医療用医薬品 詳細表示

ジーラスタ皮下注3.6mg

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
1.警告
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
9.8高齢者
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
14.適用上の注意
15.その他の注意
15.1臨床使用に基づく情報
15.2非臨床試験に基づく情報
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.3分布
16.8その他
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
18.薬効薬理
18.1作用機序
18.2薬理作用
19.有効成分に関する理化学的知見
20.取扱い上の注意
21.承認条件
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
26.製造販売業者等

ジーラスタ皮下注3.6mg

添付文書番号

3399410G1020_1_12

企業コード

230124

作成又は改訂年月

**2024年5月改訂(第5版、効能変更、用法変更及び用量変更)
2023年10月改訂(第4版)

日本標準商品分類番号

873399

薬効分類名

持続型G-CSF製剤

承認等

ジーラスタ皮下注3.6mg

販売名コード

YJコード

3399410G1020

販売名英語表記

G-LASTA Subcutaneous Injection

承認番号等

承認番号

22600AMX01304

販売開始年月

2014年11月

貯法・有効期間

貯法

2~8℃に保存

有効期間

36箇月

一般的名称

ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)

1. 警告

  • **〈造血幹細胞の末梢血中への動員〉

    本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法及び造血幹細胞移植に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される患者又は末梢血幹細胞移植提供ドナー(ドナー)についてのみ投与すること。また、本剤の投与に先立ち、患者又はドナー及びその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与を開始すること。,

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

  • 〈効能共通〉
    1. 2.1 本剤の成分又は他の顆粒球コロニー形成刺激因子製剤に過敏症の患者
  • 〈がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制〉
    1. 2.2 骨髄中の芽球が十分減少していない骨髄性白血病の患者及び末梢血液中に骨髄芽球の認められる骨髄性白血病の患者,

3. 組成・性状

3.1 組成

ジーラスタ皮下注3.6mg

有効成分ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)   3.6mg
添加剤D-ソルビトール   18mg
氷酢酸   0.216mg
水酸化ナトリウム   適量
ポリソルベート20   0.0144mg
容量  1シリンジ0.36mL

3.2 製剤の性状

ジーラスタ皮下注3.6mg

pH3.7~4.3
浸透圧比約1(生理食塩液対比)
色・性状無色澄明の液

4. 効能又は効果

  • がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制
  • **造血幹細胞の末梢血中への動員

5. 効能又は効果に関連する注意

  • 〈がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制〉
    1. 5.1 臨床試験に組み入れられた患者における発熱性好中球減少症発現のリスク等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、適応患者の選択を行うこと。,
    2. 5.2 本剤を使用する際には、国内外の最新のガイドライン等を参考にすること。
  • 〈造血幹細胞の末梢血中への動員〉
    1. 5.3 **「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤以外の顆粒球コロニー形成刺激因子製剤の使用についても慎重に検討すること。,,

6. 用法及び用量

  • 〈がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制〉

    通常、成人にはがん化学療法剤投与終了後の翌日以降、ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)として、3.6mgを化学療法1サイクルあたり1回皮下投与する。

  • **〈造血幹細胞の末梢血中への動員〉

    通常、成人にはペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)として、7.2mgを1回皮下投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  • 〈がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制〉
    1. 7.1 がん化学療法剤の投与開始10日前から投与終了後24時間以内に本剤を投与した場合の安全性は確立していない。
  • 〈造血幹細胞の末梢血中への動員〉
    1. 7.2 **本剤投与日を1日目として、末梢血幹細胞採取は4~6日目を目安に施行する。
  • 〈自家末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員〉
    1. 7.3 **がん化学療法終了後の造血回復期における造血幹細胞の動員を目的に、本剤を投与した場合の有効性及び安全性は確立していない。

