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ランマーク皮下注120mg

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
1.警告
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.2腎機能障害患者
9.4生殖能を有する者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
9.8高齢者
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
14.適用上の注意
15.その他の注意
15.1臨床使用に基づく情報
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.2吸収
16.3分布
16.4代謝
16.5排泄
16.6特定の背景を有する患者
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
17.3その他
18.薬効薬理
18.1作用機序
19.有効成分に関する理化学的知見
20.取扱い上の注意
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
26.製造販売業者等

ランマーク皮下注120mg

添付文書番号

3999435A1020_1_15

企業コード

430574

作成又は改訂年月

**2021年7月改訂(第2版)
2019年6月改訂(第1版)

日本標準商品分類番号

873999

薬効分類名

ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤

承認等

ランマーク皮下注120mg

販売名コード

YJコード

3999435A1020

販売名英語表記

RANMARK SUBCUTANEOUS INJECTION

承認番号等

承認番号

22400AMX00035

販売開始年月

2012年4月

貯法・有効期間

貯法

凍結を避け2~8℃で保存

有効期間

36箇月

規制区分

一般的名称

デノスマブ(遺伝子組換え)注

1. 警告

  • 〈効能共通〉
    1. 1.1 本剤の治療開始後数日から、重篤な低カルシウム血症があらわれることがあり、死亡に至った例が報告されている。本剤の投与に際しては、頻回に血液検査を行い、観察を十分に行うこと。本剤による重篤な低カルシウム血症の発現を軽減するため、血清補正カルシウム値が高値でない限り、カルシウム及びビタミンDの経口補充のもとに本剤を投与すること。
    2. 1.2 重度の腎機能障害患者では低カルシウム血症を起こすおそれが高いため、慎重に投与すること。
    3. 1.3 本剤投与後に低カルシウム血症が認められた場合には、カルシウム及びビタミンDの経口投与に加えて、緊急を要する場合には、カルシウムの点滴投与を併用するなど、適切な処置を速やかに行うこと。
  • 〈骨巨細胞腫〉
    1. 1.4 本剤の投与は、緊急時に十分対応できる医療施設において、骨巨細胞腫の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ行うこと。

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

  1. 2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  2. 2.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性

3. 組成・性状

3.1 組成

ランマーク皮下注120mg

有効成分1バイアル中
デノスマブ(遺伝子組換え)1)   120mg/1.7mL
添加剤1バイアル中
D-ソルビトール78.1mg、ポリソルベート20 0.17mg、氷酢酸、pH調節剤
1) 本剤は遺伝子組換え技術によりチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いて製造される。

3.2 製剤の性状

ランマーク皮下注120mg

pH5.0〜5.5
浸透圧比1.0〜1.2(生理食塩液対比)
性状無色〜淡黄色の澄明又は僅かに乳白光を呈する液2)
2) 蛋白質性の粒子を含むことがある。

4. 効能又は効果

  • 多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変
  • 骨巨細胞腫

5. 効能又は効果に関連する注意

  • 〈骨巨細胞腫〉
    1. 5.1 骨端線閉鎖を伴わない骨格が未成熟な患者に対する本剤の有効性及び安全性は確立していない。,,,
    2. 5.2 患者の年齢、体重等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。,

6. 用法及び用量

  • 〈多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変〉

    通常、成人にはデノスマブ(遺伝子組換え)として120mgを4週間に1回、皮下投与する。

  • 〈骨巨細胞腫〉

    通常、デノスマブ(遺伝子組換え)として120mgを第1日、第8日、第15日、第29日、その後は4週間に1回、皮下投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  1. 7.1 本剤によるグレード3又は4の副作用が発現した場合、グレード1以下に回復するまで休薬を考慮すること(グレードはCTCAEに準じる)。
  2. 7.2 本剤による重篤な低カルシウム血症の発現を軽減するため、血清補正カルシウム値が高値でない限り、毎日少なくともカルシウムとして500mg(骨巨細胞腫の場合は600mg)及び天然型ビタミンDとして400IUの投与を行うこと。ただし、腎機能障害患者では、ビタミンDの活性化が障害されているため、腎機能障害の程度に応じ、ビタミンDについては活性型ビタミンDを使用するとともに、カルシウムについては投与の必要性を判断し、投与量を適宜調整すること。,,,,,

