独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
メニュー
閉じる
閉じる
閉じる

添付文書、患者向医薬品ガイド、
承認情報等の情報は、
製品毎の検索ボタンをクリックしてください。

安全対策業務

平成24年度 第3回医薬品・医療機器安全使用対策検討結果報告(医療機器関連事例) 別添3

本文別添1別添2|別添3

情報不足等のため製造販売業者による対策が困難と考えられた事例(医療事故)

No. 事故の
程度
販売名 製造販売
業者名
事故の内容 事故の背景要因の概要 改善策 調査結果
1 障害なし DAR ブリージングシステム コヴィディエン ジャパン 脳腫瘍再発の患児。脳ヘルニアで呼吸抑制あり、人工呼吸管理中。
AM6:30頃、吸入後より加温加湿器のアラームあり。加温加湿器表示34℃台から上昇しないため、回路交換するが、温度上昇せず。加温加湿器表示32℃台まで低下。休日担当のME機器センター員へ連絡し、温度プローブ交換するが、温度上昇せず患児の体温も34℃まで低下あり。
人工呼吸器(加温加湿器含む)及び回路交換後、正常に温度上昇し、血圧・SpO2含め呼吸状態に変化はなかった。
後日当該回路をME機器センターにて確認したところ、呼吸回路の吸気側(Yピースから58cm)に圧迫による回路つぶれを発見した。ベッド柵などで圧迫されヒーターワイヤーが断線した可能性が高い。 人工呼吸回路の取り扱いについて、家族を含めた教育・周知徹底を行う。 当該事例については企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、加温加湿器の温度が上昇しなかったとのことである。分析の結果、チューブのつぶれ及び導線の断線が認められたが、チューブつぶれの直接の原因等の詳細が不明であり検討困難と考える。
2 障害残存の可能性なし 不明 不明 在宅酸素療法の患者の携帯型ボンベから酸素が投与されていない期間があり、患者の病状が変化した。 在宅酸素療法会社の管理に関して問題がある可能性がある。現在、情報収集中である。 業者との連携を密にとり、患者への医療機器の安全な提供ができるよう対応する。
患者教育の徹底も行う。
携帯酸素ボンベから酸素が投与されなかったとのことであるが、併用していたレギュレータやチューブの使用状況を含め、詳細情報が不明であり検討困難と考える。
3 障害残存の可能性がある(高い) アンブ蘇生バッグ シリコーン製 アイ・エム・アイ 患者は、心肺停止状態で搬送され、心肺停止約55分後に蘇生される。JCS3-300であり人工呼吸器装着、腎機能悪化の状態となり同年当院転院する。徐々に心不全、腎不全の悪化が見られ、一次的にFIO2を上げる等必要であったが小康状態であった。その後人工呼吸器の回路交換を実施する。回路交換中にSPO2低下、HR低下となり心臓マッサージを実施、回路交換には9分要した。ボスミン使用で蘇生するが、その後 約2時間半後より再度状態悪化、回路交換後約4時間後に死亡する。患者の状態を考えたとき必ずしも回路交換の必要は無かったのではないかと医療安全対策室に報告があった。報告内容でアンビューの使用方法に疑問を持ち、数日後テスト目的でリスクマネージャーが病棟に出向き膜弁の装着間違いを発見した。
当日の回路交換は臨床工学士1名、看護師3名で担当した。13時50分よりアンビューへの酸素は5Lで開始した。(アンビューのリザーバーバッグは装着してなかった。)その時点でのSPO2=96%、HR=60代であった。直後よりSPO2が低下したため酸素流量を7L、10Lと上げたがSPO2は上昇せずアンビューを担当していた看護師は、今までに何度かアンビューを使用したことはあり、いつもの手ごたえが無く(入っている感覚が無い)自分のアンビューの押し方が悪いんだと考えた。HR=20となった時点で看護師1名は医師への連絡でその場を離れた。HR=10となり心臓マッサージを開始、13時59分回路交換終了し呼吸器装着。医師が来棟しボスミン使用でバイタルサインが改善する。人工呼吸器回路交換の準備をした際、また使用直前にアンビューの動作確認はしなかった。
病棟看護師全員に聞き取り調査を実施した。結果動作確認方法に看護師により違いがあることが分かった。
  1. 組み立て後に吹き出し口に手をかざして確認する。35%
  2. 組み立て後、使用直前ともに吹き出し口に手をかざして確認する。12%
  3. アンビューを押して確認するが、吹き出し口に手をかざしての確認はしない。24%
  4. 動作確認はしない。(アンビューの組み立てにあたったことが無い)29%
  5. 毎日の救急カート確認時動作確認するが、使用直前はしない。6%(1名)
医療安全対策室より、安全情報として1、聞き取り調査の結果 2、アンビューリザーバーバッグの装着あり、なしの場合の酸素流量と酸素濃度の関係資料 3、説明書の一部抜粋し機能テストの必要性、方法 4、各部署にあるアンビューの種類について配布し3週間後には、看護師全員が説明書を見ながらアンビューの組み立てができる、動作確認ができることを確認し名簿を提出することとした。また看護部の年間教育、部署での指導方法を具体化し実施することとした。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、膜弁の装着間違いにより換気が不十分になったとのことであるが、組立て方法等の詳細が確認できなかった。
4 障害残存の可能性なし SCD エクスプレス 日本コヴィディエン 指示書がなく、フットポンプ使用の必要性が曖昧なまま、外傷もあり、患者不穏もあり、フットポンプは脱着を繰り返されていた。経過中、血気胸の悪化もあり、胸腔ドレーンチューブを挿入する必要が生じた。その後、胸腔ドレーンチューブを抜去した後のポータブルトイレ移動時に呼吸困難を訴え、精査の結果、両肺動脈と右心房心室内巨大血栓が発見され、緊急手術となった。 リスクチェックの漏れに関して、入院時に準備すべき書類が多く、漏れてしまったことが挙げられる。また、入院時に準備すべき書類関係のチェックリストを作成していたが、その使用がされなかった点も要因である。
入院直後に不穏となり、点滴類も抜去と同時に、フットポンプの使用も不十分となった可能性はある。ただし、早期のリハビリ紹介と起立や歩行、車椅子移乗、下肢の運動はされていた。
経過中、血気胸の悪化もあり、胸腔ドレーンチューブを挿入することで、患者安静期間が予定よりも長くなった。
チェックリストが、準備され、血栓予防が十分されていたとしても、血栓症を引き起こした可能性はある。
入院時に準備すべき書類に関するチェックリストの使用の再周知と、リストのダブルチェックができるような体制の整備を行っている。
看護師からも、必要な処置の指示を医師に指示書で出してもらうよう促す文化をつくる。フットポンプは使用前に、医師の指示書を確認すること。
当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、当該フットポンプの使用状況等の詳細が不明であり、深部静脈血栓症の発症との因果関係について、モノの観点からの検討は困難と考える。
5 死亡 ネクサス プラス DR ボストン・サイエンティフィック ジャパン 7年前、完全房室ブロックに対し、永久的ペースメーカーを植込み、定期的なペースメーカーチェックを行っていた。2年前、うっ血性心不全にて再入院、中等度の大動脈弁狭窄症と診断されたが、高齢のため根治術は行わず外来治療をしていた、その後、BNPが1、000pg/dl前後となりうっ血性心不全が増悪傾向であったため、家族とともに入院の準備をして外来の定期受診をした。臨床工学技士がペースメーカーチェックを行ったところ、3Vペーシングにてペーシング不全が出現し、その直後、心室頻拍となり患者は意識消失した。すぐに医師が駆けつけ、脈拍触知不能であったため直ちに心臓マッサージを開始した。除細動器のモニターにてQRS波形を伴わずにペーシングスパイクのみであり、ペーシング不全が疑われた。ICU入室し、蘇生術を継続したが心収縮を伴う拍動は生じず心停止が持続した。家族はこれ以上の積極的な治療は希望されず、死亡確認となった。 患者は重症大動脈弁狭窄症による高度の心機能障害を有していたが、直近のペースメーカーチェックではペーシング閾値の上昇は認められていなかった。そのため、今回のチェック時にペーシング閾値が、非可逆的なペーシング不全に至るまで上昇していたことを予見することは困難であった。 重症の心機能障害例で、かつ自己脈がない症例では、ペーシング閾値の上昇によるペーシング不全の可能性に留意し、経皮的ペーシングあるいは一時的経静脈ペーシングによるバックアップを考慮しておく。 当該企業に確認したところ、当該製品は病院から返却されていないため解析は行われていないが、患者のペーシング閾値の上昇によってペーシング不全に至ったとのこと。心臓ペースメーカ植込み後の閾値上昇やペーシング不全は添付文書に記載済みの既知の事象であり、担当医も当該医療機器と死亡との因果関係はないと述べていることから、モノの観点からの検討は困難と考える。
6 障害なし 不明 不明 感染性心内膜炎に対し抗生剤投与がされていたが、心不全の進行と溶血性貧血の憎悪認め、MVR・AVR・左室流室路形成術を施行した。低心機能で人工心肺の離脱に難渋し、循環補助のためIABP挿入、また体外式ペースメーカー装着され18:35にICU入室となった。入室後もIABPは1:1で補助され、装着されていた体外式ぺースメーカーはICUのものに交換され、70bpmで設定された。心電図はオールペーシング波形であり、COは2.5L/min/平方ミリメートル前後、ノルアドレナリン0.3μg/kg/min、オノアクト1μg/kg/min、ハンプ0.02μg/kg/minなどが持続投与されていた。
翌日、18:00頃CO低値にてペーシング心拍数80bpnへ変更したが、18:30頃誘因なく心拍数50台へ低下しペーシング不全となった。自己脈は全く認められず一時的に血圧低下した。心臓血管外科の医師とMEがペースメーカの調整を行ったが、ペーシング不全であったため、MEセンターからのペースメーカに交換した。MEセンターからのペースメーカ本体にトラブルはないことを確認したが、ペーシング不全の状態が続くため、手術で留置された心外膜ペーシング電極のトラブルを考え、急遽エコー下で右内頸静脈から経皮的に新たにペーシングカテーテルを挿入した。
その後はペーシング良好となりその時の経皮的心内膜ペーシングカテーテルには手術部のペースメーカが使用され、そのまま使用継続となった。
その後、気管チューブを抜管し、IABPも抜去となり、血圧は90~120/30~40mmHg、心拍数70のオールペーシング波形で経過しカテコラミン等減量中であった。その翌日4時40分頃、患者は目覚めて自力で喀痰の喀出を行っていた。4時45分患者モニターの心電図アラームが鳴り、看護師AとBが駆けつけたところモニターはHR0を示していた。顔色不良で口唇周囲には泡沫状の唾液が付着していた。ペーシングカテーテルはきちんと固定されていたが、体外式ペースメーカの電源が切れている状態であった。直ちに看護師Aが胸骨圧迫を開始し、看護師BがICU当直医をコールした。胸骨圧迫してすぐ患者から痛い、という発語が聞かれ、胸骨圧迫している手を掴もうとした。胸骨圧迫を継続し、4時47分、当直の医師はバックバルブマスクで補助換気を行った。ペースメーカの電源が入っていないのはペースメーカ本体がおかしい(電池切れ)と思い、看護師CがベッドサイドにあったICUのペースメーカを準備し、当直医が4:48に交換した。交換後はすぐにオールペンシング波形となり、心拍数HR60~70bpmm、血圧は117/40mmHgとなり胸骨圧迫を中止し、補助換気も終了した。患者の意識はすぐ回復し、意思疎通は良好で指示動作にもしっかり応じ、痛かったのになんですぐ(胸骨圧迫を)やめなかったの、痛いからさわらないで、と話し顔色も回復した。4:55、医師が血液ガス分析を行い、異常なデータはなかった。その後、ペースメーカ植え込み術が施行され、DDI心拍数70bpmで設定され、ペーシング良好で経過している。
  1. 新たに使用したペースメーカ(手術部保管)のバッテリーマークの表示に気付いていなかった。また、その表示の意図することが明確に認識できていなかった。
  2. ICUと異なる機種を使用しているにもかかわらず、スタッフ自ら必要な情報を取得し共有出来ていなかった。オールペンシングの患者であることの危機管理が甘かった。
  3. 使用に伴い、バッテリーの表示などに関して説明書などもなく、重要な情報の説明がないまま使用された。
  4. 手術部のペースメーカの電池がいつ交換されたものなのか明確ではなく、バッテリーチェックの出来ない機種である。また、ローバッテリー表示にインパクトがない。
  5. 手術部のペースメーカはICUにおいて長期間使用されることはなかった。ICU入室後特に問題なければ速やかに交換していたが2台あるICUのペースメーカのうち1台は故障で使用不可能の状態となり、残りの1台は故障で使用不能の状態となり、残りの1台は病棟で不足のため患者に装着のまま貸出となり、手術部のものが継続して使用された。
  1. 生命維持装置であることの認識を強く持ち、電池は消耗するということを強く認識する。
  2. 新たに使用される機器に関しては速やかに明確な情報提供を行う。
  3. ペースメーカの電池は入室患者ごとに新しいものに交換し使用する。
  4. 経過表の記録にこれまでの設定モード・Rateの他、出力とバッテリー状況を追加記載する。
  5. 手術部及びMEセンターのペースメーカの電池バッテリー表示部分にテプラ表示し、確認を意識付けさせる。
  6. 院内のペースメーカに対しての管理体制の整備を検討する。
バッテリーの消耗を示すマークに気づかず、電池交換が行われなかったことから電池切れとなったものである。ローバッテリー表示にインパクトがないとのことであるが、使用された製品名等が不明であり検討困難と考える。
7 障害なし テルフュージョンシリンジポンプTE-331S1C

