医療用医薬品 詳細表示

フェインジェクト静注500mg

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.3肝機能障害患者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
12.臨床検査結果に及ぼす影響
13.過量投与
14.適用上の注意
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.3分布
16.4代謝
16.5排泄
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
18.薬効薬理
18.1作用機序
18.2造血作用
18.3ヒトでの作用
19.有効成分に関する理化学的知見
21.承認条件
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
26.製造販売業者等

フェインジェクト静注500mg

添付文書番号

3222404A1021_1_04

企業コード

380077

作成又は改訂年月

**2023年8月改訂(第5版)
2021年7月改訂

日本標準商品分類番号

873222

薬効分類名

薬効分類名:
鉄欠乏性貧血治療剤

承認等

フェインジェクト静注500mg

販売名コード

YJコード

3222404A1021

販売名英語表記

Ferinject solution for injection/infusion 500mg

販売名ひらがな

ふぇいんじぇくとじょうちゅう

承認番号等

承認番号

23100AMX00290000

販売開始年月

2020年9月

貯法・有効期間

貯法

室温保存(凍結を避けて保存)

有効期間

3年

一般的名称

カルボキシマルトース第二鉄注射液

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1 鉄欠乏状態にない患者[鉄過剰を来すおそれがある]
  2. 2.2 本剤に対し過敏症の既往歴のある患者

3. 組成・性状

3.1 組成

フェインジェクト静注500mg

有効成分1バイアル(10mL)中にカルボキシマルトース第二鉄を鉄として   500mg含有する
添加剤pH調整剤  

3.2 製剤の性状

フェインジェクト静注500mg

pH5.0〜7.0
浸透圧比1.0~1.3(生理食塩液に対する比)
性状暗褐色の不透明な液

4. 効能又は効果

鉄欠乏性貧血

5. 効能又は効果に関連する注意

本剤は経口鉄剤の投与が困難又は不適当な場合に限り使用すること。

6. 用法及び用量

通常、成人に鉄として1回あたり500mgを週1回、緩徐に静注又は点滴静注する。総投与量は、患者の血中ヘモグロビン値及び体重に応じるが、上限は鉄として1,500mgとする。

7. 用法及び用量に関連する注意

  1. 7.1 *本剤の投与に際しては、以下を参考に、過量投与にならないよう、総投与量(投与回数)に注意すること。なお、本剤の投与は週1回、1回あたり鉄として500mg(1バイアル)とする。
    本剤の鉄としての総投与量(投与回数)

    体重

    25kg以上
    35kg未満

    35kg以上
    70kg未満

    70kg以上

    血中ヘモグロビン値

    10.0g/dL
    未満

    500mg
    (500mgを1回投与)

    1,500mg
    (週1回、1回あたり500mgを計3回投与)

    1,500mg
    (週1回、1回あたり500mgを計3回投与)

    10.0g/dL
    以上

    1,000mg
    (週1回、1回あたり500mgを計2回投与)

  2. 7.2 本剤を希釈しないで使用する場合、5分以上かけて緩徐に静注すること。本剤を希釈して使用する場合は、6分以上かけて点滴静注すること。
  3. 7.3 35kg未満の患者には点滴静注とすること。
  4. 7.4 血中ヘモグロビン値は本剤投与終了後4週程度まで上昇するため、再治療の必要性は、投与終了後4週以降を目安に血中ヘモグロビン値、血清フェリチン値、患者の状態等から、鉄過剰に留意して慎重に判断すること。,

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 発作性夜間ヘモグロビン尿症を合併している患者

    溶血を誘発するおそれがある。

9.3 肝機能障害患者

本剤投与による肝機能の悪化に注意すること。鉄過剰により肝機能障害が悪化する可能性がある。肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ラット及びウサギを用いた生殖発生毒性試験において過量投与で胎児の奇形が報告されており、母動物における鉄過剰に伴う毒性の二次的影響と考えられている1),2) 。また、ラットで胎盤通過性が報告されている3)

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒトの乳汁中への移行が認められている4)

9.7 小児等

小児を対象とした臨床試験は実施していない。

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副作用

  1. 11.1.1 過敏症(頻度不明)

