医療用医薬品 詳細表示

ケシンプタ皮下注20mgペン

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
1.警告
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.4生殖能を有する者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
10.相互作用
10.2併用注意(併用に注意すること)
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
14.適用上の注意
15.その他の注意
15.1臨床使用に基づく情報
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.2吸収
16.8その他
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
18.薬効薬理
18.1作用機序
18.2ヒトCD20への特異的結合作用
18.3CD20陽性細胞溶解作用
19.有効成分に関する理化学的知見
20.取扱い上の注意
21.承認条件
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
26.製造販売業者等

ケシンプタ皮下注20mgペン

添付文書番号

1190405G1024_1_04

企業コード

300242

作成又は改訂年月

**2024年6月改訂(第5版)
2022年10月改訂

日本標準商品分類番号

87119

薬効分類名

多発性硬化症治療剤/ヒト型抗CD20モノクローナル抗体

承認等

ケシンプタ皮下注20mgペン

販売名コード

YJコード

1190405G1024

販売名英語表記

Kesimpta for s.c. injection 20mg pen

販売名ひらがな

けしんぷたひかちゅう20mgぺん

承認番号等

承認番号

30300AMX00257000

販売開始年月

2021年5月

貯法・有効期間

貯法

2~8℃に保存

有効期間

*36ヵ月

規制区分

一般的名称

オファツムマブ(遺伝子組換え)

1. 警告

  1. 1.1 慢性リンパ性白血病の治療のためにオファツムマブを点滴静注したB型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルスの再活性化により肝不全に至り死亡した例が報告されている。,

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

3. 組成・性状

3.1 組成

ケシンプタ皮下注20mgペン

有効成分(1本0.4mL中)
オファツムマブ(遺伝子組換え)   20.0mg
添加剤(1本0.4mL中)  
L-アルギニン   4.00mg
酢酸ナトリウム水和物   2.72mg
ポリソルベート80   0.080mg
エデト酸ナトリウム水和物   0.007mg
その他、pH調節剤及び等張化剤を含有する。  

本剤はマウスミエローマ(NS0)細胞を用いて製造される。
マスターセルバンクの培地成分としてウシ胎児血清を使用している。

3.2 製剤の性状

ケシンプタ皮下注20mgペン

pH5.3~5.7
性状無色~微褐黄色の澄明又はわずかに混濁した液
浸透圧240~380mOsm/kg

4. 効能又は効果

下記患者における再発予防及び身体的障害の進行抑制
再発寛解型多発性硬化症
疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症

5. 効能又は効果に関連する注意

  1. 5.1 臨床試験に組み入れられた患者における再発又はMRI画像所見に基づく疾患活動性も参考に、投与対象を選択すること。,

6. 用法及び用量

通常、成人にはオファツムマブ(遺伝子組換え)として1回20mgを初回、1週後、2週後、4週後に皮下注射し、以降は4週間隔で皮下注射する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  1. 7.1 投与予定日に本剤を投与できなかった場合は、できるだけ速やかに投与し、その後は「6.用法及び用量」に規定された投与間隔で投与すること。

8. 重要な基本的注意

  1. 8.1 B型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎があらわれるおそれがあるので、本剤投与に先立ってB型肝炎ウイルス感染の有無を確認すること。,
  2. 8.2 本剤投与により免疫グロブリン濃度の低下、並びに白血球、好中球及びリンパ球の減少があらわれ、これに伴い感染症が生じる又は悪化するおそれがある。本剤の治療期間中及び治療終了後は定期的に血液検査を行うなど患者の状態を十分に観察すること。また、感染症の自他覚症状に注意し、異常が認められた場合には、速やかに医療機関に相談するよう患者に指導すること。,
  3. 8.3 本剤投与によりB細胞数が減少し、本剤投与中止後も長期間にわたりB細胞数の低下が持続する。そのため、本剤投与中止後においても、免疫抑制作用により細菌やウイルス等による感染症が生じる又は悪化するおそれがあるので、患者の状態を十分に観察すること。,,
  4. 8.4 本剤の投与後に注射に伴う全身反応(発熱、頭痛、筋肉痛、悪寒、疲労等)があらわれることがある。臨床試験では、多くは初回投与時に認められているが、2回目以降の投与時にも認められている。投与開始早期は注射に伴う全身反応の発現に注意するよう患者に指導すること。本剤の初回投与時には、注射に伴う全身反応を軽減させるために、必要に応じて副腎皮質ステロイド等の前投与を考慮すること。
  5. 8.5 本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督のもとで投与を行うこと。自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施した後、本剤投与による危険性と対処法について患者又はその介護者が理解し、確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導の下で実施すること。自己投与の適用後、感染症等の本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理下で慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。また、本剤投与後に副作用の発現が疑われる場合は、速やかに医療機関へ連絡するよう患者に指導を行うこと。使用済みの注射器を再使用しないように患者に注意を促し、すべての器具の安全な廃棄方法に関する指導の徹底を行うと同時に、使用済みの注射器を廃棄する容器を提供すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 活動性B型肝炎患者、B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)