テルモシリンジSS-30LZ
テルモ





テルモ
原疾患に対してCVカテーテル(ダブルルーメン)からフローラン精密持続点滴を施行中であった。23:30にフローランをポンプにセットした(1.4mL/時)。ポンプは、携帯型酸素ボンベ付きの歩行器にセットされていた。23:20に患者はトイレに行った。巡回中の看護師に急に冷や汗が出てきたと訴え、看護師がシリンジポンプはアラームなどなく作動していることを確認した。患者は病室に戻り臥床したが気分不良あり、血圧は64/40に低下していた。フローランのシリンジを確認すると、空気が11mLシリンジ内に混入し、残量が8mLとなりルート内にも空気混入あり。約11mLの薬液が短時間で注入された。 シリンジポンプを使用するにあたり、サイフォニング現象についての知識に不足があり、(1)シリンジガスケットに注射針で傷を付けた(傷付けないように注意することが不足していた)、(2)シリンジポンプの位置が高すぎて高低差があった。
製造販売業者によるシリンジの検証の結果、シリンジガスケットの傷は、18G注射針に一致し、ミキシングをする際にシリンジの先から、別のシリンジにとりわけした薬剤を18Gの針を介して、注入したことを推測している。しかし、担当者は、そのような調製をしていないと述べており、それ以上の事実確認はできていない。
サイフォニング現象や注射薬調製時の注意についてニュース(シリンジポンプ使用時の注意)を作成し、職員に配布した。また、医療安全管理室HPにも掲載した。リスクマネージャー会議、病棟医長師長会議でも、事例について報告し、情報共有した。また、事例発生部署でインシデント検討会を行った。 当該企業に確認したところ、当該製品の解析結果から、注射薬調製時に注射針によってシリンジガスケットを刺し傷つけた可能性があるとのことであるが、使用者はそのような調整方法を行っていないとコメントしており、事故の発生原因等の詳細が不明であり、検討困難と考える。
8 死亡 LTV1200

