独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

平成22年度 第4回医薬品・医療機器安全使用対策検討結果報告(医療機器関連事例) 別添1

本文|別添1|別添2別添3

製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例

No. 事故の程度 事故の内容 事故の内容 事故の背景要因の概要 改善策 調査結果
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不医
適療
切機
使器
用等
 ・
 医
 療
 材
 料
 の
医療機器等に関する出来事 患者は全麻下で両側口蓋扁桃摘出のため入室した。同時間より直接介助のため器械準備を行う。術者へ電気メスを使用するか確認するとバイポーラを使用したいとの事だった。耳鼻科用のバイポーラは前日に使用し滅菌できてないので、他のバイポーラになることを現物を見せ伝えたところ、モノポーラを使用するという事になり、モノポーラを使って手術開始。扁桃摘出後より出血多く、術者が吸引しながら吸引管に電気メスをタッチし凝固止血を行っていたところ、吸引管が右口唇上下に接触しており熱傷がみられた。止血ができず、術者よりバイポーラを出すよう依頼があり、先ほど見せたものでもいいか確認し術野へバイポーラを出し止血を行った。手術を終了し開口器をはずしたところ、口角にも熱傷の跡あり。上下の口唇は術中モノポーラによる熱傷であることがわかっていたが、右口角はいつ受傷したのかわからなかった。
術者より、バイポーラは先だけ通電しているのではと尋ねられ、鑷子で摘んだ組織にしか通電しないと思っていたため「ハイ」と答えた。受傷部にはバラマイシン軟膏を塗布し、抜管し退室待ちとなる。しかし、術後出血あり再度、全身麻酔下で止血術となった。その際、間接介助のスタッフより使用したバイポーラは全体を被覆してなく、鑷子全体の一部が組織にあたればそこにも通電することがわかり、右口角の熱傷はバイポーラ使用時に受傷した可能性があることが考えられた。
バイポーラの取り扱いの認識が十分でなかった。使用する医療機器の取り扱いを再認識し、情報をスタッフ全員に浸透するようにする。耳鼻科の手術でバイポーラ使用するときには、耳鼻科用のバイポーラしか術野に出さない。 非絶縁型タイプのバイポーラ電気メスでは、添付文書に意図しない組織の熱傷に注意することとすでに記載されている。なお、これまで同様の事例が集積されており、PMDA医療安全情報No.16を作成・配信し、注意喚起を実施しているところ。
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不医
適療
切機
使器
用等
 ・
 医
 療
 材
 料
 の
半月板切除およびタナ切除を行った。通常通りの手技で手術中、温かい還流液が流れているのに気付いたが、熱湯ではなく、経験上問題を感じなかったので手術を続行した。術直後は問題がなかったが、術後1日目術野皮膚組織に2度の熱傷を発見した。
  1. 還流液の局所の還流が悪く、温度が上昇していた
  2. 同手術により熱湯が発生している事例を知らなかった
  3. 機器に熱傷防止の機能や使用時の温度設定がない
  1. 製造販売業者に報告し、機器の調査の実施、2件の同手術への立会いを依頼し原因の究明に努めた
  2. 還流液の温度の上昇に注意し、温度上昇時は還流を促してから通電する
当該事例については企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、術野が非常に狭かったために灌流液がうまく灌流せず、熱傷に至ったとのことである。
当該バイポーラ電極の添付文書には不十分な灌流による熱傷のおそれや、小さな関節に使用する場合には出力を下げたり、灌流液を増やすことが記載されているところ。
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不医
適療
切機
使器
用等
 ・
 医
 療
 材
 料
 の
術器材による火傷
経尿道的尿管結石砕石術終了後に患者の左恥骨部に縦約2.5cm、横約2cmの発赤とやや硬くなった皮膚異常を看護師が発見した。同時に使用したシーツが高温により焼けた痕跡も発見した。光源コードの接触によりできた皮膚異常と推測し主治医と上司に報告した。
