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劇薬
処方箋医薬品注)
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
通常、成人にはメマンチン塩酸塩として1日1回5mgから開始し、1週間に5mgずつ増量し、維持量として1日1回20mgを経口投与する。
発作を誘発又は悪化させることがある。
尿のアルカリ化により本剤の尿中排泄率が低下し、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。,
本剤は腎排泄型の薬剤であり、排泄が遅延する。
臨床試験では除外されている。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ウサギ)で胎児への移行が認められている。また、動物実験(ラット)で胎児及び出生児の体重増加抑制が認められている。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で、乳汁中への移行が認められている。
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
ドパミン作動薬
ドパミン作動薬の作用を増強させるおそれがある。
本剤のNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体拮抗作用が、ドパミン遊離を促進させる可能性がある。
ヒドロクロロチアジド
ヒドロクロロチアジドの血中濃度を低下させる。
機序は不明である。
腎尿細管分泌(カチオン輸送系)により排泄される薬剤
本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
本剤は一部が尿細管分泌(カチオン輸送系)により排泄されるため、同じ輸送系を介する薬剤と競合する可能性がある。
尿アルカリ化を起こす薬剤1)
,
尿のアルカリ化により、本剤の尿中排泄率が低下するため。
NMDA受容体拮抗作用を有する薬剤
相互に作用を増強させるおそれがある。
両薬剤ともNMDA受容体拮抗作用を有するため。
激越(0.2%)、攻撃性(0.1%)、妄想(0.1%)、幻覚(頻度不明)、錯乱(頻度不明)、せん妄(頻度不明)等があらわれることがある。
AST、ALT、ALP、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害があらわれることがある。
筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇等があらわれることがある。また、横紋筋融解症による急性腎障害の発症に注意すること。
1~5%未満
1%未満
頻度不明
過敏症
発疹
顔面浮腫、眼瞼浮腫
精神神経系
めまい、頭痛
傾眠、不眠、徘徊、不穏、易怒性、不安
歩行障害、不随意運動(振戦、チック、ジスキネジー等)、活動性低下、鎮静
腎臓
頻尿、尿失禁、尿潜血、BUN上昇
肝臓
肝機能異常
消化器
便秘、食欲不振
消化管潰瘍、悪心、嘔吐、下痢、便失禁
循環器
血圧上昇
血圧低下、上室性期外収縮
その他
血糖値上昇、転倒、浮腫、体重減少、CK上昇
貧血、倦怠感、発熱、コレステロール上昇、トリグリセリド上昇
脱力感
メマンチン塩酸塩400mg服用患者において、不穏、幻視、痙攣、傾眠、昏迷、意識消失等があらわれ、また、メマンチン塩酸塩2,000mg服用患者において、昏睡、複視及び激越があらわれ、それぞれ回復したとの報告がある(外国人における報告)。
尿の酸性化により、僅かに排泄が促進したとの報告がある。
ラットの高用量投与実験(メマンチン塩酸塩100mg/kg単回経口投与、25mg/kg/日以上14日間反復経口投与、又は100mg/kg/日14日間混餌投与)において、脳梁膨大皮質及び帯状回皮質に神経細胞の空胞化又は壊死が認められた。
健康成人男性に、メマンチン塩酸塩5、10及び20mgを空腹時単回経口投与したとき、最高血漿中濃度(Cmax)と血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)は投与量にほぼ比例して増加した。消失半減期(t1/2)は55.3~71.3時間であり、投与量による変化はみられなかった2)。
投与量
n
Cmax(ng/mL)
Tmax(hr)
AUC(ng・hr/mL)
t1/2(hr)
5mg
6
6.86±0.66
5.3±2.1
489.4±51.0
55.3±6.4
10mg
12.18±1.68
5.3±1.6
1,091.7±172.7
63.1±11.8
20mg
28.98±3.65
6.0±3.8
2,497.6±482.8
71.3±12.6
(mean±SD)
