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ヒフデュラ配合皮下注

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.2腎機能障害患者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
10.相互作用
10.2併用注意(併用に注意すること)
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
14.適用上の注意
15.その他の注意
15.1臨床使用に基づく情報
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.3分布
16.4代謝
16.5排泄
16.6特定の背景を有する患者
16.8その他
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
18.薬効薬理
18.1作用機序
18.2FcRnに対する結合作用(invitro
18.3内因性IgGに対する作用(invivo
19.有効成分に関する理化学的知見
20.取扱い上の注意
21.承認条件
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
25.保険給付上の注意
26.製造販売業者等

ヒフデュラ配合皮下注

添付文書番号

6399501A1020_1_02

企業コード

113014

作成又は改訂年月

2024年12月改訂(第2版、効能変更、用法変更)
2024年1月作成

日本標準商品分類番号

876399

薬効分類名

抗FcRn抗体フラグメント・ヒアルロン酸分解酵素配合製剤

承認等

ヒフデュラ配合皮下注

販売名コード

YJコード

6399501A1020

販売名英語表記

VYVDURA Combination Subcutaneous Injection

販売名ひらがな

ひふでゅらはいごうひかちゅう

承認番号等

承認番号

30600AMX00007000

販売開始年月

2024年4月

貯法・有効期間

貯法

2~8℃で保存

有効期間

18箇月

規制区分

一般的名称

エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)皮下注製剤

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

3. 組成・性状

3.1 組成

本剤1バイアル(5.6mL)中に次の成分を含有する。

ヒフデュラ配合皮下注

有効成分エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)   1008mg
ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)   11200単位
添加剤L-ヒスチジン   8mg
L-ヒスチジン塩酸塩水和物   12mg
L-メチオニン   8mg
塩化ナトリウム   32mg
精製白糖   115mg
ポリソルベート20   3mg
本剤は、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いて製造される。

3.2 製剤の性状

ヒフデュラ配合皮下注

pH5.7~6.3
浸透圧比0.9~1.3(対生理食塩液比)
性状帯黄色の澄明又は僅かに乳濁した液

4. 効能又は効果

  • 全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)
  • *慢性炎症性脱髄性多発根神経炎

6. 用法及び用量

  • 〈全身型重症筋無力症〉

    通常、成人には本剤1回5.6mL(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位)を1週間間隔で4回皮下投与する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。

  • 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎〉

    *通常、成人には本剤1回5.6mL(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位)を週1回皮下投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  • 〈全身型重症筋無力症〉
    1. 7.1 次サイクル投与の必要性は、臨床症状等に基づき、判断すること。,
    2. 7.2 本剤を投与する場合に、何らかの理由により投与が遅れた際には、あらかじめ定めた投与日から3日以内であればその時点で投与を行い、その後はあらかじめ定めた日に投与すること。あらかじめ定めた投与日から3日を超えていれば投与せず、次のあらかじめ定めた日に投与すること。
  • 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎〉
    1. 7.3 *本剤を一定期間投与後、臨床症状の改善が認められない場合には、本剤の投与中止を検討すること。

8. 重要な基本的注意

  1. 8.1 本剤の投与により、血中IgG濃度が低下し、感染症が生じる又は悪化するおそれがある。本剤の治療期間中及び治療終了後は定期的に血液検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。また、感染症の自他覚症状に注意し、異常が認められた場合には、速やかに医療機関に相談するよう患者に指導すること。,,
  2. 8.2 本剤の自己投与に際しては、以下の点に注意すること。
    • 自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施した後、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導の下で実施すること。
    • 使用済みの注射針及び注射器を再使用しないように患者に注意を促し、すべての器具の安全な廃棄方法に関する指導を行うこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 感染症のある患者

    感染症を合併している場合は、感染症の治療を優先すること。感染症が増悪するおそれがある。,

  2. 9.1.2 肝炎ウイルスキャリアの患者

    肝炎ウイルスキャリアの患者に本剤を投与する場合は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化やC型肝炎の悪化の徴候や症状の発現に注意すること。

9.2 腎機能障害患者

エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)の血中濃度が上昇するおそれがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。IgG抗体は胎盤通過性があることが知られている。本剤の投与を受けた患者からの出生児においては、母体から移行するIgG抗体が減少し、感染のリスクが高まる可能性がある。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤のヒト乳汁中への移行は不明であるが、ヒトIgGは乳汁中に移行することが知られている。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

