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処方箋医薬品注)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症
効能・効果
錠10mg
錠20mg、顆粒2%分包
治療
○
予防
-
〇:効能あり、―:効能なし
※ 高齢者(65歳以上)、慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者、代謝性疾患患者(糖尿病等)等1)
通常、以下の用量を単回経口投与する。
年齢
体重
用量
成人及び12歳以上の小児
80kg以上
20mg錠4錠又は顆粒8包(バロキサビル マルボキシルとして80mg)
80kg未満
20mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして40mg)
12歳未満の小児
40kg以上
20kg以上40kg未満
20mg錠1錠又は顆粒2包(バロキサビル マルボキシルとして20mg)
10kg以上20kg未満
10mg錠1錠(バロキサビル マルボキシルとして10mg)
有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット、ウサギ)において、催奇形性は認められなかったが、ウサギにおける高用量投与で、流産及び頚部過剰肋骨が報告されている2)。また、ラットにおいて胎盤通過が認められている3)。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト母乳中への移行は不明だが、ラットで乳汁中への移行が報告されている3)。
患者の状態を十分に観察しながら投与すること。一般に高齢者では生理機能が低下している。
併用後にプロトロンビン時間が延長した報告がある。併用する場合には、患者の状態を十分に観察するなど注意すること。
機序不明
因果関係は不明であるものの、インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)があらわれることがある。
腹痛、下痢、血便等の異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
血便、鼻出血、血尿等の出血があらわれることがある。
1%以上
1%未満
頻度不明
過敏症
発疹、蕁麻疹
そう痒、血管性浮腫
精神神経系
頭痛
消化器
下痢、悪心
嘔吐
その他
ALT増加、AST増加
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
ラットにおいて本薬投与によりプロトロンビン時間(PT)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長が認められたが、ビタミンKとの併用時にはPT及びAPTTの延長は認められなかったとの報告がある4)。
12歳以上65歳未満の患者及び健康成人1109例から得られたバロキサビル マルボキシル活性体の血漿中濃度データ(8310ポイント)を用いて母集団薬物動態解析を行った。この母集団薬物動態解析の結果を基に、国際共同第Ⅲ相臨床試験(体重80kg未満は40mg、80kg以上は80mgを単回経口投与)における日本人患者343例の薬物動態パラメータ推定値を表16-1に示す5)。
投与量 (体重)
例数
体重※1(kg)
Cmax※2(ng/mL)
AUC0-inf※2(ng・hr/mL)
40mg (80kg未満)
309
59.1±9.62
102(23.9-244)
6598(2186-14690)
80mg (80kg以上)
34
88.8±7.64
126(33.3-243)
9949(4122-18330)
※1:平均値±標準偏差
※2:ベイジアン推定による平均値(最小値-最大値)
12歳未満の小児患者(105例)にバロキサビル マルボキシルを体重に応じて10~40mg単回経口投与したときのバロキサビル マルボキシル活性体の血漿中濃度推移を図16-1に示す。バロキサビル マルボキシル活性体の血漿中濃度データ(328ポイント)を用いて母集団薬物動態解析を行い、得られた薬物動態パラメータ推定値を表16-2に示す5)。
40mg (40kg以上)
8
45.8±3.80
115(58.8-145)
7236(6014-10160)
20mg (20kg以上40kg未満)
66
27.3±4.98
100(37.6-150)
5081(2316-9115)
10mg (10kg以上20kg未満)
31
16.3±2.04
76.9(43.2-109)
3408(2170-5344)
