独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

平成22年度 第2回医薬品・医療機器安全使用対策検討結果報告(医薬品関連事例) 別添3

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ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(事故事例「薬剤」)

No. 報告回 事故の
程度
段階 事例の内容 背景・要因 改善策 調査結果
【薬剤間違い】
1 第19回 障害なし 指示段階 医師Aは、心臓カテーテル検査終了をする際、止血目的でヘパリンの拮抗薬ノボ・塩酸プロタミンを使用するため、メモに「プロタミン1.5mL+生食Total5mL」投与と記載するところ、「プロタノール1.5mL+生食Total5mL」と書いて看護師Bに渡した。看護師Bは、プロタノールの保管場所を確認して指示どおり作成した。看護師Bは、研修医Cと確認し、メモに書かれた指示どおりの薬剤を研修医Cに手渡した。その後、医師Aが「プロタミン」のつもりで「プロタノール」を投与したところ、患者の心拍数が上昇し、血圧が低下した。この時、医師Dが「プロタミンアレルギーかな」と言ったため、疑問に思った看護師Eは、研修医Cに「プロタミンでなくプロタノールですよね」と確認した。麻酔記録には「プロタミン」と記載がされており、医師Aに確認したところ、メモにプロタミンのつもりでプロタノールと記載したことが分かった。 口頭指示出し、指示受けルールが守られていない。薬剤の確認をする時、確実にものの確認ができていない。検査室内で誰も声に出して指示だし、指示受けをしていない。疑問に思った時、アクションを起こさなかった。緊迫した検査室内の状況があった。
  • 緊急時の口答指示受け時は、確認会話(声に出して復唱をする)の徹底を図る。
確認が不十分であった

類似名称
2 第19回 障害
の可能性
なし
指示段階 出生体重723gの超出生体重児にチラーヂンSを投与を開始した。7日後、患児が頻脈となったため、確認すると、チラーヂンSを処方するところ、チラーヂン末を処方したことが分かった。 処方をする際に、システムで「チラー」と検索をかけたところ、チラーヂンS(錠剤)とチラーヂン末(粉薬)が出てきた。チラーヂン末(粉薬)を小児用と思いこみ処方した。処方時の単位(mgとmg)の違いに気付かなかった。
  • 電子カルテ入力画面に、「チラーヂン末(乾燥甲状腺末)」と表示する。
  • チラーヂン末の使用状況を調査し、使用が少なければ削除品目とする。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
3 第19回 障害なし 準備段階 薬剤師は、主治医に患者の抗がん剤無菌製剤調整実施を依頼され調整を行った。調整が終了した薬剤について、他の薬剤師が鑑査を実施し、病棟へ払い出した。ブリプラチン注を注入した生理食塩液250mLボトルと、5-FUを注入した生理食塩液500mLソフトバックについて、注射薬ラベルが逆に張り付けられていた。その結果、5-FUをブリプラチンの点滴速度で半分程滴下した。 無菌調整業務とラベル貼布業務が、別の工程となっていたため。
  • 無菌調整業務とラベル貼布業務を、同一工程の中で行う。
確認が不十分であった
4 第19回 障害
の可能性
なし
準備段階 薬剤師は、定期処方薬の調剤を行った。処方箋にはアレビアチン散10% 200mg分3 14日分の指示であったが、間違ってエクセグラン散で秤量した。薬剤鑑査を行ったが間違いに気付かず定期処方薬は病棟に払い出され、患者は内服した。患者は2回/月程度の痙攣発作を起こしていたが、払い出された定期処方薬内服3日後から痙攣発作の出現頻度が2日に1回から2回に増え、更に10日後の深夜帯には16回の痙攣発作が出現した。主治医は痙攣発作が急激に増えている事を不審に思い、薬剤科に問い合わせた。薬剤科で処方箋控えと調剤記録で確認したところ誤調剤であった事が判った。 処方箋と指示薬剤を確認する。次に誤調剤防止のため、1)棚から薬剤を取る時2)天秤で薬剤を秤量する時3)薬剤を棚に戻す時の3回薬剤名の確認を行う事になっているが、この確認を怠った。薬剤容器の底にバーコードをつけバーコードリーダーで読み取りを行い薬剤名と秤量内容が記載されたものを印刷し、処方箋に添付するが、この時、処方内容に間違いがないか確認するのを怠った。処方箋と秤量内容を印刷した用紙を他の薬剤師が鑑査したが間違いに気付かなかった。
  • 誤調剤防止の手順を遵守する。
  • 調剤鑑査を徹底する。
確認が不十分であった
5 第19回 障害なし 準備段階 患者Aは化学療法のため「ソリタT3 500mL+メイロン注20mL2A」を投与しており、その輸液が終了直前であった。看護師Cは看護師Dがミキシングルームから運搬してきた薬剤3本(患者Aの薬剤「生理食塩注50mL+カイトリル注3mg1A」と患者Bの薬剤2本)を受取った。通常であれば、処置台に薬剤を置き確認をするが、患者Aの輸液が終了直前だったことから、看護師Cは受け取った3本のうち患者Aの輸液と患者Bの輸液1本(合計2本)を患者の点滴スタンドに吊るした。看護師Dは、患者Aに2本目の点滴「生理食塩注50mL+カイトリル注3mg1A」を接続し、処方箋控えに実施サインをした。その後、看護師Cは点滴スタンドに吊るした3本目の輸液「生理食塩注50mL+ノバントロン注9mg」(患者Bの輸液)を接続した。この時、実施サインをしなかった。また、患者Aが眠っていたため、名乗れない時行う点滴スタンドに掛けてあるIDカードとの照合を行わなかった。その後、患者Bの輸液がないことから、患者Aに患者Bの抗癌剤を投与したことに気付いた。 治療開始にあたり、患者からIDカードを受け取り点滴スタンドに掛けている。ミキシングルームから届いた薬剤は、一旦処置台に置き薬剤をチェックしているがそれを行わなかった。当科では、薬剤を点滴スタンドに吊るした時、点滴をつなぎかえた時、患者に名乗ってもらい、点滴スタンドに貼り付けた処方箋控に確認サインをする手順になっているがそれを行わなかった。
  • 最終責任を明確にするため確認作業を確実に実施できるマニュアルにする。
  • 患者に名乗ってもらい、ラベルの患者名を一緒に確認する。
  • 患者が睡眠中であっても、起こして確認する。
  • 名乗れない患者の場合は、看護師2名で確認、2名共にサインする。
  • 院内全点滴スタンドに掲示「看護師は、あなたの名前を確認しましたか」、名前確認・指差し呼称を徹底するために、トップダウンの強いメッセージを発信する。
  • 将来的には3点認証システム導入を検討する。
確認が不十分であった
6 第19回 障害
の可能性
(高い)
準備段階 患者には、「オメプラール1Vを5%ブドウ糖10mLで溶解しIVする。IV前後5mLでフラッシュする。」という指示と「リン酸二カリウム20mLを高カロリー輸液内に混注する。」という指示が出されていた。7月24日、朝、患者用の注射カート内に5%ブドウ糖20mL2A、オメプラール2V、リン酸二カリウム20mL1Aが入っていた。担当看護師は注射カート内から投与指示のオメプラール1V+5%ブドウ糖を準備するつもりで、リン酸二カリウム10mLでオメプラールを溶解し、リン酸二カリウムの残り10mLはフラッシュ用として別のシリンジに準備した。注射器に準備したオメプラールとフラッシュ用の薬剤をベットサイドに持参し、患者に投与した。その際、オメプラール投与前後に他の薬剤との配合による沈殿を予防する為に行う5mLのフラッシュもリン酸二カリウムで行った。その後、患者は心電図にVT、VFが出現した。午後、オメプラール溶解液の5%ブドウ糖20mLが1本多く、14時交換の高カロリー輸液内に混注するリン酸二カリウムがないことに気付き、朝のオメプラールの溶解に5%ブドウ糖を使用すべきところ、リン酸二カリウム液で溶解し投与したことが判った。 注射カート内の配置に関する取り決めがなかった。点滴内混注薬剤と側管投与の薬剤が混在し配置されていた。カリウム製剤に関する注意喚起するカード添付等がされていなかった。アンプルの形や薬剤の色が類似していた。薬剤投与時の5Rが実施されていなかった。薬剤投与時ダブルチェックのルールが明確でなかった。朝、透析に行く時間が迫っていて焦っていた。前日も同じ患者の受け持ちであったため、薬剤の確認が疎かになった。
  • カリウム製剤の取り扱いにルールを決めた。
  • 個人処方のカリウム製剤をセットする時は、専用ビニール袋に入れ「ワンショット静注禁止」カードを一緒に入れる。
  • 「ワンショット静注禁止」カードが入っている薬剤を取り出す時は、薬剤名を指差し呼称で確認する。
  • カリウム製剤を薬剤部から払い出す時は、注意喚起のシールをアンプルに貼り付け払い出す。
  • カリウム製剤の取り扱いについて研修会を行う。
確認が不十分であった
7 第19回 障害
の可能性(低い)
準備段階 肺癌の脊椎転移に対し椎骨除去術後の患者の呼吸状態改善目的でビソルボン注(4mg/2mL/A)と生食50mLの点滴が指示された。担当看護師は冷所保存されていたビソルボン吸入液を生食50mLに混注し、患者に投与した。 看護師の不潔・清潔の教育が不十分であった。点滴指示の際の物品請求および投与の手順が遵守されていなかった。指示内容の確認者の経験が乏しく疑問を持てなかった。同一名の内服、外用薬の存在について注意喚起がなされていなかった。院内取り決めにて、外用薬には赤色シリンジを使用することが決っていたが、この時は赤色シリンジを用いており、安全対策の内容理解が不十分であった
  • 院内における同一名の外用薬、内服薬リストを作成し注意喚起を行う。
  • 院内RM会議等で再度、シリンジの適応、清潔・不潔の意味につき啓蒙活動を行う。
  • 適応別シリンジ一覧を再度院内に配布し、対策の意味の院内周知徹底を行う。
  • 臨時薬品請求はリーダーの責任のもと行うことを再度周知徹底する。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
8 第19回 障害
の可能性
なし
準備段階 大動脈解離で上行弓部置換術後の患者で血圧120mmHgを目標としていた。血圧が140台へ上昇したため、CV青ラインより0.5mL/hで投与されていたノルアドレナリを中止した。主治医は、ミオコールラインをCVに接続するように指示を出した。看護師は、薬剤を準備しシリンジポンプにセットした。同じ点滴台の上にノルアドレナリン、その下にミオコールのシリンジポンプがセットされていた。接続する際、看護師は、ミオコールラインが不潔になったため、ラインを交換し早送りをしてライン内のエアーを抜いた。しかし、実際には、ノルアドレナリンのシリンジポンプを早送りし、ノルアドレナリンを5.5mLフラッシュした。その結果、患者の血圧が200台に上昇した。シリンジポンプに薬剤名が書かれ、一目でわかるようにしてあった。 血圧が、目標値を超えてしまい、ミオコールを早く接続しなければという思いもあり慌ててしまいダブルチェックのルールを省いた。ノルアドレナリンとミオコールのシリンジポンプを同じ点滴台で行ったこと、点滴ライン内を満たすとき手動で行うなどのルール化していなかった。
  • ルールの徹底
  • ノルアドレナリンとミオコールのシリンジポンプを同じ点滴台にセットしないことを取り決めた。
  • 点滴ライン内に薬液を満たす時、手動で行うなどのルール化する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
9 第19回 障害
の可能性(低い)
実施段階 患者は心肺停止状態であった。医師がシンビット50mgを生食20mLに溶解し、シリンジにシンビットと記載した。電気的除細動を行うためにエピネフリン1Aを静注後、シンビットを溶解したシリンジを接続し、4mL注入した。シリンジはそのまま三方活栓につけていた。看護師はそのシリンジに入った薬剤をエピネフリン投与後のフラッシュ用の生理食塩水だと思い、残りのシンビット16mLを一気に静注した。 同一者が薬剤の準備から投与まで、一連の流れが徹底できない情況もある中、薬剤投与時の確認行動を実践しなかった。
  • 薬剤投与時は、特自分が作成したものではない場合は、薬剤名の確認を行ってから投与する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
10 第19回 障害なし 実施段階 同室患者2名それぞれに抗生剤投与の指示が出ていた。患者にフィニバックスキット0.25g+生食100mL投与するところ、誤って別な患者のゾシン4.5g+生食100mLを投与した。ゾシンとフィニバックスにはそれぞれ投与すべき患者シールを貼ってあった。投与中に他の看護師が発見した。 途中で中止し、残は破棄する。主治医へ報告した。
  • 実施前と実施後で患者確認を自分の名前を言える患者は名乗ってもらい、それができない患者はベットネームを見て確認する。
  • ピンクのリストバンドで確認する。
  • 家族がいる場合は家族に確認する。
確認が不十分であった
11 第19回 障害なし 実施段階 10時に更新するための注射薬剤「生食40mL+レペタン2A+ドルミカム3A」と「強力ミノファーゲンC40mL」他4種類の注射器をCVルートから投与するものと末梢ルートから投与するものを2つのバットに分けて準備した。「生食40mL+レペタン2A+ドルミカム3A」と「強力ミノファーゲンC40mL」はCVから投与するバットに入れた。同じ大きさの注射器であったため間違えないように注射ラベルを貼っていた。看護師は、患者にCVラインから「強力ミノファーゲンC40mL」を投与するところ、「生食40mL+レペタン2A+ドルミカム3A」を投与した。投与後、強力ミノファーゲンCが入った注射器が残っていたため誤りに気付いた。投与直後、患者は、呼びかけに反応が無く血圧60台に低下していた。 準備の段階で危険を予測しており、注射器にラベルを貼るなどの工夫をしているが、実施前に処方箋、薬品の確認を怠った。声出し指差し確認が不十分であった。鎮静目的に使用する危険な薬液を他の注射薬と同じトレイで準備していた。また、投与する時間も同じであった。50mLの注射器による側注は注入中に接続部が外れることがあるため、薬液をこぼさないことに意識が集中していた。投与中にラベルを見る、患者の状態を確認する等の行為ができていなかった。病院の取り組みとして、危険な薬品の取扱に対する基準が不十分であった。
  • 注射実施直前には処方箋と注射内容を声出し指差しで確認することを徹底する。
  • 鎮静目的に使用する危険な薬液等の注射薬は別のバットに準備する。
  • 持続的に注射する危険薬は、他の注射とは区別した時間に切り替える。
  • 危険薬の取扱について今後検討する。
確認が不十分であった
12 第19回 障害
の可能性
なし
実施段階 10時施行の筋肉注射ペンマリン注射用1gを溶解し注射器に準備しておいた。他の業務を行いながら、施行しようと思い注射準備台に置いてあったトレイをワゴンに準備した。同時間帯には2種のトレイが準備されており、他患者の筋注ラシックス20mg1Aをペンマリンと誤認し施行した。他のスタッフが、筋肉注射ペンマリン注射用1gのトレイが残っている事に気付いた。 早く業務を行う事に気をとられていた。準備した薬剤空容器がどちらも廃棄されていた。
  • マニュアル通りに忠実に手順を追い、パソコン確認し、患者のリライタブルカードとの指差し確認を行う。
  • 薬剤準備後、空容器は廃棄しない。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
13 第19回 死亡 実施段階 看護師はプログラフ(5mg/1mL)を希釈して0.1mg/生食48mLを作成した。プログラフの残4.9mg(0.98mL)は2.5mLのシリンジに入れた。また、プロジフ100mg(1.25mL)を2.5mLのシリンジに準備し、全てを同じトレイに入れ、看護室内の処置台に置いた。看護師は指示のプロジフ100mgを投与するところ誤ってプログラフの残4.9mgを左手末梢から静脈内注射した。 朝の業務が多い中で、CV挿入が行われ、受け持ち看護師は焦っていた。他の看護師も、自分の業務があり、応援体制がとれない状況であった。10時の時間注射の作成は、他の看護師に依頼したが、その後の時間注射、持続注入薬を作成するため慌しく準備し、全ての薬品をトレイに準備した。トレイの中はごちゃごちゃしている状況であった。プログラフの持続注射を作成し、残量は、濃度が変更になると作り直しをしなければならないと思い、2.5mLのシリンジに吸い上げ、一時的に外筒に赤マジックでプログラフと記入した。あとでラベルを書きシールを貼って冷所に保存しようと思ったがそのままとなってしまった。(残薬を赤マジックで記載するルールはない。)プロジフを2.5mLのシリンジに準備し、外筒にプロジフと赤マジックで記入した。(プログラフ、プロジフと似た名前の薬剤が同じように2.5mLのシリンジに準備され、赤マジックで記入されたものが同じ場所に準備された。)プロジフを実施するため、トレイよりプロジフの入ったシリンジを持って行ったが、確認ができておらず、ダブルチェックも行われていなかったため、持って行った注射器がプログラフであった。看護師が忙しい時間帯で、微量の薬剤の調合を行っている。
  • 作成後の残薬は、その場で廃棄する。(取り置きをしない。)
  • 時間注射と持続注射のトレイを分け、かつ色も別にする。
  • 直接シリンジに記載するのではなく、ラベルを準備し、それに記載する。
  • 患者の元に持って行く時は、2人の目で確認する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)

勤務状況

類似名称
【薬剤量間違い】
14 第19回 障害なし 指示段階 体重約1.2kgの患児に抗生剤を投与する際、上級医と研修医は、テキストに準じて作成された院内マニュアルの「セフメタ:75-100mg/kg/日、3×」と「硫酸アミカシン:10-15mg/kg/day,2×」を見て一緒に投与量を計算した。上級医は、1日量を意図して研修医に「セフメタゾン120とロミカシン20ですね」と言い、指示を入力するように依頼した。研修医は、「セフメタゾン 1回120mg 1日3回、ロミカシン1回20mg1日2回」と指示を入力し、看護師が指示に基づき患児に1日分投与した。その後、看護師の指摘により過量投与に気付いた。 研修医は「3×」と「×3」の表記について十分に確認をしなかった。指導医は最終的に端末上で投与量の確認をしなかった。研修医は、通常抗生剤は1回量の処方だと思っていた。
  • 処方する際、1日量、1回量など用法・用量を確認する。
  • 注射薬、内服薬の指示方法を1日量と1回量が混同しにくい方策を検討する。
  • マニュアルに記載されている用法・用量を院内のオーダリングの入力に併せた形に書き直し使用する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
15 第19回 障害
の可能性(低い)
指示段階 看護師は、患者の体重を43kgのところ64.65kgと電子カルテに入力した。医師は、入力された体重をもとに、化学療法で使用するアクプラとタキソールの量を算出し、アクプラ20mgのところ28mg、タキソール60mgのところ90mgを患者に、化学療法1クール目の1日目、8日目、15日目に投与した。1ヵ月後、患者は体重が43kgになったことを医師に伝えたが、医師は、前回のデータが64.65kgであったため、聞き間違えと思い患者の体重を63kgで登録し直した。その後、アクプラとタキソテールに変更し、化学療法を行うこととなった。その際、医師は、患者の63kgで副作用を考慮したアクプラとタキソテールの量を算出し、アクプラ42.5mg、タキソテール42.5mgを患者に1日目と8日目に投与した。2週間後、患者に再度、体重減ったことを申告され、間違いに気付いた。 看護師は、患者の体重を誤って64.65kgと電子カルテに登録した。医師は、体重64.65kgで投与量計算し患者に投与した。患者から「43kgに減った」と言われたが前回データが64.65kgであり聞き間違えたと思い63kgに登録した。
  • 体重入力時に、前回日の体重と付け合せして差異が大きい場合(10%以上)は警告を出す。但し、初回の体重入力時はチェックできない。
  • レジメン適用時の体重確認を強化する。前回体重と今回体重を比較するために、前回パラメータを常に表示させる。(10%以上)以上差異がある場合、警告を出す。
  • 患者本人から体重を聞いた時点で、入力を変えるか、もしくは変と思った時点で患者に連絡をとり確認する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)