医用テレメーターWEP-5204
パシフィックメディコ

日本光電工業
12時15分から20分頃、受け持ち看護師Aが、患者の呼吸器の正常作動とECGモニター送信器でSPO2=96~98%を確認。その後、同じチームの看護師Bに申し送り、休憩に入った。
13時30分頃、当該患者と同室の患者のケアにあたり、看護師Cの指導を行っていた看護師Bが退室しようとしたところ、当該患者の有償ボランティアに「呼吸器が止まっているようだ。」と呼び止められた。確認すると、顔面蒼白、脈触知不可、血圧測定不能。LTVのコンセントは接続されていたが、電源が切れていたため、看護師Cが電源を入れて作動開始した。ECGモニターは電波切れで、送信機にも表示されていなかったため、電池交換して作動を確認した。看護師Bは病棟にいた医師2名に状態報告し、心臓マッサージ、酸素7L吹き流しでアンビュー開始。
13時36分頃、Fio2=60%で呼吸器装着。
13時55分、SPO2=75~79%.右大腿部に未消ライン確保。
13時58分、保護者である叔父宅へ主治医より連絡するが不在のため、家族に叔父への連絡を依頼。
14時00分、04分、15分、3回のアドレナリン注0、1%1mgワンショット実施。SPO2=53%、心電図フラット。生食500ml点滴開始。SPO2=測定不能。瞳孔左右とも4、0mm、対光反射なし。
叔父より電話が入り、病棟医長が状態を説明。急変時より現在まで心臓マッサージを行っているが、厳しい状況であることを説明。叔父からは、以前より表明しているとおり、本人が苦しまないようにお願いしたい旨、また、医師に任せる旨返答あり。
主治医により死亡確認。
当日は看護師長1名、看護師10名、療養介助員8名、看護助手1名、遠足付添担当看護師2名の人員配置で、入院患者数は45名であった。異常が起きた時間帯は12時30分から13時30分頃と考えられ、この時間帯は看護師5名、療養介助員3名が昼休憩に入っており、病棟内に残っているのは看護師5名(このうち1名は12時45分に休憩から戻り、病棟内で緊急入院の対応にあたっていた)、療養介助員5名で、経管栄養の確認、食事介助、口腔ケア、排泄介助にそれぞれ分担して関わりながらナースコールやモニターアラームへの対応を行っていた。
担当看護師が12時30分頃に当該患者の状態と呼吸器のチェックをしているが、引き継いだ看護師は、モニターや呼吸器のアラームが鳴る等の異常がなかったため、当該患者の観察に入っておらず、病室前に設置しているECGモニターが表示されていたかどうかも確認できていない。
使用していたLTV1200には、カバーはついておらず、全てのパネル操作(電源スイッチOFFに関しても) は、ロック解除を行わないとできない仕様となっている。
呼吸器に異常が起きて停止したとしても、ECGモニターが通常通りに表示されていれば早い時期に異常に気付いていたと思われる。
モニタの電池残量が1.8V~1.6Vの間、テレメーター本体画面に「電池交換」の文字が表示される。また、送信機ディスプレイに、電池残量不足マークが表示されることをことになっている。アラームは、20秒間に1回、「ポーン」という音が断続的に鳴る。このアラームは、電波切れや送信機スイッチOFFの時と同じ音色である。
また、電池が切れるまでの約55分間、送信機から「ピー」音が出る。しかし、とても小さく、周囲に雑音があると聞き取れない。
患者の昼食前後はケア度が高いため、看護師と介助員の休憩時間を検討し観察が行き届くようにする。
ECGモニターアラーム設定の検討と、電波切れ表示への意識を高める。
電池残量が少なくなった時の表示のされかたを提示し、電池残量不足のマーク表示から切れるまでの時間が1~2時間であること、その時間は電池や送信機、モニター本体の状態によって変わることを周知した。
ECGモニター上で確認できる「電池交換」の表示と電池残量表示が出たら、速やかに電池交換することを徹底する。また、電池切れを待たず、曜日を決め、定期的に電池を交換する方法を取ることにした。さらにMEによるモニターラウンドを毎週1回実施し、適切にモニタが使用されているか、機器の不具合がないかを確認することにした。
人の記憶に頼らず、時系列で遡った検証ができるように、死角を作らない監視カメラの設置を検討する。
当該事例については、医療機関から医療機器安全性情報報告書が提出されており、また、事故調査報告書(中間報告)が公開されている。
しかしながら、当該人工呼吸器の電源がOFFになっていた原因等の詳細が不明であり検討困難と考える。
また、併用されていた心電図モニタ及び送信機については、報告書によると電池交換マークが見づらい、アラーム音が小さいとのことであるが、当該モニタ本体のログ上には送信機の電池消耗に伴うアラームが発生したことを示す履歴が記録されており、モニタ本体及び送信機に電池交換マークも表示されていたことから、送信機の電池切れについては確認不足であったと考える。
9 障害残存の可能性なし ウエルチアレン喉頭鏡 不明 脳神経外科の全身麻酔下の前処置で、気管内挿管の時3のブレードのサイズが合わず、4のサイズの指示を受け、所定の位置にあったのを忘れ在庫のブレードを取りに行った。ブレードのライトを確認し、医師に手渡した。医師がブレード使用時ライトがつかなかったので確認すると、ブレードの光源の挿入位置がずれていた事に気づいた。点検時、ライトの点灯はチェックしたが、ライトの位置までは見ていなかった。 慌てていた。器具確認の不備。 ブレードの確認はライトがつくかだけでなく、位置が正しいかも毎回確認する。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、また、報告書中の製品の構造は、当該企業が取り扱うものとは異なっており、使用された喉頭鏡の製品名や使用状況等が不明であり検討困難と考える。
10 障害残存の可能性がある(低い) 不明 不明 超低出生体重児。新生児敗血症の治療のため輸液ラインが必要であった。全身浮腫、DICを認め、交換輸血などが行われた。全身状態の改善があり、医師により右手背の末梢ラインが抜去され、固定のシーネやテープが外された。その際、右手第2指の先端が褐色に変色しているのに気づいた。WOC、皮膚科にコンサルトしプロスタグランジンクリームを塗布して血行改善と乾燥防止を図った。レントゲンにおいて骨融解像はなく、指関節、爪床は保持されているが、指先の欠損も予想される。 テープ固定は緩く、スポンジのシーネを使用していた。指先は観察可能な状態に露出していたが、病状の悪化によりテープ等による阻血が起こっていた可能性がある。 刺入部位やラインの観察項目はリストアップされていたが、指先の血行確認は行われていなかったため、新たに観察項目にあげることとした。 テープ等による阻血によって、手背の血行不良となり、指先端が変色したとのことであるが、シーネや末梢ラインの固定方法等が不明であり検討困難と考える。
11 障害なし アロー 中心静脈カテーテルセット(ダブルルーメン) テレフレックスメディカルジャパン
  1. 15時に右鎖骨下よりCVカテーテル挿入。
  2. 穿刺時、Airの吸引なし。
  3. 直後のレントゲン検査では、気胸所見は認めなかった。
  4. 翌日9時~10時 SpO2低下傾向。左側臥位では良好であるが、右側臥位では、SpO2が80台に低下した。
  5. 10:30 胸部レントゲン撮影し、右肺に気胸認めた。
  1. 鎖骨下静脈という、気胸のリスクのある部位を選択した。
  2. 25年前に他院でAVMの手術の際、大量出血し重篤となり中心静脈管理が長期間続く病歴があった。両側鎖骨下に穿刺縫合跡が複数あり、静脈変位等による穿刺困難が予測されたため、血管が太く変位の少ない胸骨寄りの部分を選択し穿刺した。
  1. できるだけ、エコーを用いる。
  2. エコーを用いて上腕の静脈穿刺を試みる。
当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、右鎖骨下静脈からのCVカテーテル挿入後に気胸を認めたとのことであるが、手技等の詳細が不明であり検討困難と考える。
12 障害残存の可能性なし IVカテーテル




インターフレックスCVカテーテル
パイオラックスメディカルデバイス


ニプロ
患者はCVポートの造設予定であったがCVPキットのシースダイレーターの先端がめくれ上がりカテーテルの挿入が困難になった。そこで通常のCVカテーテルを挿入し、カテーテルを一部切断し、ポートへの接続を試みたが口径差があり接続は出来なかった。その為、再度CVカテーテルを挿入する事となり、新しいCVカテーテルを挿入する際、ポートへ接続しようとした先のカテーテルが心臓内に迷入した。
  • 新しいCVカテーテルを挿入する際、先に挿入していたカテーテルを確実に抜去したかを2人の医師間で確認しなかった。
  • CVPキットのシースダイレーターが不良品だった。
  • CVPキットの予備が無かった。
  • 口径差のある他社のCVカテーテルをポートに装着しようと拘った。
  • 手術時は関わるスタッフ間で声を出し合い手順を確認しながら行う。
  • 工業製品には不良品もあるので必ず予備を準備する。
  • 他社製品での代用はしない。
CVポートキット(パイオラックス社)のシース先端のめくれによりカテーテルが挿入できず、他社製のCVカテーテル(ニプロ社)で代替使用を試みたところ、心臓内に迷入したとのことであるが、カテーテルの迷入については手技上の問題と考えられ、モノの観点からは検討困難と考える。
また、CVポートキットのシース先端のめくれについては、企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、返却されたシースにはめくれが確認されたが、出荷時に行われている当該シースの検査記録では問題は認められておらず、事象の発生原因の特定には至っていない。なお、同様事象の発生は現時点までに当該1件のみとのこと。
13 障害なし なし なし 心筋梗塞で治療後A病棟からB病棟へ転入。転入時は興奮状態であったが徐々に安定。翌々日、1時の巡視時は入眠しておりモニター、酸素流量計、DIV投与速度、尿Ba、DIVルートの位置を確認し異常なかったため退室。1時25分、本人から「濡れて冷たいから点滴を確認して」とナースコールあり。他看護師が訪室。患者の背中に3連型三方活栓が下敷きになり、延長チューブと三方活栓の接続部が破損し、逆血によりシーツ、病衣、床に多量出血していた。HR81、Bp98/59、経鼻1LでSPO2 100%、眩暈等の出現なし。Hb7.4のため、日勤帯で輸血2単位施行した。 認知症あり、また入眠中であったため患者本人が危険回避をすることが難しい状況であったため、頻回に訪室をしていた。DIVの側管からはニトロール・シグマートのみの投与であったがA病棟から6連の三方活栓が接続されており、そのままの使用となっていた。 ライン、三方活栓等の確認徹底 3連型の三方活栓を2つ接続して使用していたところ、三方活栓が患者の下敷きになり破損したとのことであるが、使用された製品名や使用状況等が不明であり検討困難と考える。
14 不明:危険性を否定できない バード Xポート ISP メディコン オペ室にてCVポート作成術が行われた。作成術終了後、3枚の胸部X-pを撮影し、肺動脈付近にスタイレット様のものが写り込んでいたが、患者のデッキの下にあったものと思い込み、そのまま作成を終了する。8日後にCT撮影で胸部を撮影したときに肺動脈付近に何かが写っているのを発見する。ポート作成術時のレントゲンと比較し、肺動脈の所に写っているのは、スタイレットではないかと推測された。 ポート作成後、いつもの感覚でスタイレットを抜き、長さの確認ができていなかった。発見にも遅れたのは、ポート作成時にすでに肺動脈内にスタイレットらしきものが写っていたにもかかわらず、患者のデッキの下にあったものが写り込んだと思い込み、確認ができていなかった。スタイレットが途中で切れてしまうということをまったく考えなかった。 スタイレット・ガイドワイヤー等の使用時は終了後の長さの確認を実施する。レントゲン上に不自然のものが写ったなどの異常があった場合は、思い込みにとどまらず、追加の検査等を実施し、早期に異常の発見に努める。 CVポート及びカテーテルの留置後、カテーテルに挿入されていたスタイレットが肺動脈付近に体内遺残しているところを発見されたものである。スタイレット抜去の際に途中で切れた可能性が否定できないが、当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、検討困難と考える。
15 障害なし スワンガンツCCOCEDVサーモダイリューションカテーテル777Hf8