8. 重要な基本的注意

  • 〈効能共通〉
    1. 8.1 本剤はプラリアと同一成分(デノスマブ)を含むため、本剤投与中の患者にはプラリアの投与を避けること。
    2. 8.2 低カルシウム血症があらわれることがあるので、本剤投与開始前に、血清カルシウム、リン等の血清電解質濃度を測定すること。血清補正カルシウム値を確認し、低カルシウム血症が認められた場合には、低カルシウム血症を是正した後に、本剤の投与を開始すること。,
    3. 8.3 治療開始後数日から、低カルシウム血症があらわれることがある。本剤投与後は、患者の状態に注意し、頻回に血清カルシウム、リン等の血清電解質濃度を測定すること。
    4. 8.4 顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることがあり、本剤の長期投与により顎骨壊死の発現率の増加が認められている。報告された症例の多くが抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置や局所感染に関連して発現している。リスク因子としては、悪性腫瘍、化学療法、血管新生阻害薬、コルチコステロイド治療、放射線療法、口腔の不衛生、歯科処置の既往等が知られている。本剤の投与開始前は口腔内の管理状態を確認し、必要に応じて、患者に対し適切な歯科検査を受け、侵襲的な歯科処置をできる限り済ませておくよう指導すること。本剤投与中に歯科処置が必要になった場合には、できる限り非侵襲的な歯科処置を受けるよう指導すること。また、口腔内を清潔に保つこと、定期的な歯科検査を受けること、歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知して侵襲的な歯科処置はできる限り避けることなどを患者に十分説明し、異常が認められた場合には、直ちに歯科・口腔外科を受診するように指導すること。
    5. 8.5 **本剤又はビスホスホネート系薬剤を長期使用している患者において、非外傷性又は軽微な外力による大腿骨転子下、近位大腿骨骨幹部、近位尺骨骨幹部等の非定型骨折が発現したとの報告がある。これらの報告では、完全骨折が起こる数週間から数ヵ月前に大腿部、鼠径部、前腕部等において前駆痛が認められている報告もあることから、本剤の投与開始後にこのような症状が認められた場合には、X線検査等を行い、適切な処置を行うこと。また、両側性の骨折が生じる可能性があることから、片側で非定型骨折が起きた場合には、反対側の部位の症状等を確認し、X線検査を行うなど、慎重に観察すること。X線検査時には骨皮質の肥厚等、特徴的な画像所見がみられており、そのような場合には適切な処置を行うこと。
  • 〈多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変〉
    1. 8.6 本剤の投与は、がん治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ行うこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 低カルシウム血症の患者又は低カルシウム血症を起こすおそれのある患者

    低カルシウム血症が発現又は増悪するおそれがある。

  2. 9.1.2 肺転移を有する骨巨細胞腫患者

    気胸が発現するおそれがある。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1 重度の腎機能障害のある患者

    低カルシウム血症を起こすおそれがある。本剤の第Ⅲ相臨床試験では、クレアチニンクリアランス値が30mL/min未満の重度腎疾患患者及び透析の必要な末期腎不全患者は対象から除外されている。,

9.4 生殖能を有する者

妊娠可能な女性に対しては、本剤投与中及び最終投与後一定期間は適切な避妊法を用いるよう指導すること。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。
動物実験では、サルに妊娠20日から分娩時まで本剤(50mg/kg/4週)を皮下投与した結果、死産の増加、出生児の分娩後死亡の増加、骨・歯の異常、末梢リンパ節の欠損が認められた。,

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有用性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
本剤のヒト乳汁中への移行は不明であるが、ヒトIgGは乳汁中に移行することが報告されている。

