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日本薬局方
テモカプリル塩酸塩錠
処方箋医薬品注)
高血圧症、腎実質性高血圧症、腎血管性高血圧症
通常、成人にはテモカプリル塩酸塩として1日1回2~4mg経口投与する。ただし、1日1回1mgから投与を開始し、必要に応じ4mgまで漸次増量する。
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、使用は避けること。腎血流量の減少や糸球体ろ過圧の低下により急速に腎機能を悪化させるおそれがある。
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、使用は避けること。高カリウム血症を増悪させるおそれがある。また、腎機能障害、コントロール不良の糖尿病等により血清カリウム値が高くなりやすい患者では、血清カリウム値に注意すること。
低用量から投与を開始し、増量する場合は徐々に行うこと。初回投与後、一過性の急激な血圧低下を起こす場合がある。
クレアチニンクリアランス値が30mL/min以下、又は血清クレアチニン値が3mg/dLを超える場合には、投与量を減らすか、又は投与間隔をのばすなど慎重に投与すること。過度の血圧低下が起こるおそれがある。
肝機能が悪化するおそれがある。
妊娠していることが把握されずアンジオテンシン変換酵素阻害剤又はアンジオテンシンII受容体拮抗剤を使用し、胎児・新生児への影響(腎不全、頭蓋・肺・腎の形成不全、死亡等)が認められた例が報告されている1),2)。
本剤の投与に先立ち、代替薬の有無等も考慮して本剤投与の必要性を慎重に検討し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、投与が必要な場合には次の注意事項に留意すること。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止すること。妊娠中期及び末期にアンジオテンシン変換酵素阻害剤又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤を投与された患者で羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全及び羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形、肺の低形成等があらわれたとの報告がある。また、海外で実施されたレトロスペクティブな疫学調査で、妊娠初期にアンジオテンシン変換酵素阻害剤を投与された患者群において、胎児奇形の相対リスクは降圧剤が投与されていない患者群に比べ高かったとの報告がある。,
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが認められている。
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
低用量(例えば1mg)から投与を開始するなど慎重に投与すること。一般に過度の降圧は好ましくないとされている。脳梗塞等が起こるおそれがある。
デキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール又はポリエチレンテレフタレートを用いた吸着器によるアフェレーシスの施行
ショックを起こすおそれがある。
陰性に荷電したデキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール又はポリエチレンテレフタレートによりブラジキニンの産生が刺激される。さらに本剤が、ブラジキニンの代謝を抑制するため、ブラジキニンの血中濃度が上昇する。
アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム膜(AN69Ⓡ)を用いた透析
アナフィラキシーを発現することがある。
陰性に荷電したAN69Ⓡ膜によりブラジキニンの産生が刺激される。さらに本剤が、ブラジキニンの代謝を抑制するため、ブラジキニンの血中濃度が上昇する。
アリスキレンフマル酸塩
(糖尿病患者に使用する場合。ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く。)
非致死性脳卒中、腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧のリスク増加が報告されている。
レニン-アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある。
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)
血管浮腫があらわれるおそれがある。本剤投与終了後にARNIを投与する場合は、本剤の最終投与から36時間後までは投与しないこと。また、ARNIが投与されている場合は、少なくとも本剤投与開始36時間前に中止すること。
併用により相加的にブラジキニンの分解が抑制され、ブラジキニンの血中濃度が上昇する可能性がある。
カリウム保持性利尿剤
カリウム補給剤
血清カリウム値が上昇するおそれがある。
機序:本剤はアンジオテンシンⅡ産生を抑制し、アルドステロンの分泌を低下させるため、カリウム排泄を減少させる。危険因子:腎機能障害のある患者
利尿降圧剤
本剤初回投与後、一過性の急激な血圧低下を起こすおそれがあるので、低用量から投与を開始すること。増量する場合は患者の状態を十分に観察しながら徐々に行うこと。
