製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例(事故事例「人工呼吸器」)
No. | 報告回 | 分類 | 事故の程度 | 事故の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
1 | 第17回 | 電源 | 障害なし | 人工呼吸器(ニューポートE360)の始業前点検時に内蔵したバッテリーが駆動しなかった。バッテリーの寿命は3年で、当該人工呼吸器の購入時期は2008年4月であった。当該バッテリーの過放電などの履歴がないことから、購入時の段階で短寿命のバッテリーが内蔵されていたと考えられた。バッテリー不良発見後、半日充電を行い、再度点検を行ったが、バッテリーは駆動しなかった。同じロット番号のバッテリーの製造不良が考えられるため、院内にある8台のバッテリーを交換した。 | 不明 |
|
当該事例については、当該医療機関から薬事法に基づく医療機関報告が行われており、納入後1年程度で内蔵バッテリ-の劣化に至ったものである。製造元の調査結果によると、出荷検査では特段の問題が確認されなかったが、さらなる品質向上のために、バッテリ-製造日の管理及び製造から6カ月以内の再充電を行うこととしたとのこと。 |
2 | 第18回 | 電源 | 障害 の可能性 なし |
患者が車から降りようとした際に、BiPAPフォーカスの電源が切れ、アラームが鳴り続けていると母親が、アンビューバックにて人工呼吸をしながら、駐車場から病院玄関入り口に到着し救いを求めた。業者に連絡し、担当者は電話の内容から、主電源が切れている可能性を指摘した。確認するとBiPAP本体の後面の主電源スイッチがOFFになっていた。BiPAPフォーカスの電源を再度入れ直し、正常に作動した。 | 家族が車から降りる際に、誤って後面のスイッチに触れ電源が切れた。家族のBiPAPフォーカスに関する知識不足であった。呼吸器本体の後面に主電源があり、誤って触れる可能性がある位置にある。主電源に接触しただけでも簡単に電源が切れてしまう。 |
|
当該人工呼吸器は、医薬審発第1157号医薬局審査管理課長通知「人工呼吸器警報基準の制定等に伴う製造(輸入)承認申請の取扱いについて」に基づき、本体を駆動させるスイッチが背面の奥に配置されており、容易に電源が切断されることがない構造となっているところ。 本事例は、患者の移動に伴い当該人工呼吸器を移動する時に駆動スイッチに触れたために発生したものであるが、取扱説明書においても人工呼吸器を持ち運ぶ場合は本体側面を持つこととされている。しかしながら、当該人工呼吸器は在宅医療で使用されることもあり、取扱説明書による注意喚起のみでは不十分と考え、本体背面に触れない旨の注意喚起シールを貼付することとした。 |
3 | 第18回 | 呼吸器 本体 |
障害 の可能性 なし |
業者が交換のために持参した人工呼吸器ニューポートHT50レンタル機の使用前点検、セルフチェック、回路リークテストを行ない、臨床工学技士立ち会いの下、器械の交換を行なった。20分後同室の隣の患者のケアをしていた看護師が異常音「ピー、ピッピッピッピッ…」に気付き、患者の側に寄ると呼吸器は停止していたのを発見した。直ぐに手動式人工呼吸開始、交換に立ち会った業者を呼び寄せた。病棟巡視で別な部屋にいた臨床工学技士が病室に戻り呼吸器の画面を確認すると、「作動不良」が表示され、人工呼吸器は停止している状態であった。病棟に所有している別の人工呼吸器ニューポートHT-50患者に装着した。 | 人工呼吸器ニューポートHT-50レンタル機の不良(原因調査中) |
|
当該事例については、企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、当該人工呼吸器は運用開始から5年6カ月間経過した時点で動作不良となったとのことである。製造元にて点検を行ったところ、ガス送気用駆動ポンプを制御するメイン基板の故障が判明し、当該基板を交換したとのこと。 |
