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ウロビジョン DNA FISHプローブキット


作成・改訂年月
薬効分類名
一般的注意事項
承認・届出等
販売名ウロビジョン DNA FISHプローブキット
添付文書管理コード
製造販売承認番号
承認・認証年月等
一般的名称
一般的名称
警告
重要な基本的注意
全般的な注意
形状・構造等(キットの構成)
使用目的
測定原理
操作上の注意
測定試料の性質、採取法
妨害物質・妨害薬剤
用法・用量(操作方法)
試薬の調製方法
必要な器具・器材・試料等
測定(操作)法
測定結果の判定法
臨床的意義
性能
使用上又は取扱い上の注意
取扱い上(危険防止)の注意
使用上の注意
廃棄上の注意
その他
貯蔵方法、有効期間
貯蔵方法
有効期間
包装単位
主要文献
主要文献
製造販売業者の氏名又は名称及び住所*
氏名又は名称(製造販売業の種別)
住所等
電話番号
問い合わせ先
氏名又は名称
住所等
電話番号
その他の安全性情報
備考

新規追加項目

ウロビジョン DNA FISHプローブキット


作成・改訂年月

*2019年12月改訂(第2版)

2017年5月作成(第1版)

薬効分類名

体外診断用医薬品

一般的注意事項

この添付文書をよく読んでから使用してください。

承認・届出等

販売名

ウロビジョン DNA FISHプローブキット

添付文書管理コード

22900EZX00021000_A_01

製造販売承認番号

22900EZX00021000

承認・認証年月等

平成29年5月

一般的名称

一般的名称
99999999
新規追加項目

警告

(記載なし)

重要な基本的注意

(記載なし)

全般的な注意

1.
本製品は体外診断用であり、それ以外の目的に使用しないこと。

2.
診断は、他の関連する検査結果や臨床症状等に基づいて総合的に判断すること。

3.
添付文書に記載された使用方法に従って使用すること。本添付文書に記載された使用方法および使用目的以外での使用については、測定結果の信頼性は保証しない。

4.
本測定で使用する試薬類には、ヒト由来成分が含まれているものがあり、感染の危険があるので感染性のあるものとして取り扱うこと。詳細は、【形状・構造等(キットの構成)】または【用法・用量(操作方法)】を参照のこと。

5.
使用する機器の添付文書および取扱説明書をよく読んでから使用すること。

形状・構造等(キットの構成)

1. ウロビジョン DNA FISHプローブ
CEP 3スペクトラムレッドDNAプローブ
CEP 7スペクトラムグリーンDNAプローブ
CEP 17スペクトラムアクアDNAプローブ
LSI 9p21スペクトラムゴールドDNAプローブ
(他の含有物:デキストラン硫酸、ホルムアミド、SSC、ブロッキングDNA(ヒト由来))

2. DAPI II対比染色液
(主な含有物:緩衝液、DAPI(4’,6- ジアミジノ-2-フェニルインドール)、1,4-フェニレンジアミン、グリセロール)

3. NP-40
(主な含有物:NP-40(非イオン性界面活性剤))

4. 20×SSC塩
(主な含有物:塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム)

使用目的

尿中細胞の3番、7番及び17番染色体の異数倍数体、並びに9p21遺伝子座の欠失の検出(膀胱癌の再発の診断補助)

測定原理

本キットは、FISH(Fluorescence in situ hybridization)法により尿中細胞の3番、7番及び17番染色体の異数倍数体、並びに9p21遺伝子座の欠失の検出をするためのものである。
in situ ハイブリダイゼーションは細胞標本における固有核酸配列を可視化する技術であり、特にDNA FISHは蛍光標識された一本鎖DNAプローブの相補的ターゲット配列への正確なアニーリングを必要とする。細胞のDNA部位とプローブとのハイブリダイゼーション結果は蛍光顕微鏡を用いて直接的に観察することができる。
本キットに含まれるプローブは、尿検体のスライド標本に対するFISH法に用いる蛍光標識した核酸プローブで、3番、7番、9番、17番染色体上の特異的な領域とホモロジーを持つ4色4種のプローブ配列の混合液である。この混合液は、3番染色体のセントロメア領域を認識するプローブと蛍光標識を結合させたCEP 3スペクトラムレッド(赤色)、同様に7番染色体を認識するCEP 7スペクトラムグリーン(緑色)、17番染色体を認識するCEP 17スペクトラムアクア(青緑色)並びに9番染色体のp16(CDKN2A)領域を認識するLSI 9p21スペクトラムゴールド(金色)からなる。これらのプローブは使いやすいように前もってハイブリダイゼーション緩衝液中に混和・変性されており、非特異反応を抑えるためのブロッキングDNAも含んでいる。これらを用いたハイブリダイゼーション・可視化(蛍光顕微鏡)により、染色体コピー数に関する情報を得ることができる。

操作上の注意

測定試料の性質、採取法

検体採取および輸送
本キットは検体として自然尿を使用する。医療機関で33 mL以上の尿を採取し、尿と保存剤を2:1(v:v)の割合で混和する。保存剤はカーボワックス(50%エタノール、2%ポリエチレングリコール)またはPreservCytを推奨する。混和した検体を、50 mL遠心チューブまたは密封可能なプラスチック容器に移す。他の種類の保存剤を使用する場合は、各施設において有効性を検証すること。採取後すぐに検査施設に輸送しない場合は、直ちに冷蔵して24時間以内に輸送すること。
冷蔵で保存し、輸送時は保冷剤と共に輸送することを推奨するが、25℃以下で保存または輸送することもできる。保存剤としてカーボワックスまたはPreservCytを使用し、上記の条件で輸送、保存した検体は1週間安定であるが、採取から72時間以内に固定済み細胞ペレット(【用法・用量(操作方法)】 測定(操作)法 2.検体の処理と調製 (1)検体の処理 ステップ7)参照)の状態まで処理しておくことを推奨する。上記以外の条件で検体を取り扱う場合は、各施設において取扱い条件を検討し、本キットに適していることを検証すること。

妨害物質・妨害薬剤

健康成人の自然尿プール3例(男性1例、女性1例、男女混合1例)に表1に示した物質を添加した後、本キットを用いて測定を行い、干渉物質の影響を評価した。尿プールに各物質を添加したサンプルをそれぞれ2例ずつ調製し(すなわち各物質につき6例のサンプル)、各サンプルの細胞を連続的に25個計数した結果、すべての検体が陰性であり(すなわち異常細胞4個未満、本添付文書の定義による)、評価したいずれの物質についても測定結果への影響は認められなかった。物質名および各物質の試験濃度のうち最も高い濃度を表1に示す。同様の検討を膀胱癌患者の尿検体で行うには、各条件で試験を実施できる程十分な数の細胞が必要となるが、大量の尿を得ることは難しいため、形態学的異常細胞を含む検体での干渉物質の検討は行っていない。

表1 試験物質

物質 濃度 
尿中に含まれる可能性のある成分 
アルブミン 1.0g/dL 
アスコルビン酸 5g/dL 
ビリルビン(非抱合型) 2mg/mL 
ヘモグロビン 100mg/mL 
IgG 10mg/dL 
赤血球(ヒト) 1 × 106 cells/mL 
白血球(ヒト) 1 × 106 cells/mL 
塩化ナトリウム 730mg/dL 
尿酸 250mg/dL 
カフェイン 117mg/dL 
エタノール 1%(v/v) 
ニコチン 28mg/dL 
尿中に混入する可能性のある微生物 
Candida albicans 2.5 × 1010 CFU/mL 
Escherichia coli 2.5 × 1010 CFU/mL 
Pseudomonas aerugenosa 2.5 × 1012 CFU/mL 
薬剤 
アセトアミノフェン 5.2g/dL 
アセチルサリチル酸 5.2g/dL 
アンピシリン 600mg/dL 
BCG 20mg/dL 
塩酸ドキソルビシン 10mg/dL 
マイトマイシンC 10mg/dL 
ニトロフラントイン 50mg/dL 
塩酸フェナゾピリジン 200mg/dL 
チオテパ 10mg/dL 
Trimethoprin 50mg/dL 
保存剤 
カーボワックス (50%エタノール、2%ポリエチレングリコール)
(尿33 mLに保存剤17 mLを添加) 
UroCor, Inc. 固定液 尿と50:50に混合 
CytoRichRed (Autocyte) 尿と50:50に混合 
Saccamono's solution 尿と50:50に混合 
PreservCyt溶液 (Hologic) 尿と50:50に混合 
100%エタノール 尿と50:50に混合 

用法・用量(操作方法)

試薬の調製方法

1. ウロビジョンDNA FISHプローブ
そのまま用いる。

2. DAPI II対比染色液
そのまま用いる。

3. NP-40
そのまま用いる。
なお、使用時には、2×SSC溶液及び0.4×SSC溶液でそれぞれ0.3%及び0.1%とする。

4. 20×SSC塩
精製水に溶解して、20×SSC溶液とする。
なお、使用時には、精製水で2×SSC溶液及び0.4×SSC溶液とする。

必要な器具・器材・試料等

1. コントロールスライドおよび試薬
・プローブチェック ウロビジョン コントロールスライド
(ProbeChek UroVysion Bladder Cancer Kit Control Slides)
(製品番号:2J27-11)

スライド3枚(スライド1枚につき陽性ターゲットエリア1個、陰性ターゲットエリア1個)
(主な含有物:スライドグラス上に固定したヒト男性正常リンパ芽球培養細胞(GM11854、陰性ターゲット)およびヒト膀胱癌培養細胞(UM-UC-3、陽性ターゲット))


・FISHプレトリートメントキット(ウロビジョン DNA FISHプローブキット用)
(Vysis FISH Pretreatment Reagent Kit)
(製品番号:2J03-32)

・プロテアーゼ(Vysis Protease)25 mg×3

ペプシン活性:1:3000〜1:3500
注:ペプシンはその重量の3000〜3500倍の凝固卵白アルブミンを分解する。


・プロテアーゼ緩衝液(Vysis Pepsin Buffer)50 mL×3

10 mM塩酸


・PBS(Vysis PBS)250 mL×2

1×PBS


100×塩化マグネシウム(Vysis 100X MgCl2)0.5 mL×3

2 mol/L 塩化マグネシウム


・20×SSC塩(Vysis 20X SSC)66 g


・10%中性緩衝ホルマリン溶液

・カルノア固定液(メタノールと氷酢酸を3:1(v:v)で混合):使用日ごとに調製する。

・蛍光顕微鏡油浸オイル:15〜30℃で保存する。

・エタノール(100%):室温で保存する。

・濃塩酸(12N)

・1N水酸化ナトリウム

・精製水(Milli-Q水):室温で保存する。

・ペーパーボンド

・ホルムアミド(特級)

・カーボワックス(50%エタノール、2%ポリエチレングリコール)

・ThinPrep PreservCyt溶液、Hologic社

2. 器具・装置
・カバーグラス(12 mm円形、18 mm正方形を推奨)

・スライドグラス(12穴6 mm円形ウェル)

・微量ピペット(1〜10 μL、20〜200 μL)および清浄なピペットチップ

・コニカル型遠心チューブ(15 mL、50 mL)

