独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

平成18年度 厚生労働省 第12回医薬品・医療機器等対策部会 別添3

本文別添1別添2|別添3|別添4

第12回医薬品・医療機器等対策部会

◎ 医療機器の製造販売業者等による対策が 必要又は可能と考えられたヒヤリ・ハット事例(人工呼吸器関連・その他)

    具体的内容 背景・要因 関与した
機器の種類
検討結果
1 電源に関する事例 人工呼吸器を装着して外出する際、外部バッテリーに接続して確認したところ、「power Low」の表示が出たため、バッテリーを 交換し確認して外出させた。外出先にて「power lost/Battery low」という表示が出現し、予備のバッテリーに交換したが同じ表示のままだった。
  • 劣化。
  • 回路交換後の洗浄消毒時にシリコンチューブをはずすため、無理な負荷が加わる。
人工呼吸器 医療施設においては、バッテリーは劣化するとの認識を持ち、定期的に点検を行う必要がある。特に人工呼吸 器を装着して外出する際には、事前にバッテリーチェックを行うことが必要である。保守点検を専任で行う者が不足している状況下では、添付文書や取扱説明書 に記載した内容の保守点検が必要であることを使用に関連する者に周知しておくべきである。製造販売業者等は、バッテリーのタイプを考えた交換時期や定期点 検等の際、バッテリーに関する点検項目の有無及び点検内容ついて、医療機関へ情報提供を行うことが必要である。
2 AC電源使用時にバッテリーランプが点滅していたが、その後消えてしまっていた。業者の定期点検時、バッテリー交換を行っていなかっ た。
  • 業者の定期点検時、バッテリーの交換を行っていなかった。
人工呼吸器 詳細は不明であるがバッテリーが定期点検時に交換されていなかった事からバッテリーの劣化及び十分な充電不足が原因と思われる。ま た、バッテリーランプの点滅が消失していることからバッテリーの充電不足による点滅が考えられる。定期点検では、バッテリーを交換することが目的で業者に 作業を依頼したのか、不明であるが、記述からは定期点検において、バッテリーも交換されるべきと思っていたが実際には項目にはなく発生した事例と思える。 定期点検項目については、医療機関と製造販売業者等の相互確認が必要であり、バッテリーは通常消耗品であるので定期点検項目にはない可能性がある。製造販 売業者等に定期点検を依頼した際には、点検内容と結果が明示されるので医療機関においても内容を確認することが必要である。また、製造販売業者等は、バッ テリーのタイプを考えた交換時期や定期点検等の際、バッテリーに関する点検項目の有無及び点検内容ついて、医療機関へ情報提供を行うことが必要である。
3 ウォールユニットにある枕灯の保安回路から電源をとっていたため、枕灯を消灯したと同時に人工呼吸器の電源もOFFになり、内部バッ テリーによる動作に切り替わった。
  • 電源元を間違えた。
人工呼吸器 人工呼吸器は生命維持管理装置でありコンセントは単独で取る必要があり、電源コードには人工呼吸器の電源コードと分かる表示が必要で あると考えられる。また、非常用電源コンセントを使用することが望ましいため、使用前の点検の徹底が必要である。さらに、急激に電源が途絶えた際のバック アップ体制(無停電電源装置や充電装置を備えた人工呼吸器もしくはボンベで使用可能なタイプの人工呼吸器や用手蘇生器(手動式人工呼吸器)等を設置してお くこと)も必要である。医療現場で医療機器の取り扱いに関する情報提供と使用者の教育が必要である。
4 酸素供給に関する事例 病室の吸引ビンを交換しようとしたところ非侵襲型人工呼吸器の酸素の配管が接続されていなかった。
  • 吸気酸素濃度が21パーセントと低値であったが、それを知らせる非侵襲型人工呼吸器のアラームが鳴らなかった。
人工呼吸器 非侵襲型人工呼吸器とあるのでマスク換気用の人工呼吸器であると思われる。このような人工呼吸器の中には吸入酸素濃度警報がないもの がある。本件では機種の特定が困難であるため警報設定のミスであるのか警報機能がないものか又は警報の故障であるのか判別できない。