手術中、光源コードを医師が一時的に取りはずした時に、光源コードのライトをつけた状態でシーツに置いた為、接触した部分のシーツが溶け、高温によって皮膚が熱傷を起こしたと思われる。光源コードの取り扱いについてのマニュアルはなく、火傷の危険性については考えていなかった。通常は看護師が観察しながら光源を内視鏡から取り外した時に「スタンバイ」に戻したり、医師からの「外した」の声賭けで電源を落としていたが、今回は、看護師も気付かず、医師の声かけもなかった。 術野で光源コードを取り外した際は、必ず医師がその旨を看護師に伝え、看護師は光源をスタンバイ状態にすることとした。
取り外しても直接シーツや皮膚に触れないよう、コード側に細工をするよう試作中である。
当該事例は光源コードを内視鏡から取り外しシーツの上に置いたものと考えられる。製品名は不明であるが同社光源装置の添付文書には光源コードを内視鏡から取り外す前に必ず電源を切ること、また、照明光が出ている状態で外すと光源コードの内視鏡側接続部が接触した場合にシーツ等が燃えたり、患者や術者に熱傷が発生するおそれがあることが記載されているところ。
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使そ
用の
に他
関の
す医
る療
内機
容器
 等
 ・
 医
 療
 材
 料
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患者は脳動静脈奇形に対し塞栓術を施行中、液体塞栓物質を注入するマイクロカテーテルが一緒に接着してしまい、抜去困難となった。出血の危険もあるため、一旦手術を終了し、翌日再度抜去を試みたが抜けず、血管内に永久留置することとなった。
患者は、5年前にクモ膜下出血を起こしクリッピング術施行、このとき脳血管奇形があることが判明し、以降、2回の脳出血を経験し他病院で治療していた。昨年失神し、他病院受診し当院を紹介された。その後当院にて2回液体塞栓物質(ONYX)にて塞栓術を施行している。今回「脳動静脈塞栓術」施行。術中左後大脳動脈内の塞栓物質用(ONYX)のマイクロカテーテルが抜けなくなる。ヘパリンで拮抗し、抜去を試みるが困難。他の部位の塞栓行い再び抜去を試みるが困難なため、これ以上の操作は脳出血の危険があると判断し断念。マイクロカテーテルを留置のまま手術終了し、家族へ説明、翌日再手術を行い、抜去を試みることとする。
術後ICU入室 BP160/70mmHg、HR85回/分。翌日手術室にて前日残存したマイクロカテーテルの抜去を試みるも抜けず、これ以上の操作は出血のリスクがあると判断、カテーテルは体内に残存する方針とし、大腿部で切断し、血管内に留置した。夕方手術終了。
ICU入室。BP128/78mmHg、HR86回/分、酸素流量3リットル/min。翌日一般病棟帰室。術後2日目やや見え難さあり、眼科受診 前眼部、眼底所見特に問題なし。術後5日目頭部MRIにて左後大脳動脈閉塞による脳梗塞認める(カテーテルが残存による影響と考える)。軽度失語様の症状(日常会話は、支障ない)もあるが、更なる出血や梗塞は認めず。術後9日目よりしばらく抗凝固剤の内服にて経過観察し、3~6ヶ月後に血管造影を実施して今後の治療を決定する。字が読みにくいのは、視力の問題ではなく「理解」の問題で、脳梗塞による失語症(換語困難/失読)の症状であるとの見解を、患者本人へ説明した。
リハビリ依頼し、言語療法開始(今後外来通院予定)。退院となった。患者・家族には上記経過を説明した。今後への不安はあるものの前向きに取り組む姿勢もみられ、病院に対し特に訴えは見られなかったことから、理解したと判断した。
血管内に留置したカテーテルは、今後血管内で上皮化することを期待しており、今後血管造影にて経過を確認していく方針。失語の程度は軽度であり、治療的環境において完全回復が期待できるレベルである。
【液体塞栓物質(ONYX)について】
  1. 今回使用したONYXは、非接着性の塞栓物質で、接着性のものよりは合併症が少ないとされるが、「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」にて早期導入すべき医療機器の一つとして選定され、
    1)実施医基準、2)施設基準、3)全使用症例の市販後調査の条件を伴い厚生労働省の承認を受けている
  2. 当院は、上記基準を満たし認可を受けた施設で、当院の倫理委員会の承認も受けている。また、今回の実施医も実施医認定を受けた医師であった。