健康成人男性にメマンチン塩酸塩OD錠20mg(水なしで服用又は水で服用)又はメマンチン塩酸塩錠20mg(水で服用)をクロスオーバー法で空腹時単回経口投与したとき、いずれの場合も両製剤の血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは同様であった。メマンチン塩酸塩OD錠20mgは水なしで服用又は水で服用した場合のいずれも、メマンチン塩酸塩錠20mg(水で服用)と生物学的に同等であることが確認された3)。
AUC0-192h(ng・hr/mL)
OD錠20mg(水なしで服用)
16
24.3±3.72
4.19±1.42
1,540±154
53.6±5.75
錠20mg(水で服用)
24.3±4.53
3.50±1.55
1,530±157
55.4±8.14
OD錠20mg(水で服用)
15
24.9±2.37
4.80±2.11
1,510±114
47.8±6.96
25.8±3.07
4.40±2.29
1,540±140
48.0±7.63
アルツハイマー型認知症患者(10mg/日:11例、20mg/日:12例)に、メマンチン塩酸塩1日1回(朝食後)5mgから開始し、1週間ごとに5mgずつ漸増し10mg又は20mgを維持用量として24週間反復経口投与したとき、血漿中濃度は投与4週後ではほぼ定常状態に達しており、その時の血漿中濃度は10mg/日群で64.8~69.8ng/mL、20mg/日群で112.9~127.8ng/mLであった4)。
アルツハイマー型認知症患者にメマンチン塩酸塩1日1回(朝食後)5mgから開始し、1週間ごとに5mgずつ漸増し10mg又は20mgを維持用量として24週間反復経口投与したとき、脳脊髄液中濃度の血漿中濃度に対する比は10mg/日群で0.63、20mg/日群で0.72であった4)。
健康成人男性にメマンチン塩酸塩を空腹時に単回経口投与した場合、涙液中への移行が認められた2)。
ラットに14C-標識体を単回経口投与したとき、放射能は主として消化管内容物、陰茎、腎臓、尿路、肝臓、肺、副腎、涙腺、ハーダー氏腺、唾液腺及び脾臓に分布した。ラットにメマンチン塩酸塩を混餌投与したとき、脳内メマンチンのAUCは血漿中メマンチンのAUCの18倍以上高かった。また、妊娠中のウサギに14C-標識体を単回静脈内投与したとき、放射能は胎児に移行した。授乳期のラットに14C-標識体を単回経口投与したとき、放射能は乳汁に移行した5)。,
健康成人男性に、メマンチン塩酸塩5mgを1日3回経口投与し、定常状態に到達した13日目の初回投与時に14C-標識体5mgを経口投与したところ、総放射能の尿中への累積排泄率は投与20日後までに83.2±11.7%であり、糞中への累積排泄率は7日後までに0.54±0.41%であった(外国人データ)。また、炭酸水素ナトリウムを併用し、尿pHをアルカリ性状態にした場合には、メマンチンの全身クリアランス(CL/F)は単独投与時と比べて大きく低下したとの報告がある1)(外国人データ)。,
本剤は腎排泄型の薬剤であり、腎機能が低下する程度に応じて、本剤のt1/2の延長とAUCの増大が認められている6)。,
腎機能(Ccr)
正常者(Ccr>80)
軽度障害患者(50≦Ccr≦80)
中等度障害患者(30≦Ccr<50)
高度障害患者(5≦Ccr<30)
7
平均Ccr(推定値)(mL/min)
91.1
62.7
40.9
19.1
12.66±2.14
17.25±3.94
15.76±3.70
15.83±0.62
1,046±82
1,640±180
2,071±531
2,437±451
61.2±7.5
83.0±17.0
100.1±16.3
124.3±21.0
CL/F(mL/min)
133.0±9.6
85.3±8.8
70.4±17.0
58.6±11.3
CLr(mL/min)
82.2±19.8
62.1±10.9
42.1±9.0
28.5±12.2
健康成人20例にメマンチン塩酸塩を漸増法(メマンチン塩酸塩5mgを3日間、続いて10mgを4日間投与後、20mgを14日間)により1日1回経口投与した後、メマンチン塩酸塩20mgとヒドロクロロチアジド(25mg)・トリアムテレン(50mg)配合剤を7日間併用したとき、ヒドロクロロチアジドのCmax及びAUCは単独投与時の約80%に低下した7)(外国人データ)。
中等度から高度アルツハイマー型認知症患者(MMSEスコア:5点以上14点以下、FASTステージ:6a以上7a以下)315例を対象にメマンチン塩酸塩10mg(5mg/日を1週間投与後、10mg/日を23週間投与:計24週間投与)又は20mg(5mg/日、10mg/日及び15mg/日をそれぞれ順に1週間投与後、20mg/日を21週間投与:計24週間投与)、もしくはプラセボを24週間投与する二重盲検比較(用量設定)試験を実施した8)。認知機能を評価するSIB-Jにおいて、主たる解析では投与24週後評価のスコア変化量で用量反応性が認められ、また、副次的に実施した対比較の結果、プラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群の間に有意差が認められた(解析対象:260例、p=0.0029、Wilcoxon検定)。日常生活動作を評価するADCS ADL-Jにおいては、主たる解析では投与24週後評価のスコア変化量で用量反応性は認められず、また、副次的に実施した対比較の結果、プラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群の間に有意差は認められなかった(解析対象:260例、p=0.8975、Wilcoxon検定)。
