18 <該当論文> PubMedはこちら <背景> 甲状腺機能亢進症の治療薬として使用されているチアマゾール(以下、「本剤」)に関して、重大な副作用として、無顆粒球症を含む顆粒球減少が現れることが知られている。本剤による顆粒球減少の早期発見及び重篤化の予防を目的として、本剤の投与時には定期的な血液検査(投与開始後2か月間は2週に1回、それ以降も定期的に検査をすること。)を実施し、顆粒球数の減少傾向を確認するよう注意喚起されてきた。しかしながら、本剤投与後に重篤な顆粒球減少を発現した症例が一定数報告されていたため、注意喚起の内容の適切性を検討した。 <概要等> PMDAが管理・運営している医療情報データベースであるMID-NET®を用いて、本剤処方患者を対象に定期的な検査の実施状況と顆粒球減少の発現状況の関連を評価した。MID-NET®には好中球数を含む様々な臨床検査の結果値が含まれており、各種調査に利用することが可能である。そこで好中球数 1,500 /μL以下を顆粒球減少の発現と定義し、本剤処方患者のうち定期的な検査を実施している患者とそうでない患者における発現状況を比較し、定期的な検査を実施することで顆粒球減少の発現傾向が減少しているかを評価した。その結果、定期的に検査が実施されていた集団であっても、顆粒球減少は一定程度発現しており、その割合は検査を実施していない集団と比較して必ずしも低い傾向は認められず、定期的な血液検査の実施が必ずしも顆粒球減少の早期発見や重篤化の防止に寄与しているという知見は得られなかった(次ページの表:性・年齢調整オッズ比等参照)。この背景として、定期的に検査を実施している患者は、そうでない患者と比較して、顆粒球減少の危険因子を有している等により、検査実施の必要性が高かった集団である可能性が考えられた。 から顆粒球減少の発現日にかけて、好中球数が徐々に減少する傾向が認められた。したがって、一部の患者においては、定期的な検査の実施により顆粒球減少の発現傾向を早期に把握できる可能性が示唆された。 本調査結果から、定期的な検査が顆粒球減少の早期発見や重篤化の防止に寄与しているという明確な知見は得られなかったものの、一部の患者においては顆粒球減少の早期発見及び重篤化の予防につながることが示唆された。このため、注意喚起として一定の意義はあると考えられた。 医薬品安全対策第一部 木下裕貴 Kinoshita, Y., Kajiyama, K., Ishiguro, C., Nonaka, T., Kimura, R., Kikuchi, Y., Horiuchi, N., Iguchi, T. & Uyama, Y. Characterizing granulocytopenia associated with thiamazole in patients with hyperthyroidism based on real-world data from the MID-NET® in Japan. Clin Pharmacol Ther 113, 924-31 (2023). 10.1002/cpt.2850 一方、本剤の処方開始後43~56日目の期間(Period 4)に顆粒球減少が発現した集団では、本剤の新規処方開始日チアマゾール処方中の甲状腺機能亢進症患者に生じる 顆粒球減少の特徴:MID-NET®を活用した薬剤疫学調査
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