独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

平成24年度 第3回医薬品・医療機器安全使用対策検討結果報告(医療機器関連事例) 別添2

本文別添1|別添2|別添3

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(医療事故)

No. 事故の
程度
販売名 製造販売
業者名
事故の内容 事故の背景要因の概要 改善策 調査結果
1 障害残存の可能性がある(低い) ハミングV メトラン 8:30に医師と看護師が人工呼吸器が正常に作動していることを確認した。8:41に看護師が点滴を見た時に正常作動を確認した。9:14に医師と共に吸引しようとした際に医師がスタンバイモードになっており、停止していることを発見した。患者のバイタルサインに変化はなかった。
  1. 無意識につまみに触った可能性(レスピレーターに触れた記憶のある勤務者はいなかった)
  2. 誤って身体や物品が触れてスタンバイモードになった可能性
物品があたることを防ぎ、容易にスタンバイモードに切り替わることがないようにテープ固定、あるいはカバーを検討中。
  • 確認が不十分であった
2 障害なし ベンチレータ 700シリーズ コヴィディエン ジャパン ベネット740使用中 (SIMV 21% R8回 HR40-50 Sat97%)
20:30 加温加湿器アラーム
20:40 鳴り止まず、臨床工学部に電話で相談。加温加湿器の電源を一度切り、すぐに再起動することをを指示された。看護師は、加温加湿器と人工呼吸器の主電源をOFF/ONするよういわれたと思った。主電源を切り、カチカチっとすぐに電源を入れた(呼吸器がすぐ再開すると思った)
呼吸器が作動せず、患者の胸郭の動きが悪くなりSat78% すぐにジャクソンリースで用手換気開始      
20:45 臨床工学技士へ連絡
20:48 病棟へ技士が到着し、人工呼吸器が「換気停止」状態であることを発見し、設定後呼吸器再始動 以降Sat98-100%
その後、患者の状態には、影響はなかった。
  1. 看護師と臨床工学技士は、お互い主語のないまま会話された。技士は加温加湿器の電源のみの再起動を伝え、人工呼吸機の主電源を切るとは思わなかった。看護師が電源の位置を理解しているか確認し、わかっていたので大丈夫と思い任せた。看護師は、加温加湿器と人工呼吸機の主電源の両方の再起動を指示されたと思った。しかし、腫電源を切ることには不安があり「看護師がしていいのか?」と聞いたが(主電源も)とは聞かなかった。
  2. 使用していたベネット740は、一度電源を切るとモードを再設定しないと、再起動しないが、看護師はそのことを知らなかった。
  1. 人工呼吸機の研修会の開催
  2. TeamSTEPPSを活用したコミニュケーションエラー防止のためのシミュレーション教育の実施
  3. 生命維持装置である人工呼吸機に関する問い合わせの際には、電話での対応ではなく臨床工学技士が現場に赴く(当院は24時間体制で臨床工学技士が院内にいるため)
  • 知識が不足していた・知識に誤りがあった
  • 連携
3 障害残存の可能性なし 不明 不明 治療のため挿管となり呼吸器を装着した。呼吸器装着後Spo2が低下し始め、酸素濃度を上げたり、呼吸回数等の設定を変更したりしたが改善無し。
配管を確認したところ壁の配管は接続されていたが、Y字管との接続部に1mm程度の隙間があり、押し込むとカチッという手応えがあり、その後SPO2の上昇を認めた。
Y字管の接続部が取れないようにチェーンで固定してあるが、これにより一見接続されている様に誤認した可能性が有る。
アラームが鳴っていたが、メッセージを十分確認しておらず、原因の発見が遅れた。
アラームに対する対処が正しく行われていない実態があり、教育の強化を図る。
  • 確認が不十分であった
4 障害残存の可能性がある(高い) BiPAP ビジョン フィリップス・レスピロニクス 8:00 呼吸器装着中。呼名反応あり。
10:00 呼名反応なし。カヌラへの変更可否を確認するため血ガス検査。CO2貯留
10:15 CT予定のためカヌラに変更。SPO2低下してきたためリザーバーマスクに変更、SPO2改善。呼吸器装着。
10:25 SPO2徐々に低下。FIO2を0.3→1.0に変更。それでも改善しないため
10:30 バックバルブマスクに変更。以後状態を確認しながら呼吸器とバックバルブマスクでの換気を継続。
11:45 家族来院。DNARを確認。その後は呼吸器で経過観察。
14:40 臨床工学技士来室し呼吸器のチェックを行ったところ酸素の接続が外れていることが判明。酸素を接続し、呼吸器を装着しなおしたところでSPO2は安定した。