製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例(事故事例「電気メス等」)
No. | 報告回 | 分類 | 事故の程度 | 事故の内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【熱傷】 | |||||||
4 | 第17回 | 障害 の可能性 なし |
薬剤等の 併用 |
急性腹膜炎の診断で緊急開腹手術を開始した。手術台にシーツと四角布を敷き、その上に患者は仰臥位になり、電気メスの対極板を左大腿に貼付した。まず、消毒薬「ベンクロジトVエタノール」にて手術野を消毒、消毒薬の乾燥を待ってディスポーザブル覆布をかけた。次にメスで腹部正中の皮膚の切開を行い、続いて電気メスにて同部位皮下の切開をはじめたところ、「ボン」という音と発煙を認知した。覆布を除去したところ、患者の体幹右側面の四角布が青白い炎で燃焼し、患者の右側胸部から右側腹部にかけて2度程度の熱傷を認めた。 | アルコール含有消毒薬での消毒に際しては、消毒薬の乾燥を待って執刀の開始、電子メスを使用しており、本件においても通常と同じ手順で手術を進行していた。結果として何らかの残留した発火性のある物質と電気メスの使用が要因となったと推測される。 |
|
ベンクロジドVエタノールの添付文書には、引火性があるため十分注意することと記載されている。また電気メスの添付文書においても、可燃性液体や物質等の存在する環境下では使用しないことと記載されている。 |
5 | 第17回 | 障害 の可能性 (低い) |
薬剤等の 併用 |
潰瘍性大腸炎の患者に結腸亜全摘、回腸ストマ、S 上結腸粘液ろうを造設することとなった。閉腹後、ストマを造設するため正中創にノベクタンスプレーを墳霧した。その後、皮膚切開に電気メスを使用していたところ、皮膚のノベクタンスプレーに引火した。すぐにガーゼを用い消火したが熱傷を受傷させた。 | 有機溶媒を用いていることを忘れていた。 |
|
ノベクタンLスプレーの添付文書には、引火性があるため十分注意することと記載されている。また電気メスの添付文書においても、可燃性液体や物質等の存在する環境下では使用しないことと記載されている。 |
6 | 第17回 | 障害 の可能性 (低い) |
薬剤等の 併用 |
術野をマスキンエタノール消毒液で追加消毒した。その際、消毒液がシーツに浸透し、電気メス放電火花がシーツに引火し発火した。患者の右側胸部に2度および3度の熱傷を生じた。 | マスキンエタノールの乾燥を確認せずに電気メスを使用した。シーツで覆った後、マスキンエタノールで追加消毒した。 |
|
マスキンW・エタノール液、マスキンR・エタノール液の添付文書には、引火性があるため十分注意することと記載されている。また電気メスの添付文書においても、可燃性液体や物質等の存在する環境下では使用しないことと記載されている。 |
7 | 第17回 | 障害なし | その他 | 患者に左口腔粘膜切開及び排膿を行った。その際、止血に使用したバイポーラが患者の下口唇にあたり3度熱傷をきたし、下口唇左側13×10cm ほどの潰瘍を形成した。使用したバイポーラは、先端部以外全面コーティングしたものではなかった。 | 口腔内の深部の創部の処置にもかかわらず、先端部以外全面コーティングしたものを使用せず、通常のバイポーラーを使用したのが原因と考える。 |
|
当該事例については製品名が不明であるが、非絶縁型バイポーラ電気メスの添付文書には、意図しない組織の熱傷に注意するよう記載されている。 |
8 | 第17回 | 障害 の可能性 (低い) |
使用方法 の間違い |
右口蓋扁桃摘出し、左口蓋扁桃摘出を行う際、止血処置のため使用していたバイポーラの不具合があり、普段使用しない他社のバイポーラを使用した。その他社のバイポーラの非絶縁部が右口角に触れた上体で使用し、右口角に10×10mm 程度、外観上は3mm の熱傷をきたした。翌日皮膚科受診し外用剤で保存療法、難治であればデブリードマン、縫縮も考慮して治療することとなった。 | 交換して使用したバイポーラ(エースクラップ社製)の取り扱いに慣れていなかった。不具合となったバイポーラの保守点検が確実ではなかった。 それぞれのバイポーラの機能と構造、使用方法の理解が不足していた。 |
