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エスポー皮下用24000シリンジ

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
9.8高齢者
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
14.適用上の注意
15.その他の注意
15.1臨床使用に基づく情報
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.3分布
16.5排泄
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
18.薬効薬理
18.1作用機序
18.2造血作用
19.有効成分に関する理化学的知見
20.取扱い上の注意
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
26.製造販売業者等

エスポー皮下用24000シリンジ

添付文書番号

3999412G7020_1_02

企業コード

230124

作成又は改訂年月

2020年12月改訂(第1版)

日本標準商品分類番号

873999

薬効分類名

ヒト エリスロポエチン製剤

承認等

エスポー皮下用24000シリンジ

販売名コード

YJコード

3999412G7020

販売名英語表記

ESPO SUBCUTANEOUS INJECTION SYRINGE

承認番号等

承認番号

21400AMZ00615

販売開始年月

2003年4月

貯法・有効期間

貯法

凍結を避け、10℃以下に保存

有効期間

24箇月

規制区分

一般的名称

エポエチン アルファ(遺伝子組換え)

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分又は他のエリスロポエチン製剤・ダルベポエチン アルファ製剤に過敏症の患者

3. 組成・性状

3.1 組成

エスポー皮下用24000シリンジ

有効成分日局エポエチン アルファ
(遺伝子組換え)   24,000国際単位
添加剤L-アルギニン塩酸塩 4.5mg
ポリソルベート80 0.03mg
リン酸二水素ナトリウム水和物 0.13mg
等張化剤
pH調節剤
容量  1シリンジ0.5mL

本剤の有効成分エポエチン アルファ(遺伝子組換え)は、チャイニーズハムスター卵巣細胞で生産される。

3.2 製剤の性状

エスポー皮下用24000シリンジ

pH5.5~6.5
浸透圧比約1(生理食塩液対比)
色・性状無色澄明の液

4. 効能又は効果

  • 腎性貧血
  • 貯血量が800mL以上で1週間以上の貯血期間を予定する手術施行患者の自己血貯血

5. 効能又は効果に関連する注意

  • 〈腎性貧血〉
    1. 5.1 本剤の投与対象は、貧血症に伴う日常生活活動の支障が認められる透析導入前の腎性貧血患者(血清クレアチニン濃度で2mg/dL以上、あるいはクレアチニンクリアランスが30mL/min以下)及び連続携行式腹膜灌流(CAPD)施行中の腎性貧血患者とする。なお、投与の目安はヘモグロビン濃度で10g/dL(ヘマトクリット値で30%)未満とする。
  • 〈貯血量が800mL以上で1週間以上の貯血期間を予定する手術施行患者の自己血貯血〉
    1. 5.2 本剤の投与は手術施行予定患者の中で貯血式自己血輸血施行例を対象とすること。なお、骨髄機能障害を伴う疾患における自己血貯血の場合には、本剤の効果及び安全性が確認されていないため投与しないこと。

6. 用法及び用量

  • 〈腎性貧血〉

    通常、成人には投与初期は、エポエチン アルファ(遺伝子組換え)として1回6,000国際単位を週1回皮下投与する。
    貧血改善効果が得られたら、維持量として、通常、成人には1回6,000~12,000国際単位を2週に1回皮下投与する。
    通常、小児にはエポエチン アルファ(遺伝子組換え)として1回100国際単位/kgを週1回皮下投与する。
    貧血改善効果の目標値は、ヘモグロビン濃度で10g/dL(ヘマトクリット値で30%)前後とする。
    なお、患者の貧血症状の程度、年齢等により適宜増減する。

  • 〈貯血量が800mL以上で1週間以上の貯血期間を予定する手術施行患者の自己血貯血〉

    待機的手術予定患者に対して、通常、ヘモグロビン濃度が13g/dL未満の患者には初回採血1週間前から、ヘモグロビン濃度が13~14g/dLの患者には初回採血後より、成人にはエポエチン アルファ(遺伝子組換え)として1回24,000国際単位を最終採血まで週1回皮下投与する。
    初回採血は、800mL貯血の場合は手術2週間前、1200mL貯血の場合は手術3週間前を目安とする。
    なお、患者のヘモグロビン濃度や予定貯血量等に応じて投与回数や投与期間を適宜増減する。

