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ファビハルタカプセル200mg

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
1.警告
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.2腎機能障害患者
9.3肝機能障害患者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
10.相互作用
10.2併用注意(併用に注意すること)
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
14.適用上の注意
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.2吸収
16.3分布
16.4代謝
16.5排泄
16.6特定の背景を有する患者
16.7薬物相互作用
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
18.薬効薬理
18.1作用機序
18.2補体B因子への結合作用
18.3補体第二経路活性化の阻害作用
19.有効成分に関する理化学的知見
21.承認条件
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
25.保険給付上の注意
26.製造販売業者等

ファビハルタカプセル200mg

添付文書番号

3999064M1020_1_01

企業コード

300242

作成又は改訂年月

2024年8月改訂(第2版)
2024年6月作成(第1版)

日本標準商品分類番号

873999

薬効分類名

補体B因子阻害剤

承認等

ファビハルタカプセル200mg

販売名コード

YJコード

3999064M1020

販売名英語表記

FABHALTA capsules

販売名ひらがな

ふぁびはるたかぷせる200mg

承認番号等

承認番号

30600AMX00147000

販売開始年月

2024年8月

貯法・有効期間

貯法

室温保存

有効期間

36ヵ月

一般的名称

イプタコパン塩酸塩水和物

1. 警告

  1. 1.1 本剤は補体経路を阻害するため、髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌等の莢膜形成細菌による重篤な感染症を発症することがあり、特に髄膜炎菌感染症は急激に重症化し、死亡に至るおそれもあるため、以下の点に十分注意すること。,,,,
    1. 1.1.1 本剤の投与に際しては、髄膜炎菌等による感染症の初期徴候(発熱、頭痛、項部硬直等)に注意して観察を十分に行い、髄膜炎菌等の重篤な感染症が疑われた場合には、直ちに診察し、抗菌剤の投与等の適切な処置を行うこと。
    2. 1.1.2 髄膜炎菌、肺炎球菌及びインフルエンザ菌b型に対するワクチンの接種歴を確認し、未接種の場合又は追加接種が必要な場合は、原則、本剤投与前にワクチンを接種すること。必要に応じて、本剤投与中のワクチンの追加接種を考慮すること。
    3. 1.1.3 髄膜炎菌感染症は致命的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び医師のもとで、あるいは髄膜炎菌感染症の診断及び治療が可能な医療施設との連携下で本剤を投与すること。
    4. 1.1.4 髄膜炎菌等の莢膜形成細菌による感染症のリスクについて患者に説明し、当該感染症の初期徴候を確実に理解させ、感染症に関連する症状が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること。
  2. 1.2 発作性夜間ヘモグロビン尿症に十分な知識を持つ医師のもとで、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、本剤投与開始に先立ち、本剤は疾病を完治させる薬剤ではないことを含め、本剤の有効性及び危険性を患者又はその家族に十分説明し、同意を得てから投与すること。

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1 髄膜炎菌感染症に罹患している患者[症状を悪化させるおそれがある。]
  2. 2.2 肺炎球菌、インフルエンザ菌等の莢膜形成細菌による重篤な感染症に罹患している患者[症状を悪化させるおそれがある。]
  3. 2.3 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

3. 組成・性状

3.1 組成

ファビハルタカプセル200mg

有効成分1カプセル中イプタコパン塩酸塩水和物   225.80mg
(イプタコパンとして   200mg )
添加剤カプセル本体にゼラチン、三二酸化鉄、酸化チタン含有

3.2 製剤の性状

ファビハルタカプセル200mg

外形
識別コードNVR LNP200
性状外観微黄色不透明の硬カプセル
内容物白色~薄い帯紫赤白色の粉末
大きさ(約)長径:21.7mm 短径:7.6mm 質量:0.32g

4. 効能又は効果

発作性夜間ヘモグロビン尿症

5. 効能又は効果に関連する注意

  1. 5.1 補体(C5)阻害剤による適切な治療を行っても、十分な効果が得られない場合に投与すること。
  2. 5.2 本剤は、補体B因子に結合して第二経路を阻害するため、髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌等の莢膜形成細菌による感染症を発症しやすくなる可能性があることから、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、本剤投与の是非を慎重に検討し、適切な対象患者に使用すること。また、本剤投与に際しては、髄膜炎菌、肺炎球菌及びインフルエンザ菌b型に対するワクチンの接種歴を確認し、未接種の場合又は追加接種が必要な場合は、原則、本剤投与開始の少なくとも2週間前までにそれらのワクチンを接種すること。必要に応じて、本剤投与中のワクチンの追加接種を考慮すること。,,,,,

