独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
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安全対策業務

平成24年度 第3回医薬品・医療機器安全使用対策検討結果報告(医療機器関連事例) 別添1

本文|別添1|別添2別添3

製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例(医療事故)

No. 事故の
程度
販売名 製造販売
業者名
事故の内容 事故の背景要因の概要 改善策 調査結果
1 障害残存の可能性がある(高い) ライトガイドケーブル




VISERA 高輝度光源装置 CLV-S40
オリンパスメディカルシステムズ


オリンパスメディカルシステムズ
8:21 日帰り手術で、尿道的内視鏡下ヒアルロン酸(デフラックス)注入術のため手術室入室
9:03 手術終了
9:11 手術終了後ドレープをはがしたところ、左大体部外側に皮膚の熱傷あり
9:45 皮膚科診察し、2度熱傷と診断、エキザルベ軟膏、ソフラチュール、オプサイト貼付し処置。手術終了後主治医より、母へ熱傷の経緯を説明し謝罪した。
その後、外来で経過観察。3ヵ月後も外来受診 熱傷の瘢痕が残る可能性があると家族に説明した。
使用していたライトガイドケーブルには、コーティングの破損などは見られなかった。
患児の大腿部にコードは当たっていたが、ドレープがこげたり、溶けるなどの破損は見られていない。
コードの熱くなる部分は、術者が手で持って操作するため患児には当たっていないはずである。しかし、傷の所見からは熱傷の可能性が高い。手術操作中は、医師も看護師も注意していたが、終了後、光源からライトガイドケーブルをはずし器械類を片付ける際に、患児の皮膚に、熱くなった口金部が接触したと考えられた。
  1. 手術中は、メーヨ台や、手枕などで工夫して患者に直接、コード類がかからないようにする。
  2. 光源からライトガイドケーブルをはずすときには、口金が熱くなっていることを再認識して器械を片付ける際には、患者から離れたところで行なう。
当該ケーブル及び光源装置の添付文書には、使用直後のケーブル先端が熱くなるため、やけど等の可能性があることが記載されている。
なお、これまで同様の事例が集積されており、PMDA医療安全情報No.33「手術時の熱傷事故について」を作成・配信し、注意喚起も実施しているところ。
2 障害残存の可能性がある(低い) ワグナーコーンステム ジンマー 人工股関節置換術の外回りについた。今回は難易度も高く、いつも使っている器械とは違うものであった。インプラントのサイズが決まり、立ち会いの業者とサイズの確認をし、器械出し看護師へインプラントを出した。3つのインプラントのうち、1つはいつもと滅菌パックの状態が異なっていた。透明のパックに包装されており、一重目のパックにハサミのマークがついていた。自分は、一重目のパックの中は滅菌状態だと思い、立ち会い業者に「これ、はさみで切っていいんですか?」と確認した。立ち会い業者から「はい。」と返答があったため、ハサミで開封し、切った淵に器械出しが当たらないように、開封口を広げた(ハサミで切った淵は不潔なため)。しばらくして、部屋入り口から見ていた他業者から、電話があり、さっきのインプラントの開け方はあれで良かったのかと聞かれたので、立ち会い業者に確認して開封したことを伝えた。
