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トロデルビ点滴静注用200mg

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
1.警告
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.3肝機能障害患者
9.4生殖能を有する者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
10.相互作用
10.2併用注意(併用に注意すること)
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
14.適用上の注意
15.その他の注意
15.1臨床使用に基づく情報
15.2非臨床試験に基づく情報
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.3分布
16.4代謝
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
18.薬効薬理
18.1作用機序
19.有効成分に関する理化学的知見
20.取扱い上の注意
21.承認条件
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
26.製造販売業者等

トロデルビ点滴静注用200mg

添付文書番号

4291472D1026_1_01

企業コード

230867

作成又は改訂年月

2024年9月作成(第1版)

日本標準商品分類番号

874291

薬効分類名

抗悪性腫瘍剤/抗TROP-2抗体トポイソメラーゼⅠ阻害剤複合体

承認等

トロデルビ点滴静注用200mg

販売名コード

YJコード

4291472D1026

販売名英語表記

TRODELVY for Injection

販売名ひらがな

とろでるび てんてきじょうちゅうよう200みりぐらむ

承認番号等

承認番号

30600AMX00258000

販売開始年月

2024年11月

貯法・有効期間

貯法

2~8℃で保存

有効期間

36箇月

規制区分

一般的名称

サシツズマブ ゴビテカン(遺伝子組換え)

1. 警告

  1. 1.1 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に本剤の有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
  2. 1.2 投与に際しては、骨髄抑制、感染症等の重篤な副作用が起こることがあり、ときに致命的な経過をたどることがあるので、頻回に血液検査等を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。,,

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し重度の過敏症の既往歴のある患者

3. 組成・性状

3.1 組成

トロデルビ点滴静注用200mg

有効成分1バイアル中サシツズマブ ゴビテカン(遺伝子組換え)1)   200mg
添加剤1バイアル中2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸79.6mg、トレハロース水和物189.2mg、ポリソルベート80 2mg
1) 本剤を構成する抗体部分は、マウス骨髄腫由来細胞を用いて製造される。

3.2 製剤の性状

トロデルビ点滴静注用200mg

剤形注射剤(バイアル)
pH6.3~6.7(10mg/mL日局注射用水)
浸透圧比1.16~1.25(生理食塩液対比)
外観微黄白色~帯黄色の塊

4. 効能又は効果

化学療法歴のあるホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌

5. 効能又は効果に関連する注意

  1. 5.1 タキサン系抗悪性腫瘍剤による治療歴のある患者を対象とすること。
  2. 5.2 臨床試験に組み入れられた患者における前治療歴等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。,
  3. 5.3 本剤の術前・術後薬物療法における有効性及び安全性は確立していない。

6. 用法及び用量

通常、成人には、サシツズマブ ゴビテカン(遺伝子組換え)として1回10mg/kg(体重)を、21日間を1サイクルとし、各サイクルの1日目及び8日目に点滴静注する。投与時間は3時間とし、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降は1~2時間に短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  1. 7.1 他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
  2. 7.2 本剤投与時にあらわれることがあるinfusion reactionを軽減させるために、本剤の投与前に解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤及びH2受容体拮抗剤の前投与を考慮すること。,
  3. 7.3 本剤投与により副作用が発現した場合には、次の基準を考慮して、休薬、減量又は中止すること。副作用により本剤を減量した場合には、再増量しないこと。,,,,
    減量の目安

    1回用量

    1段階減量

    7.5mg/kg

    2段階減量

    5mg/kg

    3段階減量

    投与中止

    投与基準

    好中球数

    各サイクルの第1日目は1,500/mm3以上、第8日目は1,000/mm3以上
    各サイクルの第8日目の投与予定日に1,000/mm3未満であり、1週間を超えても1,000/mm3以上に回復しない場合には、次回投与は1,500/mm3以上に回復してから再開する。

    休薬、減量、中止の目安

    副作用

    程度

    処置

    好中球減少症

    以下のいずれかの場合

    • Grade 4が7日間以上継続
    • Grade 4かつ臨床的に必要
    • 発熱性好中球減少症
    • 投与予定日にGrade 3~4であり、Grade 1以下に回復するまで2~3週間の投与延期を要する