・タイマー(±1秒)

・マグネティックスターラー

・ボルテックスミキサー

・マイクロ遠心機

・卓上遠心機

・メスシリンダー

・温浴槽(37±1℃、73±1℃)

・ハイブリダイゼーション用湿潤箱

・気相恒温槽(インキュベーター)(37±1℃)

・ピンセット

・コプリンジャー(5枚用)10個

・100 W水銀ランプおよび適切なフィルターを装着した落射型蛍光顕微鏡

推奨フィルター:

・イエロー(ゴールド)シングルバンドパス(Yellow(Gold)single-bandpass)

・アクアシングルバンドパス(Aqua single-bandpass)

・DAPIシングルバンドパス(DAPI single-bandpass)

・グリーン/レッドデュアルバンドパス(Green/Red dual-bandpass)


・20倍の対物レンズを装着した位相差顕微鏡

・pHメーター、pH試験紙

・較正済み温度計

・濾過用フィルターユニット(ポアサイズ:0.45 μm)

・乾燥剤

・自動共変性装置(オプション)

・ThermoBrite:機器の取扱説明書を参照すること。


・自動前処理装置(オプション)

・VP 2000プロセッサー:機器の取扱説明書を参照すること。


3. 顕微鏡装置および付属品
顕微鏡:

ハイブリダイゼーションの結果を観察するには落射型の蛍光顕微鏡が必要である。施設が所有している蛍光顕微鏡を使用する場合は、その顕微鏡が蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)検体の観察に適していることをあらかじめ確認しておく必要がある。一般的なDNA染色、例えばDAPI、ヨウ化プロピジウムおよびキナクリンに使われる顕微鏡はFISH測定には適さないことがある。顕微鏡はいつも清潔に保ち、製造業者による定期的なメンテナンスを受けることを推奨する。
注:一般的にFISH測定に失敗した場合、試薬の不具合が原因として疑われることがあるが、実際の原因は蛍光顕微鏡の不具合や不適切な使用方法、誤ったフィルターの使用などであって、ハイブリダイゼーション自体は成功している例が多い。

励起光の光源:

励起光ランプの光によって蛍光物質が励起され蛍光を発する。至適な状態で画像を観察するには、励起光ランプを適切に調整しておく必要がある。励起光の光源として最大約200時間の寿命のある100 W水銀ランプを推奨する。ランプの積算使用時間を記録し、定格寿命を超える前に交換すること。

対物レンズ:

対物レンズは視野の明るさ、解像度、画質全般に大きく影響する。100 Wの水銀ランプ付の顕微鏡を使用するときは、開口数が0.75以上の油浸蛍光対物レンズを使用する。40倍の対物レンズに10倍の接眼レンズを取り付けたタイプが、検体のスキャニングに適している。FISHの解析およびシグナルの計数には、60倍、63倍、100 倍のいずれかの油浸用アクロマート対物レンズを用いる。

油浸用オイル:

油浸用対物レンズに用いるオイルは、低自家蛍光の蛍光顕微鏡用のものを使用する。

フィルター:

以下はほとんどの顕微鏡で使用可能で、CEPおよびLSI DNAプローブキット用に至適化された弊社の蛍光顕微鏡用フィルターセットである。他のフィルターを使用する場合は、本キットに対する性能を確認、検証してから使用すること。

本キットに推奨されるフィルター
・イエロー(ゴールド)シングルバンドパス(Yellow(Gold)single-bandpass)

・アクアシングルバンドパス(Aqua single-bandpass)

・DAPIシングルバンドパス(DAPI single-bandpass)

・グリーン/レッドデュアルバンドパス(Green/Red dual-bandpass)


各プローブで標識された箇所が発する蛍光はそれぞれ、LSI 9p21プローブがゴールド(イエロー)、CEP 3プローブがレッド、CEP 7プローブがグリーン、CEP 17プローブがアクアである。その他の核DNAはDAPI染色によりブルーの蛍光を発する。

測定(操作)法

1. スライドの前処理

(1)
スライドを乾燥させる。

(2)
プロテアーゼ溶液にスライドを浸漬する。

(3)
1%ホルムアルデヒド溶液でスライドを固定する。

(4)
エタノールでスライドを脱水し、乾燥させる。


2. ハイブリダイゼーション

A.用手法
(1)
73±1℃で5±1分間、変性溶液にスライドを浸漬し、検体DNAを変性させる。

(2)
エタノールでスライドを脱水する。

(3)
3 μLのウロビジョンDNA FISHプローブをスライドに添加する。

(4)
37±1℃で一晩(約16時間)インキュベーションする。

B.自動処理操作(共変性法)
(1)
3 μLのウロビジョンDNA FISHプローブをスライドに添加する。

(2)
76℃で3分間変性し、39℃で14〜18時間ハイブリダイゼーションする。


3. ハイブリダイゼーション後のスライド洗浄

(1)
73±1℃で2分間、0.4×SSC/0.3%NP-40にスライドを浸漬する。

(2)
15〜30℃で5秒〜1分間、2×SSC/0.1%NP-40にスライドを浸漬する。

(3)
遮光した状態でスライドを乾かす。

(4)
10 μLのDAPI II対比染色液をスライドに添加する。


4. 検体スライドの評価

(1)
蛍光顕微鏡で形態学的異常細胞25個について4つのプローブのシグナル数を計数する。

(2)
25個の形態学的異常細胞を解析した後、以下の基準のいずれかに該当した場合、解析を終了し陽性と報告する。

・25個中4個以上の細胞で、細胞内の2種類以上の染色体(3番、7番又は17番)の増加が見られる。

・25個中12個以上の細胞で、9p21シグナルが2つとも欠失している。


(3)
当てはまらない場合は以下のいずれかを満たすまで解析を継続する。

・染色体が増加した細胞を4個検出した。

・9p21シグナルが2つとも欠失している細胞を12個検出した。

・サンプル全体の解析を終えた。


1.試薬の調製

(1) 1%ホルムアルデヒド溶液
以下を混合する。

12.5 mL 10%中性緩衝ホルマリン溶液
37 mL 1×PBS
0.5 mL 100×塩化マグネシウム(FISHプレトリートメントキットから1本使用)
50 mL 全量


十分に攪拌した後、溶液をコプリンジャーに入れる。1週間使用した溶液は廃棄する。未使用の溶液は、2〜8℃で6ヶ月間保存できる。

(2) 20×SSC溶液(3 mol/L塩化ナトリウム、0.3 mol/Lクエン酸ナトリウム、pH 5.3)
以下を混合し、20×SSC溶液 pH 5.3を調製する。

66 g 20×SSC塩
200 mL 精製水
250 mL 全量


十分に攪拌した後、pHメーターを使用して室温でpHを測定し、濃塩酸でpH 5.3に調整する。精製水で全量250 mLとする。ポアサイズ0.45 μmのフィルターでろ過する。室温で6ヶ月間保存できる。

(3) 変性溶液(70%ホルムアミド/2×SSC、pH 7.0〜8.0)
注:ThermoBriteで自動処理(共変性法)する場合は不要である。
以下を混合し、変性溶液を調製する。

49 mL ホルムアミド
7 mL 20×SSC溶液、pH 5.3
14 mL 精製水
70 mL 全量



十分に攪拌する。pH試験紙を使用して室温でpHを測定し、pH 7.0〜8.0であることを確認する。調製後は1週間使用できる。使用前に毎回pHを確認すること。使用しないときは、密栓容器に入れて2〜8℃で保存する。

(4) エタノール洗浄液
100%エタノールと精製水を用いて、70%および85%(v/v)エタノール溶液を調製する。これらのエタノール溶液は、蒸発していない場合、または何度も使用して溶液が希釈されていない場合に限り、1週間使用可能である。使用しないときは、密栓容器に入れて室温で保存する。

(5) 0.4×SSC/0.3%NP-40
以下を混合して調製する。

20 mL 20×SSC溶液、pH 5.3
877 mL 精製水
3 mL NP-40
1000 mL 全量



十分に攪拌した後、pHメーターを使用して室温でpHを測定する。1N水酸化ナトリウムで、pH 7.5±0.2に調整する。精製水で全量1 Lとする。ポアサイズ0.45 μmのフィルターでろ過する。使用した溶液は、使用日ごとに廃棄する。未使用の溶液は、室温で6ヶ月間保存できる。

(6) 2×SSC/0.1%NP-40
以下を混合して調製する。

100 mL 20×SSC溶液、pH 5.3
849 mL 精製水
1 mL NP-40
1000 mL 全量


十分に攪拌した後、pHメーターを使用して室温でpHを測定する。1N水酸化ナトリウムで、pH 7.0±0.2に調整する。精製水で全量1 Lとする。ポアサイズ0.45 μmのフィルターでろ過する。使用した溶液は、使用日ごとに廃棄する。未使用の溶液は、室温で6ヶ月間保存できる。


2.検体の処理と調製

(1) 検体の処理

1)
50 mL遠心チューブに入れた尿検体を600×gで10分間、15〜30℃で遠心分離する。

2)
細胞ペレットと上清を約1〜2 mL残し、ペレットが崩れないように注意しながら上清を捨てる。

3)
残した上清1〜2 mLに細胞ペレットを再懸濁してから、懸濁液をコニカル型15 mL遠心チューブに移す。10 mLの1×PBSで50 mL遠心チューブを洗い、洗った後の溶液を15 mL遠心チューブに移す。
注:同一患者検体の細胞ペレットは足して混ぜてもよい。

4)
検体を600×gで10分間、15〜30℃で遠心分離する。

5)
細胞ペレットと上清を約0.5 mL残し、上清を捨てる。

6)
残した上清0.5 mLに細胞ペレットを再懸濁する。調製したての固定液(メタノールと酢酸を3:1(v:v)で混合)1〜5 mLを徐々に添加する。最初は、よく攪拌しながら少しずつ滴下すること。

7)
固定した検体を-20℃に最低30分間置く。
注:この状態で一晩、あるいはそれ以上(10日間まで)保存することができる。

8)
検体を600×gで5分間、15〜30℃で遠心分離する。注意しながら上清を捨てる。
注:ペレットが見えない、またはわずかしか見えない場合は、細胞の流出を避けるためこの後さらに洗浄することは推奨しない。そのまま、ステップ11)に進むこと。検体を一晩以上放置した場合は、スライド作製の前に新しく調製した固定液に懸濁する。

9)
1〜5 mLの固定液にペレットを再懸濁し、洗浄する。

10)
検体を600×gで5分間、15〜30℃で遠心分離する。ステップ8)と9)を2回繰り返す。

11)
固定液に懸濁した細胞を遠心分離した後:

細胞ペレットが非常に小さくほとんど見えない場合は、上清が100 μLになるまで慎重に可能な限り固定液を取り除く。

・細胞ペレットがはっきり見える場合は、可能な限り固定液を取り除いた後、新しい固定液を0.5〜1 mL添加する。


12)
直ちにスライドの調製を行う。


(2) スライドの調製
12穴スライドを使用する。

1)
細胞ペレットを再懸濁し、3つのスライドウェル(ウェル番号1、2、3)にそれぞれ3 μL、10 μL、30 μLの細胞懸濁液を滴下する。

2)
サンプルを風乾する。

3)
20倍の対物レンズを使い、位相差顕微鏡でスライドを観察する。

4)
細胞の密度を確認し、ハイブリダイゼーションを行うウェル(ウェル番号1、2、3のいずれか)を選択する。視野の中に細胞が100〜200個見えるウェルがハイブリダイゼーションに適している。