    活動性B型肝炎患者では、肝炎の治療を優先すること。本剤の治療期間中及び治療終了後は、継続して肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)ではB型肝炎ウイルスの再活性化により肝炎があらわれるおそれがある。,

  2. 9.1.2 感染症のある患者

    感染症を合併している場合は、感染症の治療を優先すること。感染症が増悪するおそれがある。,,

9.4 生殖能を有する者

妊娠可能な女性に対しては、本剤投与中及び本剤最終投与後6ヵ月間は適切な避妊法を用いるよう指導すること。

9.5 妊婦

  1. 9.5.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。サルを用いた胚及び胎児発生・拡充型出生前及び出生後の発生並びに母体の機能に関する試験においてオファツムマブは胎盤を通過することが確認されており、胎児・乳児で末梢血B細胞数の枯渇及び脾臓重量の減少、乳児でキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に対する液性免疫応答の低下が認められている。臨床曝露量の160倍(AUCを指標)で母動物(サル)の乳児において、免疫調節による感染症を起因とした早期死亡が認められている。,
  2. 9.5.2 妊娠中に本剤を投与した患者からの出生児においては、B細胞数の回復が確認されるまでは、生ワクチン又は弱毒生ワクチンを投与しないこと。B細胞の枯渇は、生ワクチン又は弱毒生ワクチンによる感染症発現のリスクを増大するおそれがある。不活化ワクチンはB細胞枯渇から回復する前に投与してもよいが、十分な免疫応答が得られているか評価すること。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤の母乳中への移行は不明であるが、ヒトIgGは母乳中に移行することが知られている。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

10. 相互作用

    10.2 併用注意(併用に注意すること)

    薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子

    生ワクチン
    弱毒生ワクチン

    生ワクチン又は弱毒生ワクチンは本剤投与開始の少なくとも4週間前までに接種すること。治療中及び投与中止後にB細胞数が回復するまでは生ワクチン又は弱毒生ワクチンを接種しないことが望ましい。

    生ワクチン又は弱毒生ワクチンによる感染症発現のリスクが増大するおそれがある。

    不活化ワクチン

    不活化ワクチンは本剤投与開始の少なくとも2週間前までに接種すること。

    ワクチンの効果を減弱させるおそれがある。

    免疫抑制剤又は免疫調節剤

    • フマル酸ジメチル
      フィンゴリモド
      ナタリズマブ等

    これらの薬剤から切り替える場合は、本剤開始時に相加的な免疫抑制作用が生じるおそれがある。これらの薬剤の作用持続時間及び作用機序を考慮すること。

    相加的に免疫系に作用するリスクがある。

    11. 副作用

    次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

    11.1 重大な副作用

    1. 11.1.1 感染症(15.0%)

      上気道感染(上咽頭炎、上気道感染、インフルエンザ)等の感染症があらわれることがある。,,

    2. 11.1.2 **注射に伴う全身反応(20.6%)

      発熱、頭痛、筋肉痛、悪寒、疲労等の注射に伴う全身反応があらわれることがある。また、アナフィラキシーを含む重度の注射に伴う全身反応が認められた場合は、本剤の投与中止等の適切な処置を行うこと。

    3. 11.1.3 進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明)

      本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察すること。意識障害、認知機能障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、構音障害、失語等の症状があらわれた場合には、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。本剤の多発性硬化症を対象とした臨床試験ではPMLの報告はないが、慢性リンパ性白血病患者に対し点滴静注するオファツムマブ製剤を含む他の抗CD20抗体製剤及び他の多発性硬化症治療薬を投与した患者においてJCウイルス感染によるPMLが報告されている。

