)を金庫に保管することを失念してしまった。翌日、その患者が退院することになったため金庫保管の麻薬製剤(デュロテップMTパッチ)を患者に返却したが、その際に後日家人が持参してきた分の麻薬製剤(デュロテップMTパッチ)がないことが判明。その麻薬製剤(デュロテップMTパッチ)は机に置かれた状態で発見された。 作業中断により発生した事例。 作業中断することで本事例のようなエラーが生じる可能性が高くなることを再確認する。作業中に何らかの他の対応しなければならない状態になった場合、作業を中断して自分で対応するのではなく、他の人が対応できることであればその対応をお願いするようにする。人手が足りない・緊急時の対応などの場合を除き、極力作業は中断せずに一つ一つの業務を確実に実施する。 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
65 不明:今後の経過次第によるため ラボナール 液剤 500mg 田辺三菱 MRI検査を行う際に、安静を保つために準備した鎮静剤(チオペンタール)を、生理食塩水と間違えて過量に点滴投与してしまい、一時的に呼吸停止・昏睡状態になった。ただちに蘇生処置など必要な治療を行い、集中治療室に入室した。
調査の結果、看護師が、点滴を行うために用意した生理食塩水のボトルと、鎮静剤を入れる予定の生理食塩水のボトルを取り違え、点滴を行うために用意した生理食塩水のボトルに鎮静剤を入れたことがわかった。鎮静剤が入ったボトルを接続した結果、鎮静剤が過量(約10倍量)に患者の体内に入ってしまったものである。患者の意識状態は改善し、2 日後に一般病棟に移った。その後も良好に回復されつつあり、退院された。
薬剤を準備する際に看護師の業務が非常に集中した状況下にあり、薬剤の確認が十分にできなかったこと、また、二つのボトルが外見上は同じ生理食塩水のボトルであったことが、薬剤の準備を誤った要因であると考えられた。今回の事例における鎮静剤の使い方(必要量以上をオーダして、投与時に量を調節する)は当該診療科における特殊な使用法であった。 再発防止策として、従来の鎮静剤の投与方法を改め、鎮静薬はシリンジに必要量のみを用意し、鎮静が必要になった時点で注入することとした。また、看護師が注射薬を準備する際の確認を再徹底することにした。事例発生時、看護師が多忙を極めていたことも原因と考えられることから、当該部署に医療クラーク(事務作業補助員)を配備することとした。 確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
66 不明 プロゲステロン坐剤100mg シグマアルドリッチ 院内製剤として投与していたプロゲステロン膣坐薬が過少作成、投与されていたことが判明した。 院内製剤として承認を受けた量よりも少ない量で作成されていた背景要因として、それまで使用していた坐薬コンテナが変更となり、規格どおりに調整されなかったことが考えられる。 医療事故調査委員会における検証結果及び提言を受けて、再発防止に取り組む予定である。 確認が不十分であった
67 死亡 ワーファリン錠1mg エーザイ 抗凝結剤の誤処方による過量投与 胸部大動脈瘤・心房細動・狭心症のため、冠動脈造影検査目的のため入院したが、検査に難色を示したため未検査のまま、引き続き外来で内服加療することとし、翌日に退院となった。(入院中のワーファリン内服はしていない)退院後は、CHADS2スコア3点のためワーファリン2mg投与継続とした。定期外来受診時、PTINR2.9のためワーファリンの減量を検討した。
現在、患者が内服しているワーファリン量を確認するため電子カルテで退院時処方を開いたつもりが、退院翌日の日付のワーファリン5mg(ローディング量)を見て退院時処方が5mgであるので、現在5mg内服していると誤認した。故に、ワーファリン量を4mgに減量すればコントロール良好になると考え、ワーファリン4mg/日(実際は倍量投与) 56日分を他の薬剤と共に処方した。元々の投与量で安定していると判断したことと、消化器内科と併診するため56日後の予約となった。
ワーファリンの血液検査は2ヶ月に1回の予定だった。 約3週間以上経過し、患者が皮下出血を認めて来院したが、ワーファリン内服者によくある症状と考え、また、前回減量しコントロールしていると思い込んでいたため経過観察とした。その3日後、小脳出血のため当院救命救急センターに搬送されたが、(PTINR4.41)家族は侵襲的治療を希望されず同日死亡した。その後、誤処方によるワーファリンの過量投与があったことに気付いた。
  • 外来におけるワーファリン処方の確認は確実に行う。(過去の処方の確認の際も複数回行う)
  • 特に緊急を要する病態でない限り、早期効果発現を狙ったワーファリンのローディング(負荷投与)は行わない。
  • ワーファリンは他の処方と別処方で出す。(検討中)
  • 電子カルテの薬歴管理の強化を行い、ハイリスク薬等の薬歴は、処方箋の中からピックアップし時系列で確認できるようにする。(検討中)
  • 各部署におけるワーファリンの使用方法の情報収集を行い、適正使用と処方についてのWGを立ち上げ、ルール化していく(情報収集中)
確認が不十分であった
68 障害残存の可能性なし ノボラピッド注フレックスペン ノボノルディスクファーマ株式会社 フリーの看護師の監視下によりベッドサイドで患者がインスリンの自己注射を行った。使用した注射針とアルコール綿は廃棄したが、予備で準備していた注射針とアルコール綿がトレイ内に入ったままであった。ナースコールが鳴ったため、フリーの看護師はインスリンの入ったトレイをベットサイドに置いたままその場を離れた。
数分後、看護師Bが配膳をする際ベットサイドに患者用のインスリンが置かれていたため自己注射の施行有無を患者に確認したところ「まだ。」と言われたため、看護師監視下にて自己注射が行われた。
注射施行後、ナースステーション内で看護師Aから看護師Bにインスリン投与の話をしたところ重複投与が判明した。

 時間患者の状態処置内容
7:00  BS115mg/dl ノボラピットフレックスペン(超速効型)朝12単位  ノボラピットフレックスペン(超速効型)朝12単位
8:00  BS132mg/dl
9:00  BS132mg/dl   ポタコールR250ml開始
10:00  BS87mg/dl    
11:00   BS52mg/dl   無症状 50%ブドウ糖20m/ivl施行
12:00 BS117mg/dl 
13:00 BS218mg/dl   5%ブドウ糖40ml/h開始
14:00  BS333mg/dl 
15:00 BS359mg/dl
16:00 BS233mg/dl
17:00 BS238mg/dl5%ブドウ糖40ml/h終了
11時に血糖測定値が52mg/dlとなったがそれ以降は100 mg/dl以下になることはなかった。
経過中低血糖症状はみられなかった。
  • 当該病棟では食前の血糖測定はフリー業務が行っていたが、インスリンの注射の実施者は明確になっていなかった。
  • 最初にインスリンを確認した看護師はトレイをベットサイドに置いたまま部屋を離れていた。次に注射を確認した看護師は、自分で用意した注射薬ではないが他の看護師に確認することなく患者に注射施行の有無を確認した。
  • 今回事前に看護師Aが看護師Bに患者のインスリン注射を行うと話していた。看護師Bはインスリン注射は終わっていると思い患者にインスリン注射施行の確認をしたところ「まだ。」と言われたため看護師Aに確認することなく自己注射を行ってしまった。
  • 注射箋の施行済チェックボックスには施行済の印(訂正印サイズの大きさ)が捺印されていた。看護師Bの施行時は、他の看護師とダブルチェックを行ったが施行済印は2人とも気が付かなかった。
インスリン注射をフリーの看護師が行っており責任の所在が明らかでなくシステム上の問題もあった。
今後、インスリン注射に関しては一連の行為を同一の看護師が責任をもって行うことを標準手順とする。
確認が不十分であった