8. 重要な基本的注意

  • 〈効能共通〉
    1. 8.1 過敏症等の反応を予測するために、使用に際してはアレルギー既往歴、薬物過敏症等について十分な問診を行うこと。,,
    2. 8.2 本剤投与により骨痛、背部痛等が発現することがあるので、このような場合には非麻薬性鎮痛剤を投与するなどの適切な処置を行うこと。
    3. 8.3 本剤投与により脾腫、脾破裂が発現することがあるので、血液学的検査値の推移に留意するとともに、腹部超音波検査等により観察を十分に行うこと。
  • 〈がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制〉
    1. 8.4 急性骨髄性白血病患者では本剤投与により芽球の増加を促進させることがあるので、定期的に血液検査及び骨髄検査を行うこと。,
    2. 8.5 *海外観察研究において、がん化学療法(単独又は放射線療法との併用)とともにペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)又はフィルグラスチム(遺伝子組換え)が使用された乳癌又は肺癌患者では骨髄異形成症候群又は急性骨髄性白血病のリスクが増加したとの報告がある1)。本剤と骨髄異形成症候群又は急性骨髄性白血病の因果関係は明らかではないが、本剤の投与後は患者の状態を十分に観察すること。
  • 〈造血幹細胞の末梢血中への動員〉
    1. 8.6 **造血幹細胞の動員及び末梢血幹細胞採取に際しては関連するガイドライン等を参考に適切に行うこと。
    2. 8.7 **本剤の投与は患者又はドナーの全身状態を考慮し、観察を十分に行い、慎重に投与するとともに、本剤投与終了後においても安全性の確認を十分に行うこと。
    3. 8.8 末梢血幹細胞採取に伴い、心停止等の重篤な事象や、全身倦怠感、四肢のしびれ、血管迷走神経反応等が認められることがあるので、血圧等の全身状態の変化に注意し、異常が認められた場合は直ちに適切な処置を行うこと。
    4. 8.9 末梢血幹細胞採取に伴う一過性の血小板減少等が現れることがあるのでアスピリン等の血小板凝集抑制作用を有する薬剤の使用には十分に注意すること。
    5. 8.10 **本剤投与後及び末梢血幹細胞採取終了後に血小板減少が現れることがあるので、定期的に血液検査を行い、患者又はドナーの状態に十分注意すること。また、高度な血小板減少が認められた際には、末梢血幹細胞採取時に得られる自己血による血小板輸血等の適切な処置を行うこと。
    6. 8.11 **末梢血幹細胞採取終了後に白血球(好中球)減少が現れることがあるので、定期的に血液検査を行い、患者又はドナーの状態に十分注意すること。
    7. 8.12 **本剤投与による長期の安全性は確立していない。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 薬物過敏症の既往歴のある患者

    ,

  2. 9.1.2 アレルギー素因のある患者

    ,

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。

9.7 小児等

小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能(造血機能、肝機能、腎機能等)が低下している。

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副作用

  1. 11.1.1 **ショック(いずれも頻度不明)、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)

    ,,

  2. 11.1.2 **間質性肺疾患(0.5%、2.4%)

    肺臓炎、肺障害等の間質性肺疾患が発現又は増悪することがある。発熱、咳嗽、呼吸困難及び胸部X線検査異常等が認められた場合には、副腎皮質ホルモン剤の投与等を考慮し、本剤の投与を中止するなどの適切な処置を行うこと。

  3. 11.1.3 **急性呼吸窮迫症候群(いずれも頻度不明)

    急速に進行する呼吸困難、低酸素血症、両側性びまん性肺浸潤影等の胸部X線異常等が認められた場合には、呼吸管理等の実施を考慮し、本剤の投与を中止するなどの適切な処置を行うこと。

  4. 11.1.4 **芽球の増加 (いずれも頻度不明)

    急性骨髄性白血病において、芽球の増加を促進させることがある。,

  5. 11.1.5 **脾腫(0.3%、頻度不明)・脾破裂(いずれも頻度不明)

    脾臓の急激な腫大が認められた場合には、本剤の投与を中止するなどの適切な処置を行うこと。

  6. 11.1.6 **毛細血管漏出症候群(いずれも頻度不明)