6. 用法及び用量

通常、成人にはイプタコパンとして1回200mgを1日2回経口投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  1. 7.1 補体(C5)阻害剤から本剤に切り替える際は、補体(C5)阻害剤の中止に伴う溶血のリスクを低減するため、前治療薬との投与間隔を考慮すること。
    • エクリズマブ(遺伝子組換え)から切り替える場合、エクリズマブ(遺伝子組換え)の最終投与1週間後を目安に本剤の投与を開始すること。
    • ラブリズマブ(遺伝子組換え)から切り替える場合、ラブリズマブ(遺伝子組換え)の最終投与6週間後を目安に本剤の投与を開始すること。

8. 重要な基本的注意

  1. 8.1 本剤を中止した場合に溶血が認められるおそれがある。本剤の投与を中止した患者では、本剤の最終投与から最低2週間は、溶血に付随する臨床症状及びその徴候[LDH値の上昇を伴うヘモグロビン(Hb)値の急激な減少、疲労、ヘモグロビン尿、腹痛、呼吸困難、主要血管事象(血栓症)、嚥下障害又は勃起不全等]の変化を注意深く観察し、必要に応じて適切な処置を行うこと。
  2. 8.2 本剤投与により、総コレステロール、LDLコレステロール及びトリグリセリドの上昇等の脂質異常症があらわれることがあるので、本剤投与開始後は定期的に血液検査を実施すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 髄膜炎菌感染症の既往のある患者

    髄膜炎菌感染症に罹患しやすくなるおそれがある。,,

  2. 9.1.2 感染症の患者又は感染症が疑われる患者

    特に莢膜形成細菌(髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌等)による感染症が悪化するおそれがある。,,,

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1 重度(eGFRが30mL/min/1.73m2未満)の腎機能障害のある患者

    患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。本剤の血中濃度が上昇し、本剤の副作用が増強されるおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。非結合型の血中イプタコパン濃度が上昇し、本剤の副作用が増強されるおそれがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。雌ラットを用いた受胎能及び着床までの初期胚発生試験において、臨床用量の5.4倍の曝露(AUC)で、着床前及び着床後胚死亡率の高値、並びに生存胎児数の低値が認められている。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤の母乳中への移行は不明である。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

10. 相互作用

  • 本剤は主にCYP2C8で代謝され、有機アニオントランスポーター(OATP)1B1及びOATP1B3の基質である。また、本剤は、CYP2C8阻害作用及びCYP3A4誘導作用を有する。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子

CYP2C8を阻害する薬剤

  • クロピドグレル等

本剤の副作用が増強されるおそれがあるため、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。

これらの薬剤のCYP2C8阻害作用により、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。

OATP1B1及びOATP1B3を阻害する薬剤

  • シクロスポリン等

本剤の副作用が増強されるおそれがあるため、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。

これらの薬剤のOATP1B1及びOATP1B3阻害作用により、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。

CYP3A4の基質となる薬剤

  • ミダゾラム等

これらの薬剤の有効性が減弱するおそれがある。

本剤のCYP3A4誘導作用により、これらの薬剤の血中濃度が低下する可能性がある。

CYP2C8の基質となる薬剤

  • レパグリニド等

これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるため、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。

本剤のCYP2C8阻害作用により、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副作用

  1. 11.1.1 髄膜炎菌感染症(頻度不明)

    髄膜炎又は敗血症を発症し、急速に生命を脅かす、あるいは死亡に至るおそれがある。本剤の投与に際しては、当該感染症の初期徴候(発熱、頭痛、項部硬直、羞明、精神状態の変化、痙攣、悪心・嘔吐、紫斑、点状出血等)等の観察を十分に行うこと。髄膜炎菌感染症が疑われた場合には、直ちに診察し、抗菌剤の投与等の適切な処置を行うこと。,,,,

  2. 11.1.2 重篤な感染症(頻度不明)

