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日本薬局方
カルベジロール錠
処方箋医薬品注)
慢性心不全治療の経験が十分にある医師のもとで使用すること。
効能又は効果
錠1.25mg
錠2.5mg
錠10mg
錠20mg
本態性高血圧症(軽症~中等症)
-
○
腎実質性高血圧症
狭心症
虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全
頻脈性心房細動
○:効能あり -:効能なし
カルベジロールとして、通常、成人1回10~20mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
カルベジロールとして、通常、成人1回20mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
カルベジロールとして、通常、成人1回1.25mg、1日2回食後経口投与から開始する。1回1.25mg、1日2回の用量に忍容性がある場合には、1週間以上の間隔で忍容性をみながら段階的に増量し、忍容性がない場合は減量する。用量の増減は必ず段階的に行い、1回投与量は1.25mg、2.5mg、5mg又は10mgのいずれかとし、いずれの用量においても、1日2回食後経口投与とする。通常、維持量として1回2.5~10mgを1日2回食後経口投与する。なお、年齢、症状により、開始用量はさらに低用量としてもよい。また、患者の本剤に対する反応性により、維持量は適宜増減する。
カルベジロールとして、通常、成人1回5mgを1日1回経口投与から開始し、効果が不十分な場合には10mgを1日1回、20mgを1日1回へ段階的に増量する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最大投与量は20mgを1日1回までとする。
血糖値に注意すること。低血糖症状を起こしやすく、かつその症状をマスクしやすい。
血糖値が変動するおそれがある。
臨床症状に注意し、心機能検査(脈拍、血圧、心電図、X線等)を行う等、観察を十分に行うこと。心不全を悪化させる可能性がある。
房室伝導時間が延長し、症状が悪化するおそれがある。
症状が悪化するおそれがある。
末梢血管の拡張を抑制し、症状を悪化させるおそれがある。
血圧をさらに低下させるおそれがある。
本剤の単独投与により急激に血圧が上昇するおそれがある。,
本剤の中止を要する場合は原則として1~2週間かけて段階的に減量し、観察を十分に行うこと。急に投与を中止すると、症状を悪化させることがある。
血中濃度の上昇傾向が報告されている。特に慢性心不全の患者では腎機能が悪化するおそれがある。
投与量を減量するか投与間隔をあけて使用すること。本剤は主として肝臓で代謝される薬剤であり、肝硬変患者において血中濃度の上昇が報告されている。肝機能が悪化するおそれがある。
*妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。投与に際しては、母体及び胎児の状態を十分に観察すること。また、出生後も新生児の状態を十分に観察し、新生児の低血糖、徐脈、哺乳不良等の異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
妊婦にβ遮断薬を投与した場合に、胎児の発育不全、新生児の低血糖、徐脈、哺乳不良等が認められたとの報告がある。また、ラットにおける妊娠前及び妊娠初期投与試験において、体表面積換算で臨床用量の約150倍(300mg/kg)で黄体数の減少及び骨格異常(13肋骨の短小)の増加が報告されている。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
重篤な低血糖症状があらわれ、死亡に至った例が報告されている。
低用量から投与を開始するなど、患者の状態を観察しながら慎重に投与することが望ましい。肝機能が低下していることが多いため血中濃度が上昇するおそれがあり、また過度な降圧は好ましくないとされている(脳梗塞等が起こるおそれがある)。
本剤の副作用が生じやすい。
交感神経系に対し抑制的に作用する他の薬剤