9.7 小児等

  1. 9.7.1 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
    本剤を投与した若齢サルにおいて、骨端成長板の異常が認められた。RANKL3)を阻害すると、ラット新生児の骨成長及び歯の萌出が抑制されることが示されている。

    3) RANKL:receptor activator for nuclear factor-κB ligand

  2. 9.7.2 骨端線閉鎖を伴わない骨格が未成熟な患者において、本剤治療中止後(数週間から数ヵ月後)に、急性腎障害、悪心・嘔吐等の臨床症状を伴う重篤な高カルシウム血症が発現した例が報告されている。

9.8 高齢者

一般に、生理機能が低下していることが多い。

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副作用

  • 〈効能共通〉
    1. 11.1.1 低カルシウム血症(5.6%)

      QT延長、痙攣、テタニー、しびれ、失見当識等の症状を伴う低カルシウム血症があらわれることがあり、死亡に至った例が報告されている。低カルシウム血症が認められた場合には、カルシウム及びビタミンDの経口投与に加えて、緊急を要する場合には、カルシウムの点滴投与を併用するなど、適切な処置を速やかに行うこと。,,

    2. 11.1.2 顎骨壊死・顎骨骨髄炎(1.8%)

    3. 11.1.3 アナフィラキシー(頻度不明)
    4. 11.1.4 **大腿骨転子下、近位大腿骨骨幹部、近位尺骨骨幹部等の非定型骨折(頻度不明)

    5. 11.1.5 治療中止後の多発性椎体骨折(頻度不明)
    6. 11.1.6 重篤な皮膚感染症(0.1%)

      重篤な蜂巣炎等の皮膚感染症があらわれることがあるので、発赤、腫脹、疼痛、発熱等の症状が認められた場合には、適切な処置を行うこと。

  • 〈骨巨細胞腫〉
    1. 11.1.7 治療中止後の高カルシウム血症(頻度不明)

11.2 その他の副作用

1%以上

1%未満

頻度不明

血液

貧血

白血球減少、血小板減少

*皮膚

発疹、そう痒症、皮膚乾燥、脱毛症、多汗症、湿疹

扁平苔癬

代謝

低リン酸血症

高カルシウム血症、低マグネシウム血症

精神神経系

頭痛

めまい、不眠症、錯感覚、味覚異常、感覚鈍麻、嗜眠、末梢性感覚ニューロパチー、錯乱

循環器

高血圧、動悸、心不全、不整脈

呼吸器

呼吸困難、咳嗽、口腔咽頭痛、気胸

消化器

悪心、下痢、食欲減退、嘔吐、便秘、歯の障害(歯痛、歯膿瘍等)

腹痛、歯肉障害(歯肉痛、歯肉炎等)、消化不良、口内乾燥、鼓腸、口内炎

筋骨格系

関節痛、筋肉痛、骨痛、背部痛、顎痛、四肢痛

筋骨格痛、筋痙縮、頸部痛、脊椎痛

肝臓

ALT上昇、AST上昇、ALP上昇

腎臓

血中クレアチニン増加

腎機能障害

その他

疲労、無力症、発熱、注射部位反応(疼痛、そう痒感、血腫等)

インフルエンザ様疾患、疼痛、末梢性浮腫、体重減少、胸痛、ほてり、悪寒、上気道感染、倦怠感、尿路感染、視力障害、粘膜の炎症、体重増加、骨髄炎、流涙増加、白内障、薬物過敏症

14. 適用上の注意

14.1 薬剤投与前の注意

冷蔵保存(2~8℃)下から室温に戻した後、使用すること。

14.2 薬剤投与時の注意

  1. 14.2.1 皮下注射は、上腕、大腿又は腹部に行うこと。
  2. 14.2.2 投与の際には、27ゲージの注射針の使用が推奨される。
  3. 14.2.3 注射針が血管内に刺入していないことを確認すること。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報