    11.2 その他の副作用

    5%以上

    頻度不明

    一般・全身障害及び
    投与部位の状態

    注射部位反応(紅斑、疼痛、そう痒、腫脹)

    **免疫系障害

    **過敏症反応

    臨床検査

    血中IgM減少

    14. 適用上の注意

    14.1 薬剤投与前の注意

    1. 14.1.1 投与前に冷蔵庫から取り出し室温に戻しておくこと。

    14.2 薬剤投与時の注意

    1. 14.2.1 皮膚が敏感な部位、皮膚に異常のある部位(傷、発赤、硬結等)には注射しないこと。
    2. 14.2.2 注射部位は腹部、大腿部又は上腕部とし、投与毎に注射部位を変えること。
    3. 14.2.3 本剤は1回使用の製剤であるため、使用済みの注射器は再使用せず廃棄すること。

    14.3 薬剤交付時の注意

    1. 14.3.1 患者が家庭で保存する場合は、本剤は外箱に入れた状態で、冷蔵庫内で保存すること。やむを得ず室温(30℃以下)で保存する場合は、7日間保存可能であるが、この期間内に使用しなかった場合は、冷蔵庫に戻し7日以内に使用すること。

    15. その他の注意

    15.1 臨床使用に基づく情報

    臨床試験で抗オファツムマブ抗体の陽性例が報告されている。

    16. 薬物動態

    16.1 血中濃度

    • 再発を伴う多発性硬化症患者(21例)に本剤20mgを皮下投与(初回、1週後、2週後、4週後、以降4週間隔で投与)したとき、血漿中濃度は以下のとおりであった1)

      評価時点(初回投与後)

      本剤の血漿中濃度(µg/mL)
      平均値±標準偏差

      2日

      0.43±0.38(n=21)

      5日

      0.88±0.40(n=21)

      7日

      0.84±0.39(n=21)

      14日

      2.17±0.63(n=21)

      4週

      2.69±0.86(n=21)

      12週

      0.66±0.62(n=20)

      24週

      0.84±0.60(n=20)

      再発寛解型多発性硬化症患者、再発を伴う多発性硬化症患者を対象とした国際共同第II相試験及び海外臨床試験から得られた血漿中濃度データ(1483例、9464測定点)を用いて実施した母集団薬物動態解析の結果から、クリアランスは0.339L/day、分布容積は2.57L、バイオアベイラビリティは0.681と推定された2)

    16.2 吸収

    再発を伴う多発性硬化症患者(284例)に本剤20mgを皮下投与(初回、1週後、2週後、4週後、以降4週間隔で投与)したとき、定常状態でのAUCtau及びCmaxの幾何平均値(幾何変動係数)はそれぞれ483µg・h/mL(90%)及び1.43µg/mL(77%)であった3)(n=282、外国人データ)。

    16.8 その他

    1. 16.8.1 薬力学

      再発を伴う多発性硬化症患者(32例)に本剤20mg又はプラセボを皮下投与(初回、1週後、2週後、4週後、以降4週間隔で投与)したとき、B細胞数の推移は以下のとおりであった1)

      本剤群

      プラセボ群

      評価例数

      B細胞数(cells/µL)

      評価例数

      B細胞数(cells/µL)

      ベースライン

      21

      230.2 ± 135.5

      11

      305.2 ± 222.5

      2日目

      21

      9.9 ± 16.2

      11

      339.5 ± 165.9

      5日目

      20

      9.0 ± 12.8

      10

      305.3 ± 193.7

      1週目

      21

      4.5 ± 5.1

      11

      276.6 ± 167.0

      2週目

      21

      2.9 ± 5.0

      11

      276.6 ± 129.3

      4週目

      21

      2.4 ± 4.0

      10

      281.6 ± 110.0

      12週目

      20

      1.4 ± 1.9

      10

      265.7 ± 126.2

      24週目

      19

      0.9 ± 1.2

      8

      235.1 ± 119.4

      平均値±標準偏差

      本剤投与中止36週目にB細胞数がベースライン又は基準値下限(40cells/µL)まで回復が認められた被験者の割合は、G2301試験で55.6%(15/27例)、G2302試験で70.3%(26/37例)であり、本剤の投与中止後のB細胞数の推移は以下のとおりであった4),5)(外国人データ)。