8. 重要な基本的注意

  • 〈効能共通〉
    1. 8.1 ショック等の反応を予測するため十分な問診をすること。なお、投与開始時あるいは休薬後の初回投与時には、本剤の少量を皮内に注入し、異常反応の発現しないことを確認後、全量を投与することが望ましい。
    2. 8.2 本剤の効果発現には鉄の存在が重要であり、鉄欠乏時には鉄剤の投与を行うこと。
  • 〈腎性貧血〉
    1. 8.3 本剤投与中はヘモグロビン濃度あるいはヘマトクリット値を定期的に観察し、必要以上の造血(ヘモグロビン濃度で12g/dL以上、あるいはヘマトクリット値で36%以上を目安とする)にならないように十分注意すること。必要以上の造血を認めた場合は、休薬するなど適切な処置をとること。
    2. 8.4 本剤投与により血圧上昇を認める場合があり、また、高血圧性脳症が報告されているので、血圧、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値等の推移に十分注意しながら投与すること。特に、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値は徐々に上昇させるよう注意すること。また、投与中止後もヘモグロビン濃度あるいはヘマトクリット値が上昇する場合があるので、観察を十分行うこと。,
    3. 8.5 本剤投与により抗エリスロポエチン抗体産生を伴う赤芽球癆があらわれることがあるので、本剤投与中に貧血の改善がない、あるいは悪化する場合等は同疾患を疑うこと。
    4. 8.6 透析導入前の腎性貧血患者に対し本剤を投与する場合には、以下の点を考慮すること。
      • 水分の調節が困難であるので、透析施行中の患者と劣らぬ頻度で水分量と電解質の収支及び腎機能並びに血圧等の観察を十分行うこと。
      • 慢性腎不全の進展に伴い、本剤の貧血改善効果が減弱する可能性があるので、本剤投与中は血清クレアチニン濃度やクレアチニンクリアランス等の経過を適宜観察し、増量あるいは投与中止等の適切な処置をとること。
    5. 8.7 本剤投与により高カリウム血症を認める場合があるので、食事管理を適切に行うこと。
  • 〈貯血量が800mL以上で1週間以上の貯血期間を予定する手術施行患者の自己血貯血〉
    1. 8.8 本剤投与中はヘモグロビン濃度あるいはヘマトクリット値を定期的に観察し、必要以上の造血(ヘモグロビン濃度で14g/dL以上、あるいはヘマトクリット値で42%以上を目安とする)にならないように十分注意すること。必要以上の造血を認めた場合は休薬又は採血するなどの適切な処置をとること。
    2. 8.9 貯血式自己血輸血に際しては、以下の点に注意すること。
      • 術前貯血式自己血輸血の対象は、その施設の従来の経験あるいは記録等より輸血を施行することが確実と予想される患者に限ること。
      • 採血に先立って患者に貯血式自己血輸血について十分説明するとともに、その趣旨と採血血液の不使用の際の処分等につき患者の同意を得ること。
      • 自己血採血は、ヘモグロビン濃度が11g/dL(ヘマトクリット値33%)未満では施行しないことが望ましい。
      • 採血は1週間前後の間隔をもって行い、採血量は1回400mLを上限とし、患者の年齢、体重、採血時の血液検査所見及び血圧、脈拍数等を考慮して決定すること。
      • 自己血採血時には採血を行う皮膚部位をポビドンヨード液等で十分に消毒し、無菌性を保つこと。
      • 最終採血は血漿蛋白量の回復期間を考慮し、手術前3日以内は避けることが望ましい。
      • 「塩化ビニル樹脂製血液セット基準等について(平成11年3月30日医薬発第399号厚生省医薬安全局長通知)」の規格に適合し、「生物学的製剤基準:人全血液」に規定された所定量の血液保存液(CPD液等)を注入した採血セット等を用いて採血し、閉鎖回路を無菌的に保ちながら保存すること。
      • 血液保存容器には自己血であることを明記するとともに、氏名、採血年月日、ABO式血液型の別等を表示しておくこと。
      • 採血後の保存血液は温度記録計の設置されている保冷庫(血液保存庫)内に4~6℃で保管し、血液の返血は保存血液の有効期限内に行うこと。
      • 保存血液の返血は、患者本人の血液であることを十分確認してから施行すること。また、外観上異常を認めた場合は使用しないこと。
      • 外科手術患者では、一般に術後に深部静脈血栓症、肺塞栓症・肺梗塞等の血栓塞栓症が起きることがあるので、術後は血栓塞栓症に注意し術後管理を適切に行うこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 心筋梗塞、肺梗塞、脳梗塞等の患者、又はそれらの既往歴を有し血栓塞栓症を起こすおそれのある患者