オーダリング時等の誤入力
16 第19回 不明 指示段階 医師は、髄膜炎の患者にバンコマイシンの注射を行うため、薬剤部に投与設計を依頼した。薬剤部では血中濃度解析シートのコメント欄に推奨する使用量を記載する際に「1000mg×3回」とすべきところ「1500mg×3回」と記載した。医師は、バンコマイシンの量がやや多いと気が付いたが、その通りに処方し、4日間、患者に投与した。4日目に血液検査とともに血中濃度測定を行ったところ、急性腎不全の状態であることが判った。 薬物血中濃度測定業務ができる薬剤師が少なく、解析シートの内容・コメントについての確認作業ができていない。特に当日は他の業務や指導・会議が重なり、1人で対応していた。院内では、血中濃度を高めに設定する必要がある事例も多く、添付文書の用量用法を超える量が指示されることも多いため、副作用に対する注意喚起が不足していた。 医師は、メッセージ欄のコメントだけを確認し、解析シートを注意深く確認することなく薬剤を処方した。
  • 薬剤部での薬物血中濃度測定業務は、2名以上の薬剤師で行い、報告書をチェックできる体制にする。
  • 報告書のコメントには、 推奨量を記載するとともに、副作用を早期発見するための検査を早めに指示する。
  • 薬剤の通常の用量を超えての使用については、患者・家族に対して十分なインフォームドコンセントを実施し、異常の早期発見のための観察や検査を実施する。
確認が不十分であった

記録等の記載
17 第19回 障害なし 指示段階 患児に筋弛緩薬のエスラックスを投与することとした。持続投与の場合、添付文章によれば、7mg/kg/分の投与量が必要である。患児は6.34kgであるため2.7mg/hの量であるが、mgとmLを間違え2.5mL/h(25mg/h)を指示し、翌朝の発見時まで約15時間投与した。 mgとmLの単位を間違った。
  • エスラックス持続投与時の体重と投与量の早見表を作成した。
確認が不十分であった
18 第19回 障害
の可能性(低い)
指示段階 患者に化学療法を実施するため、主治医と上級医を含む診療科内での検討の結果、BA療法が選択された。BA療法には「レジメン1」と「レジメン2」の2種類のレジメンが登録されていたが、患者に行う化学療法について、主治医はレジメン1、指導医はレジメン2と認識していた。「レジメン1:アクラシノン20mg/m2・サンラビン200mg/m2 7日間」、「レジメン2:アクラシノン20mg/body・サンラビン200mg/body 7~14日間」であった。主治医は、「アクラシノン20mg/m2・サンラビン200mg/m2 7日間」からなる化学療法剤投与予定表を提出し処方をオーダーした。病棟薬剤師は予定表とレジメンを照合せず調剤室に提出した。調剤室の薬剤師がレジメンをオーダーに基づき調整し、「レジメン1」の化学療法を7日間行った。主治医は、上級医から「再発後の治療であり、10から14日のしっかりした治療が必要である」と指導を受け、BA療法(レジメン1)を3日間延長することを決定し、3日間の延長分予定表を提出した。病棟薬剤師は、レジメンと化学療法剤投与予定表を照合せず調剤室に提出した。

調剤室の薬剤師は、レジメンを照合し、レジメンから逸脱しているが、予定表に延長分と記入されている事と病棟薬剤師より追加治療が必要であると主治医からの情報があるという事で主治医に確認を行わなかった。
その後、3日間の延長分のBA療法を行った。更に、主治医は、4日間の再延長分BA療法(レジメン1)の予定表を提出した。病棟薬剤師は、レジメンと化学療法剤投与予定表を照合せず調剤室に提出した。調剤室の薬剤師は、レジメンから逸脱していることに気付いたが、化学療法剤投与予定表に再延長分と記入されている事と前回の3日間のBA療法の延長があるため、主治医に確認しなかった。4日間の再延長分のBA療法を施行後、上級医からBA療法の過量投与である事を指摘された
BA療法という名称の治療プロトコールが2種類ある。
医師のカンファレンスは定期的に行われているが、レジメン決定に際して投与量の確認が行われていない。病棟薬剤師・調剤室の薬剤師のレジメンと予定表の照合が機能していない。化学療法剤投与予定表が一人の患者に複数枚存在しており患者の治療予定の全体像を把握しにくい。
  • BA療法のレジメンが2種類あるため名称の変更を行う。
  • レジメンを決定、変更する場合は、口頭だけでなく化学療法剤投与投与量や投与方法も含めて明確にする。又、これらの決定過程をカルテに明記する。
  • 病棟薬剤師、調剤室薬剤師共に注射指示票、予定表、事前登録レジメン間の照合を行い処方鑑査するとともに、レジメンから逸脱しているものは、必ず主治医に疑義照会する。
  • 化学療法剤投与予定表を複数の医師で確認する体制を整備する。
  • 一人の患者の化学療法剤投与予定表が一覧でわかるよう化学療法予定表書式変更を行うとともに、ITシステムと連動するように検討する。
確認が不十分であった
19 第19回 障害
の可能性
なし
指示段階 患者に対しMP療法を開始した。プレドニン30mg、アルケラン4mgの内服を4日間内服で終了の予定であった。入院当日に内服を飲みきり終了としなければならないところを、内服薬プレドニン30mg、アルケラン4mgを7日分処方し続行とした。病棟担当薬剤師は、MP療法としては量が通常より少ないため連日投与も可能かと思った。追加処方された時点で、患者に確認したところ、患者は休薬のことは聞いておらず、念のため主治医へ継続でよいのか伝言をした。主治医は伝言を見てMP療法の確認を行い、7日間過剰投与したことがわかった。骨髄抑制などの副作用を考慮し、放射線治療を5回で中止した。その後、骨髄抑制症状改善し放射線治療再開、予定の計10回終了し疼痛も緩和している。誤投与後、副作用はない。 治療薬の添付文書で確認を行ったが、調べ足りずに誤投与につながった。前医での添書・治療内容も、電話などで詳細の確認が必要であった。治療計画・内服薬についてはダブルチェックを行うことが必要だと反省される。
  • 前医での治療内容は直接確認を行う。
  • 持参薬は薬剤部への問い合わせをする。
  • 治療計画・指示内容はダブルチェックを行う。
  • 指導医は確認を行う。
確認が不十分であった
20 第19回 障害
の可能性
なし
指示段階 患者は、ラニラピッドを(0.05mg)0.5錠1×朝食後に内服していた。看護師は、院内処方に切り替えるため、紹介先の医師の紹介状ではなく紹介先の看護師が手書きで書いたメモを見て、「ラニラピッド(0.5mg)0.5錠1×朝食後」を処方するよう医師に依頼した。当院ではラニラピッドの規格が「0.05mg」と「0.1mg」しかないため、医師は、「ラニラピッド(0.1mg)2.5錠1×朝食後」と処方し、患者は、処方通り12日から21日まで内服した。22日からの内服分の処方も依頼していたが、21日薬剤科よりラニラピッドの処方量が通常より多いと指摘され、12日から21日まで本来の約10倍量のラニラピッドを内服していたことが分かった。患者は、透析中であり、血中ジゴキシン濃度測定すると4.58ng/mLであった。 医師へ処方依頼をする際、前院の医師から紹介状ではなく前院の看護師が手書きで書いていた用紙を見て処方依頼をした。
  • 処方依頼をする時には、薬手帳か医師の紹介状を見て依頼する。
  • 処方依頼をする時には正確に容量を入力する。
  • 医療安全の委員会で検討し、看護師全体に徹底した。
確認が不十分であった

記録等の記載
21 第19回 障害なし 準備段階 患者は、入院時に持参薬として内科と精神科で処方された薬を持参した。入院1日目、看護師Aは、家族が持ってきたお薬手帳と持参薬を薬品検索依頼のため薬剤部に提出した。精神科の薬が入っている薬袋には、用法として「1日4回、毎食後・就寝前 1回に リスパダール錠1mg 2錠ずつ、デパス錠0.5mg 2錠ずつ 合計2種 お飲みください」と印刷されていたが、お薬手帳には、用法が記入されていなかった。薬剤師Bは、薬袋に記載された用法で薬を一包化しなおし、薬剤師Cが鑑査をし、病棟に払い出した。入院2日目手術翌日、看護師Dが朝・昼とリスパダール・デパスを与薬した。夜勤看護師Eは患者が傾眠であり、嚥下が困難な状況で食事や内服ができないこと、手の震えがあったことから、薬剤師Fに相談した。薬剤師Fは、向精神薬を急に止めると悪性症候群の発生の可能性があることを伝えた。看護師Eは主治医に報告し、夕・眠前の内服を中止した。入院3日目、患者が傾眠であることについて、医療安全管理者の薬剤師Gに相談した。医療安全管理者の薬剤師Gは、過量投与の可能性を疑い、確認したところ、実際にはリスパダール・デパスは1日1回寝る前に1錠ずつ服用であったが、他医の精神医が8倍処方をし、8ヶ月分の内服薬を患者に渡していたことが分かった。 他院の精神科医師が、処方日数制限のない薬を8倍処方し、調剤薬局では処方せん通りの用法が薬袋に印刷されていた。お薬手帳に全ての調剤薬局の処方が記入されておらず、薬の情報が一元管理されていない。持参薬を受け取る際、薬を受け取るだけで、中身について家人と確認したり、聴き取ったりすることが行われていなかった。薬剤師は薬品検索時、精神科は向精神薬の量は多いという先入観があり、疑問を持たなかった。看護師が、向精神薬の副作用について薬剤師に問い合わせた時に、十分な患者状態を伝達したり把握しないまま薬剤師がアセスメントを行ったため、悪性症候群の疑いとなり、服薬継続が行われた。
  • 持参薬を預かるときには、患者・家人への質問内容を定め、質問用チェックリストを作成し、その通りに質問を行うことを徹底する。(現在服用中の薬、中止している薬、薬袋どおりに服用していない薬など)
  • 薬剤師の病棟配置時間を延長(持参薬管理の病棟での徹底、タイムリーな指導や病棟カンファレンスへの参加など)する。
  • 持参薬の預かり時、ケースを利用して薬を整理しやすくする工夫する。
確認が不十分であった