10. 相互作用

    10.2 併用注意(併用に注意すること)

    薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子

    *人免疫グロブリン製剤(ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン等)

    これらの薬剤の治療効果が減弱する可能性がある。
    これらの薬剤による治療を開始する場合、本剤の最終投与から2週間後以降に投与することが望ましい。

    本剤がこれらの薬剤の血中濃度を低下させる可能性がある。

    *抗補体(C5)モノクローナル抗体製剤(エクリズマブ(遺伝子組換え)、ラブリズマブ(遺伝子組換え))

    これらの薬剤の治療効果が減弱する可能性がある。
    これらの薬剤による治療を開始する場合、本剤の最終投与から2週間後以降に投与することが望ましい。

    本剤がこれらの薬剤の血中濃度を低下させる可能性がある。

    *抗FcRnモノクローナル抗体製剤(ロザノリキシズマブ(遺伝子組換え))

    本剤又は抗FcRnモノクローナル抗体製剤の治療効果が減弱する可能性がある。
    抗FcRnモノクローナル抗体製剤による治療を開始する場合、本剤の最終投与から2週間後以降に投与することが望ましい。

    本剤を含むFcRnに結合する薬剤の血中濃度が低下する可能性がある。

    血液浄化療法

    本剤の治療効果が減弱する可能性があるため、併用を避けることが望ましい。

    本剤による治療中に施行することにより本剤の血中濃度を低下させる可能性がある。

    *生ワクチン及び弱毒生ワクチン

    本剤による治療中の接種を避けることが望ましい。
    接種が必要な場合は本剤投与開始の少なくとも4週間前までに接種することが望ましい。
    本剤による治療中の場合、最終投与から2週間以降にワクチンを接種することが望ましい。

    生ワクチン又は弱毒生ワクチンによる感染症発現のリスクが増大するおそれがある。

    生ワクチン及び弱毒生ワクチン以外のワクチン

    ワクチンの効果が減弱する可能性がある。

    本剤の作用機序により、ワクチンに対する免疫応答が得られない可能性がある。

    11. 副作用

    次の副作用があらわれることがあるので観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

    11.1 重大な副作用

    1. 11.1.1 感染症(4.8%)

      ,,

    2. 11.1.2 ショック、アナフィラキシー(頻度不明)

    11.2 その他の副作用

    5~15%未満

    5%未満

    一般・全身障害および投与部位の状態

    注射部位紅斑、注射部位疼痛、注射部位そう痒感、注射部位発疹

    疲労

    神経系障害

    頭痛

    浮動性めまい

    胃腸障害

    悪心、嘔吐

    臨床検査

    リンパ球数減少、好中球数増加

    感染症および寄生虫症

    帯状疱疹、尿路感染、上咽頭炎、上気道感染

    皮膚および皮下組織障害

    発疹

    14. 適用上の注意

    14.1 薬剤投与前の注意

    1. 14.1.1 バイアル中が帯黄色の澄明又は僅かに乳濁した液であることを目視により確認すること。異物が認められる場合は使用しないこと。バイアルは振盪しないこと。

    14.2 薬剤投与時の注意

    1. 14.2.1 注射部位は腹部又は大腿部とし、同一箇所へ繰り返し投与することは避けること。皮膚に異常のある部位(発赤、傷、硬結、瘢痕等)は避けること。
    2. 14.2.2 本剤5.6mLを通常、30~90秒かけて投与すること。
    3. 14.2.3 他の薬剤と混合しないこと。
    4. 14.2.4 本剤は1回で全量使用する製剤であり、再使用しないこと。

    15. その他の注意

    15.1 臨床使用に基づく情報

    • 〈全身型重症筋無力症〉
      1. 15.1.1 国際共同第III相試験(ARGX-113-2001)において、本剤が投与され抗体が測定された55例のうち、エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)に対する抗体が19例(34.5%)、中和抗体が2例(3.6%)に認められた。ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)に対する抗体は3例(5.5%)に認められ、中和抗体は検出されなかった1)
    • 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎〉
      1. 15.1.2 *国際共同第II相試験(ARGX-113-1802)において、本剤が投与され抗体が測定された患者のうち、エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)に対する抗体が317例中22例(6.9%)、中和抗体が1例(0.3%)に認められた。ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)に対する抗体は316例中87例(27.5%)に認められ、中和抗体は検出されなかった2)