・細胞懸濁液の量がもっとも多い3番のウェルでも細胞密度が低い場合(視野の中の細胞が50個未満)は、さらに30 μLの細胞懸濁液を3番のウェルに滴下する。風乾させた後、位相差顕微鏡でスライドを観察する。必要に応じてこのステップを繰り返す。

細胞懸濁液の量がもっとも少ない1番のウェルでも細胞密度が高い場合(視野の中の細胞が400個超)は、細胞懸濁液を固定液で希釈し、ステップ1)〜4)を繰り返す。
注:細胞の破片などが多い場合は、再度前処理を行ってからハイブリダイゼーションを行うウェルを選択する。


5)
上記 ステップ1)〜4)に従って、少なくとも1枚予備のスライドを作製しておくこと。予備のスライドは乾燥剤入りの容器に入れて-20℃で保存する。
注:固定したスライドは-20℃で12ヶ月間保存できる。残った細胞懸濁液は、スライド作製がさらに必要になった場合に備えて保存しておく。-20℃で1ヶ月間保存できる。


(3) スライドの前処理
スライドは本キットによる染色操作の前に前処理して固定する必要がある。
FISHプレトリートメントキットの使用方法は以下のとおりである。

1)プロテアーゼ溶液
プロテアーゼ緩衝液ボトルを1本(50 mL)、37±1℃の温浴槽で加温する。使用する直前に、プロテアーゼ緩衝液の温度が37±1℃になっていることを確認してから、プロテアーゼ25 mg(1本)を加えてプロテアーゼ溶液とする。キャップを閉めて、穏やかに数回転倒混和する。プロテアーゼ溶液をコプリンジャーに入れる。1日経過した後は廃棄すること。

2)1%ホルムアルデヒド溶液
10%中性緩衝ホルマリン溶液12.5 mL、1×PBS 37 mL、100×塩化マグネシウム0.5 mL(1本)を混合する。1%ホルムアルデヒド溶液をコプリンジャーに入れる。室温で使用する。1週間経過した後は廃棄すること。使用しないときは、2〜8℃で保存すること。

3)エタノール洗浄液
100%エタノールと精製水を用いて、70%、85%(v/v)エタノール溶液を調製する。コプリンジャーに入れて室温で使用する。これらのエタノール溶液は、蒸発していない場合、または何度も使用して溶液が希釈されていない場合に限り、1週間使用可能である。使用しないときは、室温で密栓容器にて保存する。

4)1×PBS
コプリンジャーに1×PBSを入れる。室温で使用する。1日経過した後は廃棄すること。

5)20×SSC溶液
FISHプレトリートメントキットの20×SSC塩66 gと精製水200 mLを混合する。十分に攪拌した後、pHメーターを使用して室温でpHを測定し、濃塩酸でpH 5.3に調整する。精製水で全量250 mLとする。ポアサイズ0.45 μmのフィルターでろ過する。室温で6ヶ月間保存できる。

6)2×SSC溶液
20×SSC溶液100 mLと精製水850 mLを混合する。十分に攪拌した後、pHメーターを使用して室温でpHを測定し、pH 7.0〜7.5に調整する。精製水で全量1000 mLとする。ポアサイズ0.45 μmのフィルターでろ過する。1日経過した後は廃棄すること。未使用の溶液は、室温で6ヶ月間保存できる。

マニュアル前処理 自動前処理(オプション) 
・検体スライドを室温で完全に乾燥させる。 ・検体スライドを室温で完全に乾燥させる。 
・73±1℃の2×SSC溶液に2分間(2〜2.5分間)浸漬する。 ・73±1℃の2×SSC溶液に2分間(2〜2.5分間)浸漬する。 
・37±1℃のプロテアーゼ溶液に10分間(±1分間)浸漬する。 ・37±1℃のプロテアーゼ溶液に10分間(±1分間)浸漬する。 
・室温の1×PBSで5分間(±1分間)洗う。 ・室温の1×PBSで5分間(±1分間)洗う。 
・室温の1%ホルムアルデヒド溶液で5分間(±1分間)固定する。 ・室温の1%ホルムアルデヒド溶液で5分間(±1分間)固定する。 
・室温の1×PBSで5分間(±1分間)洗う。 ・室温の1×PBSで5分間(±1分間)洗う。 
・室温の70%エタノールに浸漬して脱水する。スライドは少なくとも1分間、エタノール中に立てた状態にしておく。同じ操作を、85%エタノール、続いて100%エタノールで繰り返す。 ・室温の70%エタノールに浸漬して脱水する。スライドは少なくとも1分間、エタノール中に立てた状態にしておく。同じ操作を、85%エタノール、続いて100%エタノールで繰り返す。 
・スライドを完全に乾燥させる。 ・スライドを25℃(air-drying station中)で3分間、あるいは完全に乾くまで乾燥させる。 
・本キットによる処理に進む。 ・本キットによる処理に進む。 


3.FISH操作(本キットによる処理)
マニュアル操作

(ThermoBriteを使用する自動処理(共変性法)の操作法については次項参照)
注:プローブの準備(プローブの準備 ステップ1)〜3))は、検体DNAを変性する(検体DNAの変性 ステップ1)〜7))タイミングに合わせて行い、ハイブリダイゼーション開始時にプローブの準備と検体DNAの変性が同時に終わるようにすること。

(1) 検体DNAの変性

1) 検体スライドの処理前に、37±1℃のインキュベーター内で湿潤箱(気密性容器の側面に約2.5 cm×7.5 cm角の吸水させた吸取紙やペーパータオルをテープで貼ったもの)を37±1℃になるまで予備加温する。湿潤箱の吸取紙やペーパータオルは毎回使用するごとに吸水させること。
2) 変性溶液をコプリンジャーに入れ、73±1℃の温浴槽に少なくとも30分間置くか、溶液が73±1℃になるまで温浴槽で加温する。使用前に溶液温度を確かめること。
注:変性溶液が2〜8℃で保存されていた場合は、温浴槽に入れる前に、溶液とコプリンジャーが室温になるまで待つこと。

3) 検体スライドを73±1℃の変性溶液の入ったコプリンジャーに5分間(±1分間)浸漬し、検体DNAを変性させる。スライドはコプリンジャー1個につき4枚入れる。一度に4枚を超えるスライドを入れないこと。また、スライドが4枚より少ない場合は、合計4枚になるようブランクのスライドを追加すること。
注:毎回、使用前にコプリンジャー内の溶液の温度を確認すること。

4) ピンセットを使って、検体スライドを変性溶液から取り出し、すぐに室温の70%エタノールに入れる。ホルムアミドを除くためにスライドを振盪する。スライドは少なくとも1分間、エタノール中に立てておく。
5) 検体スライドを70%エタノールから取り出す。ステップ4)の操作を、85%エタノール、100%エタノールで繰り返す。
6) 検体スライドグラスの下端をペーパータオルに付けてエタノールを取り除き、スライドグラスの裏側をペーパータオルで拭く。
7) 検体スライドを45〜50℃のスライドウォーマーで乾燥させる。乾燥は2分以内とする。


(2) プローブの準備

1)
プローブを-20℃から取り出し、室温に戻す。ボルテックスミキサーで混和する。各々のチューブを卓上遠心機で1〜3秒遠心して、溶液をチューブの底に落とし、再びボルテックスミキサーで穏やかに混和する。

2)
プローブ溶液を73±1℃の温浴槽で5分間加温する。

3)
プローブ溶液を45〜50℃のスライドウォーマーに置く。


(3) ハイブリダイゼーション

1)
選択した検体スライドのターゲットエリアに3 μLのプローブ溶液を添加し、ただちに、12 mm円形カバーグラスを被せる。プローブ溶液がカバーグラス全体に均一に広がるように、慎重にカバーグラスを軽く押す。ハイブリダイゼーションの妨げとなるため、泡が入らないよう注意する。残ったプローブ溶液は直ちに-20℃の保存場所に戻す。

2)
ペーパーボンドでカバーグラスをシールする:ペーパーボンドがカバーグラスとスライドの両方にかかるようにしながら、カバーグラスの外周に少しずつペーパーボンドを押し出してシールする。

3)
前もって加温した湿潤箱に検体スライドを入れ、蓋をして37±1℃のインキュベーターで一晩(約16時間)ハイブリダイゼーションを行う。

4)
ハイブリダイゼーション後のスライド洗浄に進む。


自動処理操作

(ThermoBriteを使用する共変性法、オプション)

(1) プローブの調製と添加

1)
プローブを-20℃から取り出し、15〜30℃に戻す。ボルテックスミキサーで混和する。各々のチューブを卓上遠心機で1〜3 秒遠心して、溶液をチューブの底に落とし、再びボルテックスミキサーで穏やかに混和する。

2)
選択した検体スライドのターゲットエリアに3 μLのプローブ溶液を添加し、直ちに、12 mmの円形カバーグラスを被せる。プローブ溶液がカバーグラス全体に均一に広がるように、慎重にカバーグラスを軽く押す。ハイブリダイゼーションの妨げとなるため、泡が入らないよう注意する。残ったプローブ溶液は直ちに-20℃の保存場所に戻す。

3)
ペーパーボンドでカバーグラスをシールする:ペーパーボンドがカバーグラスとスライドの両方にかかるようにしながら、カバーグラスの外周に少しずつペーパーボンドを押し出してシールする。


(2) ThermoBrite上での検体DNAの変性とハイブリダイゼーション

1)
humidity card 2枚を水で湿らせて、蓋のクリップにセットする。humidity cardはそれぞれ8〜10 mLの蒸留水または脱イオン水で湿らせること。humidity cardを次回再使用する場合は、ThermoBriteの取扱説明書を参照すること。

2)
ThermoBriteをオンにする。

3)
プログラムを変性温度(Denat Temp)76℃、変性時間(Denat Time)3分間、ハイブリダイゼーション温度(Hyb Temp)39℃、ハイブリダイゼーション時間(Hyb Time)14〜18時間にセットする。

4)
画面に指示が出たら、スライドを機器のヒーティング面に置く。スライドが平らな状態で所定の位置に置かれていることを確認する。

5)
ThermoBriteの蓋を閉め、プログラムを開始する。


(3) ハイブリダイゼーション後のスライド洗浄(マニュアル操作および自動処理操作)

1)
洗浄を開始する30分前に、コプリンジャーに0.4×SSC/0.3%NP-40を入れて73±1℃の温浴槽で加温する。スライドの洗浄を開始する前に、較正済みの温度計を使用してコプリンジャー内の溶液の温度が73±1℃になっていることを確認する。

2)
別のコプリンジャーに2×SSC/0.1%NP-40を入れて室温に置いておく。いずれの溶液も1日使用した後は廃棄すること。

3)
スライドからペーパーボンドとカバーグラスを取り除く。
注:ペーパーボンドとカバーグラスは取り除く操作はスライド1枚ずつ行い、取り除いた後は直ちに0.4×SSC/0.3%NP-40の入ったコプリンジャーに入れること。