    低血圧、低アルブミン血症、浮腫、肺水腫、胸水、腹水、血液濃縮等が認められた場合には、本剤の投与を中止するなどの適切な処置を行うこと。

  7. 11.1.7 **Sweet症候群(いずれも頻度不明)
  8. 11.1.8 **皮膚血管炎(いずれも頻度不明)
  9. 11.1.9 **大型血管炎(大動脈、総頸動脈、鎖骨下動脈等の炎症)(いずれも頻度不明)

    発熱、CRP上昇、大動脈壁の肥厚等が認められた場合には、本剤の投与を中止するなどの適切な処置を行うこと。

**注)同種末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員の臨床試験では、上記の重大な副作用は報告されていない。発現頻度は、がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制の臨床試験成績、自家末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員の臨床試験成績の順に記載した。

11.2 その他の副作用

  • 〈がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制〉

5%以上

1~5%未満

1%未満

頻度不明

皮膚

発疹

じん麻疹、紅斑、そう痒症

多形紅斑、皮膚剥脱

筋・骨格

背部痛、関節痛、筋肉痛

骨痛、四肢痛

筋骨格痛

消化器

下痢、便秘、腹痛、腹部不快感、悪心、嘔吐、口内炎

肝臓

ALT上昇、AST上昇

肝機能異常、血中ビリルビン増加、γ-GTP増加

血液

白血球増加、好中球増加、リンパ球減少

貧血、血小板減少、白血球減少

単球増加

代謝及び栄養

電解質(カリウム、カルシウム、リン、クロール、ナトリウム)異常、高血糖、食欲減退

精神
神経系

頭痛

味覚異常、めまい、異常感覚

感覚鈍麻、不眠症

呼吸器

口腔咽頭痛、咳嗽、呼吸困難

腎臓

糸球体腎炎

その他

LDH上昇、発熱、倦怠感、Al-P上昇

潮紅、浮腫、CRP上昇、疼痛、胸痛

血中アルブミン減少、尿酸増加、注射部位反応(注射部位疼痛を含む)

  • **〈同種末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員〉

80%以上

50~80%未満

10~50%未満

頻度不明

筋・骨格

背部痛

関節痛

骨痛

消化器

悪心

肝臓

AST上昇、ALT上昇

血液

血小板減少

精神神経系

頭痛

その他

Al-P上昇(100%)、LDH上昇(100%)

尿酸増加

発熱、倦怠感、CRP上昇、胸痛

  • **〈自家末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員〉

20%以上

10~20%未満

10%未満

筋・骨格

背部痛

骨痛

精神神経系

頭痛

その他

Al-P上昇、LDH上昇、尿酸増加、発熱

疼痛

14. 適用上の注意

14.1 薬剤投与時の注意

プランジャーロッドの無理な操作はしないこと。またバックストップは、投与終了後まで外さないこと。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報

  1. 15.1.1 本剤の国内臨床試験において、悪性リンパ腫患者での骨髄異形成症候群発現が報告されている(0.3%、2/632例)。
  2. 15.1.2 国内の医療情報データベースを用いた疫学調査において、本剤の投与後に血小板減少(5.0×104/μL 未満)のリスクが増加したとの報告がある2)
  3. 15.1.3 本剤の国内臨床試験において、本剤に対する抗体の産生が報告されている。
  4. 15.1.4 顆粒球コロニー形成刺激因子製剤を投与したドナーにおいて、骨髄増殖性疾患及び急性骨髄性白血病が発症したとの報告がある。
  5. 15.1.5 顆粒球コロニー形成刺激因子製剤を投与したドナーにおいて、因果関係は明確ではないものの、脳血管障害、心筋梗塞、急性虹彩炎、痛風性関節炎等がみられたとの報告がある。また、末梢血幹細胞採取時に一時的な心停止が報告されている。

15.2 非臨床試験に基づく情報

顆粒球コロニー形成刺激因子が、数種のヒト膀胱癌及び骨肉腫細胞株に対しin vitroあるいはin vivoで増殖促進傾向を示したとの報告がある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回投与
    1. (1) 健康成人