アロー ポリウレタン シース イントロデューサー セット



ステプティ
エドワーズライフサイエンス







テレフレックスメディカルジャパン






ニチバン
12時55分頃 仰臥位で右内頚静脈から留置されていたSwan-Ganzカテーテルとシースイントロデューサー抜去し、2~3分圧迫止血。止血確認後、静脈用ステプティーで穿刺部を圧迫。次に右大腿静脈に留置していたFDLカテーテルを抜去、止血に難渋し、10分程度の圧迫止血を行った。両カテーテル抜去時に患者の状態に変化を認めなかった。
13時33分 Swan-Ganzカテーテル抜去30分後に歯磨き、咳嗽のために坐位になった後に、呼吸状態悪化。看護師から担当医がCallを受けた。診察で、心雑音を認め、急激にSpO2にBP低下したため、上司の麻酔科医師をcall。Jacksonリースで気管切開孔から呼吸補助開始。
13時35分 BP 41/18mmHg HR 76/min、SpO2 80%となり、胸骨圧迫開始。エピネフリン0.5mg iv. 心臓血管外科医師をcall。人工呼吸器に接続。ドパミンを8γで開始。
13時38分 経胸壁心エコーで心室内空気、右心系拡大を認め、空気塞栓の診断。左側臥位、頭低位とした。
13時39分 BP40mmHg台 であり、エピネフリン 0.5mg iv.  
13時40分 BP 66/44mmHg HR 96/min、 SpO2 86% 胸骨圧迫中止。
13時43分 経食道心エコーを挿入。心室内空気(左心系にも認める)、右心系拡大
13時45分 プリセップ中心静脈カテーテルを右外頚静脈に留置。挿入長20cmで一時固定し、Distalのルーメンから血液を吸引し、心室内空気の除去を開始。
13時50分 BP 145/92 HR 174/min、 SpO2 95% DOA 4γに減量。TEEで心室内空気は徐々に減少。Swan-Ganzカテーテル穿刺部を2針縫縮。
13時55分 BGA:FiO2 1.0 pH 7.151 PCO2 42mmHg PO2 407mmHg HCO3- 13.8
BE -14.3 ETCO2 34mmHg
14時10分頃 心室内空気十分に減少したため、中心静脈カテーテルからの空気吸引を中止し、中心静脈カテーテルを挿入長17cmで再固定。
16時 プロポフォールを一旦中止し、意識確認。従命動作、四肢運動問題ないことを確認。
その後、意識状態、呼吸状態問題なく、人工呼吸器離脱。
2日後、ICU退室となる。
空気塞栓の原因として、Swan-Ganzカテーテル、FDL抜去創からの空気の引き込みが考えられるが、部位からすると右内頚静脈に穿刺していたSwan-Ganzカテーテルの抜去創が最も疑わしい。抜去後しばらくしてから坐位をとった時の発症であり、咳や深呼吸時に空気を引き込んだものと考える。
患者は下行大動脈瘤の術後に喘息発作を繰り返し、事故発生前にも喘息の治療目的で集中治療室で治療を施されている。今回も、喘息発作の増悪で、再入室となっており、気管切開を行ない、人工呼吸器管理を行なっていた。事故1日前に呼吸状態が安定したため、人工呼吸器から離脱した。人工呼吸器離脱にあたり、体液バランスをマイナスバランスで管理しており、事故当日は脱水傾向にあった。さらに、咳嗽反射が強く、体交で咳嗽反射が頻発していた。この状態で坐位となったため、空気を血管内に引き込みやすい状態が重なり、循環抑制を来たすほどの空気塞栓が起こったと考えられる。当院の集中治療部では慣例として抜去創に静脈用ステプティを貼付している。
これまで、このような空気塞栓が起こったことは無かった。今回も静脈用ステプティの位置ズレは無かったが、わずかな隙間から空気が引き込まれた可能性は否定できない。
Swan-Ganzカテーテル抜去後に限らず、中心静脈カテーテル抜去後の空気塞栓は本邦でも数例報告されている。その対応方法として、抜去後の創を密封性のドレッシングで覆うことを推奨しており、一部の添付文書でも推奨されている。集中治療部では慣例として静脈用ステプティーの貼付を行っていたが、密封性ドレッシングへの変更を考慮した方が良いかもしれない。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、心室内への空気塞栓については、患者要因等が考えられるとのことであるが、中心静脈カテーテルの抜去創に密封性の低いドレッシング材を貼付したことも要因と考えられ、モノの観点からは検討困難と考える。
なお、当該ドレッシング材の製造販売業者は当該事象を受け、当該製品の使用用途、及び当該製品を中心静脈カテーテル抜去創に使用した際の空気塞栓等のリスクを記載するため、添付文書改訂を予定しているところ。
16 障害残存の可能性がある(高い) 不明 不明 生後7ヶ月の男児に胆道閉鎖症に対する生体肝移植術(麻酔時間12時間55分、手術時間10時間56分)が行われた。手術室入室後、シーネ固定された右足背24Gのルートより麻酔導入した。シーネ固定を解除した際は点滴漏れの兆候はなかった。その後保護目的に綿包帯によって下肢を保護して手術が行われ、終刀後20時25分にルート刺入部を確認したところ、右足背静脈ルート周囲に発赤腫脹を認めたため、点滴抜去した。ICU移動後、直ちに移植外科主治医から皮膚科コンサルトを依頼した。術中はフィジオ140を計167mL投与、一時的に塩化カルシウム計40mLを混注した。 手術は大量出血の可能性もあり、右手、左足に静脈路確保を行った。病棟からの点滴刺入部は、執刀前にシーネ固定解除して確認した。術中は輸液ポンプ並びにシリンジポンプの閉塞圧アラームに注意を払っていたが、アラームは鳴らなかった。途中の点滴部の確認行為は、手術の中断を必要とするため、出来なかった。手術終了後、点滴刺入部を確認したところ、点滴漏れが生じていた。 乳幼児で末梢静脈路確保を複数要する場合は、観察可能な上肢のみならず、下肢の静脈を利用することはしばしばある。ドレープがかかった状態で下肢の点滴刺入部の確認を定期的に行うのは困難が伴う。部分的にドレープ等を利用するなどすることも考えられるが、実施可能かどうかは不明である。そのため、術前診察時に患者及び患者家族に点滴漏れの可能性・危険性に関して十分な説明と了承を得ることも必要であると考える。 血管外漏出を認めたとのことであるが、手技を含めた原因等の詳細が不明であり、検討困難と考える。
17 死亡 なし なし 人工呼吸器管理中の患者、入院時よりJCS:200~300で経過中であった。覚醒を予測して、抑制帯・鎮静をかけていたが、挿管チューブを自己抜去し興奮状態の患者を発見した。発見時は、左の抑制帯がゆるみ自由に動かせる状態であった。再挿管したが心肺停止状態に陥り死亡となった。
  • 抑制帯の緩み
  • 入院時よりJCS:200~300で経過中であったために覚醒を予測した対応不足
  • 抑制時は頻回の訪室と確実な抑制を行う。必要時二人で確認。
  • 鎮静状態の確認を適切に行い異常の早期発見に努める。覚醒による不測の事態を未然に防ぐ行動をとる。
  • 人工呼吸器のアラームを聞き逃さない。
気管チューブが抜けているところを発見したとのことであるが、抜去の要因は抑制及び鎮静を行うも患者が興奮状態となったためとのことであり、モノの観点からは検討困難と考える。
18 障害残存の可能性なし なし なし 人工呼吸器管理中により両上肢抑制中。1時50分、人工呼吸器のアラームが鳴り訪室すると、左上肢の抑制が外れており挿管チューブが15cm程度引き抜かれていた。ただちに当直医に報告し血ガス測定施行。血ガス測定の結果、再挿管となった。 不眠の訴えあり、NS50ml+アタラックスP(25)を投与しており、薬剤の影響下にあった。上肢抑制を継続しており、抑制部に発赤認められたため抑制と上肢の間にタオルを巻き抑制を行っていたが、訪室時はタオルが外れ抑制が緩くなっていた。 抑制に対する手技の徹底を行う。ミトン着用し自己抜去を予防する。 気管チューブが抜けかけているところを発見したとのことであるが、抜去の要因は抑制帯が緩んだためとのことであり、モノの観点からは検討困難と考える。
19 障害残存の可能性なし 不明 不明 鎮静せずに気管チューブ挿管中の患者が激しく首を振っていた。チューブはカフが抜けていて、チューブも抜けかかっていた。直ちに再挿入して気道を確保した。気管チューブのカフがどうして抜けたのか、は不明である。 鎮静は実施していず、両手は抑制していた。ジャバラがつっぱていないし、チューブの固定も問題なし。カフ点検を行ったときにカフのエアが抜けた可能性はある。 挿管時は鎮静と抑制について医師と相談する。スタッフには人工呼吸器の勉強会を行う。 気管チューブが抜けかけているところを発見したとのことであるが、使用された気管チューブの製品名やカフのエアーが抜けた原因等の詳細が不明であり、検討困難と考える。
20 障害残存の可能性がある(低い) パーカー気管チューブ 小林メディカル 全身麻酔下の予定上腹部手術患者(183cm、61kg)に対し、静脈麻酔にて麻酔導入後、筋弛緩モニターを装着した。この時の気道確保にはラリンゲルマスク Flexible type(size4)を使用し、挿入後カフ圧計を用いてカフ圧を調節した。15cmH2Oの気道内圧でリーク出現するため、やや位置の修正を要したが、挿入操作はスムーズであった。その後、筋弛緩モニター下に筋弛緩薬を投与し、十分な筋弛緩状態が得られたことを確認し、ラリンゲルマスクを抜去、喉頭鏡ブレード3で喉頭展開を行った。目視にて声帯が左右差なく開大していることを確認し、内径8.0mmパーカーチューブ先端が声門を通過したところでスタイレットを抜去した。続いてカフが声帯を通過するまで挿管チューブを進めた。この時、特に抵抗はなかった。聴診にて食道挿管及び片肺挿管を否定し、右口角23cmで固定した。カフ圧はカフ圧計を用いて調節し、経口気管挿管を終了した。操作中、バッキングや体動は一切認めなかった。4時間38分で手術は終了し、抜管したところ嗄声を認めた(挿管時間:5時間33分)。術後1週間経っても嗄声が遷延するため、耳鼻咽喉科に診察を依頼したところ、左声帯麻痺を認めた。現在、アデホスコーワ細粒3P3×、メチコバール錠3T3×の内服で保存的に経過を観察中である。 上腹部開腹手術時には開腹鉤(ケント鉤アーチなど)と挿管チューブが接触し、チューブが患者の外側後上方へ牽引されやすい。本件でもケント鉤アーチを使用し、設置時には挿管チューブが牽引されて固定が浅くなっていないことを確認した。しかし、その後の定期的なチューブ固定の確認は行っていない。そのため、術中に挿管チューブが牽引され、固定が浅くなり、カフによる圧迫のため、声帯麻痺を来した可能性はある。終刀直後の胸部レントゲン写真では、チューブ先端から気管分岐部まで4cmほどの余裕があった。高身長患者でもあるため、あと2~3cmほどチューブ固定を深くしていてもよかったかもしれない。 挿管チューブの固定は十分に行い、挿管時だけでなく、術中も定期的に固定の深さを確認する。また、術前の麻酔説明時に気管挿管の合併症として嗄声が起こる可能性について確実に説明しておく。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、気管チューブ抜管後に嗄声を認めたとのことであるが、気管挿管に伴う合併症と考えられ、モノの観点からは検討困難と考える。
なお、当該製品の添付文書には、有害事象として嗄声が記載されているところ。
21 障害残存の可能性なし ハイ・ロー気管内チューブ コヴィディエン ジャパン 食道手術後ICUに入室となった患者。抜管された状態で入室したが、搬送時から呼吸困難を訴えていた。入室時には強い上気道狭窄所見有り。喉頭内視鏡検査を施行したところ、声帯がほぼ正中位で固定しており両側反回神経麻痺の状態。窒息の危険性が高いと判断し緊急で気管挿管施行。
特に問題なく気管挿管手技を終えたが、4時間後、体位変換の後に皮下気腫の出現と胸腔ドレーンからのair leakを認めた。外科当直医に診察していただき、この時点では頸部ドレーン周囲からのairの引き込みと考えられ、頸部ドレーンを再固定(フィルム材の張り替え)したところ胸腔ドレーンからのair leakは消失し、頸部ドレーンからのleakは残存していたものの経過観察となっていた。術翌日、気管切開を施行しようとしたところ気管膜様部に裂創を認め、緊急で縫合術施行となった。11時頃より主治医により気管切開が施行されたが、この際に気管膜様部左側に壁に裂創があることが判明した。
そのため裂創よりも下側に気管切開施行。気管切開後、気管支内視鏡検査を施行した。気管チューブ先端は気管分岐部直上にあり僅かなズレで容易に片肺換気になる状態であったが、膜様部裂創が近い位置にあり縫合を終えるまでチューブの位置はこのままの方針とした。また声帯は昨日同様ほぼ正中位に固定していた。狭窄は前日気管挿管時より強く、両側の声帯が接している状態であった。背側に一部隙間を認めたため、ここから気管内部を観察。第4気管軟骨レベルの膜様部左側に2~3cm程度の縦方向の裂創を認めた。裂創は気切チューブカフの直上まであり。その後、全身麻酔下に膜様部裂創の縫合術を施行された。
  1. 長い手術時間であったため、チューブ交換が途中で行われた症例で有り、麻酔時またはICU入室後の再々挿管時の直接的な損傷。
  2.  1.または術操作に伴い軽微な損傷や膜様部の非薄化があったところに、気管チューブのカフによる圧がかかり裂創となった。
上記1,2が可能性として考えられる。しかし、気管挿管に関しては麻酔時、再挿管時共に抵抗なくチューブを挿入している。またカフ圧はICUでは20~30 cmH2O程度で調節している。術操作で明らかな気管への侵襲はなかったとのこと。
気管チューブの挿入及び留置が原因であると考えられるが、経過を通して手技及び管理に問題点はない。また気管切開時に膜様部裂創が発見されるまで気管支内視鏡検査による確認は行っていないため、いつの時点で裂創が発生したのかについても不明。よって、はっきりした原因はわからない。
緊急性の高い気管挿管で、適応そのものに問題はない。
手技的にも適切な処置を行った結果発生した合併症であり、改善策は特にない。
当事例は強い炎症が元々ある症例で、かつ再々挿管がなされた症例であったため、同様な症例には、今後、緊急性が当事例程無い場合には、気管支鏡などを使用する事で、再発予防・更なる早期発見につながる可能性は考えられる。
当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、気管チューブ抜管後に気管内に裂傷を認めたとのことであるが、裂傷を生じた原因等が不明であり、検討困難と考える。
22 死亡 気管内チューブハイローエバック8mm