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(NICUにおける薬剤の希釈に関連した事例)

No 事故の程度 情報の流れ 事例の内容 背景・要因 改善策 評価案
1 障害残存
の可能性
なし
外来→
手術室・
病棟
若年性パーキンソニズムにて外来通院中の患者。外来診療時にパーキンソン病治療薬(ネオドパストン100mg 錠)の処方を粉砕150mg 分6から粉砕300mg 分6に増量した(院外処方)。薬剤の影響を観察するため入院となる。当日、薬剤師が持参薬を確認する際に患者家族から「以前より倍になって、6錠分なった」と聞き(実際には1.5錠が3錠になっていた)、前回の外来受診時の処方内容を確認することなく、ネオドパストン600mg 分6と持参薬確認表に記載した。患者が持参薬を飲みきったため、研修医Aが持参薬確認表を基にネオドパストン600mg 分6(7日分)を臨時処方、その後、研修医Bが1週間ごとに同様の処方を1ヶ月間行った。患者は発熱、歩行困難等、症状が悪化したため、主治医が処方をネオドパストン400mg 分4に減量し、研修医Bがネオドパストン400mg 分4(7日分)処方した。その後不随意運動の増加が目立ったため、主治医が入院以前の量を確認したところ、処方量の間違いが判明し、上級医へ報告した。同日、研修医Bがネオドパストン300mg 分4に減量、その後ネオドパストン200mg 分4(2日分)に減量。不随意運動の増加と薬剤増量の因果関係について、投薬時間と不随意運動の発現、軽快時間が必ずしも一致しなかったことから不明な点も多いが、薬剤を減量したところ不随意運動が減少した事から、薬剤の過量投与が影響していることが十分に考えられる。 (薬剤部)
事故当日は、入院時の持参薬を確認しなければならない患者が多数であった。
薬剤管理業務の必要な患者の対応をしていたこと、薬剤に関して疑義照会が多数あったことなど業務が集中していたために、患者の申告する持参薬の情報を医療情報システム等の他の手段で確認しなかった。
また、患者が持参していた院外調剤薬局から提供された「お薬情報提供用紙」に散薬の用法用量の記載がなかったために確認ができなかった。
外来での薬剤の変更についての情報が正確に入院担当医に伝達できていなかった。
外来での薬剤変更時のカルテ記録が脱落していた。
入院時の持参薬剤が散剤であり、薬袋や薬自体に用量の記載がされていなかった。
(薬剤部)
  • 持参薬を確認する場合は、原則として次の2点を薬剤部職員へ周知徹底を図る。
  1. 当院受診中の場合は、院内医療情報システムから確認する。
    他院受診中の場合は、患者が持参した「お薬手帳」、「お薬説明書」、「紹介状」及び「持参薬」などを確認し、散薬など薬品名、用法用量が不明な場合は、処方を発行した施設或いは調剤した薬局へ問い合わせる。
  2. 薬歴管理等の情報共有のため、「お薬手帳」を院内において無料配布し、処方記載を短時間に正確に行えるシステムを検討する。
(診療科)
  • 医局内で検討した結果、次の5点について改善策を講じることとした。
  • 診療科で作成している「入院申込書」には、入院目的を記載する欄はあるが、詳細な患者情報を記載する欄がないため、入院申込時(外来主治医が病棟医長へ入院の申込をする時)に次の点を外来主治医はカルテに記載する。『病名』、『簡単な経緯』、『特に最近変化のあった症状や処方内容』、『入院目的』、『特に試行すべき検査』及び『以上についての患者本人、家族に対しての説明内容など』。
  • 外来主治医は、外来時に「『病名』他の内容」をカルテに記述する時間がない場合は、『病名』他の内容を診療後にカルテに記載するかメールにて病棟医長、病棟医長不在時は病棟副医長又は病床管理責任事務へ連絡する。記載漏れや不明確な点については、病棟責任者(病棟医長、病棟副医長)から直接、外来主治医に連絡を取る。
  • 入院決定時に外来主治医と病棟担当医が必ず連絡を取り、『病名』他の内容について確認を行う。
  • 病棟薬剤師と入院担当主治医で入院時の薬剤確認を行う。
  • 薬剤の処方については、研修医が行わず指導医が行うか、研修医が行う場合は、指導医の確認のもとに処方を行う。
確認が不十分であった

連携
2 障害残存
の可能性
なし
外来→
病棟
外科化学療法目的で入院となった。
心房細動で循環器内科を受診し、同日の入院であったが、化学療法に伴い循環器治療薬の指示変更内容が外来カルテに記入されていた(メインテート5mg → 2.5mg、ワソラン80mgOFF、ワーファリン3mg○日までOFF、ラシックス40mg→ 20mg、セララ100mg → 50mg)。
入院後、看護師は、持参薬の内容を持参薬表に記入し、患者へ与薬した。○日、持参薬の一部がなくなるため外来カルテを見たところ、上記指示がなされていたことを発見し、誤薬に気付いた。
入院後の医師の指示不足。
入院時の持参薬の指示確認不足。
  • 持参薬取り扱いの周知徹底。
  1. 医師の指示を確認して与薬する
  2. 持参薬表(転記)は使用しない
  3. 薬剤不明時は検薬に出す
  4. 入院時指示表に持参薬の確認欄を作る
確認が不十分であった
3 障害なし 手術室
→病棟
手術室からの帰室時、病棟看護師Aは、手術部看護師Bからフェンタニルは6mL/h と手術記録にて申し送られたが、手術室では流量を確認しなかった。病棟看護師Aは点滴ラインを確認時、フェンタニルが申し送られた6mL/h ではなく1mL/h で流れていることに気付いた。他の患者の対応に追われ問合せがすぐにできなかった。また誰にも相談しなかった。シリンジにも組成が書いてあったが気付かなかった。看護記録には6mL/h 2日分と書かれていたがトータル50mLが現在の流量である「時間6mL/h」であれば2日持たないことに気付かなかった。14:40、手術部看護師から病棟へ「フェンタニルが時間1で行っているけど、6に変えてください」と電話があり、病棟看護師Aが対応した(しかし手術部看護師はフェンタニルを6から1へ減量と言ったとのこと)。病棟に送られた手術記録の訂正はなかった。
上記のように、看護師Aは増量に変更する指示に聞こえた。やはり記録の指示通りと思った。看護師からの電話であったので、指示ではなく、口頭指示票は不要だと思い使用しなかった。口頭で「6mL/h に増量ですね」と確認したが曖昧であった。看護師Aは1mL/h から6mL/h に増量した。16:30 看護師A は準夜勤看護師C に手術記録を使用し申し送った。準夜勤看護師C は流量が多いと思ったが手術記録と合っており組成が薄いのだろうと思い確認しなかった。手術部からのフェンタニルの流量指示がないことをA に伝えた。
看護師Aは主治医D に流量指示を依頼した。主治医D は麻酔票を確認せずに注射箋に6mL/h の指示を書いた。
17:30 準夜勤看護師C は注射箋にてフェンタニルの流量指示を確認した。
19:00 麻酔医が来棟しフェンタニルの流量間違いが分かった。
何か変だと思う知識がなかった。
電話連絡での受け取り方の違いがあった。
確認の方法が曖昧であった。
  • 点滴の組成や流量などは看護記録の記載だけでなく麻酔票も確認する。
  • ハッチウェイで手術部看護師と病棟看護師が輸液と指示票で指差し呼称確認する。
  • 「変だ」と思ったことはすぐに確認する。
  • 口頭指示はマニュアルに沿って行う(組成、流量、規格などは注意する)。
  • 看護記録は複写のため、変更が生じた場合は、病棟・手術部ともに赤字で変更し、変更点は直接手渡しで送る。
  • 主治医は、麻酔票で組成を確認して指示を出す。
確認が不十分であった