副作用発現頻度はメマンチン塩酸塩10mg/日群で29.9%(32/107例)、メマンチン塩酸塩20mg/日群で31.0%(31/100例)であり、主な副作用は、メマンチン塩酸塩10mg/日群で体重減少3.7%(4/107例)、メマンチン塩酸塩20mg/日群で便秘、歩行異常、浮動性めまい、幻覚各3.0%(3/100例)であった。
中等度から高度アルツハイマー型認知症患者(MMSEスコア:5点以上14点以下、FASTステージ:6a以上7a以下)432例を対象にメマンチン塩酸塩20mg(5mg/日、10mg/日及び15mg/日をそれぞれ順に1週間投与後、20mg/日を21週間投与:計24週間投与)もしくはプラセボを24週間投与する二重盲検比較試験を実施した9)。認知機能を評価するSIB-Jのスコア変化量を表に示す。SIB-Jにおいて、主たる解析である投与24週後評価のプラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群のスコア変化量の差は4.53点であり、両群間に有意差が認められた(解析対象:368例、p=0.0001、Wilcoxon検定)。最終評価時点においても両群間に有意差が認められた(解析対象:424例、p<0.0001、Wilcoxon検定)。また、SIB-Jのスコア変化量の経時的推移でもメマンチン塩酸塩20mg/日群は24週間にわたってプラセボ群を上回った。
投与群
0週からの変化量注1)
変化量の差注2)
メマンチン塩酸塩20mg/日群
193
-0.65±9.74
4.53
プラセボ群
175
-5.18±11.66
-
全般的臨床症状を評価するModified CIBIC plus-Jの投与24週後評価の平均値を表に示す。メマンチン塩酸塩20mg/日群はプラセボ群を上回ったが、両群間の差は0.11であり、有意差は認められなかった(解析対象:367例、p=0.3189、Mantel検定)。また、最終評価においても有意差は認められなかった(解析対象:425例、p=0.1083、Mantel検定)。
24週後(mean±SD)
平均値の差注3)
190
4.47±1.07
-0.11
177
4.58±1.01
副作用発現頻度はメマンチン塩酸塩群で28.5%(63/221例)であり、主な副作用は、便秘3.2%(7/221例)、血圧上昇2.3%(5/221例)、高血圧1.8%(4/221例)、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、アルツハイマー型認知症各1.4%(3/221例)であった。
米国において、ドネペジル塩酸塩の治療を6ヵ月以上受けている中等度から高度アルツハイマー型認知症患者(MMSEスコア:5点以上14点以下)403例を対象にメマンチン塩酸塩20mg(5mg/日、10mg/日及び15mg/日をそれぞれ順に1週間投与後、20mg/日を21週間投与:計24週間投与)もしくはプラセボを24週間投与する二重盲検比較試験を実施した10)。認知機能を評価するSIBの最終評価時点のスコア変化量の最小二乗平均値を表に示す。プラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群の差は3.4点であり、両群間に有意差が認められた(解析対象394例、p<0.001、2元配置共分散分析)。
0週からの変化量注4)
変化量の差注5)
198
0.9±0.67
3.4
196
-2.5±0.69
全般的臨床症状を評価するCIBIC-plusの最終評価時点の平均値を表に示す。プラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群の差は0.25であり、両群間に有意差が認められた(解析対象394例、p=0.03、Cochran-Mantel Haenszel検定)。
最終評価時点(mean±SE)
平均値の差注6)
4.41±0.074
-0.25
4.66±0.075
日常生活動作を評価するADCS-ADL19の最終評価時点のスコア変化量の最小二乗平均値を表に示す。プラセボ群とメマンチン塩酸塩20mg/日群の差は1.4点であり、両群間に有意差が認められた(解析対象395例、p=0.03、2元配置共分散分析)。
0週からの変化量注7)
変化量の差注8)
-2.0±0.50
1.4
197
-3.4±0.51