バックバルブマスクと呼吸器の酸素ラインは一つの接続口につなぎ替える状態にあり、10:30から11:45までは酸素の繋がっていない呼吸器と酸素の繋がっているバックバルブマスクを交互に繰り返していた。
11:45から14:40まではルームエアーの呼吸器で経過観察を行っていた。
この間、アラームは鳴っていたが、状態悪化のためのアラームと思い、確認せず止めていた。
使用している呼吸器、バックバルブマスク、カヌラには酸素が接続されているものと思い込んでいた。
アラームが鳴っていたが以前にも脳梗塞の既往があり、再梗塞による状態悪化のため鳴っているものと思いアラームの原因について追求しなかった。
DNARが取れており積極的な治療に向けた行動がとられなかった。
  1. 職員(医師、看護師、臨床工学技士、診療技術部職員)への教育と指導
  2. 呼吸器管理
    a.呼吸器学習会を年2回以上計画する
    b.呼吸器とマスクを使用するときは酸素Y字管に接続することの徹底
    c.全呼吸器に「簡易取扱説明書」「アラーム対処一覧」を取り付け
    d.呼吸器のチェック項目を再検討
    e.呼吸器のアラームが分からないときは、昼夜を問わず臨床工学技士に連絡する旨を周知
  3. 環境整備(接続部を確認しやすい配置)
  4. 呼吸ケアサポートチームの始動
  • 確認が不十分であった
  • 判断に誤りがあった
  • 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
5 障害なし PY2 スクリューインリード 日本ライフライン 医療機器等に関する出来事 完全房室ブロックに対して永久ペースメーカー移植術を施行した。この時、心室リードに格納式スクリューインリードを使用しており、体外でリードのスクリュー操作部を約8回転することでスクリューがリードから出てくることを確認し、スクリューを再格納した後、リードを心室内の測定値の良い位置まで挿入しスクリュー操作部に12回転を加えた。手術室の透視装置では解像度の問題からスクリューを確認することができなかったが、十分な回転数を加えたことと、数回の測定値の確認(本体接続直前、閉創後)によってリードが心室内の良い位置に留置できていると認識した。2日後、午前5時頃に心電図モニターでペーシング不全が出現していたことが確認され、コールがあった。来棟しペーシング不全を確認した。ペースメーカーチェックを施行で抵抗値の急激な上昇を認めており、リード位置の移動、本体との接続不良、断線などが疑われた。このため、一時ペースメーカーの挿入を行った。血管造影室の透視装置で永久ペースメーカーの心室リードの先端を確認すると、スクリューがリードから出ておらず(心房リードのスクリューは確認できた)、このことによりリード移動、ペーシング不全となったことが推測された。リード再固定術を施行予定である。
  • 手術室の透視装置の機能でスクリューの出入を確認できるリードを使用する。 
  • 解像度の高い透視装置を手術室に導入する。 
  • スクリューイン後にリードを引っ張るなどでリードの心室への固定を確認する。
  • 確認が不十分であった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
6 障害残存の可能性なし 血液浄化用装置(TR-525) JUNKEN MEDICAL 13:50 CHDFチェック表に従いサブラッド残量31を確認
14:20頃より当事者(1)は清拭を開始
14:40頃より背面を清拭するため当事者(2)に応援を頼み、患者を右側臥位にする(シースは右鼡径部に挿入)
側臥位を取って病衣交換を行う最中にブラッドアクセス異常のCHDFアラームあり、アラーム内容は当事者(1)(2)共に確認。側臥位によるものと判断しアラーム中断、ポンプ再開を行うが再度アラーム。
患者背面を確認し病衣交換のみ行い仰臥位へ戻す。ポンプ再開。
14:45には清拭終了していた、当事者(2)はこの段階でベッドサイドを離れる
14:50 CHDFのチェックを行おうとした際コアヒビター残0になっていることを確認、回路閉塞の危険があるためコアヒビターを追加
チェックリストをチェックしたところ1時間前の残量31mlが1時間で注入されたことになるためME連絡、ACT実施
透析担当医師連絡、ACT測定値が1000以上の為CHDF中止指示
主治医連絡
CHDFのシリンジポンプにシリンジが正しくセットされていなかった。(押し子がはまっていなかった)
今までは抗凝固剤を後から入れる回路を使用していたが、今回から先に入れる回路を使用しており、ブラッドアクセス異常時に吸引される危険性を周知できていなかった。
CHDFの準備(プライミング)時、または回路交換時のシリンジセットは臨床工学技師が行い、シリンジ残液がなくなった場合の交換は看護師が行っています。
CHDFシリンジポンプについては、CHDF用としての手順はなく、ICUスタッフはシリンジポンプを取り扱う回数も多いことから、院内のシリンジポンプ使用基準に則って行っています。CHDFをICU以外で使用することはないので、他部署からの異動や新任者としてICUに新しく入ってきたスタッフには、臨床工学技師または熟練看護師が、CHDFの原理から指導を行い、CHDFシリンジポンプのセットの仕方を指導している。
今までは、抗凝固剤をポンプチューブの後から入れる「ヘパリンアフタータイプ」の回路を使用していたが、血液ポンプ付近で回路内凝血が起こってしまう事例が3件発生した。この時、モニタリングしている圧力の変動による警報報知はなく、空回し状態となってしまったため、患者から脱血した直後に抗凝固化されていないことが原因と考え、安全性を考慮して脱血した直後に抗凝固剤が入る「ヘパリンビフォータイプ」の回路に変更した。
シリンジが正しくセットされていないと、ブラッドアクセス異常時にシリンジを吸引してしまうリスクがあることを認識する。
  • 確認が不十分であった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
7 死亡 プラズマフローOP 旭化成メディカル 患者は50歳代男性でC型肝硬変にて脳死肝移植手術を受けた。もともと腎不全があり、術後、持続血液濾過透析を行っていた。
19時30分頃に透析回路の圧が上昇し、医師Aは医師Bに伝えたとこと、医師Bは回路の交換が必要であると答えたため、応援を要請した。医師Aは看護師Cに回路交換が必要になったため、医師Bに依頼したことを伝えた。看護師Cは、持続血液濾過器ではなく、プラズマフロー(膜型血漿分離器)とともに、その他必要な物品をそろえた。
その後、医師Aと医師Bが透析回路の交換を行った。その際、医師Bはいつも見ている子供のカラムと違って大きいと言ったが、成人サイズだから小児サイズとは違うのだと思った。
患者は約2時間後に血圧が低下した。血液濾過透析器の排液の色調がオレンジから茶色に変わり、アルブミンの急激な低下があった。昇圧剤、輸液により血圧は安定した。翌日午前に意識を失い、同日に死亡した。死亡後に、持続血液濾過透析の際にエクセルフロー(持続血液濾過器)を取り付けるべきところを誤ってプラズマフローを取り付けていたことが判明した。
医師2名が回路交換を行い、看護師が物品を準備した。準備した際に、誤った器具が取り揃えられた。看護師は普段これらの準備を担当しておらず、医師が準備をすることになっていた。医師Bは、医師Aが物品を準備したものだと思い、医師Aは、看護師Cが物品を準備したことは知っていたが、医師Bが確認するだろうと思っていた。そのため、医師は、看護師が準備をした物品が正しいものであると思いこんだ。看護師Cは、物品棚に血液濾過器以外のものが入っているという認識はなかった。
透析器具の取扱は、臨床工学技師が対応することも多かったが、このときは夜間であり、医師が交換した。確認不足だけではなく、背景要因が複数あると考えた。
当該病棟には、透析関連物品が党内の物品棚に置かれていた。当初は血液濾過器のみが定数配置されていたが、膜型血漿分離器を使用することがあったため、どちらも定数配置することになった。また、直方体の箱の管理する際に、奥行きが長くなるよう配置していたが、視覚に入る面には用途を示す文言や製品名は記載されていなかった。
臨床工学技士の増員(夜間などの臨床工学技士不在を解消)、部署での物品管理の変更(間違えないように1種類の器具しか定数管理しない)。
  • 確認が不十分であった
  • 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
8 障害残存の可能性がある(低い) 生体情報管理システム CAP-2100 日本光電工業 午前1時20番ベッドのCAPシステム不整脈リコール画面を確認したところ、PVCの連発が頻回に出現していた。血圧等変動なく、医師報告。医師と共にCAPシステムリコール画面にて不整脈を確認後、キシロカイン50mgを投与した。その際、ベッドサイドモニターでのリコールは行っていない。直後、19番ベッドの患者のベッドサイドモニター上でVTが出現し、同時に20番ベッドのCAPシステムの不整脈画面にそのVT波形が表示されていることに気づいた。19番ベッドと20番ベッドのCAPシステムに表示されている生体情報は全てが逆であることが発覚した。20番ベッドの患者にPVC連発の不整脈はなく、単発のみであり、CAPシステム上とベッドサイドモニターのリコール画面は違うものであった。 両患者は同時刻に手術より帰室した。その直前に急遽ベッド位置を逆にする必要があり、両方のCAPシステムの「ベッド移動」操作を行い、入れ替えた。ベッド番号と患者は紐づけられたままPCが入れ替ったのみとなり、結果情報が交差した。
このような場合、一旦退床操作を行った上で再度各々のベッド番号に入床操作を行う必要があった。
不整脈出現時、ベッドサイドでのリコールを医師と共に怠った。
通常はどちらかが入床あるいは退床操作を行うため、誤りが生じないが今回は両患者とも入床操作後の移動であり確認が不足した。
CAPシステムは生体情報がサーバーに一度取り込まれ、PCに表示されるため、患者認証を確実に行う。異常時にはまずベッドサイドモニターで確認することを徹底する。
  • 確認が不十分であった
9 障害残存の可能性がある(高い) カイゲン床ずれ予防シート 原沢製薬工業 16時に喘鳴出現。発作時のメプチン吸入、アクアサーム、ソル・メドロール静脈注射施行するが改善なくNPPV装着。フェイスマスク装着のため額、鼻部に皮膚保護シート貼付(以降シートと称す)した胃管の隙間よりリークがあるため胃管固定付近(右頬部)にもシートを貼付した。しかしリーク持続するため医師がトータルフェイスマスクを装着。胃管固定付近のシートに関しては胃管の隙間でリークが持続すると判断し貼付のままにした。21時半SPO2 98% 意識レベル改善したが、22時半突然SPO2 80%に低下し、23時気管挿管、呼吸気管理となる。翌日11時半過ぎ看護師が吸痰後挿管チューブの内腔に透明な異物が付着しているのを発見。吸引を試みるが回収できず。徐々にSPO2低下、HR50台で胸骨圧迫開始。再挿管施行。抜去した挿管チューブの異物確認するとNPPV装着時胃管固定付近に貼付したシートだった。 義歯のない口腔付近に貼付していた皮膚保護シートが、NPPVの陽圧により少しずつ口腔内に入り込み、吸気と共に気管内に入った。そして、挿管チューブを挿入することで、より奥へ入り込んだと考えられる。
  • 皮膚保護シートの性質を十分理解していなかった。
  • 皮膚保護シートの使用上の注意にカットについての記載がなかった。
  • NPPV装着時の皮膚保護シートをカットする際、大きさの考慮が足りなかった。
  • NPPV使用により陽圧換気であることの予見の甘さ。
  • 株式会社カイゲンに連絡:他施設で同様の事故が起こらないために、使用上の注意の改訂や対応の改善を求む。
  • 当院医療安全対策委員会にて当面顔面には当該製品も含め非固着剤を貼付しないことにした。
  • 当院RST委員会にてNPPV使用時の注意点(NPPVは窒息の可能性がある機械であること・マスクの選択・許容範囲のリーク値など)ニュース発行。
  • どうしても顔面に貼付しなければならない場合の対応手順を作成予定。
  • 観察が不十分であった
10 障害残存の可能性なし デジタルX線TVシステム ZEXIRA DERX-ZX-80 東芝メディカルシステムズ 上部消化管X線検査で患者の腹部を圧迫筒にて撮影した。
患者の肋軟骨を損傷して痛みの訴えあり。
検査終了後、すぐには患者から痛みの訴えはなかった。その後健診センターにもどってから痛みを訴えられた。検査者は問題ないと思っていた。 検査の性格上、どうしても圧迫撮影は必要である。患者とのコミュニケーションを密にして、痛みなどはすぐに訴えていただく。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
11 障害残存の可能性なし プラカンシ ホギメディカル 手術前清潔操作として敷布を布鉗子にて固定した際に、右大腿部の皮膚を布と一緒に挟んでいたことが術後に判明。
圧迫痕は認めたが浸出液はなく、デュオアクティブにて保護。ご両親に説明行い経過観察の方針となる。
布鉗子で固定の際に、確実に敷布のみを持ち上げるなどの、皮膚をつかんでないことを確認がなされなかった。 布鉗子で固定の際には確実に敷布のみを持ち上げ、皮膚をつかんでないことを確認して行う。
  • 確認が不十分であった
12 障害残存の可能性なし チェスト・ドレーン・バック 秋田住友ベーク 胸腔ドレナージの際にチェストドレーンバッグ(ダブルカテーテル)を呼吸器内科病棟から持参した。挿入日は自然排液させ、挿入したカテーテルのみクランプし、使用しない他方のカテーテルをクランプしなかった。翌日、カテーテルを開放して、陰圧吸引をかけると、呼吸困難をきたし、X線検査にて左気胸が判明した。 持参したバッグは、別患者に使用するつもりで開封したが使用しなかったために、病棟看護師がこれから使用するように張り紙をしたものであった。使用前の確認不足もあった。
  1. 【周知】院内職員にこのような事例があったことを周知し(医療安全情報発行)、1本しか使用しない際にはシングルカテーテルを使用し、やむを得ず、ダブルカテーテルを使用する際には、使用しないカテーテルをクランプすることを伝えた。
  2. 間違いが起こらないように、別のメーカーの製品を採用した(メラ アクアコンフォート:泉工医科工業)。
  • 確認が不十分であった
  • 知識が不足していた・知識に誤りがあった
13 障害残存の可能性がある(低い) 手術用顕微鏡 OPMI Pentero カールツァイスメディテック キセノン光源の照射による熱傷が疑われた。 キセノン光源による熱傷は他施設からの報告もあり、添付文書の警告および追加して出された 安全性に関する情報のご提供 によっても注意が喚起されていた。本事例では推奨されている、周辺組織の冷却は行われておらず、また、照射強度、時間共に配慮が十分でなかった可能性がある。さらに、手術操作による局所の血流障害が関与した可能性もある。術者にこれらの情報が十分に周知されていなかった。 添付文書及び 安全性に関する情報のご提供 の内容に関して関係者に周知徹底を行った。
  • 判断に誤りがあった
  • 知識が不足していた・知識に誤りがあった
14 障害なし マクソン コヴィディエン ジャパン 右肺がん疑いにて、全身麻酔下でTS右肺上葉部分切除術施行。
  1. 17時5分病棟へ帰室。リカバリ室に入室時針カウント1本不足がわかった。
  2. 手術終了後のX-Pで、体内への針残存はないと医師2名が判断し、他を探すことことにした。
  3. 手術室内、ゴミ箱等すべて探すが見あたらず。
  4. 患者の衣類、掛け物に着いている可能性を考えた。
  5. 翌日まで患者の衣類・掛け物を探すが見あたらず。
  6. 翌朝のX-P・胸部CT撮影でも針の確認はできなかった。
  7. 2日後のX-Pで、胸部に針らしきものが写っているのを確認した。
  8. 患者と妻に事実を説明し午後より体内異物除去を施行し、取り出した。
  1. 手術室内での出来事で、体内に残存している筈がないという思いでいた。
  2. 医師、看護師の持針器のやりとり時に針を見ないで流れ作業的に確認したと思いこんでいた。
  3. 創部閉縫合前に針カウントをしていなかった。
  4. 手術終了後に数があわないことに気づきながら、体内残存はないどろうとリスクの予測が低く報告が遅い。
  5. 手術室パスの記録だけ見ると針カウントO.Kにチェックがあり、それがカウントしたことでのチェックに終わっていた。不足について申し送っていない。
  6. 隠そうとしたのでなく、重大なことだという認識がなかった。
  1. 手術室内での出来事で、体内に残存している筈がないという思いでいた。
  2. 医師、看護師の持針器のやりとり時に針を見ないで流れ作業的に確認したと思いこんでいた。
  3. 創部閉縫合前に針カウントをしていなかった。
  4. 手術終了後に数があわないことに気づきながら、体内残存はないだろうとリスクの予測が低く報告が遅い。
  5. 手術室パスの記録だけ見ると針カウントO.Kにチェックがあり、それがカウントしたことでのチェックに終わっていた。不足について申し送っていない。
  6. 隠そうとしたのでなく、重大なことだという認識がなかった。
  7. 病棟看護師へ不明であることをその時申し送ること。
  • 確認が不十分であった
  • 報告等(忘れた・不十分・間違い・不適切)
  • 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
15 障害なし エスパイアView GEヘルスケア・ジャパン 看護師が一人で回路を取り付けリークチェックを実施していた。その後、後期研修医も始業点検のリークチェックを実施した。さらに指導医も回路の異常に気がつかなかった。
麻酔導入に際してはプロポフォールを使用し,マスク保持による用手換気を実施した。送気は可能で胸部挙上を認めるものの呼気の戻りが悪く,呼気終末二酸化炭素モニターも低値状態にあった。しかし、換気不可能ではないと判断し、筋弛緩薬を投与した。舌根沈下が原因と判断し,経口エアウエイを挿入し、二人法でマスク換気を実施した。やはり送気は可能で胸部挙上は認めるものの,呼気の戻りが悪いのは変化無かった。しかし、SpO2は100%を維持できていたため、酸素化が十分にできており喉頭展開も困難ではなかったため,気管挿管を実施した。その後呼吸回路に接続して用手換気を実施したが、換気の状態は変わりなかった。気管支鏡で確認し,食道挿管でないことを確認した。この頃より前胸部~頸部の発赤が認められたため、薬剤によるアナフィラキシー(気管支喘息)が疑われ,人手を集め複数の麻酔科医の判断で、重症気管支喘息と判断された。ネオフィリン、ステロイド、エピネフィリン皮下注、H1およびH2ブロッカーを投与した。
しかし変化無く,用手換気を継続した。心拍数や血圧、SpO2は明らかな異常を認めず、手術は予定通り実施し、術後は抜管せずにICU入室という方向にした。手術終了しICU移動のために移動用のジャクソンリース回路に変更したところ、換気がスムーズになった。ICUに患者を送った後、麻酔機の蛇管の一方が呼気側ではなくACGOポートに接続されていた事がわかった。
患者はまもなく覚醒し,全身状態に異常なく,約30分後に抜管され、一般病棟に戻った。
昨年購入したもので、現在手術部には6台同様の麻酔機がある。当該看護師及び当該後期研修医は、この麻酔機の使用経験はあった。
看護師のリークチェックは、麻酔機に呼吸バッグと回路を接続し、麻酔機の酸素フラッシュボタンを押し、呼吸バックを加圧して、接続した回路やバックからの漏れがないことを確認した。
後期研修医のリークチェックは、外観をチェック後、酸素流量を流して、APLバルブ弁を閉じ、回路内圧が高いまま保たれるのを確認して麻酔器、患者回路にリークがないかどうかチェックした。
指導医は、後期臨床研修医からの申告で、リークチェックを追認した。
麻酔機始業点検ガイドラインの不徹底。始業点検簿は電子カルテ上に載せており、点検終了後麻酔チャートの備考欄に「麻酔機始業点検済み」と記載することにしている。
始業点検を実施したのが後期研修医1名だけであったこと。
麻酔機の構造が呼気回路接続口と同じ高さの近くにACGOポートがあるためエラーを招きやすく、回路が接続できてしまう。また、ACGOポートに接続しても、リークチェックで異常が検出されない構造になっている。ACGOポートの接続口であることの注意喚起のシールが座って操作をするときに見える位置に張られていた。ACGOポートを閉鎖していなかった。
患者は1日80本の喫煙歴があったために,出現している症状が喘息という事に疑問をもたなかった。
麻酔機のBAG/VENTスイッチは、挿管前まではBAG側で、APLバルブ弁の操作で換気可能でした。ACGOのスイッチは操作できないように閉鎖されており、OFFになっていた。
日本麻酔学会による麻酔機始業点検ガイドラインを徹底する。
基本的には接続できないように閉鎖をしておく。
立って操作する時にも注意喚起のシールが見える位置に貼付する。
  • 確認が不十分であった
16 障害残存の可能性がある(低い) ME輸血ポンプ BP-102 ムサシエンジニヤリング 膀胱癌に対し、両側腎尿管、膀胱尿道全摘術を予定された患者である。(透析導入されており、また慢性心房細動に対し、ヘパリン投与を術当日朝まで行っていた。)術中大量出血し、出血性ショックとなった。(ノルアドレナリン持続、ショットを行いながら、)右内頚静脈留置したCVラインより赤血球濃厚液を投与したが、それだけでは不十分であり、アルブミン製剤を同一ラインの側管に接続し、シリンジを使用しポンピング行ったが、循環血液量は維持できなかった。そのため、そのまま大量輸液ポンプを接続し、大量輸血を行った。気泡アラームは赤血球濃厚液のラインに装着して使用した。アルブミン製剤のボトルが空になったのに気づかず、空気がラインに混入し、患者に空気が投与された。
  • 術中の大量出血による出血性ショックに対し、途中より大量輸液ポンプを使用した。
  • 赤血球濃厚液、アルブミン製剤を同一ラインに接続していたのをそのまま大量輸液ポンプに接続した。
  • 気泡アラームを赤血球濃厚液のラインには装着していたが、アルブミン製剤のラインには装着しないまま大量輸液ポンプを使用した。
  • やむを得ず大量輸液ポンプを使用する際は、輸液ポンプを管理する人員を配置できる体制を検討する。
  • 観察が不十分であった
  • 知識が不足していた・知識に誤りがあった
17 障害なし なし なし 血漿交換中、返漿用のアルブミナーのパックを交換しようとしていた。その際に返漿ラインを鉗子で止めた。(交換後に鉗子を外し忘れた)その結果、発見するまでの30分間、血漿分離のみが行われ、アルブミナーの補充が行われなかった。Nsより患者が「(鉗子が)止まっているけど大丈夫?」と言われて発見に至った。血漿の補充が行われていなかったため、体重減少によるBP低下あり(気分不快等の自覚症状なし)医師に状況報告した。 なし パック交換後の回路の確認不足により発生したので、回路の再確認(声だし、指さし)を徹底する。パック交換後に技士とNsによるダブルチェックの実施。
  • 確認が不十分であった
18 障害なし バイタルポート Cook Japan 生理食塩水を10mlシリンジで注入しようとしたところ、抵抗あり。ポートのセプタムが裏返っているかもしれないと考え、確認。その後、2.5mlシリンジを使って注入。直後、抵抗が無くなる。患者の自覚症状の発症は無し。あらためて10mlシリンジで注入。ポート周囲の腫れが認められ使用を中止。レントゲン及びCT検査にてポートの断裂を確認。造影検査下でカテーテルを抜去する処置を行い、無事、取り出すことができた。 当該患者にとっては初めてのポート挿入後の事例。ポートは約2年6か月使用していた。挿入した医師と今回取扱を行った医師は違うが、共に充分な経験のある者であった。また、今回の当事者である医師は当該患者のポートの取扱は初めてではなかった。
留置していた当該ポートの取扱説明書には、10ml以上のシリンジを使用すると内圧が過剰に高まるため避ける注意書きが記されていたが、職員が熟知しているほどのレベルで、このことを理解されていない状況があった。そのため、慎重に取り扱ったつもりであったが断裂が発生してしまった。
CVポート留置者については、時々XP撮影を行い、カテーテルの屈曲や狭窄がないか確かめる。職員(医師、看護師)に医局会や看護安全担当者会議の機会を使って、CVポート取扱上の注意点・禁忌事項について再度アナウンスし、知識の強化を行う。
  • 知識が不足していた・知識に誤りがあった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った