連携

記録等の記載
4 障害なし 救命救急
センター
→HCU
低体温症で高度救命救急センターに入院中の患者。カコージン2A/20mL 2mL/h で投与中の患者。CT撮影に出室することが急遽決まり、他のスタッフがCT室の準備をしていた。出室直前、そのままHCU病棟へ転棟することになり、カコージンの残量が3mLであることに気づくが、CT、転棟ともに急ぎであったため新しい薬剤を作成できないままCT室へ行った。
CTが終わりそのままHCU病棟へ患者を送り出し、HCUのスタッフと相談の結果、申し送りは準備が出来たら連絡を入れることになった。当事者が他患者の対応をしていたとき、HCUスタッフから電話があり、「カコージンをつくりたいがカコージンは原液でつくっていいですか?」と聞かれ「はい」と答えてしまった。また交換方法についても、2連同量で交換しているが変動があることを伝える。
その後医師からHCUでカコージン交換の際、血圧が上昇しスタッフが混乱しているとの情報があり、確認すると原液で作成したカコージンで2連同量交換を行い、収縮期血圧が150mmHg 近くまで上昇していたとのことであった。
カコージンが残りわずかであったにも関わらず、CT前に作成できず、またそのことを1人だけで認識していたこと(リーダーにフォローを依頼出来なかった)。
HCUへ転棟時、HCUスタッフにカコージンについて申し送りが出来ていなかった(医師はHCUの指示簿未作成)。
カコージンの薬剤についてICUとHCUの看護職間で電話で伝達した。
薬液の濃度について聞かれたとき、PIMSで確認したり、2A/20mL であることを伝えるべきであった。
追われ作業でHCUのスタッフに聞かれた時、よく考えずに「はい」と答えてしまった。
  • 自分の能力を超えた場合は、リーダーや他のスタッフへ依頼する。
  • 薬剤などは医師の指示で投与するものであるためHCUのスタッフから連絡があったときは、医師に確認してもらう。
確認が不十分であった
5 障害なし 精神科

皮膚科
複数回の入退院および合併症として慢性滑膜炎のある統合失調症の患者が、発熱のための全身管理および精神状態のフォローを兼ねて入院となった。 入院時より、バンコマイシン投与を開始して軽快していたが、静脈ルートの確保が困難なこともあり、バンコマイシンから他薬への変更を考え、ICTにコンサルトを行った。その結果「ペニシリン系抗生剤の投与を可とする」との判断がなされた。また、前回入院時のサマリーにはアレルギーの記載がなかったため、サワシリンの投与を開始した。
翌日より頸部を中心に発赤・発熱を認めたため、皮膚科にコンサルトを行ったが、薬疹には否定的な印象であったため継続したが、状況は改善しなかった。
その後、過去のサマリーの患者情報欄にペニシリンアレルギーが確認され、ニューキノロン系への変更を行った。
ペニシリンアレルギーについては患者情報欄に記載があったが、特定薬剤名でなく一般名のフリー入力であり、今回使用したサワシリンはオーダー時にチェックされなった。
そのため、発生後よりペニシリン系の薬剤名を追加入力したがそれでも当院採用のペニシリンの全てはカバーできていない状態である。
  • フリー入力されているアレルギー情報を薬剤オーダー時にチェックがかかるように、各診療科へ再登録を依頼した。
確認が不十分であった
6 障害なし 放射線科

血液内科
6年前にセフェム系抗生剤で薬疹と考えられる既往があることを確認し放射線科カルテ及び新患紹介用紙のアレルギー欄に記載していた。
オーダリング画面のアレルギー薬剤の入力は方法を知らず、また今まで記載したことがなく行っていなかった。
第3世代セフェム系抗生剤投与の指示を受け、セフタジジム2g2 ×をオーダーした。血液内科での主治医に電話で報告。体幹部皮疹と軽度の膨疹をセフタジジムによるものかと考えている旨相談したところ、第4世代への変更を指示されファーストシン2g2 ×をオーダーした。
2日後皮膚科紹介し、体幹部融合傾向のある紅班を認め中毒疹を疑う原因として、複数の薬剤が開始されているため、特定は困難との返事があった。さらに2日後皮膚科再来、顔面から体幹・四肢に紅班を認め増悪傾向にあり、他系統の抗生剤への変更と強ミノCをIVの返事を受け、ミノサイクリン100mg1 ×に変更。喉の腫れた感じなどの所見がありオキシコンチンの薬剤は変更、中止できる内服薬及びミノサイクリンは中止した。
その後皮疹は改善し皮膚科再来時は鱗屑を残すのみとなった。
抗癌剤誤投与後の骨髄抑制に伴う感染症に対する抗生剤投与に関して、入院時、6年前にセフェム系抗生剤で薬疹と考えられる既往があることを確認し、放射線科カルテ及び新患紹介用紙のアレルギー欄に記載していた。
しかし、血液内科に薬剤アレルギーを伝えることなく、また、オーダリングシステムの薬剤アレルギーの記載方法も知らず記載していなかった。
指導医もこれに気付かず、看護師・病棟担当薬剤師もそれぞれ入院時にアレルギー歴を確認し、看護日誌や薬剤師の患者情報用紙に記入していたが、セフェム系抗生剤が指示されたと気付かなかった。
  • 医師は、薬剤投与指示の際はアレルギー歴をダブルチェックする。
  • 確認したアレルギー歴は必ずオーダリングシステムに記載する。
  • 看護師・担当薬剤師はオーダリング画面アレルギー入力を確認する。
  • 診療録・看護記録の決められた場所の記載を確認する。
  • 担当薬剤師はアレルギー薬剤の指示を確認する。
  • 研修医の指導医は指示・記録をチェックする。また、確認時はサインする。
確認が不十分であった
7 障害残存
の可能性
(低い)
内科

皮膚科
仙骨褥瘡壊死部の切除。ワーファリン内服中であり、PT(INR)がコントロール不良になっている患者に、そのことの把握不足のまま褥瘡デブリードマン処置を実施し、出血によるプレショックに至った。 主治医と皮膚科医師の間で、患者の状態や治療内容が共有できていない。
一処置に複数の看護師が、分担して関わり、患者の全身状態の把握とアセスメントができていない。
看護師間の連携、情報伝達が不十分である。薬剤についての知識不足である。
  • 皮膚科受診依頼時、主治医は使用薬剤を皮膚科医師に申し送る。
  • 皮膚科医師は、診察前にカルテで患者の状況や検査データを確認する。
  • 皮膚科処置に付いた看護師は、受け持ち看護師に申し送るまで、対応に責任を持つ。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

連携
8 障害残存
の可能性
(低い)
循環器
内科

血液内科
患者は全身性エリテマトーデスのため血液内科に入院しており、病勢増悪し妊娠の継続が困難と判断、人工妊娠中絶施行していた。
術後一時DICを生じ、レミナロン投与にて対応していた。
診察時,胸痛,呼吸困難を認めたため,造影CT施行で肺血栓塞栓症と診断し、循環器科へコンサルト、ヘパリンによる抗凝固療法開始となった。
レミナロン投与中止し、ヘパリン2千単位のところ誤って2万単位オーダーし口頭指示でIV を指示、患者へ過剰投与した。
持続静注を25000 単位/ 5A/ 日でオーダーし、そのまま始めの静注を2千単位で指示するところを間違えて2万単位で指示した。
患者の呼吸困難が強く、原因が肺血栓塞栓症と判明したため、治療を急ぐばかりに投与量ミスに気付かなかった。
外来業務と入院患者の重症化、他科からの転科と非常に多忙であった。
午後の外来中に造影CT結果を確認、循環器科にコンサルトし、外来終了後に病棟に戻りヘパリンを投与しようとした。
  • 多忙である時は入院担当の診療医に応援を頼み、複数のスタッフで患者の診療に対処する。
  • 診療科内の医師の連携を強め、外来担当医は外来診療に専念し、病棟患者の対処は病棟担当医に任せるようにする。
  • ヘパリン投与に関してはワンショット静注オーダーと持続点滴オーダーを分けて行う。
  • 今回のように通常の用量を超えた指示があり、薬剤部からの疑義照会がある場合は、一人の医師で判断するのではなく複数の医師により検討するよう心掛ける。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
9 障害なし 内科