  3. マイクロカテーテルの先からこの物質を出しながら塞栓していくが、カテーテルの先が一緒に固まってしまった。
  4. 液体塞栓物質ONXY及びマイクロカテーテルの説明書には、抜去困難について明記されており、起こりうる合併症として認知されている。更に、「困難な臨床状況下では、トラップされ離れないカテーテルを過度に牽引した場合の奇形破裂とそれに伴う出血を考慮すると、マイクロカテーテルを血管内に留置しておくほうが安全ということがある。マイクロカテーテルを血管内に留置する場合、マイクロカテーテルを伸ばした状態で血管到達の挿入部位近くのシャフトを切断する」との記載有り、本事例もそれにしたがって実施した。
  5. 今回の手術操作・手技上に問題となる点は認められない。
  6. 厚労省認可後、市販後調査(PMS)の対象であり、術後結果の全例報告が義務付けられている(Web方式にて報告済み)
  1. 今回は、十分な治療効果を期待し、塞栓物質の注入にやや時間を要した。遠位の蛇行性の強い血管では、抜去困難となる可能性があるため、注入の速度や時間、手技及び注入前後の観察はより慎重に行う。
  2. 手術説明・同意書にカテーテル抜去困難の可能性について記載し、事前に説明する。
当該事例については企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、抜去困難の原因は当該カテーテルが屈曲部位に挿入され先端が曲げられたためとのことである。当該カテーテルの添付文書には併用する塞栓剤を注入する前にカテーテルが抜去できない血管に挿入されていないことを確認するよう記載されているところ。
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使そ
用の
に他
関の
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る療
内機
容器
 等
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 医
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約2年半前に植込み型除細動器移植術を施行した。その後当科へ定期的に通院し、チェックを行っていた。今回検査に伴い、ICD点検を行ったところ、本体に保存されている記録にノイズと思われるものが発見され、リード断線が強く疑われた。 メーカー販売医療機器の不具合。 早急に不具合リードの入れ替え手術を施行した。 当該リードについては、同社他製品と比較して性能維持率が低下傾向にあることから当該企業により自主回収が実施されているところ。
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入院翌日に永久的ペースメーカー植え込み術施行。帰室後病室にて、当該社メーカー医師・臨床工学技士で閾値を確認した際、プログラムが入らないことに気がついた。VDD50-120はペーシングしていた。その翌日メーカー(技術部長)立会にて再度チェックするが、テスト途中で止まってしまいラフメトリー不能となり、ゼネレーター交換を勧められゼネレーター交換術を施行、同じ機種のものと交換した。その後、プログラムとラフメトリーには問題なく作動し退院となった。 メーカーより世界で数万台販売しているが、今回のトラブルは初めてとのこと。現在米国本社にて原因解析中。 現状のまま、植え込み術後プログラムテストを行う。
異常時はメーカーに報告する。
当該事例については企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、製造元の調査の結果、当該ペースメーカのテレメトリー不全の原因は回路構成部品の異常と推察されている。なお、当該製品は全世界で約25万台が販売されているが同様事象は発生しておらず、当該事例1例のみであり、当該企業は今後の発生傾向について情報収集に努めるとのことである。
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  1. 日中心静脈埋め込み型リザーバーポートを右鎖骨下静脈より留置した。
  2. 右前胸部皮下に留置したポートよりナベルビン(2週投与、1週休薬)、ハーセプチン(毎週)、ゾメタ(4週に1回)を投与していた。
  3. 全ての治療を通院で、外来治療センターで行った。