    16. 薬物動態

    16.1 血中濃度

    • 〈健康被験者〉

      外国人健康被験者54例に本剤(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,006.5mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として12,200単位)又はエフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)点滴静注製剤10mg/kgを1週間間隔で計4回皮下又は静脈内投与するサイクルを1回行った。4回目の投与後の薬物動態パラメータを下表に、血清中濃度推移を下図に示す3) (外国人データ)。

      パラメータ

      本剤群

      点滴静注製剤群

      N

      平均(SD)

      N

      平均(SD)

      Ctrough(μg/mL)

      25

      19.3(5.56)

      26

      16.2(6.74)

      Cmax(μg/mL)

      25

      50.1(21.2)

      26

      226(66.1)

      tmax(h)

      25

      48.00(8.00-96.02)

      26

      1.01(1.00-4.00)

      AUC0-168h(μg・h/mL)

      25

      5841(1506)

      26

      6918(1388)

      t1/2(h)

      24

      80.7(14.3)

      26

      112(134)

      CL(/F)(L/h)

      25

      0.182(0.0434)

      26

      0.115(0.0250)

      Vz(/F)(L)

      24

      20.9(5.67)

      26

      18.6(25.6)

      SD:標準偏差
      tmaxは中央値(最小値-最大値)を示す。

      図 4回目の投与後の血清中濃度推移(平均値±標準偏差)
    • 〈全身型重症筋無力症〉

      全身型重症筋無力症患者55例(日本人患者を4例含む)に本剤(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位)を1週間間隔で計4回皮下投与するサイクルを1回行ったとき、外国人及び日本人患者の初回及び4回目投与時の薬物動態パラメータを下表に示す4)

      パラメータ

      集団

      1回目

      4回目

      N

      平均(SD)

      N

      平均(SD)

      Ctrough
      (μg/mL)

      日本人

      3

      19.6(8.47)

      4

      22.9(9.18)

      外国人

      40

      18.2(8.13)

      45

      21.9(8.13)

      SD:標準偏差

    • 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎〉

      *慢性炎症性脱髄性多発根神経炎患者に本剤(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位1) )を週1回皮下投与したとき、外国人及び日本人患者の初回及び4回目投与時のCtroughを下表に示す5)

      パラメータ

      集団

      1回目

      4回目

      N

      平均(SD)

      N

      平均(SD)

      Ctrough
      (μg/mL)

      日本人

      24

      16.1(6.57)

      22

      19.6(9.30)

      外国人

      274

      14.8(6.95)

      228

      18.8(10.0)

      SD:標準偏差

    16.3 分布

    エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)点滴静注投与時の分布容積は15~20Lであった6) (外国人データ)。

    16.4 代謝

    エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)は、一般的なタンパク異化経路によってアミノ酸に分解されると推定される。

    16.5 排泄

    健康成人にエフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)点滴静注製剤10mg/kg単回投与後の尿中排泄率は投与量の0.1%未満であった6) (外国人データ)。

    16.6 特定の背景を有する患者

    1. 16.6.1 腎機能障害

      *腎機能障害患者を対象とした薬物動態試験は実施していないが、母集団薬物動態解析の結果から、本剤(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位)を1週間間隔で皮下投与したとき、軽度腎機能障害患者(eGFR:60mL/min/1.73m2以上90mL/min/1.73m2未満)は、腎機能正常患者(eGFR:90mL/min/1.73m2以上)と比較して、AUCが11~21%高くなると推定された。なお、中等度(eGFR:30mL/min/1.73m2以上60mL/min/1.73m2未満)及び重度(eGFR:30mL/min/1.73m2未満)の腎機能障害患者における有効性及び安全性を評価する十分な臨床試験データはない7),8)

    16.8 その他

    1. 16.8.1 薬力学
      • 〈全身型重症筋無力症〉

        国際共同第III相試験(ARGX-113-2001)において、本剤(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位)又はエフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)点滴静注製剤10mg/kgを1週間間隔で計4回投与したときの総IgG濃度の推移は、以下のとおりであった9)

        図 ベースラインからの総IgG濃度の変化率(全患者、平均値±標準誤差)