整形外科
変形性膝関節症のため手術目的で入院した患者に、術前にヘパリンを用いた抗凝固療法を開始するために、内科の医師の指示通りに整形主治医がヘパリン15000単位 1日2回、処方した。
2日後に内科の医師がカルテを確認して、本来はトータル15000単位の指示が、30000単位として処方され、実施されていることが判明した。
医師間の連絡不足。
ヘパリン15000単位 1日2回投与が1日何単位の投与だったのか曖昧であった。
  • ヘパリンの使用方法について知識を深める。
  • 処方の記載方法について統一した。(1回量、投与回数の表示)
確認が不十分であった

連携

記録等の記載
10 障害残存
の可能性
(低い)
循環器
外科

麻酔科
患者は、僧帽弁狭窄症、三尖弁閉鎖不全症の手術ため、手術予定日の1週間前に入院した。しかし、入院日に患者の手術は、他患者の手術状況から、当初の予定日より3日後に行われることが決まった。
患者は、朝食後にワーファリン4mg を服用していた。当該部署では、通常ワーファリンを服用している心臓手術患者は、手術予定の1週間程前に入院し、入院日に薬の停止が指示され、ヘパリンが投与されていた。
患者の担当医は、入院時に手術が延期になったため、ワーファリン内服は指示があるまで継続すると指示した。
そのため看護師は、中止の際は指示が出ると思い、与薬時に指示を確認し、他の薬と一緒に一包化されたワーファリンを与薬していた。
麻酔科医師は、変更された患者の手術は月曜日だったため、手術3日前の金曜日に患者を訪問した。
麻酔科医師は、患者のカルテをチェックした際、カルテ上でワーファリンが中止されていないことを認識した。
しかし、麻酔科医師は、心臓手術の際は抗凝固剤を停止するのは常識であり、カルテ未記載だけの問題で、中止されているだろうと思い、担当医に薬の停止を確認しなかった。
手術当日の朝、カルテを再確認した麻酔科医師は、薬が中止された様子がなかったため、手術室看護師に病棟への確認を依頼した。
手術室看護師は、8時30分ごろ、患者を手術室へ案内した病棟看護師と担当医に、ワーファリン停止を確認した。
担当医が病棟リーダー看護師に確認したところ、入院3日目に指示すべき薬剤停止指示が出ておらず、ワーファリンは手術前日の朝まで服用されていた事が判明した。
手術延期により、通常入院日に停止する薬剤を継続使用したため、停止指示のきっかけがなくなり、担当医はうっかり停止指示を出し忘れた。
看護師は、通常、術前中止薬は担当医から指示があり、看護師から薬剤中止について確認することが少なかったため、担当医から薬の停止の指示が出ると思いこんだ。
看護師の与薬行為が機械的になっていたため、ワーファリン停止の必要性が認識されず、担当医師に確認が行われなかった。
麻酔科医師は、通常ワーファリンは中止されて手術室に搬入されるため、中止されているであろうと思いこみ、担当医に確認しなかった。
部署でワーファリンは、単剤のヒートで薬袋に入っていることが多く、患者の場合は、他の朝食後薬と一緒に一包化されていたため、看護師のワーファリンに対する認識が低くなった。
  • 担当医は患者の手術日が再決定した日に、中止薬剤を確認する。
  • 担当医は、患者にも術前中止薬があることを説明し、患者からの注意喚起も利用する。
  • 麻酔科医師は、術前訪問時に術前中止薬の停止を確認する。
  • 看護師は、患者の処方薬の薬理作用を理解して配薬する。
  • 看護師は術前に中止が必要な内服薬を把握し、医師に確認する。
  • 当該部署は、術前に抗凝固薬や抗血小板薬の中止がチェック出来るようにチェックリストを改定する。
  • 術前中止薬(抗凝固剤・抗血小板薬など)は常用薬とは別の薬袋を作成し、薬袋に手術日を示すようにする。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
11 障害残存
の可能性
なし
内科

内視鏡室
前処置の抗コリン剤の注射を施行するため、問診票を確認。全ての項目に「いいえ」とチェックしていたので、依頼書、カルテ、本人に確認をせずブスコパンを静注した。
静注後に依頼書に抗コリン剤不可と記載している事に気付いた。患者と確認したところ眼科にて緑内障の診断はうけていないが眼が見えにくいと返答あり。ブスコパン静注後、眼痛、視力低下見られず。
問診票のみの確認しか行わなかった。
  • 医師と看護師で確認を行う。
  • 予約時に問診票のチェックを患者と共に行う。
  • 依頼書のチェックを必ず行う。
確認が不十分であった
12 障害なし 救命救急
センター

病棟・
放射線科
硬膜脳動静脈瘻の患者で放射線科で血管内手術が予定され、病棟より搬出時麻薬が準備されず、患者の入室が20分遅れた。
主治医の指示で麻薬が救命救急センターで準備され、放射線科へ持参することになっていたが、病棟や放射線科に連絡されず、そのまま救命救急センターに持ち帰り、置いていたことが発覚する。
普段は救命救急センターから入室し、病棟には手順書がなかった。手術室、救命センターへの指示は口頭指示であった。
  • どこの部署からも搬出することがあり、マニュアルの整備、チェックリストの整備をする。
  • 麻薬等の持参薬の準備は搬出部署で準備する。
  • 血管内手術の申し込みから準備、システムを再度検討する。
連携

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(NICUにおける薬剤の希釈に関連した事例)