他業者に、立ち会い業者と電話を代わるよう言われ、立ち会い業者と電話を代わり、そこでも開封に問題がなかったのかということを確認していた。電話のあとに、立ち会い業者に「大丈夫だったんですか?」と聞いたところ、「はい。」と言われたので問題はなかったのだと思った。インプラントが挿入される前に、立ち会い業者から「会社に電話して確認してくるので、ステム(インプラント)が入りそうになったら、止めて下さい。」と言われた。その間に、器械出し看護師がインプラント開封時に捨てた袋のことを思い出し、下におろしてもらった。パッケージを確認したが、全て英語で書いてあり、どこからが滅菌状態なのかわからなかった。立ち会い業者が戻り、「やっぱり駄目でした。袋は不潔です。」と言われた。自分は二重パックだと思っていたのが、実際は三重パックになっており、始めにハサミで開封した中の袋までは不潔だったことがわかった。執刀医・助手に伝え手術は一時中断。執刀医・助手・器械出し看護師は手袋の交換をし、器械類を全て取り換えた。業者持ち込み器械は必要分のみ高速滅菌にかけた。器械の準備の間、ジェット洗浄で創部を洗浄、抗生剤を使用した。
  • 初めての器械であり、滅菌パックの状態もいつもと違うものだった。
  • 立ち会い業者とのコミュニケーション不足。確認はしているが、言葉数も少なく、自分の聞きたかったことが立ち会い業者に伝わっていなかった可能性がある。
  • 自分で疑問に思いながらも、立ち会い業者の言葉をうのみにしてしまった。
医療材料に関して
  • 事例発生後の会社からの説明では、「ジンマーの会社は、センターパレスの会社を吸収合併し、ジンマーの材料とセンターパレスの材料が共存していた。元来ジンマーの材料は二重パック、センターパレスの材料は三重パックとなっていた。」
    今回使用した材料はセンターパレスの材料であったが、三重パックの表示に慣れていなかった。
  • 他のスタッフ、業者に確認をする。
  • 外回り、器械出し看護師共に確認を確実に行う。(ステリーの確認をする。)
  • 同じような取り扱いの滅菌物をピックアップし、今後の取り扱いについて検討する。
  • 滅菌の取り扱いについて勉強していく。業者へ勉強会を依頼する。

    *業者へ、わかりやすい滅菌表示についての検討を依頼した。
当該企業に確認したところ、今回の事例を踏まえて当該医療機関に開封方法に関する情報提供文書を配布したとのことである。また製造元に包装形態の改善を要請しているとのこと。
3 障害残存の可能性なし ハッピーキャス クランプキャス 東郷メディキット 透析するために16Gの穿刺針で穿刺した際に、透析開始時、穿刺困難あり。一時抜針したところ、プラスチック針(外筒)の先端が2mm程度切れて患者の体内(皮下)に残留した。泌尿器科ドクターへコンサルトとなり、エコーにて残留針を確認後、同部位を皮膚切開し、残留した留置針の外筒部分を切開・抜去となった。 透析開始時の穿刺を、その部署に配属されてまだ間もない2年目の研修医単独で行っていた。
看護師は近くにいたが、別の処置をしていた。
上級医が穿刺時には付くように部署内の申し合わせではなっていたが、上級医は少し離れた別の患者の穿刺をしていた。
穿刺針は、一旦内筒(金属針)を外筒(プラスチック)から抜いた場合は、そのあと外筒に内筒を戻さないようにしなければならないところを、何度も戻していた様であり、研修医の教育が十分ではなかった。
透析開始時、研修医単独での穿刺は行わないよう、周囲からも気づき、声がけをする。
介助についた際は、手技のなかで、内筒を抜いたあと外筒に再度戻すような動作が見られた場合は、その前に説明し、即抜針していただく。
研修医の全体研修時に定期的に静脈留置針の扱い方について触れて戴くようにした。
部署内の医師のバックアップ体制、指導教育体制を守ってもらうよう徹底していただく。
当該企業に確認したところ同様事象が複数報告されており当該事例を特定できないが、当該留置針の穿刺時に、一旦抜いた内針を何度も戻したことから内針の先で外套針を破損させてしまったものと考えられる。
なお、当該留置針の添付文書には、使用前及び穿刺中に、外套針の中で金属内針を前後に動かさないことと記載されているところ。