交感神経系に対し、過剰の抑制をきたすことがある。用量を調節する。
相互に交感神経抑制作用を増強すると考えられている。
血糖降下薬
血糖降下作用が増強されることがある。
非選択性β遮断薬はカテコールアミンと競合的に拮抗することにより、肝臓での糖新生を抑制すると考えられている。
カルシウム拮抗薬
心不全や低血圧を引き起こすことがある。
相互に心収縮力・刺激伝導系の抑制作用、血圧低下作用を増強すると考えられている。
ヒドララジン塩酸塩
本剤の作用が増強されるおそれがある。
ヒドララジン塩酸塩により、本剤の肝初回通過効果が減少し、血中濃度が上昇する可能性がある。
クロニジン塩酸塩
クロニジン塩酸塩中止後のリバウンド現象を増強する可能性がある。クロニジン塩酸塩から本剤へ変更する場合、クロニジン塩酸塩を中止した数日後から本剤を投与する。また、本剤中止後数日間はクロニジン塩酸塩を中止しない。
クロニジン塩酸塩中止により末梢でのノルアドレナリン遊離が増加するが、β遮断薬併用の場合、ノルアドレナリンの作用のうち、α刺激作用が優位になり、急激な血圧上昇を起こすと考えられている。
クラスⅠ抗不整脈薬
過度の心機能抑制作用があらわれることがある。用量を調節する。
相互に心機能抑制作用を増強すると考えられている。
アミオダロン塩酸塩
心刺激伝導抑制障害(徐脈、心停止等)があらわれるおそれがある。定期的な心電図モニターを実施する。
アミオダロン塩酸塩により、本剤の肝初回通過効果が減少し、血中濃度が上昇する可能性がある。
シクロスポリン
シクロスポリンの血中濃度が上昇するおそれがある。用量を調節する。
機序不明
リファンピシン
本剤の作用が減弱されるおそれがある。
リファンピシンにより、薬物代謝酵素P450(主にCYP3A4)が誘導され、本剤の代謝が亢進し、血中濃度が低下すると考えられている。
シメチジン
これらの薬剤により、薬物代謝酵素P450が阻害され、本剤の代謝が抑制される結果、血中濃度が上昇すると考えられている。
選択的セロトニン再取り込み阻害剤
ジギタリス製剤
心刺激伝導抑制障害(徐脈、房室ブロック等)があらわれるおそれがある。ジギタリスの濃度が上昇し、中毒症状が発現する可能性もある。用量を調節する。
相互に刺激伝導抑制作用を増強する可能性がある。また、ジギタリスの生物学的利用率が上昇し、血中濃度が上昇すると考えられている。
利尿降圧剤
降圧作用が増強することがある。併用する場合は用量に注意する。
相加的に降圧作用を増強させる。
交感神経刺激剤
(1)相互の薬剤の効果が減弱する。(2)血圧上昇、徐脈があらわれることがある。
(1)本剤のβ遮断作用により、アドレナリンの作用が抑制される。また、アドレナリンのβ刺激作用により本剤のβ遮断作用が抑制される。(2)本剤のβ遮断作用により、α刺激作用が優位になると考えられている。
非ステロイド性消炎鎮痛剤
本剤の降圧作用が減弱するおそれがある。
非ステロイド性消炎鎮痛剤は、血管拡張作用を有するプロスタグランジンの合成・遊離を阻害する。
重大な循環器系の副作用があらわれることがあるので、これらの症状があらわれた場合には減量又は投与を中止し、適切な処置を行うこと。
AST、ALT、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害や黄疸があらわれることがある。
0.1~5%未満
0.1%未満
頻度不明
過敏症
発疹、そう痒感
循環器
徐脈、顔面潮紅
低血圧、動悸、頻脈、心房細動、期外収縮、脚ブロック、血圧上昇、心胸比増大、四肢冷感、房室ブロック、狭心症
呼吸器
喘息様症状
咳嗽、呼吸困難、息切れ、鼻閉
精神神経系
めまい、眠気、頭痛
失神、不眠、抑うつ、注意力低下、異常感覚(四肢のしびれ感等)、幻覚
消化器
胃部不快感、嘔吐
悪心
便秘、下痢、食欲不振、腹痛
代謝
CK上昇
血糖値上昇、尿酸上昇、総コレステロール上昇、ALP上昇、LDH上昇、低血糖、尿糖、トリグリセリド上昇、カリウム上昇、糖尿病悪化、カリウム低下、ナトリウム低下
肝臓
AST上昇、ALT上昇
腎臓・泌尿器
腎機能障害(BUN上昇、クレアチニン上昇等)、尿失禁、頻尿、蛋白尿
血液
貧血、白血球減少、血小板減少
眼
霧視、涙液分泌減少
その他
倦怠感
浮腫、脱力感、勃起不全、耳鳴、疲労感、胸痛、疼痛、発汗、口渇