        国際共同第III相試験(ARGX-113-2001)における本剤投与後の総IgG濃度の最低値の分布は、中央値[25パーセンタイル値, 75パーセンタイル値]は2.38[1.87, 3.20]、[最小値, 最大値]は[1.04, 8.01]g/Lであった10)
        なお、点滴静注製剤の臨床試験では投与によるIgG以外の免疫グロブリン濃度(IgA、IgD、IgE及びIgM)への影響はなく、アルブミン濃度の減少は認められなかった11)

      • 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎〉

        *国際共同第II相試験(ARGX-113-1802)において、本剤(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位1) )又はプラセボを週1回皮下投与したときの総IgG濃度の推移は、非盲検期及び二重盲検治療中止期でそれぞれ以下のとおりであった12)

        図 非盲検期のベースラインからの総IgG濃度の変化率、非盲検期(平均値±標準誤差)
        図 非盲検期のベースラインからの総IgG濃度の変化率、二重盲検治療中止期(平均値±標準誤差)

    1) 一部の被験者ではエフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,006.5mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として12,200単位が投与された。

    17. 臨床成績

    17.1 有効性及び安全性に関する試験

    • 〈全身型重症筋無力症〉
      1. 17.1.1 国際共同第III相試験(ARGX-113-2001)10)

        全身型重症筋無力症患者110例(日本人患者8例を含む)を対象として、エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)静注製剤に対する本剤の非劣性を確認するランダム化非盲検群間比較試験を実施した。本試験では、スクリーニング時にMGFA分類Class II、III又はIVとされた患者に対し、治験薬投与期の3週間後に7週間の観察を行う10週間(1サイクル)で実施した。治験薬投与期において、コリンエステラーゼ阻害薬、経口副腎皮質ステロイド及び/又は非ステロイド性免疫抑制剤投与下で、1週間間隔2) で計4回、本剤(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位)を皮下投与、又は点滴静注製剤10mg/kgを静脈内投与したとき、主要評価項目である総IgG濃度のベースラインから4週目(治験薬最終投与1週間後)までの変化率は下表に示すとおりであり、最小二乗平均の群間差の95%信頼区間の上限値が非劣性の限界値(10%)を下回ったことから、本剤の点滴静注製剤に対する非劣性が検証された。

        表 総IgG濃度のベースラインから4週目(治験薬最終投与1週間後)までの変化率

        総IgG濃度(μg/mL)

        変化率
        (%)a)b)

        群間差
        [95%信頼区間]b)

        p値c)

        ベースライン

        4週目

        本剤群

        8747±495(55)

        2947±202(53)

        -66.4±1.27(50)d)

        -4.2
        [-7.73, -0.66]

        <0.0001

        点滴静注製剤群

        8995±472(55)

        3349±187(52)

        -62.2±1.25(52)d)

        平均値±標準誤差(評価例数)
        a)最小二乗平均値±標準誤差
        b)投与群を要因、ベースラインの総IgG濃度を共変量としたANCOVAによる解析
        c)非劣性の仮説検定に対するp値(非劣性マージン10%、有意水準片側2.5%)
        d)4週目時点の総IgG濃度が得られなかった被験者(本剤群2例、点滴静注製剤群3例)及び試験期間中に治験薬の投与が中止され、最終投与時点から7日後の総IgG濃度が得られなかった被験者(本剤群3例)は除外された。

        副次評価項目であるMG-ADLレスポンダー3) 及びQMGレスポンダー4) の割合、及びベースラインから4週目(治験薬最終投与1週間後)までのMG-ADL総スコア及びQMG総スコアの変化量は、下表のとおりであった。

        表 MG-ADLレスポンダー及びQMGレスポンダーの割合

        本剤群
        (n/N)

        点滴静注製剤群(n/N)

        レスポンダー割合の差[95%CI]a)

        MG-ADLレスポンダーの割合

        69.1%(38/55)

        69.1%(38/55)

        0.0[-17.3, 17.3]

        QMGレスポンダーの割合

        58.2%(32/55)

        55.6%(30/54)

        2.6[-16.0, 21.2]

        n/N:例数/評価例数、CI:信頼区間
        a)Wald法

        表 ベースラインから4週目(治験薬最終投与1週間後)までのMG-ADL総スコア及びQMG総スコアの変化量

        本剤群

        点滴静注製剤群

        変化量の差a)

        n

        平均(SE)

        n

        平均(SE)

        平均
        [95%CI]

        MG-ADL総スコア

        ベースライン

        55

        8.8(0.35)

        55

        8.5(0.36)