    投与基準に回復後、同一用量で又は1段階減量して再開できる。
    副作用が再発した場合は、投与基準に回復後、1段階減量して再開できる。

    投与予定日にGrade 3~4であり、Grade 1以下に回復するまで3週間を超える投与延期を要する場合

    投与を中止する。

    上記以外の血液毒性

    投与予定日にGrade 3~4であり、Grade 1以下に回復するまで2~3週間の投与延期を要する場合

    Grade 1以下に回復するまで休薬し、1段階減量して再開できる。

    投与予定日にGrade 3~4であり、Grade 1以下に回復するまで3週間を超える投与延期を要する場合

    投与を中止する。

    Infusion reaction

    Grade 1~2

    減速又は投与中断する。

    以下のいずれかの場合

    • Grade 4
    • Grade 2~3かつ適切な治療にもかかわらず6時間以内に回復しないinfusion reactionが複数回認められる

    投与を中止する。

    上記以外の非血液毒性

    以下のいずれかの場合

    • Grade 4
    • Grade 3かつコントロール困難な悪心、嘔吐又は下痢
    • Grade 3かつ適切な医学的管理にもかかわらず48時間を超えて持続する
    • 投与予定日にGrade 3であり、Grade 1以下に回復するまで2~3週間の投与延期を要する

    Grade 1以下に回復するまで休薬し、1段階減量して再開できる。

    投与予定日にGrade 3~4であり、Grade 1以下に回復するまで3週間を超える投与延期を要する場合

    投与を中止する。

    *:GradeはNCI-CTCAEに準じる。

8. 重要な基本的注意

  1. 8.1 骨髄抑制、感染症があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に血液検査等を行い、患者の状態を十分に観察すること。また、本剤の投与にあたっては、G-CSF製剤の適切な使用を考慮すること。,,,
  2. 8.2 Infusion reactionがあらわれることがあるので、本剤の投与は重度のinfusion reactionに備えて緊急時に十分な対応のできる準備を行った上で開始すること。,,
  3. 8.3 間質性肺疾患があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び定期的な胸部画像検査の実施等、観察を十分に行うこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 グルクロン酸抱合異常の患者

    Gilbert症候群等のグルクロン酸抱合異常の患者においては、本剤を構成するSN-38の代謝が遅延することにより骨髄抑制、下痢等の重篤な副作用が発現する可能性があるため、十分注意すること。

  2. 9.1.2 UGT1A1*6若しくはUGT1A1*28のホモ接合体を有する患者、又はUGT1A1*6及びUGT1A1*28のヘテロ接合体を有する患者

    本剤を構成するSN-38の主な代謝酵素であるUDPグルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)によるSN-38の代謝が減少することにより、骨髄抑制、下痢等の重篤な副作用が発現する可能性があるため、十分注意すること。

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1 中等度又は重度の肝機能障害患者

    本剤を構成するSN-38は主に肝代謝により消失することから、SN-38の血中濃度が上昇する可能性がある。なお、中等度又は重度2)の肝機能障害患者を対象とした試験は実施していない。

    2) NCI-ODWG(National Cancer Institute-Organ Dysfunction Working Group)基準による分類

9.4 生殖能を有する者

  1. 9.4.1 妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後6ヵ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。,
  2. 9.4.2 男性には、本剤投与中及び最終投与後3ヵ月間においてバリア法(コンドーム)を用いて避妊する必要性について説明すること。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、投与しないことが望ましい。本剤を用いた生殖発生毒性試験は実施されていない。本剤を構成するSN-38のプロドラッグであるイリノテカンを用いた動物実験(ラット、ウサギ)において、催奇形性が報告されている。

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。ヒトでの乳汁移行に関するデータはないが、本剤を構成するSN-38のプロドラッグであるイリノテカンを用いた動物実験(ラット)で乳汁移行が報告されている。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

10. 相互作用

  • 本剤を構成するSN-38は主にUGT1A1により代謝される。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子