5%以上
5%未満
徐脈、動悸、頻脈、心房細動、期外収縮、房室ブロック、脚ブロック、低血圧、血圧上昇、四肢冷感、顔面潮紅
心胸比増大、狭心症
呼吸困難、息切れ
喘息様症状、咳嗽、鼻閉
めまい
不眠、頭痛
眠気、注意力低下、失神、抑うつ、異常感覚(四肢のしびれ感等)、幻覚
悪心、胃部不快感、便秘、下痢、食欲不振
腹痛、嘔吐
血糖値上昇、尿糖、LDH上昇、総コレステロール上昇、CK上昇
糖尿病悪化、ALP上昇、尿酸上昇、カリウム上昇、ナトリウム低下、カリウム低下
低血糖、トリグリセリド上昇
腎機能障害(BUN上昇、クレアチニン上昇等)
蛋白尿
尿失禁、頻尿
貧血、血小板減少、白血球減少
浮腫、倦怠感、疲労感、胸痛
耳鳴、脱力感、勃起不全、疼痛、発汗、口渇
重症低血圧、徐脈、心不全、心原性ショック、心停止に至るおそれがある。また、呼吸器障害、気管支痙攣、嘔吐、意識障害、全身の痙攣発作をきたすおそれがある。
本剤を中止し、次のような処置を行う。なお、本剤は血液透析により除去されにくい。
アトロピン硫酸塩、イソプレナリン塩酸塩等の投与や心臓ペーシングを適用する。
強心薬、昇圧薬、輸液等の投与や補助循環を適用する。
β2刺激薬又はアミノフィリンを静注する。
ジアゼパムを徐々に静注する。
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
健康成人男性にカルベジロールを10及び20mg(各投与量5例)を単回経口投与したとき、Cmaxはそれぞれ22.6±4.7、53.1±14.7ng/mLであり、投与量にほぼ比例して上昇した。また、連続経口投与においても蓄積性は認められなかった1)。
投与量
10mg
20mg
Tmax(hr)
0.9±0.3
0.9±0.1
Cmax(ng/mL)
22.6±4.7
53.1±14.7
t1/2(hr)
4.26±1.43
8.03±1.92
AUC(ng・hr/mL)
59.9±12.7
232.5±68.1
算術平均値±標準誤差
本態性高血圧症患者4例にカルベジロール10mgを食後経口投与したとき、投与2時間後の血漿中濃度は25.1ng/mLであった。健康成人男性4例にカルベジロール10mgを食後経口投与した場合の投与2時間後の血漿中濃度(21.8±5.6ng/mL)と同程度であり、本態性高血圧症患者における血漿中濃度の推移は健康成人と類似していた1),2),3)。
狭心症患者15例にカルベジロール10mgを食後経口投与したとき、投与2時間後の血漿中濃度は18.8±4.1ng/mLであった。健康成人男性4例にカルベジロール10mgを食後経口投与した場合の投与2時間後の血漿中濃度(21.8±5.6ng/mL)と同程度であり、狭心症患者における血漿中濃度の推移は健康成人男性と類似していた1),4) 。
軽症~中等症の慢性心不全患者にカルベジロールを1回2.5、5、10mg(各投与量9例)、1日2回連続食後経口投与し、約1週間後のCmaxはそれぞれ10.1、25.0、52.8ng/mLであり、投与量にほぼ比例して上昇した。また、1回10mg、1日2回連続食後経口投与し、約1週間後の薬物動態パラメータは次のとおりであり、健康成人男性7例に比して慢性心不全ではCmaxが約2倍、AUCが約4倍に上昇する傾向が認められた3),5)。
投与量(被験者)
10mg 1日2回連続投与(健康成人男性)
10mg 1日2回連続投与(軽症~中等症慢性心不全患者)
2.4
2.6
22.9
52.8
3.25
4.36
81.3
297.1
算術平均値
カルベジロール錠2.5mg「サワイ」とアーチスト錠2.5mgを健康成人男子にそれぞれ1錠(カルベジロールとして2.5mg)空腹時単回経口投与(クロスオーバー法)し、血漿中(S)-カルベジロール濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された6)。
T1/2(hr)
AUC0-12hr(ng・hr/mL)
カルベジロール錠2.5mg「サワイ」
3.62±1.18
0.7±0.4
4.3±1.0
6.88±1.95
アーチスト錠2.5mg
3.44±1.39
0.7±0.3
4.6±1.6
6.37±2.10
(Mean±S.D.)