判断に誤りがあった
22 第19回 障害なし 準備段階 医師Aが指示したトポテシン91mg/body、ブリプラチン91mg/bodyを医師Bはトポテシン91mg/m2、ブリプラチン91mg/m2で計算した。ダブルチェックをした医師Cは91mg/m2で計算したため、患者にトポテシン135mg、ブリプラチン135mgを投与した。次クールの計算をしているときに気付いた。血液検査をした後次クールの化学療法を中止とした。発見後患者に電話、来院して頂き説明と採血検査をした。 体表面積換算で投与量決める薬剤の投与指示が「body」であった。医師Bは投与量をカルテから抗癌剤投与計画に転記する際に単位を誤って転記した。医師Cは、抗癌剤投与計画書に記載されている基準量は正しいものと思い込んだ。
  • 抗癌剤投与計画書を見直す。
  • 化学療法マニュアルを見直す。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
23 第19回 障害
の可能性
なし
準備段階 1歳7ヶ月の患者に点滴を準備する際、指示量がペンマリン180mgであったため、ペンマリン1V2gを生理食塩水20mLで溶解し、1.8mLを投与すべきところ18mL(1800mg)投与した。 薬剤の一部を投与する際の処方オーダーの記載が標準化されていなかった。患者は、当該科ではなく、小児科病棟に入院していたことも原因となった。
  • 指示の詳細化、統一化などの対策を当該科だけではなく、病院全体で検討していく。
確認が不十分であった
24 第19回 障害
の可能性
なし
準備段階 新人看護師は、点滴の混注作業を分実施した。その際、ダブルチェックを新人同士で行った。ヒューマリンRの指示は単位を口頭で、10単位と指示されたが、100単位混注した。17時、患者に定期の血糖測定を行ったところ、41mg/dLであり、再検後も43mg/dLであった。指示箋を再確認した際、ヒューマリンRの混注量を10単位のところ100単位混注していたことに気付いた。 輸液の準備を行い、新人同士で確認を行った。確認した際は正しい単位を言えていたが、混注する際ダブルチェックを行わなかった。インスリン専用注射器100単位/mLを10単位/mLだと思っていた。単位についての自己の思い込みや勘違いがあった。
  • インスリンを混注する際は、準備段階から実施者と先輩看護師1名で確認をし、単位を準備した後も注入する前に実施者と先輩看護師で確認し注入する。
  • 確認すべき5Rの徹底、ダブルチェック・指差し呼称の徹底する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
25 第19回 障害
の可能性
なし
準備段階 インスリンの指示は、「朝食前0単位」と記載されていた。看護師は、自分の処置シートに記載する際、「朝食前10単位」と見間違え「ノボラピット10U」と書いた。朝食前の血糖測定後、ノボラピット10単位を皮下注射した。別の看護師に指摘され、この患者は朝インスリンを投与しない患者であったことに気付いた。 患者は前日入院であり、情報を十分に把握していなかった。患者はかなりの難聴、軽度認知症あり、朝のインスリンがないことを訴える事が出来なかった。
  • 処置を記載する際には、複数回確認をする。(特に注射・内服の5R)
  • インスリンの指示記載を統一する。例えば、ノボラピット朝前0単位、昼前5単位、夕前5単位、眠前0単位→ノボラピット(0-5-5-0)のようにする。
  • 注射の容器に薬剤や単位を記載する。
  • ベッドサイドに表示する。
確認が不十分であった
26 第19回 障害なし 準備段階 指示はラシックス3mg(0.3mL)であった。通常、ラシックスは10倍希釈し使用していた。看護師は、このことを認識していたが、単位を見間違い、3mLをアンプルから吸った。点滴台の上に注射箋を置き、声に出して指示を読んでダブルチェックをしたが、ダブルチェックの相手も間違いに気付かなかった。注射箋を患者の近くに持って行き、指示書と照らし合わせ、IVする内容と量を確認したが間違いに気付かず、患者にラシックス3mL(30mg)を投与した。使用した量を経過表に記載しようとした際に、「ラシックス0.3mL IV」と記載されており、投与量を間違えたことに気付いた。 ダブルチェックに対する慣れがあった。
  • 再度認識を新たにする。
  • mg、mLを声に出して確認する。
  • NICUに慣れていないスタッフは、ダブルチェックの他に、IV直前、再度他のスタッフに見てもらう(主としてリーダークラスのスタッフ)。
確認が不十分であった
27 第19回 障害
の可能性
なし
準備段階 加齢黄斑変性に対するシロリムス投与の治験のため治験担当医は、薬剤、注射筒、投与指示書を担当CRCから受け取った。指示書には30mLとあったため、準備された30unitインスリン用注射器で30の目盛(300mL)まで吸引した。量が多いと思ったがダブルチェックできない仕組みのため、不安に思いながらも左眼結膜下に注射を実施した。同日の診察で、左眼全周の眼球結膜浮腫、びまん性表層角膜症、眼痛等出現した。2日後、症状が持続するため状況を確認したところ10倍量の過剰投与が判明した。 治験実施計画書により、治験薬を投与する医師と安全性と有効性の評価に携わる医師を分けて設定しており、投与する医師のみが投与量を確認する規定となっていた。そのためダブルチェックできない仕組みとなっていた。投与量が30mLと少ないため、臨床現場で使用可能なシリンジで最も容量が小さいインスリン用の注射器が準備されていた。投与する医師は、インスリン用のシリンジを見たことがなかったため、準備されていたシリンジを治験用のシリンジだと思い込んだ。準備されたシリンジの目盛りが「30」まであったため、「30mL=30の目盛り」だと思った。投与した医師は、手術が控えていたため焦っていた。
  • 投与量指示書について、分かりやすいように写真付きとする。
  • 第三者の確認ができるようにする。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
28 第19回 障害
の可能性
なし
準備段階 ソルデム3A 500mLにヒューマリンR4単位を混注し、60mL/hで持続輸液する指示が出ていた。明け方、担当看護師がソルデム3A 500mLにヒューマリンR4mL(400単位)を混注し、患者に投与した。2時間半後、血糖測定時に低血糖(BS=53)が出現したため、薬剤量を間違えたことに気付いた。 夜勤帯で注射薬の調剤を行い、明け方点滴を開始した。担当した看護師は1年目の新人で、指示内容の確認は他の看護師とダブルチェックを行ったが、調剤時は、他の看護師が別の患者対応等のため、電話がつながらず、ダブルチェックを行わなかった。準備を行った看護師は、単位を意識しておらず、インスリンを「4」注入するとの認識だった。担当看護師は、インスリン専用シリンジ(マイジェクター)の使用を1度経験していたが、インスリンの調剤をすることが少ない病棟であったため、インスリン以外の調剤で使用することが多い5mLのシリンジを使用した。
  • バイアル製剤の箱にマイジェクターの写真を貼り、必ずマイジェクターを使用するように注意喚起を行った。
  • リスクマネージャー会議で事例を紹介し、糖尿病代謝内科の医師からインスリン取扱いの注意点と危険性をレクチャーした。
  • 医薬品の安全使用のための研修に、インスリンをテーマの一つとした。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
29 第19回 障害
の可能性(低い)
実施段階 患者の次女は患者が不眠であるため、「以前、眠れないときにバルレオン錠0.25mg(ハルシオンの同効薬)半分を服用していたことがあるので眠剤を出してほしい」と病棟看護師Aに希望した。看護師Bは、処方されたハルシオン錠0.25mg1回1錠服用の5回分を、患者が自己管理出来ると判断し、患者に薬袋ごと渡した。患者は、薬袋から2錠を取り出し、1錠を服用し、もう1錠は翌日飲もうとTV台の上に置いた。翌朝、病室内のトイレで、トイレの回転扉を開けようと右手でドアのバーを握った際に、ドアの開いた勢いで体のバランスを崩し、尻餅をついた。立ち上がろうとしたが出来ず、再度3回転び、トイレからベッドまでの130cmの距離を40分くらいかけて戻った。患者は、オーバーテーブルに朝食後のお膳をのせ下膳しようと、廊下に前屈位で出てきたのを看護師が発見し、介助にてベッドに戻った。患者は、「足に力が入らない」と告げた。
昼頃、長女が面会に訪室した際に、「患者がぼーとしていて、家と病院とが混乱している、呂律が回らず、尿失禁した。ハルシオン錠の1錠分の空のシートがテーブルの上にあった。間違えて飲んでしまった可能性がある。」と看護師Cに伝えた。その後、患者の希望により、外泊を行ったが、外泊中、股関節痛、歩行困難が生じた。転倒から5日後、XPの結果、右大腿骨骨折と診断された。
眠剤ハルシオン錠を患者が自己管理出来ると判断し薬袋ごと5錠渡してしまい、患者自身が誤って過剰に服用してしまった為、せん妄状態となった。入院による環境変化により数日不眠が続いていた時に、倍量の眠剤を服用した。
内服薬管理に関する情報不足。(不眠時は3~4日間眠れないときに、10日に1回くらいの頻度でバルレオン錠0.25mgの半錠を服用していた事を知らなかった。)貧血が比較的急速ににすすんでいた為、排泄後にトイレでふらついた。患者へは、再三のナースコールの対応をすることを説明していたが、看護師を呼ばずに一人で移動した。リウマチ疾患による、手のこわばり、両足の浮腫により、つかまり立ちをした際に、体を支えられずふらついた。トイレの回転扉の取っ手につかまり、ドアが勢いよく開いたため体が引き寄せられバランスを崩した。
  • 眠剤の自己管理について検討する。
  • 眠剤の与薬時間、量、服用後の観察を行い、記録に残す。
  • 内服薬管理の状況を、残薬確認をし自己管理が出来ているかを評価する。
  • 貧血の状態を把握し、転倒の危険性を患者に説明し協力を得る。
  • 訪室した際に、声をかけ、排泄の関しては排尿誘導にて介助する。
  • 患者のADLの状況を把握し、看護計画に反映する。
  • トイレの回転扉の取っ手(バー)の開閉時の注意点を患者に説明しておく。
判断に誤りがあった
30 第19回 障害
の可能性
なし
実施段階 中心静脈カテーテル挿入時は臨床工学技士が介助につくことが多いが、その時は部屋に入っておらず、看護師Aが一人で介助を行った。麻酔科医Aは、「へパ水ちょうだい」と看護師Aに口頭指示し「ここに入れて」とだけ声をかけた。通常は、中心静脈カテーテル挿入時のへパリン生食水は圧モニター回路用(ビガーボン液500mL+へパリン2000単位にて作成)をトランスデューサーから注射器でひいて使用するため、麻酔科医Aは、当然この時もそうするだろうと思っており、看護師Aの行動は見ていなかった。看護師Aは中心静脈カテーテル挿入の介助につくのは今回が初めてであった。へパ水と言われ何に使うのか疑問に思ったが、へパリン原液を使用すると思い薬品庫に行きへパリン一万単位を取って来た。量の指示がなかったので、少しでいいだろうと思い2~3mL注射器でひき、カップに入れた。この際薬品名の確認や使用量の確認は行わなかった。カップの中に入れた薬剤が少しだったため、麻酔科医Aは「もう少し入れて」と依頼し、看護師Aは残りのへパリンを全部カップの中に入れた。麻酔科Aは、カップにはへパリン生食が入っていると思い、カテーテルコーティングのために挿入前に1mL程度へパリンを使用した。 麻酔科医は指示を的確に伝えず、実施前の確認が行われていない。研修医の指導に重点が置かれていた。新人看護師は医師や指導看護師に確認を行わず理解できないまま実施した。指導看護師は新人看護師に処置の理解の有無を確認しておらず、ひとりで介助につかせた。それぞれが確認をせず、分からなければ聞いてくるだろうという思い込みで処置を行っている。口頭指示の指示出し、指示受けのマニュアルが徹底されていない。中心静脈カテーテル挿入時の準備に対する役割分担が不明確であり、そのためマニュアルに反映されていない。新人看護師に対する技術習得の把握が不十分である。
  • 指示受け時は、復唱し確認する。
  • 口頭指示で薬を扱う際は、基準に従い口頭指示メモを使用する。
  • 薬の指示を行う場合は、薬品名は略さない。
  • 中心静脈カテーテル挿入時の役割分担を明確にし、準備や介助内容を担当者のマニュアルに反映させる。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
【方法間違い】
31 第19回 障害なし 実施段階 人工股関節置換術を脊髄・クモ膜下硬膜外併用麻酔により行っていた。上級医Aはポプスカイン0.375% 5mLを硬膜外よりワンショット注入した。研修医Bは、上級医Aが実施するのを見てポプスカイン0.375%を「硬膜外に入れることを確認した。約20分後、上級医Aはポプスカイン0.375% 6mLを注射器に準備して研修医Bに渡した。研修医Bは、渡されたポプスカインを患者の静脈ルートから投与した。その後、遅番の上級医Cに交代し、上級医Aは痛みに対しては、何を使用したのか聞いたところ、研修医Bは「ポプスカインを静注しました」と答えたことから、誤薬に気付いた。 研修医は、ポプスカインが静脈注射禁忌であることは知っていたが、静脈に注射した。上級医よりポプスカインを渡された時、意識下の麻酔で患者が不安を訴えたり、血圧の変動があったりしていたため他の事に気をとられ、なぜ静脈に注射してしまったのかよく覚えていない。麻酔部では、ボーラスショットは患者への影響が大きく危険なこともあるため、ローテーションの研修医には実施させていないが、今回の上級医師は、分院より転勤してきてまもなくでそのことを知らなかった。口頭での依頼に際し、実施者が復唱して確認していない。麻酔部内でのボーラスショットに関するルールが、統一されていない。
  • 口頭指示は、何をどのように実施するのか具体的に依頼し、実施者は復唱し確認する。
  • 転勤の医師及び研修医に対して、麻酔部内のルールの伝達を徹底する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
【対象者間違い】
32 第19回 障害なし 実施段階 患者Aの家族より「ラキソベロンを下さい」と言われた。
看護師は、病室を間違えて、患者Aの名前を呼ぶと、患者が返事をしたため、患者Aの内服薬(ノルバスク、ミカルディス、ザイロリック、ガスター、マグミット、セフゾン、ヒシターゼ)を、患者Bに渡した。患者Bは服薬後、「今日は長い袋に入った薬はないのか」と看護師に聞き、看護師はベッドネームとリストバンド、薬の袋の名前を確認したところ、間違いに気付いた。
氏名確認を呼称だけで行った。患者は思い込みにより、返事をした。
  • 患者自身に名乗ってもらい確認をする。
  • ベットネームやリストバンドでの確認をする。
確認が不十分であった
33 第19回 障害なし 実施段階 夕方、看護師は、本日担当している患者の薬の内容と患者名を確認し、薬を薬杯に入れ白湯を入れ、ワゴンに載せ移動した。15分後、個室から順に各患者に薬の注入を開始した。患者Aに内服薬を投与するため、患者Aの薬杯と薬袋を床頭台に持って行き、シリンジに薬剤を準備し投与した。次に患者Bの薬をワゴン車の上でシリンジに吸い上げたところ、患者Aが痰を吹き出したため、シリンジを持ったまま患者Aの所に移動し、吸引後、患者Bのアレビアチンとデパケンを患者Aに投与した。投与後、患者を間違えた事に気付いた。 シリンジに薬を吸い上げていた時に、他の業務の割り込みがあり、シリンジを手に持ったまま移動した。薬を注入する時点で患者確認をしなかった。
  • 与薬直前の患者氏名の確認を徹底する。
確認が不十分であった
【その他】
34 第19回 障害
の可能性
なし
指示段階 水溶性プレドニン30mgを2日間、指示を出すのを忘れ、患者の状態が悪化した。 点滴オーダーの確認にミスがあった。当日は処置や指示出しで多忙であった。
  • 点滴オーダーを再チェックする。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
35 第19回 障害
の可能性
なし
指示受け・申し送り
段階
患者は妊娠糖尿病管理目的で入院し、血糖コントロールのためインシュリンが導入されていた。1週間後、患者は誘発分娩にて女児を出産した。分娩後に「17時・19時に血糖チェック、その後はBS 7検に戻す。ヒューマログ8-8-8-0決め打ち再開」と指示が出された。17時、血糖145、食前にヒューマログ注ミリオペン8単位皮下注した。その後、受け持ち看護師が交替し、21時の血糖値が204であったため200以上のスライディングスケールに適応と判断し、ヒューマログ注ミリオペン2単位を皮下注した。翌深夜、次勤務者と血糖検査指示の内容確認した際に間違いに気付いた。 指示内容の確認が不十分であった。血糖値のみにとらわれ、食後もスケール適応と思い込み判断した。ダブルチェックの機能を果していなかった。
  • 指示内容は、はじめから終わりまで確認し、理解した上で行動することを徹底する。
  • 妊娠糖尿病など妊娠中、分娩時、分娩後と適宜指示内容が変更されることを周知し、その上で指示確認ができるよう徹底する。
  • ダブルチェックの目的・方法を確認し、指導を行う。
  • 妊娠糖尿病及びインスリンについて学習し、理解を深め、上記対応ができるようにする。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
36 第19回 障害
の可能性
なし
準備段階 患者は認知症と不安の精査加療目的で入院していた。患者は、看護師が準備した内服薬を患者自身がPTPから取り出し、内服していた。薬袋から薬剤をトレイに準備し、患者の前にトレイを乗せたワゴンを置き、向かい合って内服する様子を見守っていた。1剤飲み終え、PTPが空になっていることを確認し、患者に視線を移すとベシケアを飲み込むところだった。トレイにベシケアのPTPが残っていないため、本人に確認するとそのまま飲んだと返答した。胃カメラ施行し食道にあったPTPを除去した。 原病による一時的な意識障害が考えられる。内服時の観察が不足した。
  • 内服介助の際にはPTPを除去して準備することに変更した。
  • 退院時は1包化する。
  • 一時的な意識障害が起きる可能性がある患者の内服支援方法をアセスメントし、計画の見直しを行った。
観察が不十分であった
37 第19回 障害
の可能性(低い)
実施段階 看護師が患者に点眼を施行した。点眼薬は、1日4回点眼のクラビット・リンデロン・ジクロード点眼と、1日3回点眼のミドリンPであった。手術部位は「左眼」と表示ベッドサイドに表示してあり、左眼には眼帯をしていた。看護師は、クラビット等の点眼は左眼に実施し、ミドリンPのみ別の袋に入っていたため、右眼に点眼するものと思い点眼した。点眼直後、患者に指摘され、点眼部位の間違いに気付いた。看護師は、そんなに害になる薬ではないと説明し、その後、左眼にミドリンPを点眼した。看護師は、通常検査時に散瞳薬として使用しているため害になるとは感じていなかった。30分後、患者は見えにくさを訴えたため、医師が診察した。右眼の眼圧が60mmHg以上で測定不能であり、ミドリンPによる右眼の緑内障発作と診断し、安静臥床とグリセオールの点滴を施行した。患者は、前房が浅いためミドリンPの使用に注意を要する患者であり、その後、30分毎のサンピロ点眼、再度グリセオール点滴、レーザー治療等の加療を行った。 眼科パスでオーダーされた点眼薬には、点眼部位と用法(部位)、薬剤が記入されたシールが薬袋に貼付されている。パス以外の追加オーダーの点眼薬は、用法シールが貼付されていなかった。眼科パス書式は、右眼・左眼の表示が右上隅にあり、○をつけて手術部位の表示をしているがフォントが小さくて読みづらく、点眼の処置記入欄には、左右の記載がなく、記入欄が狭かった。患者のベッドサイドには、手術部位表示板の「左目」のカードが掲げられていた。処方箋控えには、「左眼」と黒字で記載されているが、字が小さく、処方薬品名、点眼部位、回数、用量の全てが同じ大きさと字体であるため、注意喚起しにくい。点眼薬は、患者個別に用法(点眼部位と回数)毎にまとめて保管していなかった。小袋に入っていない点眼薬の用法を記入した用紙は、薬袋には入っていたが、点眼実施の際に袋から取り出して見る習慣がなかった。事故発生後の確認で、用法記入した用紙が薬袋の中に丸まった状態で入っていた。当事者は、新卒で入職3.5ヶ月であった。ミドリンPだけが別のビニール袋に入っていたため、反対眼だと思い込んでしまい部位確認をしなかった。
  • 入院患者の点眼薬処方時は、全て用法シールを薬袋に貼付し、眼用法シールは、字体を大きくし、右眼は青色、左眼は赤色、両眼は緑色とし、点眼回数を記入する。当該事例発生後、用法シールの変更と使用を行った。
  • 点眼薬は、患者毎に用法(点眼部位と回数)毎にまとめて冷蔵庫保管する。
  • 眼科パスの手術眼や点眼部位表示がわかりやすいように書式を変更する。
  • 注意を要する薬剤や手術と反対眼であっても、禁忌や注意を要する点眼薬やケアーがある場合は、入院時に申し送りをする。注意事項は、外来申し送り書に記入し、カルテ表紙に右上に記載する。
  • 看護基準に眼科手術プロトコール(白内障・硝子体)を追加し、新人看護師や部署変換した看護師が処置や薬剤・ケアの知識を得ることができるようにする。
  • 看護部と医療安全対策部で協働し、入職研修時に薬剤安全使用についての研修内容を追加する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
38 第19回 障害
の可能性
なし
実施段階 右前腕の肘関節下8cmにスーパーキャス24Gで血管確保し、前投薬の滴下を開始した。10分後、穿刺部異常なく逆血あり、ドセタキセル333mL/hで投与を開始した。約1時間後、患者に「自分でジャンバーを着たら痛くなった。」と言われた。穿刺部に4×2の腫脹があり、発赤はなく、逆血も認められなかった。袖の中で、ルートがからまっていた。点滴漏れ処置に準じて主治医によりハイコート局注し皮膚科に受診した。 看護師3名が化学療法を開始している患者4名、穿刺中の患者2名、輸血患者1名のケアをしていた。事故発生時、看護師2名は他の患者の血管確保をし、1名はボトルチェンジをしていた。患者が、ジャンバーを無理に着ようとしていることに、気付かなかった。
  • 治療中の衣服の着脱は、声をかけてもらうよう、再度患者指導を徹底する。
観察が不十分であった

患者・家族への説明
 
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(事故事例「放射線検査」)

No. 報告回 事故の
程度
分類 事例の内容 背景・要因 改善策 調査結果
【CT検査】
1 第19回 障害
の可能性
なし
造影剤・
検査薬
患者はヨードアレルギー(オムニパーク)があったため、造影剤の種類をイオメロンに変更し、さらにソルメドロール125mg静脈内注射後CT検査を施行した。
検査後、息苦しさが出現し、血圧80台(触診)となり、酸素投与を開始した。しかしその後も、息苦しさが増強し、冷汗、チアノーゼが出現し、意識混濁状態となった。
すぐに担当医に連絡し対応し、徐々に意識、呼吸状態が改善したが、安全確認のため入院となった。
造影剤アレルギーの患者に造影剤使用の指示が出ていた。
造影剤アレルギーがあり、前処置後の患者であるという情報がCT室担当看護師に伝わっていなかった。患者はショックを起こしていたにもかかわらず、緊急事態のレッドコールがされなかったため、応援が現場に到着するまでに時間がかかり、結果応急処置も遅れた(約5分位)。CT室の救急カートについているはずの酸素ボンベがついていなかった。CT室の看護師は配置当日であり、救急カートについて充分な認識をしていなかった(エピネフリンの指示がボスミンと一致しなかった)。急変後のルートが外れ再確保が困難な状況であり、昇圧剤剤投与が遅れた。医師も看護師も配属された当日の出来事であった。
CT造影後、徐々に症状がでたため、通報の判断が遅れた。
  • ヨードアレルギーのある患者は造影検査はしない。
  • 造影剤アレルギーがある患者様でも、あえて造影検査をする場合には救急カートなどの物品を確認のうえ、医師が立ち会う。
  • 救急カートは1週間に1度定期的に実施しているが、再度点検の実施する。
  • 院内の緊急体制(レッドコール)について、スタッフに周知徹底する。
  • 造影剤アレルギーについての情報共有方法の再検討する。(電子カルテ患者基本情報には入力してあった)
  • 状況に応じて静脈留置針を使用する。
判断に誤りがあった
2 第19回 障害
の可能性
なし
造影剤・
検査薬
肺病変や全身リンパ節病変を評価するため、CT検査を計画した。CT依頼箋に喘息および造影剤のアレルギー歴「有り」と記載されていた。放射線CT担当医師はこれを見て経静脈性造影剤を使用しない単純CTを計画したが、経口ガストログラフィン希釈液にはマークをつけた。上級医はこれに気付かなかった。検査当日、経口ガストログラフィン希釈液の投与指示を受けた看護師は、患者から「ヨードアレルギーがあるが大丈夫か?」と質問されたが、否定せず造影剤を服用させた。調べて中止させた時、すでに半量を服用していた。気分不快、息苦しさ、顔面紅潮、嘔気嘔吐などの症状が出現した。 経口造影剤は吸収されにくいがアレルギーの申告時に配慮する知識が不足していた。ヨードアレルギーと関連する薬品名が関連つけられなかった。
  • インフォームドコンセントを充実させる。
  • 薬物アレルギーに関する教育を充実させる。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
 
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(事故事例「放射線検査」)
〔平成19年1月1日~平成20年12月31日〕

No. 報告回 事故の
程度
分類 事例の内容 背景・要因 改善策 調査結果
【CT検査】
1 第19回 障害
の可能性
なし
造影剤・
検査薬
看護師は検査のために右前腕に20Gイントロカン針で血管確保し、逆血があることを確認しテガダームで固定した。検査室で放射線技師はモイオパーク300シリンジをインジェクターにセットし、逆血の有無を確認したが、逆血は確認できなかった。モイオパークを少量(5mL)手動で注入すると抵抗がなかったため、医師の確認のもと造影を開始した。造影剤注入中、放射線技師は圧を確認していたが、撮影後造影剤の漏れを発見した。 逆血が確認できなかったが、造影剤少量を注入すると抵抗がなく注入できたのでよいと判断した。
逆血が確認できないときの手順がなかった。
  • 逆血が確認できない時は注入しない。
  • インジェクター装着後、逆血確認できない時は医師または看護師が生食にて逆血を確認する。
判断に誤りがあった
2 第19回 障害
の可能性
なし
造影剤・
検査薬
主治医より造影腹部CTの当日施行の指示があった。検査伝票はアレルギーなしに丸印がつけられていた。看護師Aは指示を受け、伝票を放射線科へ持っていった。その後患者は検査用の点滴を施行し造影腹部CTを行った。帰室後呼吸苦、喘鳴、冷汗、SPO280代へ低下あり。血圧130/74、HR70主治医報告した。サクシゾン、ラシックス使用するも、改善みられず、胸レントゲン結果、心不全の悪化所見があった。カルテのアナムネ用紙を見ると、イオパミロン禁止の記載あり。造影剤アレルギーを見逃し、検査施行したことが判明した。 アレルギーある患者には、カルテ背表紙に、アレルギーの印をすることに決まっていたが、それをしていなかった。また、名前等が記入してあるリストバンドへアレルギーがある方は目印のラインがされるルールになっていたが、それもしていなかった。主治医もアレルギーあることを見逃していた。
  • 決められたルールがきちんとされていなかったため、事例検討会にてさらに検討する予定。
  • CT時はカルテを放射線科に持参するため、さらに目立つように背表紙だけでなく、表紙へも印のシールを何枚も貼ることにした。
確認が不十分であった