グリップ抑制帯
コヴィディエンジャパン





アルケア
患者は、膵臓・腎臓同時移植術後、GVHDのため多量の免疫抑制剤を投与し慎重にテーパリングしていた。数ヵ月後、突然敗血症性ショックとなりICUに入室。原因は肺炎と考えられた。10日後ARDSを併発し人工呼吸器による呼吸管理が必要となった。また、骨髄抑制が強く、感染コントロールが困難な状態であった。翌々日からはCHDFサポートにより循環動態は一旦落ち着いたが、感染のコントロールに時間を要する状態であった。
19時過ぎ家族と友人の面会があり、両側上肢の抑制帯を外した。その後、家族、友人が帰宅し、担当看護師は、両側上肢の抑制帯を再装着した。22時頃、他看護師が当病室で人工呼吸器アラームが鳴っているのを聞き、確認すると、挿管チューブとNGチューブが抜去されており、右上肢抑制帯のマジックテープが完全に外れていた。直ちに近くにいた医師らにより直ちに蘇生処置開始。その後心拍再開認め、気管内挿管を施行したが、翌日永眠された。
鎮静状態は、ラムゼイセデーションスケールSS4~5であった。時にレベルに波があり、抑制帯が緩むあるいは外れるなどすれば、手を口元まで持っていくことは可能であったと考えられる。抑制帯を再装着したかどうかについては、明らかではないが、急変時、左上肢のみ抑制帯が装着されており、右上肢の抑制帯はマジックテープが完全に外れた状態であった。また患者はアイソレーション中であった。予定外抜管時、担当看護師は離れた部屋の1年目看護師の指導にあたっており、その間、他看護師が人工呼吸器のアラーム音を聞いた。その際、別室でのシリンジポンプアラームも聞こえており、当患者はアイソレーション中のためガウンテクニックにより時間がかかると考え、SpO2の値が90台後半であることを確認した上で、まず別室のシリンジポンプアラームに対応した。この間リーダー看護師らはスタッフステーションで患者の申し送り中であった。その後、シリンジポンプアラームの対応を終えた看護師が直ちに当病室に向かい、予定外抜管を発見した。
  • 患者情報の申し送りは、リーダーが病室に出向きベッドサイドで実施するよう統一する。また1年目看護師およびその他の応援などは、リーダー看護師が行うなどの体制を構築する。
  • アラーム対応について、アラームやナースコールが鳴ったときは、自分または他者が対応したことの確認を徹底する。
  • 適正な身体抑制のための組織的な取り組みについては、まず病院内の抑制帯を新しいもの(マジックテープで二重に固定できる改良品)に変更した。抑制帯の装着については、確実に装着できているか、固定紐の遊びは適正か、より詳細な確認を行い、可能であればダブルチェックについても考慮する。部署を離れるときは、抑制帯の装着状態を再確認する。
気管チューブが抜けているところを発見されたものであるが、抑制帯を再装着したか不明とのことであり、モノの観点からは検討困難と考える。
23 不明:不明 不明 不明 副咽頭間稜に腫瘍が認められ、気管切開術、経口下腫瘤生検、腫瘍摘出術施行する。気管口周囲の肉芽や気管内の肉芽の有無、喉頭軟化症の有無、声門部狭窄の有無、嚥下をしやすくすること、創部の観察をすることを目的としてカニューレのサイズ縮小を行うこととした。
その後12:00頃カニューレの交換時に酸素飽和度低下、顔色不良、刺激反応性低下を認めた。また状態悪化時に患者の母親立ち会っていたこともあり、両親の児に対する不安の訴えは非常に強い。
喀痰により気管閉塞(処置前の吸引が不十分な可能性)または声門部狭窄残存または気管軟化症の存在が考えられるが、呼吸困難の原因は不明。 小児では過度な吸引により気管粘膜障害や、気管支痙攣誘発の可能性もあり、吸引を必要以上に行うことはかえって危険性が増す可能性はあるが、それでも吸引を丹念に行うよう配慮する。再度呼吸困難があっても、家族に不安感、精神的苦痛を与えないような工夫(処置中は席をはずしてもらう)や呼吸困難が生じた際の状況を第3者にも把握してもらう、など傷病発生後の対応に対策を立てる必要がある。 気管切開チューブ交換時に動脈血中酸素飽和度が低下したとのことであるが、喀痰による気管閉塞等の可能性や患者要因が考えられるとのことであり、モノの観点からは検討困難と考える。
24 障害なし サクションエイド