4)
カバーグラスを外したスライドは直ちに0.4×SSC/0.3%NP-40の入ったコプリンジャーに入れる。スライドがすべてコプリンジャーに入ったら(コプリンジャー1個に4枚まで)、73±1℃で2分間インキュベーションする。コプリンジャーには一度に4枚を超えるスライドを入れないこと。また、スライドが4枚より少ない場合は、合計4枚になるようにブランクのスライドを追加すること。
注:スライドをコプリンジャーに入れる操作は2〜3秒以内に行うこと。もしこれより長くかかった場合は、スライドが2分間を超えて洗浄液に浸かることのないよう注意すること。続けてスライドを洗浄する場合は、スライドを取り出した後コプリンジャーを73±1℃まで再び加温する。

5)
2分後にスライドを洗浄液から取り出し、室温の2×SSC/0.1%NP-40が入っているコプリンジャーに入れる。5秒間〜1分間インキュベーションする。

6)
スライドを洗浄液から取り出し、遮光した状態で(引き出しの中など)ペーパータオル上で立てかけて完全に乾かす。

7)
10 μLのDAPI II対比染色液をスライドのターゲットエリアに添加し、泡が入らないように注意してカバーグラス(18 mm正方形を推奨)を被せる。スライドはシグナル計数まで遮光して保存する。


(4) スライドの保存
ハイブリダイゼーション後のスライド(カバーグラスを被せた状態)は、遮光して-20℃で保存する。蛍光顕微鏡で観察する前に、スライドを-20℃の保存場所から取り出して室温に戻す。

(5) シグナル解析の準備
本キットのプローブのシグナルとDAPI染色の結果は以下のフィルターを使用して観察する。

・DAPIシングルバンドパス(DAPI single-bandpass)

・アクアシングルバンドパス(Aqua single-bandpass、17番染色体)

・イエロー(ゴールド)シングルバンドパス(Yellow(Gold)single-bandpass、9p21遺伝子座)

・グリーン/レッドデュアルバンドパス(Green/Red dual-bandpass、3番および7番染色体)

100 Wの水銀ランプを装着した落射型蛍光顕微鏡を使用することを強く推奨する。DAPI対比染色液により、細胞の核は明るいブルーの蛍光に染色される。

(6) 検体スライドの解析

1)
上記のフィルターを使用し、倍率400倍でターゲットエリアをスキャンする(シグナルの計数は倍率600倍または1000倍で行う、ステップ5)参照)。

2)
焦点深度を合わせて、ターゲットシグナルのサイズ、形状やノイズ(破片など)を確認する。

3)
ターゲットエリアの左上から見始め、横方向に移動しながら、同じエリアが入らないように徐々に下に下がっていく(下図参照)。
注:スライド1枚は視野70〜80個分に相当する。




4)
以下の基準(図1参照)に従って、悪性(形態学的異常)の疑いがある細胞を選定する。

a.
核サイズが大きい

b.
核形状が不規則

c.
DAPI染色が不均一

d.
細胞のクラスター(クラスター内で重なり合っている細胞は計数しないこと)

注:形態学的に異常な細胞からシグナルのカウントを始めること。形態学的に異常な細胞がほとんどない場合は、最も大きな細胞、あるいは最も核の大きな細胞を選択する。形態学的に異常な細胞がすぐに見つからない場合は、スライドを全体に渡ってスキャンし、形態学的にもっとも異常な細胞の核からシグナルを計数する。

図1 細胞選択基準


5)
倍率を600倍、1000倍へと上げていく。核内のすべてのシグナルが確認できるよう、焦点を上下させること。

6)
形態学的異常細胞25個について、前述のフィルターを使用して4つのプローブのシグナル数を計数する(図 2、3、4参照)。

7)
以下のいずれかの染色体パターンがあった場合にのみ記録する。

・3番(レッド)、7番(グリーン)、17番染色体(アクア)のうち、2種類以上の染色体数が多い(シグナルが3個以上ある)

・9p21遺伝子座が2つとも欠失している


3番、7番、17番染色体のシグナルのいずれかが2つともない場合は、ハイブリダイゼーションが失敗している可能性があるため、該当する細胞はシグナルの計数に使用しないこと。
注:周囲の細胞が上記のような異常な染色体パターンを示している場合は、たとえ形態学的異常がなくても記録すること。




※形態学的に異常な細胞がすぐに見つからない場合は、スライドを全体に渡ってスキャンし、形態学的にもっとも異常な細胞の核からシグナルを計数する。

8)
形態学的な異常が見られた細胞の合計数を記録する(2倍体および異常)。
注:2倍体ではないもののステップ7)で述べた条件には当てはまらず、4つのプローブそれぞれに少なくとも1つシグナルが確認できる細胞は、個々のシグナル数を記録する必要はないが、2倍体の細胞と同様に形態学的異常細胞としてカウントすること。

9)
25個の形態学的異常細胞を解析した後、以下の基準のいずれかが当てはまった場合は解析を終了する

・25個中4個以上の細胞で、細胞内の2種類以上の染色体(3番、7番または17番)が増加している

・25個中12個以上の細胞で、9p21シグナルが2つとも欠失している

当てはまらない場合は以下のいずれかを満たすまで解析を継続する。

・染色体が増加した細胞を4個検出した

・9p21遺伝子座が2つとも欠失している細胞を12個検出した

・サンプル全体の解析を終えた

※形態学的に異常な細胞がすぐに見つからない場合は、スライドを全体に渡ってスキャンし、形態学的にもっとも異常な細胞の核からシグナルを計数する。


(7) コントロールスライドの解析
コントロールスライドのシグナルの計数は、まず上記のステップ1)〜6)に従う。細胞を連続的に25個計数し、結果を記録する。形態学的異常細胞だけを選択して計数しないこと。また、検体スライドのように異常な細胞を4個あるいは12個検出してもその時点で解析を終えないこと。

図2 単色シグナル計数ガイド

※拡散シグナルが1ヶ所に固まっていて核の境界の内側にある場合にはシグナル1個と数える。シグナルが2個あってもつながっていることが確認できる場合は1個と数える(スプリットシグナル)。拡散シグナルやスプリットシグナルは核内のDNA凝縮の状態によって発生し、凝縮の程度はその細胞が分裂のどの段階にあるかで異なる。染色体数の増加ではないので注意すること。

図3 2色シグナル計数ガイド

※拡散シグナルが1ヶ所に固まっていて核の境界の内側にある場合にはシグナル1個と数える。シグナルが2個あってもつながっていることが確認できる場合は1個と数える(スプリットシグナル)。拡散シグナルやスプリットシグナルは核内のDNA凝縮の状態によって発生し、凝縮の程度はその細胞が分裂のどの段階にあるかで異なる。染色体の増加ではないので注意すること。

図4 正常染色体細胞と異常染色体細胞の例


4.品質管理
・コントロールスライドは、ハイブリダイゼーションを行った後、本添付文書に従った適切な顕微鏡、ランプ、フィルターを用いて、各スライドのシグナルの特異性や強度、バックグラウンドノイズとの差、全般的な視認性を確認すること。以上の観点で一定の水準に達していないスライドはシグナルの計数に使用しないこと。

・コントロールスライドは、本キットの測定性能をモニターし、シグナル計数の精度を評価するために、検体スライドと同時に処理、計数すること。各FISH処理ごとに、また新しいロットの本キットを使うごとに、コントロールスライドを1枚(スライド1枚に陽性ターゲット1個、陰性ターゲット1個)測定すること。コントロールスライドは、検体スライドと同時に本キットによるプローブ染色を行うこと。

・前述のコントロールスライドの解析手順に従って、シグナルの計数を行う。計数した細胞25個分のデータから、各プローブの細胞1個当たりの平均シグナル数を算出する。結果が本添付文書の管理範囲に入っていることを確認する。

コントロールスライドのシグナルの状態が一定の水準に達していない場合、処理が適切に行われなかったか、または本キットの試薬が適切に使用されなかった可能性がある。この場合は、測定結果を一切報告しないこと。コントロールスライドのシグナルの状態は一定の水準に達しているものの、計数結果が管理範囲に入っていない場合は細胞の計数が正しく行われていない可能性があるため、同じスライドをもう一度解析する。検体スライドあるいはコントロール、スライドのいずれかのハイブリダイゼーションが失敗している場合は、【その他】トラブルシューティングガイドを参照すること。

・臨床検体のハイブリダイゼーションシグナルの判定が困難な場合は、そのスライドの測定は無効である。細胞の数が解析に不十分な場合も、そのスライドの測定は無効である。

・患者検体は各施設が定めた要件に従って管理すること。ハイブリダイゼーションの質および計測結果は、適切な書式で文書化すること。測定結果の判定を行う際は、ハイブリダイゼーションの質および効率が適切か確認すること。

測定結果の判定法

1. 結果の判定
形態学的異常細胞を最低25個解析する。これらの細胞について、3番(レッド)、7番(グリーン)、17番(アクア)染色体のうち2種類以上の染色体数が増加している(シグナルが3個以上ある)場合、または9p21遺伝子座のホモ欠失が生じている(9p21を示すゴールド(イエロー)シグナルが1つもない)場合は記録すること。2種類以上の染色体数が増加している細胞を4個以上検出、9p21遺伝子座のホモ欠失が生じている細胞を12個以上検出、あるいはサンプル全体の確認を完了のいずれかの状態になるまで解析を続ける。染色体異常(2種類以上の染色体数の増加、9p21遺伝子座のホモ欠失)があった細胞の総数を計算する。測定結果は陽性または陰性で報告する。海外で行われた臨床試験の結果では、膀胱癌再発患者の検体は、2種類以上の染色体数が増加している細胞が4個以上、あるいは9p21遺伝子座が欠失している細胞が12個以上検出されることが示されている。
結果がカットオフ値(2種類以上の染色体数が増加している細胞4個、あるいは9p21遺伝子座のホモ欠失が生じている細胞12個)付近の場合は、慎重に判定を行う必要がある。別の測定者が検体スライドを再度計数し、結果を確認すること。引き続き疑わしい結果が出た場合は、新しい検体スライドで再測定を行う。測定結果が臨床所見と矛盾する場合は、病理医と担当医間の協議が必要である。

再測定が必要な場合
以下の場合、検体を採取し直すかまたは別の検体スライドおよびコントロールスライドを使って再測定を行う。可能性のある原因と対策については【その他】トラブルシューティングガイドを参照すること。

1)
コントロールスライドのターゲットエリアのいずれかあるいは両方のシグナル計数結果が管理範囲に入っていない場合は、検体スライドの結果の信頼性を担保することができないため再測定すること。

2)
解析可能な核が25個未満の場合、測定は無効であるため再測定を行うこと。

3)
スライドの染色状態が技術的な観点(シグナル強度、バックグラウンド、クロスハイブリダイゼーション)で十分ではない場合は、再測定を行うこと。


健康成人における測定値
健康成人59名(非喫煙者50名、喫煙者9名)の尿検体を使用して本キットによるFISH解析を行った。検討は特異性の検討(【性能】 分析特異性の項参照)の一部として実施した。59名の本キットの結果はすべて陰性であった。これら健康成人の染色体異常細胞数ごとの分布を図5に示す。2例は染色体異常細胞の数が4個以上であったが(図5、※部分)、異常細胞6個の内訳はともに9p21のホモ欠失のみであった。9p21欠失に対するカットオフ値は12個以上であるため、これら2例は陰性と判定される。