4 障害残存の可能性がある(低い) エンドループ PDS II ジョンソン・エンド・ジョンソン 先天性肺動静脈瘻の患者。胸腔鏡下で、胸腔鏡用自動縫合器を用いた右中葉の部分切除術としたが、中枢端はわずかに切離できていなかったため、直角鉗子で残存肺を把持し、エンドループという胸腔鏡用の結紮糸を用いて閉鎖、切離不十分部位を切離し標本を摘出した。切離外側端にも止血目的にエンドループを用いた結紮を行い、その後この結紮糸は切離している。止血、空気漏れのない事を確認後ブレイクドレインという柔らかなドレーンを挿入し手術は終了した。
術後2日目にドレーンは抜去でき創部を含め経過は良好であった。血液生化学検査では術後肝酵素の上昇を認めたが徐々に低下していた。また右頚部の腫脹と呼吸困難感を訴えたため頚部エコーを行い、内頸静脈の拡張を認めたが血栓はないことを確認した。腹部不快感の訴えがあったが当科医師が診察後軽快退院された。
翌日早朝、全身倦怠等を訴え救急外来受診緊急入院となった。血液生化学検査では肝酵素、CRP、白血球などの上昇を認め、心エコー、CTで著明な心嚢液貯留と腹水貯留を確認した。心タンポナーデの所見があり、心嚢ドレナージを行い血性心嚢液吸引除去後より頻脈はいったん改善された。しかし、その後心嚢液の再貯留があり胸骨縦切開アプローチによる緊急手術が行われた。心嚢を切開すると大量の血性心嚢液が排出され右心房に裂孔が認められた。肺切離部と縦隔胸膜(心膜)は癒着しておりエンドループの先端が胸膜を貫き心嚢内に突出していた。右心房の出血部位を縫合閉鎖し止血、残存肺の一部の切除し手術は終了した。術後大きな問題はないが、患者の不安は強く、リハビリを行い経過観察中である。
再入院後、CT画像的に胸水や腹水と異なる心嚢液であることは確認出来ていたが出血にいたる機序がわからぬままドレナージが行われた。手術のDVDを見直しても手術に起因する原因は思い当たらず、術中の鈍的損傷あるいは異所性子宮内膜症なども考えたが何れも説得力のあるものではなく原因究明は緊急手術にゆだねられた。エンドループの切離端が肺の再拡張とともに縱隔側に向き慢性刺激(心拍動)により心膜を貫き癒着したもの考えられた。その結果先端が右心房を損傷し出血をきたしたが心嚢内に出血することでエンドループ先端と右心房の間に距離ができ急激な経過とならなかったと考えられた。
  1. エンドループは分厚い組織の結紮にも対応できるように太い糸が使用されており、同方向から鉗子を挿入し結紮糸を切離するため、結紮糸の切離面は斜めになる可能性がある。結紮糸を切離する際は別のポート孔からハサミを挿入し切離する。
  2. エンドループは長めに切離する(5mm程度の短さでは組織を損傷しやすい)。
  3. 結紮部位に補強用の貼付剤を張るなどの対応も必要と考えられる。
  4. 手術でエンドループを使用する診療科に対し、事例の周知、注意喚起を行う(実施すみ)。
  5. 事例発生後、メーカーに報告している。今後学会などを通じて出来る限り全国の呼吸器外科医に問題提起をしていく予定。
当院の事例報告をメーカーに行った。その後、メーカー側から当院と同様事例が2例あったとの報告を受けたが、この2事例について情報公開をしていないとのことであった。メーカーは、この2事例を受け、添付文書の改訂を実施したとの事であったが、添付文書からは具体的な内容は把握できない。
当該事例については企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、当該製品の切離断端により、心膜が損傷を受けた可能性があると判断されている。なお、当該事例をうけ、当該製品の添付文書に切離断端による組織損傷の可能性について追記したところ。