      健康成人に本剤3.6及び7.2mg1)を単回皮下投与したときの血清中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった3)

      健康成人に単回皮下投与したときの血清中濃度推移(平均値+標準偏差)
      健康成人に単回皮下投与したときの薬物動態パラメータ

      投与量

      3.6mg

      7.2mg

      被験者数

      6

      6

      tmax(h)

      18.0
      (12.0, 24.0)

      24.0
      (12.0, 36.0)

      Cmax(ng/mL)

      92.8±56.7

      213±78

      AUC0-∞(ng・h/mL)

      4140±1890

      9220±3130a)

      t1/2(h)

      56.8±20.4

      51.9±20.1a)

      平均値±標準偏差(tmax は中央値(最小値, 最大値))
      a)n=5

    2. (2) 肺癌患者

      がん化学療法施行後の肺癌患者に本剤30、60及び100μg/kg1)を単回皮下投与したときの血清中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった。Cmax及びAUC0-∞は投与量比以上に増加し、本剤の薬物動態は非線形性を示した4)

      肺癌患者に単回皮下投与したときの血清中濃度推移(平均値+標準偏差)
      肺癌患者に単回皮下投与したときの薬物動態パラメータ

      投与量

      30μg/kg

      60μg/kg

      100μg/kg

      被験者数

      6

      6

      6

      tmax(h)

      36.0
      (8.0, 48.1)

      47.6
      (8.0, 263.1)

      46.8
      (24.0, 141.3)

      Cmax(ng/mL)

      18.5±14.0

      74.2±63.5

      157.0±127.3

      AUC0-∞
      (ng・h/mL)

      1285±520

      5497±4704a)

      13364±9187

      t1/2(h)

      57.4±38.7

      44.8±21.1a)

      38.4±10.5

      平均値±標準偏差(tmaxは中央値(最小値, 最大値))
      a)n=5

    3. (3) 悪性リンパ腫患者

      がん化学療法施行後の悪性リンパ腫患者に本剤1.8、3.6及び6.0mg1)を単回皮下投与したときの血清中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった。Cmax及びAUC0-∞は投与量比以上に増加し、本剤の薬物動態は非線形性を示した5)

      悪性リンパ腫患者に単回皮下投与したときの血清中濃度推移(平均値+標準偏差)
      悪性リンパ腫患者に単回皮下投与したときの薬物動態パラメータ

      投与量

      1.8mg

      3.6mg

      6.0mg

      被験者数

      10

      9

      9

      tmax(h)

      110.9
      (60.2, 134.8)

      109.8
      (61.5, 113.8)

      64.3
      (13.0, 110.6)

      Cmax(ng/mL)

      47.7±40.5

      96.8±64.8

      249.2±163.6

      AUC0-∞
      (ng・h/mL)

      6177±5818

      13393±9349

      32501±24807

      t1/2(h)

      16.9±4.4

      29.3±13.5

      27.5±7.4

      平均値±標準偏差(tmaxは中央値(最小値, 最大値))

    4. (4) **多発性骨髄腫及び悪性リンパ腫患者

      多発性骨髄腫及び悪性リンパ腫患者に、本剤7.2mg1)を単回皮下投与したときの血清中濃度は両患者集団間で同程度であった6)

  2. 16.1.2 反復投与

    悪性リンパ腫患者に、本剤1.8、3.6及び6.0mg1)を化学療法1サイクルごとに単回皮下投与したときの血清中トラフ濃度は、化学療法2~4サイクルにおいていずれの投与量でも定量下限値(0.2ng/mL)未満であった7)

1) 本剤の承認用量は1回3.6mg(がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制)又は7.2mg(造血幹細胞の末梢血中への動員)である。

16.3 分布

  1. 16.3.1 組織移行性

    雄性ラットに125I-ペグフィルグラスチム100μg/kgを単回皮下投与したとき、甲状腺に高い放射能が認められた。甲状腺を除き、全体として放射能の組織への移行性は低かった8)