図5 健康成人の染色体異常細胞数分布


本邦におけるカットオフ値の妥当性の検証
健康成人57例(喫煙歴あり:26名、喫煙歴なし:31名)の尿検体を用いて、本邦における本キットのカットオフ値の妥当性を検証した。
57例中56例で、3番、7番および17番染色体の異数倍数体による染色体異常細胞が4個未満であった。57例中1例で、3番、7番および17番染色体の異数倍数体による染色体異常細胞が4個以上であった(図6)。
57例すべての被験者で9p21遺伝子座の欠失による染色体異常細胞が12個未満であった(図7)。

図6 染色体異常細胞数の分布(異数倍数体)



図7 染色体異常細胞数の分布(欠失)


膀胱癌既往患者における測定値
膀胱癌の既往歴を持つ患者を長期に渡りプロスぺクティブに調査した結果、17ヶ月以内に62名の患者が膀胱鏡検査/組織診で再発と診断された(【性能】 海外臨床性能試験 再発膀胱癌:標準的方法との比較参照)。これら62名の患者の染色体異常細胞数ごとの分布を図8に示す。また、標準的な検査法(膀胱鏡検査/組織診)で再発が確認されなかった患者114名の、染色体異常細胞数ごとの分布を図9に示す。

図8 膀胱鏡検査/組織診で再発が確認された患者の染色体異常細胞数分布



図9 膀胱鏡検査/組織診で再発が確認されなかった患者の染色体異常細胞数分布


コントロールスライド
海外で行った臨床試験において、各試験でプローブチェック ウロビジョン コントロールスライドの陰性ターゲットエリア1個、陽性ターゲットエリア1個(プローブチェック ウロビジョン コントロールスライド1枚)を測定し、検証を行った。シグナルの計数は本添付文書のガイドラインに従って行った。CEP 3、CEP 7、CEP 17、LSI 9p21プローブのシグナル分布を表2に示す。本添付文書のガイドラインに従って計数を行った場合、シグナルの分布は以下に示した管理範囲に入る。計数結果が管理範囲を外れている場合は、本添付文書のトラブルシューティングガイドを参照すること。

表2 プローブチェック ウロビジョン コントロールスライドのシグナル分布a

プローブ データ シグナル数 
陰性ターゲット
(n = 170) 
陽性ターゲット
(n = 155) 
CEP 3 平均値 2.06 3.97 
SD 0.08 0.23 
CV(%) 4.0% 5.9% 
管理範囲 1.81〜2.31 3.27〜4.68 
CEP 7 平均値 1.99 4.02 
SD 0.04 0.30 
CV(%) 2.2% 7.4% 
管理範囲 1.86〜2.13 3.13〜4.92 
CEP 17 平均値 1.98 3.23 
SD 0.05 0.22 
CV(%) 2.8% 6.9% 
管理範囲 1.82〜2.15 2.56〜3.89 
LSI 9p21 平均値 1.99 0.03 
SD 0.07 0.11 
CV(%) 3.4% 376.3% 
管理範囲 1.79〜2.19 0.00〜0.37 

a 細胞25個を計数



ハイブリダイゼーションは本キットを用いて行った。各ロットごとの計数結果はプローブチェック ウロビジョン コントロールスライドのデータシートを参照すること。


2. 判定上の注意
・本キットはヒト尿検体中の3番、7番、17番染色体および9p21遺伝子座の特定と計数を目的として至適化されている。

・本キットの性能は、本添付文書に記載されている手順に従った場合のみに対して検証されている。手順を変更すると、本キットの性能に影響を与える可能性がある。

・測定結果の臨床的な解釈は、患者の医学的な履歴および他の診断試験の結果を考慮に入れて行うこと。

・検体の品質や検体スライドの調製状態が適切ではない場合(例:過剰な粒子、大量の細菌)、本キットの測定結果は無効である。

・シグナルの計数は、レッドとグリーンのシグナルを視覚的に識別できる測定者が行うこと。

・膀胱癌再発の兆候が全くないにも関わらず本キットの結果が陽性の場合、他の尿路関連癌(例:尿管、尿道、腎臓、男性の前立腺)の可能性があるため、フォローアップが必要である。血尿の症状を持つ患者で行った検討では、初回膀胱鏡検査が陰性で、本キットの結果が陽性だった患者3名が、その後6ヶ月以内に腎臓癌と診断された。

・本キットが陰性であっても、標準的な検査法(細胞診、膀胱鏡検査など)で陽性の場合は、標準的な検査法の結果を優先させること。本キットは膀胱癌にもっとも多いタイプの遺伝子変異を検出するが、本キットでは検出できない遺伝子変異を持つ膀胱癌も存在する。

サイズ5 mm未満、深達度Taの孤立性腫瘍は本キットでは検出できない1。本キットの結果はスライドに付着した癌細胞の量に依存する。

・プローブチェック ウロビジョン コントロールスライドの性能は、本添付文書に記載されている手順に従った場合のみに対して検証されている。手順を変更すると、プローブチェック ウロビジョン コントロールスライドの測定結果に影響を与える可能性がある。

・測定者の主観的なシグナル判定やハイブリダイゼーション不良は、プローブチェック ウロビジョン コントロールスライドの測定結果に影響を与える可能性がある。

・プローブチェック ウロビジョン コントロールスライドは培養細胞株から作製されているため、細胞のサイズや形態が尿検体とは異なる場合がある。

臨床的意義

本キットは、尿中細胞の3番、7番、17番染色体の異数倍数体、並びに9番染色体の9p21遺伝子座の欠失を検出することにより、膀胱癌の再発の診断補助に用いる。

性能

ハイブリダイゼーション効率(出典:社内資料)
海外で行った臨床試験においてプローブチェック ウロビジョン コントロールスライドを測定したところ、ターゲットの1.2%(4/328、95%CI(信頼区間):0.3%, 3.1%)にハイブリダイゼーション不良が認められた。コントロールスライドは、培養したヒト膀胱癌細胞株(陽性ターゲット)および正常リンパ芽球株(陰性ターゲット)で作製されており、ハイブリダイゼーションに最適な条件となっている。ハイブリダイゼーション効率は98.8%(324/328、95%CI:96.9%, 99.7%)で、いずれのプローブのシグナルも認められない細胞は2%未満であった。別のコントロールスライド6枚を自動で前処理し(VP 2000プロセッサーを使用)、自動共変性装置HYBriteを使用してスライド調製を行ったところ、ハイブリダイゼーション効率は100%(6/6、95%CI:54.1%, 100%)であった。
再現性の検討において、ヒト膀胱癌細胞株を検体としてスライドの前処理と調製をマニュアル操作で行ったところ、初回の試験では80例中76例で有効な結果を得た。結果が無効とされた4例のうち、3例にハイブリダイゼーション不良が認められたため、ハイブリダイゼーション効率は96.2%(76/79、95%CI:89.3%, 99.2%)であった。ハイブリダイゼーション効率の計算式は以下のとおりである。




特異性の検討において、膀胱癌の既往のない患者の尿を検体としてスライドの前処理と調製をマニュアル操作で行ったところ、初回の試験では309例中230例で有効な結果を得た。結果が無効とされた検体のうち18例でハイブリダイゼーション不良が認められたため、ハイブリダイゼーション効率は93%(230/248、95%CI:88.8%, 95.6%)であった。ハイブリダイゼーション効率の計算式は前述のとおりである。その他の検体で結果が無効となった原因は、検体の質(細胞数の不足など)や技術的な問題(オイルがカバーグラスの下に入ったなど)であった。
結果が無効とされた検体79例のうち12例は検体量が不足しており再検査を実施することができなかったため、残りの67例について再検査を行った。再検査を行った67例のうち45例で有効な結果が得られ、最終的に有効な結果が得られなかった検体は34例であった(検体量が不足し再検査を実施できなかった12例を含む)。初回検査と再検査の結果を総合すると、89%の検体(275/309、95%CI:85.0%, 92.3%)で有効な結果が得られた。
同様に、海外で行った臨床試験において、膀胱癌既往患者の尿を検体としてスライドの前処理と調製をマニュアル操作で行ったところ、初回検査では251例中175例で有効な結果を得た。結果が無効とされた検体76例のうち、26例でハイブリダイゼーション不良が認められた。これらの検体のハイブリダイゼーション効率は87.1%(175/201、95%CI:81.6%, 91.4%)であった。ハイブリダイゼーション効率の計算式は前述のとおりである。その他の検体で結果が無効となった原因は、検体の質(細胞数の不足など)や技術的な問題(スライドの破損など)であった。
検体76例のうち6例は検体量が不足しており再検査を実施することができなかったため、残りの70例についてマニュアル操作で再検査を行った。再検査を行った70例のうち59例は有効な結果が得られ、最終的に有効な結果が得られなかった検体は17例であった(検体量が不足し再検査を実施できなかった6例を含む)。初回検査と再検査の結果を総合すると、93.2%の検体(234/251、95%CI:89.4%, 96.0%)で有効な結果が得られた。
海外で行った臨床試験において、膀胱癌と同様の症状を示す患者の尿を検体としてスライドの調製を自動処理で行ったところ、初回検査では570例(適格患者497例およびフォローアップ患者73例)中521例で有効な結果を得た。結果が無効とされた検体49例のうち、5例でハイブリダイゼーション不良が認められた。これらの検体のハイブリダイゼーション効率は99.0%(521/526、95%CI:97.8%, 99.7%)であった。ハイブリダイゼーション効率の計算式は前述のとおりである。その他の検体が無効となった原因は、検体の質(細胞数の不足など)や技術的な問題(スライドの破損、コントロールスライドの結果が規格外など)であった。またこれらのうち44 例について前処理を自動で行ったところ、ハイブリダイゼーション効率は96.7%(29/30、95%CI:82.8%, 99.9%)であった。
結果が無効とされた49例のうち、検体量が不足していた6例を除き、43例について再検査を行った。再検査を行った43例のうち26例で有効な結果が得られ、最終的に有効な結果が得られなかった検体は23例であった(検体量が不足し再検査を実施できなかった6例を含む)。初回検査と再検査の結果を総合すると、96.0%の検体(547/570、95%CI:94.0%, 97.0%)で有効な結果が得られた。
通常の臨床現場における条件を想定した以上の検討の結果では、ハイブリダイゼーション効率は87%以上であった。また、検体の処理をマニュアル操作で行った場合と自動処理した場合のハイブリダイゼーション効率は同等であった。

分析特異性(出典:社内資料)
分裂中期染色体における本キットのプローブのハイブリダイゼーション位置に対する特異性を、社内プロトコルに従って検討した。計42個の分裂中期細胞について、Reverse DAPI banding法で3番、7番、17番染色体および9p21遺伝子座の位置を特定し、続いて本キットによる測定を行った。細胞42個いずれにおいても他の染色体部位へのクロスハイブリダイゼーションは確認されず、4つのプローブは目的とするターゲット領域のみにハイブリダイズしていた。