記録等の記載
【MRI検査】
3 第19回 障害
の可能性
なし
その他 頭部MRIの際、安静臥床を保てないと検査不能のため、セデーション(薬による鎮静)が必要であることを家族に説明した。実際鎮痛薬を通常より多く投与し、10秒ながら呼吸が停止したこと。呼吸抑制の生じる可能性があり、最初からアンビューバックを準備してすぐ対応し、約1分後には自発呼吸が再開し、バイタルサイン、神経症状に変化が無かったことを説明、了解を得た。 確認不十分。連携不十分。
  • セデーション時の上級医の付き添いと指導を徹底させる。
確認が不十分であった

連携
【超音波検査】
4 第19回 障害なし その他 手術前検査として経食道超音波を実施する際、以前キシロカインでのアレルギー反応ありとの電子カルテ記録があるにも関わらず、担当医、検査実施医、検査室が確認をしていなかった。検査実施医が患者への検査前の説明で気付き、キシロカインの使用はせずに急遽代替物品を用意し無事検査を終了した。 外来主治医が電子カルテ端末にて経食道心臓超音波検査をオーダーする際、ポップアップ形式の電話連絡確認『食道動脈瘤やキシロカインアレルギーの無いことを必ず確認して下さい。生理検査室に連絡し、日時を相談してください。連絡のないものは検査できません。検査前6時間は絶飲食でお願いします』の情報が表示されていたにもかかわらず(患者は以前からキシロカインアレルギーがあり、前回入院サマリーに記載があった)、オーダーコメントの記載や電話連絡がされてなかった。検査施行時、(電子カルテ端末画面の再確認など)事前に超音波検査室側のアレルギーに関する十分な確認がされていなかった。電子カルテからアレルギー歴を確認する際に、同意書、チェックリストの類が、オーダー画面と別の場所からプリントアウトしなければならず、システムがわかりづらい。また、アレルギーを記載する「患者プロフィール」画面が活用されていない(まったく何も記載されていない患者がほとんどであるため、その画面を見る習慣がない)。
  • 外来主治医はアレルギー歴を確認する。
  • 検査室はアレルギー歴を確認する。
  • 次期超音波システム(後日稼働予定)では、経食道心臓超音波検査オーダー時に、前回同様、ポップアップ形式の電話連絡確認『食道動脈瘤やキシロカインアレルギーの無いことを必ず確認して下さい。生理検査室に連絡し、日時を相談してください。連絡のないものは検査できません。検査前6時間は絶飲食でお願いします』が表示され、患者用検査案内表、同意書2枚(医療機関用、患者用)、経食道心エコー検査確認表(新設)、経食道心臓超音波検査について(患者説明用)が同時に印刷される。主治医は患者に検査の説明を行った後、食道疾患やキシロカインアレルギーの有無の確認、記入後、主治医はサインを行う。同時に同意書にもサインを行う。
  • 検査予定時刻に患者は検査確認用紙を持参して、検査室に来ていただく。
  • 検査担当医は検査確認用紙のチェック項目に従い、再度患者にチェックし検査を行い、検査査終了後、検査担当医はサインし用紙をスキャナーにて電子カルテに取り込む。
確認が不十分であった
 
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(事故事例「その他の薬剤」)

No. 報告回 事故の
程度
段階 事例の内容 背景・要因 改善策 調査結果
【薬剤間違い】
1 第20回 障害
の可能性(低い)
指示受け ・申し送り
段階
6歳の患児にボスミン吸入を2回行ったが、効果がないためデカドロン静注を行うこととなった。医師は、研修医に、口答指示で「ボスミン8mg1V静注」と指示した。研修医は「8mgのバイアルはなく、2mg/mLのアンプルしかない」とボスミンアンプルを提示したが、薬品名を見ず、容量だけ確認し2Aを点滴静注するよう指示した。研修医は「2A混注していいですか」と確認したが、「混注してください」と医師に指示されたため、ボスミン2A+生食50mLが10mL/hで点滴静注した。その後、患児は呼吸状態が悪化し、意識レベルが低下した。 思い込み(デカドロン投与を指示したつもりで、ボスミンの指示を出した)。注意力(2度の確認のチャンスで、誤りの発見ができなかった)。集中力不足(午前3時、眠くて疲れていた)。確認不足(2度の確認のチャンスで、誤りの発見ができなかった)。知識不足(2mg/mLのバイアルのデカドロンもあるといった知識が不足していた)。
  • 口頭のみで指示を出さない。
  • 言い間違いを防ぐため、なるべく紙に書いて、その紙を見せながら指示を出す。
  • 自身で施行する場合は以下と同様に確認を徹底する。
  • 薬剤投与前に、できれば2人以上で使用する薬剤とその投与量を確認する。
  • 患者の容体変化の原因が不明な時、早急に上級医に相談する。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

身体的状況(寝不足・体調不良等)