UGT1A1阻害剤

  • アタザナビル等

副作用の発現頻度及び重症度が増加するおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。

UGT1A1阻害剤との併用により、SN-38の代謝が阻害され、SN-38の血中濃度が上昇する可能性がある。

UGT1A1誘導剤

  • カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシン等

有効性が減弱するおそれがあるので、UGT1A1誘導作用のない薬剤への代替を考慮すること。

UGT1A1誘導剤との併用により、SN-38の代謝が誘導され、SN-38の血中濃度が低下する可能性がある。

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副作用

  1. 11.1.1 骨髄抑制

    好中球減少症(66.7%)、貧血(38.8%)、白血球減少症(22.4%)、リンパ球減少症(10.2%)、血小板減少症(6.8%)、発熱性好中球減少症(5.4%)があらわれることがある。,,

  2. 11.1.2 重度の下痢(11.6%)、腸炎(3.4%)

    重度の下痢に伴って脱水症状をきたし、急性腎障害に至った症例も報告されている。止瀉薬(ロペラミド等)の投与、補液等の適切な処置を行うこと。

  3. 11.1.3 Infusion reaction(32.3%)

    異常が認められた場合には、本剤の投与を中止する等の適切な処置を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること。,,

  4. 11.1.4 感染症(51.7%)

    肺炎(4.4%)、敗血症(0.7%)等の感染症があらわれることがある。,

  5. 11.1.5 間質性肺疾患(0.7%)

    肺臓炎(0.3%)、肺浸潤(0.3%)等の間質性肺疾患があらわれることがある。

11.2 その他の副作用

10%以上

1%以上 10%未満

1%未満

頻度不明

胃腸障害

悪心(62.6%)、便秘(38.1%)、嘔吐(31.3%)、腹痛、口内炎

上腹部痛、胃食道逆流性疾患、腹部膨満、消化不良

一般・全身障害および投与部位の状態

疲労(無力症を含む)(59.5%)

疼痛、悪寒

臨床検査

体重減少、血中アルカリホスファターゼ増加

血中乳酸脱水素酵素増加

活性化部分トロンボプラスチン時間延長

代謝および栄養障害

食欲減退、低カリウム血症、低マグネシウム血症

高血糖、低カルシウム血症、低リン血症、脱水、低ナトリウム血症

筋骨格系および結合組織障害

関節痛

神経系障害

頭痛

浮動性めまい、味覚不全

精神障害

不眠症

腎および尿路障害

蛋白尿

呼吸器、胸郭および縦隔障害

呼吸困難(労作性呼吸困難を含む)、咳嗽

鼻出血、鼻漏、鼻閉

皮膚および皮下組織障害

脱毛症(46.6%)、発疹

そう痒症、皮膚乾燥、斑状丘疹状皮疹、皮膚色素過剰、ざ瘡様皮膚炎

血管障害

低血圧

14. 適用上の注意

14.1 薬剤調製時の注意

  1. 14.1.1 本剤の調製には生理食塩液のみを使用すること。他の輸液を使用した場合の希釈後の安定性は確認されていない。
  2. 14.1.2 溶解方法
    1. (1) 滅菌シリンジを用いて1バイアルに20mLの生理食塩液をゆっくり加え、本剤10mg/mLの溶解液を調製する。
    2. (2) バイアルをゆっくりと回して混和し、最長15分間かけて溶解する。振とうはしないこと。
    3. (3) 目視で溶解後の液に微粒子がなく、澄明かつ黄色であることを確認すること。溶解後の液に濁り又は変色が認められる場合は使用しないこと。
    4. (4) 溶解後は、速やかに使用すること。
  3. 14.1.3 希釈方法
    1. (1) 必要量の溶解液をバイアルから抜き取り、本剤の濃度が1.1~3.4mg/mLとなるように算出された量の生理食塩液が入った輸液バッグ(ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン[ポリプロピレン及び/若しくはポリエチレン]又はエチレン酢酸ビニル製)に、泡立ちを最小限に抑えるためゆっくり注入する。内容物を振とうしないこと。バイアルに残った溶解液は廃棄すること。
    2. (2) 直ちに使用しない場合、本剤の入った輸液バッグは遮光下2~8℃で冷蔵保存し、24時間以内に使用すること。冷蔵保存した場合は、常温に戻した後、8時間以内に投与を完了すること。