  4. リザーバーポート挿入から約3ヶ月ころより、ポート部直上の皮膚の菲薄化を認めた。
  5. その後、皮膚発赤を認めた。疼痛を伴ったが滴下に異常なかった。
  6. リザーバーポート挿入から約4ヶ月半過ぎごろ、ポート部皮膚より注射薬剤の漏出を認めた。
  7. 局所麻酔下に右大腿静脈よりOrca CV kitミニタイプを留置した後、右鎖骨下静脈のポートを摘出した。
  8. ポートは破損分解した状態で、生理食塩水を注入するとほとんど漏出した。
  9. ポート部周囲は、組織の硬化を認めた。局所麻酔下でのデブリードマンは困難で、皮膚を縫合した。
  1. 中心静脈埋め込み型リザーバーポート(Orca CV kitミニタイプ)の製品不良と考えられる。
  2. 同日メーカーより自主回収の報告があった。
  1. 同製品の安全が確認されるまで使用しない。
  2. メーカーからの報告を知ったのが同日の術後であったため、同じタイプのポートを右大腿静脈に留置することとなった。
    患者にオルカCVポート製品不具合による破損が原因で、皮下漏出、組織障害を来した可能性について所定の用紙を渡し、説明した。入れ替えに関する費用について保障される見込みである事を話した。特にご意見、質問はなかった。医療費対応部署も説明した。
当該事例にかかる製品については、品質上の問題から当該企業により自主回収が実施されているところ。
 
 
No. 事例 調査結果
【皮下用ポート及びカテーテル】
8 患者は、タンパク漏出性胃腸症あり、小児科でフォローしており、2週間に1回定期的に入院し、高カロリー輸液、アルブミン、脂肪製剤の補充を行っていた。入院した日の夜、患者は右鎖骨下周囲に痛みがあり、チューブ類(バードX ポートisp)の破損が疑われた。翌日小児外科医とともに診察し、鎖骨周囲の点滴漏れと判断した。レントゲンにて先端を確認した後、近日中に埋め込み型中心静脈カテーテルの入れ替え術の予定となった。入院6日後に全身麻酔下で左に埋め込み型中心静脈カテーテルを留置し、右の埋め込み型中心静脈カテーテルを抜去した。抜去したチューブの先端約4cm がなく、レントゲンにて左の肺動脈に先端があることを確認した。入院翌日のレントゲン写真を見直したところ、既に先端が破損していることが判明した。父親に状況を説明し同意を得た後、引き続き心臓カテーテルにて異物除去を行った。カテーテルの先端の破損は鎖骨と肋骨の機械的な摩擦によるものと考えられること、入院翌日の時点でも既に先端が破損していたことを患者に説明した。
今回のカテーテル切断はカテーテルピンチオフ現象によるものと考えられた。本事象は鎖骨下静脈より中心静脈カテーテルを穿刺挿入した場合に、鎖骨下組織によるカテーテル断裂に至る合併症である(断裂したカテーテルを製造メーカーに精査してもらい合併症と判明した)。症状(姿勢による点滴ルート閉塞など)や定期的レントゲン検査で早期発見、対応が可能であるが、主治医である小児科医は今回の合併症について認識がなかったため、対応が遅れカテーテル断裂に至って可能性がある。
報告事例中のメディコン社や東レ社の皮下植込み型ポート用カテーテルの断裂事象については、薬事法に基づく不具合報告でも同様事象が報告されており、現在、製品の改良等が実施されているところ。
また、当該企業が製造販売する皮下植込み型ポート用カテーテルの添付文書には、第一肋骨と鎖骨間の挟み込み等による断裂について注意する旨が記載されているところ。
9 化学療法目的に左鎖骨下静脈よりC-Vポート(バードX ポートisp)を挿入した。以後FEC3コース+DOC4コース施行。化学療法終了しポート除去した。6ヶ月後、外科外来処置室にて局所麻酔下にポート除去したところカテーテルが先端から11.5cm の位置で断裂していることが発覚した。胸部XP、CTで先端が右心腔に迷入していることを確認した。当患者はすでに以前から体位により滴下不良があり胸部XPにて鎖骨付近でカテーテルが屈曲している可能性が指摘されていた。術後補助化学療法目的でありポート使用予定期間が半年程度であったため体位を工夫してそのまま使用していた。