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
2 第20回 障害
の可能性
なし
準備段階 患者は、心臓カテーテル検査目的で2泊3日入院した。退院時処方として、医師は、手書き処方せんに「アイトロール錠20mg」と記載したが、薬剤師は「マイスタン錠10mg」を調剤し、調剤鑑査でもその誤りを見過ごし、病棟へマイスタンを払出した。病棟看護師は、薬剤名を確認せず、薬袋の氏名のみを確認し患者に渡した。患者は、退院後マイスタン10mgを服用した。1ヶ月後、患者は、ふらつき・構音障害・眠気などの症状を訴え、外来を受診した。MRI検査を実施したが異状はみとめられなかった。受診後、患者は、保険調剤薬局に行き、退院時に受け取った薬を提示した。保険調剤薬局の薬剤師は、退院時はマイスタン10mgが処方されているが、今回の外来処方箋は以前と同様アイトロール錠20mgで処方されていることに気付き、主治医に確認した。主治医は前回退院時の処方箋と診療録を確認したが、処方した薬剤は、アイトロール錠20mgであった。 手書きの処方箋で字が読みにくかった。「アイ」が「マイ」に、「ロ」が「タ」に読めた。アイトロールをマイスタンと思い込み、マイスタンを調剤した。
  • 誰が見ても解る字で記載するよう医師の協力を求める。
  • ダブルチェック体制を強化する。
  • 病棟では、患者に薬剤を渡す際に看護師と患者共に薬剤の確認を行う。
  • 電子カルテの導入の検討。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
3 第20回 障害
の可能性(低い)
準備段階 患者にオメプラールを静脈投与するところバンコマイシンを静脈投与した。リーダー看護師と担当看護師が2名で手順に則り、薬剤指示書の日時、薬剤名、薬剤量、薬剤を確認し準備した。医師の指示により、看護師が静脈投与した。その後、夜勤帯の看護師より他の患者に処方されたバンコマイシンが不足していることに気付いた。空アンプルを探したところ、ゴミ容器からバンコマイシンの空アンプルとオメプラールと記載したシリンジを発見し、間違いが判った。 ダブルチェックの方法が充分でなかった。注射実施時の3回の確認(薬剤を取り出す時、薬剤をつめる時薬剤を投与するとき)をしていなかった。医師の業務を看護師が実施している。オメプラールとバンコマイシンの薬剤ボトルが同じサイズで類似していた。
  • 注射実施時の3回の確認を5Rで行うことを教育していく。
  • ダブルチェックの方法を再検討する。
  • 静脈注射のガイドラインに基づいて看護業務を行う。
確認が不十分であった
4 第20回 障害
の可能性(低い)
準備段階 患者は妊娠40週6日であり、分娩誘発目的で入院した。入院翌日から薬剤アトニン0を用いて分娩誘発を開始し、その翌日も同薬剤を点滴投与した。その後、誘発剤の点滴を続行しながら経過観察を行っていた。誘発剤の点滴残量が少なくなったため、助産師はアトニンO 5単位+5%グルコース500mLの指示箋を見ながら、ウテメリン50mg+5%グルコース500mLを作成し患者に投与した。約4時間後、患者の陣痛は遷延し、医師が点滴の間違いに気付いた。 輸液作成の際のルール違反(指差し、声だし確認)があった。分娩介助のトレーニング中であった。
  • 輸液作成手順、薬剤確認方法を徹底する。
  • 分娩介助のトレーニング中、夜間の分娩進行者の担当は行わない。
確認が不十分であった
5 第20回 障害なし 実施段階 血管確保の際に使用するアンギオカットや固定用テープ、確保用生理食塩液2mLが入った注射器をトレイに入れて準備していた。また、同じトレイにシリンジポンプで持続注入する予定であった注射器に準備されたカタボンHi(ドパミン)50mLが一緒に入っていた。研修医(当直医)は血管確保を依頼され、投与前のダブルチェックをせずにカタボンHiが入ったトレイを持って、病室へ行った。血管確保をした後、カタボンHiをワンショット静脈注射した。患者から気分不良の訴えがあり、途中で中止したが、既に35mL静脈注射していた。 投与前にダブルチェックの確認をせずに、投与方法を誤った。点滴確保の物品と一緒に同じトレイに準備していた。カタボンHiが入った50mLシリンジには準備した時の注射針が付いていた。
  • 投与前ダブルチェックを必ず行い5Rを確認する。
  • 血管確保用トレイと実施薬剤は別のトレイに準備する。
  • シリンジポンプ使用薬剤にはエクステンションチューブを接続した状態でトレイに準備する。
確認が不十分であった
6 第20回 障害なし 実施段階 手術の際、麻酔科医の指示で看護師がドルミカムを静脈注射するところ、エスラックスを投与し、患者は頻脈、呼吸困難となった。麻酔科医が輸液ラインを確認したところ、ドルミカムではなく、エスラックスのシールが貼付されているシリンジが、三方活栓に接続されており、エスラックスを投与したことが判明した。 薬剤は本人(看護師)がシリンジに詰めたが手にとる時に薬剤の確認をしていない。
ラベルも同じような大きさのラベルではあったが、表示の色は違うので間違わないと思った。医師の指示を復唱していたがシリンジのラベルを見ていない。実施後も他の事に気をとられ使用した薬剤の確認をしていなかった。麻酔医師は硬膜外麻酔のため手袋をし、看護師に指示をして処置をする体制であった。三方活栓にはエスラックスのシリンジ10mLが接続されていた。
  • 注射を実施する際は、実施前・中・後の声出し確認と指差し呼称を行う。
  • 薬剤を麻酔医と看護師双方が確認の後、実施する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
7 第20回 障害なし 実施段階 左右内視鏡下鼻内手術・鼻中隔矯正術・下鼻甲介粘膜切除術を実施した。患者は、キシロカイン、アスピリンのアレルギーがあった。前処置として、塩酸コカイン100mg+蒸留水1mL、ボスミン液(外用)原液をガーゼにしみ込ませ鼻腔へ塗布した。手術開始後、耳鼻咽喉科医師は、0.1%ボスミン液(外用)を生食の入った滅菌容器に「ちょこっと」入れるように指示した。2年目の看護師は医師に「どのくらいか?」と確認し、医師が目視で確認しながら生食20mLと0.1%ボスミン液(外用)を、目分量で容器に入れた(後の計測によりボスミン液は約4mL入ったことがわかった)。医師がその容器から10mLを注射器に吸引し2mLずつ5回局注した。その後、心拍数150回/分まで上昇し、不整脈出現し、酸素飽和度80%に低下、心室細動出現した。胸骨圧迫を開始し、除細動器によるショックを計6回施行(出力360J×6回)し、患者は軽快した。
手術後2週間後、今回の心停止の影響によるものと考えられる右側脳室前角近傍、右小脳に梗塞像をMRI検査により発見した。神経内科受診し、特に症状ないため、治療の必要なく経過観察となった。
通常は前処置として「1%キシロカイン注射液エピレナミン含有」を局注するところ、患者はキシロカインアレルギーの既往があるため、医師は「ボスミン(アドレナリン)」入りの生食での代用を考え、看護師にシャーレにボスミン液(外用)を「ちょこっと」入れるよう指示した。看護師は、そのような経験がなく、医師にどのくらいの量か確認し、医師に見てもらいながら、塗布麻酔で使用したボスミン液(外用)のボトルから目分量で入れた。使用したボスミン濃度を計測したところ0.18mg/mLであった(通常使用濃度は0.01mg/mL)。製薬会社に問い合わせたところ、ボスミン外用液と注射液の成分は添加物も含め同一のものである。医師は、他院で一度キシロカインアレルギーの患者に対し、外用ボスミン薬を投与したことがあるが、5000倍希釈の液であったため、今回より薄く副作用が出なかったと考えられる。医師は、看護師へ「ちょこっといれて」と曖昧な表現で指示しており、使用量に関する意識が低かった。
ボスミンの静注や外傷等による内因性のカテコラミンの多量放出により蛸壺型心筋症を発症することがある。粘膜内への局注は、静注と同様の作用があるかどうかは明確にはわからない。また静脈内に入った可能性も否定できない。今回は局注したボスミンが、過量投与であったことが直接の原因で心停止をきたしたと考えられる。
  • 耳鼻咽喉科における局注用、塗布用のボスミンの濃度の統一を図り使用基準を作成する。
  • ボスミン外用液(塗布・噴霧)を使用する場合、局所止血目的の場合は、5000倍、1万倍希釈する。
  • 局所麻酔約の作用延長を目的とする場合は、10万倍希釈する。
  • ボスミン注射液(局所注入)を使用する場合、20万倍希釈する。1回の手術あたりのアドレナリンの総使用量は0.3mg以内とする。
  • 術中、薬剤の調合は基本的には医師が行う。不可能な場合は、医師が見ているところで看護師が調合する。
  • 薬剤の調合時は、ボトルやアンプルに記載された薬剤名をフルネームで声に出して確認する。
  • 麻酔科医師にボスミンの使用を伝達する際は、使用方法に加え「○万倍ボスミン△mL」と表現する。
判断に誤りがあった
【薬剤量間違い】
8 第20回 障害
の可能性(高い)
指示段階 生後45日の超低出生体重児の患児に対し、動脈管開存症に対してインダシンを投与していたが、ポンタール内服を行うことにした。主治医は、力価で1.5mg投与すべきところ、シロップ量で1.5mL(48.75mg)の処方と指示を出し、看護師がその通りに投与したため、患児に約30倍の過量投与を行った。上級医がカルテを見て過量投与に気付いた。 主治医は別件の緊急入院のため当直上級医に18時から呼び出されていた。ポンタール投与は当直上級医からの指示であったが、主治医は初めて処方する薬剤であったため知識が不足しており間違いに気付かなかった。また当直上級医も多忙で投与指示量の確認が出来なかった。また、担当看護師も2年目でポンタールの投与についてほとんど経験がなかった。
  • 初めて処方する薬剤の時は、上級医とダブルチェックを行う。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
9 第20回 障害
の可能性(低い)
指示段階 患者は、スピロノラクトンを25mg内服していたが、腎機能増悪と高カリウム血症を認めたため、医師はスピロノラクトンを減量し、半量の12.5mgを処方することとした。患者が内服していたスピロノラクトン25mgは錠剤であったが、それ未満の量を処方するため、医師はアルダクトンA細粒10%(有効成分:スピロノラクトン)を製剤の総量を意図して125mgと処方入力した。薬剤師は、処方入力された「125mg」を有効成分の量として調剤した。患者が12日間内服したところで薬剤部が間違いに気付いた。 「mg」で処方された場合は有効成分の量を示していると思った。「アルダクトンA(有効成分:スピロノラクトン)125mg」は通常成人に投与する量として大きく逸脱していなかった。錠剤から細粒へ薬剤を変更する際、投与量の記入法に誤解を招く可能性がある。
  • 医師、薬剤師、看護師が、投薬の際に薬剤の種類や力価をそれぞれの持ち場でしっかり確認することの必要性を再認識する。
確認が不十分であった
10 第20回 障害
の可能性
なし
指示段階 0ヶ月の未熟児に対して、インダシン投与を行うこととなった。医師は、注射指示を出す際、投与量を0.07mgとするところ、0.7mgと指示し、投与量を10倍としていた。その後、医師は、注射ラベルの確認すると、指示が間違っていることに気付いた。患児には、すでに約0.55mg投与されていた。 医師の指示誤り(週末に重症児の入院が続いたことなどで、注意力が散漫していた)。この治療方針は、過去にあまりなく、看護師も指示受け時に過剰投与量の発見が出来なかった。
  • 指示出し後は、間違いがないか確認をする。
    ・ 新しい治療方針は、研修などで周知させる。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
11 第20回 障害なし 指示段階 医師は、患者に中心静脈栄養ポートからのインスリンの持続投与を予定していた。インスリンを指示入力する際、ヒューマリンRを「24単位」と指示するところ、「24mL(1mL100単位)」と指示した。医師は、入力する単位(単位数と用量)の違いに気付かなかった。また、入力した医師も指示を受けた看護師もその間違いに気付かなかった。 インスリンのオーダーを準夜帯に行ったが、オーダーすべき単位(単位数と容量)の間違いに気付かなかった。オーダーを出した本人も再度チェックすべきであったが、オーダーを受けた看護師もダブルチェックし、間違いに気付くべきであった。
  • オーダリングでインスリンのオーダー時、複数回の確認を行う。
  • オーダーを受けた看護師もダブルチェックする。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
12 第20回 不明 指示段階 原発性肺高血圧症等で入院中の患者に対し、中心静脈カテーテルからの高カロリー輸液を投与していた。最初1日目~3日目はフルカリック1号を、その後の4~5日目にはフルカリック2号を投与していた。高カロリー輸液投与5日後に高カリウム(6.3)を認めたため、担当医(研修医)は指導医と相談し、夕方輸液をカリウムを含まないハイカリックRFに変更するよう指示した。この時、1000kcal/500mLを指示するところ2000kcal/1000mLと指示した。その翌朝、高血糖を認め、日中はインスリンにて対応した。夜間、ハイカリックRFによる投与エネルギー量が2000kcalと2倍量であることに気付いた。担当医(研修医)はフルカリックとハイカリックRFの含有エネルギーを同等と思い込み、カロリー計算を誤っていた。 指導医に自分のオーダーしたものを十分に確認してもらわなかった。オーダー変更は日曜日の出来事であり、病棟内に相談できる指導医がいなかった。平日も通常業務が多忙であり、見直される機会が持ちにくかった。自分に高カロリー輸液の知識が不足していた。フルカリックの含有エネルギーとハイカリックの含有エネルギーは同等であるという思い込みがあったため、計算ミスにつながった。電子カルテ上のDI表示を調べながらオーダーを考えたが、不慣れな自分にとって、ハイカリックRFの成分表示や用量・用法の表示法がまぎらわしいものであった。自分のカロリー計算は正しいと思っていたので、患者が高血糖になったときも、ハイカリックRFの含有エネルギーを再確認するという選択肢が頭から外れてしまった。
  • 指導医には十分に確認する。
  • 自分が正しいと思った行動についても、イベント発生時に見直す。
  • 薬情報の表示を改善する。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
13 第20回 障害
の可能性(低い)
指示段階 主治医は、患者にメネシットで症状が改善見られたため、翌日からレキップ(0.25mg)6錠3×朝・昼・夕の処方計画をたて、副主治医(研修医)に処方オーダするように指示した。研修医は、指示に「○月×日より、レキップを6錠3×朝・昼・夕」と記載したが、「レキップ0.25mg6錠分1」とオーダー入力した。患者は処方通りに内服したため、眠気と排尿障害を認め、薬剤性神経因性膀胱をきたした。
  • 主治医は口頭のみで副主治医に指示し画面上での最終確認を怠った。
  • 処方時の最終確認を怠った。
  • 与薬時疑問に思わなかった。
  • 研修医の指示の場合には、主治医がオーダー確認することを徹底する。
  • 新規の処方開始などは、指示を出した際は看護師に伝える。
  • 患者には薬剤変更時は伝える。
  • 患者へ、不明なことなどがあれば何でも話すように話しかける。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
14 第20回 障害
の可能性(低い)
指示段階 主治医は、メネシット投与で症状の改善を認めたので、更に症状改善を図る目的でレキップを使用する計画を立てた。副作用として眠気があるので少量より増やす予定で副主治医(研修医)に処方オーダするように指示した。副主治医は、指示に「○月×日朝よりレキップを開始します。レキップ0.25mg6錠3×(朝昼夕)」と記載し、処方した。処方オーダーでレキップ3×と入力すべきところを6錠分1と入力した。翌日深夜看護師が朝食後の薬剤を持参した。患者は錠剤が多いと思ったが看護師が持参したので安心し6錠内服した。朝、副主治医は画面を見ている時、薬剤の処方間違いが判明した。2時間後患者は、眠気を訴えた。夕方より排尿困難を訴えた。泌尿器科受診し薬剤性神因性膀胱を疑われエブランチル内服と間歇導尿を行った。翌日退院予定であったが、そのため入院が延長となった。 主治医は口頭指示で研修医オーダの確認を怠った。
研修医は、処方オーダする際の最終確認を怠った。
看護師は指示受け時の確認が不足したこと。
薬剤部からの疑義もなかった。
患者自身違和感を感じたが看護師への過信があった。
  • 研修医の指示は指導医が必ず確認すること。
  • 新規の処方開始などは入力の際には必ず口頭でも看護師伝える。
  • 患者へも薬の量などを含めて患者自身へ事前に説明を行う。
  • 患者の疑問をいいやすい環境調整を行う。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
15 第20回 障害
の可能性(低い)
準備段階 看護師Aは朝、12時に更新するメイン点滴(フィジオ35 500mL+ヒューマリンR10単位)を作成する際、看護師Bと注射ワークシートを見ながら、声だし確認し、ヒューマリンR10単位混注するところ、100単位をメインの点滴に混注した。その後、患者は別の病棟に転棟するため、作成したメイン点滴を転棟先に持参した。看護師Aは午後別の患者の処置をしていた際、インスリンの量を間違えたことに気付いた。すぐに転棟先の病棟へ連絡し、メイン点滴を中止してもらうに伝えた。患者は、12時頃 低血糖症状訴え(血糖61mg/dL )、40%ブドウ糖20mL静注し、その2時間後、再度、患者が低血糖症状訴え(血糖42mg/dL)、40%ブドウ糖20mL 2A投与した。 ヒューマリンの単位(1mL=100単位)を考えずに、無意識に点滴に混注した。インスリンに対する知識不足、危険な薬であるということの認識不足があった。ヒューマリン専用シリンジとツベルクリン用1mLシリンジを勘違いした。ダブルチェックしたが、1年目同士であり、相手も気が付かなかった。ダブルチェックした看護師は、いつもと違うシリンジだと気付いたが、何か理由があるんだろうと思い込んだ。1mLシリンジを使用する頻度が少ないため、分からなかった。ヒューマリン専用シリンジと1mLシリンジが隣同士に配置してあった。
  • ダブルチェックは先輩と行う。(1年目同士では行わない)
  • 思い込みをなくす。
  • ワークシートを見せながら、指さし呼称にて確認する。
  • ダブルチェックを依頼する相手を選ぶ。
  • ダブルチェックを依頼された際、チェックする側にも責任があることを再認識し、疑問に思ったことは相手に確認する。
  • ヒューマリン専用シリンジと1mLシリンジの配置を変える。
  • ヒューマリンは使用直前に混注する。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
16 第20回 障害なし 準備段階 患児に対し、10倍希釈デスモプレシン(デスモプレシン0.5mLと生食4.5mL)0.04mLを1回/日点鼻の指示が出た。指示受けした看護師Aと実施する看護師Bで与薬準備を行った。指示を指差し確認し0.04mLを復唱、薬液をマイクロシリンジに0.4mL吸い上げた状態で「0.04mLです」とシリンジを見せながら確認した。シリンジを見た看護師は、「.4mL(の記載)」を「0.04mL」と見間違い、患者に0.4mL投与した。 シリンジの表示がメモリ横に「.4mL」と表示され「0.04mL」と読み違えやすかった。デスモプレッシンを使用する回数が少なく、今回のような微量投与の知識がなかった。
  • デスモプレッシン使用時の知識を学習する場を持ち、微量で使用することを現場で確認した。
  • マイクロシリンジの0.1mL以上のところにテープを貼り間違いにくい工夫をした。
  • ダブルチェック時相手に誘導されない確認方法を院内で検討する。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
【方法間違い】
17 第20回 障害なし 指示段階 急性肺炎で入院した2歳の患児に対し、担当医は、メチルプレドニゾロンを投与する際、静注薬の「デカコート」ではなく筋注用の「デポ・メドロール」を処方した。看護師は、静脈投与の指示に基づき「デポ・メドロール」を静脈投与した。担当医は、端末に「メチルプレドニゾロン」と入力したところ、「デポ・メドロール」が検索され、「デポ・メドロール」が「メチルプレドニゾロン」であることを確認したが、使用方法までは確認しなかった。指導医は口頭で報告を受け、使用について承諾したが、使用方法については確認しなかった。 医師がデポ・メドロールが筋肉注射専用と知らずに処方した。薬剤師に限定薬品であることの認識がなかった。看護師がデポ・メドロールが筋注専用と知らずに注射を実施した。
  • 電子カルテのオーダー薬剤名称に筋注専用薬であることを示す「筋」を表示することで、識別をしやすくする。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
18 第20回 障害
の可能性
なし
指示受け ・申し送り
段階
患者は、生体肝移植後の出血のため木曜日にICU入室した。翌日の昼から患者にプログラフの持続注射を開始した。医師は、2日でプログラフを終了するつもりであった。2日後、プログラフがなくなり、指示書に中止の指示がなかったため、担当看護師は追加投与した。担当看護師は、持続注射を継続していると申し送りを受けていたため、主治医に確認しなかった。3日後、プログラフがなくなり、指示書にプログラフ持続注射の指示がなかったため、別の担当看護師が主治医に確認したところ、土曜日のうちに終了する予定だったプログラフの持続注射が追加更新されていたことが判った。 医師は自分でプログラフの管理をしていたため、看護師が追加することは考えていなかった。看護師は医師が自分で管理していることを知らなかった。追加静脈注射と内服の切り替えの時期だった。土日で月曜日までの薬剤が病棟にあった。病棟薬剤師がいない。
  • プログラフ取り扱いマニュアルの見直し指示書の記載を改善(中止などもきちんと記載するなど)する。
確認が不十分であった
【速度間違い】
19 第20回 障害
の可能性(高い)
準備段階 患者は、入院後、抗不整脈薬としてリスモダン、ワソランを投与し、アンカロンの投与を33mL/hで開始した。6時間投与後に17mL/hに減量する予定であったが減量できておらず、翌日の深夜1時頃に気が付いて減量した。その時、心電図に著明な状態変化はなかった。その約9時間後、患者からのナースコールで看護師が訪室したところ、意識消失し、呼吸停止となった。心マッサージ、アンビューバッグ加圧、ICU医師の到着後、気管挿管、エピネフリン投与、AEDによる除細動を行い、心拍再開した。 アンカロンの投与は初めてで投与時間に厳しい制約があることを知らなかった。注射指示書に入力されていた「6時間投与後17mL/hに減量」の指示を見落としていた。点滴指示書のアンカロン33mL/hの部分に手書きで「終了後持続」とあり、矢印で次のアンカロン17mL/hの指示が出されていたため、現在の点滴終了後17mL/hで投与すると勘違いした。日勤看護師から「終わったら減量を」と申し送りがあり、点滴終了後減量すると思い込んだ。勤務はじめに点滴指示書を確認後、アンカロンのページを見直したのが勤務終了後であった。
  • 勤務最初だけでなく、途中で注射指示書を見直す。
  • 途中で量が変わる輸液には点滴ボトルに開始時間と何時間投与するか、時間投与量を記載する。
  • 重症者や循環器溶剤投与患者には前任看護師と患者の部屋に行き、輸液チェックを2人でする。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
20 第20回 障害なし 実施段階 手術室で、麻酔科医の口頭指示により、患者にフェンタニルの流量を6mL/hから1mL/hに変更した。その際、麻酔科医は指示の変更を記載せず、手術記録には、「6mL/h2日分」と記載されたままであった。病棟の看護師Aに申し送りをする際、手術部の看護師Bはフェンタニルの流量を6mL/hと申し送り、また看護師Bもフェンタニルの流量が変更されていることを知らなかった。看護師Aは、帰室後、フェンタニルが6mL/hではなく1mL/hであることに気付いた。帰室10分後、看護師Bは看護師Aにフェンタニルの流量を6mL/hに変更する電話をした。病棟に送られた手術記録には訂正がなく、看護師Aはフェンタニルの流量を1mL/hから6mL/hに変更した。その後、フェンタニルの流量が麻酔科医が指示した量と違っていることが分かった。麻酔科医は、指示変更をした後、その内容を記録に記載しなかった。看護師Bは「フェンタニルを6から1へ減量」と言ったつもりであり、看護師Aと看護師Bの間で確認が不十分であった。看護師Aは電話であり指示ではないと思い、口頭指示票を使用しなかった。 何か変だと思う知識がなかった。電話連絡での受け取り方の違いがあった。確認の方法が曖昧であった。
  • 点滴の組成や流量などは看護記録の記載だけでなく麻酔票も確認する。
  • ハッチウェイで手術部看護師と病棟看護師が輸液と指示票で指差し呼称確認する。
  • 変だと思ったことはすぐに確認する。
  • 口頭指示はマニュアルに沿って行う(組成、流量、規格などは注意する)。
  • 看護記録は複写のため、変更が生じた場合は、病棟・手術部ともに赤字で変更し、変更点は直接手渡しで送る。
  • 主治医は、麻酔票で組成を確認して指示を出す。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
【対象者間違い】
21 第20回 障害なし 準備段階 患者Aの輸液ポンプのアラームが鳴ったため、点滴台に準備してあった輸液を持参し交換した。この時輸液ボトルに記載されている患者氏名と患者Aに氏名の確認をしなかった。次に患者Bの点滴が終了し交換したがこの時も確認しなかった。
  • 確認行為が徹底されていない。
  • 確認行為の徹底を周知する。
確認が不十分であった
【その他】
22 第20回 障害なし 実施段階 医師は、患者には6年前にセフェム系抗生剤で薬疹と考えられる既往があることを確認し、放射線科カルテ及び新患紹介用紙のアレルギー欄に記載したが、オーダリング画面のアレルギー薬剤の入力方法を知らず、また今まで記載したことがなかったためオーダリング画面にアレルギー薬剤の入力をしなかった。医師は、血液内科の主治医の指示により第3世代セフェム系抗生剤投与の指示を受けたが、この時、主治医に患者がセフェム系薬剤による薬疹の既往があることを伝えず、セフタジジム2g2×をオーダーし、患者に投与した。翌日、患者に体幹部皮疹と軽度の膨疹を認めた。医師は、ファーストシン2g2×に指示を変更し、皮膚科に診察を依頼した。皮膚科受診の結果、体幹部融合傾向のある紅班を認め中毒疹を疑った。原因として複数の薬剤が開始されたため、薬剤の特定は困難との返事があった。4日後、皮膚科再診の際、顔面から体幹・四肢に紅班を認め憎悪傾向にあり、他系統の抗生剤への変更と強ミノC投与の指示を受けた。 抗癌剤誤投与後の骨髄抑制に伴う感染症に対する抗生剤投与に関して、入院時、6年前にセフェム系抗生剤で薬疹と考えられる既往があることを確認し、放射線科カルテ及び新患紹介用紙のアレルギー欄に記載していた。しかし、血液内科に薬剤アレルギーを伝えることなく、また、オーダリングシステムの薬剤アレルギーの記載方法も知らず記載していなかった。指導医もこれに気付かず、看護師、病棟担当薬剤師もそれぞれ入院時にアレルギー歴を確認し、看護日誌や薬剤師の患者情報用紙に記入していたが、セフェム系抗生剤が指示されたと気付かなかった。
  • 医師は、薬剤投与指示の際、アレルギー歴をダブルチェックする。
  • 確認したアレルギー歴は必ずオーダリングシステムに入力する。
  • 看護師、担当薬剤師はオーダリング画面アレルギー入力を確認する。
  • 診療録、看護記録の決められた場所の記載を確認する。
  • 担当薬剤師はアレルギー薬剤の指示を確認する。
  • 研修医の指導医は指示・記録を確認し、サインをする。
確認が不十分であった

記録等の記載
23 第20回 障害
の可能性
なし
実施段階 点滴漏れあり。2日後、皮膚発赤・水疱形成時主治医報告、ゲンタシン塗布し様子観察していた。点滴漏れから4日後、小水疱を形成し発赤が軽度みられ、医師の指示でゲンタシン塗布後ハイドロサイト貼用した。この時皮膚の潰瘍化、欠損は見られなかった。点滴漏れから9日後ハイドロサイト除去した時、潰瘍形成しており皮膚科受診となった。 点滴漏れ抜去後の皮膚の観察が不充分であり、観察や医師への報告や指示受け内容が看護記録に記載されていない。そのため継続した観察やケアができていない。状態変化や異常発見時の速やかに報告・情報共有ができていない。
  • 日頃よりの医師と看護師間のコミュニケーション不足があるため看護師間、看護師と医師間、看護師と師長及び副師長間の報告し易い職場の土壌作りを行う。
  • 日勤帯は主治医、夜間・休日は当直医への報告を徹底する。
  • 医師、看護師のカンファレンス時の事例検討会を実施する。
観察が不十分であった
 
24 第20回 障害なし 実施段階 患者は反対足の手術目的のため再入院の予定があり、退院時に医師よりプロレナール中止と指示された。本人に退院時に説明に行くと、本人は「昨日の人に説明して貰ってるし、飲んだらいけないんでしょ。」と理解していた。本人、家族ともに理解していたため口頭にて中止薬の説明を行った。しかし、後発品のリマプロストアルファデクスで処方されていたため、患者は内服を中止せず、入院時まで内服していた。その結果、手術を延期することになった。 患者はプロレナールは中止とは理解していたが、退院処方にはリマプロストアルファデクスにて処方されており、患者は名前が違ったため内服していいと思った。
  • 内服薬を目の前で確認し、本人、家族ともに説明し、内服薬の薬袋にも記入する。
患者・家族への説明
25 第20回 不明 実施段階 患者に末梢点滴が漏れて腫脹が見られた。患者は疼痛を訴えなかったため、氷や冷シップにて対応し軽減を図った。しかし、その後、体温40.1度に発熱した。末梢点滴漏れによる蜂窩織炎が発症した。 末梢点滴キープ中の患者の刺入部の観察を怠った。
  • 刺入部の観察の徹底を図る。
観察が不十分であった

 
26 第20回 障害
の可能性(低い)
実施段階 2歳の患者は、人工呼吸器を装着していた。右足背末梢静脈から、アミノグランド、鎮静目的にマスキュラックス、ドルミカムを輸液ポンプとシリンジポンプを使用して持続点滴をしていた。前日の日中より、呼吸状態の悪化、痙攣発作を繰り返している状態であった。輸液ポンプの閉塞アラームが鳴ったが、刺入部の発赤、熱感、硬結を認めなかったため点滴を続行した。3時間後に輸液ポンプ流量異常アラーム、その30分後に再度アラームあり、三方活栓を確認して続行した。その後、輸液ポンプアラームあり、刺入部右足背指先から下腿に腫脹、右第1から4趾足背部の白色変調認め、点滴中止の指示を受けた。ペミロック施行したが通過せず、輸液中止した。留置針は抜針せず、シーネ固定も外さずそのままとした。輸液ポンプの最初のアラームが鳴って8時間半後、右第1から4趾と足背、足底の一部が紫色にまだらになっているのを発見した。シーネ固定を外して、右足を挙上マッサージやタオルケットでの保温を行った。皮膚科医師により、減張目的で10mm切開を施行した。 準夜帯より何度も輸液ポンプ閉塞アラームが鳴っているが、刺入部の観察に終わり下肢全体の観察がされていない。輸液漏れを確認しているが留置針を残したまま、シーネ固定を外さない状態でその後約6時間経過している。当直医は状態報告を受けたが、下肢の変色、腫脹の報告はなく「輸液が漏れた」との認識で患者の状態を観察していない。患児は、血管確保が難しく差し替え困難な症例であったが、高濃度輸液と危険薬の3種類を同時点滴するには、副ルートや別の方法での血管確保を考えるべきであった。夜中に、小児科医を自宅から呼び出すことに躊躇した(当直は内科医)。
  • 複数種の持続輸液が必要な場合、末梢血管確保は2ルート確保する。あるいは、CVルートを確保する。
  • 夜間帯の輸液管理はライトで照らし、刺入部の観察だけでなく血管外漏出が疑われる場合は、シーネを外して観察する。
  • 血管外漏出が確認されたら、すぐに抜針する。
  • 組織毒性の強い薬剤を使用する場合は、輸液ボトルに表示をするなどして観察を十分に行う。
観察が不十分であった
 
27 第20回 障害なし その他 患者は、深夜に看護師を呼びベッドから降りようとしていた。妻に指示のロヒプノールを点滴投与することを説明し、60mL/hで患者に投与した。約20分後、モニター上HR30台となり訪室し声かけに反応しなかった。気道確保し当直医師に連絡救急医師等にて挿管しICU入室し治療し回復した。 観察不足・モニターリング不足であった。
  • ロヒプノールの慎重投与、投与中の観察を徹底する。
観察が不十分であった
 