カルベジロール錠10mg「サワイ」とアーチスト錠10mgを健康成人男子にそれぞれ1錠(カルベジロールとして10mg)空腹時単回経口投与(クロスオーバー法)し、血漿中カルベジロール濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、AUCは対数値の平均値の差の90%信頼区間がlog(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、また、Cmaxは対数値の平均値の差がlog(0.90)~log(1.11)の範囲内であり、かつ、溶出試験で溶出挙動が類似していることから、両剤の生物学的同等性が確認された7)。
AUC0-24hr(ng・hr/mL)
カルベジロール錠10mg「サワイ」
27.5±13.0
1.0±0.4
5.1±2.8
94.8±33.2
アーチスト錠10mg
24.6±10.1
1.1±0.7
6.0±2.7
91.9±31.9
カルベジロール錠20mg「サワイ」とアーチスト錠20mgを健康成人男子にそれぞれ1錠(カルベジロールとして20mg)空腹時単回経口投与(クロスオーバー法)し、血漿中カルベジロール濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された8)。
カルベジロール錠20mg「サワイ」
55.6±28.6
1.0±0.5
5.0±2.0
188.4±113.4
アーチスト錠20mg
54.7±32.1
4.5±2.0
190.1±136.6
血漿中濃度ならびにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
健康成人男性20例(19~45歳)にカルベジロール12.5mg静脈内投与注1)(1時間注入)、25及び50mgの経口投与(カプセル)を1~2週間間隔で行い血漿中未変化体濃度を測定した結果、絶対生物学的利用率は22~24%であった9)(外国人データ)。
ラットに14C-カルベジロール10mg/kgを単回経口投与した場合、組織内放射能濃度は多くの組織で投与後1~3時間で最高濃度に達した。投与後1時間では消化管、肝、肺、腎、副腎の順に高く、脳、生殖器では低値であった10)。
ヒト血清蛋白に対する結合性を50~1,000ng/mLの濃度範囲で検討したところ、94.2~96.1%の結合率であった3)。
健康成人男性3例に14C-カルベジロール50mgを経口投与した場合、主要代謝物は未変化体のグルクロン酸抱合体[血漿中存在率22%(投与後1.5時間)、尿中存在率32.4%(投与後12時間までの蓄積尿)]であった(外国人データ)。カルベジロールの主要な消失経路は代謝である11)。
カルベジロールの代謝に関与するチトクロームP450の主な分子種はCYP2D6及びCYP2C9であり、次いでCYP3A4、CYP1A2、CYP2E1が関与した12)。
健康成人男性3例に14C-カルベジロール50mgを経口投与した場合、放射能排泄率は投与168時間では尿中に15.9%、糞中に59.5%であった13)(外国人データ)。健康成人男性5例にカルベジロール20mgを単回経口投与した場合、投与後48時間までの尿中未変化体排泄率は投与量の約0.2%、糞中未変化体排泄率は約22.7%であった1)。
腎実質性高血圧患者9例にカルベジロール5mgを単回及び連続経口投与したとき、血清クレアチニン値が6mg/dL以下の腎機能障害患者では、Cmaxの上昇はみられず、連続投与においても健康成人と同様、蓄積性は認められなかったが、血清クレアチニン値が6mg/dL以上の腎機能障害患者では、健康成人に比べCmaxが上昇する傾向が認められた14)。
透析患者6例にカルベジロール10mgを透析直前に単回経口投与し、投与5時間まで透析を実施したときの血漿中未変化体濃度推移は、健康成人に比してTmaxがやや遅延したが、Cmaxには差がなかった15)。
肝硬変患者6例にカルベジロール25mgを空腹時単回経口投与したとき、全身クリアランスが健康成人の64%に低下し、Cmaxは4.4倍に上昇した16)。
カルベジロール錠1.25mg「サワイ」は溶出挙動に基づき、カルベジロール錠2.5mg「サワイ」と生物学的に同等とみなされた17)。
軽・中等度本態性高血圧症患者を対象とした二重盲検比較試験において、カルベジロール5~20mg注2)を114例に、ラベタロール150~450mgを115例に12週間経口投与した。著明下降あるいは下降の降圧効果(下降以上)を示したのは、カルベジロール群で52.3%(56/107例)、ラベタロール群で62.5%(70/112例)であった。また、12週間投与された完了例において、投与終了時の平均血圧降下度が13mmHg以上の下降症例はそれぞれ、63.3%(50/79例)、66.3%(53/80例)であった。副作用発現率はカルベジロール群で8.4%(9/107例、11件)であり、主なものは徐脈、ふらつきが各2件であった18)。