5 障害残存の可能性なし バード X-ポートisp(グローションカテーテルタイプ) メディコン 4ヶ月後、カテーテル走行部の痛みが出現したがカテーテル造影検査では異常が無かった。数日後、ポート上部、鎖骨下、右頚部の痛みが出現し、造影の結果、造影剤の漏出を確認した。ポートを摘出したところ、カテーテルには頚部の彎曲部であったと思われる辺りに穿孔を認めた。 CVポート留置期間は約100日、留置血管は右内頚静脈で主な使用薬剤はmFOLFOXであった。メーカーによる現品調査では、原因の特定には至らなかった。 CVポートカテーテル断絶、穿孔、キンク等はポート留置に伴う合併症の一つである。今回、他に報告した他の事例も含めて、メーカー調査結果と個々の診療録とを詳細に照合、検証したが原因の特定には至らなかった。しかし、シリコンの機械的刺激への脆弱性は否めず、当該製品からポリウレタン製カテーテルへの切り替えを行った。 当該事例については、これまで同様事象が集積されていることから、平成23年5月25日付薬食安発0525第1号連名通知「皮下用ポート及びカテーテルに係る添付文書の改訂指示等について」が発出されており、当該製品の添付文書においてもカテーテル断裂について注意する旨を記載し、医療機関へ情報提供を行うよう指示されているところ。
6 障害なし バード X-ポートisp(グローションカテーテルタイプ) メディコン 約9ヵ月後、外来化学療法終了後ポート周囲の皮膚発赤を認めた。ポートトラブルを疑い造影検査を実施したところ、カテーテルキンクを認めたためポートを摘出したところ、カテーテル穿孔を認めた。 CVポート留置期間は約290日、留置血管は右内頚静脈で、主な使用レジメンはcetu-FOLFIRI,Pmab-FOLFOXであった。メーカーによる現品調査の結果、カテーテル穿孔の原因の特定には至らなかった。 CVポートカテーテル断絶・穿孔、キンク等はポート留置に伴う合併症の一つである。本事例発生の原因特定には至らなかったが、カテーテルの素材であるシリコンの機械的刺激への脆弱性は否めず、当該製品からポリウレタン製カテーテルへの切り替えを行った。 当該事例については、これまで同様事象が集積されていることから、平成23年5月25日付薬食安発0525第1号連名通知「皮下用ポート及びカテーテルに係る添付文書の改訂指示等について」が発出されており、当該製品の添付文書においてもカテーテル断裂について注意する旨を記載し、医療機関へ情報提供を行うよう指示されているところ。
7 障害残存の可能性なし バード X-ポートisp(グローションカテーテルタイプ) メディコン 2年2ヵ月後、喉頭腫瘍の術前検査目的で胸部X線撮影を行ったところ、上記CVポートカテーテルが屈曲部で断絶し、10cm程度のカテーテル先端が左肺動脈内に逸脱していることを放射線科医が発見した。直ちに経カテーテル的に回収した。 CVポート留置期間は約800日、留置部位は内頚静脈、m-FOLFOX6を行っていた。CVポートカテーテル断絶は合併症の一つであるが、本事例に関するメーカーでの現品調査ではカテーテル断裂の原因の特定には至らなかった。 原因の特定には至らなかったが、カテーテルの素材であるシリコンの機械的刺激への脆弱性は否めず、当該製品からポリウレタン製カテーテルへの切り替えを行った。 当該事例については、これまで同様事象が集積されていることから、平成23年5月25日付薬食安発0525第1号連名通知「皮下用ポート及びカテーテルに係る添付文書の改訂指示等について」が発出されており、当該製品の添付文書においてもカテーテル断裂について注意する旨を記載し、医療機関へ情報提供を行うよう指示されているところ。
8 障害残存の可能性なし IVカテーテル パイオラックスメディカルデバイス 15時30分頃から、右鎖骨下静脈カテーテル留置およびCVポート造設を、医師2人で施行した。4日後に抜糸をしようとしたところ、朝開始した輸液の皮下漏出を認めた。透視下で確認し、カテーテルが上大静脈から右心房を経て一部右心室へ離脱していた。透視室から帰室後、心電図モニターを装着し、カテーテル離脱に伴う症状はみられなかった。次の日、15時から、右大腿静脈を経由した血管内操作で、カテーテルを回収した。左前胸部に新たにCVポートを造設し、右前胸部のCVポートを皮下から取り出した。CVポートとカテーテルの形状より、カテーテルはCVポートの装着部より離脱したものと判断した。心エコーで、血栓は認めていない。 現時点では、原因不明である。メーカーの回答待ち。 今回の処置は2人で確認しながら行ったが、複数による確認以外はない。 当該事例については企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、解析の結果、カテーテルがセプタムポートのコネクタの根元まで挿入されておらず嵌合不足により離脱してしまったとのこと。