利尿降圧剤によるナトリウム排泄によって、レニン-アンジオテンシン系が亢進されているため、本剤によりアンジオテンシンⅡの産生が抑制されると、降圧作用が増強されると考えられている。なお、最近利尿降圧剤投与を開始した患者では特に注意すること。
リチウム製剤
他のアンジオテンシン変換酵素阻害剤(カプトプリル、エナラプリルマレイン酸塩、リシノプリル水和物)との併用により、リチウム中毒を起こすことが報告されている。
明確な機序は不明であるが、ナトリウムイオン不足はリチウムイオンの貯留を促進するといわれているため、本剤がナトリウム排泄を促進することにより起こると考えられる。
ニトログリセリン
降圧作用が増強されるおそれがある。
両剤の降圧作用による。
腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧を起こすおそれがある。eGFRが60mL/min/1.73m2未満の腎機能障害のある患者へのアリスキレンフマル酸塩との併用については、治療上やむを得ないと判断される場合を除き避けること。
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤
腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧を起こすおそれがある。
非ステロイド性消炎鎮痛剤
降圧作用が減弱するおそれがある。
非ステロイド性消炎鎮痛剤は、血管拡張作用を有するプロスタグランジンの合成阻害作用により、本剤の降圧作用を減弱させる可能性がある。
腎機能を悪化させるおそれがある。
プロスタグランジンの合成阻害作用により、腎血流量が低下するためと考えられる。
カリジノゲナーゼ製剤
過度の血圧低下が引き起こされる可能性がある。
血管平滑筋の弛緩が増強される可能性がある。
呼吸困難を伴う顔面、舌、声門、喉頭の腫脹を症状とする血管浮腫があらわれることがある。このような場合には、気管の閉塞を起こしやすくなるので、直ちに投与を中止し、アドレナリンの皮下注射、気道確保など適切な処置を行うこと。また、腹痛を伴う腸管の血管浮腫があらわれることがある。
AST、ALT、LDH、γ-GTP、ALPの上昇等を伴う肝機能障害があらわれることがある。
紅斑、水疱、そう痒、発熱、粘膜疹等があらわれることがある。
0.5%以上
0.1~0.5%未満
頻度不明
過敏症
発疹、そう痒
蕁麻疹
血液
白血球減少、好酸球増多
貧血、血小板減少
精神神経系
めまい、頭痛・頭重
眠気
消化器
胃部不快感
嘔気、食欲不振、下痢
嘔吐、腹痛
肝臓
AST上昇、ALT上昇
ALP上昇、LDH上昇
γ-GTP上昇、肝機能異常
循環器
動悸、低血圧
腎臓
BUN上昇、血清クレアチニン上昇
その他
咳嗽(4.5%)注1)、CK上昇
血清カリウム上昇、口渇、抗核抗体の陽性例
低血糖、嗄声、胸部不快感、咽頭不快感、顔面潮紅、倦怠感、味覚異常、浮腫
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
インスリン又は経口血糖降下剤の投与中にアンジオテンシン変換酵素阻害剤を投与することにより、低血糖が起こりやすいとの報告がある。
テモカプリル塩酸塩0.5mg、1.25mg、2.5mg、5.0mgをそれぞれ健康成人男性6例に空腹時単回経口投与したとき、テモカプリル塩酸塩は速やかに吸収され、主に肝臓で加水分解を受け、活性体(テモカプリラート)に変換される。血漿中では主に活性体として存在し、その血漿中濃度は投与後1~1.6時間で最高に達した。最高血漿中濃度は用量依存的に上昇し、8.4~174.7ng/mLであった。また、未変化体のAUCを活性体のそれと比較すると、いずれの投与量においても3%以下と低く、4時間後までに血漿中から消失した3)。
投与量(mg)
Cmax(ng/mL)
Tmax(hr)
t1/2(hr)
AUC0-24h(ng・hr/mL)
0.5
定量限界以下
-
1.25
3.9±1.2
0.7±0.1
2.9±1.0
2.5
20.7±1.7
0.5±0.1
0.2±0.1
12.2±1.5
5.0
19.2±5.2
0.6±0.1
0.4±0.1
14.3±5.5
n=6、mean±SE
t1/2α(hr)
t1/2β(hr)
8.4±0.7
1.0±0.2
47.0±3.8
37.6±7.2
1.4±0.3
178.2±53.6
100.0±13.2
1.1±0.2
1.6±0.2
21.5±8.9
436.4±53.8
174.7±15.1
1.6±0.3
14.5±5.8
856.3±105.9
健康成人男性6例にテモカプリル塩酸塩2.5mgを1日1回朝食後7日間経口投与したとき、1日目と7日目のテモカプリラートの血漿中濃度は同様な推移を示した。また、2日目以降の最低血漿中濃度はほぼ一定であり、蓄積性はみられなかった4)。
テモカプリル塩酸塩錠2mg「サワイ」とエースコール錠2mgを健康成人男子にそれぞれ1錠(テモカプリル塩酸塩として2mg)空腹時単回経口投与(クロスオーバー法)し、活性代謝物であるテモカプリラートの血漿中濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、両剤の生物学的同等性が確認された5)。
T1/2(hr)
AUC0-24hr(ng・hr/mL)
テモカプリル塩酸塩錠2mg「サワイ」
106.7±22.9
1.4±0.4
8.6±1.4
461.9±88.6
エースコール錠2mg
114.7±35.0
1.4±0.7
8.3±1.1
478.1±116.7
(Mean±S.D.)