臨床試験において、3,508例中15例(0.4%)で本剤に対する結合抗体が認められたが、中和抗体の産生は認められなかった。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回投与
    1. (1) 日本人乳癌骨転移患者に本剤60mg及び180mg7)を単回皮下投与したときの血清中デノスマブ濃度推移を図に、薬物動態パラメータを表に示す。血清中デノスマブのCmax及びAUCは、60〜180mgの用量範囲でほぼ用量に比例して増加した1)
      単回皮下投与時の血清中濃度推移
      血清中デノスマブの薬物動態パラメータ

      投与量
      (mg)

      n

      Cmax
      (ng/mL)

      Tmax4)
      (日)

      AUC0-t
      (μg・日/mL)

      t1/2,β
      (日)

      60

      6

      7,730±3,130

      8(7〜28)

      351±144

      24.7±2.445)

      180

      6

      31,100±14,900

      10(4〜28)

      1,320±640

      29.1±7.155)

      mean±SD

      4) 中央値(最小値〜最大値)

    2. (2) 健康な日本人閉経後女性に本剤0.03、0.1、0.3、1.0及び3.0mg/kg7)を単回皮下投与したとき、デノスマブは0.03〜3.0mg/kgの用量範囲で非線形の薬物動態を示したが、1.0及び3.0mg/kgではCmax及びAUCはほぼ用量に比例して増加した2)
      血清中デノスマブの薬物動態パラメータ

      投与量
      (mg/kg)

      n

      Cmax
      (ng/mL)

      Tmax6)
      (日)

      AUC0-t
      (μg・日/mL)

      0.03

      6

      99.6±25.8

      7.00(7〜10)

      2.06±0.53

      0.1

      6

      492±166

      12.0(7〜21)

      15.2±6.7

      0.3

      6

      1,910±658

      14.0(7〜21)

      84.3±20.1

      1.0

      6

      8,690±2,170

      14.0(10〜21)

      481±131

      3.0

      6

      27,400±7,880

      14.0(14〜42)

      1,790±650

      mean±SD

      6) 中央値(最小値〜最大値)

    7) 本剤の承認された用量は、120mgである。

  2. 16.1.2 反復投与
    1. (1) 日本人乳癌骨転移患者に本剤120mgを4週間に1回皮下投与したとき、血清中デノスマブ濃度トラフ値は投与6ヵ月後までに定常状態に達し(6ヵ月時点の平均値:約24,200ng/mL)、定常状態において約2倍の累積を示した3)
      4週間に1回皮下投与時の血清中濃度トラフ値の推移
    2. (2) 日本人骨巨細胞腫患者に本剤120mgを第1日、第8日、第15日、第29日、その後は4週間に1回、皮下投与したとき、血清中デノスマブ濃度トラフ値は投与1ヵ月後までに定常状態に達した(1ヵ月時点の平均値:約29,600ng/mL、6ヵ月時点の平均値:約26,700ng/mL)4)
      第1日、第8日、第15日、第29日、その後は4週間に1回皮下投与時の血清中濃度トラフ値の推移

16.2 吸収

健康な成人、低骨密度又は骨粗鬆症の閉経後女性及びがん患者に本剤を皮下投与したときの絶対バイオアベイラビリティは約62%であった5)(日本人及び外国人データ)8)

8) 母集団薬物動態解析による推定値

16.3 分布

サルに125I標識した本剤1mg/kgを単回皮下投与したとき、組織中の放射活性は、投与部位と腋窩リンパ節を除き、血清中より低かった。血清に次いで鼠径リンパ節、脾臓、卵巣及び肺に高い放射活性が認められた6)。分布に関する明らかな性差は認められなかった7)

16.4 代謝

本剤はヒトIgG2サブクラスに属するモノクローナル抗体であることから、他の免疫グロブリンと同様に生体内での異化により消失すると推察される6)

16.5 排泄

サルに125I標識した本剤1mg/kgを単回皮下投与したとき、投与された放射能は投与後56日までに77.9%が尿中に排泄された6)

16.6 特定の背景を有する患者

  1. 16.6.1 腎機能障害患者
    1. (1) 腎機能正常者12例及び腎機能障害患者43例(軽度腎疾患13例、中等度腎疾患13例、重度腎疾患9例、透析の必要な末期腎不全患者8例)に本剤60mg9)を単回皮下投与したとき、血清中デノスマブのCmax及びAUCに、腎機能障害の程度による明らかな差異は認められなかった8)(外国人データ)。