    なお、医療機関のコメントによると、当該製品の取扱説明書には「10ml以上」のシリンジの使用を避ける旨が記載されているとのことであるが、当該製品の添付文書には、「10ml未満」のシリンジの使用禁止が記載されている。
19 障害なし なし なし 血糖1900以上の糖尿病性ケトアシドーシスで入院。意識はJCS200と意識障害あり。膵炎も同時併発。消化器内科よりFOY投与の指示あり。末梢では困難なためCV挿入。当科医師3名指導下に研修医が右ソケイよりCV挿入。局所麻酔下に試験穿刺で静脈血の逆流を確認。本穿刺でも良好に静脈血を認め、内筒を抜去し静脈血の流出を確認下にCVカテーテルを挿入。抵抗なくカテーテルは進み、約20CMでやや抵抗あり。シリンジにて逆流認めないが、生理食塩水の注入は良好。カテ先が血管壁にあたっているものと考えレントゲンにて確認とした。レントゲン上は右総腸骨動脈の走行と一致しカテ先を確認。点滴の滴下を開始した。後日のCTにて血管外へ挿入されていることを読影結果で指摘され、主治医がCV抜去。その後経過観察にても後遺症はなかった。 なし CVカテーテルの挿入時に抵抗感などがあるケースは多い。また挿入した研修医の主義は熟練とはいわずとも問題ない範囲であり、当科医師3名の立会いのもと行ったが問題ないと判断した。またレントゲンにて確認をしているが問題なく見える症例であり、CVのカテ先確認にCTを全例施行することは困難であると考える。
  • 判断に誤りがあった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
20 障害残存の可能性なし 不明 不明 突然患者のSPO2が60-70%台に低下あり。状態確認すると,気管チューブの固定テープがちぎれて計画外抜管の状態になっており,直ちに近くにいた小児科医師へ報告。医師の指示にて口元酸素投与実施。1-2分後に小児科医師にて気管チューブ3mmを再挿管し,(この間,SPO2:18%,HR:70台まで低下あり)人工呼吸器管理再開する。再挿管後すぐ,SPO2:90%台前半,HR:140-150台に回復した。 口腔内の分泌物が多く,常に固定テープが湿潤している状態であり,テープの強度が弱くなっていた可能性がある。顔を左右に振ったり,体動が多くチューブを引っ張っていた可能性あり。固定テープのカットの仕方の問題(面積が小さい,幅が狭い)且つHFO+CMVモードでの呼吸器管理だったため,常に回路が揺れている状態であり,テープがちぎれた誘因になった可能性がある。 観察時に固定テープの緩みがないか,強度はどうか観察する。テープが緩んでいたり,伸びていたりするときはテープを上から補強する。回路にある程度の遊びを持たせる。児が落ち着くようなポジショニングを工夫する。
  • 観察が不十分であった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
21 障害残存の可能性がある(低い) 未記入 未記入 経口挿管、人工呼吸器装着中の患者様。15時頃担当看護師が口腔ケアの際に気管チューブの固定をしている。15時40分頃、オムツ交換時に看護師2名で左側臥位へ体位変換を実施した際に気管チューブが抜けてしまう。その際、人工呼吸器の回路をアームより外していたが、回路の保持が出来ていない状況であった。抜管後、バッグバルブマスクにて補助換気を実施し、ICU当直医へ報告し、再挿管を実施した。抜管前後の酸素飽和濃度の変動なし。 体位変換を実施する際の、看護師同士の声かけが不十分であった。また、人工呼吸器の回路の保持が出来ていなかった。
  • 実施するまえに、何が重要か考えて行動する。
  • 人工呼吸器のジャバラの確認を行う。ジャバラに遊びを作る。
  • 固定テープの確認をしっかり行う。唾液で汚れる場合があるため、その時はすぐに交換する。
  • 口腔ケア時、訪室時はカフ圧の確認を行う。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
  • 連携
22 障害残存の可能性がある(低い) 気切チューブ アスパーエース32Fr 日本コヴィディエン 9:15頃、摘便のために看護師2名で処置を行った。看護師Aは、患者側(人工呼吸器側)に立ち、気管カニューレと人工呼吸器の接続部を外さずに蛇管を保持しながら、患者を左側(人工呼吸器側)に向けた。看護師Bは、看護師Aと同じタイミングで患者を左側に向けた。9:16頃、看護師Bが摘便を開始。看護師Aは、蛇管に負荷がかからないようにアームで調整した。接続が外れていないかを声を掛け合って処置をした。その直後、人工呼吸器のアラーム音が鳴り、看護師Aは消音ボタンを押し、カニューレが外れていないことを確認した。看護師Aは、体位を保持し、片手で患者の腹部マッサージを行った。9:18頃、摘便で潜血あり、潜血の状態を看護師Aも確認した。モニターアラームが鳴り、Spo2が88%、人工呼吸器のアラームが鳴り、Spo2が88%を確認。痰がからんでいる様子があり、気管カニューレが外れており、直ぐに仰臥位に戻した。気管カニューレが脱出していた。看護師Aは直ぐに気管カニューレを挿入。カフ圧30mmを確認。痰の吸引後、直ぐに人工呼吸器に接続した。SPO2が80%であったため、酸素フラッシュしSpo2が95%に上昇を確認。受け持ち看護師に状況を報告し、外科医師によって、カニューレの交換を行った。 この患者は、看護師2名で体位交換をする時は接続部を外して実施していたが、左側臥位にする際、接続部を外さずに実施した。新人の伝達研修で人工呼吸器装着の患者の体位交換は接続を外さないで行うと言われ、最新情報と思い込んだ。接続を外さずに体位交換時、十分に蛇管にゆとりをもたせなかったため、蛇管にテンションがかかり、引っ張られた。体位を変える前確認したが、仰臥位に戻した時は固定の紐がゆるんでいた。マニュアルは体位交換は、回路を外して行うとなっていたが、マニュアルを見直し中。各病棟の患者の特徴等に合わせ、従来通り実施して欲しいという情報の伝達が不十分であった。 人工呼吸器装着患者の体位交換の方法を統一する。人工呼吸器装着患者の体位交換の方法の学習会をする。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
23 障害残存の可能性がある(低い) なし なし 20歳代で発症した統合失調症の患者である。意識障害が出現し他病院に入院となった。その後、精神症状に対する治療を行うため当院精神科に転院となった。当科入院時にも依然として意識障害を認め、経口摂取は不可能であり栄養管理のために経管栄養(経鼻)を行っていた。数日後午後15時40分、看護師が患者が自ら胃管カテーテルを自己抜去しているのを発見した。精神科当直医が胃管カテーテルの再挿入を行い、聴診を行ったうえでカテーテルが胃に挿入されたと判断した。同日18時00分より経管栄養(テルミール)の注入を開始したところ19時00分に患者が嘔吐した。患者は同時に呼吸苦を訴え、血液酸素飽和度SpO2が82%に低下したたため酸素投与を開始した。胸部レントゲン写真を撮影したところ胃管カテーテルが左気管支に挿入されていることが確認され、経管栄養が気道に注入されたことによって化学性肺炎を生じたと考えられた。その後、呼吸不全の増悪を認め当科医師が救命処置として他病棟にて気管内挿管を行った。呼吸管理を含め全身状態に対する治療を行うため翌日に集中治療室に入室した。 患者は意識が清明とは言えず、床上安静の状態であった。2週間経口摂取をしておらず嚥下機能が低下していたことが考えられる。 今後は胃管カテーテルを挿入した際には薬剤および栄養剤を注入する前に必ず胸部レントゲン写真を撮影し、カテーテルの挿入位置を確認する。
  • 判断に誤りがあった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
24 障害残存の可能性がある(低い) 不明 不明 造設後はまだ胃瘻使用せず経口摂取している。安全に関しての理解を得ることは厳しい意識レベルの患者であるため右手にミトン装着し安全管理している。車椅子で昼食後、患者よりベッドに戻りたいと依頼ありベッドに移動する。その際、シートベルトをしており腹部には右手が入らないため右手のミトンは外していた。患者をベッドに移動し終わったあと、同室の他患者に呼ばれその場を離れる。直後「何か抜けた。痛い。」との発言あったため、患者のところに行くと胃瘻の先端部が断裂してチューブが腹部から出てきているのを発見する。ミトン装着していなかったために自己抜去となってしまった。患者より「ナースコールかと思った。何かあったから」との言動聞かれる。すぐに主治医に報告し診察してもらう。その後緊急内視鏡下にて胃瘻の入れ替え施行。バイタルサイン著変なく経過し、胃内部に残ったバルーンは後日、内視鏡下にて摘出することとなる。飲食は通常通りでよいと指示ある。 胃瘻造設後より抜去予防のためにベッド上ではミトン装着していたが、他患者の対応のためミトンを付けないままにしてしまったため自己抜去に繋がったと考える。 食事と移動時以外は常にミトン装着し安全管理行う。また胃瘻部に関してはガーゼと包帯にて固定しチューブが外に出ないようにする。
  • 判断に誤りがあった
  • 勤務状況
25 障害なし 膀胱留置カテーテル 日本コヴィディエン
  1. 5:15患者はNIPPVマスク使用中であったが、急に酸素濃度SPO2:84%と低下、その後徐々に低下し、5:30SPO2:60~43%まで低下、別な看護師と当直医が病室に駆けつけ救命処置を行った。患者は左肺気胸再発を起こし酸素濃度低下、意識レベル低下の状態であった。
  2. 5:50 急変時処置の際に手伝いに入った深夜看護師は、膀胱留置カテーテル14Fr挿入12~13cm挿入し、尿流出がごく少量あったため、カテーテルの固定水を5ml入れ固定した。カテーテル挿入した看護師は、他施設での経験が長く、急変時処置の際は看護師が膀胱留置カテーテルを挿入していた為、当然行うことと認識していた。担当看護師に尿流出状況を観察するように伝え、処置後その場を離れた。
  3. 6:15 SPO2:98%上昇、意識回復する。
    8:30、日勤者に引き継がれ、患者は腹部不快、嘔気の訴え有り、普段からの腹部膨満の訴えと同じ、空気を飲み込んだためと思い込み、胃管チューブの開放し様子をみていた。
  4. 11:00「気持ちが悪い、おしっこが出そう」と訴えあり、唾液を吐き出している。胃管チューブ開放にて胆汁様のもの20mL排液する。
  5. 11:30 患者の腹部膨満感の訴えは変わらず、早朝挿入した膀胱留置カテーテル管内に尿流出がなく、下腹部膨満もあり陰茎の付け根を触るとカテーテルのバルンの膨らみが触れたため、直ぐに留置カテーテルを抜去した。カテーテルを抜去後、カテーテル先の1cm内にコアグラ片がつまり閉塞をしていた。直後に、尿道口から出血あり、カテーテルの固定が膀胱内ではなく、尿道内でバルンを膨らませてしまっていたことがわかった。(発見するまで、カテーテル挿入後5時間40分を経過していた。)その直後、患者が尿意を訴え尿器にて排泄、尿量150ml淡黄色尿混濁尿の自尿あり、肉眼的血尿は無く、腹部膨満感は軽減した。
  6. 13:00オムツに淡血性尿30gあり、尿道口より少量出血あり
  7. 21:30尿意あり尿器にて排尿50mL、肉眼的血尿なし排尿時痛を訴える。
  8. 翌日、5:50、9:00、12:40に尿意あり自尿1回量50mL濃縮尿あり、血尿なし、排尿時痛は徐々に消失した。
  1. 膀胱カテーテル挿入後、尿流出の確認が充分にされないまま、固定水を注入し、尿道の途中で固定する結果となった可能性。
  2. 看護師は、他施設での経験上、急変時処置の際に当然行う行為として誤って認識していたため、膀胱留置カテーテルの挿入を行った。
  3. 患者は意識レベル低下のため、挿入時の痛みを訴えられなかった。
  1. 膀胱留置カテーテル挿入後は尿流出状況を必ず確認した後、固定水を注入する。その後の尿流出状況も必ず確認する。尿流出なければその場で直ぐに抜去する。
  2. 男性の膀胱留置カテーテルの挿入は原則医師が行うこと。当院のマニュアル上は、看護師は尿道損傷のリスクからと感染管理上からも、医師の指示がなければ安易にカテーテル留置は行わない事を徹底する。
  3. 挿入後に尿流出状況、尿の性状、量を観察する。
  • 判断に誤りがあった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
26 障害なし トロッカーカテーテル 不明 肺癌、胸水貯留、認知力低下のある80代、男性。病棟処置室で左悪性胸水に対しトロッカーカテーテル挿入予定であった。プラピックス(抗血小板薬)を内服しており外科医師に依頼した。
14:00、処置室のPCで胸部CT画像を映し出し、内科主治医と外科医師と看護師の3人で処置を開始した。外科医師が患者を処置台に誘導し、左下側臥位の体位を患者にとらせた。外科医師は患者の背側から右胸部にトロッカーカテーテル留置した。その後、外科医師が反対側へ処置したことに気付き、本来の左胸部へトロッカーカテーテル留置した。その後15:00右胸部のトロッカーカテーテルを抜去した。処置直後はT36.1℃ PR100 BP136/78mmHgSPO2は96%(酸素なし)であった。病室に帰室後15:20頃から悪寒がありSPO2は81%まで低下したため末梢ルート確保と酸素吸入を開始した。一時期酸素吸入量は15Lで96% 発熱はなかったがBP200/110 HR140であった。
19:00の胸部単純撮影で右気胸になっており、20:00右胸部へアスピレーションキットを挿入した。HR100 BP136/83 SPO2は94%(酸素なし)であった。その後低圧持続吸引を実施しエアーリークは認めなかった。その後、右胸部アスピレーションキットは抜管した。
  1. 処置部位の確認について
  • 主治医は胸腔ドレナージの同意書を院内同意書の雛形から独自に作成した。観血的処置を行う「病名」や部位を特定する「左右」は記載がなかった。同意書としては不完全な内容である。

  • 外科医師は左胸部へ胸腔ドレナージを行うと主治医からの依頼は理解していたが、処置台に患者を誘導し体位を整えるときには部位確認はしなかった。また、処置直前に患部を聴診・打診は行わなかった。

  • 手術室では「タイムアウト」として全員参加し患者部位確認を手術部位チェックリストに沿って行っている。観血的処置を行う場合も患者部位確認を処置直前に立ち会う職員全員で行う必要がある。

  • 胸腔ドレナージの基本手技に関して明文化されたものはなかった。

  • 処置直前の超音波検査は、事前のCTで胸水の貯留があきらかであったため行わなかった。

  1. 右胸部トロッカーカテーテルを抜去後の気胸について
  • 低圧持続吸引ではリークは認めなかったが、処置による肺損傷は不明である。

  • 右胸部トロッカーカテーテルを抜去後2時間で気胸を認めており処置により発生したと考えられる。

  1. 同意書について
  • 観血的処置を行う際の同意書には処置を行う目的である「病名」や部位を特定する「左右」が必要であり、胸腔ドレナージの同意書を診療部で検討し2月の医療安全担当者会に提出する。

  1. 部位確認について
  • 下記2点は観血的処置を行う場合に必ず実施することとしてリスクマネージメントマニュアルに追加する(医療安全担当者会に提出し検討した)