No 事故の程度 事例の内容 背景・要因 改善策 評価案
1 障害なし バセドウ氏病治療のため入院した患者に対し、チウラジール50mg 6錠1日3回5日分の処方が出されたが、薬剤師A は誤ってチラーヂンS 50μg 6錠5日分を調剤した。鑑査者(薬剤師B)は処方せんをみて、同処方せんに一緒に記載されている「インデラル錠」は甲状腺機能亢進のための頻脈に対し処方されたものと判断し、チウラジール錠は甲状腺疾患の治療薬で、6錠1日3回で間違いないと処方内容を確認した後、薬袋の中の錠剤を鑑査時、「チラーヂンS錠」を見て「甲状腺の薬、間違いなし」と判断した。錠数を確認後、病棟に搬送した。病棟で、看護師はダブルチェックを行ったが、ヒートの薬剤名と薬袋に記載された薬剤名を見比べて確認しなかったため間違いに気づかず、患者に自己管理薬として配薬した。患者は、薬袋に明記されている薬品名と、薬のヒートに記された名前が違うと気付いていたが、看護師や薬剤師に確認することなく4日間内服した。4日後、担当看護師が誤薬に気付いた。 調剤室では、チウラジール錠は普通薬、チラーヂンS 錠は劇薬であり、両薬剤は錠剤棚の離れた箇所で保管していた。両薬剤とも甲状腺疾患に使用する薬剤であり(作用は相反する)、かつ薬品名が類似していたことで、薬剤師が思い違いをして調剤し、鑑査者も発見できなかった。薬品名が類似する医薬品については、院内で「名称が類似する医薬品一覧」を作成し、配置場所にも注意喚起のシールを貼付するなどして安全管理を図っていたが、今回の薬品の組み合わせについては、その対象としていなかった。オーダリングシステムを導入しているが、医師業務の関係等から、16時30分以降に入力される処方が多く、日勤帯から準夜帯にかけて、多くの処方せんを出力し調剤することから、薬剤師に早く調剤しなければとの「あせり」の気持ちがあった。病棟では、看護師によるダブルチェックを行っていたが、確認が十分でなく、薬剤師の調剤エラーを発見できなかった。当該疾患をめったに扱わない病棟への入院であり、薬に対する知識不足があった。
  • 調剤室では、チウラジール錠、チラーヂンS 錠の配置場所に「取違え注意喚起文書」を貼付するとともに、「名称が類似する医薬品一覧」に新たに収載し、院内の職員全体に周知させる。
  • 調剤時の鑑査の精度を向上させるため、鑑査手順のなかに、新たに「声出し確認・指差し確認による処方せんと薬剤の照合」を明記し、全員に周知徹底させる。
  • 病棟での看護師によるダブルチェックにおいて、「声出し確認・指差し確認」を徹底することを職員に教育する。
  • 医師の処方入力に関して、定期処方の活用等により、16時半以降に入力・出力される臨時処方・緊急処方を減らすことを検討する。
  • チウラジール錠とチラーヂンS錠は薬品名称が類似していることから、チウラジール錠の代わりに、同一成分のプロパジール錠に採用を検討する。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
2 障害なし 膵体尾部切除術後の患者。食前にヒューマリンR のスケール打ち施行していたが、朝から「ノボラピッド注フレックスペン」の固定打ち(2-2-2-0)に変更となっていた。インスリンは開始時に、看護師から患者へ手渡され患者が管理していた(手渡し時、看護師はダブルチェックをしなかった)。 翌日の昼食前にインスリン投与の確認をする際、インスリンを見ると、患者は「ノボラピッド30 ミックス注フレックスペン」を持っていた。指示変更時の朝~翌日の朝まで指示とは違うインスリンを投与していた。 当科では手術時に、術前から投与していた内服薬・インスリンは全てナースステーションに一旦回収し、術後再開指示が出るまで保管している。インスリンの自己注射導入時には看護師が手技指導を行うが、今回のケースは患者が自己注射を習熟しているため、インスリン製剤の手渡しで十分と考えた。患者の名前が書かれたインスリンがあるからという申し送りでダブルチェックせず、薬剤名も確認せず手渡してしまった。受け持った看護師も手技は問題ないので、単位数だけ口頭で確認するのみでインスリンそのものを改めて確認することをしなかった。
  • インスリンに関しても、他の点滴と同様、看護師が投与するとき、患者に手渡すときは必ずダブルチェックを徹底するよう呼びかける。
  • インスリン投与中の患者にはすべてワークシートをオーバーテーブルに設置する。
  • 自己注射する患者もテンプレートで自己管理能力を確認したうえで自己注射を実施する。
  • システムとして、術前に使用したインスリンは手術で絶食になるとき一旦家族に持って帰ってもらうか又は破棄するか説明しナースステーションに回収するのはやめる。
  • 再開時は新たに処方してもらう。
  • 2年目の看護師を対象にインスリンの自己学習・勉強会を計画する。
確認が不十分であった
3 障害なし レベミル皮下注を自己注射の患者。8単位から4単位へ減量の指示が出たので口頭での説明をしたが、減量していなかった。 判断ミス。
  • 指示変更時は患者管理であってもわかりやすいようにすること、実施後の確認は投与量も確認していく。
患者・家族への説明
4 障害残存
の可能性
なし
内服薬を自己管理している患者。翌日からの1日分処方が出た為、病室にて患者に「明日飲んで下さい」と内服薬を渡した。患者は以前処方された薬2日分を持っていたが、以前の処方箋を確認せずに渡した。朝、患者は以前から持ってい内服薬と新たに渡した内服薬を重複して飲んでしまった。薬は降圧剤。患者の普段の血圧は170mmHg だが、60 から70 台にまで低下してしまった。 以前からある処方せんを確認しておらず、翌日からという新しい処方箋しか見ず渡してしまった。患者別ワークシートに反映されていなかったため、内服薬は既に持っていないだろうという思い込みがあった。患者の残薬を確認しなかった。患者に内服薬を渡そうとしたが、何度訪室してもおらず、デイルームにもいなかった為、早く渡さないといけないと焦っていた。「非透析日」や「検査前も内服可」という事を伝えなければならないと伝えることに集中し、しなければいけないことが欠けてしまった。
  • 自己管理の内服薬を渡すときには、必ず残薬を確認することを徹底する。
  • 患者別のファイルをすべて確認し、以前の処方せんと比較しながら渡す。
  • 思い込みではなく、処方せんと残数を看護師・患者2人で必ず確認する。
  • 伝えることは紙や薬袋に書くなどし、伝え忘れないようにする。焦るとしなければならない事が欠けてしまうため、気持ちを落ち着かせ今何をしなければならないかを確認して行動する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
5 障害残存
の可能性
なし
患者は内服薬を1日自己管理し、看護師が内服確認を行っている。他患者の対応をしていて、確認に行くのを忘れていた。日勤の看護師が昼食後の確認に行った時に、内服がケースに残っているのを発見し医師に報告。朝食後内服は当日のみ中止し、夜間の血圧測定の指示あり。血圧110 ~ 130mmHg 台にて経過した。 他患者の対応をしていて忘れていた。大丈夫だと安心していた。患者のリハビリ時間の変動で慌てて忘れてしまった。患者本人もリハビリが早くからあったことで、内服を忘れてしまった。
  • 内服の有無を確認。
  • 食堂に持ってきてもらってから内服してもらう。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
6 障害なし 朝食後の内服投与を忘れてしまった(ザイロリック100mg 1錠、コニール4mg 1錠)。血圧の問題がなかったため、経過観察となった。 手術後、内服が本人管理から看護師管理になったが、指示簿に記載がされていなかった。また薬BOXの名前シールがはがされていたこともあり、手術前のまま本人管理であると思い込んでいた。さらに最終的にも患者が内服したかを確認しないまま、サインをしてしまった。
  • 患者管理から看護師管理に変更になった旨がスタッフ全員がわかるように必ず記載し、内服したと思い込まずに患者に声をかけ、薬の空を回収し確認を行う。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
7 障害なし 患者は前日から腹部エコー検査があることは理解していたが、朝食の延食の必要と食前のベイスンの内服をしていはいけないことまで説明していなかった。本人が「薬は飲んだ」と言われ食前のベイスンを内服したことがわかった。 看護師の説明不足(延食に伴う内服に関する説明不足)。
  • 患者への説明内容は検査内容、延食の有無、内服薬の注意事項全て行う。
  • 患者の理解度に合わせた説明を行う。
患者・家族への説明
8 障害残存
の可能性
がある
(低い)
不眠の訴えがあり、マイスリー10mg ×7日分の処方があった。この患者は、薬の自己管理が出来ているため本人に手渡し1日1回1錠と説明した。しかし、前日他の眠剤を1錠内服し効果がなかった為、この日、2錠(20mg)飲んでいたことが後で分かった。この時「火事だ!火事だ!」と叫び、会話も出来ないほど興奮、不穏状態となり医師の診察により夜間の緊急透析を起こっていた。この時点で医師は『マイスリー中止』の指示を出していた。5日後、同室の患者より「隣の患者がゴソゴソして眠れない。」と訴えあり、訪室すると私服に着替えて「退院するから」と荷物を片付けており意味不明な言動や落ち着きのない行動が朝まで見られた。この時、内服薬チェックをしてみると中止となっていた眠剤(マイスリー)が本人管理の状態になっており、残薬数が減っていた。5日前の中止指示が出た時点で、眠剤を回収しておらず内服したと思われる。残薬は4錠であった。 患者の緊急透析等による慌しさのために “中止=回収する” という認識・行動に繋がらなかった。回収する行動の前にカルテに指示受けサインをしてしまった。自分自身の業務が煩雑な場合は、他のメンバー(準夜3名、深夜3名)に依頼するということに気が回らなかった。副作用の危険性について知識不足であった
  • 「なぜ中止という指示が出たのか」という理由を考えカルテ、PCの処理をする前に “薬の引き上げ” という行動を取ることを指導する。
  • 業務の優先順位、再度内服してしまったらどのような危険が発生するかを考えるよう指導する。
  • マイスリーの管理について、今回のようなことが起こらないよう、管理方法(詰所管理)等の検討をする。
  • 透析患者など腎障害のある患者、さらに高齢の場合は1回内服量を最小の5mg から開始するよう医師側で検討するよう依頼する。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
9 障害残存
の可能性
なし
肺炎治療の目的で入院中の患児に、抗生剤メロペンを4日間点滴治療した。その後病状が軽快し退院されたが、翌日強い不穏症状が現れ他院で診察を受けた。他院の医師から抗てんかん薬を服用中にメロペンの治療を受けたので、バルプロ酸の血中濃度が下がり不穏症状が生じた可能性があると説明を受けた。家族から診療経過の報告を受け当院で調査すると、患児が入院中に持参薬の抗てんかん薬を内服していたことが分った。入院時に抗てんかん薬を内服中であるとカルテに記載されていたが、担当医が服薬状況を把握していなかった。 バルプロ酸と併用禁忌であるメロペン(ペネム系の薬剤)をバルプロ酸内服中であることに気付かず投与した。患児は通常は近くの施設に通院し抗てんかん薬を処方されていたが、自宅が当院に近くその施設では夜間の救急対応が出来ないので、急変時には当院に受診することになっていた。入院中、患児は当院で処方されたことがない持参薬を母親の管理のもとに内服していた。施設からの紹介状やカルテの現病歴・現症欄にはバルプロ酸を内服中であると記載されていたが、担当医はこれを把握していなかった。また当院では、持参薬を薬剤部が管理する体制や電子カルテ上で併用禁忌をチェックする体制が整っていなかった。
  • 脳性麻痩やてんかんの患者はバルプロ酸を内服している可能性があり、抗生剤使用時には必ずバルプロ酸内服の有無を確認する。また現在バルプロ酸を内服していなくても将来使用することもあるので、ペネム系薬剤の使用は原則控える。
  • 入院時持参薬の服用を規制するかチェック体制を確立する。例えば、病棟での持参薬使用を禁止する。あるいは、持参薬を内服する場合は薬剤部がこれを電子カルテで管理し、併用禁忌のチェックが可能となる体制を検討し確立する。
確認が不十分であった
10 障害残存
の可能性
なし
患者は虚血性心疾患にて、循環器内科に入院し、PCI(経皮的冠動脈形成術)を行った。鼠径動脈穿刺部位の止血確認後も翌朝までベッド上安静の指示が出ていたため、看護師は頻回に訪室し観察していた。患者は、入院前に睡眠障害のため当院精神科を家族同伴で外来受診していた。不眠時の頓服薬として、ほぼ毎日レンドルミンD 錠0.25mg、ロヒプノール錠2mg を服用していたことから、主治医はこれらを2錠ずつ30日間分処方、さらに頓服用としてそれぞれ1錠ずつ15回分を処方し、症状に応じて自己調整して服用するよう指導していた。しかし、この服用方法は電子カルテに記載されていなかった。患者は、入院時にこれらの睡眠薬を持参し、PCI前夜には自分で眠剤を1錠ずつを服用したが、この処方内容と実際の服用量に違いがあったことが、病棟の医師、看護師に伝わっていなかった。検査当日の看護師は、PCI後安静中の患者に眠剤を処方どおり2錠ずつを服用させた。22:30 頃、心電図モニターが急上昇したため看護師が訪室すると、患者がベッド下の床に仰向けに転倒していた。ベッド柵は立てられたままであり、患者はトイレに行こうとして柵を乗り越えられる際に転落した様子であった。バイタルには著変なかったが、右前額部に打撲痕(血腫形成)があり、直ちに主治医が診察し、頭部CT施行したところ急性硬膜下血腫の所見であり、脳神経外科へ紹介となった。 患者は自身の希望によりバルンは留置されておらず、PCI術後、ベッド上で尿器により排泄可能であり、またNSコールも適宜行われていたので療養上の場面における転倒・転落の危険性を予知できなかった、アセスメント不足であった。精神科の主治医は、処方内容とは別に服用方法について電子カルテに記載していなかった。実際には、患者はこれらを毎日1錠ずつ服用していた。患者は、以前にもこれらの睡眠薬を2錠ずつ服用されていたことがあり、この日に限り薬剤が過剰投与されたというわけではない。以前から歩行不安定であったこと、慣れないベッド使用であったこと、高齢でもあり、PCI後の体力的な影響等、転落に至った原因は複合的な要因が絡んでいたと考えられるが、この日の薬剤の過剰投与が影響していた可能性は否定できない。
  • 今後本院では長期処方(倍量処方等)を一切行わないこととし、処方量と服薬量が違うような投薬が行われることがないよう、周知徹底を図る。
  • 入院時持参薬を預かる際、内服量・時間等について患者または家族に確認することを徹底する。
  • このような処方による影響から患者が転落した可能性があるので、警鐘的な事例として今後の再発防止に役立てる。
確認が不十分であった