※2:ベイジアン推定による平均値(最小値-最大値)。なお最終モデルはバロキサビル マルボキシル5mg投与例の血漿中濃度データ(5kg以上10kg未満の2例、6ポイント)を含めて構築された。
16.1.1に示した母集団薬物動態解析の結果を基に、ハイリスク因子を有する患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(体重80kg未満は40mg、80kg以上は80mgを投与)における65歳以上の日本人患者58例の薬物動態パラメータ推定値を表16-3に示す5)。
52
60.6±10.7
110(24.8-355)
6852(2379-15340)
6
85.3±4.17
136(40.5-204)
10420(4804-15610)
健康成人においてゾフルーザ錠20mgを1錠又は顆粒を1g(バロキサビル マルボキシルとして20mg)をクロスオーバー法にて空腹時に単回経口投与し、薬物動態を比較したときのバロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態パラメータを表16-4に示す。Cmax及びAUCの対数の平均値の差について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された6)。
剤形
Cmax※1(ng/mL)
Tmax※2(hr)
AUC0-last※1(ng・hr/mL)
T1/2※1(hr)
20mg錠
28
44.2±16.0
4(1-5)
3000±725.4
102±17.9
顆粒
27
40.2±12.2
4(2-6)
2952±745.2
101±17.1
※2:中央値(最小値-最大値)
健康成人男性に、バロキサビル マルボキシル40mgを空腹時(14例)又は普通食摂取後(14例)に単回経口投与したときのバロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態パラメータを表16-5に、平均血漿中濃度推移を図16-2に示す。空腹時投与と比べ食後投与でバロキサビル マルボキシル活性体のCmaxは48%、AUCは36%減少した。Tmaxの中央値はいずれも4時間であった5)。
投与量
食事条件
AUC0-inf※1(ng・hr/mL)
T1/2,z※1(hr)
40mg
空腹時
14
133±26.3
4 (3-5)
7206±1325
95.8±18.2
食後
72.5±28.3
4 (0.5-5)
4846±1814
99.6±19.6
In vitro試験の結果、バロキサビル マルボキシル活性体のヒト血清蛋白結合率は92.9~93.9%、ヒト血球移行率は48.5~54.4%であった7)。
健康成人男性6例に[14C]-バロキサビル マルボキシル40mgを空腹時単回経口投与したとき、投与された放射能の80%及び14.7%がそれぞれ糞中及び尿中へ排泄された。投与量の3.28%が尿中にバロキサビル マルボキシル活性体として排泄された5)(外国人データ)。
中等度肝機能障害患者(Child-Pugh分類B)及び肝機能正常者各8例にバロキサビル マルボキシル40mgを空腹時単回経口投与したとき、中等度肝機能障害患者でのバロキサビル マルボキシル活性体のCmax及びAUC0-infは、肝機能正常者のそれぞれ0.80倍及び1.1倍であった5)(外国人データ)。
バロキサビル マルボキシルはCYP2B6、CYP2C8及びCYP3Aを、バロキサビル マルボキシル活性体はCYP2B6及びCYP3Aを濃度依存的に弱く阻害した9)。また、バロキサビル マルボキシルはP-糖蛋白を阻害し、バロキサビル マルボキシル活性体はP-糖蛋白及びBCRPを阻害した。バロキサビル マルボキシル及びその活性体はP-糖蛋白の基質であった10)。
健康成人を対象に薬物相互作用を検討した。バロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態に及ぼす併用薬の影響を表16-6に、併用薬の薬物動態に及ぼすバロキサビル マルボキシルの影響を表16-7に示す11)(外国人データ)。
併用薬
用法・用量
バロキサビル マルボキシル活性体の薬物動態パラメータの比[90%信頼区間](併用投与/単独投与)
本剤
Cmax
AUC0-inf
イトラコナゾール(P-糖蛋白阻害剤)
200mg※11日1回
20mg※1単回
12
1.33[1.14, 1.55]
1.23[1.09, 1.38]
プロベネシド(UGT阻害剤)
500mg※21日2回
80mg※2単回
0.79[0.65, 0.96]
0.75[0.66, 0.86]
※1:イトラコナゾール200mgを1日1回(1日目は2回)19日間反復投与し、投与5日目にバロキサビル マルボキシル20mg空腹時単回投与を併用