当該製品の添付文書には、セプタムポートのコネクタの根元までカテーテルを確実に差し込む旨を記載している。なお、当該企業では当該事象を受け、2012年2月から製品に同様の注意を記載したラベルを貼付し出荷しているところ。
9 障害残存の可能性なし メラ 人工心肺装置 HAS型 泉工医科工業 ICUで昼夜ベッドサイドで連続で心肺装置を回して循環維持。 6時間に及ぶ心停止下の心内修復術を行った為に心臓の機能が悪化し自力で心拍出を行うことが出来なくなり、手術中から継続していた人工心肺装置を継続する事になった。 人工心肺装置のローラーポンプ急停止でアラームが鳴らなかったので、発見のしようがなかった。 当該事例については企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、当該製品の解析の結果、停止した原因は特定できなかったが、基板の一時的な電気的接触不良の可能性が考えられるとのことであり、当該基板を交換・修理したとのこと。
10 障害なし バーサカット モーセレーターシステム 日本ルミナス 手術開始前に、モーセレーターにチューブのセッティングを外回りNSが行った。(本来は、立ち合い業者が実施しているが、この時は都合がつかず、NSに依頼された。)この時、チューブの「吸入」と「排出」の向きが逆になっており、気付かずに、術者がモーセレーターを使用し、吸引されるはずの生食が吸引されず、逆に先端よりairが出ていることが発覚した。 接続方法について知識不足。モーセレーターには、チューブ接続方法について記載されていなかった。矢印が小さく表示されているが、意味不明であった。接続後、始動確認を行わなかった。 モーセレーター本体の上方、側面、前面に接続方向を示す。
矢印を貼付する。
始動確認を実施する。
看護師に対して、医療機器の勉強会を企画し、知識、技術の統一を図る。
当該事例については企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、調査の結果、吸引用チューブを逆向きに接続した結果、空気が逆流したとのこと。なお、当該事例の他に同様事象が1件報告されており、これらの事例をふまえ、当該企業により吸引用チューブの適切な接続について注意喚起シールを貼付する対策が実施されているところ。
11 死亡 MMIシリコン蘇生バッグ(品番2223) 村中医療器 午後10時頃、成人T細胞性白血病に対する末梢血幹細胞移植後で、合併症を併発し全身状態悪化の患者が急激に呼吸状態が低下。蘇生時に、組み立て方を間違ったバックバルブマスクを使用したことが原因と考えられる低酸素脳症となる。挿管を行った医師は、正しく挿管できたことを確信した後も胸郭が上がらないなど総合的な判断からバックバルブマスクの異常を疑い、新しいバッグバルブマスクに交換した。
事故後、直ちにICU病棟で呼吸管理、脳障害に対する予防治療(低体温療法など)などの集中治療を実施したが、その後、死亡した。
バックバルブマスクを洗浄して組み立てる際、取扱説明書を確認したが十分理解しないまま組み立てた。組み立て間違いは、(1)逆止弁をエアー吸入アセンブリー部に取り付けた、(2)患者呼気弁を逆止弁ユニットの本来逆止弁が入る部分に取り付けた、の2つあった。 
バックバルブマスクを主に加圧していた医師や途中で一時交代した医師ともに加圧時の手ごたえは、特に異常は感じ無かった。また、新しいバックバルブマスクに交換した後も、当初の組み立て間違いのものと手ごたえの差は感じなかった。胸郭の動きに関しては、患者の浮腫が強く服も着ていたため、「分からなかった」という意見と「少しあった思う」とする意見に分かれている。