再現性

患者検体
膀胱癌患者では患者1名から得られる細胞数が少なく、複数の検査者で検査を行って再現性の検討を行うことができない。このため形態学的異常細胞における再現性の検討は行っていない。同一検体で複数回測定を行った検討結果がないため、検体の取り扱い操作や染色、および計数時の誤差などによってもたらされる測定結果の変動幅は不明である。少数の解析結果から、形態学的異常細胞の数が【測定結果の判定法】に示されているカットオフ値(4個あるいは12個)付近であるサンプルでは、相対的にばらつきが大きくなることが示唆される。

膀胱癌培養細胞株検体
本キットの再現性を検討するため、4種類の異なる膀胱癌培養細胞株を用いてスライドを作製し、4施設においてCEP 3、CEP 7、CEP 17、LSI 9p21のシグナル分布を解析した。シグナル分布が正常な膀胱癌培養細胞株1例、およびシグナル分布に異常のある膀胱癌培養細胞株3例を用いて検体スライドを調製した後、本添付文書のコントロールスライドの解析手順に従って、CEP 3、CEP 7、CEP 17、LSI 9p21の各シグナルを解析した。各施設において同じ培養細胞株のスライドを1日に4枚調製し、これを4日間繰り返した(1日に培養細胞株1種類)。プローブはすべての検体に対して同じロットを使用した。計数時の偏りを排除するため各測定日ごとに本来測定すべき検体とは別にダミー検体を1例追加し、このダミー検体の結果は最終的なデータ解析では除外した。各施設において1名の検査者が検体を評価した。初回検査では95.0%(76/80)の検体で有効な結果が得られた。再検査ではすべてのスライドのハイブリダイゼーションが成功した。
各プローブのシグナルの平均値、標準偏差、CV(%)を表3に示す。表に示されているとおり、各プローブの平均値の変動幅は小さかった。検体2は9p21遺伝子座が欠失しているためこのプローブのCV(%)が大きいものの、9p21遺伝子座の欠失は容易に特定が可能で、この検体の試験結果の95%(19/20)は、LSI 9p21シグナル数の平均値が0.2個未満であった。
膀胱癌培養細胞株を用いた本検討では偽陰性は見られず、検体2、3、4の結果のすべて(各検体16回分、48/48)が陽性と判定された。陽性の判定基準は、染色体数が増加している細胞4個以上(CEP 3、CEP 7、CEP 17のうち2種類以上でシグナルが3個以上)、あるいは9p21遺伝子座のホモ欠失(LSI 9p21シグナルなし)が生じている細胞12個以上である。シグナルが正常な検体の16回の測定結果のうち、1回は上記の判定基準で陽性と判定された。このケースでは、細胞6個で染色体数が増加していた。

表3 施設間再現性

検体 データ シグナル数 
CEP 3 CEP 7 CEP 17 LSI 9p21 
平均値 2.21 2.12 2.14 2.19 
SD 0.15 0.12 0.12 0.21 
CV(%) 6.79% 5.52% 5.66% 9.66% 
範囲 2.08〜2.68 1.92〜2.40 1.96〜2.52 2.00〜2.92 
16 16 16 16 
平均値 3.95 4.31 3.42 0.03 
SD 0.10 0.25 0.16 0.07 
CV(%) 2.49% 5.76% 4.76% 220.44% 
範囲 3.84〜4.16 3.76〜4.84 3.16〜3.72 0.00〜0.24 
16 16 16 16 
平均値 4.28 3.55 3.42 3.86 
SD 0.32 0.34 0.25 0.47 
CV(%) 7.58% 9.47% 7.21% 12.14% 
範囲 3.88〜5.04 3.12〜4.24 3.04〜3.96 3.16〜4.72 
16 16 16 16 
平均値 3.18 3.88 3.84 3.85 
SD 0.15 0.10 0.10 0.15 
CV(%) 4.63% 2.45% 2.70% 3.90% 
範囲 2.96〜3.52 3.64〜4.04 3.64〜4.12 3.56〜4.24 
16 16 16 16 


国内臨床性能試験
国内12施設で膀胱癌の既往歴のある患者486症例を対象に尿検体を用いて、本キットの再発膀胱癌の検出における有用性を検討した。
本試験は、エントリー後の最初のフォローアップのための来院時に実施し(1回目)、1回目で組織診を実施しなかった患者は次のフォローアップのための来院時にも実施した(2回目)。
486症例中5例は適格基準に合致しなかったため481例を「組入れ」とした。
被験者の背景を次の表に示す。

表4 被験者背景のまとめ(481例)

性別 男 416 86.5% 
女 65 13.5% 
年齢 平均 70.7  
中央値 72.0  
範囲 26〜91  
初発再発 初発 326 67.8% 
再発 155 32.2% 
腫瘍数 単発 201 41.8% 
多発 221 45.9% 
判定不能 59  
異型度 低異型度 164 42.2% 
高異型度 190 48.8% 
判定困難 35  
異型度(旧規約分類) G1 56 17.6% 
G2 150 47.0% 
G3 104 32.6% 
GX 2.8% 
深達度 Ta 279 58.0% 
T1 146 30.4% 
T2以上 12 2.5% 
Tis 33 6.9% 
判定困難 11  
併発CIS なし 342 71.1% 
あり 102 21.2% 
不明 37  

※ 異型度の所見は計389例であり、膀胱癌取扱い規約第3版(2001年)の旧規約分類に基づいた所見のみの症例が92例であった。



481例のうち、計画書逸脱13例および評価不可の4例をデータ解析から除外し、464例を本キットの1回目評価対象とした。
468例のうち、1回目解析で試験が完了した54例、計画書逸脱15例、および評価不可の3例をデータ解析から除外し、396例を本キットの2回目評価対象とした。
なお、本試験では、病理組織学的に膀胱癌と確認された症例を癌陽性として、本キットの感度・特異度を算出した。
1回目の感度は50.0%(95%CI: 35.2 - 64.8%)、特異度は72.4%(95%CI:68.3 - 76.8%)であった(表5)。
2回目の感度は33.3%(95%CI:9.5 - 57.2%)、特異度は84.0%(95%CI:80.3 - 87.7%)であった(表6)。

表5 1回目の感度・特異度

  膀胱癌 
  陽性 陰性 計 
本キット 陽性 22 116 138 
陰性 22 304 326 
計 44 420 464 

感度:50.0%(95%CI:35.2 - 64.8%)
特異度:72.4%(95%CI:68.3 - 76.8%)
陽性的中率:15.9%
陰性的中率:93.3%




表6 2回目の感度・特異度

  膀胱癌 
  陽性 陰性 計 
本キット 陽性 61 66 
陰性 10 320 330 
計 15 381 396 

感度33.3%(95%CI:9.5 - 57.2%)
特異度84.0%(95%CI:80.3 - 87.7%)
陽性的中率:7.6%
陰性的中率:97.0%



1回目癌陽性患者44例の組織学的所見「腫瘍の異型度・深達度・数・大きさ・併発CISの有無」ごとの本キットの感度を表7に示す。
2回目癌陽性患者15例の組織学的所見「腫瘍の異型度・深達度・数・大きさ・併発CISの有無」ごとの本キットの感度を表8に示す。

表7 1回目癌陽性被験者44例の組織学的所見ごとの感度

  症例数 感度 
異型度 低異型度 24 41.7% 
高異型度 18 66.7% 
判定困難 − 
深達度 Tis 100.0% 
Ta 26 38.5% 
T1 80.0% 
T2以上 66.7% 
判定困難 − 
腫瘍数 単発 15 46.7% 
多発 19 42.1% 
測定不能 10 − 
腫瘍径 3 cm以下 24 37.5% 
3 cmより大 − 
不詳 20 − 
併発CIS なし 33 42.4% 
あり 87.5% 
不明 − 



表8 2回目癌陽性被験者15例の組織学的所見ごとの感度

  症例数 感度 
異型度 低異型度 12 41.7% 
高異型度 0.0% 
判定困難 − 
深達度 Tis 0.0% 
Ta 13 38.5% 
T1 0.0% 
T2以上 − 
判定困難 − 
腫瘍数 単発 10 20.0% 
多発 60.0% 
測定不能 − 
腫瘍径 3 cm以下 11 36.4% 
3 cmより大 − 
不詳 − 
併発CIS なし 12 33.3% 
あり 50.0% 
不明 − 


1回目癌陽性被験者44例の各組織学的所見と異数倍数体、並びに遺伝子座の欠失との関係を表9に示す。

表9 1回目癌陽性被験者44例の各組織学的所見と異数倍数体、並びに遺伝子座の欠失との関係

 症例数 本キット陽性 (異数倍数体) (欠失) (倍数体+欠失) 
全体 44 22 18 
 
 症例数 本キット陽性 (異数倍数体) (欠失) (倍数体+欠失) 
低異型度 24 10 
高異型度 18 12 
判定困難 
 
 症例数 本キット陽性 (異数倍数体) (欠失) (倍数体+欠失) 
pTis 
pTa 26 10 
pT1 
pT2以上 
判定困難 
 
 症例数 本キット陽性 (異数倍数体) (欠失) (倍数体+欠失) 
単発 15 
多発 19 
測定不能 10 
 
 症例数 本キット陽性 (異数倍数体) (欠失) (倍数体+欠失) 
併発CISなし 33 14 12 
併発CISあり 
不明 


本キットと尿細胞診を併用した場合の1回目の感度は56.8%、特異度は70.7%であった。(表10
なお、本試験では、尿細胞診のClass IIIを陰性と判定したが、本解析ではClass IIIを陽性と判定し、本キットもしくは尿細胞診のいずれかで陽性と判定された症例を陽性、いずれでも陰性の症例を陰性とした。
すなわち、Class IV、Vの2例にClass III8例を加えた10例に本キットでのみ陽性と判定された15例の計25例を陽性として、評価した。

表10 1回目の感度・特異度(本キットと尿細胞診の併用(Class IIIを含めた場合))

  膀胱癌 
  陽性 陰性 計 
本キット+尿細胞診 陽性 25 123 148 
陰性 19 297 316 
計 44 420 464 

感度:56.8%
特異度:70.7%
陽性的中率:16.9%
陰性的中率:94.0%



また、Class IIIを陽性と判定した場合の尿細胞診の1回目の感度は22.7%、特異度は94.3%であった。(表11

表11 1回目の感度・特異度(尿細胞診(Class IIIを含めた場合))

  膀胱癌 
  陽性 陰性 計 
尿細胞診 陽性 10 24 34 
陰性 34 399 433 
計 44 423 467 

感度:22.7%
特異度:94.3%
陽性的中率:29.4%
陰性的中率:92.1%



海外臨床性能試験(出典:社内資料)