14.2 薬剤投与時の注意

  1. 14.2.1 本剤の入った輸液バッグは遮光すること。本剤投与中は、投与が完了するまで輸液バッグを覆うこと。点滴中に点滴チューブを覆ったり、遮光チューブを使用する必要はない。
  2. 14.2.2 他剤との混注はしないこと。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報

  1. 15.1.1 臨床試験において、本剤に対する抗体の産生が報告されている1)
  2. 15.1.2 乳癌患者を対象とした海外臨床試験の統合解析において、UGT1A1遺伝子多型別の有害事象の発現状況は下表のとおりであった2)

    UGT1A1*28/*28
    集団*1

    UGT1A1*1/*28
    集団*2

    UGT1A1*1/*1
    (野生型)集団*3

    Grade 3以上の好中球減少症

    60.6%
    (43/71例)

    52.9%
    (144/272例)

    49.1%
    (140/285例)

    Grade 3以上の発熱性好中球減少症

    14.1%
    (10/71例)

    5.9%
    (16/272例)

    4.6%
    (13/285例)

    Grade 3以上の貧血

    15.5%
    (11/71例)

    7.4%
    (20/272例)

    8.1%
    (23/285例)

    Grade 3以上の下痢

    18.3%
    (13/71例)

    12.5%
    (34/272例)

    6.7%
    (19/285例)

    *1:UGT1A1*28をホモ接合体で有する患者

    *2:UGT1A1*1UGT1A1*28をヘテロ接合体で有する患者

    *3:UGT1A1*1をホモ接合体で有する患者

15.2 非臨床試験に基づく情報

  1. 15.2.1 本剤を構成するSN-38は、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いたin vitro哺乳類細胞小核試験で染色体異常誘発性を示した。,
  2. 15.2.2 カニクイザルを用いた本剤の反復投与毒性試験において、60mg/kg(体重に基づくヒト推奨用量10mg/kgの6倍)以上の用量で子宮内膜萎縮、子宮出血、卵巣の閉鎖卵胞の増加及び腟上皮細胞の萎縮が認められた3)

16. 薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回及び反復投与

    日本人進行固形癌患者に、21日間を1サイクルとして、本剤10mg/kgを1日目及び8日目に点滴静注したときの、初回投与後のサシツズマブ ゴビテカン及び遊離SN-38の薬物動態パラメータ及び血清中濃度推移は以下のとおりであった。なお、反復投与によるサシツズマブ ゴビテカン及び遊離SN-38の蓄積は認められなかった4)

    日本人進行固形癌患者に本剤10mg/kgを点滴静注したときの初回投与後のサシツズマブ ゴビテカン及び遊離SN-38の血清中濃度推移
    日本人進行固形癌患者に本剤10mg/kgを点滴静注したときの初回投与後のサシツズマブ ゴビテカン及び遊離SN-38の薬物動態パラメータ

    サシツズマブ ゴビテカン
    (9例)

    遊離SN-38
    (9例)

    tmax(h)

    3.30(3.05~3.45)

    3.43(3.05~8.93)

    Cmax(ng/mL)

    226,000(14)

    42.9(28)

    AUC0-168h
    (ng・h/mL)

    5,327,000(12)

    1,610(25)

    t1/2(h)

    19.6(24)

    19.3(16)

    Cmax、AUC0-168h及びt1/2は幾何平均値(変動係数[CV]%)、tmaxは中央値(最小値~最大値)を示す。

16.3 分布

SN-38の血漿タンパク結合率は99%であるとの報告がある5)

16.4 代謝

SN-38は主にUGT1A1を介して代謝される。SN-38のグルクロン酸抱合体(SN-38G)が、患者の血清中で検出された6)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  1. 17.1.1 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験(GS-US-569-6172試験、ASCENT-J02)