組み立て後の動作確認は、バッグバルブマスクの破損・汚染はないか、酸素を流して(1)リザーバーが、膨らむ(2)バッグを押すと吹出口より送気される(3)バッグ加圧を解除するとリザーバーがしぼむ(4)しばらくするとリザーバーが膨らむ。エアシールマスクの破損・汚染はないか(マスク内の空気入りは良好ですか)であった。しかし、院内手順を順守せず異なる方法で行った。
手順が順守されなかった要因としては、組み立て直後にバックバルブマスクの点検を行った看護師はバックバルブマスクを含む救急カートの点検を行ったことがなく、また正しい点検手順の知識もなかったため、バックバルブマスクを加圧して送気できることを確認しただけであった。その後、別の看護師が救急カートを点検していおり、本来ならこの時点で再度バックバルブマスクの点検が必要だがこの看護師は組み立て直後の点検にも立ち会っていたものですが、点検を実施したかどうかの記憶が曖昧であた。普段の点検においてもマニュアルに定められた「(3)バッグ加圧を解除するとリザーバーがしぼむ」ことは確認していなかった。
バックバルブマスクは救急カートに入れてあり、救急カートは原則1病棟(1部門)に1台配置している。当該病棟は血液内科、無菌室、放射線科の3部門があるため3台の救急カートがあり、そのため3個のバックバルブマスクを在庫していた。今回、組み立て間違いがあったバックバルブマスクは血液内科の救急カートに保管してあったものであり、交換したバックバルブマスクは、無菌室から持って来た救急カートに入っていたものであった。
最終的な改善策は外部委員を含む事故調査委員会で決定することになるが、事故後に全部署のバックバルブマスクの点検を行い、今後洗浄・組み立てが必要な場合は臨床工学部のMEセンターで行う運用とした。 当該事例については、医療機関から事故調査報告書が公開されており、再発防止策として、(1)使用者への教育の充実、(2)当該機器の管理体制の整備、(3)企業に対する情報提供体制の改善が提言されている。
また、当該企業では、本報告書の結果を踏まえ、当該製品の取扱説明書の改訂及び企業ホームーページ上での組み立て方法等の動画配信を実施しているところ。さらに、逆止弁ユニットとエアー吸入アッセンブリ-の弁の色を変更するなどの取組みが予定されている。
12 障害残存の可能性がある(低い) 下平式高周波手術器

電気手術装置 モデル ICC350
オネストメディカル社


アムコ
全身麻酔後砕石位にし、手術室の看護師が下平式高周波手術器(MGI202)に附属している対極板(金属、アース)を左臀部にひいた(同時に電気メス用の対極板も左大腿部に貼る)。医師がリネンを両足、臀下部および下腹部にかけた後、術者が外陰部をマスキンにて消毒し、下平を用いて子宮頚部の円錐切除を施行。やや出血認めたため、バイクリル縫合し、また電気メスにて止血し手術終了となった。全身麻酔覚醒後、ベッド移動の際に左臀部に潰瘍を伴った創部を看護師が発見。 下平式高周波手術器(MGI202)に附属している対極板のあて方(すき間があった可能性)
接地型電気手術器の併用による高周波分流発生の可能性
  1. オメストメディカル社に点検依頼(手術当日)とヒヤリング。
  2. 婦人科腫瘍カンファレンスにて、円錐手術切除は、下平式高周波手術器(電気メス)の安全性が証明されるまで使用不可とした(通知済)
  3. アコム社(電気手術装置 モデル ICC350)にヒヤリング。
当該企業に確認したところ、当該製品の解析の結果、異常は認められず、熱傷の原因は、高周波手術器と電気手術器の併用による高周波分流の可能性が考えられるとのことである。
なお、各々の製品の添付文書の【禁忌・禁止】欄には、高周波分流や漏電の可能性があることから、他の電気手術器との併用を禁止する旨が記載されているところ。