    ショック、アナフィラキシー等の重篤な過敏症があらわれることがある。

11.2 その他の副作用

10%以上

1%以上

0.1%~1%未満

頻度不明

**,*精神神経系

頭痛(4.3%)

倦怠感

感覚鈍麻

肝臓

γGTP増加、肝機能検査値上昇

**消化器

上腹部痛、悪心

嘔吐、腹痛

皮膚

蕁麻疹

**,*その他

血中リン減少(20.1%)

発熱、月経過多

背部痛、投与部位疼痛、血圧上昇、血圧低下

12. 臨床検査結果に及ぼす影響

  1. 12.1 血清リン値

    血清リン値は本剤投与後に低下する傾向があるため、低リン血症の発現に注意すること。

  2. 12.2 血清フェリチン値

    血清フェリチン値は本剤投与後に高値を示すことから、本剤投与終了後4週程度は貯蔵鉄量を正確に反映しない可能性があることに注意すること。

13. 過量投与

  1. 13.1 症状

    鉄過剰症があらわれることがある。また、長期的な低リン血症により骨軟化症に至ることがある5)

  2. 13.2 処置

    鉄排泄剤の投与等、症状に応じて適切な処置を行うこと。

14. 適用上の注意

14.1 薬剤調製時の注意

  1. 14.1.1 希釈方法

    他の薬剤と配合しないこと。希釈する場合は、1バイアルあたり100mLの生理食塩液で用時希釈し、生理食塩液以外の輸液は使用しないこと。鉄として2mg/mL未満に希釈してはならない。未使用分は廃棄し、分割使用は避けること。

14.2 薬剤投与時の注意

注射に際しては血管外に漏出しないよう十分注意すること。血管外に漏出した場合には、漏出部位周辺に皮膚の炎症及び長期にわたる色素沈着を起こすことがある。血管外漏出が認められた場合は、適切な処置を行うこと。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度

18歳以上65歳未満で体重40kg以上(1,000mg群は50kg以上)の鉄欠乏性貧血患者24例に、本剤を鉄として100〜1,000mgを1回、緩徐に静注又は点滴静注したときの血清鉄(カルボキシマルトース、生体内の鉄結合性タンパク質と結合した鉄及び遊離鉄)の薬物動態パラメータは以下の表のとおりであった6)

本剤単回静脈内投与時の血清鉄1) の薬物動態パラメータ

本剤投与量2)
(mg)

例数

AUC0-168h
(μg・h/mL)

t1/2
(h)

100

6

465±883)

62.74)

500

6

3,400±570

89.1±93.0

800

6

6,560±1,190

70.5±28.0

1,000

6

8,680±1,200

42.2±24.2

平均値±標準偏差

1) 血清中のカルボキシマルトースと結合した鉄、生体内の鉄結合性タンパク質と結合した鉄及び遊離鉄
2) 鉄としての投与量
3) AUC0-144h
4) 1例の値

本剤100〜1,000mgを静脈内投与後の血清鉄の推移(各群6例の平均値)

16.3 分布

  1. 16.3.1 正常ラット及び鉄欠乏性貧血ラット

正常ラット及び鉄欠乏性貧血ラットに本剤の59Fe標識体を鉄として5mg単回静脈内投与したとき、いずれのラットにおいても、静脈内投与後の放射能は主に血球、肝臓及び脾臓に認められ、肝臓及び脾臓においては経時的に減少し、血球では経時的に上昇した7),8)

  1. 16.3.2 妊娠ラット

妊娠ラットに、本剤の59Fe標識体を鉄として5mgを妊娠12日目に単回静脈内投与したとき、投与後72時間までの胎児の放射能濃度は胎盤中放射能濃度よりも低かった。投与後7日では胎児及び胎盤それぞれに投与放射能の9.2%及び3.1%が移行した3)

  1. 16.3.3 ヒト胎盤灌流モデル

In vitroヒト胎盤灌流モデルにおいて、本剤の59Fe標識体を鉄として約0.6mg/mL(ヒトに1回あたり500mgを投与したときの最高血清中鉄濃度の約3倍)及びトランスフェリンを母体側回路へ添加した結果、胎児側回路から放射能は検出されなかった9)

16.4 代謝

血中でカルボキシマルトースがα-アミラーゼにより部分的に分解される。本剤及びカルボキシマルトースが部分的に分解された本剤は、細網内皮系の細胞に取り込まれた後、エンドリソソーム内で鉄が分離される10)