テモカプリル塩酸塩錠4mg「サワイ」とエースコール錠4mgを健康成人男子にそれぞれ1錠(テモカプリル塩酸塩として4mg)空腹時単回経口投与(クロスオーバー法)し、活性代謝物であるテモカプリラートの血漿中濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、両剤の生物学的同等性が確認された5)。
テモカプリル塩酸塩錠4mg「サワイ」
291.0±56.6
6.9±0.6
1044.2±184.6
エースコール錠4mg
253.7±60.9
1.3±0.4
6.7±0.7
960.6±144.6
血漿中濃度ならびにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
健康成人男性6例に対し、食後にテモカプリル塩酸塩2.5mg経口投与したとき、吸収に遅延が認められたものの空腹時と有意な差はなかった6)。
血漿蛋白結合率は次表のとおりである7)。
蛋白
アルブミン
総グロブリン
α1-酸性糖蛋白
蛋白結合率(%)
92.7
42.6
3.8
テモカプリル塩酸塩0.5mg、1.25mg、2.5mg、5.0mgをそれぞれ健康成人男性6例に空腹時単回経口投与し、累積尿中回収率を求めた。その結果、尿中排泄のほとんどはテモカプリラートであり、またそれは肺などの体内血管のアンジオテンシン変換酵素との強い親和性で保持されていると考えられる。1.25mg以上ではその体内血管保持量で尿中排泄率を補正すると約34~35%と一定であった3)。
累積尿中排泄率(%)
排泄量(μg)
補正後の累積尿中排泄率(%)
8.9±2.0
44.5±10.0
22.5±4.4
281.3±55.0
34.1±6.5
28.1±3.4
702.5±85.0
33.5±4.0
31.9±1.5
1595.0±75.0
34.7±1.6
健康成人男性6例にテモカプリル塩酸塩2.5mgを1日1回朝食後7日間経口投与したとき、テモカプリル及びテモカプリラートの各投与後24時間目までの累積尿中排泄率は、テモカプリルでは1日目と2日目以降で有意差はなく、また、テモカプリラートでは2日目以降ほぼ一定で蓄積性はみられなかった4)。
健康成人男性6例(Ⅰ群)と種々の腎機能低下患者12例を重症度ごとに6例ずつ2群(Ⅱ、Ⅲ群)に分けた計18例に対し、それぞれにテモカプリル塩酸塩2.5mgを空腹時単回経口投与したときの薬物動態は、次表のとおりである。テモカプリルのCmaxとAUC0-24hは腎機能の低下に伴い増大が認められ、Ⅰ群とⅡ群間で有意な差が認められた。テモカプリラートにおいては、t1/2とAUC0-24hに腎機能低下に伴い軽度の増大が認められたが、いずれのパラメータにおいても有意な差は認められなかった。また、テモカプリラート及びテモカプリルの24時間までの尿中排泄率は、腎機能の低下に伴い低下したが、血中動態の変動が少ないことから尿中以外の経路、おそらく胆汁を介した糞中への排泄が多いものと示唆された8)。
群
平均体重(kg)
クレアチニンクリアランス(mL/min)
血清クレアチニン(mg/dL)
Ⅰ群
68.6±4.2
88.4±4.9
1.1±0.04
Ⅱ群
54.7±2.9
47.7±1.6
1.7±0.12
Ⅲ群
51.8±4.7
18.6±0.9
3.5±0.22
各群n=6、mean±SE
テモカプリル
Ⅰ
20.5±1.7
0.5±0.0
12.5±1.7
Ⅱ
43.1±6.4
33.4±3.5
Ⅲ
36.9±5.7
27.3±6.6
テモカプリラート
114.0±10.8
1.2±0.2
6.7±0.4
526.2±58.6
114.6±21.0
