21 <該当論文>PubMedはこちら <背景> 2020年から2022年の間に角膜上皮幹細胞疲弊症*に対する再生医療等製品3品目(ネピック、オキュラル及びサクラシー)が本邦で相次いで承認された。同一の眼科疾患に対し複数の細胞加工製品が承認されたのは世界初である。そこで、規制当局の立場から、各品目の審査時の論点を横断的に整理し、再生医療等製品の臨床開発の現状と展望を国際的に発信することとした。 <概要等> 3品目はいずれも患者自身から採取した細胞を用いてシート状に培養した製品であるが、ネピックの原料は自己角膜輪部組織由来細胞、オキュラル及びサクラシーの原料は自己口腔粘膜組織由来細胞であり、サクラシーはヒト羊膜を基質として用いている。また、難治性の希少疾患である角膜上皮幹細胞疲弊症に対し、ネピック及びオキュラルは角膜組織の再建を目的に開発された製品である一方、サクラシーは角膜上皮幹細胞疲弊症に伴う癒着に対する治療を目的に開発された製品である。以上の品目特性や使用目的の差異を踏まえた上で審査した結果、品目により異なる適用対象が設定された(次ページの表参照)。 再生医療等製品の開発は、治療方法や適切な評価項目が確立されていない希少疾患等を対象として行われることが多く、参考になる事例が限られている。そのため、通常の医薬品開発とは異なり、開発段階から審査に至るまで、様々な未知の課題を手探りで解決しなければならず、適切な開発を促進するためには、開発早期から開発者と規制当局とで科学的な議論を継続的に実施していくことが重要と考えている。 再生医療製品等審査部 野田慎一 * 角膜上皮幹細胞の障害が原因で角膜が結膜上皮や結合組織で覆われ、視力低下や眼表面の癒着を来す疾患。既存療法である角膜輪部移植ではドナー角膜の不足、高い侵襲性等の課題が知られています。 Aketa, N., Kasai, M., Noda, S., Asano, J., Kunieda, A., Kawanishi, S., Maruyama, Y. & Honda, F. Insights into the clinical development of regenerative medical products through a comparison of three cell-based products recently approved for limbal stem cell deficiency. Ocul Surf 29, 220-5 (2023). 10.1016/j.jtos.2023.05.008 角膜上皮幹細胞疲弊症に対して承認された細胞治療製品3品目の 比較を通じた再生医療等製品の臨床開発に関する洞察
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