ファイコンGB気管切開チューブ

ミニトラック
スミスメディカル・ジャパン

富士システムズ



スミスメディカル・ジャパン
11:50ファイコンGB気管切開チューブ(内径8.5mm 外径11.7mm)カニューレ交換実施のため挿入されていたサクションエイド(内径8.0mm 外径11.5mm)抜去した。ファイコンGB気管切開チューブ内径8.5mmの挿入は、挿入時抵抗性が強く時間がかかり呼吸器を装着したがパルスオキシメトリー値の低下が見られた。12:10緊急呼び出しコールを実施する。経口より気管内挿管チューブを挿入するが、パルスオキシメトリー値の改善はなく気管支鏡を実施し気管内挿管されていないことが判明し抜管した。12:20気切孔よりミニトラックを挿入し呼吸状態が改善された。15:00頸胸部周囲の状態確認のため、CT検査を実施する。16:45パルスオキシメトリー値が再度低下しミニトラックから血性コアグラが吸引された後に改善する。17:30ミニトラックの閉塞が危惧されファイコンFR-30への交換を行った。
  1. 気管カニューレ交換時の気道確保姿勢の保持ができていなかった。
  2. あらかじめチューブ交換が困難だと予測される場合は、複数の医師で処置を実施する。
  1. 気管カニューレ交換時の気道の確保のため肩枕を挿入し頸部を伸展させた体位下で介助する。
  2. あらかじめチューブ交換が困難だと予測される場合は、複数の医師で処置を実施する。
当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、気管切開チューブ交換時に新しいチューブが挿入できなかったとのことであるが、挿入困難となった原因等が不明であり、検討困難と考える。
25 障害残存の可能性がある(低い) 気管切開チューブ 日本コヴィディエン 当事者看護師が午前中バイタル測定を行ったときは、酸素飽和度は96%あり、トラキオソフトエバックの狭窄音等異常は認められなかった。閉鎖式吸引も普通に挿入され、11時までに2度淡黄色粘稠痰を中等量吸引していた。経管流動食及び内服薬投与の際も、患者に変化はなかった。12時半前に胃ろうチューブをはずした看護師も異変には気付かなかった。そのため12時半に休憩に上がり、その間交代する看護師に特に何も申し送りはしなかった。
当事者看護師が休憩中の13時頃、代わりに吸引に訪れた看護師が浅表性の呼吸とやや顔色不良を発見した。閉鎖式吸引からすぐに吸引を実施しようとしたところ、カニューレ挿入困難があり断念する。トラキオソフトエバックのカフのエア抜きをし、口腔・鼻腔から吸引を実施した。酸素飽和度はその時76%を示していた。同僚看護師の応援を呼び、ヌルゼリーを使用して気切部から吸引を実施したところ挿入可となり、かなりの粘稠痰が多量ひけた。患者は酸素飽和度98%まで上昇し意識もはっきりとしてきた。その後当直医来棟し新しいトラキオライフエバックに交換した。
交換後当事者看護師が引き継ぎ、バイタル測定等行うが発熱や酸素飽和度の低下もなく異常は見られず経過した。
患者は発熱のため絶食になり、その後経管流動食が再開になっていた。酸素1L投与中。痰が多く適宜の吸引と時間は決まっていないが随時ネブライザーをかけていた。当日午前中は口腔ケア等に時間を要してしまいネブライザーをかけなかった。粘稠性であったが通常のように吸引できたため、ネブライザーは午後で良いと考えた。天気がよく正午近くになってカーテンはしていたが、ベッドサイドに陽が差し込み乾燥していた。 主治医報告後ネブライザーに使用する薬剤を処方してもらった。気管切開をしており粘稠性痰の患者には、トラキオライフを使用する。夜間21時‐6時までの間夜勤者が洗面台にお湯を随時みながらはっていく。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、吸引カテーテルが挿入困難であったとのことであるが、患者要因をはじめとする様々な要因により喀痰の粘稠度が高まった可能性が考えられ、モノの観点からは検討困難と考える。
26 障害残存の可能性なし カンガルーPEGキット 日本コヴィディエン 胃ろう増設術施行。1週間後11:00看護師2名で全身清拭を実施した。左手が活発に動くため、胃ろうチューブを抜かれないように他看護師に患者の左手を持って体幹を支えるよう伝えた。清拭後、腹帯をしようとした時、他看護師が持っていた患者の左手が離れ、胃ろうチューブを引っ張り自己抜去した。11時30分主治医に報告し、吸引用ネラトンカテーテル18Frを挿入した。その後、内視鏡下にてマイクロボタン20Fr.を挿入した。
  1. 腹帯交換時、左手の保持が不十分だった。
  2. 他看護師に患者のADLの状態を詳細に伝えていなかった。
  3. ミトンを装着していなかった。
  1. ケアを行う時は、看護師間で患者の情報を共有し実施する。
  2. ケア時でも左上肢の動きの程度によりミトンを装着する。
清拭中に患者が胃瘻チューブを自己抜去してしまったとのことであり、モノの観点からは検討困難と考える。
27 障害なし 膀胱留置カテーテル 不明
  1. 訪室すると安全具が全て外れ、点滴ライン・膀胱内留置カテーテルが抜けているのを発見する。
  2. 膀胱内留置カテーテルの先端がちぎれた状態でベッド上にあった。
  1. 体交開始時には半覚醒しており、安全具を外してしまう可能性があった。
  2. 安全具を手で触れて確認しなかった。
  3. 抑制帯の外れやライン類の抜去につながる危険予知が不足していた。
  1. 安全具の適切な使用と確認を行う。
  2. 危険予測した対応と、眠れない患者の思いを理解し、患者の立場に立った対応をする。
点滴ライン等が抜けているところを発見されたものであるが、抜去の要因は患者が安全具を外したためとのことであり、モノの観点からは検討困難と考える。
28 障害なし 膵管チューブ4Fr 秋田住友ベーク 膵頭十二指腸切除術の際に胆管空腸吻合部の胆管に挿入されたチューブ(膵管チューブ、4Fr、住友ベークライト)が、翌月の抜去時に断裂し、2センチ程度体内に残存した。当院では、膵管チューブを胆管内に留置する(転用)をよく行っている。これは、RTBDチューブの最小径でもまだ太く、より径の細いチューブが必要なためである。膵管チューブにはコブがついているため、そのコブを含む遠位端を切り取ってから残ったチューブに側孔を開けて使用している。今回の断裂部位が側孔部に位置するかどうかは不明(チューブを廃棄したため)。現在タイミングをみて抜去予定。
その後に関係各科(肝胆膵・移植外科、消化器内科、感染制御部、医療安全管理室)が協議し、術後急性期に抜去術を行うことはかえって危険であると判断した。その上で、術後3か月後の時点でCT検査を行い、残存部位を確認の上、内視鏡的に抜去することになった。以上の方針を担当医から患者に伝え了解を得た。
膵管チューブは本来遠位から3センチの位置にコブがついてあり、コブより遠位に5カ所の側孔が開いている。ただし、このチューブを胆管に留置する際にはコブによる胆管の損傷を懸念するために、コブよりも近位(体外側)で切断し、その上で、遠位に2カ所の側孔を術者が開ける(当院で標準的に行っている)。この部分は脆弱になるリスクがある。     
この点については、住友ベークライトは、チューブに傷をつけることは添付文書にも警告しているように推奨しないとコメントをしている。また、住友ベークライトによると過去にはチューブ断裂の報告があったが、現在の形状に変更してからは報告を把握していないとのことであった。
体内遺残があった際には、証拠となる医療器具の保全を徹底する(体内遺残の対応についてのマニュアル通りに行動する)。原因の検証を行えるようにする。また、リスクマネージャー委員会等で周知した。 当該事例については、企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、当該カテーテル抜去時に断裂したとのこと。当該カテーテルは、当該医療機関において切断及び側孔の作成等の加工を施したものであり、加工したことが断裂の原因と推察されることから、モノの観点からは検討困難と考える。
29 障害残存の可能性がある(高い) ゴアテックスEPTFEグラフトⅡ