16.8 その他

本剤の消失には、好中球及び好中球前駆細胞に発現している顆粒球コロニー形成刺激因子受容体を介して本剤が細胞内へ取りこまれ、細胞内分解を受ける経路が寄与していると推察される9)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  • 〈がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制〉
    1. 17.1.1 国内第Ⅲ相試験(悪性リンパ腫)

      悪性リンパ腫患者2)109例を対象にフィルグラスチムを対照薬とした二重盲検比較試験を実施した。その結果、化学療法3)1サイクルあたり本剤3.6mgの1回皮下投与はフィルグラスチム50μg/m2連日皮下投与の好中球数減少抑制効果に劣らず、好中球数500/mm3未満の日数(平均値±標準偏差)は本剤投与群4.5±1.2日、フィルグラスチム群4.7±1.3日であった10)
      副作用発現頻度は63.0%(34/54例)であった。主な副作用は、背部痛20.4%(11/54例)、血中乳酸脱水素酵素増加14.8%(8/54例)、発熱及び血中ビリルビン増加 各5.6%(3/54例)、血小板数減少、血中Al-P増加、ALT増加、肝機能検査異常、関節痛、筋骨格痛及び紅斑 各3.7%(2/54例)であった。

      • 2) 化学療法開始前2週間以内の検査で、以下の基準を満たす造血能及び肝・腎機能を有する患者
        • 好中球数が1,000/μL以上
        • 血小板数が7.5×104/μL以上
        • 総ビリルビンが施設基準値上限の1.5倍以下
        • クレアチニンが1.5mg/dL以下
      • 3) エトポシド100mg/m2をDay1から3に、デキサメタゾン40mgをDay1から3に、シクロホスファミド水和物1,200mg/m2をDay1に、シタラビン2,000mg/m2をDay2から3にそれぞれ静脈内投与し、リツキシマブ(遺伝子組換え)(投与時期、用法及び用量は規定せず)を併用可能とされた。
    2. 17.1.2 国内第Ⅲ相試験(乳癌)

      乳癌患者4)346例を対象にプラセボを対照薬とした二重盲検比較試験を実施した。その結果、化学療法5)1サイクルあたり本剤3.6mgの1回皮下投与はプラセボと比較して有意に発熱性好中球減少症の発症を抑制し(p値<0.001、χ2検定)、発熱性好中球減少症の発症割合は本剤投与群1.2%(2/173例)、プラセボ群68.8%(119/173例)であった11)
      副作用発現頻度は82.1%(142/173例)であった。主な副作用は、血中乳酸脱水素酵素増加30.1%(52/173例)、関節痛27.7%(48/173例)、発熱22.0%(38/173例)、筋肉痛18.5%(32/173例)、倦怠感及び背部痛 各17.3%(30/173例)であった。

      • 4) 化学療法開始前2週間以内の検査で、以下の基準を満たす造血能及び肝・腎機能を有する患者
        • 好中球数が1,500/μL以上
        • ヘモグロビン濃度が10g/dL以上
        • 血小板数が1.0×105/μL以上
        • AST及びALTが施設基準値上限の3倍以下
        • 総ビリルビンが施設基準値上限の1.5倍以下
        • HBs抗原及びHBc抗体が陰性(化学療法第1サイクル施行前3ヵ月以内の検査でも可)
        • クレアチニンが1.5mg/dL以下
      • 5) 21日を1サイクルとして、ドセタキセル水和物75mg/m2、シクロホスファミド水和物600mg/m2をDay1にそれぞれ静脈内投与することとされた。
  • 〈同種末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員〉
    1. 17.1.3 国内第Ⅱ相試験(健康成人)