  1. 処置直前には実施医による患部の聴診・打診を行う。

  2. 2処置直前に処置を行う全員で「タイムアウトによる部位確認」を行う。実施医が実施部位を指差し呼称し、介助者がカルテ(同意書)と画像を確認する。

  • 確認が不十分であった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
27 障害残存の可能性がある(低い) なし なし 経口摂取困難な患者に対し、栄養状態改善目的にてイントラリピッドをCVより投与する。
OPE後膿胸のため胸腔ドレーン挿入中。また経口摂取困難にて鼠径よりCVダブル留置し、白ラインよりTPN投与し栄養管理中であった。朝イントラリピッド100mlをCV青ラインより投与の指示があり、青へ接続し退室した。45分後に訪室した際、胸腔ドレーンの排液が白濁しているのに気がつき、確認するとイントラリピッドが胸腔ドレーンの洗浄用ルート(青ルート)に接続されていることに気付き、投与中止した。イントラリピッド約25ml投与されていた。VS測定しDrへ報告、呼吸苦などの自覚症状出現認めなかったが、確認のためX-P施行した。結果、前日の所見と著変なく、また投与分は排液パックから回収されており、追加処置は施行せず経過観察となった。
右鼠径部からダブルのCVカテーテルが留置され、また右胸腔にダブルのドレーンが挿入されており、ドレーンが右側に固定されていた。CVカテーテル、胸腔ドレーンはどちらも白ラインと青ラインになっており、平常が似ていた。そのため、多数留置されているドレーン留置患者に対して、確認不足から接続を誤ってルートに接続してしまった。接続の際、確認を怠ったことが一番の要因である。 胸腔ドレーンの洗浄ルート(青ルート)はDrのみ使用する部位であり、普段は簡単に使用できないようガーゼで覆い固定していく。さらに、洗浄を行う時点で目視や確認しやすいように、洗浄用ルート(青ルート) の洗浄液と接続する近辺に貼付している。
また、ルートを接続する際には、根元からルート全体を確認していく。
  • 確認が不十分であった
28 障害残存の可能性なし J-VACドレナージシステム ジョンソン・エンド・ジョンソン
  1. 転倒による骨折のため、右大腿骨骨頭置換術を施行した。
  2. 術中出血量370gで10Fr J-VACを関節内に挿入し手術が終了した。
  3. 術後1日目の排液206ml、2日目22mlと減少したため医師によりJ-VACの抜去を試みた。
  4. ドレーン縫合部を抜糸したが、処置中にドレーンチューブの引っかかる感じがあり同時に引いた際にドレーンチューブが途中で断裂した。
  5. レントゲン結果で筋層にドレーンチューブの残存を確認した。
  1. 抜去時に抵抗を受けたが、引き抜いたことでドレーンチューブが断裂した。
  2. 術後2日目で疼痛が強く、抜去困難時に体位変換を試みたが思うように体位を変えることができなかった。
  3. 術中筋層縫合の際に、ドレーンチューブを包み一緒に縫った可能性がある。または、筋膜の縫合が強すぎたためにドレーンチューブが筋層内で圧迫され、介助できなかった可能性がある。
  4. ドレーンチューブは筋間に遺残しており、断端に縫合糸などは見かけなかった。
  1. 手術操作としては、筋膜のみ縫合するよう十分確認しながら実施する。
  2. 抜去困難時に、その場で対処せず透視下で確認しながら処置を行う。(どこが抜けない原因になっているのか位置確認ができる)
  3. 保存的に経過を見る。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
29 障害残存の可能性なし J-VACドレナージシステム ジョンソン・エンド・ジョンソン 手術終了後に患者を術後ベッドに移動させようとした際、患者の下側に挿入したスライダーにドレーンが引っ掛かり、事故抜去した。患者移動を中断し、直ちに、再麻酔下でドレーンの再挿入が行われた。 腋窩リンパ節郭清術を行い、術後ベッドに移動しようとした。移動直前にドレーンの確認を看護師1 名と医師1名で刺入部から本体までたどって、確認した。確認後、医師がドレーン本体を患者の胸の上に置いた。その後、患者移動用のスライダーをさし込み、看護師は患者の左側に立ち、医師Aにドレーンの確認の声をかけした。医師Aは、ドレーン本体を顔の上まで持ち上げて看護師に見せた。患者は覚醒後体動が激しかったため、スライダーでの移動を短時間で行う必要があり、医師3名、看護師2名で勢いよく手術台から術後ベッドに移動した際、スライダーの端に引っ掛かりJVACドレーンを抜去してしまった。
  1. ルート類の確認を行う際は刺入部から本体をたどって確認し、刺入部から本体までをたるまないように患者の身体の上に乗せて移動する。
  2. 患者を移動する際は、ドレーンの観察を行いながらゆっくり行う。
  • 確認が不十分であった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
30 障害残存の可能性なし シラスコン(ラジオぺーク)ペンローズドレーン カネカ 外傷性左総腸骨動脈損傷および左陰嚢腫脹にて緊急入院にて手術施行。泌尿器科では左陰嚢内血腫に対して血腫除去術を施行した。その際ドレーン留置。
術後症状軽快し、退院となる。術後1年7ヶ月後に左陰嚢部の違和感を自覚し泌尿器科再診。エコー検査にて陰嚢内異物を認め、ドレーンカテーテル遺残の可能性があると考え、左陰嚢内異物除去術を行った。
  1. ドレーン抜去前後でのレントゲンの比較確認が不十分であった。
  2. 手術後の創部の観察の際にドレーンの位置や場所を確認しておく必要があった。
  3. 術後創部が腫脹しており、ドレーンの迷入の可能性を考え、固定の確認や位置の確認を十分に行う必要があった。
  4. 術後創部の硬結が出現した際に、CTまで施行したが、当時の主治医診療科の医師は炎症と思いこんでいたため見逃し、泌尿器科の医師はCT後に画像を見ていなかったことが判明。
  5. 当時の主治医(心臓血管外科)が、ドレーンが自然抜去したと思い込み、また、その抜去したはずのドレーンを探さなかった。
  • 術直後レントゲンにて異物の有無を正確に確認する。
  • 術後の創部確認においてドレーンの有無および位置ならびに固定の状態を正確に確認する。
  • 術後炎症所見が遷延化した際には、レントゲン検査などを行い、異物の可能性を考えて対処する。
  • 術後の創部の状態をカルテに正確に記載し、マニュアルを作成し記載事項の抜けが無い様に記載する。
  • 緊急手術の場合においても術前術後できる限りの合併症のリスクについて、患者または家族に説明しておく。
  • ペンローズドレーンは体外の部分が短くなり、創部への迷入のリスクが高く、閉鎖式吸引式ドレーンの使用を検討する。
  • ペンローズドレーンは、挿入した(使用した)診療科が管理を行うというルールを設けた。
  • 確認が不十分であった
  • 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
  • 記録等の記載
31 障害なし J-VACドレナージシステム ジョンソン・エンド・ジョンソン 上顎癌摘出術において腹直筋皮弁を用いた頭蓋底再建術を施行した。
血管吻合、皮弁の縫着や皮弁採取後の腹部の閉鎖は翌日に行われた。腹直筋採取部は筋膜前鞘を閉鎖した後にバードメッシュを筋膜に縫い付け補強を行った。この上にJ-VACドレーンを留置し、皮下を縫合し、皮膚の縫合を行った。
その後、J-VACドレーンの抜去を試みた際に抜去が極めて困難であり、メッシュの固定に用いた縫合糸または皮下縫合の縫合糸でドレーンを固定してしまっている可能性を考慮し、10日後に全身麻酔した上で再開創を行い、ドレーンの抜去を行ったところ、メッシュの固定に用いた縫合糸の一本がドレーンを誤固定してしまっていることが確認され、直視下にこれを抜去し、創部は通法通り縫合閉鎖を行った。
最表層の縫合閉鎖の前に一度、ドレーンを牽引することで巻き込んでいないかの最終確認を行う必要があった。 メッシュの縫着や皮下の縫合を行う際にはドレーンを巻き込んでいないか、一針縫合するごとに確認を行う。また最表層の縫合閉鎖を行う前に、抜去可能か、ドレーンを動かしてみて確認を行う。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
32 障害残存の可能性なし シラスコン(ラジオぺーク)ペンローズドレーン カネカ 血便を発症し、その後近医で受けた内視鏡で直腸カルチノイドと診断された。手術目的で入院され、腹腔鏡下低位前方切除術を行った。その手術時に、術後管理目的にペンローズドレーンを留置していた。
経過は良好で自宅退院となり、病理結果を踏まえて近医外来でUFT内服を継続しつつsurveillance中であった。根治術後6ヵ月後のsurveillance CTで骨盤腔内に異物を認め、手術時に留置したペンローズドレーンの1本が埋入しているものと考えられた。除去手術を行い、経過は良好で退院された。公表は患者本人の強い拒否により、実施されなかった。
診療グループ間における情報共有エラーが主たる原因と考えられる。時期的に、同グループの人事異動が多い状況で発生している。また、ペンローズドレーン留置時において、縫合固定が不確実であった可能性も考えられる。電子カルテにおける手術所見と術後の腹部X線写真により、留置されたペンローズドレーンの本数は2本であることが確認された。ドレーン抜去については電子カルテ上、施行者・抜去本数ともに記載がなく、自宅退院までに状況を確認できる情報は認められなかった。 第4回医療安全研修会として「ペンローズドレーンの装着から抜去までの手順について」が行われ、ペンローズドレーン遺残に対する再発予防対策として、留置時、留置中、および抜去時に本数を確認し記録することが提唱された。その内容について十分周知されていたはずの診療科において、しかも研修会開催後1ヶ月も経たない時期に事故再発を来たしたことは驚愕すべきことである。
本事例の発生原因を考える上で時期的な背景は重要と考えられ、手術が実施された日からドレーンが抜去されるまでの9日間に、人事異動に伴って大幅なスタッフの入れ替えがあったという事実は最も注目すべき因子であると考えられる。
 安全管理対策として現在までに様々なマニュアルが作成され、何時でも閲覧できるようイントラネットに掲載されているとはいえ、業務を行うスタッフは人間であり、100%間違いが生じないことを望むことはできない。まして、勤務して間もないスタッフに対し、直ちに全てのマニュアルを周知してもらうよう要求することは困難である。今回のペンローズドレーン遺残という事故再発に関しても、再発予防として従来の対策を強化するだけであれば、いつまた同様の事故が発生してもおかしくないと考えられる。
ペンローズドレーンの安全管理については、研修会終了後もワーキンググループでマニュアルの再度見直しを行った。根本的に埋入する可能性があるペンローズドレーンの使用そのものを今後は制限し「原則的にドレナージが必要な場合は閉鎖式ドレーンを使用する」と規定した。様々な臨床の現場において、どうしてもペンローズドレーンが必要だという場面が来ないとは言えない。その為、ペンローズドレーンを使用する場合は許可制とし、遺残防止のため、抜去後X線写真での確認と、確認した事の報告書提出を義務付けた。
  • 確認が不十分であった
  • 記録等の記載
33 障害なし シラスコン スパイナル ドレナージ カネカ L-Pドレーンが挿入されていた患者が看護師と一緒にベッドから離れ歩き始めた際に、掛け物が覆い被さり、引っかかったことに気づかずチューブが引っ張られ、歩行したことで、ドレーン・チューブの断裂が起き体内に遺残した。 処置と高圧酸素療法が重なり、時間切迫下で確認を怠った。 ドレーン留置患者の移動時には、管の状態を十分確認すること。
  • 確認が不十分であった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
  • 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
34 障害なし デニスチューブ 日本コヴィディエン 腹膜癌、腹膜播種にて婦人科でfollow中の患者。 腸閉塞にて緊急入院となり、腹膜播種症例でもあり数カ所の狭窄が疑われ、s-tubeのみでfollowされていた。腹満増悪、嘔吐出現もあり、婦人科よりデニスtube挿入の依頼あり。症状緩和目的でデニスtube挿入となる。
透視室にてデニスtube挿入。腸管拡張のため胃の変位が強く穹隆部で巻く傾向があり、穹隆部で一巻きした後に圧排にて前庭部にtubeを先進。胃のたわみを解除した後に下行脚へ挿入し、tubeの先進を行った。(GWはデニスtube先端より10cm手前付近で操作した) 下十二指腸角手前で管腔の走行確認のために造影を行ったところ、十二指腸管腔外に造影剤の貯留、貯まり周囲に造影剤の漏洩を認め、十二指腸憩室穿孔と判断した。減圧、腸液の吸引目的に憩室開口部付近にデニスtubeを留置し、処置を終了とした。CTにてやはり後腹膜腔への造影剤の漏洩を認め、憩室穿孔と診断した。外科と今後の方針を協議保存的加療とした。
十二指腸下行脚外側の憩室は稀ではある。十二指腸下行脚の憩室に迷入していたが、tubeを先進させてしまったことが原因と思われる。 少しでも抵抗がある際はtubeを引き、造影にて管腔の走行を確認する。
  • 確認が不十分であった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
35 障害残存の可能性がある(高い) シラスコンL-Pシャント K型 カネカ 腰椎腹腔(LP)シャント造設手術の際に、シャントチューブをくも膜下腔に留置し、切開創をバイポーラ(電気止血装置)にて止血しようとした。背中には穿刺針が刺入されシャントチューブが挿入されている状態で、チューブ先端は医師が把持していたが、穿刺針は誰も把持していない状態であった。医師が切開創の止血操作をしようとしたところ、バイポーラのコードが逆に接続されていたことに気付き指摘した。看護師は、接続をなおそうとバイポーラを手元に寄せたところ、バイポーラのコードとシャントチューブが交差していたためシャントチューブが引っ張られ、穿刺針の先端部によりチューブが切断された。チューブ約10cmが腰椎の脊髄腔に遺残した。手術は継続して行い、新しい別のチューブを再挿入した。患者に遺残の事実を説明。現在、麻痺などは認めていない。遺残チューブは移動する心配がほぼないため、感染による髄膜炎を起こさなければ問題はないと判断している。
  • 術前にバイポーラが正しく接続されているか確認できておらず、術中に接続をなおす必要があった。
  • シャントチューブをくも膜下腔の頭側に留置できるよう構造上、穿刺針の外套管を彎曲させている。この部分でチューブが引っ掛かりやすく切断の原因となった。
  • 手術操作の全体を見る者がいなかった。
  • シャントチューブがバイポーラーコードの上に載っており、容易に絡みやすい状態であった。
  • 手技をするにあたり器械台の配置が不適切であった。
  • コードやチューブが併存して行われる手術では、器材やチューブの配置を統一する。
    (今回の腰椎腹腔シャント造設術では、体外にあるシャントチューブの先端は頭側に置き、バイポーラのコードと交差しないようにする。)
  • 術前にバイポーラの通電や接続に問題がないか必ず確認する。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
36 障害なし SMACトリプルルーメン12G20cm 日本コヴィディエン 鼠径部に挿入したCVカテの固定が不十分だったため、体位交換を契機にCVカテが自然抜去した。 血管確保のラインが抜去されたCVカテ1本だったため、強心剤等の薬物投与が途絶え、無脈性電気活動(PEA)となり、心肺蘇生が開始された。左下腿に骨髄針を挿入、ボスミンを2回髄注し、心拍再開、その後末梢静脈ラインを2本確保し、強心剤等を持続投与、バイタルサインは概ね安定した。
  1. CVカテーテル挿入のマニュアルが整備されていなかった。
      CVカテ挿入手技や固定、観察項目が明確でなく、指導内容の標準化、情報共有がなされていなかった。
  2. ハイリスク医療行為であるが事前学習が不十分であった。
      手技が初めてであるハイリスク医療行為の事前学習の義務付けはなかった。
  3. CVカテーテル挿入の指導が標準化されていなかった。
      CV管理指導医制度が制定され現在進行中であるが、指導する医師の指導法も標準化されていなかった。
  4. クリティカルパスやカルテへ挿入長の記録がされていなかった。
      手技終了後に、看護師にカテ挿入長を伝えることも、カルテ(パス)記載もなされなかった。また、使われたパスが挿入長を記載する項目のない古いものであった。また、パスの作成日の記載がなかった。
  5. 当該カテーテルキットの本院採用時に、その使用法の説明等がされていなかった。
      個々の医師では、固定具による固定確認がやや困難であることは認識されていたが、その認識は共有されていなかった。
  6. 看護師が手技中にカテ固定が不十分であることを認識し、医師に伝達したが、充分に医師に情報伝達がなされなかった。医療者間のコミュニケーション不足があった。
  1. CVカテーテル挿入と留置についてのマニュアルの整備
    現在、策定中のCVカテ挿入と留置についてのマニュアルの早期の整備とマニュアルへのカテ固定方法の詳細な記載および処置後の観察項目の追加を行う。
  2. 初めてのハイリスク処置実施者への事前講習の実施
    初めてハイリスク処置を行う者に対し、事前講習を義務付ける。
  3. 現在、整備中のCVカテ指導医制度の前倒しの実施
    CVカテ挿入の指導は認定された指導医に限定し、指導法についても標準化する。
  4. パス・カルテ記載の徹底
    行った処置に対してカルテ記載を徹底すること。特にCVパスについては、カテ挿入長の記載は施行医が行うこと。また、指導 医による指導医実施記載を徹底する。
  5. パス管理の改善
     パスは改訂が行われた場合、そのバージョンと改訂日をパス自体に明記すること。そして最新のパスのみ、使用すること。特にCVカテ挿入パスは、古い用紙を全て廃棄し、カテ挿入長の記載欄のあるものを使用すること。
  6. 医療機器の導入について
     新たな医療器具の導入に際しては、使用者に対し周知徹底を図ること。新たなCVカテーテル導入の際は、CV指導医に周知すること。特に今回事例の当該キットについては、固定具装着の注意喚起に関する文書をキットに添付することを推奨する。
  7. 医療職間のコミュニケーション不足
     「医療安全に関する問いかけは2度までは行うこと、問われた方は必ず返事をすること」のノンテクニカルスキルの向上をはかる。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
  • 連携
37 障害なし セルジンガーキットダブルルーメン 日本コヴィディエン
  1. 下顎骨骨折後、高カロリー輸液用のCVカテ留置していた。
  2. 不穏あったため、ロヒプノール使用し両上肢抑制した。
  3. 覚醒後、自己抜去発見。
  1. 両上肢抑制実施していたが、ベッドギャッジアップ後、体がずれて抑制が緩む。
  2. 左手でCVに手が届き抜去。