※2:プロベネシド500mgを1日2回18日間反復投与し、投与4日目にバロキサビル マルボキシル80mg空腹時単回投与を併用
併用薬の薬物動態パラメータの比[90%信頼区間](併用投与/単独投与)
ミダゾラム(CYP3A基質)
5mg単回
40mg単回
1.00[0.92, 1.09]
0.99[0.94, 1.04]
ジゴキシン(P-糖蛋白基質)
0.25mg単回
80mg単回
1.00[0.81, 1.23]
0.86[0.73, 1.01]
ロスバスタチン(BCRP基質)
10mg単回
0.82[0.69, 0.98]
0.83[0.72, 0.96]
12歳以上65歳未満のインフルエンザウイルス感染症患者687例(日本人518例を含む)に本剤(バロキサビル マルボキシル40mg若しくは80mg)又はプラセボを単回経口投与したときの有効性及び安全性を検討することを目的とした、無作為化二重盲検並行群間比較試験の結果は表17-1及び図17-1のとおりであり、プラセボに対する本剤の優越性が検証された。主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間(中央値)は、本剤群で53.7時間、プラセボ群で80.2時間であり、ウイルス型・亜型別では、本剤群及びプラセボ群でそれぞれ、A/H1N1pdm型では43.7時間(7例)及び141.0時間(7例)、A/H3型では52.2時間(392例)及び79.5時間(195例)、B型では93.0時間(38例)及び77.1時間(20例)であった12)。
投与群
例数※2
中央値 (hr) [95%信頼区間]
p値※3
455
53.7 [49.5, 58.5]
p<0.0001
プラセボ
230
80.2 [72.6, 87.1]
※1:インフルエンザの各症状(咳、喉の痛み、頭痛、鼻づまり、熱っぽさ又は悪寒、筋肉又は関節の痛み、並びに疲労感)の全ての症状が「なし」又は「軽度」に改善するまでの時間と定義した。ただし、その状態が少なくとも21.5時間以上持続していることを条件とした。
※2:欠測例(本剤群1例、プラセボ群1例)は除外
※3:インフルエンザ7症状の合計スコア(11点以下、12点以上)及び地域(日本/アジア、その他の国・地域)を層とした層別一般化Wilcoxon検定
副作用発現頻度は、4.4%(27/610例)であった。主な副作用は下痢1.8%(11/610例)であった12)。
12歳未満のインフルエンザウイルス感染症患者に本剤を単回経口投与したときの安全性及び有効性を検討することを目的とした非対照非盲検試験のうち、体重10kg以上の被験者102例における結果は表17-2及び図17-2のとおり、主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間(中央値)は、10kg以上20kg未満で39.1時間、20kg以上40kg未満で45.6時間、40kg以上で60.9時間であった。ウイルス型・亜型別のインフルエンザ罹病期間(中央値)は、A/H1N1pdm型では164.2時間(2例)、A/H3型では45.2時間(86例)、B型では43.8時間(7例)であった13)。
投与群 (例数※2)
中央値(hr) [95%信頼区間]
体重40kg以上 (8例)
60.9 [8.1, 85.4]
体重20kg以上40kg未満 (65例)
20mg
45.6 [38.4, 62.5]
体重10kg以上20kg未満 (29例)
10mg
39.1 [29.9, 74.1]
※1:インフルエンザ症状のうち咳及び鼻づまり(鼻水を含む)が「なし」又は「軽度」、かつ体温(腋下温)が37.5℃未満に改善するまでの時間と定義した。ただし、その状態が少なくとも21.5時間以上持続していることを条件とした。
※2:欠測例(1例)は除外
副作用発現頻度は、3.8%(4/105例)であった。主な副作用は下痢1.9%(2/105例)であった。
ハイリスク因子注1)を有する12歳以上のインフルエンザウイルス感染症患者774例(日本人297例を含む)に本剤(バロキサビル マルボキシル40mg若しくは80mg)又はプラセボを単回経口投与時の有効性及び安全性を検討することを目的とした、無作為化二重盲検並行群間比較試験の結果は表17-3及び図17-3のとおりであり、プラセボに対する本剤の優越性が検証された。主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間(中央値)は、本剤群で73.2時間、プラセボ群で102.3時間であり、ウイルス型・亜型別では、本剤及びプラセボ群でそれぞれ、A/H1N1pdm型では67.0時間(28例)及び192.1時間(17例)、A/H3型では75.4時間(180例)及び100.4時間(185例)、B型では74.6時間(166例)及び100.6時間(167例)であった14)。