        4週目

        52

        -5.1(0.38)

        53

        -4.7(0.37)

        -0.4
        [-1.46, 0.62]

        QMG
        総スコア

        ベースライン

        55

        15.8(0.60)

        55

        16.8(0.62)

        4週目

        52

        -5.9(0.64)

        51

        -5.7(0.57)

        -0.2
        [-1.90, 1.50]

        SE:標準誤差
        a)Satterthwaite近似を用いた変化量の差に対する2標本t検定による信頼限界

        本剤群の副作用発現頻度は43.6%(24/55例)であった。主な副作用は注射部位反応であり、注射部位発疹(8例、14.5%)、注射部位紅斑(7例、12.7%)、注射部位そう痒感(5例、9.1%)及び注射部位疼痛(3例、5.5%)であった。

        2) 1週間間隔の治験薬投与において、来院の許容期間は±1日と設定された。
        3) 治験薬最終投与から1週間後までにMG-ADL総スコアがベースラインと比べて2点以上減少し、かつその減少が連続して4週間以上維持された患者
        4) 治験薬最終投与から1週間後までにQMG総スコア(肺活量がグレードFの場合、最悪値3点で補完した値)がベースラインから3点以上減少し、かつその減少が連続して4週間以上維持された患者

      2. 17.1.2 国際共同第III相継続投与試験(ARGX-113-2002)13)

        国際共同第III相試験(ARGX-113-2001)又は国際共同第III相継続投与試験(ARGX-113-1705)に参加した全身型重症筋無力症患者179例(日本人患者16例を含む)を対象として、本剤の皮下投与による非盲検非対照継続投与試験が実施された。本試験は、3週間の治験薬投与期と、その後の投与間観察期を1サイクルとし、次のサイクルは最終投与から4週間以上経過後に医師の判断により開始することが可能とされた。本剤初回投与時から次のサイクル投与開始時までの期間の中央値は約7.1~8.1週間の範囲であった。各サイクルの治験薬投与期(3週間)において、コリンエステラーゼ阻害薬、経口副腎皮質ステロイド及び/又は非ステロイド性免疫抑制剤投与下で、本剤(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位)を1週間間隔で計4回皮下投与したとき、各サイクルでのベースラインから4週目(本剤最終投与1週間後)までのMG-ADL総スコアの変化量は下表のとおりであった。

        表 各サイクルでのベースラインから4週目(本剤最終投与1週間後)までのMG-ADL総スコアの変化量(ARGX-113-2002)

        MG-ADL総スコア

        例数

        平均値(標準誤差)

        サイクル1

        ベースライン

        179

        7.9(0.26)

        4週目

        167

        -4.0(0.24)

        サイクル2

        ベースライン

        166

        7.3(0.27)

        4週目

        162

        -3.3(0.24)

        サイクル3

        ベースライン

        157

        7.1(0.28)

        4週目

        149

        -3.3(0.24)

        サイクル4

        ベースライン

        144

        7.0(0.30)

        4週目

        136

        -3.3(0.26)

        サイクル5

        ベースライン

        131

        6.8(0.33)

        4週目

        124

        -3.3(0.28)

        サイクル6

        ベースライン

        122

        6.7(0.34)

        4週目

        113

        -2.8(0.29)

        サイクル7

        ベースライン

        111

        6.4(0.34)

        4週目

        104

        -2.6(0.30)

        サイクル8

        ベースライン

        86

        6.0(0.38)

        4週目

        74

        -2.1(0.31)

        サイクル9

        ベースライン

        68

        5.9(0.49)

        4週目

        49

        -1.8(0.38)

        上段:各サイクルにおけるベースラインのMG-ADL総スコア
        下段:各サイクルのベースラインから4週目(本剤最終投与1週間後)までのMG-ADL総スコアの変化量

        副作用発現頻度は、53.6%(96/179例)で、大部分は注射部位反応(78例、43.6%)であった。主な副作用は、注射部位紅斑(50例、27.9%)、注射部位疼痛(21例、11.7%)、注射部位そう痒感(19例、10.6%)であった。

    • 〈慢性炎症性脱髄性多発根神経炎〉
      1. 17.1.3 国際共同第II相試験(ARGX-113-1802)14)