     
  1. 抑制が必要な時は、抑制を確実に実施する。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
38 障害残存の可能性がある(低い) BARDグローションカテーテル メディコン 大腸癌肝転移・外科的治療後の術後補助化学療法のため、3年前に右鎖骨下静脈に留置。以降、化学療法のために繰り返し使用していた。今年、嗄声出現し、原因検索を行っていた。縦隔リンパ節再発等を疑い、CT検査するが明らかな再発指摘できず症状が改善しないため、耳鼻科受診。右反回神経麻痺や右舌下神経麻痺は示唆されるが器質的病変は指摘されなかったが、前回撮影したCT画像を耳鼻科医師が再検討したところ、CVポートカテーテルが頚静脈孔の方向に迷入していることに気づいた。この事象と脳神経麻痺との因果関係の有無は定かではないが、周囲に迷走神経や舌下神経が走行しており、何らかの炎症が起きて影響した可能性が考えられた。放射線科とも連携し、即日抜去に至った。 CVポート挿入3年後の迷入で非常に稀であり、指摘するのは困難な可能性が高い。 主たる診療科が定期的に画像検査でCVカテーテル留置位置を確認する。
  • 確認が不十分であった
39 障害残存の可能性なし orca CV kit スタンダードチューブ スミスメディカル・ジャパン CVポートを留置し、先に挿入したCVカテーテルと接続しようとしたところ、カットしたカテーテルが、血管内に脱落し、迷入し、体外からの摘出困難となった。血管造影室に移動し、透視下で、大腿静脈からアプローチし、迷入したカテーテルを体外に摘出する事態となった。 患者は、術後補助療法のためにCVポート留置目的で入院。入院当日の午後より放射線部透視室にて処置開始となった。左鎖骨下静脈にCVカテーテルを挿入し、ポートをその近くに留置した。CVカテーテルとポートを接続するための皮下トンネルを作成し、トンネラーにCVカテーテルを接続するために、術者が、カテーテルをカットした後にCVカテーテルが血管内に脱落し、迷入し摘出困難となった。トンネリング後にCVカテーテルは余裕を持って少し長めにカットし、トンネラーに接続して皮下トンネルに通し、ポートに接続する際にCVカテーテルの長さを調整すべきところ、トンネラーにつなぐ前に皮膚表面から1~2cmの長さでカットしたためにカテーテルの余裕がなく、把持されていないカテーテルが、患者の胸郭の動きなどに伴い血管内に迷入したと考えられた。把持されていないカテーテルが患者の胸郭の動きなどに伴い血管内に迷入したと考えられた。
  • CVポート留置に関してシミュレーションを重ね、更に技術を高める。
  • 実施時は注意事項や事故に対する予防策を講じて処置にあたる。
  • 同意文書内にカテーテルトラブルの可能性についても説明を加える。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
40 障害残存の可能性なし 気管内チューブ 標準型小児用気管内チューブ4.5mm コヴィディエン ジャパン 体動多く、フェンタニルライン1ml早送り×2、セルシン0.3ml IV。右鼻腔より4.5mmの挿管チューブを挿入。マギール鉗子で先端を把持し、経口挿管チューブを引き抜いた。経鼻の挿管チューブを気管に送ったが、体動もありしっかり入るところまでは確認できなかった。SpO2低下、除脈(HR 90)となり心臓マッサージ開始。その後にPEAに。経鼻のチューブを引き抜き、マスク換気、すぐに経口挿管施行(声門を確認して気管に入ったと思うが)。純酸素ジャクソンリースで加圧、心マ、ボスミン IVでCPRを行うが、HR 50~60、SpO2 15%、PEAの状態が持続。麻酔科医到着、再度経口挿管したが、やはり蘇生に反応せず、心臓外科医コール。その間も心マ、ボスミン、カルチコール、メイロン投与など継続しCPR施行。緊急開胸。胸が開いたところで自己心拍が再開した(心停止時間 20~30分)。PMワーヤーを装着したが使用はしなかった。ボスミン、イノバン開始。脳保護のため、頭部を冷却。ソルコーテフ 100mg IV 、マニトール 20ml 点滴、ラジカット2.7mg点滴。開胸のままでICUへ移床した。 体動が激しい、人手が足りない等、不十分な態勢の中で、挿管チューブの入れかえを行ってしまったこと。 情報の共有を図る。
  • 判断に誤りがあった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
41 障害残存の可能性がある(低い) ハイ・ロー カフ付気管内チューブ 日本コヴィディエン 19:20頃、深頚部膿瘍切開術の手術の際に挿管チューブが術者の洗浄・口腔内操作の際によってテープが剥がれたことにより事故抜管される。抜管後、一時的に換気困難となりSpO2は40%まで低下し低酸素血症となった。再挿管にてSpO2の改善を認めたものの、4分間の無呼吸時間があった。術後ICUにて経過観察となったものの脳に器質的障害は認めなかった。また、2日後のCTで低換気が原因とおもわれる両下肺野に無気肺が認められたが呼吸状態の増悪は認めなかった。その後も明らかな器質的障害は認められていない。
  • 歯科でルーチンで使われている消毒や洗浄でもはがれにくい挿管チューブの固定テープではなく、通常のテープを使用したこと。
  • 不十分な筋弛緩・鎮痛により口腔内操作の際に口が動いてしまったこと。
  • 口腔内操作の際は換気状態を確認し、術者とのコミュニケーションを取って事故抜管とならないように注意を払う。
  • 耳鼻科手術においても挿管チューブの固定テープを歯科で使用しているテープを用いる。
  • 事故抜管しないようにテープの固定を十分に行う。
  • 口腔内操作の際には麻酔深度が浅くならないようにする。
  • 術前に挿管困難が予想されているため、他の挿管道具も近くに用意しておく。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
  • 連携
42 障害残存の可能性なし クリアー・ロープロ気管内チューブ コヴィディエンジャパン
  1. ナースステーションにいた看護師が、患者病室より咳嗽音とともに異様な音がしたため訪室すると、患者の顔の横に自然抜管している気管内チューブを発見する。
  2. カフはエアが入ったままだった。
  3. 患者の上肢は抑制されており、弛みなどはなかった。
  4. 直ちにアンビューバックにて加圧換気。
  5. 医師により再挿管される。
  1. 緊急挿管だったことで、髭の処理を行わないままテープ固定し、その後落ち着いた時点で再固定を行わなかった。
  2. カフ圧計での測定をしていなかった。
  3. 夜勤受け持ち看護師は、観察時に口角周囲が汗と皮脂で挿管チューブのテープ固定が軽度はがれかけているのを確認しているが、多重業務で固定のしなおしをすぐに行うことができなかった。
  4. 日勤から夜勤看護師への引継ぎ時に挿管チューブの固定や人工呼吸器のダブルチェックを行わなかった。
  5. 院内で人工呼吸器が5台稼動しており、使い慣れている機種ではなく初めて使用するタイプだったため、人工呼吸器の管理に気を取られていた。

     
  1. 緊急挿管の場合、落ち着いた時点で髭の処理や口角周囲の清拭を行い固定を確実に行う。皮脂が多くテープ固定が不十分な場合は、皮膚保護及び粘着効果のある安息香酸を使用する。
  2. チューブの固定がきちんと行えていることを確認し、固定が不十分な場合は再固定する。
  3. カフ圧の測定は、挿入時、各勤務帯及び必要時(体位変換後、口腔ケア後など)行い適正であることを確認する。
  4. 夜勤帯での多重課題については、コミュニケーションをとりながら連携し業務調整を行う。
  5. 人工呼吸器の取り扱い説明会を実施する。
  • 判断に誤りがあった
  • 勤務状況
43 障害なし ポーテックス気管切開チューブ スミスメディカル・ジャパン 10時、気管切開し気管切開チューブ挿入し人工呼吸器管理中。13:40看護師2名にて清拭実施時、左側臥位にしたところ気管切開チューブが抜けてしまった。医師に報告し一時的にジャクソンリースにて換気後気管切開チューブ再挿入となる。 体位交換時は人工呼吸器の接続を外して行い、体位交換後直ぐ装着するルールになっているがそれを守らなかった。そのためチューブの重さや屈曲によるテンションがかかってしまった。左側に回路がつながっていたため引っ張られる事はないと過信してしまった。 人工呼吸器管理中、体位交換時やレントゲン介助など身体を動かす際には、固定の接続を外しチューブの先端の位置がずれないように注意する。気管切開後は安定していないため抜けやすい事を意識しながら観察する。
  • 判断に誤りがあった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
44 障害残存の可能性がある(低い) アスパーエース コヴィディエンジャパン 午前中に気管切開術施行。午後、ギャッチアップ90度の体位をとっていた。患者は鎮静下から覚醒したばかりで状況の認知が低下していた。トイレに行きたくなり突然ベッドから降りようと身体と前方に起こしたため、ベッドへ戻るように看護師一人で促した。体位を整える際に気管カニューレにテンションがかかり、カニューレとレスピレーターの接続部が外れた。その後、患者の発声が認められた。吸引が出来ず、一回換気量が入っていなかった。SpO2は90台前半へ低下し、事故抜去と判断した。
気管カニューレより気管支鏡を試みるが入らず、経口挿管施行し、酸素化が改善する。その後、再度気管切開術施行した。
気管挿入時より挿入が浅く、抜けやすい状況であった。体位変換時のチューブ類の管理に注意し、安全な介助を行う。 ベッドから降りようとしていた時に一人で対応するのではなく、他者へ援助を求め、安全に戻れるように介助する。
カニューレをアスパーエースからサクションエイドへ変更する。
  • 判断に誤りがあった
45 障害残存の可能性なし 気管チューブカフなし スミスメディカル・ジャパン
  1. 呼吸状態悪化のため挿管、呼吸性アシドーシスあり。
  2. チューブ長さは人工呼吸器チェック時、処置時に確認。
  3. 準夜帯にSpo2の変動あり。
  4. 18時頃から腹部膨満、胃管チューブよりエアーが多量に引けるが、膨満軽減せず、エアー入り不良。Spo2 40%に低下。
  5. 他看護師から抜管の可能性指摘あり。