5 酸素ボンベが開栓されていなかった。
  • 酸素で駆動している人工呼吸器であるが酸素の供給の有無の警報装置がない。
簡易人工呼吸器 酸素駆動の移送用人工呼吸器であると思われるが古い機種においては駆動源の圧力警報がないものがある。機種等詳細は不明であるが古い 機種であると思われる。メーカーによる使用期限等の設定について検討されることが望まれる。
6 回路に関する事例 中材で回路の設定された呼吸器が払い出された。
2日後、低圧アラームが鳴りやまず、原因もはっきりしないため呼吸器を交換して改めて点検した。
  • 気道内圧チューブとネブライザーチューブが間違えて接続されていた。
  • この呼吸器は自己診断システムがあり、点検時に自己診断でOKを出したので、すべてOKと思った。
  • 自己診断ではチューブの接続間違いを発見することはできない。
人工呼吸回路
ネブライザー回路
回路の種類等が不明であるが通常気道内圧チューブとネブライザーチューブは内径が異なり誤った接続をする ことは考えにくいが、「自己診断」がパスしたことを誤解し、誤接続に気づかなかった事例である。但し、内圧アラームが鳴ったことから判断して、接続や使用 方法の誤りに気がつくように担当者の教育が必要である。また、「自己診断」で機械の何がチェックされているのか、医療現場の担当者に理解させるようメー カーを含めた臨床工学技士等医療施設内における情報提供等の検討が必要である。
7 気管カニューレの種類により、カニューレを気管内で固定するためのバルーンの大きさが異なっていた。
  • ベッドサイドに気切(気管切開)用カニューレが用意されていたため、号数(サイズ)のみ確認しカニューレの種類までは確認せず医師 に渡してしまった。
気管カニューレ カニューレの取り違えの行為そのものは、単なるヒューマンエラーであるが、バルーンを、「気管内で固定す る」と記述しており、バルーンは固定のためではなく、カニューレと気管の間からのエア漏れをなくすためにあるものであることを現場では理解して使用すべき である。バルーンの内圧を上げすぎたことによる気管の傷害は海外において報告があり、機器業界としては内圧管理について、添付文書の警告記載を準備してい る。そもそも適正使用を行っていないことなので、添付文書の「禁忌・禁止」欄に記載し、使用者側に再度適正に使用するよう注意喚起する必要がある。        
8 加温加湿器に関する事 例 人工呼吸器使用時の加温加湿用蒸留水に、吸入液注入量を間違えて準備し施行した。患者への影響はなかった。
  • 加温加湿器用蒸留水1000mLに対しビソルボン10mLを加える指示が出ていたが、呼吸器変更後加湿器用蒸留水は500mLの設定となっていた。
  • 以前から1000mlへの混合量の思い込みがあって、本来ビソルボン5mLを混合すべきところ、10mL注入した。
  • カーデックスの指示量の確認を怠った。
加温加湿器 投与量を誤ったというヒヤリ・ハットよりも、加温加湿器に蒸発しないビソルボンを入れても、患者には投与 されないことの方が問題であり、吸入させる目的であれば、ネブライザーを使用するべきである。また、加温加湿器の使用に際しては、注射用水以外のものを入 れないよう使用者側に注意喚起する必要がある。 よって、医療施設内における教育と情報提供を行い、加温加湿器には注射用水を使用するように注意喚起を行う必要がある。製造業者等も情報提供として適正使 用に関する情報提供を行う。
9 ベッドギャッジを下げた際に、蛇管に溜まっていた水が人工鼻に流れた
  • ベッドのギャッジを下げた際、蛇管に溜まっていた水が人工鼻に流れていき、人工鼻に多量の水滴がついてアラームが鳴り、内圧も40 まで上昇したと思われる。
  • 人工鼻の交換頻度は週に1、2回である。
加温加湿器
人工呼吸回路
人工鼻
