医療用医薬品 詳細表示

セムブリックス錠20mg/セムブリックス錠40mg

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
1.警告
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.4生殖能を有する者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
10.相互作用
10.2併用注意(併用に注意すること)
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
14.適用上の注意
15.その他の注意
15.2非臨床試験に基づく情報
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.2吸収
16.3分布
16.4代謝
16.5排泄
16.6特定の背景を有する患者
16.7薬物相互作用
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
18.薬効薬理
18.1作用機序
18.2抗腫瘍効果
19.有効成分に関する理化学的知見
21.承認条件
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
26.製造販売業者等

セムブリックス錠20mg/セムブリックス錠40mg

添付文書番号

4291077F1027_1_04

企業コード

300242

作成又は改訂年月

**2025年2月改訂(第5版)
2023年6月改訂(第4版)

日本標準商品分類番号

874291

薬効分類名

抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼインヒビター(ABLミリストイルポケット結合型阻害剤)

承認等

セムブリックス錠20mg

販売名コード

YJコード

4291077F1027

販売名英語表記

SCEMBLIX tablets 20mg

販売名ひらがな

せむぶりっくすじょう20mg

承認番号等

承認番号

30400AMX00190000

販売開始年月

2022年5月

貯法・有効期間

貯法

25℃以下

有効期間

36ヵ月

セムブリックス錠40mg

販売名コード

YJコード

4291077F2023

販売名英語表記

SCEMBLIX tablets 40mg

販売名ひらがな

せむぶりっくすじょう40mg

承認番号等

承認番号

30400AMX00189000

販売開始年月

2022年5月

貯法・有効期間

貯法

25℃以下

有効期間

36ヵ月

一般的名称

アシミニブ塩酸塩

1. 警告

本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、本剤による治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与を開始すること。

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

3. 組成・性状

3.1 組成

セムブリックス錠20mg

有効成分1錠中アシミニブ塩酸塩21.620mg(アシミニブとして20mg)  
添加剤乳糖、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、無水ケイ酸、大豆レシチン、三二酸化鉄、キサンタンガム

セムブリックス錠40mg

有効成分1錠中アシミニブ塩酸塩43.240mg(アシミニブとして40mg)  
添加剤乳糖、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、無水ケイ酸、大豆レシチン、三二酸化鉄、キサンタンガム、酸化鉄

3.2 製剤の性状

セムブリックス錠20mg

外形
識別コード 20
大きさ
(約)
直径:6.2mm
質量:105.00mg
性状微黄色のフィルムコーティング錠

セムブリックス錠40mg

外形
識別コード 40
大きさ
(約)
直径:8.2mm
質量:208.00mg
性状帯青紫白色のフィルムコーティング錠

4. 効能又は効果

前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病

5. 効能又は効果に関連する注意

  1. 5.1 染色体検査又は遺伝子検査により慢性骨髄性白血病と診断された患者に使用すること。
  2. 5.2 2つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容で、慢性期の慢性骨髄性白血病患者に使用すること。
  3. 5.3 「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。

6. 用法及び用量

通常、成人にはアシミニブとして1回40mgを1日2回、空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  1. 7.1 他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
  2. 7.2 食後に本剤を投与した場合、本剤の血中濃度が低下するとの報告がある。食事の影響を避けるため、食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けること。
  3. 7.3 本剤の投与により副作用が発現した場合には、以下の基準を参考に、本剤を休薬、減量又は中止すること。なお、減量した投与量で忍容性が認められた場合には1回のみ開始用量まで再増量することができる。,,,,
    副作用発現時の休薬、減量、中止の目安

    副作用

    処置

    好中球数が1,000/mm3未満
    又は血小板数が50,000/mm3未満

    好中球数が1,000/mm3以上及び血小板数が50,000/mm3以上に回復するまで休薬する。2週間以内に回復した場合は、開始時の投与量で再開できる。2週間を超えて回復した場合は、1回20mgを1日2回に減量して再開できる。
    再開した後に再び発現した場合、好中球数が1,000/mm3以上及び血小板数が50,000/mm3以上に回復するまで休薬する。回復後は1回20mgを1日2回に減量して再開できる。

    無症候性で血清リパーゼ又は血清アミラーゼが施設正常値上限の2倍超

    施設正常値上限の1.5倍未満に回復するまで休薬する。回復後は1回20mgを1日2回に減量して再開できる。
    再開後に再発した場合は、投与を中止する。

    上記以外のGrade 3以上の非血液学的副作用(臨床的意義のない無症候性の検査値異常を除く)