      G2301試験

      G2302試験

      評価例数

      B細胞数(cells/µL)

      評価例数

      B細胞数(cells/µL)

      本剤投与中の最終評価時

      462

      3.9 ± 24.0

      477

      8.4 ± 47.9

      本剤投与中止後の追跡期間

      12週目

      310

      5.1 ± 22.5

      347

      9.7 ± 39.7

      24週目

      33

      48.8 ± 55.0

      52

      70.2 ± 76.1

      36週目

      27

      52.6 ± 51.2

      37

      86.5 ± 80.8

      48週目

      17

      71.8 ± 87.6

      23

      138.3 ± 109.3

      60週目

      13

      113.8 ± 97.1

      10

      135.0 ± 103.7

      72週目

      4

      55.0 ± 52.0

      8

      123.8 ± 109.7

      96週目

      1

      0 a)

      3

      80.0 ± 105.8

      平均値±標準偏差, a)個別値

    17. 臨床成績

    17.1 有効性及び安全性に関する試験

    1. 17.1.1 国際共同第Ⅱ相試験(G1301試験)

      再発を伴う多発性硬化症患者注1)(64例、うち日本人患者32例)を対象として無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を実施した。本剤20mg(初回、1週後、2週後、4週後、以降4週間隔で投与)、又はプラセボ(本剤と同一用法)を24週間皮下投与した(ランダム化比 2:1)。
      主要評価項目である投与12~24週後のGd造影T1病変数を本剤群はプラセボ群に比べ93.6%抑制した。

      評価例数

      Gd造影T1病変数/スキャン
      (95%信頼区間)

      プラセボとの比較

      群間比
      (95%信頼区間)

      P値

      プラセボ群

      20

      1.0413
      (0.465, 2.331)

      NA

      NA

      本剤群

      39

      0.067
      (0.027, 0.167)

      0.064
      (0.018, 0.232)

      p<0.001

      負の二項回帰モデルを用いて解析した。投与群、地域(日本、外国)、及びベースラインのGd造影T1病変数を要因、Gd造影T1病変数の累積数を反応変数、MRIスキャン回数の自然対数をオフセット変数としてモデルに含めた。

      副作用は、本剤群で27.9%(12/43例)に認められ、主な副作用は、注射に伴う全身反応23.3%(10/43例)、リンパ球減少症4.7%(2/43例)であった1)
      注1)以下のいずれにも該当する患者

      • McDonald診断基準(2010年改訂版)で多発性硬化症と診断された患者
      • 再発寛解型多発性硬化症又は疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症患者
      • 過去2年以内に新規の神経学的異常又は既存の神経学的異常の悪化が1回以上認められ、かつ、過去1年以内に脳MRI画像で疾患活動性(Gd造影T1病変あるいは新規又は拡大T2病変)が認められた患者
    2. 17.1.2 海外第Ⅲ相試験(G2301試験、G2302試験)

      G2301試験及びG2302試験は同時期に実施された同一デザインの試験であり、再発を伴う多発性硬化症患者注2)(G2301試験:927例、G2302試験:955例)を対象とした無作為化二重盲検teriflunomide(国内未承認)対照並行群間比較試験である。
      本剤20mg(初回、1週後、2週後、4週後、以降4週間隔で皮下投与)、又はteriflunomide 14mg(1日1回経口投与)を1:1の比で割り付けた。投与期間は患者毎に異なり、終了基準を満たすまで投与を継続した。両試験の併合データの投与期間の中央値は本剤群で599.5日、対照群で576.0日であった。
      両試験の主要評価項目である年間再発率を本剤群は対照群に比べ、各々50.5%及び58.5%抑制した。予め計画した両試験の併合解析により、副次評価項目であるEDSSに基づく3ヵ月持続する障害増悪及び6ヵ月持続する障害増悪を本剤群は対照群に比べ各々34.4%及び32.5%抑制した。

      評価項目

      G2301試験

      G2302試験

      本剤群
      N=465

      対照群
      N=462

      本剤群
      N=481

      対照群
      N=474

      年間再発率
      (抑制率)a)

      0.11

      0.22

      0.10

      0.25

      50.5%(p<0.001)

      58.5%(p<0.001)