385
73.2 [67.2, 85.1]
102.3 [92.7, 113.1]
※1:インフルエンザの各症状(咳、喉の痛み、頭痛、鼻づまり、熱っぽさ又は悪寒、筋肉又は関節の痛み、並びに疲労感)の全ての症状が改善するまでの時間(インフルエンザ発症前に存在した咳、疲労感、筋肉又は関節の痛みについて調整あり)と定義した。ただし、その状態が少なくとも21.5時間以上持続していることを条件とした。
※2:欠測例(本剤群3例、プラセボ群1例)は除外
※3:投与前のインフルエンザ7症状の合計スコア(14点以下、15点以上)、投与前の既存症状の悪化の有無、及び地域(アジア、北米/欧州、南半球)を層とした層別一般化Wilcoxon検定
副作用発現頻度は、5.6%(41/730例)であった。主な副作用は悪心2.2%(16/730例)、下痢1.2%(9/730例)であった14)。
インフルエンザウイルス感染症患者の同居家族又は共同生活者を対象に、本剤のインフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果(10日間)を、無作為化二重盲検並行群間比較試験で検証した。インフルエンザウイルス感染症患者の発症から48時間以内に、その同居家族又は共同生活者に本剤(年齢及び体重に応じてバロキサビル マルボキシル1mg/kg、10mg、20mg、40mg、若しくは80mg)又はプラセボを単回経口投与したとき、主要評価項目である症候性インフルエンザウイルス陽性被験者(発熱かつ呼吸器症状あり)の割合は表17-4のとおり、本剤群で1.9%(7/374例注2))、プラセボ群で13.6%(51/375例)であり、プラセボに対する本剤の優越性が検証された。インフルエンザウイルス感染症患者のウイルス型・亜型別の症候性インフルエンザウイルス陽性被験者の割合は、本剤群及びプラセボ群でそれぞれ、A/H1N1pdm型では1.1%(2/176例注2))及び10.6%(19/180例)、A/H3型では2.8%(5/181例注2))及び17.5%(32/183例)、B型ではいずれも0%(それぞれ0/2例及び0/3例)であった15)。,,
症候性インフルエンザウイルス陽性被験者の割合 (例数)[95%信頼区間]
プラセボとの比較※2調整済みリスク比[95%信頼区間]p値
全体
374※3
1.9% (7例)[0.8, 3.8]
0.14[0.06, 0.30]p<0.0001
375
13.6% (51例)[10.3, 17.5]
12歳以上
303
1.3% (4例)[0.4, 3.3]
0.10[0.04, 0.28]
304
13.2% (40例)[9.6, 17.5]
12歳未満
71※3
4.2% (3例)[0.9, 11.9]
0.27[0.08, 0.90]
71
15.5% (11例)[8.0, 26.0]
※1:インフルエンザウイルス陽性はRT-PCR法により判定し、発熱は体温(腋下温)37.5℃以上、呼吸器症状は「咳」「鼻水/鼻づまり」のいずれかが「2:中程度」又は「3:重症」と定義した。
※2:①インフルエンザ感染症患者の発症から同居家族又は共同生活者の同意取得までの時間(24時間未満、以上)、②インフルエンザ感染症患者のインフルエンザ治療薬(本剤、本剤以外)、③同居家族又は共同生活者の年齢を共変量とする修正ポアソン回帰。年齢別の部分集団解析時における共変量は上記①②とし、p値は、全体の解析結果のみ提示。
※3:体重20kg未満の小児19例を含む。予防に関しては体重20㎏以上の小児の用法・用量が承認されている。
副作用発現頻度は、1.9%(7/374注3)例)であった。主な副作用は悪心0.5%(2/374注3)例)であった15)。
バロキサビル マルボキシル活性体は、A型及びB型インフルエンザウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を選択的に阻害する。キャップ依存性エンドヌクレアーゼは、宿主細胞由来mRNA前駆体を特異的に切断する酵素であり、ウイルスmRNA合成に必要なプライマーとなるRNA断片を生成する。バロキサビル マルボキシル活性体は、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を阻害し、ウイルスmRNAの合成を阻害することにより、ウイルス増殖抑制作用を発揮する16)。