人工鼻はぬれると閉塞するおそれがあり、加温加湿器、ネブライザーとの併用は禁止である旨、添付文書に記 載済みである。本事例も適正使用外であると共に、機器本来の性質を理解しない使用方法である。また本件の場合人工鼻がなければ気管チューブを経由し気道へ 流入していたことが想定される。蛇管中の滞留水を放置していることも問題と思われる。加温加湿器側には禁忌の記載がされていないので加温加湿器側の添付文 書に禁忌の記載をすることにより双方の機器での禁忌状況がわかることになるため、記載が必要である。なお、本事例は適正使用の問題であり、機器に関しての 教育が必要である。                                                  
10 設定 ・操作部に関する事例 1回換気量が1000mLと高値になっていた。
  • 食事終了後、マスクの着脱、蛇管を取り外して抱きかかえて移動を行う。
  • いずれかの時にPLV(人工呼吸器の機種の名称)の本体カ バーをきちんと閉めないまま介助を行ったためにダイアルに触れた可能性がある。
  • また、赤ランプが点滅したときにその意味を理解できず確認をすぐにしなかった。
人工呼吸器 換気量が上昇した理由は不明であるが、アラームランプが点滅しただけでアラームが鳴っていないことが問題である。平成13年7月30 日付厚生労働省告示第264号「人工呼吸器警報規準」では、アラームは一時的な消音を除き、消音できないことが求められているため、それ以前の古い機種で あるか、若しくはアラームの故障と考えられる。なお、医療施設内においては警報規準告示以前の機種では基本的にアラームを消音しないように再度注意喚起す べく情報伝達ならびに教育、さらには機器の点検が必要である。
11 閉鎖式吸引カテーテルを使用して人工呼吸器装着中の患者の吸引をしたところ、急にアラームがなった。気道内圧低下のアラームが鳴り続 けるため、他の人工呼吸器と交換した。
  • 推定原因として業者から次の回答を得た。「人工呼吸器の吸気側の圧カセンサーは200mmHgまでの圧に耐えられるが、閉鎖式吸引 カテーテルの圧がそれ以上になったためではないか。」
  • 以前は閉鎖式吸引カテーテルは一般的ではなかったので、200mmHgにしていた。
人工呼吸器 閉鎖式気道吸引の際の吸引圧が強すぎると、人工呼吸器の圧トランスデューサーを破壊することがあるため平 成14年10月21日付医薬安発第1021002号厚生労働省医薬局安全対策課長通知「吸引用滅菌済みチューブ及びカテーテルに係る自主点検について」に より、(1)適正な圧力でサクションを行う旨、(2)重要な基本的注意の「併用注意」欄に、トランスデューサーを搭載している人工呼吸器と併用する場合に は、当該人工呼吸器(トランスデューサー)の陰圧における耐圧限界を超えないようにサクション圧力を調整する旨の注意事項を記載することとされ、対策が講 じられている。本件が多発するのであれば、閉鎖式吸引カテーテルのメーカーおよび当該事象が発生しうる人工呼吸器を取扱うメーカーはその人工呼吸器が納入 されている医療機関に対し、閉鎖式吸引カテーテルの注意喚起を徹底する必要がある。
12 人工呼吸器(バード)を使用中、突然グラフィックモニターのモニターが消え、「ノーバッテリー」と表示された。呼吸器は、正常に作動 しており児に影響はなかった。呼吸器を交換し、MEに検査を依頼した結果、グラフィックモニターにある電池の電池切れであった。
  • 一般病棟の呼吸器の組み立てや点検は、MEが行っているが、NICUの人工呼吸器の組み立てば、看護師が行っている。
  • 人工呼吸器 は定期的に点検を行っていたが、グラフィックモニターの電池に関しては項目がなかった。
人工呼吸器 日付、時計のバッテリーがなくなったという表示が出たもので、バッテリーがなくなったことを示す表示 (LOW BATTERY)が出ていてグラフィック自体は消えないものである。当該バッテリーは1年ごとの交換部品であり、適切な定期点検が行われていれ ば発生しなかった事例である。通常の定期点検を行っていれば画面表示の問題は理解できるもの。しかし、扱う人がその知識がなければ判断が付かないので、医 療機関内における点検と教育をしっかり行う事が求められる。 
13 呼吸器本体 稼動良好であったが、リザーバーバッグが膨らまなかった。側面パネルスイッチがOFFになっていた。
  • 人工呼吸器ニューポートベンチレーターE100M(人工呼吸器の機種の名称)のオーバーホールのため、代替機と交換した。