記録等の記載
11 障害なし 抗癌剤投与2日目で副作用として吃逆があり、眠れないと訴えがあった。患者からは訪室するたびに「治せないなら点滴を外して帰る」などイライラした様子であった。
主治医へ報告し、セルシンを1/2A 静脈注射施行した。2時間程眠っていたが、再度吃逆にて眠れないと訴えがあり、詰所まで来られ点滴を外し治療はしないと軽度興奮ぎみであった。他スタッフと相談し、再度セルシン使用。その後、訪室すると眠られていた。朝トイレへふらふらしながら歩かれている姿をみかけ声をかけると前夜、眠前薬(デゾラム・レンデム)を2 錠ずつ内服したと報告を受ける。
患者が入眠していたことで薬が効いたのだと思い込み、内服されている薬など十分に観察できていなかった。
  • 患者への説明と対応。
  • 本当に本人管理で良いのか検討していく。
観察が不十分であった
12 障害残存
の可能性
がある
(低い)
家族は患者の不眠を訴え、「以前、眠れないときにバルレオン錠0.25mg の半分を服用していたことがあるので眠剤を出してほしい。」と病棟看護師へ眠剤の希望をした。
夕方、処方されたハルシオン錠0.25mg 1回1錠服用の5回分を、看護師は自己管理出来ると判断し、患者に薬袋ごと渡した。
患者は、薬袋からシートになった2錠を取り出し、1錠を服用し、もう1錠は翌日飲もうとTV台の上に置いた。翌朝、病室内のトイレを使用後、トイレの回転扉を開けようと右手でドアの取っ手バーを握った際に、ドアの開いた勢いで体のバランスを崩し、右回転して尻餅をついた。立ち上がろうとしたが出来ず、再度転び、ようやくつかまりながら立ち上がり、トイレからベッドまでの130cm の距離を40分くらいかけて戻った。1時間後、患者が下膳のためオーバーテーブルに朝食後のお膳をのせ、廊下に前屈位で出てきたのを看護師が発見し、介助にてベッドに戻った。患者は、「足に力が入らない」と告げた。家族が面会に訪室した際に、「患者の様子がぼーとしていて、家と病院とが混乱している、呂律が回らず、尿失禁していた。ハルシオン錠の1錠分の空のシートがテーブルの上にあった。間違えて飲んでしまった可能性がある。」と看護師に伝えた。主治医が診察し、患者からトイレで転倒したことをこの時点で初めて聞いた。股関節痛等訴えなく、関節可動域も問題はなかったため、患者の希望通り外泊したが、外泊中、股関節痛の訴えあり、歩行することができず、家族に抱えられトイレに移動していた。帰院後、レントゲンの結果、整形外科医診察あり、右大腿骨骨折と診断された。
眠剤ハルシオン錠を患者が自己管理出来ると判断し薬袋ごと5錠渡してしまい、患者自身が誤って過剰に服用してしまった為、せん妄状態となった。入院による環境変化により数日不眠が続いていた時に、倍量の眠剤を服用した。内服薬管理に関する情報不足(不眠時は3 ~ 4日間眠れないときに、10日に1回くらいの頻度でバルレオン錠0.25mg の半錠を服用していた事を知らなかった)。貧血が比較的急速にすすんでいた為、排泄後にトイレでふらついた(Hb:9.4 →2週間後Hb:6.2)。患者へは、再三のナースコールの対応をすることを説明していたが、看護師を呼ばずに一人で移動してしまった。
リウマチ疾患による、手のこわばり、両足の浮腫により、つかまり立ちをした際に、体を支えられずふらついた。トイレの回転扉の取っ手(バー)に支えのためにつかまり、ドアが勢いよく開いたため体が引き寄せられバランスを崩した。
  • 眠剤の自己管理について検討する。
  • 眠剤の与薬時間、量、服用後の観察を行い、記録に残す。
  • 内服薬管理の状況を、残薬確認をし自己管理が出来ているかを評価する。
  • 貧血の状態を把握し、転倒の危険性を患者に説明し協力を得る。
  • 訪室した際に、声をかけ、排泄の関しては排尿誘導にて介助する。
  • 患者のADLの状況を把握し、看護計画に反映する。
  • トイレの回転扉の取っ手(バー)の開閉時の注意点を患者に説明しておく。
判断に誤りがあった
13 障害残存
の可能性
がある
(低い)
術後1日目の朝、患者に内服開始薬の説明を行い、薬を手渡した。昼に内服薬の確認のために訪室して過剰与薬に気が付いた(朝7日分、昼7日分の摂取)。直ちに医師に報告、点滴等の指示を受け、各種検査、バイタルチェック実施。気分不快、嘔吐等の訴えも無く、特に異常なし。蓄尿、肝腎血液データを追跡した。その後も異常無く退院した。 内服薬の説明不足(患者が理解できているかの確認不足)。
  • 服薬について十分な説明の徹底と患者の自己管理薬を渡す時期の検討(術後1日目が妥当か)。
患者・家族への説明
14 障害残存
の可能性
がある
(低い)
精神科入院歴あるが一般病棟への入院問題なしとの診断で精査のため入院中。夜間、イライラと焦燥感の訴えがあったため、当直医へ報告していた隙に本人管理の持参薬を4~5回分内服した。自己申告あり。 特殊な環境下での変化を予測した患者の行動の予測不足。
  • 入院中は原則、持参薬を病院管理にする。
  • カンファレンスなどで患者の情報を共有し、変化を早めに把握する。
判断に誤りがあった
15 障害なし 入院中の患者。持参薬として、アムロジン、リバロ、オルメテック、グラクティブ、アマリールを内服中であった。その他に入院中に追加された薬剤が5種類ほどあった。
持参薬のアマリール以外のアムロジン、リバロ、オルメテック、グラクティブを自己管理で内服していた。一方、追加処方された5種類の薬剤とアマリールは看護師管理で内服していた。持参薬が少なくなったため、アムロジン、リバロ、オルメテック、グラクティブ、アマリールが院内で処方された。アマリールを看護師管理で内服していたので、その他の薬(アムロジン、リバロ、オルメテック、グラクティブ)も同じように配薬容器にセットしてしまった。患者は自己管理の薬剤とそれらの配薬された薬剤ともに内服してしまった。結果として、アムロジン、リバロ、オルメテック、グラクティブが2回分の倍量が投与された。その後、患者は低血糖となり、グルコースを内服することになった。
患者管理の薬剤と看護師管理の薬剤が混在していたため引き起こされたエラーと考えられる。
  • 自己管理の薬剤と看護師管理の薬剤が混在しないようにする(一部の薬剤だけ看護師管理にするような運用は行わない。すべての薬剤を自己管理にするか、すべての薬剤を看護師管理とするかのどちらかにする)。
確認が不十分であった
16 障害なし 患者が、持参薬が残り少なくなり、次の薬がどうなるのか心配した。もう少し残りが少なくなってから処方してもらうことを説明し一度は納得したが、準夜帯になって薬を出してもらいたいと言われ、研修医が看護師の言う通りに処方した。その際、内服開始日が入力されず、処方日が内服開始日で打ち出された。払い出された薬について、その日の担当でない看護師が患者のところへ持っていき、翌日からの内服を指示した。
その4日後に患者がしんどいと訴え、内科受診して脱水が確認された。その翌日、患者から薬について質問有り、看護師が確認すると5日間ラシックス等を重複して内服していたことが判明し、その事が原因して脱水症状が出たことがわかった。入院時より薬剤師が関与していたが、病棟訪問時カルテが見つからなかったからと、服薬指導に入っていなかった。
担当以外の看護師が「単に薬を渡す」業務をした(患者把握不足、残薬確認不足)。医師が安易に処方した。残数に基づいた処方でなかった(当院では臨時薬、定期薬の決まりがあるが、定期薬として処方した)。処方が決まり通りされてないことに気付かず、定期薬として患者に渡された。入院時から薬剤師が介入していたが、処方された日にたまたまカルテが病棟になく薬剤師が介入せず、気付かれなかった。患者も処方されたものだからと内服した。
  • 医師は持参薬については残数を確認し、重複しないように臨時薬・定期薬の処方をする。
  • 看護師が患者に渡すときには残数確認をして、内服開始を指示する。
  • 薬について意識的に観察する。
  • 薬剤師は薬歴によって確認と服薬指導を行う。
確認が不十分であった