    観察を十分に行うこと。血液粘稠度が上昇するとの報告があり、血栓塞栓症を増悪あるいは誘発するおそれがある。また、特に自己血貯血に使用する場合には、術後は一般に血液凝固能が亢進するおそれがある。

  2. 9.1.2 高血圧症の患者

    血圧上昇を認める場合があり、また、高血圧性脳症があらわれるおそれがある。,

  3. 9.1.3 薬物過敏症の既往歴のある患者
  4. 9.1.4 アレルギー素因のある患者

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で、胎児・出生児の発育の遅延が報告されている。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている。

9.7 小児等

低出生体重児、新生児、乳児又は幼児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

  • 〈腎性貧血〉
    1. 9.8.1 本剤の投与に際しては血圧及びヘモグロビン濃度あるいはヘマトクリット値等を頻回に測定し、投与量又は投与回数を適宜調節すること。一般に高齢者では生理機能が低下しており、また高血圧症等の循環器系疾患を合併することが多い。
  • 〈貯血量が800mL以上で1週間以上の貯血期間を予定する手術施行患者の自己血貯血〉
    1. 9.8.2 本剤投与に際しては特に循環系機能のモニターを頻回に行い、循環器異常、脳血管異常等に注意すること。一般に高齢者では生理機能が低下していることが多い。
    2. 9.8.3 本剤の投与に際してはヘモグロビン濃度を頻回に測定して投与回数、投与期間及び投与量等を適宜調節すること。一般に高齢者では造血機能の低下が推定される。

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副作用

  1. 11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)

    ショック、アナフィラキシー(じん麻疹、呼吸困難、口唇浮腫、咽頭浮腫等)があらわれることがある。

  2. 11.1.2 高血圧性脳症、脳出血(いずれも頻度不明)

    急激な血圧上昇により、頭痛・意識障害・痙攣等を示す高血圧性脳症、高血圧性脳出血があらわれることがある。,

  3. 11.1.3 心筋梗塞、肺梗塞、脳梗塞(いずれも頻度不明)

  4. 11.1.4 赤芽球癆(頻度不明)

    抗エリスロポエチン抗体産生を伴う赤芽球癆があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、他のエリスロポエチン製剤・ダルベポエチン アルファ製剤への切替えは避けること。

  5. 11.1.5 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)

    AST、ALT、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。

11.2 その他の副作用

0.1~5%未満

0.1%未満

頻度不明

循環器

血圧上昇

動悸

皮膚

そう痒感、発疹

ざ瘡

肝臓

肝機能異常、AST上昇、ALT上昇、LDH上昇、Al-P上昇

ビリルビン上昇、γ-GTP上昇

消化器

腹痛、嘔気・嘔吐、食欲不振

下痢

感覚器系

頭痛、発熱、熱感・ほてり感、全身倦怠感

関節痛、めまい、不眠

筋肉痛、口内苦味感

血液

白血球増多、好酸球増多

その他

BUN上昇、血清カリウム上昇

尿酸上昇、クレアチニン上昇、浮腫、脾腫増大、鼻出血

眼底出血(網膜動脈血栓症、網膜静脈血栓症等)