    Grade 1以下に回復するまで休薬する。回復後は1回20mgを1日2回に減量して再開できる。

    GradeはNCI-CTCAE ver 4.03に基づく。

8. 重要な基本的注意

  1. 8.1 骨髄抑制があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に(投与開始後最初の3ヵ月間は2週間毎、その後は1ヵ月毎)、また、患者の状態に応じて血液検査(血球数算定等)を行い、患者の状態を十分に観察すること。,
  2. 8.2 膵炎があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に(1ヵ月毎)、また、患者の状態に応じて血清リパーゼ及び血清アミラーゼを測定し、患者の状態を十分に観察すること。,,
  3. 8.3 QT間隔延長があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は、必要に応じて心電図検査及び電解質検査(カリウム、マグネシウム等)を行い、患者の状態を十分に確認すること。また、必要に応じて、電解質(カリウム、マグネシウム等)を補正すること。,,
  4. 8.4 感染症があらわれることがあるので、定期的に血液検査をする等、患者の状態を十分に観察すること。
  5. 8.5 Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤の投与によりB型肝炎ウイルスの再活性化があらわれることがあるので、本剤投与に先立って肝炎ウイルス感染の有無を確認し、本剤投与開始前に適切な処置を行うこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 膵炎又はその既往歴のある患者

    膵炎が悪化又は再発するおそれがある。,,

  2. 9.1.2 B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)

    本剤投与開始後は継続して肝機能検査や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行う等、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤の投与によりB型肝炎ウイルスの再活性化があらわれることがある。

  3. 9.1.3 QT間隔延長のおそれ又はその既往歴のある患者

    QT間隔延長が起こるおそれがある。,,

9.4 生殖能を有する者

**妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後3日間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験において、臨床曝露量の15.3倍(ラット)及び4.4倍(ウサギ)に相当する用量で胚・胎児毒性(ウサギ)及び催奇形性(ラット及びウサギ)が認められた。

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。本剤が乳汁に移行する可能性があり、乳児が乳汁を介して本剤を摂取した場合、乳児に重篤な副作用が発現するおそれがある。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

10. 相互作用

  • **本剤はCYP2C9、BCRPに対する阻害作用を示す。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子

イトラコナゾール(内用液)

本剤の有効性が減弱するおそれがあるため、内用液以外のイトラコナゾール製剤への代替を考慮すること。

イトラコナゾール(内用液)に含まれるヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが消化管内で本剤を包接することにより、本剤の吸収が低下し、本剤の血中濃度を低下させる可能性がある。

CYP2C9の基質となる薬剤

  • ワルファリン
    フェニトイン
    セレコキシブ等

これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるため、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。

本剤がCYP2C9を阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。

**BCRPの基質となる薬剤

  • ロスバスタチン
  • サラゾスルファピリジン等

**これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるため、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。

**本剤がBCRPを阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。

QT間隔延長を起こすことが知られている薬剤

  • クラリスロマイシン
    ハロペリドール
    メサドン等

,,

QT間隔延長を起こす又は悪化させるおそれがあるため、患者の状態を慎重に観察すること。

共にQT間隔延長に関連する副作用を有するため。

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副作用

  1. 11.1.1 骨髄抑制

    血小板減少症(24.4%)、好中球減少症(17.9%)、発熱性好中球減少症(0.6%)、貧血(5.1%)等があらわれることがある。,

  2. 11.1.2 膵炎

    膵炎(頻度不明)、リパーゼ増加(3.2%)、アミラーゼ増加(4.5%)等があらわれることがある。,,

  3. 11.1.3 QT間隔延長(1.3%)