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(NICUにおける薬剤の希釈に関連した事例)

No. 事例 評価案
1 【内容】
医師から10倍希釈バンコマイシン投与の指示が出されたが、看護師が注射準備時に計算を間違えた為、希釈されておらず原液のまま投与された。大量輸液をかけwashout し、急性期の腎障害は認めず、バイタルサインは安定経過している。

【背景・要因】
  • 注射液希釈の計算が間違っていた。看護師が医師に計算方法を確認したが内容が伝わっていなかった。
  • コンピュターで薬液量を入力しても出力時は記入された伝票がでない。
  • 指示の出し方が見にくかった。
確認が不十分であった
2 【内容】
ラシックスのダブルチェックを経て調製した。その際、指示はラシックス3mg、0.3mL であった。通常、ラシックスは10倍希釈し使用していた。このことは認識していたが、単位を見間違え、3mL(30mg)をアンプルから吸った。点滴台の上に注射箋を置き、声に出して指示を読んでダブルチェックをしてもらったが、誤りに気付かず、ダブルチェックの相手からも何の指摘もなかった。11時過ぎ、注射箋を患者の近くに持って行き、指示書と照らし合わせ、IV する内容と量を確認する。そのまま、メインラインから3mL をIV した。使用した量を経過表に記載しようとした際に、「17時にラシックス0.3mL IV」と記載されており、再度指示書を確認し、投与量を間違えたことに気付いた。