A型及びB型インフルエンザウイルスの実験室株又は臨床分離株(ノイラミニダーゼ阻害薬に対する感受性低下を示すNA/H274Y変異株を含む)を感染させたMDCK細胞(イヌ腎臓由来株化細胞)において、バロキサビル マルボキシル活性体はウイルス増殖抑制効果を示した。〔ウイルス力価を1/10に抑制する濃度(EC90)は、A型で0.46~0.98nmol/L、B型で2.21~6.48nmol/Lであった。〕また、この効果は、H5N1又はH7N9亜型の鳥インフルエンザウイルス(ノイラミニダーゼ阻害剤に対する感受性低下を示すNA/H274Y、NA/R292Kの各変異株を含む)を感染させたMDCK細胞においても認められた16)。(EC90は0.80~3.16nmol/L)
A型及びB型インフルエンザウイルスの実験室株又は臨床分離株(ノイラミニダーゼ阻害薬に対する感受性低下を示すNA/H274Y変異株を含む)を接種したマウスモデルにおいて、バロキサビル マルボキシルは、投与翌日のマウス肺内ウイルス力価を用量依存的に低下させた17)。この効果は、免疫機能を抑制したマウスにA型インフルエンザウイルス株を接種したモデル18)、更に、鳥インフルエンザウイルス株(H5N1、H7N9)を接種したマウスモデル17)においても認められた。また、A型及びB型インフルエンザウイルス株や鳥インフルエンザウイルス株(H5N1、H7N9)を接種したマウス致死モデルにおいて、バロキサビル マルボキシルは、致死率を改善した17)。この治療効果は、A型インフルエンザウイルス株を接種したマウスモデルにおいて、治療開始を遅らせても(ウイルス接種後24~96時間に投与開始)認められた18)。A型インフルエンザウイルス株を接種したフェレットモデルにおいて、バロキサビル マルボキシルは、投与翌日の鼻腔洗浄液内ウイルス力価を低下させ、体温上昇を抑制した19)。
成人及び12歳以上の小児を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験、ハイリスク因子を有する患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験、12歳未満の小児を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験の各臨床試験において、本剤が投与され、投与前後に塩基配列解析が可能であった被験者のうち、バロキサビル マルボキシル活性体の結合標的部位であるポリメラーゼ酸性蛋白質領域のI38のアミノ酸変異が認められた被験者の割合は表18-1のとおりであった20)。
全集団※1
A/H1N1pdm型※2
A/H3型※2
B型※2
成人及び12歳以上の小児を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験
体重40kg以上
9.7%(36/370)
0.0%(0/4)
10.9%(36/330)※3
2.7%(1/37)※3
ハイリスク因子を有する患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験
5.2%(15/290)
5.6%(1/18)
9.2%(13/141)
0.8%(1/131)
12歳未満の小児を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験
全区分※4
23.4%(18/77)
0.0%(0/2)
25.7%(18/70)
0.0%(0/6)
16.7%(1/6)
---
体重20kg以上40kg未満
18.4%(9/49)
20.0%(9/45)
0.0%(0/3)
体重10kg以上20kg未満
38.1%(8/21)
42.1%(8/19)
体重5kg以上10kg未満※4
0.0%(0/1)
%(発現例数/対象例数)
※1:全集団の集計において、重複感染例は1例として計上した。
※2:ウイルス型/亜型別の集計において、重複感染例は投与前後の塩基配列解析が可能であったウイルスの型・亜型でそれぞれ1例として計上した。
※3:1例はA/H3型及びB型インフルエンザウイルスの重複感染患者で、両型においてI38のアミノ酸変異が認められた。
※4:治療に関しては体重10㎏以上の小児の用法・用量が承認されている。
いずれの臨床試験においても、本剤投与中にI38のアミノ酸変異を検出した患者集団では、本剤投与から3日目以降に一過性のウイルス力価の上昇が認められた。なお、成人及び12歳以上の小児を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験の本剤が投与された患者で認められたI38のアミノ酸変異の有無別のウイルス力価の推移は図18-1のとおりであった20)。
インフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果の検証を目的とした国内第Ⅲ相臨床試験において、本剤群374例中、予防投与前後に63例でインフルエンザウイルスが検出され、このうち投与後に10例でI38のアミノ酸変異ウイルス(A型インフルエンザウイルス感染症患者)が認められた。年齢別では、12歳以上では、本剤群303例中、予防投与前後に46例でインフルエンザウイルスが検出され、このうち投与後に7例でI38のアミノ酸変異ウイルスが認められた。12歳未満では、本剤群71例注4)中、予防投与前後に17例注4)でインフルエンザウイルスが検出され、このうち投与後に3例注4)でI38のアミノ酸変異ウイルスが認められた。12歳未満の体重別では、体重40kg以上では本剤群4例中、予防投与前後にインフルエンザウイルスが検出された症例はなかったが、体重20kg以上40kg未満では本剤群48例中、予防投与前後に10例でインフルエンザウイルスが検出され、このうち投与後に2例でI38のアミノ酸変異ウイルスが認められた。体重10kg以上20kg未満では本剤群19例注5)中、予防投与前後に7例注5)でインフルエンザウイルスが検出され、このうち投与後に1例注5)でI38のアミノ酸変異ウイルスが認められた20)。,
成人及び12歳以上の小児を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験において、本剤が投与された患者で、投与前後に塩基配列解析が可能であった370例中2例にバロキサビル マルボキシル活性体の結合標的部位であるポリメラーゼ酸性蛋白質領域のE23のアミノ酸変異が認められた。ハイリスク因子を有する患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験において、同様に290例中1例にE23のアミノ酸変異が認められた。12歳未満の小児を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験では、本剤が投与された患者で、投与前後に塩基配列解析が可能であった77例中にE23のアミノ酸変異は認められなかった。インフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果の検証を目的とした国内第Ⅲ相臨床試験において、本剤群374例注6)中、予防投与前後に63例注7)でインフルエンザウイルスが検出され、このうち5例注8)でE23のアミノ酸変異ウイルスが認められた20)。
A型及びB型インフルエンザウイルス実験室分離株を用いたin vitro耐性分離試験において、A型ウイルス株では、バロキサビル マルボキシル活性体に対する感受性が親株と比較して最大で約100倍低下したウイルス株が得られ、これらの株では、I38Tのアミノ酸変異が認められた21)。なお、フェレットにおいて野生型ウイルスとの競合条件下でI38Tのアミノ酸変異ウイルスの増殖性及び伝播性は野生型を上回らないことが認められた22)。一方、B型ウイルス株では、アミノ酸変異は分離されなかった21)。また、リバースジェネティクス法により組み換えたA型インフルエンザウイルス株を用いたin vitro試験において、I38のアミノ酸変異は、バロキサビル マルボキシル活性体に対する感受性を最大で約50倍、E23のアミノ酸変異は、バロキサビル マルボキシル活性体に対する感受性を最大で約5.5倍低下させた20)。
バロキサビル マルボキシル(Baloxavir Marboxil)(JAN)
({(12aR)-12-[(11S)-7,8-Difluoro-6,11-dihydrodibenzo[b,e]thiepin-11-yl]-6,8-dioxo-3,4,6,8,12,12a-hexahydro-1H-[1,4]oxazino[3,4-c]pyrido[2,1-f][1,2,4]triazin-7-yl}oxy)methyl methyl carbonate
C27H23F2N3O7S
571.55
白色~淡黄白色の粉末である。ジメチルスルホキシドに溶けやすく、アセトニトリルにやや溶けやすく、メタノール又はエタノール(99.5)に溶けにくく、水にほとんど溶けない。
約228℃(分解)
log P=2.26[1-オクタノール/水]
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
10錠[10錠(PTP)×1]
10包[0.5g(SP)×10]
1) Centers for Disease Control and Prevention(CDC):ハイリスク因子を有する患者https://www.cdc.gov/flu/highrisk/index.htm(2020/11/6確認)