     
  1. 気管挿管が浅く、徐々に抜けた可能性あり。
  2. 管が食道に入っていた可能性あり。
  3. 気管と食道の中途半端な位置にあった可能性あり。
  4. 気管チューブ挿入の評価、挿管後の観察が不足。
  1. 気管チューブ挿入の評価、挿管後の観察を確実に実施する。
  • 観察が不十分であった
46 障害残存の可能性なし セイラム サンプ チューブ 日本コヴィディエン 開腹手術が施行されトライツ靱帯から30cm肛門側の空腸に穿孔を認めた。腸切除は施行せず、縫合閉鎖のみ施行された。チューブ交換前に撮影された腹部レントゲンでは、セイラムサンプチューブは空腸まで達しており、セイラムサンプチューブが穿孔の原因である可能性が示唆された。術後は問題なく経過している。
問題点は1.経管栄養目的にセイラムサンプチューブが使用されていたこと。2.チューブ交換が規定の期間で施行されなかったこと。3.チューブの挿入長が確認されていなかったこと。
当該病棟には経管栄養専用のチューブも配備されていたが、内径が細くつまりやすいために、恒常的にセイラムサンプチューブが経管栄養に用いられていた。チューブ交換時期のルールもなく、セイラムサンプチューブの説明書に記入されている「2週間で交換すること」という内容も周知されていなかった。 経管栄養には専用のチューブを使用すること。挿入長確認のためのマーキングの励行。栄養治療部の介入時にはチューブの種類にも注意を払ってもらうことになった。
  • 確認が不十分であった
  • 判断に誤りがあった
47 障害なし トップ胃管カテーテル トップ 検査のため胃管を一時抜去し、上記目的で研修医が専修医の許可のもと再挿入した。挿入時は気泡音と白い液の逆流があったことによって留置先が胃内であると判断した。その後20CCの水に内服薬をといたものと水10ccを胃管より注入したところ酸素飽和度が低下した。気管切開しており、気管内吸引したところ薬剤らしき液が引け、レントゲン撮影により右気管支への誤挿入を確認した。すぐに胃管を抜去した。 技術が未熟な研修医に上級医が胃管挿入を許可したこと
  1. 院内安全対策委員会で検討した。
  2. 胃管挿入に関しては「侵襲的処置マニュアル:血管外、経鼻胃管挿入・管理」に院内の基準が定められており、この規準にそえなかった原因を明確にし基準を遵守するよう依頼した。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
48 障害なし 不明 不明 訪床するとEDチューブ抜去していた。すぐに注入ポンプを中止する。抜去時、ナーザルで酸素0.5リットルで酸素飽和度 94から96パーセント HR130台で経過していた。
自己抜去予防のため、ミトンの代わりに両手に装着していた靴下は脱落することなく手に装着されていた。
患児はEDチューブの自己抜去の既往あり。自己抜去時は、覚醒して両手をバタつかせていた。 3Mテープによるチューブ固定。
固定されたチューブに隙間を作らない。
手袋などを装着して抜去出来ないようにする。
頻回な観察の実施。
覚醒時は手をバタつかせるため、監視の目が届く場所に移動する。
EDチューブに接続した栄養チューブが手で掴めないようにタオルなどで覆うようにする。
  • 観察が不十分であった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
49 障害なし 不明 不明 10時20分頃、浴室へ移動するため、ベッドからシーティングへ移る準備をしていた。その際EDチューブがテープ固定されていることは確認したが、EDチューブの先端をまとめずに移動した。抱っこした際、EDチューブの先端をガードしている部分がベッド上に置いてあるDVDのコードに引っかかり、抜去してしまった。すぐにリーダーNsへ報告し、主治医に報告した。児の様子観察していると鼻腔より出血の混じった分泌物吸引でき、気切からも垂れ込んだ出血混じりの分泌物が一部引けた。その後主治医にてEDチューブ再挿入された。出血については徐々に軽減し、様子観察となる。 EDチューブをまとめず移動してしまった。
児の注入時間が迫っていたため急いでいた。
入浴介助する児が多く、気持ちが焦っていた。
移動時には確実にEDチューブが引っかかることがないことを確認し、移動する。
できるときにはチューブをまとめたり、手で持つなど移動時に意識するようにする。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
  • 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
50 障害なし セイラムサンプチューブ(逆流防止弁付) 日本コヴィディエン アルコール依存症で他院入院歴のある男性。本日吐血と意識レべル低下で救急搬送となった。初療室にて低血糖、脱水症、AGML と診断された。初療室にて挿管と NG 挿入し、NG チューブの先端確認を ICU 入室後にレントゲンのみで行なう予定で、ICUに入室。初療室担当看護師より ICU担当看護師にチューブ等の位置の申し送りあり。この時点で ICU看護師はいつも通り全てのチューブを最終 X-P 確認しているものだと思いこんでいた。主治医よりマルフア注入の指示があり。 ICU担当看護師は注入前に NG チューブより内容物吸引を施行し、カフ上吸引と同様色の物を認めた。マルフア 10cc 注入した 1時間後、主治医より NG の先端が胃内になく気管にあると報告あり。主治医にマルファ注入した事を報告し、OPEN 吸引にて吸引したところ、カフ上からは投与薬と同様の性状のものが吸引された。その後、気管支鏡施行されたが気管支内にマルファ剤と同性状のものは認めず。肺炎合併を懸念し、抗生剤投与を開始された。
  1. 初療室で 2例同時に対応しており、レントゲン検査のタイミングが通常通りでなかった。
  2. 上部消化管内視鏡施行直後であり、NGチューブからの吸引の有無による先端の位置確認は困難であると当事者が判断したこと。
  3. ICU 入室がタ刻の医師の申し送りに重なったため、撮影したレントゲン画像の確認が遅れたこと。また、確認していない時点で注入指示を出したこと。
  4. ICU 看護師は、初療室より入室した患者は最終 X-P を確認しているものだと思い込んでいた。また初療室担当看護師は、NG の先端が確認されていないことを申し送り忘れた。
初療室で行なったチューブ類の位置確認は初療室で完了する。 NG チューブの先端確認は、胃内ボコボコ音確認、胃内容物吸引による確認、レントゲンによる確認を医師・看護師ともに必ず行なうよう徹底すること。看護師は、初療室より入室した患者がすベて X-P によるチューブ類の位置確認が済んでいるのか確実に申し送りを受ける。また、注入する前は確認前手技だけでなく、画像上でも必ず確認する。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
  • 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
  • 連携
51 障害なし 栄養カテーテル8Fr ジェイ・エム・エス 定期的な経鼻胃管の交換日であり、抜去前に食紅を注入し抜去、新しい胃管を挿入し確認のため、吸引するも食紅が引けなかった。しかし、これまでにも吸引できないことがあったため、気泡音の確認を3点で行い、2人の看護師で確認した。心窩部が最強音であることを確認した。その後栄養を注入すると、気切部より痰が多くなったため、注入を中止し、医師に報告。XPで確認の結果左肺に挿入されていることがわかった。すぐに抜去し、再度挿入し、正しい位置であることをXPにて確認した。 胃液や食紅が吸引できない時がこれまでにもあっており、そのことに関して危機感をもっていない。(マニュアルでは、確認に不安がある場合は医師に相談となっている)
気泡音での確認を行っているが。変形のある患者であり、この患者の特性まではとらえられていなかった。
胃液の吸引ができない変形のある患者の場合、3点確認のみではなく、XPでの確認を行う。
  • 判断に誤りがあった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
52 障害残存の可能性なし カンガルーPEGキット 日本コヴィディエン 胃ろう増設を行う。翌日より白湯の注入開始。
2日後、6時30頃胃ろうから栄養剤を注入しようとしたところ、胃ろう部周囲から注入物が漏れてきたため、すぐに中止した。
消化器内科医師に連絡し、診察後CT撮影を実施。
胃ろうチューブ先端が腹腔内に迷入していることが判明する。
10時内視鏡下にて、胃ろうチューブボタン型を再挿入した。
  1. 疾患に伴う意識障害があった。
  2. 左上肢完全麻痺で右手にミトンを装着し、腹帯をしていたが、右上下肢は活発に動かすことができ、体動によりチューブが引っ張られた可能性がある。
  3. 家族の強い希望があり、介護服ではなくパジャマを着せて様子をみていた。
  1. 胃ろう増設後は、患者の行動や、胃ろうチューブの状態を観察する。
  2. 意識障害のある患者の胃ろう増設時は、家族に必要性を説明し介護服を着用する。またミトンの種類の検討を行う。
  • 観察が不十分であった
53 障害残存の可能性なし シリコンフォーリカテーテル2ウェイ 富士システムズ 主治医よりバルーン交換の指示があり、看護師2名にて実施する。挿入した看護師はいつもより浅かったと感じながらも、別の看護師が手順から逸脱し、バルーンの接続部を外し、注射器で吸引して排尿を確認。カテーテル先端部が膀胱内にあると判断してしまった。固定水を注入し終了する。その後少量の出血は認められたが、いつも交換後には少量の出血があることからいつものことと判断してしまった。深夜になって腹部膨満と尿量が少ないことで、固定水を抜くと同時に500mL程の出血があった。当直医が圧迫止血。その後日勤帯で他院の泌尿器科を受診し、腎盂バルーン先端開放型を挿入し様子観察となる。また、翌日血液データの悪化にて輸血(MAP)2単位を輸血する。事故発生前後よりバイタル的には大きな変動はなかった。 バルーンの交換時、いつもと違う違和感を感じていたのに抜去するという考えには至らず、いつものことと判断してしまった。また、別の看護師は、手順にない排尿の確認の仕方をしている。尿道損傷の恐れがあるのではないかと挿入した看護師は、感じていたが、次の勤務者への引き継ぎができていなかった。いつもの処置行為だと考え、危険の認識が低くなっていた可能性がある。 バルーン挿入時の危険の再確認の徹底(教育による手順の確認)。バルーン挿入時のチェックリストの作成。バルーン交換自体を看護師の処置とするかの再検討。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
54 障害残存の可能性がある(高い) バードレインステント メディコン 4年前、子宮筋腫にて当院の婦人科医師により腹腔鏡下筋腫核出術を施行した。その際に尿管カテーテルを留置した。
本日、排尿痛・尿失禁にて泌尿器科受診し、CTの結果尿管カテーテルの残存とカテーテルには結石が付着していることが分かった。患者は、カテーテルが入っていることを知らなかった。今回のカテーテル残存と結石についての説明時は、「分かりました」と穏やかな表情であった。
手術記録に、留置したまま終了する場合は、使用中のカテーテルが明記されたシールをOP記録に貼っておくルールになっており、問題はなかった。しかし、手術後の医師記録には、カテーテル抜去と書かれてあり、医師は留置してあることを忘れてしまった。また、手術前後の患者への説明時も留置することの説明がなされていなかった。患者は、左腎無形成のために、腹腔鏡下筋核出術時は尿管カテーテルを留置し経過観察する必要があった。4年前の主治医は他院に転勤し、婦人科医師は外来診察のみの非常勤医師が診察されていたが、記録上にカテーテル留置の記載がないため発見できなかった。
  1. 医師は手術に関する記録(術前から術後)の記載忘れがないようにする。
  2. 患者への説明の内容についてもしっかり記載しておく。体内に残留するカテーテル等に関しては必ず意識録に記載し除去忘れの内容にする。
  3. 主治医の転勤時等で交代するときはサマリーにまとめて必ず申し送る。
*患者は他院にてカテーテル抜去並びに結石粉砕術が行われる予定である。約1~2ヶ月間の入院が必要とのこと。
*発見時は、当時の主治医に連絡し事実を報告。当時の主治医から患者家族に謝罪した。
*家族より入院費・治療費・その他職場復帰に関する保証等の請求があった。顧問弁護士に対応を依頼した。
  • 記録等の記載
  • 患者・家族への説明
55 障害残存の可能性がある(低い) アーガイル トロッカーカテーテル 日本コヴィディエン 休日夜間に来院、CTの結果右気胸と診断した。間質性肺炎の急性増悪もあり、呼吸不全強い。胸腔ドレーン挿入時、呼吸が深く横隔膜の上下激しく、ドレーンにより横隔膜および肝臓を損傷した。 休日夜間の来院であり、医師が1人で対応しなければいけなかった。間質性肺炎の急性増悪も合併しており、早い処置が必要だった。 呼吸困難の強い患者は、CT下で確認し、マーキングを実施した上で安全にドレーン挿入する。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
  • 勤務状況
56 障害残存の可能性なし トロッカーカテーテル 日本コヴィディエン 左胸腔内に一部残存のため、左側胸部よりトロッカーカテーテル挿入。実施後の位置確認のためのレントゲンで左腹腔内への迷入を確認した。腹腔内損傷の把握とドレーン抜去への対応のため、腹部造影と血管造影を実施。患者家族に状況を説明。造影CTと血管造影を行い、出血がないことを確認し、ドレーン抜去。経過観察のためICU入室。 超音波で膿胸の確認と、脾臓などの実質臓器がないことを確認のうえで通常の手技で実施した。膿胸の残存が少なく手技的に困難であった。挿入時の痛みのため患者の体動があったため、腹腔内へ迷入したと考えられる。 超音波にて十分な穿刺スペースがない場合は無理に実施しない。体位が動いた場合は、再度穿刺スペースを確認してから処置を行う。ドレーン抜去の際は外科のバックアップの元実施する。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
57 障害なし シラスコン脳室ドレナージ回路 フォルテグロウメディカル 痙攣発作を起こしており、確認すると脳室ドレーン回路のエアフィルター部が閉塞のままで、脳室ドレーンから髄液が5分間で200ml流出していた。 脳室ドレーン管理中の手順は整備されていなかった。
脳室ドレナージ回路は処置等実施の際にクランプをして、終了後に開放している。
2点クランプする看護師と4点クランプをする看護師がいる。
当該看護師は2点クランプと認識しており、開放の際は2点を開放した。
  • 脳室ドレーン管理の手順作成
    医療事故発生当時、看護手順に「脳室(脳槽)ドレナージ挿入後の看護」は存在していたが、使用はされていなかった。また、手順の内容が、今回の脳室ドレーンの誤操作を防止できる内容ではなかったため、「脳室(脳槽)ドレーン挿入中の看護」を整備した。
  • 脳室ドレーン管理の学習会
    当該病棟の看護師に、医療事故発生から2週間、1日2回の申し送りの時間に事例の経過と資料を使用して、脳室ドレナージの管理方法の教育を行った。
    当該部署の相談会で再度、事例の経過と資料を使用して、脳室ドレナージの管理方法の教育を行った(当該病棟の看護師34名中17名出席)。