【背景・要因】
  • ダブルチェックへの慣れがあった。
確認が不十分であった
3 【内容】
患児は血清Kが上昇傾向にあり、利尿剤で対応していた。K 6.8 と上昇し、GI療法を行うことになり、14:30 ~ 15:00 で開始した(医師Aがプロトコールを見て調製しシリンジポンプで開始)。
16:00 血糖56、K 5.2、19:12 血糖5 と低値を示したが、啼泣は認めた。20%糖液20mL をIV し、中心静脈栄養に切り替えた。調製内容を確認したところ10倍液で調製(ヒューマリンR 1mL(100 単位)+ 20%糖9mL)されたものが実施されていた事が判明した。その後動脈管開存を認め、ステロイドやインダシンなどの治療があり、痙攣などなく低血糖は改善した。

【背景・要因】
  • 予定されていた薬剤量はプロトコールに記載されたとおり、「ヒューマリンR 1mL(100単位)+ 20%糖9mL」から0.1mL(ヒューマリンR として1単位)をとり、20%糖20mL に希釈して2mL/kg で投与する内容であった。
  • インスリンは危険薬であるが、医療者間のチェック体制がなくすり抜けた。GI療法の手順の認識がなかった。
  • 初めて実施する方法であった。
  • プロトコールが複雑であった。
  • 医療者間でのダブルチェックが出来ていなかった。
  • 看護師はインスリンに関しては関与しないルールであった。
  • GI療法の知識不足。
確認が不十分であった
4 【内容】
患児は日齢1の男児で、低酸素性虚血性脳症、新生児痙攣の疑いで当院NICUに搬送された。
生後24時間後(入院9時間後)に心不全、乏尿、高カリウム血症が確認されたため、GI療法を実施することとした。新生児に対するGI療法では一般的にGI比(グルコース投与量g:インスリン単位)を4~5程度に設定して静脈内投与する。そこで20%グルコース液(グルコース0.8g)にヒューマリンR液(インスリン100 単位/mL)を100倍希釈したもの(1単位/mL)を0.1mL(0.1 単位)混合した溶液を静脈内投与しようとしたが、指示簿に誤って「100倍希釈」を書き忘れたため予定の100倍量のインスリンを投与する指示を出してしまった。その結果、生後36時間と生後54時間の2回に渡って過量のインスリンを患者に投与し、低血糖が継続する事故が生じた。

【背景・要因】
  • ヒューマンエラー。
  • GI療法で用いる溶液濃度を一定とするルールを設定していなかった。
  • 劇薬に関しては医師を交えて投与量を確認する体制がなかった。
  • 担当医は連続30時間勤務中であった。
  • 深夜帯に入院した緊急・重症患者を一人で診察する過酷な勤務体制であった。
  • 患児が元々低血糖状態であったためインスリン過量投与に気付きにくい状況であった。
確認が不十分であった

勤務状況
5 【内容】
日勤よりフローラン(肺高血圧症治療薬)が開始となる。 医師より2段階希釈をし、患児へ0.001mg/mL の濃度で投与するよう指示あり、1段階希釈したものを冷蔵庫で保管した。 準夜の切り替え(22時)に1段階希釈した薬剤を吸ってシリンジポンプにセットし実施した。 深夜2時頃より、通常の平均血圧50~60mmHg であったものが、22~25mmHg に低下、HR80~90 回/分が130~140 回/分へ上昇、SPO2 が90%後半から80%代後半へ低下した。 患児が覚醒したため、トリクロールシロップを内服し、鎮静するように指示あり。トリクロールシロップを内服後も、バイタルサインの変化はなかった。医師がエコーをし、窒素吸入の量が増量となる。人工呼吸器のFiO2 を0.3 から0.6 に上げたが、変化はなかった。6時にフローランを更新する時に、冷蔵庫のバイアル内の残量が3分の2程に減っていたため、疑問に思い、再度溶解方法を確認した。バイアルに「フローラン0.5mg 溶解」と記載した1段階希釈(フローラン0.5mg 1バイアルを専用溶解液50mL で溶解した)までのものが保存してあり、更に、希釈液で溶解しなくてはならない事に気付いた。
医師へ報告し、フローラン中止の指示あり。22時に作成したスタッフに確認したところ、2段階の希釈はしていなかったことが解った。
フローラン中止後、5分で平均血圧が52~65mmHg、HR が90~100 回/分、SPO2 が98~99%へ上昇した。エコーと採血を実施。フローラン中止後、約1時間半で血圧が安定してきたため、フローラン再開となった。

【背景・要因】
  • 1段階希釈の薬剤が保管してあり、表示が見えなかった。
  • フローランは今回初めて使用する薬剤であり、医師、看護師ともに慣れていなかった。
  • 薬剤の使用方法に慣れていなかった。
確認が不十分であった

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(術後患者の硬膜外腔に持続注入すべき薬剤を静脈に注入した事例)

No. 事例 評価案
1 【内容】
患者は直腸低位前方切除術を終えて外科病棟に帰室した。普段は硬膜外カテーテルから麻薬がシリンジェクターに入れられ持続注入されて来る事が多いが、今回は骨転移のため硬膜外カテーテル挿入は中止され、静脈ラインにフェンタニル入りのシリンジェクターが繋がっていた。
しかし医師は指示変更を忘れ、術前から出されていた硬膜外用のアナペインは返納されなかった。準夜勤で、シリンジェクターの薬液が切れるため看護師A は指示書を見ながらアナペインを準備し接続した。この時、指示書に書かれていた「硬膜外カテーテルから注入」というコメントには注意を払わなかった。深夜勤看護師B もアナペインについての知識がなく疑問に思わなかった。翌朝の日勤看護師が間違いに気付いた。患者の状態に変化は無かったが計40mg ほどのアナペインが静脈に注入された。

【背景・要因】
  • 主治医が指示変更を忘れ、それに替わる指示も出されていなかったため中止薬品が返納されないままになっていた
  • アナペインは最近マーカインから変更されたばかりで看護師は硬膜外投与の薬剤であるという知識がなかった。
  • 看護師は今回シリンジェクターが血管に接続されているという送りは受けていたが「シリンジェクターは硬膜外」という思い込みもあった。
  • 指示確認時に用法まで見ていなかった。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
2 【内容】
患者は人工肛門閉鎖術を受けた。術前、硬膜外カテーテルより術後アナペインの追加の処方箋が出ていた、手術では硬膜外カテーテルの留置は無く静脈ラインよりインフュージョンポンプを使用してフェンタニルが投与されていた。術後1日目深夜勤務の看護師がインフュージョンポンプの残量が10mL をきっているのを見て、処方箋の薬剤名だけを確認し、アナペインを追加投与した。3時間後に日勤看護師がインフュージョンポンプが静脈ラインにつながっているのを確認し静脈投与禁止薬剤のアナペインが投与されていることを発見した。直ちに投与を中止、心電図モニター設置し循環動態・神経症状に注意し観察をした。

【背景・要因】
  • 硬膜外カテーテルが留置されなかった事を受けて、手術終了後に使用される予定の無いアナペインが返納されなかった。
  • 注射箋には、「硬膜外 アナペイン」と書かれていたが、個人の注射BOX にアナペインが入っていたため迷わずにアナペインを追加注入してしまった。
  • インフュージョンポンプを使って、硬膜外投与と静脈投与に薬剤投与されることがあり、接続が可能であることから、アナペインが静脈注射される危険があった。
  • 院内で、同様の事例が発生していたが、事例が浸透していなかった。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった