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劇薬
麻薬
処方箋医薬品注)
手術、検査および処置時の全身麻酔および吸入麻酔の導入
通常、ケタミンとして、初回体重1kg当り1~2mgを静脈内に緩徐(1分間以上)に投与し、必要に応じて、初回量と同量又は半量を追加投与する。
本剤の用法及び用量は患者の感受性、全身状態、手術々式、麻酔方法等に応じてきめるが、一般に行われている方法を示すと次のとおりである。手術の少なくとも6時間前から絶飲絶食とし、アトロピン硫酸塩水和物等の前投薬を行い、次いで本剤の1回量を緩徐に静注する。麻酔の維持には、本剤の追加投与を行うが、手術の時間が長くなる場合には点滴静注法が用いられる。投与速度は最初30分間が0.1mg/kg/分、それ以後は0.05mg/kg/分を一応の基準として、必要に応じ若干これを増減し、手術終了の30分前に投与を中止する1),2)。なお、手術の種類によっては、吸入麻酔剤に切り替える。また必要によりスキサメトニウム塩化物水和物等の筋弛緩剤を併用する。
健康成人に通常用量を静注した場合、30秒~1分で手術可能な麻酔状態が得られ、作用は5~10分前後持続する3)。
一般に麻酔がかかりにくい。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。
中枢神経系抑制剤
覚醒が遅延することがあるので、減量するなど注意すること。
本剤の作用が増強されるためと考えられる。
ツボクラリン
本剤がツボクラリンの筋弛緩作用を増強させることがある。
本剤がツボクラリンの蛋白結合を阻害すると考えられている。
β-遮断剤
血圧下降作用が増強するおそれがある。また、一般にβ-遮断剤を投与中の患者は高血圧症の場合が多いので、本剤の一過性の血圧上昇作用に注意すること。
本剤の二次的な血圧下降作用が増強される。
過量投与した場合及び静注速度が速い場合に起こることがあるので、静脈内投与に際しては、1分以上時間をかけて緩徐に注射すること。なお、呼吸抑制の症状があらわれた場合には、補助呼吸を行うなど適切な処置を行うこと。
喉頭痙攣、声門痙攣又は全身痙攣等が起こることがあるので、このような症状があらわれた場合には筋弛緩剤を投与の上、気管内挿管のもとに調節呼吸を行うなど、適切な処置を行うこと。
夢のような状態、幻覚あるいは興奮、錯乱状態等が起こることがあり、通常数時間で回復するが、まれに24時間以内に再び起こることがある。覚醒時反応を防ぐには、回復期の早期に患者に話しかけたりするような不必要な刺激は避け、完全に覚醒するまで患者のバイタルサインを監視するなど、全身状態の観察を十分に行うこと。また、ジアゼパム、ドロペリドール等の前投薬を行うことが望ましい。興奮、錯乱状態等の激しい覚醒時反応に対する処置としては、短時間作用型又は超短時間作用型バルビツール酸系薬剤の少量投与、あるいはジアゼパム投与を行うことが望ましい。
1.5%以上
1.5%未満
頻度不明
循環器
不整脈、低血圧
徐脈、血圧下降注1)、血圧上昇注1)
呼吸器
過呼吸
中枢神経系
頭痛
筋緊張亢進、不随意運動、めまい・ふらつき
精神神経系
夢
興奮、精神症状
呻吟
感覚器
流涙
複視、眼振、眼内圧上昇
過敏症
発疹
皮膚紅斑
消化器
悪心・嘔吐、食思不振
唾液分泌過多
口渇、腹痛
その他
発熱、発汗、悪寒
顔面潮紅
しゃっくり、なきじゃくり、眼瞼浮腫
外国において、乱用により依存性が生じたとの報告がある。
健康成人男性6例にトリチウム標識ケタミン1mg/kgを静注したところ、トリチウム活性は二相性を示し、第一相(組織からの再分布)は投薬後3~5分以内に0.4~0.7μg/mL、第二相(代謝物)は1~2時間に0.6~0.7μg/mLに達した。未変化のケタミン血中濃度は静注後速やかに0.27~0.37μg/mLに達し、その生物学的半減期は4時間であった4)(外国人データ)。
In vitroにおいて、成人血漿における血漿蛋白結合率は47%であった5)(外国人データ)。
ケタミンの主代謝経路は、肝臓においてチトクロームP450によりノルケタミンとなる。また、ヒドロオキシノルケタミンやデヒドロノルケタミンなどに変化するが、薬理活性はほとんどない。ノルケタミンだけがケタミンの1/3~1/5の麻酔作用をもつ6)。
健康成人男性6例にトリチウム標識ケタミン1mg/kgを静注したところ、5日後迄に91%が尿中に、3%が糞便中に排泄された4)(外国人データ)。
6施設363例について実施された。本剤は、手術及び検査のための麻酔として使用され、また、一般に大手術に際しては笑気麻酔等の他の麻酔法と併用して使用された。本剤を静脈内投与すると1分以内に意識消失し、その持続時間は、疼痛反応消失でみると1~2mg/kgで10~20分、言語応答消失でも同様であった7),8)。また、睡眠持続時間でみると1.0mg/kgで6分、2.0mg/kgでは10分であり9)、全例で手術可能な麻酔状態が得られた7),8),9),10),11),12)。
興奮性神経伝達の抑制(NMDA型グルタミン酸受容体拮抗作用):ケタミンは非競合性拮抗薬としてMg2+結合部位と重なるフェンシクリジン結合部位に結合してNMDA受容体機能に拮抗する。大脳に密に存在するNMDA受容体の遮断が麻酔作用に、脊髄後角痛覚系の二次ニューロンNMDA型受容体の遮断が鎮痛作用に関与する13)。
動物実験(ウサギ14)・ネコ15))において、新皮質(例:連合野)、皮質下領域(例:視床)には抑制的に作用する一方、海馬等辺縁系を活性化する脳波的所見があり、ケタミンは新皮質-視床系と、辺縁系に対し解離的に作用する。
本剤により一過性の血圧上昇作用がみられ、投与後1~5分に最高に達するが、以後緩徐に下降し、投与前値に対する増加率は静注では平均32%である8)。また、二次的に血圧降下をきたす場合がある。
通常の用量(1~3mg/kg)により、一過性の頻脈がみられ、1~3分で最高に達し、以後正常に復する。頻脈は初回投与の時に著明である。
本剤の静注により、脳脊髄液圧は上昇し、1~3分で最高値に達し、15~20分で注射前値に復する16)。繰り返し投与するとその都度同じ程度に上昇する。
本剤の静注により、脳血流量は62%増加するが17)、脳血管の炭酸ガスに対する反応性並びに脳血流自己調節機序は温存されている。
本剤により投与後2~3分で軽度の呼吸抑制があらわれるが一過性である。急速に高用量を静脈内投与すると呼吸抑制は強く、呼吸停止となることがある。筋の緊張が亢進するため、呼吸が不規則になることがある18)。喘息患者にケタミン1~2mg/kgを静注した場合、発作を誘発又は増悪することはないが、気管支痙縮を軽減する作用はない19),20)。
本剤には筋弛緩作用がない8)。なお、急速静脈内投与により筋緊張が亢進することがある。
ケタミン塩酸塩(Ketamine Hydrochloride)
(2RS)-2-(2-Chlorophenyl)-2-(methylamino)cyclohexanone monohydrochloride
C13H16ClNO・HCl
274.19
白色の結晶又は結晶性の粉末である。ギ酸に極めて溶けやすく、水又はメタノールに溶けやすく、エタノール(95)又は酢酸(100)にやや溶けにくく、無水酢酸又はジエチルエーテルにほとんど溶けない。水溶液(1→10)は旋光性を示さない。
約258℃(分解)
フラスコ振とう法による本品の水とオクタノールの分配係数log Pow(Pow=オクタノール相の濃度/水相の濃度)は1.4(pH7.0)であった。
1) 田宮恵子ほか:麻酔 1973;22(1):79-84
2) 劔物 修ほか:麻酔 1977;26(10):1119-1123
3) Domino EF, et al.:Clin Pharmacol Ther. 1965;6(3):279-291
4) Chang T, et al.:Clin Res. 1970;18:597
5) Dayton PG, et al.:Eur J Clin Pharmacol. 1983;24(6):825-831
6) 山村秀夫ほか:新臨床麻酔学全書 第2巻B 金原出版 1984:89-92
7) 橘 直矢ほか:麻酔 1966;15(13):1323-1328
8) 岩月賢一ほか:麻酔 1967;16(9):680-685
9) 藤田俊夫ほか:麻酔 1967;16(12):1089-1094
10) 藤森 貢ほか:麻酔 1968;17(6):522-527
11) 石橋俊元ほか:外科診療 1968;10(9):1144-1148
12) 相馬俊臣ほか:広島麻酔医学会雑誌 1968;4(2):101-105
13) 田中千賀子ほか:NEW薬理学 改訂第7版 南江堂 2017:351-352
14) 渋谷 健ほか:東京医科大学雑誌 1969;27(2):249-256
15) Corssen G, et al.:Anesth Analg. 1968;47(6):746-759
16) 雨宮 孝ほか:ケタラール文献集 No.2(外科編)1970:39-45
17) Takeshita H, et al.:Anesthesiology 1972;36(1):69-75
18) 高橋長雄ほか:臨床麻酔 1977;1(5):493-500
19) Corssen G, et al.:Anesth Analg. 1972;51(4):588-596
20) Waltemath CL, et al.:Anesthesiology 1974;41(5):473-476
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本剤は厚生労働省告示第107号(平成18年3月6日付)に基づき、1回14日分を限度として投与する。
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