ヘパリン化カニューレ 経皮的挿入用カニューレ 送血用
日本ゴア




東洋紡
経皮心肺補助装置の脱血用カテーテルは右大腿静脈より右心房まで挿入されていた。送血路は、右大腿動脈に人工血管が端側吻合で逢着され、人工血管に経皮心肺補助装置の送血カテーテルが深く挿入されて、太い糸で3重に結紮固定されていた。脱血用ならびに送血カテーテルは、鼠蹊部の皮下トンネルを通して体外へ誘導され、経皮心肺補助装置本体へ繋がっていた。皮下トンネルを出た部分で、大腿の皮膚に縫合固定され、さらに強固な皮膚テープにより大腿部皮膚に固定されていた。経皮心肺補助装置の人工肺の劣化(通常、耐用期間は3~5日程度)が認められたため、人工肺交換(経皮心肺補助装置を一時的に停止・遮断して、体外の脱血路および送血路を切断して新しい機械の回路に再接続する作業)を予定していた。準備中に左鼠蹊部からの出血がみられた。
人工血管が留置してある鼠蹊部の皮膚縫合部を切開したところ、左大腿動脈に逢着した人工血管と、経皮心肺補助装置送血用カテーテルとの接続部からの出血であることが判明。経皮心肺補助装置を一時的に停止して再接続を行った。経皮心肺補助装置停止時間は7分であった。移植肺機能不全の状態にあったため、この間、血圧低下から心停止に至り、4分間の心臓マッサージを要した。経皮心肺補助装置を再開後は速やかに血圧は回復した。このエピソードの直後に瞳孔散大がみられたが、1時間程度で正常に回復した。脳浮腫予防のため、ステロイド大量投与を開始した。
頻回の体位ドレナージにより、接続部がわずかずつずれたことが出血の原因と考えられた。その後も瞳孔に異常は見られなかったが、このエピソードの4日後に突然瞳孔が散大し死亡に至った。長期にわたる心肺補助装置による体外循環のため、出血傾向が認められ、死因の可能性としては脳出血の可能性が最も高いと思われた。なお、CTやMRIによる画像診断を行える状況になく、病理解剖の承諾を得られなかったことから、死因の確定は不可能であり、本事故と死亡の直接的な因果関係はないと考えている。
患者は移植肺機能不全のため、経皮心肺補助装置装着を余儀なくされていた。移植肺機能不全と、術前から合併していたと思われる左心不全のため極めて厳しい病状であった。このような状況での腹臥位の体位ドレナージは、循環動態の変動の危険性があり、また心肺予備能が極めて小さい状況のため人工呼吸器回路、経皮心肺補助装置回路にたとえ短時間でもトラブルがあった際には重大な障害につながる危険性がある。しかし、移植肺の背側には広範な無気肺が存在したため、腹臥位の体位ドレナージなしでは経皮心肺補助装置装着からの離脱、ひいては救命が困難な状況であった。このため、循環変動や医療機器の回路のトラブルの危険性などをご家族に十分説明した上で、体位ドレナージ施行に踏み切った。 危険を伴う踏み込んだ医療手技を施さなければ救命出来ないと考えられる重症患者に対する処置中の事故である。今回の事例に対する抜本的な改善策としては、人工血管に接続する送血用カテーテルに結紮糸に対応する溝を作ることや、脱落防止のための山を作ることなどが考えられる。既製のものでこのような構造のものはなく、用いるとすれば特注品となる。カテーテル強度との兼ね合いなどの問題があり、すぐに実現できるかどうかは未確認であるが、今後検討していきたい。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、PCPSの際に送血カニューレと自己血管の間に人工血管を接続し、糸で結紮固定していたところ、接続部から血液が漏れたとのことである。当該事例は、頻回な体位ドレナージにより、結紮固定が徐々にずれたものと考えられるとのことであるが、人工血管とカニューレの接続は適用外使用であり、モノの観点からは検討困難と考える。
30 不明:経過良好だが意識が無いため不明 BD インサイト 日本ベクトン・ディッキンソン 16:20頃右肘静脈ルート留置し、5%アルブミナー全開投与、17:30頃50ml/hで投与継続、19時と21時にルート刺入部の観察時異常なし。血圧不安定で経過し脱水の判断で医師からビカーボン投与の指示を受け、5%アルブミナー投与中の右肘静脈ルートにビカーボンをつなげた。自然滴下確認し21:40頃1000ml/hで投与開始、21:50頃上肢保温の為の温枕交換した際右上肢の観察を行うが異常なし。22:30頃心エコーのため患者の寝衣をめくった医師が右上肢の腫脹を発見し、直ちに投与中止し静脈ルートを抜去。右前腕~右肩が腫脹し緊満が強く右手首より末端は色調不良、右橈骨触知・ドップラーでの血流確認不可。形成外科医師により、コンパート症候群にて右上腕尺側側を筋膜まで約20cm減張切開となった。 輸液投与を開始した際に自然滴下を確認していたこと、投与開始数分後に上肢の以上はなかったことから、その後静脈ルート刺入部の観察の間を空けてしまったために発見が遅くなった。また、上肢末端保温のためにバスタオルで上肢を覆っていたことも、異常の発見が遅れたことにつながった。
  • 観察
  • 末梢静脈からの投与時は血管の選択に留意する
  • 今回の事例をカンファレンスで共有する
血管外漏出を認めたとのことであるが、手技を含めた原因等の詳細が不明であり、検討困難と考える。
31 障害残存の可能性なし 不明 不明 体重3100gの患児の動脈ライン管理中。Hb12.3から9.4へ低下したためライン確認したところ、動脈ライン刺入部の接続部が外れており、約150mlの出血を認めた。血圧60台まで低下し、HR190台まで上昇あり、輸血(約110ml)が実施された。 体動後、処置後、休憩後には、ルート確認することになっていたが、体位を整えただけで刺入部の観察を怠った。バイタルアラーム時も呼吸状態のみのアセスメントとなり、全身の観察ができていなかった。 ライン確認のタイミング(申し受け直後、体重測定・体交保清などの処置後、体動が激しいとき、出棟時、休憩後等)を手順として、再度継続し周知徹底する。その後、各チームリーダーのもとで実施監査を行う。カンファレンスで電子カルテにイベントを記録していく。 動脈ライン刺入部の接続が外れたとのことであるが、使用された留置針等の製品名や使用状況等が不明であり検討困難と考える。
32 障害なし ハイロー気管内チューブ コヴィディエン ジャパン バイタルサイン測定時鎮静下RSSレベル2程度、開眼、自己体動なし。臀部除圧し両手抑制確認後、氷枕作成のためベッドサイドを離れる。約1分後、他看護師がベッド上で四つん這いに近い体制で起きあがり挿管チューブが抜去されている患者を発見する。来棟していた医師と共に制止。鎮静増量し再挿管する。 鎮静剤持続注入下、体動が消失するほどの鎮静が保たれていたが除圧時の刺激で覚醒した可能性が考えられる。
右手の抑制帯が外れていたが、抜去されたチューブは患者の左側にあったこと、又、チューブ抜去時の血液飛散が右手にはついていなことから起きあがり時に抜けたと考えられる。
鎮静開始から数時間であったため体位交換刺激後はしばらくベッドサイドで覚醒の有無を確認すべきだった。緊急入室により、他メンバーが多忙となっていたため声掛けするのがためらわれたが、一声かけるべきであった。39.4℃の熱発に対して保冷を優先させたが他メンバーが見守れる迄待つべきだった。 気管チューブが抜けているところを発見したとのことであるが、患者が覚醒し、起き上がったことにより自己抜去に至ったものであり、モノの観点からは検討困難と考える。
33 障害残存の可能性なし 不明 日本コヴィディエン 便失禁を認め、シーツの汚染があたっため、他看護師にシーツ交換を依頼し、当事者は他の患者対応のため一旦病室を離れた。
22:05 シーツ交換をしようと他看護師が訪室したところ自己抜管している所を発見した。
主治医にて再挿管となった。
鎮静が不安定な状態であったが、観察に十分な時間をかけず病室を離れてしまった。一旦上肢の動きが止まったことで鎮静が十分であると判断してしまった。 挿管中の患者の鎮静評価を適切に行う。
自己抜管の可能性がある場合は患者の側を離れない。
挿管中の患者の抜管リスクを予測、アセスメントする能力を養う。
自己抜管したところを発見したとのことであるが、抜去の要因は鎮静が不安定であったためとのことであり、モノの観点からは検討困難と考える。
34 障害残存の可能性がある(高い) メラ ソフィット クリア 泉工医科工業 僧帽弁形成、三尖弁輪形成術施行し術後右肺水腫、肺炎により気管切開とし呼吸管理中であったが、気切チューブが痰により閉塞し心停止に至った。心臓マッサージを開始し、気管カニューレを交換し、心拍再開した。 詳しい要因は不明だが、夜間を通して落ち着きがなく咳と排痰動作を繰り返しており深部から痰が上がってきて閉塞に至った可能性がある。 患者の状況を予断を持たず注意深く観察する。 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、気管切開チューブが喀痰により閉塞したとのことであるが、喀痰の状態や吸引の状況等が不明であり、検討困難と考える。
35 障害なし メラソフィットフレックス 泉工医科工業 酸素1Lにて経過していたが、前日夜間より酸素化の低下がみられた。酸素流量を上昇させながら、呼吸状態を観察していたが、朝方6時頃よりSPO2の低下がみられた。カニューレ交換日を確認すると、1か月以上交換されていないことがわかった。7:50主治医に報告し、ファイバーにて痰を吸引したあと、カニューレ交換、人工呼吸器装着となった。 通常気管切開後、初回交換日を電子カルテに指定するが、その入力がなされていなかった。交換実施について、主治医と十分調整できていなかった。 交換日を確実に電子カルテ上に入力する。
病棟の週間業務に併せて曜日を決定した。
マニュアルのカニューレ交換の項目に、交換の間隔について追加した。
当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、気管切開チューブが喀痰により閉塞したとのことであるが、喀痰の状態や吸引の状況等が不明であり、検討困難と考える。
36 障害残存の可能性なし トラキオソフトエバック コヴィディエンジャパン
  1. 気管切開、簡易式人工呼吸器管理中。
  2. 会話は理解するが指示には応じない。
  3. 体動激しかったため、四肢を抑制。体幹抑制はせず。
  4. 21時30分 巡回時確認。
  5. 21時50分 ベッド上で体がずれており、抜去を発見。

     
  1. 患者との意思の疎通は図れたので、四肢のみの抑制で抑制可能と判断し、体幹は未抑制。
  1. それまでの患者の状態からは想像し得なかった行動で発生した事例。
  2. 患者のADL向上を考慮したうえでの抑制の判断は難しい。
気管切開チューブが抜けているところを発見したとのことであるが、抜去の要因は患者が想像しなかった行動をとったためとのことであり、モノの観点からは検討困難と考える。
37 障害残存の可能性なし トラキオソフト コヴィディエンジャパン
  1. 気管切開術後10日目、当該病棟へ転入。インスピロン流量中。
  2. 他病棟で2回自己抜去歴あり、両上肢抑制。両手ミトン着用。
  3. 同日21時20分、チューブと蛇管の接続部外れ発見し再接続。抑制帯を巻き直す。
  4. 22時15分、気切部より抜去を発見。