    肺炎球菌、インフルエンザ菌等の莢膜形成細菌による重篤な感染症があらわれることがある。,,,

11.2 その他の副作用

5%以上

5%未満

頻度不明

血液およびリンパ系障害

血小板数減少

胃腸障害

下痢、腹痛、悪心

感染症および寄生虫症

上気道感染、尿路感染、気管支炎

細菌性肺炎

筋骨格系および結合組織障害

関節痛

神経系障害

頭痛

浮動性めまい

皮膚および皮下組織障害

蕁麻疹

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意

PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回投与

    日本人健康成人(24例)に本剤25、100及び400mg注1)を単回経口投与したとき、投与1.5~2.25時間後(中央値)にCmaxに到達し、曝露量は用量比を下回った。T1/2は13.2~24.7時間であった1)

    本剤25、100及び400mgを単回経口投与したときの血漿中薬物動態パラメータ

    薬物動態パラメータ

    25mg
    n=8

    100mg
    n=8

    400mg
    n=8

    Cmax(ng/mL)

    1160 ± 254

    2460 ± 735

    7990 ± 1360

    AUClast(ng・h/mL)

    12400 ± 3240

    28300 ± 8930

    78300 ± 23600

    Tmax(h)

    1.50(1.00~3.00)

    1.75(1.00~2.50)

    2.25(1.00~3.00)

    T1/2(h)

    13.2 ± 2.15

    15.1 ± 3.64

    24.7 ± 15.6

    平均値±標準偏差 ※中央値(最小値~最大値)

    日本人健康成人に本剤25、100及び400mgを単回経口投与したときの血漿中未変化体濃度推移(平均値±標準偏差)
  2. 16.1.2 反復投与

    健康成人(6例)に本剤200mgを1日2回反復経口投与したとき、投与約2時間後(中央値)にCmaxに到達した。トラフ濃度の推移から投与約5日目で定常状態に達し、投与14日目の累積率は約1.4であった。本剤200mgを1日2回反復経口投与したときの、定常状態におけるイプタコパンのT1/2は、25時間であった。本剤25mg~200mg注1)1日2回反復経口投与したとき、25~100mgの用量間では曝露量の増加は用量比を下回ったが、100mg及び200mg間では概ね用量に比例して曝露量が増加した2)(外国人データ)。

16.2 吸収

  1. 16.2.1 食事の影響

    健康成人(12例)に本剤100mg注1)を空腹時及び高脂肪食摂取後に単回経口投与したとき、イプタコパンの曝露量は食事による影響を受けなかった2)(外国人データ)。

16.3 分布

  1. 16.3.1 血漿蛋白結合率

    イプタコパンは全身循環血中でB因子に結合することにより濃度依存的な血漿蛋白結合を示した。イプタコパンの1000~10000ng/mLの血漿中濃度において、血漿蛋白結合率は75%~93%であった3)in vitro)。

  2. 16.3.2 体組織への分布

    健康成人(6例)に本剤200mgを1日2回反復経口投与したとき、定常状態における見かけの分布容積は288Lであった2)(外国人データ)。

16.4 代謝

イプタコパンの主な消失経路は代謝であった。イプタコパンの代謝にはN-脱アルキル化、O-脱エチル化、酸化等があり、主にCYP2C8(酸化的代謝における寄与率98%)により代謝される4)。健康成人に14C標識した本剤100mg注1)を単回経口投与したときの血漿中の主な成分は未変化体であるイプタコパンであり、血漿中総放射能のAUC0-48hの83.0%であった5)(外国人データ)。

16.5 排泄

健康成人に14C標識した本剤100mg注1)を単回経口投与したときの、総放射能(イプタコパン及び代謝物)の平均総排泄率は、投与量のそれぞれ便中71.5%及び尿中24.8%であり、投与量の96%以上が排泄された。未変化体として投与量の17.9%が尿中に、16.8%が便中に排泄された5)(外国人データ)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1 腎機能障害者

    母集団薬物動態解析を用いて、発作性夜間ヘモグロビン尿症患者における腎機能障害がイプタコパンの曝露量に及ぼす影響を評価した結果、腎機能が正常な患者(98例)、軽度(eGFR60以上、90mL/min/1.73m2未満)(45例)、中等度(eGFR 30以上、60mL/min/1.73m2未満)(17例)及び重度(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)(1例)の腎機能障害患者におけるイプタコパンのAUCtauの平均値は、それぞれ32100、37500、43800及び47000ng・h/mL、Cmaxの平均値はそれぞれ3940、4480、5170及び5610ng/mLと推定された。なお、透析患者については評価を行っていない。