本態性高血圧症患者94例に対して、カルベジロール単独(5~20mg注2))又は利尿薬との併用で1年以上投与したとき、著明下降あるいは下降の降圧効果を示したのは66.3%(59/89例)であった。副作用発現率は11.7%(11/94例、16件)であり、主なものは徐脈3件、めまい、全身倦怠感が各2件であった19)。
腎実質性高血圧症19例に対して、カルベジロール単独(5~20mg注3))又は利尿薬との併用で1年以上投与したとき、著明下降あるいは下降の降圧効果を示したのは66.7%(12/18例)であった。単独群では副作用は認められず、併用群で1例にふらつきが発現した20)。
狭心症患者75例を対象とした二重盲検比較試験において、カルベジロールの3用量(5、10、20mg注4))を2週間経口投与した。全般改善度において、著明改善を示したのは5mg群で0%(0/21例)、10mg群で4.5%(1/22例)、20mg群で23.8%(5/21例)であり、用量依存性が認められた。副作用は5mg群、20mg群に各1例、10mg群に2例発現した21)。
狭心症患者を対象とした二重盲検比較試験において、カルベジロール20mgを56例に、アテノロール50mgを56例に4週間経口投与した。全般改善度において、著明改善を示したのはカルベジロール群で21.7%(10/46例)、アテノロール群で13.3%(6/45例)であり、中等度改善以上はそれぞれ、73.9%(34/46例)、55.6%(25/45例)であった。副作用発現率はカルベジロール群で3.7%(2/54例、5件)であり、頭痛及び耳鳴が各2件、脱力感が1件認められた22)。
狭心症患者を対象とした二重盲検比較試験において、カルベジロール20mgを27例に、アテノロール50mgを26例に2週間経口投与した。運動耐容能を主指標とした全般改善度において、著明改善を示したのはカルベジロール群で17.4%(4/23例)、アテノロール群で12.5%(3/24例)であり、中等度改善以上はそれぞれ、60.9%(14/23例)、62.5%(15/24例)であった。副作用発現率はカルベジロール群で12.0%(3/25例、4件)であり、眠気、頭のふらつき、手足のしびれ、胃部不快感が各1件認められた23)。
軽症~中等症の慢性心不全患者28例を対象とし、カルベジロール10~30mg/日(1日2回)注6)を26~52週間投与した。全般改善率(中等度改善以上)は、37.5%(9/24例)であった。副作用発現率は51.9%(14/27例)であり、主なものは立ちくらみが14.8%(4/27例)、めまいが11.1%(3/27例)であった24)。
軽症~中等症の慢性心不全患者10例を対象とし、カルベジロール20mg/日(1日2回)を12~16週間投与した。全般改善率(中等度改善以上)は、33.3%(3/9例)であった。副作用発現率は40.0%(4/10例)であり、主なものはめまい及び動悸が各20.0%(2/10例)であった25)。
軽症~中等症の慢性心不全患者11例を対象とし、カルベジロール5~30mg/日(1日2回)注6)を48~52週間投与した。全般改善率(中等度改善以上)は、0%(0/10例)であった。副作用発現率は54.5%(6/11例)であり、心不全が45.5%(5/11例)、血圧低下が9.1%(1/11例)であった26)。
軽症~中等症の慢性心不全患者を対象とした二重盲検比較試験において、プラセボ群(49例)、カルベジロール5mg/日(1日2回)群(47例)、カルベジロール20mg/日(1日2回)群(78例)の3群に、24~48週間投与した。左室駆出率の用量依存的(P=0.018)な改善(観察期からの変化:プラセボ群+6.6%(37例)、5mg/日群+8.7%(40例)、20mg/日群+13.2%(66例))、並びに心血管系の理由による入院率の用量依存的(P<0.001)な低下(入院率:プラセボ群24.5%(12/49例)、5mg/日群4.3%(2/47例)、20mg/日群3.9%(3/77例))が認められた。全般改善率(中等度改善以上)はプラセボ群36.7%(18/49例)、5mg/日群44.7%(21/47例)、20mg/日群59.7%(46/77例)であり、用量依存性(P=0.010)が認められた。副作用発現率は5mg/日群で36.2%(17/47例)、20mg/日群で46.8%(36/77例)であった。主なものは、5mg/日群では突然死が4.3%(2/47例)、20mg/日群では心不全が11.7%(9/77例)であった27),28),29)。