    2つ以上の化学療法歴のある3)ホルモン受容体陰性かつHER2陰性4)の手術不能又は再発乳癌患者36例を対象に、本剤の有効性及び安全性を検討する非盲検非対照試験の第Ⅱ相パートTNBCコホートを実施した。21日間を1サイクルとして、本剤10mg/kgを各サイクルの1日目及び8日目に点滴静注した。主要評価項目であるRECISTガイドライン1.1版に基づく独立判定による奏効率は25.0%(95%信頼区間:12.1、42.2)であった。生存状況に関する追跡調査期間の中央値は、6.1ヵ月であった7)
    本剤が投与された36例において、副作用が35例(97.2%)に認められた。主な副作用は、好中球減少症(好中球数減少を含む)31例(86.1%)、白血球減少症(白血球数減少を含む)23例(63.9%)、悪心22例(61.1%)、脱毛症及び下痢各16例(44.4%)、便秘11例(30.6%)、倦怠感10例(27.8%)、貧血(ヘモグロビン減少及び赤血球数減少を含む)及び口内炎各9例(25.0%)であった。

    3) 手術不能又は再発乳癌に対して2つ以上の化学療法歴のある患者が対象とされた。ただし、手術可能な乳癌に対する周術期治療(術前又は術後薬物療法)終了後12ヵ月以内に疾患進行が認められた場合には、当該周術期治療を化学療法歴の1つとみなすこととされた。

    4) HER2陰性はIHC法0、IHC法1+、又はIHC法2+かつISH法陰性の患者が組み入れられた。

  2. 17.1.2 海外第Ⅲ相試験(IMMU-132-05試験、ASCENT)

    2つ以上の化学療法歴のある5)ホルモン受容体陰性かつHER2陰性6)の手術不能又は再発乳癌患者529例を対象に、本剤(267例)と医師選択治療(262例)(エリブリン[139例]、カペシタビン[33例]、ゲムシタビン[38例]又はビノレルビン[52例]の単独投与)の有効性及び安全性を比較する無作為化非盲検比較試験を実施した。本剤群では、21日間を1サイクルとして、本剤10mg/kgを各サイクルの1日目及び8日目に点滴静注した。
    主要評価項目であるベースライン評価時に脳転移が認められなかった集団におけるRECISTガイドライン1.1版に基づく盲検下独立中央判定による無増悪生存期間(PFS)について、本剤は医師選択治療に対して統計学的に有意な延長を示した。さらに、検定手順に従って検定が行われた結果、副次評価項目とされた脳転移が認められなかった集団における全生存期間(OS)並びにITT集団におけるPFS及びOSについても、本剤は医師選択治療に対して統計学的に有意な延長を示した。本剤群の生存状況に関する追跡期間の中央値は、脳転移が認められなかった集団で11.2ヵ月、ITT集団で10.6ヵ月であった8),9)
    本剤群258例において、副作用が252例(97.7%)に認められた。主な副作用(発現割合が20%以上)は、好中球減少症(好中球数減少を含む)163例(63.2%)、下痢153例(59.3%)、悪心147例(57.0%)、脱毛症119例(46.1%)、疲労115例(44.6%)、貧血(ヘモグロビン減少及び赤血球数減少を含む)90例(34.9%)及び嘔吐76例(29.5%)であった。

    5) 手術不能又は再発乳癌に対して2つ以上の化学療法歴のある患者が対象とされた。ただし、手術可能な乳癌に対する周術期治療(術前又は術後薬物療法)終了後12ヵ月以内に疾患進行が認められた場合には、当該周術期治療を化学療法歴の1つとみなすこととされた。また、周術期又は進行乳癌に対してタキサン系抗悪性腫瘍剤による治療歴を有する患者が対象とされた。

    6) HER2陰性はIHC法0、IHC法1+、又はIHC法2+かつISH法陰性の患者が組み入れられた。

    ASCENT試験の有効性成績

    ベースライン評価時に脳転移が認められなかった集団

    ITT集団

    本剤群
    N=235

    医師選択治療群
    N=233

    本剤群
    N=267

    医師選択治療群
    N=262

    PFSa)

    中央値[月]
    (95%信頼区間)

    5.6
    (4.3, 6.3)

    1.7
    (1.5, 2.6)

    4.8
    (4.1, 5.8)

    1.7
    (1.5, 2.5)

    ハザード比
    (95%信頼区間)

    0.41
    (0.32, 0.52)

    0.43
    (0.35, 0.54)

    P値

    <0.0001b)