      9) 本剤の承認された用量は、120mgである。

    2. (2) 重度腎疾患患者及び透析の必要な末期腎不全患者それぞれ16例に本剤120mgを第1日、第29日に皮下投与したとき、両群間で血清中デノスマブのCmax及びAUCに、明らかな差異は認められなかった9)(外国人データ)。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  • 〈多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変〉
    1. 17.1.1 国際共同第Ⅲ相試験

      骨転移を有する進行乳癌患者対象試験(日本が参加した国際共同試験)10)において、主要評価項目であるSRE(骨関連事象:病的骨折、骨への放射線治療、骨に対する外科的処置又は脊髄圧迫)の初回発現までの期間についてゾレドロン酸に対する本剤の非劣性の検証を主目的として検討した結果は次表のとおりであり、非劣性が検証された。このうち、国内症例は136例(デノスマブ群69例、ゾレドロン酸群67例)であった。なお、全ての患者に対して、治験期間中に高カルシウム血症が認められない限り、毎日少なくとも500mgのカルシウム及び400IUの天然型ビタミンDの補充が強く推奨された。

      骨転移を有する進行乳癌患者における本剤の有効性

      初回SREの発現

      初回SRE発現までの期間

      n/N(%)

      中央値(日)

      ハザード比
      (95%信頼区間)

      p値

      非劣性検定

      優越性検定12)

      デノスマブ群10)

      315/1,026(30.7)

      NE

      0.82
      (0.71, 0.95)

      <0.0001

      0.0101

      ゾレドロン酸群11)

      372/1,020(36.5)

      806

      10) デノスマブ120mgを4週間に1回皮下投与

      11) ゾレドロン酸4mgを4週間に1回静脈内投与

      12) 非劣性検証後に階層手順で実施した副次目的の優越性検定、「初回SRE発現までの期間」と「初回及び初回以降のSRE発現までの期間」の優越性検定における多重性調整済み

      n:発現例数、N:解析対象例数、NE:推定できず

      副作用発現頻度は、デノスマブ群で32.3%(329/1,020例)であった。主な副作用は、関節痛4.3%、疲労3.7%、低カルシウム血症2.9%、悪心2.7%、下痢2.2%であった。
      低カルシウム血症の有害事象の発現頻度は、デノスマブ群で5.6%(57/1,020例)、ゾレドロン酸群で3.5%(35/1,013例)であり、うち重篤な低カルシウム血症の発現頻度は、デノスマブ群で0.5%(5/1,020例)、ゾレドロン酸群で0.2%(2/1,013例)であった。

    2. 17.1.2 海外第Ⅲ相試験

      骨転移を有するホルモン不応性(去勢抵抗性)前立腺癌患者対象試験11)において、主要評価項目であるSREの初回発現までの期間についてゾレドロン酸に対する本剤の非劣性の検証を主目的として検討した結果は次表のとおりであり、非劣性が検証された。なお、全ての患者に対して、治験期間中に高カルシウム血症が認められない限り、毎日少なくとも500mgのカルシウム及び400IUの天然型ビタミンDの補充が強く推奨された。

      骨転移を有するホルモン不応性(去勢抵抗性)前立腺癌患者における本剤の有効性

      初回SREの発現

      初回SRE発現までの期間

      n/N(%)

      中央値(日)

      ハザード比
      (95%信頼区間)

      p値

      非劣性検定

      優越性検定15)

      デノスマブ群13)

      341/950(35.9)

      629

      0.82
      (0.71, 0.95)

      0.0002

      0.0085

      ゾレドロン酸群14)

      386/951(40.6)