     
  • 知識が不足していた・知識に誤りがあった
58 障害残存の可能性なし 不明 不明 OPE施行し、皮下ドレーンを2挿入し帰室。ドレーン抜去施行を試みるも、2本中1本が抜去できず、同日緊急にOPE室にてドレーン抜去術を施行した。なお、患者状態は術後相当の全身状態であった。検証の結果ドレーンに糸を掛かった。糸によってドレーンが固定されたものではなく、ドレーンが筋膜縫合時に縫合された筋膜にドレーンが挟まりドレーンが固定されたものと推測された。 今回の背景としては筋膜縫合時に偶発的に余剰筋膜がドレーンを縛る形となったものと考えられる。また、今回は4日目まで、ドレーンから排液は良好であった。 ドレーンを固定し、縫合を施行するため、縫合中・縫合後にドレーンの抜去可かどうか確認を行っていく。
  • 確認が不十分であった
59 障害残存の可能性なし J-VAC ドレーン ジョンソン・エンド・ジョンソン 尿管膜膿瘍に対し、尿膜管遺残摘出術を施行。4日後、ドレーン抜去を試みたが、抵抗が強く断念。翌日再度ドレーン抜去を試みたところ、ドレーンが断裂し、先端部分が体内に残ってしまった。原因は手術時の閉創の際に縫合糸でドレーンを縫い込んでしまったためと考えられた。上記原因について患者本人およびご家族へ説明したところ、納得された様子であった。腰椎麻酔下に小切開開腹して、残存したドレーン先端部を摘出した。術後は順調に回復し、退院された。摘出術時は、開腹するために縫合糸をはずしたので縫合糸がドレーンを縫い込んでいたかどうかは、直接確認できなかった。 閉創の際にドレーン先端を十分確認しなかったため。 閉創の際にドレーンを十分確認する事。閉創修了時にはドレーンの可動性があり、縫い込んでいないことを複数の医師で確認する事。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
60 障害残存の可能性なし シラスコン硬膜外ドレーン カネカメディックス 手術は問題なく進行し、硬膜外ドレーンを留置して0時38分に終了した。13時、患者は人工呼吸器管理中で、医師が硬膜外ドレーンを抜去しようとしたところ、抵抗があり抜去困難であった。当日の脳当直であった上級医と共に画像及び手術所見を検討した結果、ドレーンが骨または糸など何かに引っかかっていることが予想され、ベッドサイドでの抜去は困難と判断したため、主治医及び所属長に報告の上、家族に手術室で試験開頭を行った上での抜去を申し出た。家族の了承を得て全身麻酔下に再開頭し、ドレーンを抜去した。
発生時は筋弛緩薬持続投与及び挿管の上人工呼吸器管理の状態であったが、再開頭後に抜管され全身状態は良好、ADL自立であり聴覚障害が軽度認められるがその他明らかな後遺障害は認めない。軽快退院している。
ドレーンは手術直前に引き抜いたところ側孔部分より切断された。術中所見からは、偶発的にドレーンの側孔が硬膜と骨の間をテンティングするために吊り上げている糸に引っかかっていたことが考えられた。 留置したドレーンがやや長かったためにテンティングした糸にかかったと考えられる。手技には大きな問題点は認めなかった。 可能ならば留置しテンティング直後にドレーンを数ミリ動かせてみる。
  • 確認が不十分であった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
61 障害なし HD用回路セット 東レ・メディカル 穿刺針に透析用回路セットルアーロックをしっかり接続し部分絆創膏固定。上肢シーネ固定をした。
定時観察した後の約15分後、患者のレベルが下がっており、確認したところルアーロックが緩み出血していた。
透析のマニュアルはあり知識は得られていたが、指導者の観察視点が決められておらず、指導者の力量に任せられていた。
機械等およびバイタルサインのチェックはしたが刺入部、接続部各種のチェックが確実でなかった。
透析看護師の新人受け入れの機会が少なかった。
新人指導時の安全確認チェックリストの作成。
チェックリストにもとづいた安全確認。
  • 確認が不十分であった
62 障害残存の可能性がある(低い) 不明 日本コヴィディエン 胃全摘出・胆嚢摘出・虫垂切除・鼠径ヘルニア根治術を同日に施行した患者である。胃癌術後に縫合不全を来たし食道空腸吻合の完全離開を来し、縫合不全については食道抜去及び食道瘻を造設したが、人工呼吸器装着しており、敗血症及び播種性血管内凝固(症候群)による急性腎不全を来し、持続的濾過透析を適宜行っていた。自尿の増加を認め、利尿薬投与で透析は行わず経過を見ていた。
尿量は確保されているものの、胸水があり、呼吸状態も前日までに比べて悪化傾向が認められ、血液ガスデータにてHCO3-の低下、BEの上昇所見を認めたため、血液透析の必要性を腎臓内科医師.と協議し、自尿のみで保存的に経過を見るよりは血液透析を導入した方が良いと判断した。13時より常勤医師と専修医で、エコーガイド下にブラッドアクセスを内頸静脈へのアプローチを開始した。手順どおりにエコーガイド下で本穿刺を行った。穿刺時、血液の返りは強かったものの患者は中心静脈圧が高値であり、動脈性の噴出は認めなかったため、動脈を穿刺したとは考えずガイドワイヤ-を挿入した。挿入時抵抗等なくスムーズであった。
皮膚切開後ダイレータを用いてダイレーションを行い、カテーテルを挿入した。挿入後逆血確認及びルートフラッシュを行ったが、血液の返りが強く動脈穿刺の可能性を考慮した。
カテーテルより採血を行い血液ガスを提出したところ、Aラインに留置したカテーテルより採血した血液ガスデータと同様の結果であり、動脈内にカテーテルを留置したものと判断した。カテーテルが12Frと径が太く、抜去・用手圧迫では止血困難であり、動脈へ迷入した部位が不明であるため一旦、12cm挿入し絹糸で固定した。動脈穿刺が疑わしいと判断した時点で心臓血管外科医師・放射線科医師・脳外科医師へ.コンサルトした。15時単純CT撮影にて動脈穿刺を確認後16時、血管造影検査にて動脈解離等の動脈損傷が無いことを確認し、抜去の方針となった。
18時30分手術室へ入室し、頸部の血管露出を外科にて行い、その後血管修復を心臓血管外科医師が行い、止血確認後閉創した。左鼠径部に留置された中心静脈カテーテルを3ウェイブラッドアクセスに入れ替え血液透析を開始した。術中出血が600ml程度に達し、ヘモブロビン低下を認めたため、術後に濃厚赤血球を2単位輸血した。しかし患者の全身状態は、出血性脳梗塞も併発し厳しい状態が続くなか、その後死亡確認した。
エコーガイド下での穿刺であり、静脈をとらえていたことは貫通していたことを考えると間違いないと思われる。しかし、エコーのみに頼った穿刺をすることにより、通常の穿刺部位より側方に刺入点がきたため動脈の方向への穿刺となった。そのため、穿刺、ダイレーション、カテーテル挿入のいずれの時点でも静脈壁を貫く方向に力がかかっており、今回の事例が発生した可能性があると考える。 穿刺時にはエコーガイドで行うとともに、再度解剖学的な刺入点や脈管走行の確認を行った上で穿刺を行う必要があると考えられる。また、動脈へ貫通した際には抵抗があったはずである。スムーズなカテーテル挿入ができない際には、再穿刺やダイレ-ションを行い経路を確認する必要があると考えられる。
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
63 障害残存の可能性なし 不明 不明 透析中にシャント肢周囲と床に血液汚染発見。V側の固定テープは剥がれていなかったが、意識レベル一時的に低下し、経過観察入院及び輸血投与し翌日退院した。 患者がテープかぶれを起こすので、通常より刺激の少ないテープを使用していた。
観察時に布団の中まであけて観察していなかった時間もある。
  • テープの材質・固定方法をスタッフ全員で再検討。
  • 観察は、ライン、穿刺部位を確認するのが観察を再度周知した。
  • 観察が不十分であった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
64 障害なし JMS プラネクタ輸液ラインシステム ジェイ・エム・エス 点滴を生食ロック中であった。入眠後21時より輸液開始の指示あり、覚醒していたが21時より輸液を開始する。22時半頃、担当以外の看護師によって血液が漏れていることを発見。本来、生食ロック時につなぐ輸液セットの先にPNロックをもう1つをつけた為に(プラネクタが上部でテープで固定されていており、延長チューブの接続はスリットになりと別添えのプラネクタはしっかりロックされていない状態であった。)、その接続部が外れていた。
発見時には逆血なく、フラッシュもできず点滴抜針する。
点滴ルートの接続物品の使用方法を誤った。
看護師は、患者が輸液トラブルの既往あり、なおかつ覚醒した状態で21時より輸液開始したが、21時半以降観察していなかった。
点滴ルートと延長チューブはロックできるように接続する。
ルート類を触ってしまう患者の場合はしっかりテープ等で補強する。
  • 判断に誤りがあった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
65 障害なし JMS プラネクタ輸液ラインシステム ジェイ・エム・エス 外来処置室で生食100mlでVラインを作る作業中、本来、「三方活栓が1個付いているJMS輸液セット60滴」だけを使用するところを「JMSエクステーションチューブ」が必要と勘違いして、「JMS延長チューブ300mm ヘパリンロック用」を接続した。輸液セットとJMS延長チューブ300mm ヘパリンロック用の間には、通常アダプターがないと接続ロックができないので、いつもと感覚が違うと思いつつも作業に追われ確認を怠った。
医師が患者にルートをとった後移動する際に接続部が外れ、他の看護師が発見し接続部を消毒してつなげた。
MRI室に移動後、再度接続部が外れて医師が接続部の不具合を発見し、接続部を交換した。
処置室看護師は、「JMSエクステーションチューブ」と「JMS延長チューブ300mm ヘパリンロック用」を取り間違った。
「JMS延長チューブ300mm ヘパリンロック用」のロックが必要なことが周知できていなかった。
医師や一度外れて対応した看護師は、本来の使用方法と違うことに気づか無かった。
処置する前は確認を徹底する
JMS延長チューブ ヘパリンロック用や閉鎖式チューブとの間には、通常アダプターがないと接続ロックができないことを周知する。
数種類ある延長チューブを同じところに置かず区別する
  • 判断に誤りがあった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
66 障害残存の可能性がある(低い) グラニセトロン


アバスチン


レボホリナート


エルプラット
不明



中外


不明



ヤクルト
患者は抗がん剤治療目的で入院した。14時20分、看護師Aは看護師B指導のもとにCVポートにポート針を刺した。グラニセトロンが滴下したため、ポートに入ったと思い、逆血の確認せず輸液ポンプを設置した。14時45分、グラニセトロン30分で予定通り終了。看護師Aは刺入部発赤・腫脹認めず、アバスチンに交換する。アバスチンは抗がん剤であり医師を呼ぶルールになっていたが忙しかったため忘れてしまった。15時40分、アバスチン終了し、レボホリナート・エルプラット同時に滴下開始する。17時40分、レボホリナート・エルプラット同時に終了、準夜勤看護師Cが5FUに交換しようとすると、患者から「胸が突っ張っていたい」と訴えあり。パジャマを全部脱いでもらうと、右上腕から脇下、胸部にかけ22cm径で発赤・腫脹あり。抗がん剤治療中止する。すぐに医師に報告し患部の冷却とデルモベート軟膏を塗布する。翌日腫脹軽減あり退院する。外来受診時、発赤・腫脹見られず。外来受診、CVポート周囲10cm発赤・腫脹あり、痛くて寝返りができないと訴えあり。患部にステロイド剤の局注実施。リバノール湿布をし、鎮痛剤投与、3回/週通院となってしまった。 看護師AはCVポートに針を刺すのは初めてであった。ポート針がそこに当たるまで刺すことは指導されたが、その感覚は分からず、技術に自信がなく、恐怖心もあり、針を深くは刺さなかった。針を刺したら、逆血の確認をするルールになっていたが、指導看護師BもCVポートラインが血液で固まってしまうからやらないほうがいいと医師に言われていたということで、看護師Aには指導していない。看護師Aは抗がん剤を始めるときは医師とともに始めることを知っていたが忘れてしまった。患者は丸首のパジャマを着ており、看護師Aは見える範囲の観察しかしていなかった。輸液ポンプを使用しており、抗がん剤が滴下していたので確実に入っていると思い込んでいた。患者がトイレにいた後など刺入部の観察をしていない。患者に刺入部のいたみや腫脹、手のしびれなど、抗がん剤漏出時の症状を説明しそのような場合看護師を呼ぶことを指導していない。
  1. CVポートの構造・セプタムの構造・ポート針の構造・針の刺し方、固定方法、逆血方法・フラッシュ方法など業者から講義してもらう。
  2. CVポートから抗がん剤を滴下する場合の観察方法、観察部位の学習をする。
  3. はじめの看護技術を実施する場合、看護手順を開き、指導者と準をおって、実施する。
  4. 患者を事故防止のパートナーになってもらうためにも、抗がん剤治療時の注意事項を指導する。
  5. 輸液ポンプは、漏出していてもアラームはならないこと、輸液ポンプを過信しないことを学習する。
  • 確認が不十分であった
  • 技術(手技)が未熟だった・技術(手技)を誤った
  • 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
67 障害残存の可能性がある(低い) プレセデックス静注液200マイクロg「マルイシ」 未記入 シリンジポンプを使用し、鎮静剤であるプレセデックスを5.6ml/hで投与中であった。その時使用していたシリンジポンプが手術室から借りてきていたものであったため、病棟内のシリンジポンプと交換した。その際約10分間、電源を入れるのを忘れていた。その後血圧上昇が起こった。 ICU内のシリンジポンプの在庫がなかった為、手術室から計3台借りていた.朝のうちに返却しなければという思いがあった。通常手順のとおりME室から借りていなかった。シリンジポンプを交換した後、電源の確認やラインに沿っての指差呼称、交換前と投与量が変化していないか、患者のバイタルサインや体動に変化がないかの確認ができていなかった。夜勤から日勤への申し送りを行った後にシリンジポンプを交換したことにより、すでに患者の状態については申し送ったという思いもあり、集中力の低下からダブルチェックを実施してもらうことを忘れてしまっていた。
  •  各勤務開始前にME機器の予備があるか確認しておく。予備がなければ、伝達し揃えてもらう。
  •  手術室から借りずにME室から借りる。
  •  輸液ポンプやシリンジポンプの更新後、ダブルチェックを徹底する。ポンプ‐三方活栓‐点滴刺入部を指差呼称。
  •  夜勤終了間際でのアクシデントであり、集中力の低下もあるため、無理をせず日勤者へ依頼する。
  • プレセデックスは「アルファ作動性鎮静剤」であり、添付文書の重要な基本的注意の中に、「本剤を長期投与した後、使用を突然中止した場合、クロニジン(降圧剤/交感神経中枢抑制剤)と同様のリバウンド現象があらわれるおそれがある。これらの症状として神経過敏、激越及び頭痛があらわれ、同時に又はこれに続いて血圧の急激な上昇及び血漿中カテコラミン濃度の上昇があらわれるおそれがある。」と記されている。患者は入院当日よりプレセデックスを使用していた。単に覚醒したから血圧が上昇しただけでなく、薬剤の中止が血圧上昇へ関与していたことは否定できない。よってICUでは使用頻度の高いプレセデックスの薬効について十分理解しておく必要がある。
  •  5.6ml/hで投与中の薬剤を10分間未投与とすると、約0.9ml投与していないことになる。仮に電源を入れて5.6ml/hで開始したが、三方活栓をクランプした状態だったとすると、約8分20秒ほどで閉塞アラームが鳴る。その際の積算は0.4mlであった。血中濃度を均一に保ち、上記のような副作用を生じさせないためにも、薬剤の取り扱いに注意が必要であり、その為のダブルチェックが必要不可欠である。
  • 確認が不十分であった
68 障害残存の可能性がある(低い) 不明 不明 ヘパリン14000単位/24時間(21ml/H)で投与中であった。巡視時121mlで投与されていることに気づく。他の勤務者はポンプ対応しておらず、ご本人も触っていないと言われる。 最終21時半すぎにポンプの投与量を確認したが、その後巡視には行っていたが、ポンプの投与量は確認していなかった。 訪室ごとにポンプ投与量を確認する。
  • 確認が不十分であった
No. 事故の
程度
事例の内容 背景・要因 改善策 調査結果
69 障害なし 患者は、人工肛門閉鎖術目的のため入院し、術前検査が行われていた。担当医師は、患者が房室ブロックのため1年前にペースメーカが挿入されたことを失念し、MRI検査を計画した。担当医師は、検査予約入力画面の体内金属チェック欄に心臓ペースメーカの項目があったが、注意が行かず申し込みを行った。検査は申し込みが終了すると予約用紙が出力され、申し込みを行った医師が、その日のリーダー看護師に手渡すことになっていたが、用紙は看護師に渡されていなかった。検査前日、遅出看護師は、患者に翌日の検査説明を行おうとして予約用紙が無いことに気づき、検査予約用紙を再出力した。予約用紙には、医師がチェックする体内金属項目と、患者がチェックする金属持参物項目があった。遅出看護師は、予約用紙の医師チェック欄の心臓ペースメーカにチェックがないことに気づき、患者にペースメーカが挿入されていることを知っていたため手書きでチェックを行った。
遅出看護師は、患者の部屋に行き明日MRI検査があることを説明し、患者に検査当日の金属持参物のチェック項目にチェックをしてもらうため用紙を患者に渡した。検査当日、患者は検査予約票の金属持参物を確認し、サインを行った。日勤看護師は用紙を見て、患者がサインしていることを確認した。日勤担当看護師の指導看護師も、予約用紙を確認し、患者のサインがあることを確認した。二人の看護師は、ペースメーカにチェックが入っていることを認識したが、疑問に思わなかった。
患者は、10時30分の検査開始に間に合うように予約用紙を持って一人で検査室に行き、放射線技師に予約用紙を渡した。検査技師は予約用紙をあずかり、用紙に記載された患者の体内金属チェック項目の確認が不十分な状態で、患者に金属の持参物がないか確認し、患者から無いと返答があったため、患者を検査室に案内し検査を行った。検査中、患者の状態に異常はなく、患者は検査終了後病棟に一人で帰った。放射線科医師は、患者の検査が終了した11時頃にMRI検査結果の読影を行おうとして、画像よりペースメーカ挿入患者にMRI検査が行われたことに気付いた。放射線科医師は、直ちに放射線技師に連絡するとともに、担当医師にも連絡を行い、ペースメーカ挿入患者にMRI検査が行われたため、ペースメーカの動作チェックを依頼した。連絡を受けた担当医師は、MEに動作チェックの依頼を行い、ペースメーカが正常に動作しているのを確認した。患者から挿入部の違和感の訴えはなかった。患者はMRI検査結果から手術はまだ実施できないと評価され、退院が決定したが、MRI検査をおこなったため2日間長く経過を見た。
担当医師は、患者がペースメーカを挿入していることをうっかり忘れたため、検査オーダー時に体内金属チェックが行われず、MRI検査を依頼した。
  • 放射線科技師は、体内金属が挿入された患者にMRI検査の申し込みがされるとは思わず、検査前の予約票にあるチェック項目の確認方法が形骸化した確認だったため、見落とした。看護師は患者にペースメーカが挿入されていることを知っていたが、以前に体内金属挿入患者で、MRI検査が必要なため実施された患者がいたことを知っていたため、今回も同様の必要性で検査が行われるのだと思った。看護師は、体内金属チェック欄は医師が患者に説明して記載する項目と認識していなかったため、自分でチェックを入れて患者に手渡した。患者は、当院で1年前にペースメーカを挿入したが、患者の治療とともに電子カルテに体内挿入物をチェックしていく取り決めがなかったため、医師カルテ、看護師カルテのペースメーカチェック欄にチェックがされていなかった。
  • 医師は検査申し込み時に、体内金属チェックリストの確認を行う。
  • MRI室は、検査前の確認を確実に行う。
  • 看護師は医師のチェックリストに記入するのではなく、医師に確認を行い、医師に記載してもらうようにする。
  • 患者の体内に金属が挿入された場合や、挿入された情報を得た場合、医師、看護師はカルテにチェックする。
  • 確認が不十分であった
  • 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
70 障害残存の可能性なし オープンMRI検査時に、MRI用の寝台を患者の足を同MRI側にして駆動操作し送り込む際に、患者の顎がMRIの内壁にぶつかり、かつ擦りつけたため、顎部と頚部に痛みが発生した。 オープンMRI検査において、患者の背中の湾曲により駆動寝台に真直ぐに寝ることができないため、背中側にバスタオルを置き、かつ頭部の下に固定具を置いて検査用腹部コイルの装着準備をして検査を開始。患者は検査に長時間耐えられないとの情報があったため、患者に耐えられる時間を確認しつつ寝台を駆動させ、患者に緊急ボタンを渡すために患者から目を離して緊急ボタンに手を延ばしたときに、患者の頭部位置が高すぎたために顎がMRIの内壁とぶつかり、患者の指摘で緊急停止した。患者が長時間耐えられないことにより、短時間で少しでも検査を多くしようと、焦って患者への説明とMRIの寝台駆動を同時に行った。
  • 事前説明から装置進入までの間、患者から絶対に目を離さない。
  • メジャーを設置して、進入高さを確認する。
  • 寝台を駆動する前に縦横高さを確認するための緊急措置として、壁に最大高、推奨高位置を設置し、もう片方からアルミ製バーに同様の位置を記入して双方の高さを確認する。(設置済)
  • 寝台を駆動する前に縦横高さを確認するレーザービームと装置表面のタッチセンサー導入を検討中。
  • 観察が不十分であった
  • 心理的状況(慌てていた・思い込み等)
71 障害残存の可能性なし 患児はMRI検査目的にて家族とともに来院。外来看護師がトリクロールでの入眠を確認後、家族にMRI検査室の場所を案内した。児は家族に抱っこされて検査室に移動。放射線科では、当日からMRIの2台稼働をスタートさせ技師2名で対応していた。児を撮影台に寝かせた後、入眠していた安心感もあり安全ベルトでの固定をしないまま照明暗くしようとしてスイッチ方向へ移動。直後に児が寝返りをうったのに気付いた技士が駆け寄ったが間に合わず約90cmの高さから転落し、その衝撃で児が覚醒し啼泣。直ちに主治医、放射線科医師へ報告しソセゴン、アタラックスP使用しMRI・CT撮影を実施した。脳外にて陳旧性外傷性くも膜下出血、頭蓋骨骨折と診断された。 初のMRIの2台稼働で技師2名との連携や操作手順がスムーズでなかった。
また入眠導入剤使用後の患者には外来看護師が付き沿って児の観察を行いながら移動する必要があったが、外来での事例が少なく院内ルールとして周知されていなかった。
  • 鎮静薬を使用する検査では必ず看護師が付き添い観察することとした。
  • MRI等の安全固定は患者から離れる前に実施することを放射線科職員へ周知させた。
  • また放射線科マニュアルの変更を実施する予定。
  • 観察が不十分であった
  • 判断に誤りがあった
  • 連携
72 障害残存
の可能性
なし
脊髄損傷の患者の緊急MRI撮影を行う際、ストレッチャーに酸素ボンベを搭載したまま、MRI検査室に入室したため、酸素ボンベがMRIガントリー内に吸着した。
患者、医療者ともに影響なし。
その後、他のMRI検査室で検査を実施。
医師が患者をMRI検査室に入室させてよいか口頭で確認したところ、技師は「入室不可」と返事をした。しかし、医師は技師の返事を「入室可能」と聞き間違えてMRI検査室に入室した。また、MRI検査室のドアが半分開いていたため、入室可能と医師が誤認した。
磁性体のMRI検査室への持ち込みが禁忌であることを医師が十分に認識していなかった。
MRI検査室の入口の金属探知機のブザーがよく鳴るため、危険意識が薄れていた。
  • MRI検査室の前室での持ち物確認が終了するまで入室しないよう技師が必ず説明する。また、持ち物確認が終了するまでMRI検査室のドアを閉めておく。
  • MRI検査室入室時に金属探知機のブザーが鳴ったら必ず立ち止まることを徹底する。
  • 救急科医師、TCC看護師にMRI検査実施時の注意点を再周知する。
  • 知識が不足していた・知識に誤りがあった
  • 心理的状況(慌てていた・思い込み等)