再発膀胱癌:標準的方法との比較
検討概要

膀胱癌患者の再発をモニタリングする方法として標準的な膀胱鏡検査および組織診と比較した本キットの性能を、21施設で17ヶ月に渡って評価することにより、複数施設によるプロスペクティブな縦断的研究を行った。すべての算定に用いた比較対照は、膀胱鏡検査で陽性あるいは疑いありと判定された症例を組織診で確認した。膀胱鏡検査で陽性だったものの組織診の結果がない検体(例えば病変部に高周波療法が行われたケースなど)は、膀胱癌と判断した。膀胱鏡検査で疑いありだったものの組織診の結果がない検体は、解析から除外した。21施設において計309例の外来受診があり、うち251例が有効であった。無効とした58例の内訳は次の通りである。適格基準を満たさない:17例、尿検体量の不足:16例、膀胱鏡検査で疑いありだが組織診の結果がない:10例、尿検体が検査施設に届かなかった:15例。検体の保存にはすべてカーボワックスを使用し、尿検体の前処理と分析はすべて1施設で行った。前処理とFISH操作はすべてマニュアル操作で行った。有効な外来受診251例のうち、234例(患者数176名)において本キットの有効な結果が得られた。検討期間中に再発した(膀胱鏡検査/組織診による診断)患者は、初回再発診断時の検査結果を使用した(すなわち再発が確定した受診時の結果)。再発しなかった患者で複数回受診している場合は、最後の検査結果を使用した。176名の患者の内訳を表12に示す。

表12 患者の内訳
再発膀胱癌の検討

性別 
 男性 132 
 女性 44 
人種 
 白色人種 153 
 アフリカ系アメリカ人 
 ヒスパニック系 
 その他 13 
 不明 
年齢 
 範囲 36〜98歳 
 平均 71歳 


標準法との比較

適格基準を満たし、本キットにおいて有効な結果が得られた患者のうち、62例は膀胱鏡検査/組織診により陽性と診断された。癌の深達度と異型度別の患者数の内訳を表13に示す。

表13 再発膀胱癌の検討
深達度、異型度別患者数

深達度 異型度  
ND 1 2 3 不明 
ND 11 11 
Ta 20 32 
T1 
T2 
Tis 
不明 
 11 22 18 62 

ND=評価なし、または生検未実施



生検の結果があるすべての検体について、膀胱鏡検査/組織診による結果に対する本キットの測定結果を、深達度と異型度別に表14に示す。膀胱鏡検査/組織診と比較した場合、本キットは深達度が重度な症例(T2とTis)において、もっとも高い臨床的感度を示した(100%)。

表14 膀胱鏡検査/組織診に対する、
本キットの深達度と異型度別再発膀胱癌検出能
a

  臨床的感度(%) 
深達度   
 全患者 36/48(75.0%) 
 Ta、異型度1 11/20(55.0%) 
 Ta、異型度2, 3 10/12(83.3%) 
 T1 5/6(83.3%) 
 T2 3/3(100%) 
 Tis 7/7(100%) 
異型度   
 全患者 36/49(73.5%) 
 12/22(54.5%) 
 7/9(77.8%) 
 17/18(94.4%) 

a 生検未実施例が11例あった。また3例は深達度の評価なし、2例は異型度の評価なしであった。



膀胱鏡検査/組織診に対する本キットの性能を表15に示す。膀胱鏡検査で陽性または陽性の疑いありで組織診を行った検体における、本キットによるFISH解析の結果は、臨床的感度71.0%、臨床的特異性65.8%であった。
注:本検討では、膀胱鏡検査陽性で生検未実施の患者を陽性と判断した。

表15 本キットと膀胱鏡検査/組織診の再発膀胱癌検出能の比較

  膀胱鏡検査/組織診 
  陽性 陰性 計 
本キット 陽性 44 39 83 
陰性 18 75 93 
計 62 114 176 

臨床的感度=71.0%(44/62)(95%CI=58.1 - 81.8%)
臨床的特異性=65.8%(75/114)(95%CI=56.3 - 74.4%)
診断精度=67.6%(119/176)(95%CI=60.2 - 74.5%)
陽性的中率=53.0%(44/83)(95%CI=41.7 - 64.1%)
陰性的中率=80.6%(75/93)(95%CI=71.1 - 88.1%)
有病率=35.2%(62/176)(95%CI=28.2 - 42.8%)



有病率を10%、20%、30%とした場合の陽性的中率と陰性的中率を推定した。結果を表16に示す。これらの値は臨床的感度71.0%、臨床的特異性65.8%(表15)を前提として推定した。

表16 本キットの陽性的中率と陰性的中率の推定値

再発膀胱癌有病率 陽性的中率 陰性的中率 
10% 18.7% 95.3% 
20% 34.2% 90.1% 
30% 47.1% 84.1% 


本キットによる測定の過去3ヶ月以内に、直近の治療としてBCG膀注療法を受けていた患者における、本キットと膀胱鏡検査/組織診の検出能を比較した結果を表17に示す。BCG療法の実施期間は平均1.3ヶ月(範囲:0.4〜3.4ヶ月)であった。BCG療法の終了から本キットの測定までの期間は平均1.3ヶ月で、0ヶ月(本キット測定時にBCG療法中)〜3ヶ月の範囲であった。陽性患者12例の内訳は、Tisが3例、深達度Ta異型度1が3例、深達度Ta異型度3が3例、深達度T1異型度3が2例、深達度T2異型度3(筋層浸潤)が1例であった。偽陰性1例は深達度Ta異型度1であった。

表17 3ヶ月以内にBCG療法を受けた患者における
本キットと膀胱鏡検査/組織診の再発膀胱癌検出能の比較

  膀胱鏡検査/組織診 
  陽性 陰性 計 
本キット 陽性 12 10 22 
陰性 16 17 
計 13 26 39 

臨床的感度=92.3%(95%CI=64.0 - 99.8%)
臨床的特異性=61.5%(95%CI=40.6 - 79.8%)
診断精度=71.8%(95%CI=55.1 - 85.0%)
陽性的中率=54.5%(95%CI=32.2 - 75.6%)
陰性的中率=94.1%(95%CI=71.3 - 99.9%)
有病率=33.3%(95%CI=19.1 - 50.2%)



縦断的研究
上記複数施設によるプロスペクティブ研究に続いて、臨床試験期間中の受診では再発が確認されなかった患者(すなわち膀胱鏡検査/組織診で陰性)について、その後約1年間に渡り外来受診情報(本キットやBTAstat TESTの測定はなし)を収集した。その結果、適格基準を満たす患者114名のうち105名から計335例の外来受診結果が得られ、うち有効な受診結果は患者104名分、計299例であった。
注:患者1名は外来を1回受診していたが、適格基準を満たしていなかった。
無効とした外来受診結果36例の内訳は、適格基準を満たしていないケースが21例、膀胱鏡検査で疑いありとされたものの組織診の結果がないケースが15例であった。再発が認められた(膀胱鏡検査/組織診による診断)患者は、初回再発診断時の外来受診時のデータを使用し、再発しなかった患者が複数回受診している場合は、最後の外来受診時のデータを使用した。
本キット陽性、膀胱鏡検査/組織診陰性の患者群は、本キットと膀胱鏡検査/組織診がともに陰性の患者群よりも高い再発率を示した。結果を表18に示す。

表18 縦断的検討結果の概要

 本キット陰性
膀胱鏡検査/組織診陰性 
本キット陽性
膀胱鏡検査/組織診陰性 
再発率(%) 19.12%(13/68) 41.67%(15/36) 
フォローアップ期間(月): 
 再発なし 14.3±3.9 13.5±3.4 
 再発あり 11.0±5.8 6.9±4.4 
再発例の詳細a
深達度 
 Ta、異型度1 
 Ta、異型度2, 3 
 T1 
 Tis 
異型度 
 1 
 2 
 3 

a8例(本キット陽性および膀胱鏡検査/組織診陰性4例、本キット陰性および膀胱鏡検査/組織診陰性4例)では生検が実施されていなかった。医療機関から評価を行った病理医にスライドが提供されなかったケースが6例(本キット陽性および膀胱鏡検査/組織診陰性4例、本キット陰性および膀胱鏡検査/組織診陰性2例)あった。また本キット陽性および膀胱鏡検査/組織診陰性の2例は深達度の評価なしであった。



経過月数による無再発率の推移を、右側打ち切りproduct-limit法(カプラン・マイヤー法)で示した。log-rank検定により2つの患者群(推定陽性群、真の陰性群)の均一性を評価した。図10に示した通り、本キット陽性および膀胱鏡検査/組織診陰性群と本キット陰性および膀胱鏡検査/組織診陰性群では、フォローアップ期間を通して統計的な相違が認められ、p値は0.0031であった。区間打ち切りを直接考慮したパラメトリックなワイブル分布を当てはめて同様の分析を行ったところ、同様に2つの群には明らかな相違があり、p値は0.0236であった。

図10 本キット陰性および膀胱鏡検査/組織診陰性群と
本キット陽性および膀胱鏡検査/組織診陰性群における無再発生存率



特異性
検討概要

本キットの特異性は、再発膀胱癌の検討では65.8%、血尿患者による検討では77.7%であったが、膀胱癌の既往歴や臨床的エビデンスがない健康成人および泌尿器疾患患者における本キットの特異性を算出するため、複数施設においてプロスペクティブ研究を行った。
検討期間中に計315例の外来受診があり、309例の有効な受診結果を得た。無効とした6例の内訳は、適格基準を満たさなかったケースが1例、尿検体量の不足が4例、尿検体が検査施設に届かなかったケースが1例であった。検体の保存にはすべてカーボワックスを使用し、前処理とFISH操作はすべてマニュアル操作で行った。患者によっては健康状態が複数のカテゴリーに適合するため、275名の被験者検体から述べ357件の有効なデータポイントが得られた。カテゴリーごとの被験者数を表19に示す。

表19 被験者のカテゴリー

カテゴリー 被験者数 
健康成人 59  
 非喫煙者  50 
 喫煙者  
非泌尿生殖器良性疾患 48  
非泌尿生殖器癌  
泌尿生殖器疾患 184  
 前立腺肥大症  58 
 顕微鏡的血尿  15 
 間質性膀胱炎  11 
 炎症/感染症:その他  17 
 性感染症  
 その他  81 
泌尿生殖器癌(膀胱以外) 61  
 前立腺  58 
 腎臓  
泌尿生殖器損傷  
 357  


特異性

膀胱癌の既往歴や臨床的エビデンスがない健康成人および泌尿器疾患患者における本キットの総特異性は、93.0%(332/357)であった。総特異性の概要およびカテゴリーごとの特異性を表20に示す。本検討では被験者が複数のカテゴリーに属しているケースがあり、各カテゴリーで重複してカウントした場合、潜在的なバイアスが発生する可能性がある。このため、被験者1名につき一度のみカウントして特異性を算出したところ、94.5%(260/275、表20)であった。