  • 稼動良好であったが、リザーバーバッグが膨らんでいないことに気付いた。
  • 側面パネルスイッチがOFFになっていたのが原因である可能性がある。
  • 当院ではOFF適用の患者がいないため、通常このスイッチはONになっており、側面のスイッチに触れないようにカバーが被せてあった。
人工呼吸器 ニューポートベンチレーターE100Mの側面のスイッチは患者の自発呼吸用の連続流をON (8L/min)にするかOFFにするかの切り替えを行うものである。このような特性から考えて、当該機種は自発呼吸のある患者専用に使われることが想定 され、今回の報告医療機関でも、通常ONで使用しており、代替器でOFFになっていたことが想定外となってしまったものと考えられる。医療施設では受け入 れの際に確認をすることが求められる。又は使用者の依頼として代替器納入に際してはON状態で納入するよう文書で指示を行う等管理の徹底が必要。業界担当 者は依頼された仕様にて納入することの確認を行う等、取引の基本的なステップを踏むことが求められる。
14 人工呼吸器関連以外の 事例 血糖チェックの患者に定刻通り測定しようとしたところ、「アドバンテージテストストリップS」(専用測定センサー)が不足していた為 新しいものを使用した。その際、機器にコードナンバーを登録するためのチップを取り替えて設定し直す必要があるが、取り替えるのを忘れ、そのまま測定し た。その3時間後、またチェックの時間になったため他のスタッフが測定したところ、(測定する前)ストリップと機器のコードナンバーが違っていることに気 づき、取り替えてくれた。
  • 血糖チェックの時間どおりの測定ではあったが、他のチームの入院も重なり、他の患者の対応など複数のことが頭を巡って気持ちが焦っ ていた。
  • しかし、新しいテストストリップへの変更の際だけでなく、根本的に血糖測定するときはテストストリップと機器のコードを確認することが原則であり、それ を忘れてしまった自身の行動を改める必要がある。
血糖測定器 アドバンテージテストストリップS(対外診断薬)はアキュチェックコンフォート(ロシュ・ダイアグノスティクス社製簡易血糖自己測定 器)で使用するものであり、グルコース脱水素酵素法のうち補酵素にピロロキノリンキノンを使用する簡易血糖自己測定器であり、マルトース等の糖類により偽 高値を示すことは知られている。(医薬品医療用具等安全性情報No.206) 本事例の場合、平成17年2月7日付医政総発第0207001号薬食安発第 0207005号厚生労働省医政局総務課長医薬食品局安全対策課長連名通知「簡易血糖自己測定器及び自己血糖検査用グルコースキット(グルコース脱水素酵 素法のうち補酵素にピロロキノリンキノンを使用するもの)の安全対策について」において、簡易血糖自己測定器及びキットは、原則として患者自身が自宅等で 血糖を測定する場合に使用するものであること等を通知し、医療施設への注意喚起とメーカーから医療施設への情報提供の徹底を指導しているが、医療機関では 病棟で使用されており徹底されていない。当該メーカーは病棟での自己血糖測定器の使用中止の推奨と院内使用のための小型電極式血糖専用測定器の普及啓発を 開始しているところである。なお、新しい試薬を使用する場合は、アドバンテージ テストストリップSに入っているコードキー(チップ)を測定器に挿入し て、画面の数字をチップのコードナンバーがあっていることを確認するよう、添付文書及び取扱い説明書には記載されている。
15 患者にインスリン自己注射を指導していた。「ランタス注」(持効型溶解インスリンアナログ製剤)を使用していたが、これを投与する際 に使用するペン型注入器である「オプチペンプロ」(手動式インスリン自己注射用注入器)を最後まで押し切れず、カチッと鳴らなかったため本人がもう一度押 してしまった。横で指導していたが、制止できなかった。(注入量が指示量より少ない可能性がある。)
  •  医療用具の問題点。
インスリン
ペン型注入器
オプチペンプロ1は不具合が非常に多く問題であったが、新製品オプチクリックが平成17年6月に発売されたことにより、オプチペンプ ロ1は同年8月に販売を終了し、オプチクリックへの取り替えが行われている。