1.3±0.2
6.3±0.4
651.1±93.9
94.0±12.6
8.2±0.9
839.9±107.5
注)本剤の承認を受けた用法及び用量は1日1回1~4mgである。
テモカプリル塩酸塩錠1mg「サワイ」は溶出挙動に基づき、テモカプリル塩酸塩錠2mg「サワイ」と生物学的に同等とみなされた9)。
軽症・中等症の本態性高血圧症患者242例に対し、テモカプリル塩酸塩を1日1回1~4mg又は対照薬としてエナラプリルマレイン酸塩を1日1回5~20mg、観察期として4週間以上、治療期として12週間投与する二重盲検比較試験を実施したところ、有効率はテモカプリル塩酸塩投与群で68.3%(84/123例)、エナラプリル投与群で68.9%(82/119例)であった。副作用発現頻度は、テモカプリル投与群で8.1%(10/123例)であり、主な副作用は咳嗽6.5%(8/123例)であった10)。
テモカプリル塩酸塩はプロドラッグであり、体内で活性体であるテモカプリラートに変化し、アンジオテンシン変換酵素を阻害11)して、アンジオテンシンⅡの生成を抑制することにより降圧作用を示す。
テモカプリラートによるウサギ肺アンジオテンシン変換酵素に対する50%阻害濃度(IC50値)は約3.6nMと低濃度であった。テモカプリラートはラット大動脈標本におけるアンジオテンシンⅠの収縮反応を濃度依存的に抑制し、その抑制作用は持続的であった11)(in vitro)。
テモカプリル塩酸塩(Temocapril Hydrochloride)
2-[(2S,6R)-6-{[(1S)-1-(Ethoxycarbonyl)-3-phenylpropyl]amino}-5-oxo-2-(thiophen-2-yl)-2,3,6,7-tetrahydro-1,4-thiazepin-4(5H)-yl]acetic acid monohydrochloride
C23H28N2O5S2・HCl
513.07
白色の結晶性の粉末である。エタノール(99.5)に溶けやすく、水に極めて溶けにくい。
アルミピロー包装開封後は、湿気を避けて保存すること。
PTP[乾燥剤入り]:100錠(10錠×10)
1) 阿部真也他:周産期医学, 2017;47(10):1353-1355
2) 齊藤大祐他:鹿児島産科婦人科学会雑誌, 2021;29:49-54
3) 中島光好他:臨床医薬, 1989;5(7):1325-1348
4) 中島光好他:臨床医薬, 1989;5(8):1555-1578
5) 高野和彦他:医学と薬学, 2009;61(3):377-388
6) 中島光好他:臨床医薬, 1989;5(8):1539-1554
7) 第十八改正日本薬局方解説書, 廣川書店, 2021;C-3404-3409
8) 山本順之祐他:腎と透析, 1993;34(1):123-129
9) 社内資料:生物学的同等性試験(錠1mg)
10) 吉永馨他:臨床評価, 1992;20(1):11-44
11) Oizumi, K. et al.:Jpn. J. Pharmacol., 1988;48(3):349-356
12) 西野弘四他:薬理と治療, 1992;20(1):21-29
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14) 大泉喜代志他:薬理と治療, 1992;20(1):31-36
15) Oda, T. et al.:Biochem. Biophys. Res. Commun., 1988;152(1):456-462
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