軽症~中等症の慢性心不全患者を対象とした4つのプラセボ対照大規模二重盲検比較試験において、カルベジロール12.5~100mg/日(1日2回)注6)を24~48週間投与した結果、全死亡率はプラセボ群で7.8%(31/398例)、カルベジロール群で3.0%(21/696例)であり、カルベジロール投与によりプラセボ群と比較して死亡率の有意な低下が認められた(P<0.001)。各試験の死亡率は次のとおりであった30),31)。
試験
プラセボ群死亡例数/評価例数(%)
カルベジロール群死亡例数/評価例数(%)
相対危険度(95%信頼区間)
P値注5)
220
13/84(15.5)
11/261(4.2)
0.25(0.11~0.55)
P<0.001
221
11/145(7.6)
6/133(4.5)
0.57(0.21~1.54)
P=0.261
239
2/35(5.7)
2/70(2.9)
0.54(0.08~3.85)
P=0.533
240
5/134(3.7)
2/232(0.9)
0.22(0.04~1.14)
P=0.048
合計
31/398(7.8)
21/696(3.0)
0.33(0.19~0.59)
重症の慢性心不全2,289例を対象としたプラセボ対照大規模二重盲検試験において、カルベジロール6.25~50mg/日(1日2回)注6)を投与した。死亡率はプラセボ群で16.8%(190/1,133例)、カルベジロール群で11.2%(130/1,156例)であり、カルベジロール投与によりプラセボ群と比較して死亡率の有意な低下が認められた(P=0.00013)。カルベジロール群における副作用発現率は44.1%(510/1,156例)であり、主なものは無力症5.5%(64/1,156例)等の一般的全身症状、低血圧9.3%(107/1,156例)、徐脈8.3%(96/1,156例)、うっ血性心不全4.2%(49/1,156例)、失神3.7%(43/1,156例)等の循環器症状、めまい16.4%(190/1,156例)、頭痛2.1%(24/1,156例)等の精神神経系症状、呼吸困難3.6%(42/1,156例)等の呼吸器症状等であった32),33)。
持続性又は永続性心房細動に対する心拍数減少効果を、ホルター心電図の24時間平均心拍数を指標とした二重盲検比較試験において5mg固定群、10mg漸増群又は20mg漸増群で比較した(5mg 1日1回投与から開始し、2週ごとに増量の要否を判断し、5mg維持、あるいは10mg又は20mg 1日1回投与まで段階的に増量し6週まで投与)。5mg/日投与(2週時)により投与前値からの有意な心拍数減少が認められた[6.6拍/分(算術平均値)、t検定:P<0.0001]。4週時には5mg固定群(5mg/日)で6.3拍/分(最小二乗平均値、以下同様)、漸増群(5~10mg/日投与)で8.6拍/分の心拍数減少が、6週時には5mg固定群で7.7拍/分、20mg漸増群(5~20mg/日投与)で10.7拍/分の心拍数減少が認められ、漸増時の心拍数減少効果がより大きかった。また、6週時には用量依存的な心拍数減少効果の増大傾向(5mg固定群で7.6拍/分、10mg漸増群で8.9拍/分、20mg漸増群で10.6拍/分)がみられた。副作用発現率は7.9%(10/127例)で、主なものは慢性心不全1.6%(2/127例)、LDH上昇1.6%(2/127例)、γ-GTP上昇1.6%(2/127例)であった34),35)。
カルベジロールは、β受容体遮断作用に加え、α1受容体遮断作用を主とした血管拡張作用をも有し、総末梢血管抵抗及び主要臓器の血管抵抗を維持、減少させる36)。
無麻酔犬におけるイソプレナリン頻脈に対して持続的な非選択的β受容体遮断作用を示した37)。また、狭心症患者で運動負荷時の心拍数増加を単回投与後24時間においても抑制した4) 。
高血圧自然発症ラット、腎性高血圧ラット38)において速やかで持続的な降圧作用を示した。本態性高血圧症患者に1日1回投与した場合、血圧日内変動に影響を与えず、24時間にわたって安定した降圧作用を示した39)。
各種実験において血管拡張作用が認められ、作用機序にはα1受容体遮断作用が主に関与していると考えられている40),41)。健康成人においてもα及びβ受容体遮断作用を示し、その作用比はおよそ1:8であった42)。
脳、心、腎などの主要臓器血流を維持し、良好な循環動態を示した43)。本態性高血圧症患者では44)、総頸動脈血流量、四肢動脈血流量の増加、また狭心症患者45)では、左室拡張末期容積の減少及び安静時の左室駆出分画の増加が認められた。
腎障害合併高血圧モデルにおいて降圧作用、腎血流量増加作用を示し46)、血清クレアチニン上昇・尿蛋白増加の抑制を示した38)。麻酔犬を用いた実験により、腎輸入細動脈を選択的に拡張し、腎血流量を増加し、糸球体濾過量を維持することが明らかにされた47)。
イヌでイソプレナリン負荷による心拍数の増加を抑制し、心筋酸素消費量を減少させた48)。また、狭心症患者で、長時間心電図上、心拍数の減少及びST下降、特に無症候性ST下降の抑制を示し49)、また運動負荷による血圧上昇、心拍数の増加及びST変化の抑制が認められた。