表20 概要:本キットの特異性

総特異性 93.0%(332/357) 
 各被験者を一度のみカウント  94.5%(260/275) 
健康成人 vs 非健康成人 
 健康 100%(59/59) 
 非健康 93.1%(201/216) 
喫煙者 vs 非喫煙者a 
 喫煙者 95.2%(40/42) 
 非喫煙者 94.7%(234/247) 
カテゴリーごとb 
 健康成人 100%(59/59) 
  健康非喫煙者  100%(50/50) 
  健康喫煙者  100%(9/9) 
 非泌尿生殖器良性疾患 91.7%(44/48) 
 非泌尿生殖器癌c 66.7%(2/3) 
 泌尿生殖器疾患 91.9%(169/184) 
  前立腺肥大症  91.4%(53/58) 
  顕微鏡的血尿  86.7%(13/15) 
  間質性膀胱炎  90.7%(10/11) 
  炎症/感染症:その他  100%(17/17) 
  性感染症  100%(2/2) 
  その他  91.4%(74/81) 
 泌尿生殖器癌(非膀胱) 91.8%(56/61) 
  前立腺  91.4%(53/58) 
  腎臓  100%(3/3) 
 泌尿生殖器損傷 100%(2/2) 

a 1名は喫煙状態不明であった。
b 合計数が275名を超えているのは、複数の疾患カテゴリーに属する非健康成人被験者がいたためである。
c 非泌尿生殖器癌の内訳は、乳癌1名、結腸癌1名、白血病1名であった。




以上の結果から、マニュアル法による前処理とFISH操作を行った場合の本キットの特異性は、全体で93.0%(332/357)、健康成人では100%(59/59)であることが示された。被験者1名につき一度のみカウントした場合の特異性は94.5%(260/275)であった。偽陽性を示した15例の内訳は次の通りであった(同一の被験者が複数のカテゴリーに属している場合もある):非泌尿生殖器良性疾患4例、非泌尿生殖器癌1例、泌尿生殖器疾患15例、泌尿生殖器癌5例。以上は、これらの検体群に対する本キットの高い特異性を示唆しており、本キットのプローブが意図した染色体のみにハイブリダイズしていることを示している。

使用上又は取扱い上の注意

取扱い上(危険防止)の注意

・本キットの測定では、ヒト検体を取り扱う。検体は、HIV、HBV、HCV等の感染の恐れがあるものとして取り扱うこと。検査にあたっては、感染の危険を避けるため、専用の着衣、眼鏡、マスクおよび使い捨て手袋を着用し、また口によるピペッティングは行わないこと。

注意:本測定で使用する試薬類には、ヒト由来および/または潜在的に感染性のある物質が含まれている。ヒト由来物質または不活化微生物が完全に感染伝播しないことを保証する試験は知られていない。感染性物質を含む、またはその疑いがある物質については、Biosafety in Microbiological and Biomedical Laboratories2、OSHA Standards on Bloodborne Pathogens3、CLSI Document M29-A34、または他の適切なバイオセイフティ基準5に従って取り扱うこと。すべてのヒト由来物質は潜在的に感染性があると考えること。検体や試薬を取り扱う場所では、飲食、喫煙、化粧、コンタクトレンズの取り扱いをしないこと。

すべての生体検体は、感染性病原体を伝播する可能性があるものとして取り扱うこと。本キットとともに使用することが推奨されているプローブチェック ウロビジョン コントロールスライドは、ヒト培養細胞株をカルノア固定液で固定して作製している。ヒト由来物質が完全に感染伝播しないことを保証することは不可能であるため、すべてのヒト検体およびコントロールスライドは一般的な注意事項に従って取り扱うこと。米国のCenters for Disease Control and Preventionでは検体取り扱いのガイドラインを提供している6

・試薬が誤って目や口に入った場合には水で十分に洗い流す等の応急措置を行い、必要があれば医師の手当て等を受けること。

・本キットのプローブは催奇形物質であるホルムアミドを含む。皮膚および粘膜に触れないようにすること。詳細は安全データシート(SDS)を参照すること。

・プローブチェック ウロビジョン コントロールスライドは、皮膚および粘膜に触れないようにすること。

・次の試薬類に関する危険有害性情報、注意事項を示す。

・ウロビジョン DNA FISHプローブ

 危険:ホルムアミドを含む 
 H360D 胎児への悪影響のおそれ 
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。 
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 
P281 指定された個人用保護具を使用すること。 
P308+P313 ばく露またはばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。 
P405 施錠して保管すること。 
P501 内容物/容器を適切な方法で廃棄すること。 


・NP-40

 危険:Triton X-100を含む 


 
H302 飲み込むと有害 
H318 重篤な眼の損傷 
H412 長期継続的影響により水生生物に有害 
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡を着用すること。 
P264 取扱後は手をよく洗うこと。 
P273 環境への放出を避けること。 
P305+P351+P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 
P301+P312 飲み込んだ場合:気分が悪い時は医師に連絡すること。 
P501 内容物/容器を適切な方法で廃棄すること。 


・次の試薬類に関する危険有害性情報、注意事項を示す。

・FISHプレトリートメントキットのプロテアーゼ

 危険:ペプシンAを含む 


 
H315 皮膚刺激 
H319 強い眼刺激 
H334 吸入するとアレルギー、喘息または呼吸困難を起こすおそれ 
H335 呼吸器への刺激のおそれ 
P284 換気が不十分な場合、呼吸用保護具を着用すること。 
P261 ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡を着用すること。 
P264 取扱後は手をよく洗うこと。 
P305+P351+P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 
P302+P352 皮膚に付着した場合:多量の水で洗うこと。 
P304+P341 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 
P312 気分が悪い時は医師に連絡すること。 
P362 汚染された衣類を脱ぐこと。 
P405 施錠して保管すること。 
P501 内容物/容器を適切な方法で廃棄すること。 


・FISHプレトリートメントキットのプロテアーゼ緩衝液

 危険 
 H290 金属腐食のおそれ 
H314 重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷 
P260 ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡を着用すること。 
P234 他の容器に移し替えないこと。 
P264 取扱後は手をよく洗うこと。 
P305+P351+P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 
P303+P361+P353 皮膚(または髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類をすべて脱ぐこと。皮膚を水/シャワーで洗うこと。 
P310 直ちに医師に連絡すること。 
P301+P330+P331 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。 
P390 物的被害を防止するためにも流出したものを吸収すること。 
P501 内容物/容器を適切な方法で廃棄すること。 


安全データシート(SDS):製品の安全な取り扱い、輸送および廃棄に関する重要な情報が記載されている。
注:安全データシートについては、カストマーサポートセンターにお問い合わせください。

使用上の注意

・使用期限を過ぎた試薬類を使用しないこと。

・キット内または異なるキットの試薬を混ぜて使用しないこと。

・同一のロット番号の試薬であっても試薬を注ぎ足すことはしないこと。

・弊社以外から提供されている試薬類を使用した場合、良好なハイブリダイゼーション結果が得られない場合がある。

・スライドの変性、ハイブリダイゼーション、検出のすべての手順に完全に従わなかった場合、正しい測定結果が得られない場合がある。

・蛍光物質は、光にさらされると直ちに退色する。退色を防ぐため、蛍光物質を含む試薬やハイブリダイゼーション後のスライドを取り扱うすべての操作は、なるべく暗い場所で行うこと。明るさが必要ない工程(インキュベーション、スライドの乾燥など)は、すべて遮光下で行うこと。

・溶液、恒温槽、インキュベーターの温度の測定には、較正された温度計を使用すること。

・未開封の本キットは遮光および防湿し、キットごと-20℃で保存すること。20×SSC塩およびNP-40は、キットから取り出して室温で保存することもできる。未開封の構成試薬の使用期限は、各構成試薬のラベルに表示されている。以上の保存条件は、開封前と開封後のどちらのキットにも適用される。

・一部の構成試薬は光、高温、多湿で劣化するため、このような条件下に置かないこと。本添付文書やキットに表示されている保存条件に従わなかった場合、正しい測定結果が得られない可能性がある。

注:本添付文書またはラベルに保存条件が示されていない試薬類は、製造元が推奨する保存条件に従うこと。

・使用前のプローブチェック ウロビジョン コントロールスライドは、-20℃で保存すること。30℃を超える温度に長時間置かないこと。

・プローブチェック ウロビジョン コントロールスライドは、湿度を避けるため乾燥剤入りの密閉容器に入れて-20℃で保存した場合、使用期限まで安定である。

・FISHプレトリートメントキットの各試薬の保存条件は以下のとおりである。

・プロテアーゼ緩衝液 2〜25℃

・プロテアーゼ -20〜8℃

・PBS 2〜25℃

・100×塩化マグネシウム 2〜25℃

・20×SSC塩 -25〜30℃

廃棄上の注意

・検体中にはHIV、HBV、HCV等の感染性のものが存在する恐れがあるので、廃液、使用済み器具などは次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度1,000 ppm、1時間以上浸漬)またはグルタルアルデヒド(2%、1時間以上浸漬)による消毒処理、あるいはオートクレーブ(121℃、20分以上)による滅菌処理を行うこと。

試薬および器具等を廃棄する場合には、廃棄物の処理および清掃に関する法律、水質汚濁防止法等の規定に従って処理すること5

試薬類や検体が飛散した場合には、飛散した溶液を吸収剤で吸収し、飛散した場所を洗浄液で拭き取った後、さらに1.0%次亜塩素酸ナトリウム溶液などの適切な消毒剤2で拭き取ること。作業は適切な保護用具(手袋、安全眼鏡、実験衣など)を着用して行うこと。

その他

トラブルシューティングガイド


操作方法の概略

検体の採取



検体の処理と調製






貯蔵方法、有効期間

貯蔵方法

遮光して、-20℃で保存する。

有効期間

1年
使用期限は、外装に表示されている。

包装単位

○20テスト用 製品番号 2J27-21

・ウロビジョン DNA FISHプローブ 60 μL×1

DAPI II対比染色液 300 μL×1

・NP-40 2 mL×2

・20×SSC塩 66g


1回の測定のターゲットエリアを直径6 mmの円と定義した場合、本キットは20テストの測定が可能である。

主要文献

主要文献

1.
Riesz, P., G. Lotz, et al. (2007). “Detection of bladder cancer from the urine using fluorescence in situ hybridization technique.” Pathol Oncol Res. 13(3):187-94.

2.
US Department of Health and Human Services. Biosafety in Microbiological and Biomedical Laboratories, Fifth Edition. Washington, DC: US Government Printing Office, December 2009.

3.
US Department of Labor, Occupational Safety and Health Administration, 29 CFR Part 1910.1030, Occupational Safety and Health Standards: Bloodborne Pathogens.

4.
Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI). Protection of Laboratory Workers From Occupationally Acquired Infections; Approved Guideline-Third Edition. CLSI Document M29-A3 (ISBN 1-56238-567-4). Clinical and Laboratory Standards Institute, 940 West Valley Road, Suite 1400, Wayne, Pennsylvania 19087-1898 USA.

5.
World Health Organization. Laboratory Biosafety Manual, Geneva: World Health Organization, 2004.

6.
U.S. Centers for Disease Control. Morbidity and Mortality Weekly Review. 1987;36(suppl. 2S):2S-18S.

製造販売業者の氏名又は名称及び住所*

氏名又は名称(製造販売業の種別)

アボットジャパン合同会社

体外診断用医薬品製造販売業

住所等

千葉県松戸市松飛台278

電話番号

047-385-2211

問い合わせ先

氏名又は名称
アボットジャパン合同会社

住所等
千葉県松戸市松飛台278

電話番号
0120-031441

その他の安全性情報

備考

すべての商標の所有権は、各商標の所有権者に帰属します。

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