副作用発現頻度はメマンチン塩酸塩群で33.7%(68/202例)であり、主な副作用は、浮動性めまい5.9%(12/202例)、頭痛4.5%(9/202例)、激越、錯乱各4.0%(8/202例)、転倒、下痢、傾眠、尿失禁各2.5%(5/202例)、疲労、無力症、嘔吐各2.0%(4/202例)、末梢性浮腫、高血圧、歩行異常、体重増加、不眠症、貧血各1.5%(3/202例)であった。
ドネペジル塩酸塩を服用中の中等度から高度アルツハイマー型認知症患者(MMSEスコア:1点以上14点以下)546例を対象にメマンチン塩酸塩20mg(5mg/日、10mg/日及び15mg/日をそれぞれ順に1週間投与後、20mg/日を21週間投与:計24週間投与)もしくはプラセボを24週間投与する無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施した11),12)。認知機能を評価するSIB-Jのスコア変化量の結果を表に示す。SIB-Jにおいて、主たる解析である最終評価時点のメマンチン塩酸塩20mg/日併用群のスコア変化量はプラセボ併用群を上回ったが、両群間に有意差は認められなかった(解析対象:527例、p=0.2437、0週時のSIB-Jスコア及びドネペジル塩酸塩の1日量を共変量とした共分散分析)。
0週からの変化量注9)
変化量の差注10)
最小二乗平均値[95%信頼区間]
メマンチン塩酸塩20mg/日併用群
261
-1.34[-2.33, -0.35]
0.81[-0.56, 2.19]
プラセボ併用群
266
-2.15[-3.13, -1.18]
※その他の解析として行ったWilcoxon順位和検定においても、両群間に有意差は認められなかった(p=0.0563)。
アルツハイマー型認知症ではグルタミン酸神経系の機能異常が関与しており、グルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体チャネルの過剰な活性化が原因の一つと考えられている。メマンチンはNMDA受容体チャネル阻害作用により、その機能異常を抑制する。
メマンチン塩酸塩(Memantine Hydrochloride)
3,5-Dimethyltricyclo[3.3.1.13,7]dec-1-ylamine monohydrochloride
C12H21N・HCl
215.76
白色の粉末である。ギ酸又はエタノール(99.5)に溶けやすく、水にやや溶けやすい。
0.11(pH1、1-オクタノール/緩衝液)0.32(pH7、1-オクタノール/緩衝液)1.49(pH12、1-オクタノール/緩衝液)
1) Freudenthaler S, et al.:Br J Clin Pharmacol. 1998;46(6):541-546
2) 社内資料:健康成人男性における単回経口投与時の薬物動態の検討(2011年1月21日承認、CTD2.7.6.4)
3) 社内資料:健康成人男性を対象としたフィルムコーティング錠及び口腔内崩壊錠の生物学的同等性試験
4) 社内資料:アルツハイマー型認知症患者における反復経口投与時の薬物動態の検討(2011年1月21日承認、CTD2.7.6.7)
5) 社内資料:ラットにおける14C-標識体を用いた乳汁中への移行(2011年1月21日承認、CTD2.6.4.6)
6) 社内資料:腎機能障害患者における薬物動態の検討(2011年1月21日承認、CTD2.7.6.8)
7) 社内資料:メマンチン塩酸塩とヒドロクロロチアジド・トリアムテレン配合剤との薬物動態学的相互作用の検討(2011年1月21日承認、CTD2.7.6.16)
8) 北村 伸ほか:老年精神医学雑誌 2011;22(4):453-463
9) 中村 祐ほか:老年精神医学雑誌 2011;22(4):464-473
10) Tariot PN, et al.:JAMA 2004;291(3):317-324
11) 中村 祐ほか:Geriat Med. 2016;54(11):1147-1158
12) 社内資料:メマンチン塩酸塩のドネペジル塩酸塩併用時における中等度及び高度アルツハイマー型認知症に対する製造販売後臨床試験
13) 社内資料:NMDA受容体チャネル親和性の検討(2011年1月21日承認、CTD2.6.2.2)
14) Parsons CG, et al.:Neuropharmacology 1993;32(12):1337-1350
15) Frankiewicz T, et al.:Br J Pharmacol. 1996;117(4):689-697
16) Nakamura S, et al.:Eur J Pharmacol. 2006;548(1-3):115-122
17) Zajaczkowski W, et al.:Neuropharmacology 1997;36(7):961-971
18) Misztal M, et al.:Behav Pharmacol. 1995;6:550-561
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