        *18歳以上の疾患活動性を有する慢性炎症性脱髄性多発根神経炎患者を対象とした非盲検導入期(ステージA、最長13週間)及び二重盲検治療中止期(ステージB、最長48週間)から構成されるプラセボ対照二重盲検無作為化治療中止試験が実施された。
        非盲検期において、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎患者322例(日本人患者24例を含む)を対象に、本剤(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位5) )を週1回皮下投与したとき、主要評価項目である非盲検期中に臨床的改善6) が2回連続で確認された被験者の割合は、66.5%(214/322例)[95%信頼区間:61.0, 71.6]であった。なお、初めて臨床的改善が認められるまでの時間の中央値は43.0日[95%信頼区間:31.0, 51.0]であった。
        非盲検期間中に臨床的改善6) が2回連続で確認された被験者を対象として、二重盲検治療中止期に移行した被験者221例(日本人患者18例を含む)に本剤(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位5) )又はプラセボを週1回皮下投与したとき、主要評価項目である二重盲検治療中止期のベースラインからの臨床的悪化(調整INCATスコアの1点以上の増加)7) が最初に認められるまでの期間については以下のとおりであった。

        表 二重盲検治療中止期における臨床的悪化が最初に認められるまでの期間

        n

        2群の比較

        臨床的悪化例数(%)

        ハザード比
        [95% CI]a)

        p値a)b)

        本剤群

        111

        0.394
        (0.253, 0.614)

        <0.0001

        31(27.9)

        プラセボ群

        110

        59(53.6)

        n:例数、CI:信頼区間
        a)慢性炎症性脱髄性多発根神経炎に対する前治療と非盲検期における調整INCATスコアの変化量で層別したCox比例ハザードモデルにより算出。信頼区間はWald法に基づき算出。
        b)Wald検定に基づくp値。有意水準は両側5%。

        図 二重盲検治療中止期における臨床的悪化が最初に認められるまでの期間のカプランマイヤー曲線

        副作用発現頻度は、非盲検期で31.4%(101/322例)、二重盲検治療中止期の本剤群で24.3%(27/111例)であった。主な副作用は注射部位紅斑(非盲検期で32例、9.9%、二重盲検治療中止期で6例、5.4%)であった。

        5) 一部の被験者ではエフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,006.5mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として12,200単位が投与された。
        6) 臨床的改善は、非盲検期組入れ前の慢性炎症性脱髄性多発根神経炎に対する治療の有無や、臨床症状に応じて、非盲検期のベースラインからINCATスコアの1点以上の減少、I-RODSスコアの4点以上の増加、又は平均握力の8 kPa以上の増加が認められた場合と定義した。
        7) 臨床的悪化は、調整INCATスコアが二重盲検治療中止期のベースラインから2回連続で1点増加、又は2点以上増加した場合と定義した。

    18. 薬効薬理

    18.1 作用機序

    エフガルチギモド アルファは、胎児性Fc受容体(FcRn)を標的とするアミノ酸残基を改変したヒトIgG1抗体のFcフラグメントであり、内因性IgGのFcRnへの結合を競合阻害することによって、内因性IgGのリサイクルを阻害して、IgG分解を促進し、IgG自己抗体を含む血中IgG濃度を減少させる15),16) 。ボルヒアルロニダーゼ アルファは加水分解によりヒアルロン酸を分解する17) 。ボルヒアルロニダーゼ アルファがヒアルロン酸を分解することで皮下組織の浸透性が増加し、エフガルチギモド アルファを吸収及び拡散させる。

    18.2 FcRnに対する結合作用(in vitro

    エフガルチギモド アルファのヒトFcRnに対する平衡解離定数(Kd)(平均値±標準偏差)は、pH6.0及びpH7.4の条件下において、それぞれ0.35±0.06nmol/L及び8.59±1.35nmol/Lであった18)

    18.3 内因性IgGに対する作用(in vivo

    エフガルチギモド アルファ20mg/kgをサルに単回皮下投与したとき、血清中IgG濃度の減少が認められた19)

    19. 有効成分に関する理化学的知見

    19.1 エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)

    一般的名称

    エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)
    Efgartigimod Alfa(Genetical Recombination)(JAN)

    本質

    エフガルチギモド アルファは、遺伝子組換えヒトIgG1 Fcドメイン類縁体であり、ヒトIgG1の221~447番目(Eu番号)のアミノ酸残基に相当する。エフガルチギモド アルファの32、34、36、213及び214番目のアミノ酸残基はそれぞれTyr、Thr、Glu、Lys及びPheに置換されている。エフガルチギモド アルファは、チャイニーズハムスター卵巣細胞により産生される。エフガルチギモド アルファは、227個のアミノ酸残基からなるサブユニット2個から構成される糖タンパク質(分子量:約54,000)である。