|
当該製品の添付文書には、意図しない組織の熱傷に注意するよう記載されている。 |
【近隣組織 (臓器) の損傷】 | |||||||
9 | 第17回 | 障害 の可能性 (高い) |
他機器等 の併用 |
肝S 8の横隔膜下にある肝癌をCT 下で経皮経胸腔的にガイド針を刺入し、CT で針先が肝癌に当たっていることを確認し、ラジオ波焼灼療法(以下RFA)を12分間行い、問題なく終了した。終了約2時間後、呼吸状態が低下し、US 下で右胸水が大量に貯留していた。胸部CT 撮影後、試験穿刺した結果血性液であった。点滴および輸血開始し呼吸器外科により緊急手術を行った。 | C型肝硬変(ALb 3. 4・Plt6. 6 万・PT 8 9 % 腹水少量あり)でRFA の基準(Plt5万以上)は満たしているがChild A ではない。技術的にはこれまで行ってきたことなので問題はない。 |
|
ラジオ波焼灼療法(RFA)施行時の当該事象などに関しては、平成17年12月2日付薬食安発第1202001号・薬食機発第1202001号連名通知『ラジオ波焼灼療法(RFA)に際して使用する電気手術器の「使用上の注意」の改訂等について』により注意喚起しており、関係企業の添付文書改訂も行われているところ。 |
製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例(ヒヤリ・ハット事例「人工呼吸器」)
No. | 報告回 | 具体的内容 | 背景・要因 | 改善策 | 調査結果 |
【その他】 | |||||
1 | 第17回 | 気管切開を行った患者。吸引を行おうとした所、カフ漏れと低TVアラームがなり、TVが2桁まで低下していた。患者のエコー中であった医師に伝え、カフ圧を確認し、圧を高めたがカフ漏れと低換気状態は変らず顔面の腫張を認めた。呼吸器からジャクソンリースに接続するが入らないため、他の医師の応援を要請した。開口せず経口挿管困難と医師が判断し気切口を確認するために肩枕を挿入したところ、両肩に皮下気腫認めた。鎮静投与後救急要請を行い、マスクベンチを行っている際にHR低下し、CPRを開始した。心臓マッサージ、経口挿管施行。緊張性気胸となったため、両側胸腔ドレーン挿入となった。 | 気切直後の合併症についての認識の甘さ、対応の仕方や応援の要請の仕方に問題があった。また患者の体型からくる「カニューレの抜け、迷入のしやすさ、再挿入の困難さ」といったリスクアセスメントが十分ではなかった。 |
|
本事例は気管切開術後に気管切開チューブを皮下に異所留置したことにより皮下気腫を生じたものと考えられる。気管切開チューブの抜けや再挿管時のリスク等に関しては、添付文書でも注意喚起されているところ。 |
【回路】 | |||||
2 | 第18回 | 人工呼吸器(LTV)の作動状況確認の実施中にウォータートラップから「シュー」というエア漏れの音に気付いた。ウォータートラップの蓋を閉め直したが音が消えないので、他の看護師が再度実行した。しかし、エア漏れは改善せず回路交換を実施した。交換後はエア漏れなく患者に影響はなかった。人工呼吸器の業者が検証した結果、ウォータートラップの蓋に付いているプラスチックの一方弁が上がったままになっていたことが分った。 | 人工呼吸器PLVの回路ウォータートラップについていた「Oリング」に不具合があり、改善された回路だった。しかし、今回のようにプラスチックの一方弁に不具合があった(人工呼吸器の業者が検証中に湿気があると弁が戻らないが、乾燥した状態では弁がスムーズに下りた、という情報をもらった)。 |
|
当該事例については、ウォータートラップの品質上の問題から当該企業により自主回収が実施され、既に対策品が出荷されているところ。 |