注)発現頻度は使用成績調査を含む。

14. 適用上の注意

14.1 薬剤調製時の注意

他剤との混注は行わないこと。

14.2 薬剤投与時の注意

プランジャーロッドの無理な操作はしないこと。またバックストップは、投与終了後まで外さないこと。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報

  1. 15.1.1 保存期慢性腎臓病患者における腎性貧血に対する赤血球造血刺激因子製剤による治療について、目標ヘモグロビン濃度を13.5g/dLに設定した患者1)では、11.3g/dLに設定した患者に比較して、有意に死亡及び心血管系障害の発現頻度が高いことが示されたとの報告がある1)
  2. 15.1.2 2型糖尿病で腎性貧血を合併している保存期慢性腎臓病患者において、目標ヘモグロビン濃度を13.0g/dLに設定して赤血球造血刺激因子製剤が投与された患者1)とプラセボが投与された患者(ヘモグロビン濃度が9.0g/dLを下回った場合に赤血球造血刺激因子製剤を投与)を比較したところ、赤血球造血刺激因子製剤群ではプラセボ群に比較して有意に脳卒中の発現頻度が高いことが示されたとの報告がある2)
  3. 15.1.3 心不全や虚血性心疾患を合併する血液透析患者において、目標ヘモグロビン濃度を14g/dL(ヘマトクリット値42%)に維持した群1)では、10g/dL(ヘマトクリット値30%)前後に維持した群に比べて死亡率が高い傾向が示されたとの報告がある3)
  4. 15.1.4 がん化学療法又は放射線療法による貧血患者1)に赤血球造血刺激因子製剤を投与することにより生存期間の短縮が認められたとの報告がある4),5)
  5. 15.1.5 放射線療法による貧血患者1)に赤血球造血刺激因子製剤を投与することにより、腫瘍進展又は局所再発のリスクが増加したとの報告がある5),6)
  6. 15.1.6 プラセボを投与されたがん化学療法による貧血患者1)に比べて赤血球造血刺激因子製剤の治療を受けた患者で血栓塞栓症の発現頻度が高いことが臨床試験にて示されたとの報告がある7)
  7. 15.1.7 がん化学療法又は放射線療法を受けていないがんに伴う貧血患者1)に赤血球造血刺激因子製剤を投与した臨床試験で、プラセボを投与した患者に比べて死亡率が高いことが示されたとの報告がある8)

1) これらの患者への投与は、本邦では承認外である。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回投与
    1. (1) 健康成人

      健康成人男性に100国際単位(以下IU)/kg又は200IU/kgを単回投与したとき、静脈内投与ではt1/2はそれぞれ4.76又は5.01時間であったのに対し、皮下投与では投与後12時間にCmax(それぞれ103.6又は242.3mIU/mL)に達し、t1/2はそれぞれ22.2又は22.4時間であった。投与後36時間以降は、皮下投与の方が高い濃度で推移した9)

      エスポーを静脈内又は皮下投与したときの血清中濃度推移
    2. (2) 透析導入前の腎性貧血患者

      透析導入前の腎性貧血患者に6,000IU又は9,000IUを単回皮下投与したとき、投与後12~24時間にCmax(ぞれぞれ153又は219mIU/mL)に達し、t1/2はそれぞれ24.6又は19.1時間であった10)

      エスポーを皮下投与したときの血漿中濃度推移

16.3 分布

  1. 16.3.1 組織移行性

    雄性ラットに125I-エポエチン アルファ 200IU/kgを皮下投与したとき、骨髄、脾臓、腎臓及び血漿に高い放射能が認められた11)

16.5 排泄

健康成人男性に100IU/kg(5例)又は200IU/kg(4例)を単回投与したとき、静脈内投与では投与量の1.80又は2.13%、また、皮下投与では0.15又は1.41%がいずれも投与後48時間までに排泄された9)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  • 〈腎性貧血〉
    1. 17.1.1 国内一般臨床試験及び国内二重盲検比較試験