2) 社内資料:バロキサビル マルボキシルの生殖発生毒性試験(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.6.6)〔201800035〕
3) 社内資料:ラット組織分布及び乳汁移行性(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.4.4,2.6.4.6)〔201800028〕
4) 社内資料:PT及びAPTTの延長の原因確認試験(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.6.8)〔201800037〕
5) 社内資料:バロキサビル マルボキシルの薬物動態(2018/2/23承認、申請資料概要2.7.1.2,2.7.2.2,2.7.2.3)〔201800012〕
6) 社内資料:生物学的同等性〔201800322〕
7) 社内資料:バロキサビル マルボキシル活性体のin vitro血清蛋白結合及び血球移行性(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.4.4)〔201800027〕
8) 社内資料:in vitro代謝試験(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.4.5)〔201800029〕
9) 社内資料:ヒト代謝酵素を介したin vitro薬物相互作用(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.4.5)〔201800025〕
10) 社内資料:ヒトトランスポーターを介したin vitro薬物相互作用(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.4.7)〔201800026〕
11) 社内資料:バロキサビル マルボキシルの薬物相互作用(2018/2/23承認、申請資料概要2.7.2.2)〔201800013〕
12) 社内資料:成人及び青少年患者対象第Ⅲ相プラセボ及び実薬対照試験(2018/2/23承認、申請資料概要2.7.6.14)〔201800011〕
13) 社内資料:小児患者対象国内第Ⅲ相オープンラベル試験(2018/2/23承認、申請資料概要2.7.3.3,2.7.6.15)〔201800010〕
14) 社内資料:ハイリスク因子を有する患者対象国際共同第Ⅲ相臨床試験〔201800479〕
15) 社内資料:ゾフルーザ予防投与試験(2020/11/27承認、申請資料概要2.7.6.1)〔202000356〕
16) 社内資料:バロキサビル マルボキシル活性体の効力を裏付ける試験(in vitro)(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.2.2)〔201800018〕
17) 社内資料:バロキサビル マルボキシルのインフルエンザウイルスに対する増殖抑制作用及び治療効果(マウス)(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.2.2)〔201800019〕
18) 社内資料:バロキサビル マルボキシルのその他の治療効果(マウス)(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.2.2)〔201800021〕
19) 社内資料:A型インフルエンザウイルス感染フェレットにおけるバロキサビル マルボキシルの治療効果(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.2.2)〔201800020〕
20) 社内資料:バロキサビル マルボキシルのウイルス薬剤感受性(2018/2/23承認、申請資料概要2.7.2.4、2020/11/27承認、申請資料概要2.7.2.4)〔201800023〕
21) 社内資料:実験室分離株を用いたin vitro耐性分離試験(2018/2/23承認、申請資料概要2.6.2.2)〔201800022〕
22) 社内資料:バロキサビル マルボキシルの薬剤感受性を低下させるアミノ酸変異ウイルスの特性評価(2020/11/27承認、申請資料概要2.6.2.2.5)〔202000357〕
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本剤は、「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療」の目的で使用した場合にのみ保険給付されます。
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