      健康成人35例を対象とした単施設非対照非盲検試験を実施した。本治験のEvaluationフェーズでは23例に本剤7.2mgを単回皮下投与した。その結果、本剤投与日を1日目としたとき、7日目までに末梢血中のCD34陽性細胞数が20/μLを超えた被験者数及び被験者割合(95%信頼区間)は、23例中23例及び100%(85.2, 100.0%)であった12)
      副作用の発現は、本剤7.2mgが単回皮下投与された29例6)全例に認められた。主な副作用は、血中Al-P増加及び血中乳酸脱水素酵素増加 各100%(29/29例)、背部痛79.3%(23/29例)、血小板数減少、頭痛及び血中尿酸増加 各72.4%(21/29例)、AST増加62.1%(18/29例)、ALT増加55.2%(16/29例)であった

      • 6) Pilotフェーズで本剤7.2mgが単回皮下投与された6例を含む。
  • 〈自家末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員〉
    1. 17.1.4 **国内第Ⅱ相試験(多発性骨髄腫及び悪性リンパ腫)

      自家末梢血幹細胞移植が予定された多発性骨髄腫(MM)患者60例を対象にフィルグラスチムを対照薬としたMMコホート(多施設実薬対照非盲検デザイン)、悪性リンパ腫(ML)患者12例を対象としたMLコホート(多施設非対照非盲検デザイン)からなる試験を実施した。用法及び用量は、MMコホートの本剤群及びMLコホートでは、本剤7.2mgを第1日目に単回皮下投与することとされ、MMコホートのフィルグラスチム群では、フィルグラスチム400μg/m2を第1日目から末梢血幹細胞採取終了日まで1日1回連日皮下投与することとされた。本試験では第1、4及び5日目に末梢血中のCD34陽性細胞数を測定し、第5日目に末梢血幹細胞採取を実施することとされた。第5日目に採取された末梢血幹細胞数が規定に達しなかった場合7)には、第6日目以降も末梢血中のCD34陽性細胞数を測定し、第6及び7日目にも末梢血幹細胞採取を実施することとされた。さらに、第4~6日目に末梢血中への幹細胞動員が不十分と判断された場合8)には、末梢血幹細胞採取実施9~12時間前にプレリキサホル0.24mg/kgを単回皮下投与することが可能とされた9)。その結果、全末梢血幹細胞採取期間に採取されたCD34陽性細胞数が2×106/kg以上であった被験者数及び被験者割合(95%信頼区間)は、MMコホートでは本剤群29例10)中29例及び100%(88.1,100.0%)、フィルグラスチム群30例中29例及び96.7%(82.8,99.9%)、フィルグラスチム群と本剤群の差(80%信頼区間)は3.3(-0.9,7.5)であった。また、MLコホートでは12例中12例及び100%(73.5,100.0%)であった6)
      副作用の発現は、本剤7.2mgが単回皮下投与された42例11)中30例に認められた。主な副作用は、背部痛26.2%(11/42例)、血中Al-P増加及び血中乳酸脱水素酵素増加 各19.0%(8/42例)、骨痛、発熱、高尿酸血症及び頭痛 各11.9%(5/42例)、疼痛7.1%(3/42例)、嘔吐、血小板数減少、低カリウム血症及び食欲減退 各4.8%(2/42例)であった

      • 7) 次のいずれかに該当した場合
        • 第5日目の末梢血幹細胞採取により採取されたCD34陽性細胞数が2×106/kg未満の場合
        • 第5日目の末梢血幹細胞採取が実施されなかった場合
        • 治験責任医師等が必要と判断した場合
      • 8) 次のいずれかに該当した場合に、プレリキサホルを投与することが可能とされた。
        • 第4日目の末梢血中のCD34陽性細胞数が20/μL以下の場合
        • 第5及び6日目に実施された末梢血幹細胞採取で採取されたCD34陽性細胞数が2×106/kg未満の場合。ただし、CD34陽性細胞数が2×106/kg以上の場合でも治験責任医師等の判断によりプレリキサホルの投与は可能とされた。
      • 9) MMコホートの本剤群で15/29例、フィルグラスチム群で19/30例、MLコホートで11/12例にプレリキサホルが投与された。プレリキサホルの投与回数はMMコホートのフィルグラスチム群及びMLコホートの各1例(いずれも2回投与)を除き、1回投与であった。
        10) 原疾患の悪化により、治験責任医師の判断で末梢血幹細胞採取前に治験が中止された1例を除く。
        11) MM患者30例及びML患者12例を含む。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