    ,,

  4. 11.1.4 感染症

    肺炎(0.6%)等があらわれることがある。

  5. 11.1.5 血管閉塞性事象

    脳梗塞(0.6%)、心筋虚血(0.6%)等があらわれることがある。

11.2 その他の副作用

5%以上

5%未満

頻度不明

感染症及び寄生虫症

上気道感染、下気道感染

インフルエンザ

*免疫系障害

過敏症

代謝及び栄養障害

脂質異常症、食欲減退

神経系障害

頭痛

浮動性めまい

眼障害

ドライアイ

霧視

心臓障害

動悸、駆出率減少

血管障害

高血圧

呼吸器、胸郭及び縦隔障害

胸水、呼吸困難、非心臓性胸痛、咳嗽

胃腸障害

悪心

下痢、嘔吐、腹痛

肝胆道系障害

肝酵素上昇、血中ビリルビン増加

皮膚及び皮下組織障害

発疹

蕁麻疹

光線過敏症

筋骨格系及び結合組織障害

筋骨格痛、関節痛

一般・全身障害及び投与部位の状態

疲労

そう痒症、浮腫

発熱

臨床検査

血中CK増加

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意

PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.2 非臨床試験に基づく情報

  1. 15.2.1 In vitro光毒性試験において陽性結果が得られた。また、動物実験(マウス)において、臨床曝露量の32.9倍に相当する用量で皮膚光感作性が認められた。
  2. 15.2.2 **ラットを用いた2年間がん原性試験において、臨床曝露量の約3倍以上に相当する用量を投与した雌の卵巣でセルトリ細胞の過形成、臨床曝露量の約8倍に相当する用量を投与した雌の卵巣で良性のセルトリ細胞腫が認められた。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回投与

    日本人健康成人に本剤40mgを空腹時に単回経口投与したときの薬物動態パラメータ及び血漿中濃度推移は以下のとおりであった1)

    日本人健康成人に本剤40mgを空腹時に単回経口投与したときの薬物動態パラメータ

    n

    Cmax
    (ng/mL)

    AUClast
    (ng・h/mL)

    Tmax
    (h)

    T1/2
    (h)

    23

    943
    (27.4)

    9200
    (18.5)

    2.00
    (1.00-4.00)

    12.6
    (10.0)

    幾何平均値(幾何CV%)
    Tmaxは中央値(最小値-最大値)

    日本人健康成人に本剤40mgを空腹時に単回経口投与したときの血漿中濃度推移(平均値±標準偏差)
  2. 16.1.2 反復投与

    日本人を含む慢性期及び移行期の慢性骨髄性白血病患者に、本剤40mgを空腹時に1日2回反復経口投与したときの薬物動態パラメータ及び血漿中濃度推移は以下のとおりであり、投与29日目の累積比は1.65であった。また、本剤10~200mg注1)を1日2回反復経口投与したとき、Cmax及びAUCは用量比を上回って増加した2)

    慢性期及び移行期の慢性骨髄性白血病患者に本剤40mgを空腹時に1日2回反復経口投与したときの薬物動態パラメータ

    n

    Cmax
    (ng/mL)

    AUClast
    (ng・h/mL)

    Tmax
    (h)

    第1日目

    30

    537(74.3)

    2250(69.3)

    2.10(1.95-5.62)

    第15日目

    12

    718(57.0)

    3790(53.0)

    2.11(1.97-4.03)

    第29日目

    30

    793(48.9)

    3970(49.6)

    2.01(1.00-6.00)

    幾何平均値(幾何CV%)
    Tmaxは中央値(最小値-最大値)

    慢性期及び移行期の慢性骨髄性白血病患者に本剤40mgを空腹時に1日2回反復経口投与したときの血漿中濃度推移
    (平均値+標準偏差)

16.2 吸収

  1. 16.2.1 食事の影響

    健康成人(24例)に本剤40mgを空腹時、低脂肪食、及び高脂肪食摂取後に単回経口投与したとき、空腹時に対するCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は低脂肪食摂取後では0.652及び0.700、高脂肪食摂取後では0.318及び0.377であった3)(外国人データ)。

16.3 分布

アシミニブのヒト血漿蛋白結合率は97.3%であり、濃度に依存しなかった4)in vitro)。

16.4 代謝

アシミニブの酸化には主にCYP3A4、グルクロン酸抱合には主にUGT2B7が関与し、グルクロン酸抱合の一部にはUGT2B17、1A3及び1A4が関与することが示された5)in vitro)。健康成人(4例)に14C標識した本剤80mg注1)を空腹時に単回経口投与したとき、投与24時間後までの血漿中には主に未変化体が検出され、主な代謝物としてM30.5(O-グルクロン酸抱合体)及びM44(酸化体)が検出された(血漿中総放射能のAUC0-24hに対する割合は、それぞれ92.7%、4.93%、及び1.88%)5)(外国人データ)。

16.5 排泄

健康成人(4例)に14C標識した本剤80mg注1)を空腹時に単回経口投与したとき、投与放射能の80.0%が糞中に、11.0%が尿中に排泄された。糞中に排泄された未変化体は投与放射能の56.7%であった5)(外国人データ)。

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1 腎機能障害患者

    本剤40mgを空腹時に単回経口投与したとき、腎機能が正常な被験者(6例)に対する重度(体表面積未補正のeGFRが30mL/min未満で透析を必要としない)の腎機能障害患者(8例)における本剤のCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.08及び1.56であった6)(外国人データ)。