  2. 16.6.2 肝機能障害者

    軽度(Child-Pugh分類A)、中等度(Child-Pugh分類B)又は重度(Child-Pugh分類C)の肝機能障害患者に本剤200mgを単回経口投与し、肝機能障害がイプタコパンの曝露量に及ぼす影響を評価した。血漿中のイプタコパンについて、軽度の肝機能障害患者(8例)ではCmaxが約1.04倍に増加したが、中等度(8例)又は重度(6例)の肝機能障害患者では変化は認められなかった。軽度及び重度の肝機能障害患者ではいずれもAUCinfが1.03倍に増加したが、中等度の肝機能障害患者では変化は認められなかった。その一方、血漿中の非結合型のイプタコパンについて、軽度、中等度及び重度の肝機能障害患者でCmaxはそれぞれ1.38倍、1.67倍及び2.11倍に増加した。また、AUCinfはそれぞれ1.48倍、1.58倍及び3.71倍に増加した6)(外国人データ)。

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1 クロピドグレル

    健康成人(18例)にクロピドグレル(CYP2C8阻害剤)を投与初日に300mg、2日目から75mgを1日1回4日間反復経口投与し、2日目に本剤100mg注1)を単回投与したとき、本剤の単独投与時に対するクロピドグレル併用時のイプタコパンのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.05及び1.36であった7)(外国人データ)。

  2. 16.7.2 シクロスポリン

    健康成人(20例)にシクロスポリン(OATP1B1/1B3阻害剤)175mgを1日2回4日間反復経口投与し、1日目に本剤100mg注1)を単回投与したとき、本剤の単独投与時に対するシクロスポリン併用時のイプタコパンのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.41及び1.50であった7)(外国人データ)。

  3. 16.7.3 ジゴキシン、ロスバスタチン

    健康成人(17例)に本剤200mgを1日2回15日間反復経口投与し、投与6日目にジゴキシン(P-gpの基質)0.25mg及びロスバスタチン(OATP1B1/1B3の基質)10mgを単回投与したとき、ジゴキシンの単独投与時に対する本剤併用時のCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.08及び1.02であった。ロスバスタチンの単独投与時に対する本剤併用時のCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.00及び1.01であった7)(外国人データ)。

  4. 16.7.4 In vitro試験

    In vitro試験においてイプタコパンはCYP2C8の阻害作用及びCYP3A4の誘導作用を示した8)


注1)本剤の承認された用法及び用量は、「通常、成人にはイプタコパンとして1回200mgを1日2回経口投与する」である。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  1. 17.1.1 国際共同第Ⅲ相試験(APPLY-PNH試験)

    補体C5阻害剤(エクリズマブ又はラブリズマブ)による治療を行ってもヘモグロビン(Hb)値が10g/dL未満である発作性夜間ヘモグロビン尿症患者97例(日本人9例を含む)を対象として、多施設共同ランダム化非盲検実薬対照並行群間比較試験を実施した。なお、治験薬初回投与2週間前までの髄膜炎菌ワクチン接種を必須とし、肺炎球菌及びインフルエンザ菌に対するワクチンも、実施国又は地域で使用可能であれば接種することとした。また、接種から2週間以内に本剤の投与を開始する必要がある場合は、抗菌剤を予防投与することとした。試験は24週間の主要評価期(本剤又は補体C5阻害剤を投与)、及び24週間の継続投与期(本剤を投与)で構成された。本剤は、1回200mgを1日2回経口投与した。
    主要評価項目である「無輸血でDay126~168にHb値のベースラインから2g/dL以上の増加」及び「無輸血でDay126~168にHb値12g/dL以上」と定義する奏効の有無について、奏効患者数及び調整群間差は以下のとおりであり、いずれにおいても補体C5阻害剤に対する本剤の優越性が検証された。

    本剤群
    (62例、うち日本人6例)

    補体C5阻害剤群
    (35例、うち日本人3例)

    無輸血でHb値2g/dL以上の増加

    奏効患者数a)