      3ヵ月持続する障害増悪を示した被験者の割合b)

      本剤群:10.9%、対照群:15.0%
      本剤群での対照群に対する抑制率:34.4%(p=0.002)

      6ヵ月持続する障害増悪を示した被験者の割合b)

      本剤群:8.1%、対照群:12.0%
      本剤群での対照群に対する抑制率:32.5%(p=0.012)

      N:評価例数(FAS)
      a)負の二項回帰モデルを用いて解析した。投与群及び地域を要因、ベースラインの過去1年間の再発回数、EDSSスコア、Gd造影T1病変数、及び年齢を共変量、被験者ごとの確定再発の累積数を反応変数、被験者ごとの試験期間(年)の自然対数をオフセット変数としてモデルに含めた。
      b)治験実施計画書で事前に規定したとおり、G2301試験及びG2302試験の併合データを用いて解析した。試験を層、投与群及び地域を要因、ベースラインのEDSSを連続共変量とした層別Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。

      G2301試験での副作用は、本剤群で44.3%(206/465例)に認められ、主な副作用は、注射に伴う全身反応16.3%(76/465例)、注射部位反応9.0%(42/465例)、血中IgM減少5.4%(25/465例)であった。G2302試験での副作用は、本剤群で57.8%(278/481例)で認められ、主な副作用は、注射に伴う全身反応24.7%(119/481例)、注射部位反応12.7%(61/481例)、血中IgM減少6.2%(30/481例)であった4),5)
      注2)以下のいずれにも該当する患者

      • McDonald診断基準(2010年改訂版)で多発性硬化症と診断された患者
      • 再発寛解型多発性硬化症又は疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症患者
      • 過去1年以内に1回以上の再発、過去2年以内に2回以上の再発、又は過去1年以内に脳MRI画像で疾患活動性(Gd造影T1病変あるいは新規又は拡大T2病変)が認められた患者

    18. 薬効薬理

    18.1 作用機序

    オファツムマブはヒトCD20の細胞外小ループ及び大ループに特異的に結合し6)、補体依存性細胞傷害(CDC)活性及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性によりCD20陽性B細胞及びCD20陽性T細胞を溶解させると考えられる7),8)

    18.2 ヒトCD20への特異的結合作用

    B細胞株に発現するCD20に対して強い結合能を示し(平衡解離定数KD値167pM)9)、CD20からの解離速度は遅かった6)in vitro)。本薬は細胞膜に近接してCD20に結合すると考えられ、これにより優れたCDC活性を示す6)

    18.3 CD20陽性細胞溶解作用

    初代培養ヒトB細胞の検討から、本薬の細胞溶解作用は主としてCDC活性によるものであり、ADCC活性の程度は低かった7)in vitro)。ヒトCD20をトランスフェクトしたT細胞株において、CD20発現量の少ない細胞に対してもCDC活性を示した8)in vitro)。カニクイザルに1mg/kgを1週間隔で計3回皮下投与したとき、末梢血中のCD20陽性B細胞数及びCD20陽性T細胞数が完全に抑制され、リンパ節中のCD20陽性B細胞数が減少した10)

    19. 有効成分に関する理化学的知見

    一般的名称

    オファツムマブ(遺伝子組換え)
    Ofatumumab(Genetical Recombination)

    分子式

    C6480H10022N1742O2020S44(糖鎖部分を含まない)

    本質

    オファツムマブは、遺伝子組換えヒト抗ヒトCD20モノクローナル抗体であるIgG1である。オファツムマブは、マウスミエローマ(NS0)細胞により産生される。オファツムマブは、452個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ1鎖)2分子及び214個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)2分子で構成される糖タンパク質(分子量:約149,000)である。

    20. 取扱い上の注意

    光曝露を避けるため、本剤は外箱に入れて保存すること。

    21. 承認条件

    医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

    22. 包装

    1本

    24. 文献請求先及び問い合わせ先

    ノバルティスファーマ株式会社 ノバルティスダイレクト

    〒105-6333 東京都港区虎ノ門1-23-1

    26. 製造販売業者等

    26.1 製造販売(輸入)

    ノバルティスファーマ株式会社

    東京都港区虎ノ門1-23-1

    〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル

    画面を閉じる

    Copyright © Pharmaceuticals and Medical Devices Agency, All Rights reserved.