10 外来化学療法のため、右鎖骨下静脈よりCVポート(BARD社製)留置を施行し、外来ではCVポートに伴うトラブルなく点滴治療が行われ経過していた。再入院した際の胸部X線写真ではCVポート、カテーテルに異常は認められなかった。経口抗癌剤に治療変更となり、退院後はCVポートを使用しなかった。その1ヶ月後、化学療法効果判定のための胸~腹部CTの撮影を行った。同日、読影した放射線科医より「カテーテルの離断があり右房内に落ち込んでいる」との連絡を受け、胸部X線写真でカテーテル離断を再確認し、放射線科医によって、右大腿静脈からカテーテルを用いて離断したカテーテルの摘出が行われた。手技に伴う合併症なく終了し、経過観察目的に入院した。
CVポートは再度使用する可能性があり、耐用年数もまだかなりあるため(約2年)留置していた。
11 中心静脈栄養用埋込型カテーテル(PーUセルサイトポート)を留置、その後、定期的に外来通院し点滴治療していた。約2年2ヵ月後、点滴開始直後よりポート部の痛みあり、30分後ポート周囲が腫脹していたため中止、アクリノール湿布し帰宅させ翌日受診するよう伝えた。翌日は腫脹なし、ポート部の造影を実施したところ皮下の造影剤の漏れが有り、透視で遊離したカテーテルが上大静脈(SVC)にあることが分かった。循環器科医師により大腿静脈より経静脈的にアンプラッツグースネックスネアにてカテーテルを抜去した。
鎖骨下静脈からの刺入であり患者の上肢の動きによるカテーテルの折れ曲がりがあった。平成16年度より同種のカテーテルによる同様の切断事例が発生しており、今回で5件目。メーカーも事故を受け、折れ曲がりにくい耐キンクチューブを追加する等改良を行い、また当院では平成17年末より他のメーカーの製品の使用も開始されていた。しかし今回事故のカテーテルはそれ以前に留置されたものであった。
滴下不良等異常のあった当日に、速やかにXーPで確認しなかった。
報告事例中のメディコン社や東レ社の皮下植込み型ポート用カテーテルの断裂事象については、薬事法に基づく不具合報告でも同様事象が報告されており、現在、製品の改良等が実施されているところ。
また、当該企業が製造販売する皮下植込み型ポート用カテーテルの添付文書には、第一肋骨と鎖骨間の挟み込み等による断裂について注意する旨が記載されているところ。
12 定期的化学療法を行うことになったため、手術室にて右鎖骨下に皮下用ポート(バードX ポートisp)を挿入し化学療法を行い退院した。1ヵ月後の化学療法入院の際、ポートを使って治療をしようとしたが、ポート穿刺で血液逆流が確認できなかったため、別ルートを確保して治療を行った。次回の入院でポートの入替えを計画した。さらに1ヵ月後、皮下用CVポートの入替えを手術室で行った。手術中、旧のポートカテーテルが切断していることが分かり、切れた先端をX線上心臓内で発見した。手術終了後、カテーテル先端(約7cm)は、心臓カテーテルにて摘出できた。
これまで皮下用CVポートでの類似事例経験がなく、ポートの異常に気づいた時点では、添付文書に記載されている合併症を予想して対応していなかった。
13 大腸がん術後補助化学療法目的で左鎖骨下静脈からカテーテルおよびポート(メディコン社)を留置した。化学療法の続行は患者自宅近くの病院で施行した。10ヵ月後、経過観察のCT検査目的で当院に来院した際、カテーテルが離断し、肺動脈に迷入しているのが発見された。患者は約1週前に胸が痛くなったことがあったが、すぐに軽快したのでそのまま様子をみていた。患者・家族には、原因はわからないがカテーテルがポート接続部から2cm の部位で離断し、肺動脈に流れていることを説明し、緊急で血管造影下にカテーテル抜去を施行した。
化学療法用の留置カテーテルの断裂・迷入は当院では初めての事例である。断裂カテーテルをアメリカの本社に送り、原因を調査依頼した。
14 中心静脈ポート挿入 問題なく経過していた。1ヵ月後、化学療法のため中心静脈ポート(BARDグローションカテーテル)にコアレスニードルを刺入し、生食注入を開始時抵抗があり、患者も痛みを訴えた。刺入部位から生食が漏れており、抜針し、CTとX線でカテーテルの断裂が判明した。
カテーテルが鎖骨と第一肋骨の間にある鎖骨下静脈に留置されており、これは通常の経路であるが、この空間が狭く、両骨に挟まれることによりカテーテルに外力がかかり、結果として断裂した。
15 看護師がポート部のY ガーゼが濡れており、ポート(バードX ポートisp)部の針の刺入部からも点滴液が漏れているのを発見した。ポート部から鎖骨側に腫脹もあり、点滴を中止した。アンギオ室で確認したところカテーテルがポート部から逸脱し血管内遊離していることがわかったため、循環器医師に依頼、経静脈的に速やかに回収された。