  2. 16.6.2 肝機能障害患者

    本剤40mgを空腹時に単回経口投与したとき、肝機能が正常な被験者(8例)に対する軽度(Child-Pugh分類A)の肝機能障害患者(8例)における本剤のCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.26及び1.22であった。中等度(Child-Pugh分類B)の肝機能障害患者(8例)におけるCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ0.983及び1.03であった。また、重度(Child-Pugh分類C)の肝機能障害患者(8例)におけるCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.29及び1.66であった6)(外国人データ)。

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1 イトラコナゾール(内用液)

    健康成人(18例)にイトラコナゾール(添加剤としてヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン8gを含有する内用液)200mgを1日1回8日間反復投与し、本剤40mgを空腹時に単回経口投与したとき、単独投与時に対するイトラコナゾール(内用液)併用投与時の本剤のCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ0.499及び0.598であった7)(外国人データ)。

  2. 16.7.2 ワルファリン

    健康成人(22例)に本剤40mgを空腹時に1日2回5日間反復経口投与し、ワルファリン(CYP2C9の基質)5mgを単回投与したとき、単独投与時に対する本剤併用時のS-ワルファリンのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.08及び1.41であった8)(外国人データ)。

  3. 16.7.3 **ロスバスタチン、サラゾスルファピリジン

    生理学的薬物動態モデルによるシミュレーションにおいて、本剤の併用によりロスバスタチン、サラゾスルファピリジン(BCRPの基質)の血中濃度が上昇する可能性が示唆された。

  4. 16.7.4 その他
    1. (1) 健康成人(10例)にイトラコナゾール(添加剤としてヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含有しないカプセル剤)200mgを1日1回8日間反復投与し、本剤40mgを空腹時に単回経口投与したとき、単独投与時に対するイトラコナゾール(カプセル剤)併用投与時の本剤のCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.04及び1.04であった7)(外国人データ)。
    2. (2) 健康成人(14例)にクラリスロマイシン(強いCYP3A阻害剤)500mgを1日2回8日間反復投与し、本剤40mgを空腹時に単回経口投与したとき、単独投与時に対するクラリスロマイシン併用投与時の本剤のCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.19及び1.36であった7)(外国人データ)。
    3. (3) 健康成人(18例)にリファンピシン(強いCYP3A誘導剤)600mgを1日1回6日間反復投与し、本剤40mgを空腹時に単回経口投与したとき、単独投与時に対するリファンピシン併用投与時の本剤のCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.09及び0.851であった7)(外国人データ)。
    4. (4) 健康成人(19例)にキニジン(P-gp阻害剤)300mgを1日3回6日間反復投与し、本剤40mgを空腹時に単回経口投与したとき、単独投与時に対するキニジン併用投与時の本剤のCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ0.887及び0.871であった7)(外国人データ)。
    5. (5) 健康成人(22例)に本剤40mgを空腹時に1日2回5日間反復経口投与し、ミダゾラム(CYP3Aの基質)4mgを単回投与したとき、単独投与時に対する本剤併用時のミダゾラムのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.11及び1.28であった8)(外国人データ)。
    6. (6) 健康成人(25例)に本剤40mgを空腹時に1日2回3日間反復経口投与し、レパグリニド(CYP2C8の基質)0.5mgを単回投与したとき、単独投与時に対する本剤併用時のレパグリニドのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比はそれぞれ1.14及び1.08であった8)(外国人データ)。
    7. (7) 本剤はBCRPの基質であり、CYP1A2を誘導し、UGT1A1及びP-gpを阻害した9)in vitro)。


注1)本剤の承認された用法及び用量は、1回40mgを1日2回である。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  1. 17.1.1 国際共同第Ⅲ相試験(A2301/ASCEMBL試験)

    2つ以上のチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容の慢性期の慢性骨髄性白血病患者注1)233例(日本人患者16例を含む)を対象に、本剤1回40mgを1日2回空腹時、又はボスチニブ500mgを1日1回食後に経口投与した。主要評価項目である24週時点の分子遺伝学的大奏効(MMR)率(2020年5月25日データカットオフ)は下表のとおりであり、ボスチニブ群に対する本剤群の優越性が検証された。

    本剤群

    ボスチニブ群

    例数

    157a)

    76

    MMR達成例

    40

    10

    MMR率
    (95%信頼区間)

    25.48%
    (18.87, 33.04)

    13.16%
    (6.49, 22.87)

    MMR群間差
    (95%信頼区間)

    12.32%(2.11, 22.53)

    共通リスク差
    (95%信頼区間)b)

    12.24%(2.19, 22.30)

    P値c)