16.5 排泄

尿中に鉄はほとんど排泄されなかった6)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  1. 17.1.1 国内第III相試験(検証的試験)

    18歳以上50歳未満で体重35kg以上の過多月経を伴う鉄欠乏性貧血患者(血中ヘモグロビン値:6.0g/dL以上11.0g/dL未満、血清フェリチン値:12ng/mL未満)238例を対象に、本剤又は含糖酸化鉄を、下記の基準に基づく総投与鉄量(鉄として1,000mg又は1,500mg)まで静脈内投与する無作為化非盲検並行群間比較試験を実施した。本剤群は、1回あたり鉄として500mgを週に1回、緩徐に静注又は点滴静注することとされた。

    本剤及び含糖酸化鉄の総投与鉄量
    • 観察期(投与開始前)の血中ヘモグロビン値が10.0g/dL以上11.0g/dL未満かつ投与開始日の体重が70kg未満の場合

    1,000mg

    • 観察期(投与開始前)の血中ヘモグロビン値が6.0g/dL以上10.0g/dL未満かつ投与開始日の体重が70kg未満の場合
    • 観察期(投与開始前)の血中ヘモグロビン値が6.0g/dL以上11.0g/dL未満かつ投与開始日の体重が70kg以上の場合

    1,500mg

    投与開始12週後までの血中ヘモグロビン値の最大変化量(調整済み平均値)の群間差(本剤群-含糖酸化鉄群)[95%信頼区間]は-0.15g/dL[-0.35,0.04]であり、本剤群の含糖酸化鉄群に対する非劣性が検証された(非劣性限界値-1.0g/dL)。

    12週時までの血中ヘモグロビン値の最大変化量

    本剤群
    (119例)

    含糖酸化鉄群
    (119例)

    血中ヘモグロビン値の最大変化量の調整済み平均値5)
    [95%信頼区間]

    3.90g/dL
    [3.77,4.04]

    4.05g/dL
    [3.92,4.19]

    群間差
    [95%信頼区間]

    -0.15g/dL
    [-0.35,0.04]

    5) 投与群を因子、ベースラインの血中ヘモグロビン値及び体重を共変量とした共分散分析

    投与開始12週後までの血中ヘモグロビン値の推移図は以下のとおりであった。

    副作用の発現率は、本剤群37.8%(45/119例)、含糖酸化鉄群32.8%(39/119例)であった。本剤群での主な副作用は、血中リン減少18.5%(22/119例)、頭痛5.9%(7/119例)であった11)

  2. 17.1.2 国内第III相試験(一般臨床試験)

    16歳以上で体重35kg以上の消化器障害に伴う鉄欠乏性貧血患者(血中ヘモグロビン値が、男性:6.0g/dL以上13.0g/dL未満、女性:6.0g/dL以上12.0g/dL未満、血清フェリチン値12ng/mL未満〈CRP値が基準値上限超の場合100ng/mL未満〉)39例を対象に、本剤を1回あたり鉄として500mgを週に1回、下記の基準に基づく総投与鉄量(鉄として1,000mg又は1,500mg)まで静脈内投与する非対照非盲検試験を実施した。本剤は、1回あたり鉄として500mgを週に1回、緩徐に静注又は点滴静注することとされた。

    本剤の総投与鉄量
    • 観察期(投与開始前)の血中ヘモグロビン値が10.0g/dL以上13.0g/dL未満(男性)又は10.0g/dL以上12.0g/dL未満(女性)かつ投与開始日の体重が70kg未満の場合

    1,000mg

    • 観察期(投与開始前)の血中ヘモグロビン値が6.0g/dL以上10.0g/dL未満かつ投与開始日の体重が70kg未満の場合
    • 観察期(投与開始前)の血中ヘモグロビン値が6.0g/dL以上13.0g/dL未満(男性)又は6.0g/dL以上12.0g/dL未満(女性)かつ投与開始日の体重が70kg以上の場合

    1,500mg

    投与開始12週後までの血中ヘモグロビン値の推移図は以下のとおりであった。

    副作用の発現率は、48.7%(19/39例)で、主な副作用は、血中リン減少23.1%(9/39例)、蕁麻疹5.1%(2/39例)、発熱5.1%(2/39例)、肝機能検査値上昇5.1%(2/39例)であった12)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