以前にも他のメーカーのカテーテル使用時同様の事例が数例発生、昨年度より新しく留置する患者には現在のメーカーのものを使用していた。今回の事例は変更後の物であった。回収したカテーテルやポートについてメーカーに調査依頼している。
報告事例中のメディコン社や東レ社の皮下植込み型ポート用カテーテルの断裂事象については、薬事法に基づく不具合報告でも同様事象が報告されており、現在、製品の改良等が実施されているところ。
また、当該企業が製造販売する皮下植込み型ポート用カテーテルの添付文書には、第一肋骨と鎖骨間の挟み込み等による断裂について注意する旨が記載されているところ。
16 化学療法のため左鎖骨下静脈より中心静脈カテーテルリザーバーを留置した。(MRIポート、バード社:グローションカテーテル)以後化学療法のため計12回使用した。挿入8ヵ月後の胸部X線写真にてカテーテル・ピンチオフの所見は見られなかった。挿入9ヶ月後、滴下不良を認めカテーテル除去予定を計画した。その後、発熱により入院となる。胸部XPにてカテーテルの断裂を認め断裂したカテーテルをIVR (血管内異物除去術)にて摘出(先端から10cm で断裂していた)した。メーカーへも情報提供をした。
 
 
No. 事例 調査結果
【MRI】
17 【内容】
骨盤部のMRI造影検査中、両下腿が熱いと訴えあり、MRIによる加熱を疑い、インプラントや皮膚面の異物、刺青などを探したが何もなく、皮膚反応も見られなかった。患者には、また何かあればブザーを押してもらう事とし、検査を続行した。検査終了後、患者から検査中にまた下肢が熱かったと訴えがあった、検査中、下肢の熱さはあったが、我慢できる程度であった為、患者はブザーを押さなかった。視診にて両側下腿内側に1×2cmほどの紅斑を認めた。まれな事象ではあるがMRIによる熱傷を考えた。しかし軽微な紅斑であり、次の検査(CT検査)が同じ中央放射線部である為、少し経過をみた。その後CT検査に立ち会った看護師が、両下腿内側の病変部に水泡が出現した事に気付き、医師に報告した。両側下腿内側の紅斑及び水疱形成があり、表皮剥離はなかった。

【背景・要因】
腓腹筋の発達した患者で、検査台に臥床した際、両側のふくらはぎが僅かに接触し、両下肢にループ状の電流回路が形成された事による熱傷が考えられた。MRI検査時のインプラントや刺青、汗などの加熱による熱傷には注意をしていたが、皮膚の接触での熱傷を予見できなかった。
MR装置の添付文書には高周波ループによる熱傷のおそれと、皮膚同士が接触する場合にタオルを挟む等の予防方法が記載されているところ。また、日本画像医療システム工業会の「MR装置引渡しにおけるガイドライン」においても、同様の記載が行われているところ。
18 【内容】
GE社製 MRI装置 Signa Horizon Echospeed LX 1.5T にて、患者の大腿部を撮影した。撮影は、内蔵Body coil を用い、患者はガントリー内に腹臥位となり位置決めした。患者はMRI備え付けの検査着を着装し検査部位である下肢を、自然に伸ばした。また、検査内容は、一般的な撮影方法(Spin Echo 法、Fast Spin Echo 法)を用いた。検査中、検査終了後は患者から何も訴えは無かった。次回診療科外来受診時、患者からMRI撮影時、下退部ふくらはぎにかなりの熱感を覚えたが報告せず帰宅した。帰宅途中の車内で、ふくらはぎ部に違和感を覚え確認すると、両側ふくらはぎに水疱が出来ていた。との連絡があった。皮膚科受診し、熱傷と診断された。

【背景・要因】
今回の熱傷発生をGE社に連絡したところ、世界で2003年から2005年の間に、MRI検査時の熱傷発生件数は223件。そのうち、内蔵Body coil での発生は2件である。また、このうちの1件は、皮膚が、内蔵Body coil のカバーに直接接していたため該当部位に熱傷が発生、もう1件は、ふくらはぎ内側が接していたため、患者の下腿にループができ、電流が発生しふくらはぎ内側に熱傷を引き起こしたと考えられるとの回答を得た。当院での熱傷発生は後者の場合に該当すると思われる。患者本人にお願いして、検査時の位置決めの様子を再現した。再現した位置決めにより、ふくらはぎ内側は完全に接しており、ループによる熱傷と考えられた。
MR装置の添付文書には高周波ループによる熱傷のおそれと、皮膚同士が接触する場合にタオルを挟む等の予防方法が記載されているところ。また、日本画像医療システム工業会の「MR装置引渡しにおけるガイドライン」においても、同様の記載が行われているところ。