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(事故事例「化学療法」)

No. 報告回 事故の
程度
段階 事例の内容 背景・要因 改善策 調査結果
【薬剤間違い】
1 第20回 障害
の可能性
なし
指示段階 手術後の補助化学療法として肺の小細胞癌に対し化学療法を開始した。第1日目にエトポシド150mg、カルボプラチン280mgを投与し、第2日目、第3日目はエトポシド150mgを投与する予定であったが、治療のスケジュールを誤って、第2、3日目にもカルボプラチン280mgを投与した。8日後、白血球数の更なる減少を認めた。その後も連日に渡る血液検査、ノイトロジンの注射による白血球数の改善を図ったが、値は改善しなかった。 投与開始から10日後、血小板数が1万1千と更なる減少を認めたため、血小板輸血を20単位行った。他の医師の指摘により、カルボプラチンを過剰投与していたことが判明した。 レジメンの転記を誤っていた。抗癌剤を処方する際、複数の医師との確認を行っていなかった。レジメン登録が行えていないため、薬剤師による処方鑑査が行えていなかった。抗癌剤を調整する医師が日替わりとなっていたため、継続性がなかった。抗癌剤の接続に関わった看護師も日替わりで患者を担当していた。抗癌剤に関する知識が不足していた。
  • 抗癌剤処方時の複数の医師による確認を徹底する。
  • レジメンを共有するために、注射指示箋とともにレジメンを提示する。
  • レジメンをカルテに挟み、転記をしない。
  • レジメン登録を早急に行う。
  • 薬剤管理指導業務として薬剤師による早期介入を実現する。
  • 薬剤師による処方鑑査を充実させる。
確認が不十分であった

記録等の記載
【用法・用量】
2 第20回 障害
の可能性
なし
指示段階 患者は、化学療法目的で入院加療中であった。今回が化学療法の3クール目で、タキソール、シスプラチン、5FUを投与していた。1クール目で腎機能障害が出現し、2クール目では、シスプラチン120mgを80mgに減量し、2クール目で回復していた。今回は前回同様80mgでも可能であったが、60mgの投与予定とした。他の2剤は前回と同量とした。オーダー入力の段階で、ブリプラチン(シスプラチン)20mgを3本とオーダーするところ、デフォルトがランダ(シスプラチン)100mgであったため、デフォルトのままでオーダーした。当日朝の混入時は、ローテーション研修医がオーダー通りの混入を行い患者に投与した。当日の夜、オーダーの誤りに気付いた。 新電子カルテにより、操作方法に慣れていなかった。オーダー後に、カルテで確認していなかった。混入した医師は、オーダーをした医師とは別の医師であった。薬剤科でも、通常量であるため発見できなかった。
  • レジメン登録をして、薬剤科も調剤に関与をする。
  • パスの登録について、最低量にする。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
3 第20回 障害なし 指示段階 進行膵癌に対してジェムザールを3回(入院中1回目~3回目800mg)計画投与することとしていた。患者は、2回投与後に退院した。外来での化学療法の3回目の投与の際、入院主治医は点滴伝票にジェムザール1400mgと入力し、患者に投与した。 退院後の外来化学療法施行時に、入院主治医が入力した点滴伝票(1400mg)がそのまま投与されてしまい、過剰投与となった。
  • 外来化学療法指示書により確実に投与量を要請する。
  • 指示書がない場合は、発行を強く要請し、発行後に注射の確認、準備を行う。
  • 入院中、前回の投与量と異なる場合は主治医に確認する。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
4 第20回 障害
の可能性
なし
準備段階 当院では化学療法を実施する患者が当日入院であった場合、薬剤部でのミキシングを行わず、担当医もしくは看護師が抗癌剤のミキシングを行うことになっている。看護師Aはすでにミキシング施行済の抗癌剤を病棟に置いていた。看護師Bは薬剤が届いていないと思い、追加のダカルバジンを請求した。その後、医師がミキシング済の薬剤に更にダカルバジン270mgをミキシングし、患者に投与した。患者にはダカルバジンが2倍量投与された。 薬剤部のミキシングの時間が、レジメンオーダー、一般処方で異なり、現場ではミキシングされる時間の認識が不十分だった。また、ミキシング済みの表示である、キャップと印鑑捺印済みの処方用紙が置いてあったが、現場には周知されておらず、医師はミキシング済みの点滴ボトルであると認識していなかった。
  • ミキシング時間の統一およびLANおよび会議での周知する。
  • ミキシング済み点滴ボトルへの表示方法の変更、周知する。
  • ミキシング済みボトルに直接ミキシング済み表示を行った。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
 
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(ヒヤリ・ハット事例「薬剤」)

No. 報告回 事例の内容 背景・要因 改善策 調査結果
【薬剤間違い】
1 第19回 体重増加・呼吸苦改善の目的で処方開始したラシックスによる低カリウム血症(カリウム値が2.5mEq/L)の患者に主治医はラシックスを中止し、バナナなどカリウムの多い食品を摂取するように説明をした上で、誤って血清カリウム抑制剤であるカリメートを処方した。4日後、訪問看護師がおかしいと気付いて家族を通じて薬剤部にカリメートとバナナの飲み合わせについて問い合わせの連絡があった。薬剤師は、処方日の医師記録を確認し、間違いに気付いて医師(主治医不在のため同科の医師)に知らせ対応を依頼した。医師は患者に採血のため来院してもらった。採血の結果、カリウム値は、2.7mEq/Lと上昇していたためカリメートは中止し、スローK(徐放性カリウム剤)を処方した。処方が誤っていたこと、心配だったカリウムの低下はなかったことを説明し、患者は納得して帰宅した。主治医は、出張より戻り、事実を知ってすぐに家族に電話し、処方エラーをしたことを謝罪し、有害事象は生じていないことを説明した。カリメートについては、患者が嫌がるので家族が必ず内服させていた。 医師は、カリメートはカリウム補充剤と思い違いをしてしまった。カリという名称からそう思い込み易い。院内採用医薬品リスト(ポケット版)が1か月ほど前に配布されていたが確認をしなかった。
  • 薬剤の効能について正しく把握しておく。
  • 効果・効能の知識に少しでも不安を感じたら院内採用医薬品リストも含む薬剤マニュアルで確認する。
  • 特に普段あまり使用しない薬剤については確認する。
  • 電子カルテ処方選択画面で「カリウム補充剤ではありません」等の注意信号表示が必要か検討する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
2 第19回 患者が持参したケーワンカプセル(ビタミンK1剤)が当院採用薬ではなく、同様の薬剤もなかった。看護師が医師に処方依頼をしたところ医師は、アスパラK(アスパラカリウム)を処方した。指示入力はなかったが、薬剤は患者に渡されていた。患者はケーワンカプセルの代わりのものとして朝内服した。看護師が薬剤の空シートを確認した際に間違いが発覚。アスパラKを回収し返納した。血圧に注意して観察を行ったが、異常は起きなかった。 医師が、処方入力薬剤に同じ薬剤がないため、Kが付いているアスパラKを同様の薬剤と思って間違い処方した。予約外の入院患者だったため持参薬に薬剤師の目が通っていない患者だった。(薬剤部が関与していれば、院内にない処方であり、対応できる薬剤があるかどうか情報が入力されるシステムがある。)当院には同様の薬剤がない。看護師が、薬袋の中身を確認しないで患者に渡していた疑いがある。看護師も医師と同様の認識をしていた可能性もある。
  • 自信のない薬剤に関しては医師は薬剤部に確認して処方する。
  • 看護師は、できるだけ薬剤部に持参薬の確認を依頼する。
  • 薬剤部から払い出された薬剤に関して、必ず薬袋内を確認し、依頼した薬剤に間違いないか薬効も含めて確認する。
  • アスパラKが処方されたら処方画面にカリウム製剤であるという警告表示が出るようにする。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
3 第19回 生食100mL+ノルアドレナリン(1mg)3Aを30mL/hで持続の指示であった。受け持ちでない看護師が生食100mL+エフェドリン3Aを30mL/h接続し50mL点滴した。他のスタッフが救急カートを確認したところエフェドリンがなく、間違いに気付いた。 残量アラームが鳴り、準備ができていず、処方も無く、急いでいたため、救急カートから間違ってエフェドリンを取り出し接続してしまった。
  • 薬剤に関する確認方法の準備に沿って指差し呼称で確認する。
  • 常備から薬剤を使用した場合は他のスタッフにダブルチェックをしてもらう。
  • 受け持ち看護師に声かけをする。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
4 第19回 入院時持参薬を確認する際アクトス錠と記入するところクラリチンレディタブと記入した。医師が処方する際その記入通りに行ったため患者は誤った薬剤を内服した。 忙しい業務時間の中で確認がおろそかになってしまった。当院該当薬を記入する際、上下一行まちがえ記入した。
  • 二次鑑査実施時に疑義が発生した場合は、記入した本人に確認する。
  • 記載が無い場合は再度記入するように戻し、監査者もチェックをした印をつけることとする。
確認が不十分であった
5 第19回 新しく抗生剤の注射指示が出たため、請求入力した。バンコマイシンを検索し注射用をクリックしたつもりが内服用のバンコマイシンであった。薬剤部も注射用と勘違いし、注射薬を渡していた。 請求時には注射薬か内服薬かを選択し、請求したいものを絞り込んでいく。
  • 前回も請求の段階で間違いを起こしているため、請求時にはダブルチェックを行っていく。
確認が不十分であった
【薬剤量間違い】
6 第19回 透析室より定期処方のストガー錠中止の指示があり処方を作り直した。ストガーは夕食後の薬であり、夕食後の分包を作り直したが、5日後、透析室看護師より本来朝食後に内服するはずのフロセミド錠40mgとハルナール錠0.2mgが夕食後にも入っており、結果としてフロセミド錠、ハルナール錠を5日間倍量服用していたことが分かった。副作用の出る可能性があった。 分包をしなおす時にEser分包機(全自動分包機)を使用した薬剤師は、この分包機を扱った経験が少なかった。変更前の入力画面の表示様式を知らなかった。調剤時、監査時とも処方箋との確認が不十分であった。
  • 調剤入力者の経験不足にたいして教育を行った。
  • 改善策として入力されている画面を修正して使用せず、初めから入力しなおす。
  • 分包されたものを一度確認する。
確認が不十分であった
7 第19回 エビプロスタットDB錠6錠 毎食後 28日分の処方がでていた。本来この薬の通常量は3錠/日だが気が付かず鑑査時に問い合わせをしていなかった。医事課からレセプト集計の際に問い合わせがあり、薬局からドクターに問い合わせた所3錠/日の間違いであった。この時に既に1ヶ月が過ぎており、ほぼ薬は服用されていた。 エビプロスタットは2008年からエビプロスタットDB錠に採用薬剤が変更になっていた。常用量が変更前は6錠処方の薬であった。変更後は3錠になっている。エビプロスタットDB錠のことは知っていたが、鑑査時、医師の処方間違いに気付かなかった。電子カルテの処方画面には警告が出ているが、その他の薬でも症状により増減可能の薬剤もあるため、同様に処理をし処方された。医師側としても採用薬剤変更の周知が出来ていない。
  • 適宜増減はあるが、疑義照会の対象となる処方である。十分注意し行うことを指導する。
  • 薬局内でも薬品棚への注意喚起など工夫する。
確認が不十分であった
8 第19回 医師が、タケプロンOD錠15mg2T1×朝食後 7日分を粉砕の指示で処方した。タケプロンは口腔内崩壊錠で、すぐに解けるため薬剤部では粉砕せずに病棟にて粉砕・与薬の対応をしてもらっていた。粉砕の指示のため、薬袋には「散剤(1種類)1回1包」と印字されていた。本来、錠剤1回2錠と書き直さなければならないが、調剤者、鑑査者ともに書き直し忘れ、病棟に上がってしまった。病棟にて与薬のときに1回1包と薬袋に記載されていたので2錠服用しなければならないところ1錠しか服用しなかったことに気付き、薬剤部に連絡し2錠服用してもらうように説明をした。 調剤が終了しているのか否かの確認を怠った。薬剤部システムの構築に携わっている途中での鑑査で集中力に欠ける面があった。
  • 薬剤部のシステム構築の作業中は、なるべく鑑査業務を行わない。
  • 通常の鑑査業務においても処方箋に『粉砕』の文字があった時は、処方箋と薬袋の記載をひとつずつ確認し鑑査を行う。
  • 薬剤部内のシステムで粉砕しないで病棟にあげる薬剤の薬袋には、自動的に錠剤で表示する。
確認が不十分であった
9 第19回 ロイナーゼによる治療のためAT3低下をきたし、アンスロビンPの補充を行った。医師は、1500単位を実施する予定で、1500単位3Vを処方していた。薬剤師は、調剤担当薬剤師が病棟担当薬剤師に払い出す前に規格1500単位を払い出して良いか確認したが、病棟担当薬剤師は、注射処方箋を見ないで1日量として聞き、1500単位で間違いないことを伝えた。そのため処方通りに1500単位が払い出され、そのまま常用量の3倍が実施されてしまった。病棟担当薬剤師が気になって注射処方箋を見た時には、すでに投与された後だった。患者にはその後大きな問題は起きていない。 医師は、アンスロビンPは500単位のものしか見たことがなかった。500単位を3Vで1500単位処方したつもりでいた。1500を500と見誤っていた(当院には、1500単位が採用されている。)。調剤担当薬剤師は、薬剤情報室に病棟担当薬剤師がいるため問い合わせたが、コミニケーション不足でお互いの意図が伝わっておらず、間違ったまま払い出すことになった(1日量と規格単位の間違い)。
  • 医師は、薬剤入力時、規格量をしっかりと確認する。
  • 薬剤師は、おかしいと思ったら、相手に意図がしっかり伝わるようにお互いが指示や処方箋を目にして確認する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
10 第19回 朝情報収集の際、オーダリングで抗生物質の指示を確認したが、指示量は確認できていなかった。抗生物質を準備する際、オーダリングで「スルペラゾン2瓶・生食2ポート100mL1キット×2回」の指示をスルペラゾン1g2瓶を1回量ではなく、2回量だと思いこみスルペラゾン1g+生食100mLを患者様に投与した。×2回/日の指示は見落としていた。残り3つスルペラゾン1gが入っていたが明日の分だと思いこんでいた。1人で指示を確認し投与するのは初めてであったが、指示の確認は大丈夫だと思っていた。フォローについていた看護師に指摘され、患者に抗生物質が半量しかいってなかったことに気が付いた。すぐに主治医へ報告すると、朝の分は経過観察で夕の分からは医師指示通りとの指示をもらい、その旨を転出先のリーダーへ連絡した。 新人看護師であり、注射処方箋の確認方法に対する理解が不十分だった。1人で指示を確認し投与するのは初めてであったが、指示の確認は大丈夫だと思っていた。担当看護師も新人の経験や指示確認に対し、確認・指導が不足していた。
  • 注射のフローチャート通りに実施することを徹底する。
  • 注射箋の見方で不明瞭なことは必ず指導者に確認する。・初めて行うことについては、担当看護師に確認を依頼するなど自分からお願いすることも必要である。
  • 担当看護師は、新人看護師の経験の有無・程度を確認し、なるだけ声をかけ確実な実施ができているが確認する必要がある。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
11 第19回 高血糖の指示で、インスリン「ノボリンR5単位IV」と指示すべきところ「ノボリンR0.5mLIV」と指示した。看護師が指示がおかしいことに気付き医師に何度か確認。「0.05mL」に変更となった。 非常勤医であり、インスリンは単位で指示することの周知がされていなかった。医師の知識不足。
  • 医師に対するインスリンオーダー時の手順徹底。
  • 高血糖時の基本治療周知。
  • 看護師に対して、インスリンの危険性再教育。
  • 標準指示の教育。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
12 第19回 分娩2時間後に、分娩後の薬を産後薬のパンフレットを示しながら、食後にメテルギン(0.125mg)・ケフラールカプセル(250mg)を各1錠ずつ1回分内服するように説明した。しかし内服後、確認をしたところ、3錠ずつ飲んだ事がわかった。 患者は、メテルギン(0.125mg)・ケフラール(250mg)3錠分3の4日分と記載された薬袋を見て、分3の意味が判断できなかった。
  • パンフレットと現物を見せながらの服薬指導を行う。薬袋に各1錠と明記する。
  • 実際に1錠ずつの1回分の現物を見せて、指導する。
患者・家族への説明
13 第19回 医師より今夕からニューロタンを2錠2×から1錠朝に減量と伝えられ、その際、減量の指示は指示簿に記載されていた。内服薬が一包化されており、ニューロタンを1錠取り出すのを知らず、夜勤の看護師にニューロタン減量とのことを伝えた。夜勤帯の内服準備はその時点では終了していた。その後内服薬のダブルチェックを行ったが、一包化の中から不要になったニューロタンを抜いていないことに気がつかず、ニューロタン2錠を2日間過剰投与されていた。 内服薬減量の指示を受けたことがなく、一包化の中から減量された薬を取り出すことを知らなかった。また、内服薬減量をチームスタッフに伝えなかった。翌日の内服薬のダブルチェックの際、減量されていないことに気が付かなかった。経験がない指示を受けるときは、必ずリーダーに報告し対応する。指示をみながらも数日間気付かず実施していることにも問題がある。減量になっているだろうという思い込みがあるため、関わっている一人一人が確認できていない。
  • 医師に確認し、翌日ニューロタン1錠内服開始する。
  • 初めての指示の時はチームスタッフに伝え、その後の対応を確認する。
  • 内服薬が一包化されていて減量する場合は、必ず、ダブルチェックを行い、不要になった薬を取り除く。
  • 指示を把握する。
  • 内服薬のダブルチェックを行う。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
14 第19回 術後1病日でフェンタニル原液を持続静脈注0.5/Hで投与中の患者にボーラスを0.5mLを深夜帯で2回行った。麻酔科医が回診時に「ボーラス量1mLとしていたが、0.5mLに変更になったの?」と指摘があった。カルテをもう一度確認すると、「0.5/H ボーラス1mL」と記載してあった。ボーラス指示時、1時間量ボーラスか、持続量より少ない量でフラッシュの指示が出ることが多く、思い込みと確認不足で「0.5mLボーラス」と誤って読み取っていた。指摘された麻酔科医に謝罪すると「量自体はどちらでもいいの。指示の変更があったのかと思って」と返答があった。0.5mLのボーラス2回で疼痛の緩和は図れていた。 ボーラス指示時、1時間量ボーラスか、持続量より少ない量でフラッシュの指示が出ることが多く、思い込みと確認不足で「0.5mLボーラス」と誤って読み取っていた。また、術当日医師により数回フェンタニルショット投与をしており、また硬膜外麻酔と静脈注射両方からフェンタニル投与がされたこともあり、麻薬過多になることを懸念して硬膜外麻酔をフェンタニルなしの物に変更することや、呼吸状態注意の指示の経緯から、1時間量より多くのボーラス指示が出るとは予測できないでいた。
  • 投与する度毎にパッと見ではなくて、指差しで最後まで指示を読みとる。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)