      521

      13) デノスマブ120mgを4週間に1回皮下投与

      14) ゾレドロン酸4mgを4週間に1回静脈内投与

      15) 非劣性検証後に階層手順で実施した副次目的の優越性検定、「初回SRE発現までの期間」と「初回及び初回以降のSRE発現までの期間」の優越性検定における多重性調整済み

      n:発現例数、N:解析対象例数

      副作用発現頻度は、デノスマブ群32.0%(302/943例)であった。主な副作用は、低カルシウム血症7.3%、悪心3.2%、疲労3.1%、食欲減退2.9%、無力症2.2%であった。
      低カルシウム血症の有害事象の発現頻度は、デノスマブ群で12.8%(121/943例)、ゾレドロン酸群で5.8%(55/945例)であり、うち重篤な低カルシウム血症の発現頻度は、デノスマブ群で2.5%(24/943例)、ゾレドロン酸群で0.7%(7/945例)であった。

    3. 17.1.3 海外第Ⅲ相試験

      多発性骨髄腫又は骨転移を有する進行固形癌(乳癌及び前立腺癌を除く)患者対象試験12)において、主要評価項目であるSREの初回発現までの期間についてゾレドロン酸に対する本剤の非劣性の検証を主目的として検討した結果は次表のとおりであり、非劣性が検証された。なお、全ての患者に対して、治験期間中に高カルシウム血症が認められない限り、毎日少なくとも500mgのカルシウム及び400IUの天然型ビタミンDの補充が強く推奨された。

      多発性骨髄腫又は骨転移を有する進行固形癌(乳癌及び前立腺癌を除く)患者における本剤の有効性

      初回SREの発現

      初回SRE発現までの期間

      n/N(%)

      中央値(日)

      ハザード比
      (95%信頼区間)

      p値

      非劣性検定

      優越性検定18)

      デノスマブ群16)

      278/886(31.4)

      625

      0.84
      (0.71, 0.98)

      0.0007

      0.0619

      ゾレドロン酸群17)

      323/890(36.3)

      496

      16) デノスマブ120mgを4週間に1回皮下投与

      17) ゾレドロン酸4mgを4週間に1回静脈内投与

      18) 非劣性検証後に階層手順で実施した副次目的の優越性検定、「初回SRE発現までの期間」と「初回及び初回以降のSRE発現までの期間」の優越性検定における多重性調整済み

      n:発現例数、N:解析対象例数

      副作用発現頻度は、デノスマブ群22.3%(196/878例)であった。主な副作用は、低カルシウム血症7.2%、悪心1.9%、発熱0.9%であった。
      低カルシウム血症の有害事象の発現頻度は、デノスマブ群で10.8%(95/878例)、ゾレドロン酸群で5.8%(51/878例)であり、うち重篤な低カルシウム血症の発現頻度は、デノスマブ群で1.4%(12/878例)、ゾレドロン酸群で0.9%(8/878例)であった。

  • 〈骨巨細胞腫〉
    1. 17.1.4 国内第Ⅱ相試験

      骨巨細胞腫患者を対象とした国内第Ⅱ相試験13)(デノスマブ120mgの皮下投与を、第1日、第8日、第15日、第29日、その後は4週間に1回、皮下投与)において認められた客観的奏効率(完全奏効又は部分奏効が認められた被験者の割合)は次表のとおりであった。なお、骨格が成熟した12歳以上かつ体重45kg以上の未成年の患者[放射線撮影で1つ以上の成熟した(閉鎖した骨端成長板を持つ)長骨が確認されている]が含まれていた。また、全ての患者に対して、治験期間中に高カルシウム血症が認められない限り、毎日少なくとも600mgのカルシウム及び400IUの天然型ビタミンDが補充された。,,

      骨巨細胞腫患者における本剤の有効性(国内臨床試験19)

      客観的奏効率20)(完全奏効又は部分奏効が認められた被験者の割合)

      n/N

      %(95%信頼区間)

      いずれかの評価基準による最良効果

      15/17

      88.2(63.6, 98.5)

      • modified RECIST基準

      6/17

      35.3(14.2, 61.7)

      • modified EORTC基準

      14/17

      82.4(56.6, 96.2)