      透析導入前又はCAPD施行中の腎性貧血患者に対して、本剤を投与した国内一般臨床試験及び国内二重盲検比較試験の結果は以下のとおりであった。

      • 腎性貧血患者127例(透析導入前の腎性貧血患者111例、CAPD施行中の腎性貧血患者16例)に対して、本剤6,000IUを週1回皮下投与したときの貧血改善効果は106例に認められ、その有効率は83.5%であった12),13),14),15)
        副作用発現頻度は5.3%(7/133例)であった。主な副作用は、血圧上昇3.0%(4/133例)であった。
      • 透析導入前の小児腎性貧血患者35例に対して、4週ごとの漸増法により本剤50~100IU/kgを週1回皮下投与したときの貧血改善効果は24例に認められ、その有効率は68.6%であった16)
        副作用発現頻度は2.8%(1/36例)であった。認められた副作用は、頭痛であった。
      • 透析導入前の腎性貧血患者71例に対して、初期投与後、維持投与法検討のため本剤3,000~12,000IUを2週に1回皮下投与した結果、全般改善度における改善以上は54例(76.1%)に認められた17)
      • CAPD施行中の腎性貧血患者75例に対して、本剤6,000~12,000IUを2週に1回12週間皮下投与した維持投与試験の結果、貧血改善維持効果は66例に認められ、その有効率は88.0%であった18)
        副作用発現頻度は4.7%(4/85例)であった。認められた副作用は、血圧上昇及び頭痛 各2.4%(2/85例)であった。

      なお、腎性貧血の改善に伴い、自他覚症状(動悸、息切れ、皮膚粘膜の蒼白など)の改善が認められた。

  • 〈貯血量が800mL以上で1週間以上の貯血期間を予定する手術施行患者の自己血貯血〉
    1. 17.1.2 国内一般臨床試験及び国内二重盲検比較試験

      自己血貯血量が800mLないし1,200mLを目標とする待機的手術予定患者214例に対して、初回採血1週間前から本剤24,000IUを週1回皮下投与したときの貯血量並びにヘモグロビン濃度の推移を指標とした有効性は180例に認められ、その有効率は84.1%であった19),20),21),22),23)
      各試験の副作用発現頻度は以下のとおりであった。

      • 国内後期第Ⅱ相試験(整形外科領域)の副作用発現頻度は7.9%(3/38例)であった。認められた副作用は、発熱、発疹、浮腫、白血球数上昇、鉄上昇、不飽和鉄結合能上昇 各2.6%(1/38例)であった。
      • 国内第Ⅲ相二重盲検比較試験(整形外科領域)の副作用発現頻度は2.2%(1/45例)であった。認められた副作用は、気分不良、嘔気及び食欲不振であった。
      • 国内第Ⅲ相一般臨床試験(整形外科領域)の副作用発現頻度は5.6%(3/54例)であった。主な副作用は、頭痛3.7%(2/54例)であった。
      • 国内後期第Ⅱ相試験(心臓外科領域)の副作用発現頻度は2.6%(1/38例)であった。認められた副作用は、血圧上昇であった。
      • 国内第Ⅲ相一般臨床試験(心臓外科領域)の副作用発現頻度は4.5%(3/67例)であった。認められた副作用は、AST上昇及びALT上昇各3.0%(2/67例)であった。
      • 国内一般臨床試験(泌尿器科、婦人科領域)では、副作用は認められなかった。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

各種造血前駆細胞に対して、本剤のコロニー形成亢進作用を検討した結果、後期赤芽球前駆細胞(CFU-E)由来のコロニー形成を顕著に促進させ、高濃度下では前期赤芽球前駆細胞(BFU-E)由来のコロニー形成を促進させる24)in vitro)。
また、腎性貧血患者においてもCFU-E、BFU-E由来のコロニー形成を促進させる25)