本剤は骨髄中の好中球前駆細胞に存在する顆粒球コロニー形成刺激因子受容体に結合し、好中球前駆細胞から好中球への分化を促し、末梢血中の好中球数を増加させると推察される。

18.2 薬理作用

  1. 18.2.1 好中球前駆細胞の分化促進作用

    in vitroコロニー形成試験において、ヒト由来のCD34陽性細胞及びマウス由来の骨髄細胞を本剤存在下で培養することにより、好中球前駆細胞の分化が促進された13)

  2. 18.2.2 好中球減少に対する作用

    シクロホスファミド投与により末梢血の好中球減少が誘導されたマウスに本剤を投与することにより、好中球減少が抑制された14)

19. 有効成分に関する理化学的知見

一般的名称

ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)
(Pegfilgrastim(Genetical Recombination))

分子量

約40,000

本質

メトキシポリエチレングリコール(分子量:約20,000)1分子がフィルグラスチム(遺伝子組換え)のMet1のアミノ基に結合した修飾タンパク質である。

20. 取扱い上の注意

  1. 20.1 できるだけ使用直前までピロー包装からシリンジを取り出さないこと。外箱開封後は遮光して保存すること。
  2. 20.2 シリンジ先端部のフィルム・チップキャップが外れている、又はシリンジの破損等の異常が認められるときは使用しないこと。

21. 承認条件

  1. 21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
    • 〈同種末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員〉
  2. 21.2 国内での治験における被投与例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の被投与例に係るデータが集積されるまでの間は、全例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤被投与者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。

22. 包装

0.36mL[1シリンジ]

23. 主要文献

1) *Danese MD, et al.:Adv Ther. 2022;39:2778-2795

2) MID-NETを用いた調査結果の概要(G-CSF製剤と血小板減少との関連に関する薬剤疫学調査):https://www.pmda.go.jp/files/000234445.pdf

3) 社内資料:健康成人を対象とした第Ⅱ相臨床試験(2022年2月25日承認、CTD2.7.2.2.1)

4) 社内資料:肺癌患者を対象とした第Ⅰ相臨床薬理試験(2014年9月26日承認、CTD2.7.6.2)

5) 社内資料:悪性リンパ腫患者を対象とした用量設定試験(2014年9月26日承認、CTD2.7.6.10)

6) **社内資料:多発性骨髄腫及び悪性リンパ腫患者を対象とした第Ⅱ相試験(2024年5月17日承認、CTD2.7.6.1)

7) 社内資料:悪性リンパ腫患者を対象とした第Ⅱ相試験(2014年9月26日承認、CTD2.7.6.3)

8) 社内資料:ラットにおける組織中濃度(2014年9月26日承認、CTD2.6.4.4.1)

9) Yang BB, et al.:Clin Pharmacokinet. 2011; 50: 295-306

10) 社内資料:悪性リンパ腫患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(2014年9月26日承認、CTD2.7.6.4)

11) 社内資料:乳癌患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(2014年9月26日承認、CTD2.7.6.5)

12) 社内資料:健康成人を対象とした第Ⅱ相試験(2022年2月25日承認、CTD2.7.6.3)

13) 社内資料:薬理試験(顆粒球・マクロファージ系コロニー形成試験)(2014年9月26日承認、CTD2.6.2.2)

14) 社内資料:薬理試験(抗がん剤に起因する好中球減少改善試験)(2014年9月26日承認、CTD2.6.2.2)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

協和キリン株式会社 くすり相談窓口

〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2

電話 0120-850-150
受付時間 9:00~17:30(土・日・祝日及び弊社休日を除く)

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元

協和キリン株式会社

東京都千代田区大手町1-9-2

〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル

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