    51/60例

    0/35例

    調整群間差(本剤群-補体C5阻害剤群)
    [95%信頼区間]
    p値b) c)

    80.2%
    [71.2, 87.6]
    <0.0001

    無輸血でHb値12g/dL以上

    奏効患者数a)

    42/60例

    0/35例

    調整群間差(本剤群-補体C5阻害剤群)
    [95%信頼区間]
    p値b) c)

    67.0%
    [56.4, 76.9]
    <0.0001

    a) 観察データに基づく評価可能症例のうちの奏効患者数
    b) 投与群を独立変数とし、前治療の補体C5阻害剤の種類、無作為化前6ヵ月の輸血歴の有無、性、年齢(45歳以上/未満)、ベースラインのヘモグロビン値(9g/dL以上/未満)を共変量とするFirth補正を用いた共通の切片を持つロジスティック回帰モデルにより算出。調整群間差はモデルから算出した各被験者の予測奏効確率に対する群ごとの平均値の差であり、95%信頼区間はbootstrap法を用いた。
    c) 有意水準は片側0.0125

    継続投与期終了時の本剤投与による副作用発現割合は、21.9%(21/96例)であった。主な副作用は頭痛5.2%(5/96例)、血小板数減少及び悪心4.2%(4/96例)、下痢及び関節痛3.1%(3/96例)であった9),,

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

イプタコパンは補体B因子に結合してその活性を阻害することで、C3転換酵素の活性を阻害して補体第二経路の活性化を阻害し、下流のC5転換酵素形成を含むカスケード反応を阻止する。発作性夜間ヘモグロビン尿症患者において、イプタコパンは膜侵襲複合体形成を阻害して血管内溶血を抑制するとともに、C3フラグメントのオプソニン化を阻害して血管外溶血を抑制する。

18.2 補体B因子への結合作用

イプタコパンは競合結合アッセイでレポーター分子の補体B因子触媒ドメインへの結合を阻害した(IC50値:9.6nM)10)in vitro)。

18.3 補体第二経路活性化の阻害作用

  1. 18.3.1 イプタコパンはマウス血清でC3フラグメント沈着を阻害し、ヒト血清で膜侵襲複合体の形成を阻害した10)in vitro)。
  2. 18.3.2 イプタコパンは発作性夜間ヘモグロビン尿症患者由来赤血球の溶血及び赤血球表面へのC3フラグメント沈着を阻害した11)in vitro)。
  3. 18.3.3 イプタコパンは、関節炎を自然発症するマウス血清を移入することにより作製した関節炎モデルマウス11)、及びラット尿細管上皮タンパク質Fx1Aに対する抗体を含有したヒツジ血清を投与して作製した受動的ヘイマン腎炎モデルラットに対し、疾患の進行又は発症を抑制した12)in vivo)。

19. 有効成分に関する理化学的知見

一般的名称

イプタコパン塩酸塩水和物(Iptacopan Hydrochloride Hydrate)

化学名

4-{(2S,4S)-4-Ethoxy-1-[(5-methoxy-7-methyl-1H-indol-4-yl)methyl]piperidin-2-yl}benzoic acid monohydrochloride monohydrate

分子式

C25H30N2O4・HCl・H2O

分子量

476.99

性状

白色~薄い帯紫赤白色の粉末である。

化学構造式

21. 承認条件

  1. 21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
  2. 21.2 日本人での投与経験が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
  3. 21.3 本剤の投与が、発作性夜間ヘモグロビン尿症の診断、治療に精通し、本剤のリスク等についても十分に管理できる医師・医療機関のもとで、髄膜炎菌感染症の診断、治療に精通した医師との連携を取った上でのみ行われるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること。

22. 包装

14カプセル[14カプセル(PTP)×1]

24. 文献請求先及び問い合わせ先

ノバルティスファーマ株式会社 ノバルティスダイレクト

〒105-6333 東京都港区虎ノ門1-23-1

25. 保険給付上の注意

*本剤は新医薬品であるため、厚生労働省告示第97号(平成20年3月19日付)に基づき、2025年8月末日までは、投薬期間は1回14日分を限度とされています。

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売(輸入)

ノバルティスファーマ株式会社

東京都港区虎ノ門1-23-1

〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル

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