記録等の記載
【方法間違い】
15 第19回 ビクロックス500mgへ増量の指示あり、ビクロックス250mgに対し溶解液100mL以上で溶解しなければならないのを、100mLで投与していた。 薬剤に確認。200mL以上での溶解が望ましく、当直医に報告。生食200mLで溶解の指示を受ける。
  • 使い慣れていない薬剤の指示受け、投与時は必ずアンプルやDI情報を確認する。
  • 前の勤務者が投与しているから大丈夫という思い込みはしない。
確認が不十分であった
16 第19回 持続皮下注で塩酸モルヒネ1A+生食20mLを1mL/hの指示であったが、静脈注射で行ってしまった。 医師に指示確認を行ったがシリンジポンプで施行、注射の量の確認をしなかった。施行前にダブルチェックを行ったが、シリンジポンプは静脈注射で使用するものと思い込んでいた。
  • 医師に報告し直に持続皮下注射に変更した。
  • 患者の状態を確認。指示を確認する時はフィンガーチェックで声に出して行う。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
17 第19回 ホリゾン散1.5mg3×、7日分の処方を8日分で調剤していたが、鑑査の際に1日分捨てるのを忘れてしまい、そのまま病棟に送ってしまった。 看護師が発見し、薬剤部に連絡があったので、直ちに余分に調剤した1日分を回収した。
  • 日数を多めに調剤されている散薬を監査する際は、まず余分を捨てるようにする。
確認が不十分であった
【速度間違い】
18 第19回 左右冠動脈造影し、冠動脈拡張術となった。繋がっているソルデム3A2本にそれぞれ医師の指示でヘパリン10000単位、シグマート144mgを混注し20mL/hずつで滴下。心拍数が低下したため、硫酸アトロピンIV、点滴全開の指示が出て施行した。その際輸液がヘパリン、シグマート入りであるため全開にしてよいか疑問を持ち、別の医師へ確認すると続行の指示があった。その後血圧が低下し点滴を見ると、シグマート入りの輸液が全開になっていることがわかり、医師より、自分が指示したのは生食を全開だと言われ間違いに気付いた。 シグマート入りのソルデム3Aは中止し、ヘパリン入りのソルデム3Aは20mL/hへと調節する。血圧の上昇見られずIABP装着となる。
  • 点滴をはじめとする、指示受けにおいて、確認事項をする場合、原則的に指示を出した医師へ行う。
  • 毎回自分が行う処置、投薬内容を現場にいる全員に聞こえる大きさで報告し、確認後実施する。PCI後のルチーン化した投薬も必ず、声に出して内容を確認した上で実施する。
  • CAGの流れをはじめとする知識の再習得を行う。
  • 1人で介助についていた場合、医師へ確認した後であっても疑問を感じた場合、リーダーへ連絡し確認する。
確認が不十分であった
【対象者間違い】  
19 第19回 処方内容に不備があったため、錠剤分包機を一時停止し、疑義照会を行い、処方削除となった。錠剤分包機に送信したデータを削除する操作を行い、次の患者の調剤があったので錠剤分包機を再起動させた。薬剤は次の患者の薬品が包装され、包装に印字された内容は削除したはずの前患者データ(患者氏名・ID・薬剤名・用法)が印字されていた。 原因として、再起動時分包する薬品データは既に削除されていたが、印字データ(患者氏名・ID・薬剤名・用法)が削除される前であったと考えられる。鑑査時、削除した患者データが生きているとは思わなかったため、包装に印字されているデータ(患者氏名・ID・薬剤名・用法)をしっかりと確認・鑑査しなかった。
  • 機器を全て信用するのではなく、必ず確認・鑑査を行う。ID・患者名・病棟・薬剤・用法・用量を処方箋・鑑査箋に従って調剤・鑑査を行う。
  • 修正したデータが受信されるのを確認した後、再調剤することを周知した。また、その旨の警告文を操作端末に貼布した。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
20 第19回 胸腔鏡下右上葉切除術後、疼痛管理にてEpi(硬膜外チューブ)挿入されていた。Epi抜去後、薬局に返納のため金庫を確認すると、当該患者とは別の患者名と日付がベセルフューザーに書かれていた。使用薬剤(アナペイン283mLフェンタニル16mLドロレプタン1mL)に関しては、当該患者の使用薬剤で間違いはなかった。術後、病棟直帰時に薬剤名・患者名の確認は出来ていなかった。また、日々の受け持ち患者も薬液の残量・流量に関しては確認していたが、ラベルまでは見れていなかった。 術後、病棟帰室時に薬剤名・患者名の確認が出来ていなかったため、4日間(抜去まで)発見できなかった。流量・残量・刺入部の確認だけでなく、薬剤名・患者名まで確認する必要があった。
  • 手術室にて硬膜外麻酔を使用する際、医師にも患者名・薬剤名の間違いのないよう徹底して頂く。
  • 術後、直帰・ICU経由にかかわらず、病棟に帰室した際には5Rの基本に基づき、患者名・薬剤名まで確認する。
確認が不十分であった
【その他】
21 第19回 粉砕指示の処方が出た。調剤者はザイロリックとラシックス(20)の処方があったため2剤を混合して粉砕した。その散剤を分包する際、前回調剤歴を利用して印字したところ、誤って「ザイロリック1T、ラシックス(20)1T、タナトリル0.5T」と印字されてしまった。タナトリルの印字は削除したが、ラシックスの印字が誤っていることに気付かず、訂正せずに鑑査を通してしまった。看護師が分包紙の印字が異なっていることに気付き、薬剤師に報告した。印字を訂正し直し、再び病棟に上げた。 印字に対する注意が不十分であった。印字する際に前回歴をそのまま利用してしまった。分包紙に印字される薬剤名の文字の大きさが小さい。
  • 処方箋の内容と印字があっているかよく確認する。
  • 粉砕の印字入力の際は、前回歴を利用せず最初から入力し直す。
確認が不十分であった
22 第19回 医師がモルヒネ水20mg10回分を処方し、調剤を行った。モルヒネ水は保存剤を添加しているので使用期限は14日間である。モルヒネ水の水薬ラベルに使用期限を書く欄があり、14日間の日付を記載しなければならないところ7日間の使用期限を記載し、緩和ケア病棟に払い出した。緩和ケア病棟の看護師の指摘により発覚した。患者に対しては使用前であった。 日曜日で薬剤師が1人で業務をしていた。モルヒネ水の処方が出された時、他の患者のTPN製剤の医師への疑義照会を行いながら救急外来の処方も行っていた。
  • 水薬ラベルの記載例の見本を作製し、水剤を調剤する棚の見やすいところに表示する。
確認が不十分であった
23 第19回 急患で入院した患者の造影CTを開始したところで、医師が造影剤の禁忌があったことに気付き、造影を中止し、単純CTに変更した。患者にはその後アレルギー症状など出現しなかった。検査前には家族からアレルギーはないとの聞き取り情報であったが、前回の入院カルテと今回持参した紹介状には禁忌情報が記入されていた。外来カルテとコンピューターにはアレルギー情報は記入されていなかった。 禁忌情報共有の不備。禁忌情報を入手した時には、外来カルテ・入院カルテ・パソコンに情報を記入、入力することになっていたが、出来ていなかった。コンピューターが導入されたのが2年前であるため、導入以降来院していない場合などはパソコン入力されていない可能性がある。禁忌情報を家族からの情報だけに頼ってしまい、紹介状や前回カルテの情報を確認していなかった。
  • 患者の情報を得る時には、データベースだけでなくカルテの表紙のアレルギー情報は必ず確認する。
  • 緊急時は患者や家族からの情報(問診表)だけを鵜呑みにせず、カルテや身体的情報(MRI撮影時などは、ペースメーカーや脳動脈クリップなどの手術の形跡など)から総合的に判断する。
  • パソコンに入力されていない禁忌情報がある可能性がある事を院内に注意喚起した。見つけた人は、パソコン入力すると共に、医事課に情報を送り、他科の外来カルテにも情報を載せるようにしてもらった。
確認が不十分であった

記録等の記載
24 第19回 脳血流シンチのダイアモックス負荷ありの検査で負荷を見逃し、ダイアモックス注射をせずに、安静脳血流シンチの検査を行った。医師付きで検査を始めたが、RI薬剤注射後に「ダイアモックスの注射をしたよね」と医師に確認され、負荷の検査であったと気付いた。医師と相談の結果、今回の検査は安静で成立させ、負荷は行わず様子をみることになった。入院RI検査の正規オーダーの流れで、日付未定オーダーをこの日に予約を組み、病棟に連絡票には検査項目に局所脳血流負荷と印刷されるが、具体的にダイアモックスの注射との指示は記入がなかった。当日電話でもダイアモックスの指示はせず、そのまま検査した。 オーダーの確認ミスである。背景としてダイアモックス負荷時のオーダーは、コメントにもダイアモックス負荷でという文書を入れる事が多いが、今回はダイアモックス文字は入っていなかった。オーダー項目名を見れば、局所脳血流負荷と入っているので分かるが、負荷の文字を見逃していた。
  • 検査項目の名称を変えることで、見逃しを防ぐようにした。
  • 項目名称を局所脳血流(IMP)ダイアモックス負荷に変更した。
確認が不十分であった
25 第19回 クラビット錠が処方されていた。問診票に妊娠の可能性ありとされていたが、確認を怠り医師に疑義照会せずに投薬してしまった。3日後、再診時に処方鑑査の際に発覚した。 問診票の記載事項の確認漏れ。
またクラビットのように妊娠の可能性のある婦人には禁忌の薬であるという薬剤の禁忌に対する認識不足もあったと考えられる。
  • 問診表から禁忌の薬剤等が判別できるような薬剤のリストアップを行う。
確認が不十分であった
26 第19回 患者が転棟する際、継続するべき注射指示がSPD(物流管理センター)への伝達ミスにより中止扱いになり、転棟先の病棟へ注射が配薬されなかった。 本来転棟する際は担当薬剤師間で指示のやり取りをするはずが、誤ってSPDを介して行なってしまったため発生した事例であると考えられる。
  • 転棟する際の指示の有無は必ず担当薬剤師間で行う事を徹底する。
連携
27 第19回 内視鏡検査前、患者に問診で狭心症の既往の有無を聞き、既往がないことを確認した上でブスコパンを投与した。しかし検査中、狭心症の既往がありブスコパン禁とオーダー表に書かれていたことが判明した。特に問題はなく検査を終了した。検査後患者の説明を行い謝罪した。その日の安全保持を看護師に指示し、本人にも安静をお願いした。翌日患者の状態に変わりがないことを確認し前日の経緯を説明し納得を得た。 禁忌薬についてはオーダーできないシステムへの変更が理想であるが、1年半後にバージョンアップして新システムへ変わるまではできないので、ブスコパン禁とオーダー表に記載されたものを確認する。
  • 薬を投与する者がオーダー表に記載する。
確認が不十分であった
 
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(ヒヤリ・ハット事例「化学療法」)

No. 報告回 事例の内容 背景・要因 改善策 調査結果
【薬剤間違い】  
1 第20回 サンラビン注を用いたレジメンの治療計画予定表が薬剤部に提出された。薬剤師が計画予定表に基づき処方の確認を行ったところオーダーされた薬剤がサイメリン注になっていたため医師に疑義照会した。修正後予定通り投与を行った。 入力画面での選択ミス。薬剤名が似ていることによる入力ミス。
  • 薬剤部はこれまで通り、治療計画表とオーダーを確認することで間違いを未然に防ぐ。
確認が不十分であった

類似名称

オーダリング時等の誤入力
2 第20回 メソトレキセート(2.5mg)が処方されていたところ、メトレート(2mg)を調剤してしまい、そのまま患者に投薬された。調剤翌日の朝、患者家族より薬剤部の外来窓口まで薬剤間違いの申し出があった。調剤室勤務薬剤師が薬剤間違いを確認後、再調剤し投薬した。 メソトレキセート→MTX→メトレートと変換し、処方箋記載薬品名をしっかり確認せず、また、薬品名と物の確認を怠ってしまった完全な不注意であった。
  • 思い込みをしないこと、確認を怠らないことなど、基本事項をしっかり意識して調剤に取り組むよう注意する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
3 第20回 イムシストとイムネースを間違えて調剤されていたが、気付かず払い出してしまった。病棟に薬があがり看護師より違う薬があがってきていると連絡があり、発見された。 鑑査の確認が不十分であった。
  • 名称が類似しているため、注意表示を行い、抗がん剤の払い出しについては注意を払うように喚起した。
確認が不十分であった

類似名称
【用法・用量間違い】 
4 第20回 持参薬のTS-1の内服が終了したため、医師に報告したが休薬中のTS-1を8日間内服したことが分かった。持参薬として、余分に持っていたものを内服していた。 持参薬の確認不足。治療のレジメンの把握ができていないため、気付かなかった。レジメンには休薬となっているが、指示書には記載がなかった。
  • 持参薬確認を薬剤師に実施。
  • レジメンの把握
  • 指示書にも指示を書いてもらう。
確認が不十分であった
5 第20回 ロイケリン散を調剤した際、処方が「ロイケリン散10パーセント0.1グラム 昼食後すぐ 6日分」だったが 疑義照会をせず10ミリグラム1包で調剤をした。薬剤管理指導の薬剤師が調剤量が少ないことに気付き、主治医に連絡して再オーダーを依頼をした。当日は処方済みであったので翌日から、100ミリグラムでの内服となった。 処方医の知識不足。グラム製剤量 ミリグラム成分量・力価であるが処方入力時、デフォルト画面にグラムが出ておりそのまま力価で入力した。過剰量でないのでシステムのチェックにかからなかった。調剤時、少量に対する注意不足。鑑査時、重さや分包状態に注意がいき投与量を見逃した。
  • 入力システム画面のデフォルト画面をミリグラム表示とし、コメントミリグラムは力価表示する。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
6 第20回 入院にてFCC(CEF-iv)療法の初回投与時、エンドキサンの投与量を計算間違いし650mgのところ800mg投与してしまった。投与後12日目にWBC600に下降し過剰投与を発見した。 プロトコール作成時、投与量計算シートがCE療法のコピーで行ったため医師、薬剤師ともに気付かず計算を間違った。前日の処方取り揃え時、薬品鑑査ができていなかったため、計算間違いに気付かなかった。
  • 担当薬剤師は必ず2人で、前日の薬品取り揃え時・当日のミキシング時にも2人で鑑査をする。
確認が不十分であった
7 第20回 開腹にて生検を行った患者。術後7日目に、アバスチンを投与した。施行中に、倦怠感の訴えあり投与履歴を調べたら、術後28日経過しない期間に化学療法をしていた事がわかった。 投与履歴や患者情報が職種間で共有できていなかった。
  • 「化学療法カルテ」を作成し、外来カルテの定位置に保管するようにした。
確認が不十分であった

連携
【速度間違い】
8 第20回 化学療法FOLFORI施行中の患者。トポテシン200mg+生食250mLを90分で注入、レボホリナート275mg+250mLを2時間で同時に注入の指示があり、トポテシンを166mL/hの設定で注入しなければならなかったが、340mL/hで設定してしまい指示より早い速度で注入してしまった。トポテシン終了の輸液ポンプアラームが鳴り、レボホリナートがまだ半分以上残量がある事から、設定量間違いに気付いた。早く注入されても患者に影響はない。 受け持ち看護師は新人だった。プロトコールと注射指示表の補液量が違って入力されていた。ダブルチェックでプロトコールと注射指示表を確認したが、補液量の入力が違う事に気付けなかった。事前に計算されていた設定量に誤りがあった。点滴追加の際、点滴速度の計算までしなかった。新人指導が適切にされていなかった。化学療法に対する知識が不足していた。
  • ダブルチェックをする際は、プロトコールと注射指示表を照らし合わせ、声だし確認する。
  • 医師に間違いなく入力してもらう。
  • 点滴追加の際、設定量についても自分で計算を行い、間違いがないか確認をする。
  • 化学療法の方法や作用、副作用等についての学習会を開催する。
  • 新人教育の実施。
確認が不十分であった
【対象者間違い】
9 第20回 外来化学療法室で同科で同プロトコールを施行している患者2名が治療中であった。患者A氏の薬液は5FU550mg、患者B氏の薬液は5FU600mgだった。2名分の5FUを指示簿で薬品名と指示量をダブルチェックし、1トレイに準備した。看護師がA氏の点滴がなくなり、間違ってB氏の5FU600mgを持参し、オーバーテーブルに置いた。主治医は手術中だったので他科の医師を呼び、医師が5FUを静注した。その後B氏に5-FUを施行しようとして、間違って実施したことに気付いた。 医師も看護師も患者確認を怠った。同プロトコール患者が6番・10番のベッドにいて、6番がB氏と思い込んでいた。患者に名前を確認してもらわなかった。医師と患者に面識がなかった。注射する時点で指示簿が手元になかった。確認できる環境になっていなかった。注射をする時点で、患者を証明するものがなかった。
  • 患者のオーバーテーブル上に患者のIDカードを貼る。
  • 薬剤のダブルチェックをしたら、薬剤はオーバーテーブルの上に置き、原則、患者・ID・指示簿・点滴ボトルは離れないようにする。
  • 患者確認は点滴ラベルを患者に見せ、フルネームで名乗ってもらい、患者名を確認する。
  • 患者が名乗って確認できない場合はオーバーテーブル上のIDと指示簿で確認する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
10 第20回 家族よりボトルの名前が違うと指摘受けた。本来は生食50mL+5FU600mgであったが他患者の生食50mL+5FU750mgが投与されているのを確認する。医師へ報告し、すでに65mL中32mL(5FU311mg)投与されていたため医師の指示にて生食50mL+5FU300mg作成し滴下する。患者・家族へ謝罪し、医師と共に適量が投与されるように調剤し直したことを説明した。 患者に点滴投与の際は、患者に氏名を名乗ってもらう事になっていたが、氏名の呼称と確認を怠ってしまった。
  • 基本である確認と氏名の呼称をきちんと行う
  • 特に抗ガン剤であったため、投与量の確認も行う。
確認が不十分であった
【その他】
11 第20回 ベルケイドが薬剤科より搬送されたため、伝票と確認をしたところ、伝票およびカルテ指示は「ベルケイド 2.26mg」であったが、薬剤科からあがってきたベルケイドのラベルには「ベルケイド 2.3mg」と記載されていた。薬剤科へ電話にて確認したところ、「2.26mgという調製が厳密には困難であるため、いつも2.3mgで調製している」との返答であった。微量とはいえ、医師の指示量よりも増量の形でラベル印字されており、確認するスタッフが混乱するため、主治医の承諾が得られているのであれば伝票の訂正をもらってから、ラベル変更してもらうよう依頼した。 調製上の都合で量の変更をした場合に、ラベル変更だけ行っており、伝票、カルテ指示の変更および実際に投与を行う部署への連絡がないままであった。
  • 調製上の都合で変更した場合、主治医の指示として伝票も修正してもらう。
  • 伝票との確認を今後も行い、伝票との違いがあれば、確認を行っていく。
連携
12 第20回 5FUとブリプラチンを同時投与している患者。配合変化を生じるため、レジメンには2ルートから投与するよう指示があったが、同一ルートで投与していた。ブリプラチンを投与し終わってから、次の点滴をつなぐ際のダブルチェックで他の看護師より指摘されて気付いた。ルート内結晶化、閉塞は認めなかったが、薬効が変化していた可能性はあるため医師へ報告し、経過観察となった。 レジメン集に2ルートで投与するよう指示の記載があり、赤線を引いてあったが、ワークシートや情報用紙に記載がないため見落としてしまった。ワークシートの照合、ダブルチェックの際にワークシートと処方箋を照合するが、レジメン集との照合は行わないため気付かなかった。
  • 投与方法について、間違い易いもの、見落とし易いものは情報用紙やワークシートへ記載を行い見落としがないように目立たせ、スタッフ間での情報共有ができるようにしていく。
  • レジメンとワークシートの照合の徹底を行う。
確認が不十分であった
13 第20回 アドリアシンをルートに満たす際にキャップのところまで満たしてしまった。患者に繋ぐ際、抗がん剤調製時の保護具を着用していたため操作がしにくく、キャップを勢いよく外してしまい患者の服にアドリアシンが飛び散ってしまった。 発見者が飛び散ったところが患者に触れないように、患者の服の袖を折り、更衣を行い患者の皮膚には付着しなかった。
  • 与薬の準備をする際は、最初から最後までナースステーションで行う。
  • 患者のベッドサイドでルート接続を行う場合は、患者から離れた場所でルートのキャップを外す。
  • ルートのキャップを外す時はビニールを掛けたトレイの上で操作をする。
技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
14 第20回 化学療法、CBDCA+VP-16療法。70歳未満と70歳以上では標準投与量が異なる。担当医師が、70歳以上の患者の指示を記載する際に、70歳未満の標準量を記載した。薬剤師が担当医師に確認し訂正して、正しい量を投与した。 処方後、医師が確認が不十分であった。処方医師以外の医師による確認システムがない。看護師も処方内用について理解が不十分で点検できない。
  • 薬剤師による処方鑑査の継続。
確認が不十分であった
 
