情報不足等のため製造販売業者による対策が困難と考えられた事例(医療事故)
No | 事故の程度 | 販売名等 | 製造販売業者等 | 事故の内容 | 事故の背景要因の概要 | 改善策 | 調査結果 |
1 | 障害残存の可能性なし | ディスオーパ消毒液0.55% | ジョンソン・エンド・ジョンソン | 以前のファイバーでも鼻汁多く、アレルギー症状あり。一度発疹出現したため、以後はキシロカインやボスミンの鼻処置は行わず内視鏡検査を実施していた。今回も前処置なしで喉頭ファイバーを実施したが、しばらくした後、全身発疹、呼吸困難(喘鳴あり)SpO2低下、血圧低下、嘔吐をきたした。薬剤投与し症状改善。アナフィラキシーショックと診断し1泊入院となる。 | 今回は検査時薬剤を使用しておらず、予想外であった。考えられる要因としては、ファイバーの素材であるフッ素ゴム、ポリウレタン、エポキシ樹脂、あるいは、消毒剤であるディスオーパの残存である。スクラッチテストを実施する予定であるが、元疾患の治療が優先されるため検査待ちの状態である。採血においては陰性であった。 消毒薬においては、消毒薬への浸漬、洗浄の工程で使用しているが洗浄不備も考えられる。 |
ファイバーの消毒、洗浄の見直し。 十分な消毒、洗浄手順の徹底。 |
喉頭ファイバーの素材又は残存消毒剤による副作用症状と考えられるが、皮下テストの結果等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。 |
2 | 障害なし | オイパミロン | コニカ(株) | 薬剤に関する出来事 | CT造影検査終了後検査台より降ろそうとした時、急に全身硬直あり、意識消失あり、頚動脈触知試みるも触知困難。ハリーコール。 | 何回も造影剤使用のCT検査をしている患者で、副作用がなくても薬液が変わるときには、注意をする。 | オイパミロンによる副作用症状とも考えられるが、患者の原疾患及び既往歴等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。 |
3 | 障害なし | オイパミロン | コニカ(株) | 薬剤に関する出来事 | 造影剤注入後、看護師が約5分後台から起こそうしていた時、痙攣をおこされ意識喪失になったので、ハリーコールを行った。 | 造影CTの依頼、指示について、もっと患者基本情報を考慮する。 | オイパミロンによる副作用症状とも考えられるが、患者の原疾患及び既往歴等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。 |
4 | 障害残存の可能性なし | ファルモルビシン | 不明 | 本患者における最大使用量は55.8mgであった。検査室では持参されたバイアルが10mg 1本,50mg 1本であり、カルテには抜き取り量が記載されていたが、確認不足があり、結果としてそれぞれのバイアルから全量分を使用したことが検査後に判明した.この結果,計算上の最大使用量を超えて10+50=60mgを投与したことになった. 抗癌剤投与直後に胸部苦悶感や心窩部痛,および検査数時間後より出現した発熱や嘔気が挙げられるものの,それぞれは抗癌剤自体の影響が大きいと思われ,投与量の差異による影響は不明. | 投与量の確認不足。カルテ上でオーダー量と抜き取り量が別々に記載されており、結局総量でいくら投与するのかわかりにくい。 | 複数人数での投与量の確認。 レジメンのカルテ表記の簡明化。 | ファルモルビシンの投与量に関連した副作用症状とも考えられるが、併用薬剤、患者状況等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。 |
5 | 障害残存の可能性がある(高い) | アドリアシン注用10 | 協和発酵キリン | 子宮体癌Ic期の診断で子宮体癌根治術を施行。術後の補助化学療法として標準治療であるAP療法(アドリアシン+シスプラチン)で、アドリアシンを総量299mg/m2を6回に渡り投与した。6回投与後の外来受診時に胸水貯留を認め、入院となった。循環器内科精査で心不全の診断となり、調査を行ったところ、10年前にろ胞性リンパ種でCHOP療法を受けていたことが判明した。当事者は、患者が既往で化学療法を受けていることは認識していたが、内容をよく確認せず、CHOP療法の「H」をハイドロキシウレアと思い込み、アドリアシンは使用していないと判断した。実際には、10年前の治療にアドリアシンが使用されており、今回の投与量299mg/m2と併せると、総投与量が600mg/m2となり、アドリアシンの投与量限度(500mg/m2以下)を超過していた。しかし現時点では、アドリアシン投与と心不全の因果関係については、はっきりしていない。 |
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アドリアシンの投与量に関連した副作用症状とも考えられるが、患者状況等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。 |