13 障害残存の可能性なし 不明 メディコン 5年前に左鎖骨下静脈に挿入した抗ガン剤治療用の埋め込み型カテーテル(現在は使用していない)のカテーテル部分が切断され、カテーテルの先端部分が左肺動脈内に迷入していた。患者に症状などなかったが、直腸癌フォローアップ目的のCT検査にて事例が発覚。入院の上で、血管内からの治療で抜去することとなった。 本人治療拒否のため抗ガン剤治療を中止した事例で、使用中でない中心静脈カテーテルの状況把握ができていなかった。 本事例は、他院にて抗ガン剤治療を受けていて、しばらく時間がたってから当院へ受診された症例である。ポートを使用していなくても、一度は胸部単純レントゲン写真などをとり、患者の状況を把握するべきであると思われる。 当該事例については、これまで同様事象が集積されていることから、平成23年5月25日付薬食安発0525第1号・薬食機発0525第1号連名通知「皮下用ポート及びカテーテルに係る添付文書の改訂指示等について」が発出されており、当該製品の添付文書においてもカテーテル断裂について注意する旨を記載し、医療機関へ情報提供を行うよう指示されているところ。
14 障害なし バードXポート メディコン 右鎖骨下よりCVポート留置を実施。その翌日より補助化学療法1クール目を開始した。1クール終了後からは、退院し外来化学療法へ移行し、2クール目、3クール目を無事実施終了した。
外来で4クール目を開始するにあたり、ポート穿刺時に生食フラッシュで通らず、注入時にカテーテル周囲の腫脹を疼痛あったため、化療センター当番医の指示にて胸写撮影。カテーテル断裂、先端部の右心房内脱落を認め直ちに入院とした。
緊急アンギオを実施し、右心房内の異物除去(9.2cm長)を行い、CVポート留置術を施行した消化器外科医師のカンファレンスで相談し、断裂した右CVポートの抜去と新たに左内頸よりCVポート留置を実施し、4クール目の化学療法を開始した。
CVポート留置で鎖骨下を通す方法では、カテーテルのピンチオフや断裂は、合併症としてあげられる。
今回事例のカテーテルを業者へ確認してもらった結果、断裂部分がフィッシュマウスを呈していることことから、鎖骨下での圧迫や摩擦により断裂を起こしたと考えられる。
CVポート留置で鎖骨下を通す方法では、カテーテルのピンチオフや断裂は、合併症としてあげられる。今回事例のカテーテルを業者へ確認してもらった結果、断裂部分がフィッシュマウスを呈していることから、鎖骨下での圧迫や摩擦により断裂を起こしたと考えられる。
CVポート留置時には、ピンチオフや断裂をできるだけ回避するために、合併症に対する知識や起こしにくい手技方法を考えて、アプローチしていく必要がある。今回のケースでは、生理食塩水で確認により通らなかったことから、早急に検査を実施したことによりその後の対応がスムーズに実施できている。
CVポートカテーテルのピンチオフや断裂の合併症を最小限にするため、病院研修受講後の登録制により医師の実施許可を出している状況で約3年間発生していなかった。しかし今回の事例を通して、実施者へ再度注意喚起していくと共に合併症を最小限にする知識や技術の向上を図るべく、医師対象にハンズオン研修を開催予定とした。
当該事例については、これまで同様事象が集積されていることから、平成23年5月25日付薬食安発0525第1号・薬食機発0525第1号連名通知「皮下用ポート及びカテーテルに係る添付文書の改訂指示等について」が発出されており、当該製品の添付文書においてもカテーテル断裂について注意する旨を記載し、医療機関へ情報提供を行うよう指示されているところ。
15 障害残存の可能性がある(低い) Qサイト 日本ベクトン・ディッキンソン 深夜帯より、血圧安定せず体位変換やノルアドレナリン交換時にも血圧低下(60‐70mmHg)がみられていた。日勤でノルアドシリンジを交換する際は血圧低下への対処を主治医と相談し、白ルートのノルアドレナリンと共に青ルートより5分間並列投与の指示をもらい、13時に実施。その際、CVの青ルートは生理食塩水を持続投与していたため、ヘパロックしていた茶ルートに生食点滴ラインをつなぎ変えた。直後に青ルートに並列投与のためのノルアト゛レナリン点滴ライン(延長エクステンションチューブ)を接続し、投与開始した。