本剤は、マクロファージに取り込まれて分解された後、鉄は血漿トランスフェリンと結合して体内を循環する。トランスフェリンに結合した鉄は骨髄にて赤芽球に取り込まれ、ヘモグロビン合成に利用される13)

18.2 造血作用

鉄欠乏食で飼育した貧血ラットに本剤を鉄として5mgを単回静脈内投与した結果、血中ヘモグロビン値が上昇した8)

18.3 ヒトでの作用

18歳以上65歳未満で体重40kg以上(1,000mg群は50kg以上)の鉄欠乏性貧血患者24例に、本剤を鉄として100〜1,000mgを1回、緩徐に静注又は点滴静注したとき、血清フェリチン値は用量依存的な増加が認められた。また、全ての群において、不飽和鉄結合能の低下傾向、血清トランスフェリンの緩やかな低下傾向が認められた。また、網状赤血球数の増加が認められた6)

19. 有効成分に関する理化学的知見

一般的名称

カルボキシマルトース第二鉄(Ferric carboxymaltose)

化学名

水和された酸化第二鉄とポリ[D-グルコピラノシル(1→4)]-D-グルコン酸との複合体(Poly [D-glucopyranosyl(1→4)] -D-gluconic acid complex of hydrated iron(III) oxide)

分子式

Few([C6H10O5]aC6H11O7)x(OH)yOz・nH2O

分子量

130,000〜200,000

性状

カルボキシマルトース第二鉄は褐色の粉末である。水に溶けやすい。

21. 承認条件

医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

22. 包装

  • 〈フェインジェクト静注500mg〉

    10mL×1バイアル、10mL×5バイアル

23. 主要文献

1) 社内資料: ラットを用いた静脈内持続注入投与による胚・胎児発生への影響に関する試験(試験番号: VFR048/002163)(承認年月日: 2019年3月26日、CTD2.6.6.6.3)

2) 社内資料: ウサギを用いた静脈内持続注入投与による胚・胎児発生への影響に関する試験(試験番号: VFR049/004349)(承認年月日: 2019年3月26日、CTD2.6.6.6.4)

3) 社内資料: 単回静脈内投与後のラット胎盤透過性及び乳汁移行(試験番号: VFR062/033271)(承認年月日: 2019年3月26日、CTD2.6.4.8.1)

4) 社内資料: 産後貧血患者を対象とした多施設共同無作為非盲検試験(試験番号: VIT-IV-CL-009試験)

5) Yuichiro Shimizu. et al.: Bone. 2009;45:814-816.

6) 社内資料: Z-213の鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第Ib相試験(試験番号: Z213-01試験)(承認年月日: 2019年3月26日、CTD2.7.6.2.1.1)

7) 社内資料: 正常ラットの筋肉内及び静脈内に単回投与した後の分布(試験番号: VFR060/033441)(承認年月日: 2019年3月26日、CTD2.6.4.4.1)

8) 社内資料: 貧血ラットの筋肉内及び静脈内に単回投与した後の吸収、分布及び排泄試験(試験番号: VFR061/043161)(承認年月日: 2019年3月26日、CTD2.6.2.2, 2.6.4.4.2)

9) Malek A. Arzneimittelforschung. 2010;60(6a):354-361.

10) Koskenkorva-Frank TS. et al.: Free Radic Biol Med. 2013;65:1174-1194

11) Katsuya Ikuta. et al.: Int J Hematol. 2019;109(1):41-49

12) Katsuya Ikuta. et al.: Int J Hematol. 2019;109(1):50-58

13) Geisser P. et al.: Pharmaceutics. 2011;3(1):12-33.

24. 文献請求先及び問い合わせ先

ゼリア新薬工業株式会社 お客様相談室

〒103-8351 東京都中央区日本橋小舟町10-11

TEL(03)3661-0277
FAX(03)3663-2352
受付時間 9:00〜17:50(土日祝日・弊社休業日を除く)

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元

ゼリア新薬工業株式会社

〒103-8351 東京都中央区日本橋小舟町10-11

〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル

画面を閉じる

Copyright © Pharmaceuticals and Medical Devices Agency, All Rights reserved.