6 | 障害なし | イソゾール注射用0.5g | 日医工 | 手術室入室時に麻酔薬(=イソゾール)を投与するが、入眠しないので刺入部を観察すると、血管外漏出をしていた 皮膚科に相談して局所注射実施 (投与薬剤が強アルカリ性のため、鎮痛及び中和目的のキシロカインと抗炎症目的にハイドロコートンの混在を注射) リバノール湿布 翌日皮膚科受診 →潰瘍、紫斑などは認めず 軟膏と湿布で処置継続 手術予定通り終了したので退院 自宅での処置を指導 |
1歳代 刺入部はシーネ・包帯固定をしていた |
注射投与時の刺入部の観察 | 刺入部に血管外漏出を認めたとのことであるが、手技を含め原因等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。 |
7 | 障害なし | 不明 | 不明 | 抗がん剤が漏れて腫脹し血管に沿って発赤した。 | 点滴の観察頻度の不足 | 末梢からの抗がん剤投与は、かなり危険を伴う為、CVからの投与よりも頻回に観察する。患者の理解度にあった指導をする。 | 抗がん剤の漏れを認めたとのことであるが、手技を含め原因等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。 |
8 | 障害なし | 不明 | 不明 | 滴下が悪く漏れを発見。抜針し、キシロカインアンプル10mgを皮下注射し皮膚科受診。 | 点滴刺入部位の不適、ぜい弱化 | 抗がん剤点滴時には、逆血を確認後も刺入部痛や刺入部周辺の皮膚状態を観察し、患者より刺入部の違和感があれば報告してもらう。 | 抗がん剤の漏れを認めたとのことであるが、薬剤の名称、手技を含め原因等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。 |
9 | 障害残存の可能性なし | セボフルラン吸入麻酔薬「マイラン」 | マイラン製薬 | 入室後、心電図モニター、パルスオキシメーターを装着し麻酔導入しようとしたが、啼泣が強くマスクによる麻酔導入ができなかった。亜酸化窒素・酸素および高濃度セボフルランにより麻酔導入を試み、入眠確認後、マスクで呼吸補助を続けたが間もなく酸素飽和度の低下と徐脈に気付き硫酸アトロピン投与を行い、ほぼ同時に亜酸化窒素投与を中断したが改善なく、高濃度セボフルラン投与を中断し酸素化が改善した。再度セボフルランを2%の濃度で投与すると再び酸素化が増悪しマスク換気が困難になる傾向を認めたため、チオペンタールを静脈投与し鎮静後、気管内挿管を行った。その後胸部レントゲン写真にて肺水腫を認めたため手術は中止し集中治療室に入室した。2日後、気管チューブを抜管し翌日に一般病棟に転棟となった。 | 小児に高濃度吸入麻酔薬を使用したことが原因と考える | 高濃度吸入麻酔薬を小児患者へ投与しない。 静脈麻酔薬の慎重投与により循環動態の急速な変化を避け、急性呼吸不全の発症を予防する。 |
セボフルランによる副作用症状とも考えられるが、患者の原疾患及び手術状況等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。 |
10 | 障害なし | なし | なし | 手術終了後、抜管までは問題なく経過。抜管後酸素飽和度測定できず、次第に頻脈となり、血圧の測定ができなくなる。皮膚症状、呼吸器症状などはみとめなかったが、ボスミン投与で回復したことから、アナフィラキシーが最も考えられた。原因薬剤としては、抜管前に投与したブリディオンもしくはサリンヘスが疑わしいと思われる。 | アナフィラキシーショックのため。 | なし。 | ブリディオンもしくはサリンヘスによる副作用症状とも考えられるが、患者の原疾患、手術内容及び他の使用薬剤等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。 |
11 | 障害なし | スルペラゾンキット1グラム | ファイザー | 今回の入院時、前回投与副作用なしを確認後、医師は前回と同じく、抗菌剤使用チェックリストで確認、看護師の評価確認後、ベッドサイドで看護師が静脈確保、投与開始、1分30秒後にアナフラキシーショック、意識消失、血圧低下、緊急気管内挿管、一連の救急処置実施、1時間後、回復、抜管し経過回復した。 | 抗菌剤投与時の観察強化(投与観察基準を実践する) 投与副作用発生がなくても、患者病態により、アナフラキシーショックが発生する。 |
当院では1年以内の投与記録で同薬剤で副作用発生なければ、チェックリストは不要との基準があるが、看護職側で前回記録の管理照合をどのようにあきらかにしていくべきか、迷っている。常に1回目と同じに評価するべきと、現状検討中。 極力、医師の評価を実施していくよう看護部側より、医師に依頼している。 |
スルペラゾンによる副作用症状とも考えられるが、患者の原疾患及び既往歴等の詳細な情報が不明であり、検討困難と考える。 |