4分後、血圧57/31mmHgに低下、HR:70台、SpO2測定不可となる。処置の為ベッドサイドにいた主治医がCVラインの根元を確認すると、青ルートに付けていたQサイト(シュアプラグ)部より逆血みられ、Qサイトの何処かより薬液が漏れている状況を発見する。Qサイトを交換し、ノルアドレナリンの投与再開し薬液が流れているのを確認。13:10頃より血圧80台、HR120回/分、SAT90台後半へ回復する。
漏れが見つかったQサイトは2日前に交換して以来、異常なく使用出来ていた。
交換したQサイトを確認したところ、Qサイトの体幹部(本来薬液が漏れる筈のないところ)より薬液の漏出がみられた。
事象が起きた時の、Qサイトの操作時(延長エクステンションチューブを外したり、繋いだりした際)にQサイトが破損した可能性がある。
Qサイトを資材課に提出。業者へ調査を依頼中。 当該事例については企業から薬事法に基づく不具合報告が行われており、解析の結果、セプタムの破損はオスルアーを斜めに接続した、あるいは斜めに引き抜いたことにより発生したものと考えられるとのこと。
なお、当該製品の添付文書には、破損を回避するため、オスルアーをセプタムへ接続する際の注意が図入りで記載されているところ。
16 障害なし バードポート Ti8.0Fr メディコン 大腸癌化学療法後で、CVポートが挿入されていた。外来でCVポートのフラッシュ(月1回)をしたが抵抗があり,逆血もなかった。上級医に相談がありCT撮影を実施し、カテーテルの断裂に気がついた。循環器内科にコンサルトし、インターベンションによるカテーテルの回収をすることとした。 6年前にポートを留置し、最終化学療法日が5年前であり、その後は月1回フラッシュをしていた。これまで順調に使用できていたが、耐久性に問題が出てくる時期だったのではないかと考えられた。 CVポートが不要になった症例においては,可及的速やかに抜去するべきと考えられる。しかし、悪性腫瘍の場合は再発の危険性があり再使用が必要となる可能性もあることから,抜去の判断は難しいと言わざるを得ない。しかし、本例のようなインシデントを周知し,不要となれば可及的に抜去を推進する。 当該事例については、これまで同様事象が集積されていることから、平成23年5月25日付薬食安発0525第1号・薬食機発0525第1号連名通知「皮下用ポート及びカテーテルに係る添付文書の改訂指示等について」が発出されており、当該製品の添付文書においてもカテーテル断裂について注意する旨を記載し、医療機関へ情報提供を行うよう指示されているところ。
 

製造販売業者等により既に対策がとられているもの、もしくは対策を既に検討中の事例(その他)

No. 事例 調査結果
17 【内容】
化学療法目的で2年2ヶ月前に右内頚静脈へ皮下用ポートを留置した。術前検査目的で胸部X線撮影を行ったところ、皮下用ポート及びカテーテル(バードXポートisp グローションカテーテルタイプ)が屈曲部で断裂し、10cm程度のカテーテル先端が左肺動脈内に逸脱していることを放射線科医が発見した。直ちに経カテーテル的に回収した。
【背景・要因】
皮下用ポート留置期間は約800日、留置部位は内頚静脈、化学療法はm-FOLFOX6 を行っていた。皮下用ポート及びカテーテル断裂は合併症の一つであるが、本事例に関するメーカーでの現品調査ではカテーテル断裂の原因の特定には至らなかった。
当該事例については、これまで同様事象が集積されていることから、平成23年5月25日付薬食安発0525第1号・薬食機発0525第1号連名通知「皮下用ポート及びカテーテルに係る添付文書の改訂指示等について」が発出されており、当該製品の添付文書においてもカテーテル断裂について注意する旨を記載し、医療機関へ情報提供を行うよう指示されているところ。