ラット摘出虚血再灌流心においてATP、ATP/ADP比、エネルギーチャージ[(ATP+1/2ADP)/(ATP+ADP+AMP)]の減少を有意に抑制した50)。また、ブタ、イヌ虚血再灌流心ではその梗塞サイズをプロプラノロールに比し有意に減少した51)。
冠動脈結紮心不全モデルラットにおいて、カルベジロール投与群(結紮の翌日より投与)は溶媒投与群に比べ左室機能(左室駆出率、左室拡張末期圧)の改善を示した52)。Dahl食塩感受性ラットにおいて、カルベジロール投与群(心不全発症前より投与)は溶媒投与群に比べ左室機能(左室拡張末期圧)及び生存率の改善を示した53)。また、冠動脈塞栓心不全モデルイヌにおいて、カルベジロール投与群は無投与群に比べ左室機能(左室駆出率)の改善ならびに左室リモデリングの進展抑制(左室収縮末期容積及び左室拡張末期容積の縮小)を示した54)。
ウサギにおいて膜安定化作用が認められた。また、ラットにおいて内因性交感神経刺激作用は認められなかった37) 。さらにラット脳ホモジネートにおいて脂質過酸化抑制作用が認められた55)(in vitro)。
カルベジロール(Carvedilol)
(2RS)-1-(9H-Carbazol-4-yloxy)-3-{[2-(2-methoxyphenoxy)ethyl]amino}propan-2-ol
C24H26N2O4
406.47
白色~微黄白色の結晶又は結晶性の粉末である。酢酸(100)に溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノール(99.5)に溶けにくく、水にほとんど溶けない。メタノール溶液(1→100)は旋光性を示さない。
114~119℃
PTP:100錠(10錠×10)
PTP:100錠(10錠×10)バラ[乾燥剤入り]:200錠
PTP:100錠(10錠×10)、500錠(10錠×50)バラ:500錠
1) 藤巻正慶他:臨床薬理, 1990;21(2):415-424
2) 荻原俊男他:臨床と研究, 1989;66(5):1660-1666
3) 第十八改正日本薬局方解説書, 廣川書店, 2021;C-1406-1410
4) 都築雅人他:臨床薬理, 1990;21(3):521-534
5) 慢性心不全患者(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ヘ.2.2.1)
6) 社内資料:生物学的同等性試験(錠2.5mg)
7) 社内資料:生物学的同等性試験(錠10mg)
8) 社内資料:生物学的同等性試験(錠20mg)
9) Möllendorff, E. V. et al.:Eur. J. Clin. Pharmacol., 1987;33(5):511-513
10) 組織分布(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ヘ.2.6)
11) 血漿及び尿中代謝物(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ヘ.2.4, ヘ.2.6)
12) Oldham, H. G. et al.:Drug Metab. Dispos., 1997;25(8):970-977
13) 排泄(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ヘ.2.6)
14) Hakusui, H. et al.:Drugs, 1988;36(S-6):144-147
15) 三木茂裕他:日本透析医学会雑誌, 1991;24(4):515-521
16) Neugebauer, G. et al.:Drugs, 1988;36(Suppl 6):148-154
17) 社内資料:生物学的同等性試験(錠1.25mg)
18) 五島雄一郎他:臨床と研究, 1990;67(6):1869-1894
19) 五島雄一郎他:臨床と研究, 1990;67(3):965-984
20) 武田忠直他:臨床と研究, 1994;82(3):506-522
21) 加藤和三他:臨床と研究, 1990;67(3):985-995
22) 加藤和三他:臨床と研究, 1990;67(2):618-631
23) 加藤和三他:臨床と研究, 1990;67(2):632-648
24) 国内臨床試験(血行動態に及ぼす影響)(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ト.1.3.1)
25) 国内臨床試験(慢性心不全患者を対象とした薬物動態試験)(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ト.1.3.2)