      • density/size基準

      12/17

      70.6(44.0, 89.7)

      19) 切除不能又は重度の後遺症が残る手術が予定されている骨巨細胞腫患者対象試験

      20) 客観的奏効率は以下の基準を用いて評価した。

      ・modified RECIST基準:CT/MRIをもとに腫瘍組織量を評価
      ・modified EORTC基準:FDG-PETを用い代謝活性を評価
      ・density/size基準:CT/MRIをもとに腫瘍サイズとHounsfield単位による密度を評価

      n:客観的奏効が認められた例数、N:解析対象例数

      副作用発現頻度は70.6%(12/17例)であった。主な副作用は、注射部位反応23.5%、発熱17.6%、倦怠感11.8%、歯周炎11.8%であった。
      低カルシウム血症の有害事象の発現頻度は5.9%(1/17例)であり、重篤な低カルシウム血症は認められなかった。

    2. 17.1.5 海外第Ⅱ相試験

      骨巨細胞腫患者を対象とした2つの海外第Ⅱ相試験14)(いずれもデノスマブ120mgの皮下投与を、第1日、第8日、第15日、第29日、その後は4週間に1回、皮下投与)において認められた客観的奏効率(完全奏効又は部分奏効が認められた被験者の割合)は次表のとおりであった。なお、骨格が成熟した12歳以上かつ体重45kg以上の未成年の患者[放射線撮影で1つ以上の成熟した(閉鎖した骨端成長板を持つ)長骨が確認されている]が含まれていた。また、全ての患者に対して、治験期間中に高カルシウム血症が認められない限り、毎日少なくとも500mgのカルシウム及び400IUの天然型ビタミンDの補充が強く推奨された。,,

      骨巨細胞腫患者における本剤の有効性(2つの外国臨床試験21)合計)

      客観的奏効率22)(完全奏効又は部分奏効が認められた被験者の割合)

      n/N

      %(95%信頼区間)

      いずれかの評価基準による最良効果

      136/190

      71.6(64.6, 77.9)

      • modified RECIST基準

      47/187

      25.1(19.1, 32.0)

      • modified EORTC基準

      25/26

      96.2(80.4, 99.9)

      • density/size基準

      134/176

      76.1(69.1, 82.2)

      21) 切除不能又は再発骨巨細胞腫患者対象試験及び切除不能又は重度の後遺症が残る手術が予定されている骨巨細胞腫患者対象試験

      22) 客観的奏効率は以下の基準を用いて評価した。

      ・modified RECIST基準:CT/MRIをもとに腫瘍組織量を評価
      ・modified EORTC基準:FDG-PETを用い代謝活性を評価
      ・density/size基準:CT/MRIをもとに腫瘍サイズとHounsfield単位による密度を評価

      n:客観的奏効が認められた例数、N:解析対象例数

      副作用発現頻度は49.0%(149/304例)であった。主な副作用は、疲労9.9%、頭痛9.9%、悪心7.6%、低リン酸血症4.6%等であった。
      低カルシウム血症の有害事象の発現頻度は4.9%(15/304例)であり、重篤な低カルシウム血症は認められなかった。

17.3 その他

  1. 17.3.1 腎機能の程度が異なる被験者を対象とした試験
    1. (1) 腎機能正常者12例及び腎機能障害患者43例(軽度腎疾患13例、中等度腎疾患13例、重度腎疾患9例、透析の必要な末期腎不全患者8例)に本剤60mg23)を単回皮下投与した試験において、クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の重度腎疾患患者及び透析の必要な末期腎不全患者の低カルシウム血症の有害事象としての発現頻度は29.4%(5/17例)であり、軽度及び中等度腎疾患患者並びに腎機能正常者13.2%(5/38例)と比較して、発現頻度が高かった15)(外国人データ)。,