     
  1. 中途半端な抑制。
  1. 抑制が必要なときは、中途半端にせず徹底的に抑制する。
  2. 抑制方法の再検討。
気管切開チューブが抜けているところを発見したとのことであるが、抜去の要因は抑制が不十分であったためとのことであり、モノの観点からは検討困難と考える。
38 障害残存の可能性なし カンガルーPEGキット 日本コヴィディエン 8時30分頃リハビリのため両手のミトンを外し、リハビリを実施。9時頃リハビリが終了し、リハビリ担当者がミトンを装着した。10時50分、病室を訪室すると、両手ミトンは窓枠に並べて置いてあり、右手で腹部を触っていた。胃瘻チューブは抜去され、ベッドの上に置かれているところを発見した。すぐ主治医に報告し、14Frネラトンカテーテルを挿入し、テープで固定した。11:00消化器医師にて内視鏡下に胃ろうボタン型バルーン(20Fr 3cm)を挿入した。
  1. 約1週間前より両手の動きが活発になってきており、自己抜去の可能性があった為、両手にミトンを装着していたが、リハビリ終了後、再装着した際の確認が不十分であった。
  2. リハビリ担当者からリハビリ終了時、看護師への連絡がなかった。
  3. リハビリ担当者にミトンの必要性や装着方法について伝えていなかった。
  1. 患者の状況を観察し、自己抜去の危険性についてアセスメントする。
  2. リハビリから帰室した時には、リハビリ担当者はミトンを装着し、看護師に知らせるよう依頼する。その後、担当看護師はミトンが確実に装着されているか確認する。
  3. 自己抜去の危険性を最小限にできるよう、抑制をしている患者については、リハビリ担当者と定期的に情報交換する。
胃瘻チューブが抜けているところを発見したとのことであるが、抜去の要因はミトンの装着が適切でなかったためとのことであり、モノの観点からは検討困難と考える。
39 障害残存の可能性なし 不明 不明 胃瘻交換の際にチューブ抜去時に、胃内の食残渣、胃液とともに少量の出血を認めたため、皮膚とチューブの羽の部分にガーゼを挟み、ガーゼに血液がにじんでこないことを確認し終了した。同日夕方、患者が吐血していることに家族が気づき当院に受診。緊急内視鏡を施行したが、内視鏡時は活動性のある出血は認めなかった。 なし 胃瘻交換は、透視下または内視鏡下で今後必ず行う。 胃瘻チューブ交換後に吐血したとのことであるが、吐血の原因等の詳細が不明であり、検討困難と考える。
40 障害残存の可能性がある(低い) シラスコン硬膜外ドレナージセット カネカ 腹式単純子宮全摘出を実施するにあたり術直前に、手術台にて術後の鎮痛目的で硬膜外カテーテルを挿入した。挿入においてはスムーズで特に問題はなかった。日曜日10時、術後の経過もよく、予定通り休日当番医が、硬膜外チューブを抜去した。抜去時も何かに引っかかる感覚も無くスムーズに抜去出来た。しかし抜去直後に刺入部から出血があったため、綿球で圧迫し止血を確認した。10時10分、腹部のしびれ感が出現し、10時15分、刺入部の痛みを訴えた直後に嘔吐した。10時30分ごろから「触っている感じがしない」患者の訴えがあり両下肢の自動運動ができない状態になった。当番医の診察の結果、両下肢の完全麻痺を確認した。麻酔科医師、主治医に報告した。14時には麻痺と知覚はやや改善が見られていた。14時30分整形外科医師へ診察を依頼し、MRIで広範囲な血腫を確認した。足趾・足関節運動は弱いが可能、膝立は出来ないが筋力に左右差は無かった。17時には膝立が可能になったため、ステロイドパルス療法を開始し翌日まで経過観察とした。しかしながら、それ以上の改善がないため、12時より脊椎硬膜外血腫除去術、椎弓形成術、自家骨移植術を実施した。 術後の経過は順調で自立歩行まで回復している。 このままリハビリを続行し日常生活に支障のない程度までの回復は可能と考える。 当院では3年前にも同様のアクシデントが発症し、術前の説明には確率的には非常に少ないが重篤な合併症として説明をすることとした。
麻酔科・整形外科・婦人科医師及び医療安全部で今回の原因と対応について検討した。
原因については、挿入時も抜去時もスムーズに違和感なく操作されている。硬膜外血腫の起こる確率は文献によって1万例に1例とする報告もあるが、多くは10万例に1例とされるほどまれな合併症である。また挿入時よりも抜去時に血腫が出来るとされる文献が多い。肥満患者の術後の肺血栓塞栓症発症率は1000分の3と高く、硬膜外麻酔で除痛することでリスクは回避できるとされており、確率的には硬膜外麻酔の選択は現患者には正しかった。
また、症状出現後は、迅速な対応で、休日ではあったがMRI撮影を実施し、3診療科の連携で重篤な障害を回避できた。
抜去後の出血の有無と1時間以内の神経症状出現の有無について、看護師ふくめ密に観察を行い早期対応をする 当該企業に確認したところ当該事例と考えられる事象は情報入手されておらず、当該カテ-テルの抜去後に硬膜外血腫を生じたとのことであるが、使用状況や発生原因等の詳細が不明であり、検討困難と考える。
41 障害残存の可能性がある(低い) 不明 不明 持続硬膜外カテーテル治療中、持続注入器の接続部分が外れているのが発見された(薬液注入・患者装着時には異常なし)。発見時、薬液がかなりの量ベッドの上に漏れており、看護師が消毒(酒精綿)し再接続したが、感染はこの当時より発生したものと思われる。また、患者側の要因で、自発症状の判定(検索)に多少難渋することも多かったため、確定診断までに時間を要した。 事故の内容参照 硬膜外カテーテルの長期留置による事故を経験したことがなく(医師免許取得以後)、「カテーテルの中途断裂」「はずれ」も幾多経験したが、接続部の消毒のみで感染は予防されていた。今回、過去の判例・事故報告を鑑み、長期的なカテーテル管理と感染症予防のための対策に積極的に取り組まなければならない。また、コメディカルチームにも周知徹底に心がける必要がある。 硬膜外カテーテルと持続注入器の接続が外れたとのことであるが、使用されたカテーテル等の製品名や使用状況等の詳細が不明であり、検討困難と考える。
42 障害残存の可能性がある(高い) 不明 不明 サクションドレンは、11時に抜去した。サクションできた血腫は、総量530ml、抜去前24時間では20mlの増量であった。腰痛はあるものの、離床可能であったため、翌10時に尿カテーテルを抜去し、トイレまで介助見守り歩行を許可した。
17時10分頃に病棟の看護師から尿カテーテル抜去後から排尿が全くなく、尿意はあるものの、自排尿出来ないとの報告をA医師が受けた。17時30分に神経学的所見をとったところ、徒手筋テスト上、下肢筋力は全体的に1段階の低下があり、肛門括約筋の自動収縮はあるもののやや弱い印象であった。術後硬膜外血腫による尿閉の可能性があると考え、18時16分に臨時MRIで術後硬膜外血腫により硬膜管が高度に圧迫されており、このために尿閉が生じている可能性が高いと考えられた。
18時30分から18時50分までの間、患者の配偶者と長女へ、「今朝から術後硬膜外血腫による麻痺症状、下肢筋力低下が出現し、尿カテーテル抜去後に尿が出せないことがわかった。初回手術後に血腫がたまらないような管を入れていたが、これは長期間入れておくと感染の危険性もあり、本人は糖尿病もあるため、他の患者よりその危険性も高く、2日で抜いた。排尿障害は回復しづらい神経障害のひとつなので、臨時手術により血腫除去し、出血点がわかれば止血し、神経の圧迫をとりのぞくことをおすすめする。しかし、排尿障害は残存する可能性があり、血腫の原因としては、元々の肝疾患もあり出血の合併症が生じやすい可能性があり、現在の状態をそのままにしておくことは望ましくない。」と病状ならびに手術説明を行った。ご家族は血腫除去術を希望同意した。患者本人にも同様の話を伝えて、手術希望を得た。22時15分全身麻酔下に血腫除去術の執刀を開始し、23時55分に手術を終了した。明かな出血点はなかったものの、硬膜外腔に凝血塊を認め、硬膜管は強く圧迫され、変形していた。血腫を除去することで硬膜は膨隆し、除圧しえた。
患者側の因子として肝硬変、医療行為上の因子として初回手術時のドレナージ不全、サクションドレン抜去後の活動性増加に伴う創内出血量の増加などが考えられる。 サクションドレンチューブのミルキング、サクションドレンチューブ抜去後の活動性を徐々にあげていくことなどが改善策として案が考えられている。 当該ドレナージカテ-テルの抜去後に硬膜外血腫を生じたとのことであるが、使用状況や発生原因等の詳細が不明であり、検討困難と考える。
43 障害残存の可能性なし 不明 不明 5:47 呼吸器の警報で訪ねると、カフが入ったまま自己抜管されていた。左手の抑制がしてなかった。SPO2が80台のため、2人でバックバルマスクで主治医を待った。6:20に主治医が来て、自分とC看護師が付き、6:25再挿管になった。 5:03に体位交換をしている。座布団の下に左柵に縛ったままの抑制帯があった。自分が勤務に入ってから1時間毎訪室のたびに、患者は閉眼していたが柵を叩いて、時々外して欲しいと口を動かしていた。抑制帯を外すとすぐではないが、鼻に手がいき、絆創膏をいじる仕草もあった。鎮静を増やすと血圧が下降し、両日は同じ量で鎮静していた。他の2人の看護師にも情報を伝え、きちんと抑制しないと危ないという認識はあった。他の2人の看護師は体位交換とか、処置に声をかけてくれたが、一人で体位交換していた。主任に5時の体位交換の状況を振り返るよう言われたが、左手を抑制したか、体位交換の最中に他の処置をしなければならない状況だったか思い出せなかった。 体位交換は2人でし、他の看護師にも確認してもらう。声に出して抑制する。抑制を外したら、すぐ抑制する。 気管チューブが抜けているところを発見されたものであるが、抑制を実施したか不明とのことであり、モノの観点からは検討困難と考える。