18.2 造血作用

本剤を正常ラットに皮下又は静脈内投与したとき、用量及び投与回数に依存して顕著な造血効果が認められた。また、静脈内投与と皮下投与における造血効果を比較した結果、皮下投与による効果は静脈内投与に比べわずかに上回る傾向を示した26),27)
また、部分腎摘出ラット、ゲンタマイシン誘導腎障害ラット及び遺伝性囊胞腎マウスを用いた腎性貧血モデルで、本剤の静脈内投与により、顕著な貧血改善が認められた26),28),29)
更に、瀉血操作により貧血となったラット及びイヌに静脈内投与したとき、貧血の抑制又は軽減及び貧血からの回復促進効果が認められた30),31)

19. 有効成分に関する理化学的知見

一般的名称

エポエチン アルファ(遺伝子組換え)
(Epoetin Alfa(Genetical Recombination))

分子量

約37,000~42,000

本質

本品は、遺伝子組換えヒトエリスロポエチンであり、チャイニーズハムスター卵巣細胞で産生される。165個のアミノ酸残基〔C809H1301N229O240S5;分子量:18,235.70(タンパク質部分)〕からなる糖タンパク質である。

20. 取扱い上の注意

  1. 20.1 できるだけ使用直前までピロー包装からシリンジを取り出さないこと。外箱開封後は遮光して保存すること。
  2. 20.2 シリンジ先端部のフィルム・チップキャップが外れている、またはシリンジの破損等の異常が認められるときは使用しないこと。

22. 包装

0.5mL[1シリンジ]

23. 主要文献

1) Singh AK, et al.:N Engl J Med. 2006; 355: 2085-2098

2) Pfeffer MA, et al.:N Engl J Med. 2009; 361: 2019-2032

3) Besarab A, et al.:N Engl J Med. 1998; 339: 584-590

4) Leyland-Jones B, et al.:J Clin Oncol. 2005; 23: 5960-5972

5) Henke M, et al.:Lancet. 2003; 362: 1255-1260

6) Overgaard J, et al.:J Clin Oncol. 2009; 27: 302s

7) Luksenburg H, et al.:FDA Briefing Document. ODAC May 4, 2004

8) Smith RE Jr, et al.:J Clin Oncol. 2008; 26: 1040-1050

9) 角尾道夫:臨床医薬. 1992; 8: 2549-2564

10) 佐野元昭ほか:日本透析療法学会雑誌. 1992; 25: 134-137

11) 美細津正ほか:薬物動態. 1993; 8: 1065-1083

12) 林田重昭ほか:臨床透析. 1993; 9: 377-387

13) 前田貞亮ほか:腎と透析. 1993; 34: 971-988

14) 前田貞亮ほか:腎と透析. 1993; 35: 429-447

15) Nomoto Y, et al.:Perit Dial Int. 1994; 14: 56-60

16) 伊藤克己ほか:小児科臨床. 1993; 46: 1613-1628

17) 東海林隆男ほか:腎と透析. 1993; 35: 269-286

18) 窪田実ほか:日腎誌. 1993; 35: 1081-1090

19) 浅野聡ほか:臨床医薬. 1994; 10: 71-84

20) 高梨秀一郎ほか:外科診療. 1994; 36: 1049-1061

21) 筒井秀樹ほか:日整会誌. 1993; 67: 919-934

22) 立花新太郎ほか:医学のあゆみ. 1993; 167: 661-677

23) Hayashi J, et al.:Transfusion. 1994; 34: 142-146

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25) 日野雅之ほか:基礎と臨床. 1988; 22: 5811-5819

26) 荒井弘文ほか:基礎と臨床. 1988; 22: 5531-5546

27) 日下多ほか:基礎と臨床. 1993; 27: 1895-1903

28) Nagano N, et al.:J Pharm Pharmacol. 1990; 42: 758-762

29) Koumegawa J, et al.:J Urology. 1991; 146: 1645-1649

30) 高久史麿ほか:日本輸血学会雑誌. 1988; 34: 11-15

31) Koumegawa J, et al.:Int J Cell Cloning. 1990; 8: 97-106

24. 文献請求先及び問い合わせ先

協和キリン株式会社 くすり相談窓口

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