    0.029

    a)157例が本剤群にランダム化され156例が本剤を投与した。
    b)層別因子(ベースライン時点での細胞遺伝学的大奏効の有無)によるMantel-Haenszel法により信頼区間を推定
    c)層別因子によるCochran-Mantel-Haenszel検定(有意水準両側0.05)

    本剤群の安全性評価対象例156例中、副作用は66.0%(103例)に発現した。主な副作用は血小板減少症19.9%(31例)、好中球減少症15.4%(24例)、頭痛9.0%(14例)、悪心6.4%(10例)、疲労5.8%(9例)及び貧血5.1%(8例)等であった10)(2021年1月6日データカットオフ)。

    注1)ABL遺伝子のT315I又はV299L変異の既往が確認された患者は除外された。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

アシミニブは、ABLのチロシンキナーゼ活性を阻害する低分子化合物である。アシミニブは、ABLのミリストイルポケットに結合することで、BCR-ABL融合タンパクのリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

18.2 抗腫瘍効果

  1. 18.2.1 アシミニブは、野生型のBCR-ABL融合タンパクを発現する9種類のヒト慢性骨髄性白血病由来細胞株(BV-173、CML-T1、KCL-22細胞株等)等に対して増殖抑制作用を示した11),12)in vitro)。
  2. 18.2.2 アシミニブは、野生型又は変異型(T315I)のBCR-ABL融合タンパクを発現するKCL-22細胞株を皮下移植したヌードマウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した13),14)in vivo)。

19. 有効成分に関する理化学的知見

一般的名称

アシミニブ塩酸塩(Asciminib Hydrochloride)

化学名

N-[4-(Chlorodifluoromethoxy)phenyl]-6-[(3R)-3-hydroxypyrrolidin-1-yl]-5-(1H-pyrazol-3-yl)pyridine-3-carboxamide monohydrochloride

分子式

C20H18ClF2N5O3・HCl

分子量

486.30

性状

白色~微黄色の粉末である。

化学構造式

21. 承認条件

  1. 21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
  2. 21.2 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。

22. 包装

  • 〈セムブリックス錠20mg〉

    20錠[10錠(PTP)×2]

  • 〈セムブリックス錠40mg〉

    20錠[10錠(PTP)×2]

23. 主要文献

1) 社内資料:制酸剤との薬物相互作用試験(A1101試験)(2022年3月28日承認、CTD2.7.2-2.3.3)[20220026]

2) 社内資料:国際共同第Ⅰ相試験(X2101試験)(2022年3月28日承認、CTD2.7.2-2.4.1)[20220027]

3) 社内資料:最終製剤の食事の影響(E2101試験)(2022年3月28日承認、CTD2.7.1-2.2.3)[20220028]

4) 社内資料:ヒト蛋白結合(2022年3月28日承認、CTD2.7.2-3.1.6)[20220029]

5) Tran P, et al.:Xenobiotica 2020;50(2):160-179[20220047]

6) Hoch M, et al.:J Clin Pharmacol. 2021;61(11):1454-1465[20220048]

7) 社内資料:クラリスロマイシン、イトラコナゾール、リファンピシン及びキニジンとの薬物相互作用試験(A2107試験)(2022年3月28日承認、CTD2.7.2-2.3.8)[20220030]

8) 社内資料:ミダゾラム、ワルファリン及びレパグリニドとの薬物相互作用試験(A2106試験)(2022年3月28日承認、CTD2.7.2-2.3.7)[20220031]

9) 社内資料:薬物相互作用(2022年3月28日承認、CTD2.7.2-3.4)[20220041]

10) 社内資料:国際共同第Ⅲ相試験(A2301/ASCEMBL試験)(2022年3月28日承認、CTD2.7.6-4.1.1)[20220018]

11) 社内資料:in vitroにおける細胞増殖抑制作用の検討(2022年3月28日承認、CTD2.6.2-2.2.1)[20220025]

12) Manley PW, et al.:Leukemia Res. 2020;98:106458[20220050]

13) 社内資料:in vivo KCL-22細胞異種移植モデル薬理試験(1日2回投与)(2022年3月28日承認、CTD2.6.2-2.3.2)[20220019]

14) 社内資料:in vivo T315I変異株KCL-22細胞異種移植モデル薬理試験(2022年3月28日承認、CTD2.6.2-2.3.3)[20220020]

24. 文献請求先及び問い合わせ先

ノバルティスファーマ株式会社 ノバルティスダイレクト

〒105-6333 東京都港区虎ノ門1-23-1

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売

ノバルティスファーマ株式会社

東京都港区虎ノ門1-23-1

〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル

画面を閉じる

Copyright © Pharmaceuticals and Medical Devices Agency, All Rights reserved.