    なお、当該事例については、これまで同様の事例が集積されており、PMDA医療安全情No.26「MRI検査時の注意について(その2)」を作成・配信し、注意喚起を実施しているところ。
73 障害残存
の可能性
がある
(低い)
担当医師が新生児用ベッドにてMRI室受付へ患者を搬送した。担当医師はMRI操作室内で白衣を脱ぎ、身に着けている金属を外した上で検査室前の廊下で待機した。
担当検査技師がMRI検査室のドアを内側より開け、待機中の担当医師に検査を始める旨を伝えた。
検査技師は呼吸状態把握のために使用する経皮酸素飽和度モニターを準備するため、検査室から操作室へ移動した。
その間に担当医師が患者を乗せた新生児用ベッドを押し検査室に入室した。
新生児用ベッドがMRI装置本体の真横まで達したところで、新生児用ベッドが患者を乗せたままMRI装置中央の空洞を操作室側から塞ぐように吸着した。
MRI検査は中止とし新生児病棟に帰室した。
診察上、頭部の外傷、出血は認めず、手足の動きも良好であり経過観察の方針とした。
しかし、その後左眼周囲の腫脹を認めたため、眼科診察、頭部CTを施行したところ、頭蓋骨骨折、頭蓋内出血、左眼瞼周囲皮下出血、左眼窩上部骨折を認めた。
本事例の当事者である担当医師は卒後8年目で、MRI検査担当の経験も豊富であり、過去に同様の事故を起こしていない。
今回も、MRI検査前に本人や患者が身に着けている金属についてチェックを行っており、MRI検査時における金属の危険性について認識はしていた。
CT検査などではベッドから患者を移動する際の事故を防止するため、患者ベッドを検査装置の真横に着けることになっている。
MRI検査開始を告げられた時点で、患者ベッドを(CT検査と同様に)装置本体の真横まで着けてしまったことで事故が発生した。
通常は入室の時点で検査技師によるダブルチェックがあり、事故を未然に防ぐことができる。しかしながら、今回は検査技師がMRI用の経皮酸素飽和度モニターを操作室へ取りに行ったことにより、医師と患者から目を離している間に事故が発生した。
  1. 直ちに実行できる再発防止策
  • MRI検査室内への患者の誘導は技術員(検査技師)が行い、医師や看護師が単独で患者の誘導をしない事を徹底する。

  1. 将来の改善策
  • MRI室の廊下で(成人で使用する)MRI用搬送ベッドに移床する。

  • MRI室で使用可能な新生児用ベッドの作成を業者に依頼する。

  • MRI室に金属探知機を設置する。

などの案を関係各部署と検討している。
  • 確認が不十分であった
  • 判断に誤りがあった

    なお、当該事例については、これまで同様の事例が集積されており、PMDA医療安全情No.26「MRI検査時の注意について(その2)」を作成・配信し、注意喚起を実施しているところ。
74 障害なし 外来受診しMRI予約を取った。事前チェック項目未記入のまま伝票を提出し、MRIを撮影した後、患者は帰宅する。
放射線科医長が読影時に過去の検査で洞機能不全があったのを確認した。更に外来カルテに先月ペースメーカチェックをしていることより「ペースメーカ」が挿入されていることに気付いた。
患者の自宅に電話連絡を取り、至急ペースメーカをチェックしたほうがよいことを説明し、患者来院。意識清明で症状は見られず。
ECG上、ペーシング上異常認めず。ペースメーカチェックの結果は問題がなかった。
MRIによるペースメーカ及び心筋に対する影響はないと循環器医師より診断された。
MRIの検査申し込み伝票の問診依頼を医師が実施しなかった。
泌尿器・放射線科受付事務もチェック項目欄を見落とした。
検査当日骨盤部MRI検査の検査前「検査禁忌チェック」を放射線技師は目で追うだけのチェックしかしなかった。
当日、MRI検査室の事前チェックを患者自身に記載してもらい、患者はペースメーカを挿入していることを記載したが、放射線技師は充分に確認しなかった。問いかけをしなかった。
  • MRI申し込み伝票の禁忌チェック事項、問診を必ず医師が患者に確認して記載する。
  • 伝票処理する際に医師が問診しているかを再確認する。
  • 放射線科MRI担当者は、これまで患者本人に記載してもらっていた「禁忌チェック表」を今後は担当者自身がチェック表を問診しながら記載し確認する。
  • MRI勤務体制を2人にして、1人で禁忌事項チェック、着替え、撮影と言った業務にならないようにする。
  • 伝票の記入漏れ、不備な検査伝票でも検査をおこなっていたが、今後は検査依頼した医師と撮影技師とのダブルチェックを徹底していく。不備な伝票に気づいた際はその時点で依頼医師に返却し不備な点を訂正してもらう。
  • 確認が不十分であった
75 障害なし 患者は入院後、アシネトバクターやMRSAの感染が合併し、重症感染症となり、抗生物質を長期使用しても、高熱が続くため、精査を行った。
腹部CTにて腹腔内血腫あるいは、腹腔内膿瘍が疑われた。このため、腹腔内腫瘤病変の精査のため、腹部MRIを撮影した。
撮影中、患者が動き出したため、MRIを中止した。
その後、放射線科医師が読影中にICDのリードに気付いた。
患者はバイタル・全身状態は安定していた。
当院でICDチェックした結果、機能は正常であることが確認された。
入院時に診療録にICD植え込みを記載していたが、経過が長くなり、複数回の主治医の変更やグループの変更、病棟病室の変更があった。
また、入院の原因となった病態から大きく変化していたため、認識が薄れていた。
重篤な病態が続くため、原因を精査し、治療していくとの念頭があり、主治医との情報交換が不十分であった。
  • MRI検査禁忌の患者の外来カルテ・入院診療録・データベース用紙・温度表に「MRI禁止」の印を押す。
  • 診察券・I D カードに「MRI ×」のテプラを貼る、などのMRI手順を作成した。
  • 確認が不十分であった
  • 記録等の記載
 

ヒューマンエラーやヒューマンファクターに起因すると考えられた事例(その他)

No. 事例 調査結果
76 【内容】
検体検査分析装置更新において、分析装置設定の誤りにより、尿糖定量値の報告桁数が本来g / dL(一日尿糖換算値:g / day)であるところを、mg / dL(mg / day)となっており、1/1000の桁数のズレが発生した。検査依頼を確認し、全ての結果を修正し再報告をした。
誤報告件数は55件だった(重複オーダあり)。このうち1件について、検査結果の確認ができるまで手術延期となった。
【背景・要因】
分析装置メーカーの設定の間違いと、担当者の確認不十分。
  • 確認が不十分であった
77 【内容】
検査室に、内科医師より、患者AのCcrのデータが、検査部の報告値と医師が計算した結果と解離している、という問い合わせがあった。原因を調査したところ、検査システムに入力している計算式に誤りがあることが判明した。
直ちに緊急医療安全ミーティング開催、検査部は直ちに該当患者のリストアップの指示を受け作業を開始した。薬剤部より過去2年間の抗癌剤使用患者をリストアップし各診療科の医師はカルテより患者詳細を確認した。Ccr96.5以下のデータの患者でCcrの結果による影響が疑われる事案がなかったか検索中である。
【背景・要因】
計算式:Ccr(mL / min)=U×V/S×1.73/ A
  • U:尿中クレアチニン濃度(mg / dL)
  • V:1分間尿量(mL / min)
  • S:血清中クレアチニン濃度(mg / dL)
  • A:体表面積(m2)
  • 1.73:日本人の平均体表面積(m2、2001年の日本腎臓学会で従来の1.48から変更)
システム導入時には、担当者と入力業者の間で計算して間違いがないことを確認していた(但し、書類等では残っていない)。
入力時1440分(=24時間)と入力すべきところが1000分で入力されていた。どのタイミングで誤入力となったのか不明である。動作確認はしていたが設定確認まではしていない。旧病院から新病院へ移転し、新病院から電子カルテを稼働したので電子カルテ以前の年齢等で違う条件となることもあるが一般的な基準値である67を計算式にあてはめ、Ccr96.5以下のデータのCcrの結果により不具合が起きたと疑われる事例がないかカルテにて調査中。現段階で、患者に影響が起きた報告はない。
  • 確認が不十分であった
78 【内容】
左大腿骨頭壊死の為、大腿骨頭回転骨切術施行、清潔ホールにて手術に必要な器械、医療器材の準備をした。その間、展開の応援として、看護助手が器械、医療器材の展開の手伝いをした。
展開後、当事者は清潔ホールから手術室へ入室した。医師らにて患者の左下腿をイソジン消毒し、その後足袋、弾性包帯を巻いた。開創、骨切まで行った後に、外回り看護師が、術野で使用している弾性包帯が未滅菌のものであることを発見した。ただちに手術中断し創部を生食にて洗浄後仮閉創となった。医師、器械出し看護師(当事者)共に再度手洗いし、術野を消毒、器械類全て滅菌したものを準備し、手術再開となった。その間の手術時間のロスは1時間半程度であった。

【背景・要因】
  • 清潔ホールに医療材料として弾性包帯があがってきており、当事者は、医師から指示を受けた器械、医療材料を展開した。清潔ホールからあがってくるもので、未滅菌材料が存在すること(弾性包帯)を知らなかった。
  • 日頃から、滅菌使用期限の確認を怠っていた。
  • 確認が不十分であった