26) 国内臨床試験(神経体液性因子に及ぼす影響)(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ト.1.3.3)
27) Hori, M. et al.:Am. Heart J., 2004;147(2):324-330
28) 国内第Ⅱ相試験①(虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全)(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ト.1.2)
29) 国内第Ⅱ相試験②(虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全)(アーチスト錠:2002年10月8日承認、審査報告書)
30) Packer, M. et al.:N. Engl. J. Med., 1996;334(21):1349-1355
31) 海外第Ⅲ相試験(虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全)(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ト.2.3.1.1)
32) Packer, M. et al.:N. Engl. J. Med., 2001;334(22):1651-1658
33) 海外第Ⅲ相試験(重症)(虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全)(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ト.2.4.1, ト.2.3.2.2)
34) Inoue, H. et al.:J. Cardiol., 2017;69(1):293-301
35) 国内第Ⅲ相試験(頻脈性心房細動)(アーチスト錠:2015年8月24日承認、審査報告書)
36) 作用機序(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ホ.2.2, ホ.4)
37) Sponer, G. et al.:J. Cardiovasc. Pharmacol., 1987;9(3):317-327
38) Nakamoto, H. et al.:Drugs, 1988;36(S-6):160-164
39) 吉永馨他:臨床と研究, 1989;66(11):3684-3692
40) Seki, N. et al.:J. Pharmacol. Exp. Ther., 1988;246(3):1116-1122
41) 血管拡張作用(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ホ.4)
42) Tomlinson, B. et al.:Drugs, 1988;36(S-6):37-47
43) 血行動態改善作用(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ホ.4)
44) Nagakawa, Y. et al.:Eur. J. Clin. Pharmacol., 1990:38(Suppl 2):S115-S119
45) Lahiri, A. et al.:Am. J. Cardiol., 1987;59(8):769-774
46) Kohno, M. et al.:Drugs, 1988;36(S-6):165-168
47) Tamaki, T. et al.:Drugs, 1988;36(S-6):155-159
48) Kawada, T. et al.:J. Cardiovasc. Pharmacol., 1990;16(1):147-153
49) 岸田浩他:診断と治療, 1989;77(11):3024-3032
50) 河田登美枝他:心筋の構造と代謝−1989−心筋代謝研究会編, 1990;12:401-414
51) Feuerstein, G. Z. et al.:J. Cardiovasc. Pharmacol., 1992;19(S-1):S138-S141
52) 抗不整脈作用①(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ホ.1.3)
53) 抗不整脈作用②(アーチスト錠:2002年10月8日承認、申請資料概要ホ.1.1)
54) Mishima, T. et al.:Circulation, 2000;102(18):534
55) Yue, T. L. et al.:J. Pharmacol. Exp. Ther., 1992;263(1):92-98
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