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(ヒヤリ・ハット事例「その他の薬剤」)

No. 報告回 事例の内容 背景・要因 改善策 調査結果
【薬剤間違い】
1 第20回 “ノボラピッド注ペンフィル”が処方されていたが、“ノボラピッド注フレックスペン”を調剤した。患者から医師に連絡があり、その後、医師より薬剤部に連絡があり判明した。医師より患者に、カートリッジ型かペン型かの違いで薬剤は同一成分であり、そのまま使用するようにとの説明をされたとのことであった。 同一処方せんにフレックスペンが処方されていたこと、インスリン製剤が3種類処方されていた為、薬剤名のみ注意してしまい規格のチェックが不十分であった。
  • 処方せんと調剤した薬剤の確認をしっかり行う。
確認が不十分であった
2 第20回 定期注射調剤時においてメロペン点滴用0.5gとミノペン点滴静注用100mgを取り違えて調剤した。鑑査の薬剤師が発見した。 薬剤名が類似していたための読み違えと確認不足。
  • 薬品名の類似しているコーナーには“名称確認”のシールを貼付して注意喚起。
  • 指さし呼称で確認。
確認が不十分であった

類似名称
3 第20回 メソトレキセート錠の処方に対して、メトトレキサートカプセルを調剤し投薬した。 極めて類似した名称と後発医薬品情報の混同。
  • 後発医薬品品目一覧のリアルタイムな改定と周知。
確認が不十分であった
4 第20回 払い出した注射定時のビニールの印字はにエクサシン注と書かれていたが、袋の中にエルシトニン40S注が入っているのを病棟看護師が発見し、薬剤科に報告した。 前日の機械への補充の際、エクサシン200mgのケースにエルシトニン40単位を間違えて補充したため、機械よりエルシトニン40単位が払い出された。同じ薬品が続いたため、確認がおろそかになった。エルシトニン40Sとエクサシン注は外見がよく似ている。
  • 鑑査がうまくいっていないので、鑑査のポイントの再教育を行った。
  • 外観の類似した薬剤の特徴や違いを知っておく。
  • 処方箋・薬袋の薬品名と薬剤の薬品名を確認する。
  • 外観や名称が類似している薬剤は、1本1本確認する。
  • 薬剤補充の時には、再確認を必ず行う。
  • 機械的にバーコードで確認できるようにしたい。
確認が不十分であった
5 第20回 患者の持参薬のソレトミンがなくなった。当院にはソレトミンがなかったが医薬品集を調べていたところソレトンをみてソレトミンと思い処方した。 ソレトミンとソレトンの名前が類似していたため同じ薬と思いこんだ。
  • 薬剤の名前だけでなく薬効も確認する。
  • 類似薬剤名について注意喚起する。
確認が不十分であった

類似名称
6 第20回 全身麻酔と硬膜外麻酔併用の整形外科手術中、硬膜外腔へ1%キシロカインを投与しようとしたところ、手術野で使用するために準備してあった1%キシロカインEを生理的食塩水で倍希釈した薬液のシリンジと取り違え、倍希釈した薬剤を10mL硬膜外腔へ投与した。その後、手術野で倍希釈した薬液を使用する時、看護師が準備しておいた薬液がないことに気付き、薬剤取り違えが判明した。 麻酔科で使用する薬剤と手術野で使用する薬剤が同じ場所に準備されていたため、取り違えが起こった。シリンジには薬剤名が記入してあったが、記入がわかりにくかったことも一因である。
  • 薬剤を投与する前には、十分に薬剤名を再度確認することを徹底する。
  • 薬剤を準備する際には、どこで使用する薬剤かがわかるように区分した場所に準備をする。
  • 術野で使用する薬剤と麻酔科で使用する薬剤でシリンジを区別する(カラーシリンジ)などの対策が必要と考える。
確認が不十分であった
【薬剤量間違い】
7 第20回 発熱患者に対し、当直医の指示はボルタレン座薬25mg投与であった。常備薬を確認すると50mgが減っており50mgを投与したことに気付いた。 指示を見て25mgを確認、冷蔵庫から薬剤を取り出したがその時に25mgか50mgかを確認しなかった。
  • 5Rでの確認の徹底に努める。
確認が不十分であった
8 第20回 医師が、ランタス(時効型インスリン)を1日3回1回1mL(1回100単位)で処方してきた。薬剤師が調剤時に間違いに気付き医師に本来の用法用量を説明し、処方を変更した。 オーダリングの操作の教育不足。他科の薬剤の使い方の知識不足。
  • オーダー時に使い方の再確認を行う。
  • インスリンの処方でmL単位での入力を出来なくすることは可能か業者に確認する。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった
 
9 第20回 「生食にヘパリン1万単位」と口頭指示があった。生食500mL+ヘパリン1万単位を輸液した。指示受け時には復唱した。その後オーダーを確認すると、生食20mL+ヘパリン1万単位であった。主治医に報告しそのまま続行した。 口頭指示を受けた。
  • 指示コメントに入れてもらう。
  • 口頭指示を受けた薬剤は医師に直接確認してもらう。
確認が不十分であった
10 第20回 尿崩症にて、ピトレシン持続投与、デスモプレシン点鼻を行っている患者。0時に3プッシュの指示あり、患者の氏名の薬包でデスモプレシン点鼻液あり(開封すみ、ワークシート記載も点鼻液)、点鼻チューブで3目盛り(0.15mL=150mg)投与した(当事者は1プッシュ=1目盛りと思い込んでいた)。後から、以前使っていた空になったスプレータイプを発見。容量を確認したところ、スプレータイプは濃度が違っていた。指示は、スプレータイプの3プッシュ=75mgであり、倍量投与してしまったことに気付いた。 0時投与の指示が実施されず、2時間遅れてそのことを発見し、医師に報告した状況であり、「すぐにいかなくては」という思いが強かった。「あれ?スプレーじゃなかったかな」と思いつつも、立ち止まらずに、投与した。受け持ち医師に報告、医師も、形態が2種類あることと、濃度が違うことの認識なかった為、共に確認した。ワークシートも「デスモプレシンスプレー」から「デスモプレシン点鼻液」に途中から(持参入力の時点から)変わっており、受け持ち医師も把握していなかった。
  • 患者名、薬名は合っていたが、量の思い込みが、原因となった為、確実に確認し、不安やおかしいと思ったときには、行動前に疑義照会をするようにする。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
11 第20回 臨時処方のペルマックスを処方時に50mgのところ、250mgと誤記入してしまう。看護師が確認し、間違いに気付き訂正した。 当直明けであり、複数規格が存在する薬品であったが無意識のうちに処方していた。確認が不十分であった。
  • 確認の徹底。
確認が不十分であった

身体的状況(寝不足・体調不良等)
12 第20回 ラミクタールを34mgから38mgに増量するところを、430mgに増量してしまった。連休の影響で、処方から内服まで期間が空いていたので、処方薬を内服開始した翌日に症状の異変に気付き来院された。来院時に主治医は処方ミスに気付き、処置と連絡を行った。 コンピューター処方で同一規格が併記される場合、選択ミスをすることをしばしば経験する。多くはその場で気付き入力訂正を行うが、今回は気付かなかった。同一薬剤で50倍も濃度が違う様な薬剤では選択時に細心の注意が必要である。また、体重に比して不適切な処方の場合、コンピューターからエラーメッセージが出る様なシステムが必要と思われる。院外かかりつけ薬局から、不適切と思われる増量時に連絡を頂けるシステムがあるが、今回は連絡がなかった。
  • コンピューター処方のクリックミス。
  • 回避するためのシステムの検討中。
確認が不十分であった

オーダリング時等の誤入力
【方法間違い】
13 第20回 ツベルクリン反応検査の注射の指示あり。注射指示票を出し、内科のスタッフとダブルチェック行った。指示票には手技・行為名称が書いてなかったため、内科処置一覧のファイルを確認したが、載っていなかった。以前もツベルクリン検査の際に、手技で迷ったことがあり、「溶解したものを0.1mL皮内注射する」と書いた紙を直接薬剤に貼っておいた。今回、その紙を見たが、書いてある字を皮下注と読み間違え、皮下注射だと思いこんでいた。溶解した薬剤を一緒にダブルチェックしたスタッフは、その場から少し離れた場所に移動してしまっていたが、私から「皮下注でいいんですよね?」と聞くと「うん」と返事があったため同意を得たと受け止め、患者へ皮下注射行った。ツベルクリンの判定日に医師が判定行おうとしたところ、注射部位が違っていることに気付いた。 ツベルクリン反応検査を行う機会があまり多くないため、手技に対する知識が薄れていた。処置室の業務が煩雑になっており、きちんと手技を確認することができなかった。ダブルチェックの機能も正しく機能していなかった。ツベルクリン反応検査についての知識不足や実施する機会が少なかったが、機会が少ないからこそさらなる確認が必要だった。当事者が要注意のためにと薬品の脇に皮内注射と書いた紙を貼り付けておいたがそれ自体を皮下注射と思いこんでいてスットパーの役にはなっていない。またダブルチェックがダブルチェックになっていない。手技を間違えて思いこんでいたことや、処置室の業務が多忙な中、手技の確認が行えなかったことが原因であると考える。
  • あまり行っていない処置については、実施する前に看護手順・基準に沿って確認する。
  • 処置室ですぐに確認できるよう内科外来で必要なものは、内科業務一覧の綴りに追加しておく。
  • 注射指示票へ手技・行為名称を入れることができるかシステムに相談していく。
確認が不十分であった

知識が不足していた・知識に誤りがあった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
14 第20回 クラビット錠(500)1錠7日分のところ5日分しか調剤しなかった。患者より2錠不足しているとの連絡を受け、謝罪し、クラビット錠(500)2錠郵送した。 思い込みで調剤してしまった。
  • 今後、よく薬品を確認して調剤する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
【対象者間違い】
15 第20回 昼食後の配薬時、患者に氏名が類似した患者の薬を与薬してしまった。他の患者の配薬に向かう途中で間違いに気付き、すぐに戻ったが服用されていた。 類似した氏名で、以前より間違いが起きやすいと意識はあったが確認が不十分であった。休日で看護スタッフの人数が少なく多忙で、焦りがあった。
  • 確認時、指差し呼称を行う。
  • 氏名が類似している患者は看護チームを別にする。または病棟を変えるようにする。
確認が不十分であった

患者の外見(容貌・年齢)・姓名の類似
16 第20回 患者の臨時処方箋がFAXで薬局に流れてきた。印字が薄く、IDが読み取れないため名前で検索をして分包調剤を行った。その際、フルネームで検索せず、苗字のみで検索してしまったため同姓の別な患者の名前で調剤した。薬袋の名前は正しい患者氏名が記入されていた。病棟看護師が間違いに気付いたが薬袋の名前は正しかったため誤薬はされなかった。看護師より報告を受け正しく調剤し直した。 印字インクが薄い。苗字のみで検索した。確認が不十分だった。
  • 印字が見にくい時は病棟に確認をする。
  • フルネームで確認をする。
確認が不十分であった
【その他】
17 第20回 入院の患者。目の手術をした後だったため、持参薬をナース管理にして夕食後の配薬をした。患者と一緒に薬の内容を確認していたところ、患者より「1個足りないよ」と指摘を受けた。医師が持参薬登録した際に、夕食後に内服するところを朝食後で登録をしていた。ワークシートを確認した日勤では、間違いに気付かずワークシート通りに薬をセットしたため、夕食に内服する薬が朝食後にセットされていた。 患者のくすり手帳を確認し、用法を患者と一緒に確認。朝にセットされていた薬からその薬を取りだして内服してもらう。翌日分も朝から夕方にセットし直す。
  • 医師へ持参薬の入力を依頼したら、薬の内容のみ確認するのではなく、薬手帳と一緒に用法、用量が間違えないかを確認する。
確認が不十分であった
18 第20回 高血糖持続の患者に対し、インスリン指示簿が変更になったが、インスリン指示簿のみに点滴内混注の指示があり、注射の指示には記載されていなかった。インスリンは看護師がダブルチェックし施行しているが1日混注されなかった。BSチェック時にいつもより高値であったため混注されていないことに気付いた。 インスリン簿には指示があったが、注射オーダーに入力されてなかった。注射指示に入っていると思い込み確認が出来てなかった。
  • 指示簿の確認。
  • 適切な場所に適切な指示を医師にしてもらう。
  • インスリン皮下注射の場合はインスリン簿の使用、混注時は指示コメントに記載し注射オーダーに入力する。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
19 第20回 患者は右卵巣嚢腫摘出手術を実施したが、妊娠12週であるため、疼痛時の薬剤はボルタレンを使用することができず、疼痛時の指示はカロナール錠服用となっていた。当直医に患者からの希望でカロナールよりも鎮痛効果の強い薬剤を希望されていると報告し、ボルタレン坐薬の投与の指示をもらった。また、臨時指示薬に対して、ダブルチェックの際には、指示の書いてあるクリティカルパスとボルタレン坐剤を確認してもらい、患者に投与した。 卵巣腫瘍摘出術を受けた患者へのクリティカルパスには疼痛時、ボルタレンの使用が記載されているが、妊婦である今回の患者の疼痛時の薬剤の指示は、カロナール錠服用と訂正指示があった。当直医には、患者はカロナールよりも鎮痛効果の強い薬剤の使用を希望されており、小児喘息の既往がある妊娠12週の患者であると報告し、ボルタレン坐薬投与の指示をもらった。また、臨時指示薬に対して、ダブルチェックの際にもきちんと患者が妊婦であることを伝えておらず、患者に投与してしまった。当事者看護師は、ボルタレンが妊婦に対して禁忌薬剤ということの知識が不足していた。
  • 病棟に置かれている薬剤の中で、妊婦に禁忌の薬剤には「妊婦禁」の目立つ表示をしておく。
知識が不足していた・知識に誤りがあった

報告等(忘れた・不十分・間違い・不適切)
20 第20回 本来、薬剤科で無菌調製する薬剤を、誤って調製せずにそのまま病棟に払いだしてしまった。そのため、病棟にて薬剤が調製され、患者に施行された。薬剤科では、薬剤を払いだしてしまっていることに気付かず、無菌調製を行い、病棟に払いだした。調製された薬剤が病棟に上がったところで、病棟看護師が重複調剤に気付き、薬剤科に連絡したことでミスが発覚した。患者に重複投与されることはなく、患者には不利益は生じていない。 規定の時間内に入力された入院患者の抗がん剤、分子標的薬、ゾメタはすべて薬剤科で無菌調製を行うことになっているが、注意不足により、薬剤を払いだしてしまった。
  • スタッフに周知徹底を行い、今後再びミスが起こることのないように努める。
確認が不十分であった
21 第20回 画面の検査結果でGBS陽性を確認し、ビクシリン点滴を実施したが、検査結果を改めて違うスタッフが確認すると、陽性の結果は前回妊娠時のもので、今回の結果が陰性でありビクシリン点滴が必要なかったことがわかった。 検査結果を確認したが、日付を確認していなかった。また、結果のダブルチェックを実施したがダブルチェック時にも結果の確認のみで検査日時を確認していなかった。システムでGBS陽性を確認していたが、外来カルテでの医師の記録を確認していなかった。通常、GBS陽性であればビクシリン投与などについて患者に同意書を使用した説明を行うが、同意書がないことに気付いていたにもかかわらず、検査結果が陽性であると思いこんでいたため説明がしていないと思い、検査結果を見間違えていることに気付けなかった。当院のマニュアルは今回の検査結果を見て治療することになっている。産婦人科の診療ガイドラインでは過去にGBS陽性である場合は点滴するとなっている。
  • 検査結果の日付をみていないという基本的なことができていなかったため、確実に確認することを徹底する。
  • 今後マニュアルを見直す。
確認が不十分であった

心理的状況(慌てていた・思い込み等)
22 第20回 心臓カテーテル検査中に医師からレペタン1/2AとアタラックスP1Aの静注指示が口頭であった。シリンジにアタラックスP1Aを用意した。他のスタッフがレペタン1Aを準備したが使用直前にどちらのシリンジがアタラックスPで、どちらがレペタンか分からなくなり、薬剤部に破損扱いにしてそのまま返却した。 シリンジに薬剤名を記入しなかった。
2つ以上の薬品を2人で準備したが声かけが不足で混乱した。
  • シリンジに薬品名と日付を記入する習慣を着ける。
  • スタッフ間で声かけとダブルチェックを行う。
技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
23 第20回 薬剤を粉末にした時シールの小さい切れ端が混入してしまっていた。病棟の看護師より連絡があり発見に至った。 分包後確認したが粉の中に混ざってしまったため判らなかった。
  • 錠剤をつぶすためににヒートからばらす際に、ヒートの殻などが入らないように確認する。
  • 鑑査する人もしっかり確認する。
確認が不十分であった