    19.2 ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)

    一般的名称

    ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)
    Vorhyaluronidase Alfa(Genetical Recombination)(JAN)

    本質

    ボルヒアルロニダーゼ アルファは、遺伝子組換えヒトヒアルロニダーゼPH-20類縁体であり、ヒトヒアルロニダーゼPH-20のアミノ酸配列の36~482番目に相当する。ボルヒアルロニダーゼ アルファは、チャイニーズハムスター卵巣細胞により産生される。ボルヒアルロニダーゼ アルファは、447個のアミノ酸残基からなる糖タンパク質(分子量:60,000~65,000)である。

    20. 取扱い上の注意

    凍結を避け、外箱開封後は遮光して保存すること。

    21. 承認条件

      1. 21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
    • 〈全身型重症筋無力症〉
      1. 21.2 国内での投与経験が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。

    22. 包装

    ヒフデュラ配合皮下注:1バイアル

    23. 主要文献

    1) 社内資料:免疫原性(2024年1月18日承認、CTD 2.7.2.4.1)

    2) 社内資料:免疫原性(2024年12月27日承認、CTD 2.7.2.4.1)

    3) 社内資料:薬物動態(ARGX-113-1907試験)(2024年1月18日承認、CTD 2.7.2.2.1.1.2)

    4) 社内資料:薬物動態(ARGX-113-2001試験)(2024年1月18日承認、CTD 2.7.2.3.10.1.1)

    5) 社内資料:薬物動態(ARGX-113-1802試験)(2024年12月27日承認、CTD 2.7.2.2.1.1.1)

    6) 社内資料:第I相試験(ARGX-113-1501試験)(2022年1月20日承認、エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)点滴静注製剤のCTD 2.7.2.2.1.1.1)

    7) 社内資料:腎機能障害(2024年1月18日承認、CTD 2.7.2.3.8.5)

    8) 社内資料:腎機能障害(2024年12月27日承認、CTD 2.7.2.3.7.5)

    9) 社内資料:総IgGのベースラインからの変化(2024年1月18日承認、CTD 2.5.4.1)

    10) 社内資料:第III相試験(ARGX-113-2001試験)(2024年1月18日承認、CTD 2.7.6.3)

    11) 社内資料:ARGX-113-1501試験、ARGX-113-1602試験、Pooling Block 2:エフガルチギモドを投与したすべてのgMG患者(2022年1月20日承認、エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)点滴静注製剤のCTD 2.7.4.3.1.1; 3.2.1; 3.3.2)

    12) 社内資料:薬力学(ARGX-113-1802試験)(2024年12月27日承認、CTD 2.7.2.2.2.1.1)

    13) 社内資料:第III相試験(ARGX-113-2002試験)(2024年1月18日承認、CTD 2.7.6.4)

    14) 社内資料:第II相試験(ARGX-113-1802試験)(2024年12月27日承認、CTD 2.7.6.1)

    15) Ulrichts P, et al.: J Clin Invest. 2018; 128(10): 4372–4386.

    16) Vaccaro C, et al.: Nat Biotechnol. 2005; 23(10): 1283–1288.

    17) Frost GI.: Expert Opin Drug Deliv 2007; 4(4): 427-440.

    18) 社内資料:ヒトFcRnへの結合親和性(2022年1月20日承認、エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)点滴静注製剤のCTD 2.6.2.2.2.1)

    19) 社内資料:カニクイザルIgGに対する薬理作用(2024年1月18日承認、CTD 2.6.2.2.1.1)

    24. 文献請求先及び問い合わせ先

    アルジェニクスジャパン株式会社

    107-0052 東京都港区赤坂二丁目5番8号
    ヒューリックJP赤坂ビル

    TEL:0120-174-103

    25. 保険給付上の注意

    本剤は新医薬品であるため、厚生労働省告示第107号(平成18年3月6日付)に基づき、2025年4月末日までは、投薬は1回14日分を限度とされている。

    26. 製造販売業者等

    26.1 製造販売元

    アルジェニクスジャパン株式会社

    東京都港区赤坂二丁目5番8号

    〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル

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