    <0.0001c)

    OS

    中央値[月]
    (95%信頼区間)

    12.1
    (10.7, 14.0)

    6.7
    (5.8, 7.7)

    11.8
    (10.5, 13.8)

    6.9
    (5.9, 7.7)

    ハザード比
    (95%信頼区間)

    0.48
    (0.38, 0.59)

    0.51
    (0.41, 0.62)

    P値

    <0.0001b)

    <0.0001c)

    a)PFSは、無作為化から画像診断に基づく最初の疾患進行又は理由を問わない死亡のいずれか早い方までの期間とした。

    b)化学療法の前治療数及び地域を層別因子とした層別log-rank検定。

    c)化学療法の前治療数、試験組入れ時の脳転移の有無及び地域を層別因子とした層別log-rank検定。

    ASCENT試験のPFSのKaplan-Meier曲線(ITT集団)
    ASCENT試験のOSのKaplan-Meier曲線(ITT集団)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

サシツズマブ ゴビテカンは、抗trophoblast cell surface antigen-2(TROP-2)ヒト化IgG1モノクローナル抗体と、トポイソメラーゼⅠ阻害作用を有するカンプトテシン誘導体であるSN-38(イリノテカンの活性代謝物)を、リンカーを介して共有結合させた抗体薬物複合体である。サシツズマブ ゴビテカンは、腫瘍細胞の細胞膜上に発現するTROP-2に結合し、細胞内に取り込まれた後にリンカーが加水分解され、SN-38が細胞内に遊離する。遊離したSN-38はDNA合成を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

18.2 抗腫瘍作用

サシツズマブ ゴビテカンは、TROP-2を発現するヒト乳癌由来MDA-MB-468及びHCC1806細胞株をそれぞれ皮下移植したヌードマウスにおいて腫瘍増殖抑制作用を示した(in vivo10)

19. 有効成分に関する理化学的知見

一般的名称

サシツズマブ ゴビテカン(遺伝子組換え)
(Sacituzumab Govitecan(Genetical Recombination))

分子式

ゴビテカン
C73H98N11O22

抗体部分
C6496H9986N1702O2016S42(タンパク部分、4本鎖)
H鎖 C2215H3394N578O675S16
L鎖 C1033H1603N273O333S5

分子量

ゴビテカン 1481.62
抗体部分 約148,000
サシツズマブ ゴビテカン 約159,000

本質

サシツズマブ ゴビテカンは、抗体薬物複合体であり、遺伝子組換えモノクローナル抗体の平均8個のシステイン残基に、カンプトテシン誘導体とリンカーからなるゴビテカン((3RS)-1-[(trans-4-{[(1-{(34S)-38-アミノ-34-[(4-{[({[(4S)-4,11-ジエチル-9-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-4-イル]オキシ}カルボニル)オキシ]メチル}フェニル)カルバモイル]-28,32-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,30-ノナオキサ-27,33-ジアザオクタトリアコンタン-1-イル}-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]カルバモイル}シクロヘキシル)メチル]-2,5-ジオキソピロリジン-3-イル基)が結合している。抗体部分は抗細胞表面糖タンパク質TROP-2モノクローナル抗体であり、その相補性決定部はマウス抗体に、その他はヒトIgG1に由来し、マウス骨髄腫細胞により産生される。タンパク質部分は、451個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ1鎖)2本及び214個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)2本で構成される糖タンパク質である。

ゴビテカン部位の構造式

nは平均8である
*:抗体部分のシステイン残基の硫黄原子

20. 取扱い上の注意

外箱開封後はバイアルを遮光して保存すること。

21. 承認条件

医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

22. 包装

1バイアル

24. 文献請求先及び問い合わせ先

ギリアド・サイエンシズ株式会社
メディカルサポートセンター

〒100-6616 東京都千代田区丸の内1-9-2
グラントウキョウサウスタワー

フリーダイアル 0120-506-295
FAX 03-5958-2959
受付時間:9:00~17:30(土・日・祝日及び会社休日を除く)

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元

ギリアド・サイエンシズ株式会社

東京都千代田区丸の内1-9-2
グラントウキョウサウスタワー

〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル

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