      23) 本剤の承認された用量は、120mgである。

    2. (2) クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の重度腎疾患患者及び透析の必要な末期腎不全患者それぞれ16例に本剤120mgを第1日、第29日に皮下投与した試験において、低カルシウム血症の有害事象としての発現頻度は、重度腎疾患患者で18.8%(3/16例)、透析の必要な末期腎不全患者で62.5%(10/16例)であった。また、血清補正カルシウム値7.0mg/dL未満(1.75mmol/L未満)又は症候性の低カルシウム血症の発現頻度は、重度腎疾患患者で6.3%(1/16例)、透析の必要な末期腎不全患者で12.5%(2/16例)であった9)(外国人データ)。,

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

デノスマブは特異的かつ高い親和性でヒトRANKLに結合するヒト型IgG2モノクローナル抗体である。
RANKLは膜結合型あるいは可溶型として存在し、骨吸収を司る破骨細胞及びその前駆細胞の表面に発現する受容体であるRANK24)を介して破骨細胞の形成、機能及び生存を調節する必須の蛋白質である16)
多発性骨髄腫及び骨転移を有する固形癌の骨病変においては、RANKLによって活性化された破骨細胞が骨破壊の主要な因子である17)。デノスマブはRANK/RANKL経路を阻害し、破骨細胞の活性化を抑制することで骨吸収を抑制し18),19),20)、がんによる骨病変の進展を抑制すると考えられる。
骨巨細胞腫においては、腫瘍中の間質細胞にRANKLが、破骨細胞様巨細胞にRANKが発現している21)。デノスマブはRANKLに結合し、破骨細胞様巨細胞による骨破壊を抑制し、骨巨細胞腫の進行を抑制すると考えられる22)

24) RANK:receptor activator for nuclear factor-κB

18.2 骨吸収抑制

カニクイザルにデノスマブを単回皮下投与すると、骨吸収マーカーである尿中Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチドが低下した。また、月1回の反復皮下投与により、投与期間中、尿中Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチドの低下が持続した23)

18.3 骨病変の進展抑制

デノスマブはマウスのRANKLに結合しないため、マウス骨転移モデルではマウスのRANKLに結合して阻害するOPG-Fc25)をデノスマブの代替18),19)として使用した。乳癌24),25),26)(溶骨性又は溶骨性と造骨性の混合型)、前立腺癌27)及び非小細胞肺癌28)(いずれも溶骨性)のマウス骨転移モデルにOPG-Fcを投与したところ、がんによる骨病変の進展が抑制された。

25) OPG-Fc:免疫グロブリン結晶化フラグメントに結合させたオステオプロテゲリン

19. 有効成分に関する理化学的知見

一般的名称

デノスマブ(遺伝子組換え)
Denosumab(Genetical Recombination)

分子量

約150,000

本質

遺伝子組換え抗NF-κB活性化受容体リガンド(抗RANKL)ヒトIgG2モノクローナル抗体であり、その軽鎖及び重鎖をコードするcDNAを導入したCHO細胞により産生される。448個のアミノ酸残基からなる重鎖(γ2鎖)2分子及び215個のアミノ酸残基からなる軽鎖(κ鎖)2分子で構成される糖蛋白質である。

20. 取扱い上の注意

外箱開封後は遮光して保存すること。

22. 包装

1.7mL 1バイアル

23. 主要文献

1) Yonemori K, et al.:Cancer Sci. 2008;99(6):1237-1242

2) Kumagai Y, et al.:Bone. 2011;49(5):1101-1107

3) 社内資料:骨転移を有する乳癌患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験における日本人被験者の薬物動態(2012年1月18日承認、CTD2.7.2.2)

4) 社内資料:骨巨細胞腫患者を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験における薬物動態(2014年5月23日承認、CTD2.7.6.4)

5) 社内資料:健康被験者、低骨密度又は骨粗鬆症の閉経後女性及びがん患者におけるデノスマブの母集団薬物動態解析(2012年1月18日承認、CTD2.7.2.3)

6) 社内資料:125I標識デノスマブを単回皮下投与したカニクイザルにおける分布及び排泄(2012年1月18日承認、CTD2.6.4)

7) 社内資料:125I標識デノスマブを単回皮下投与したカニクイザルにおけるQWBA試験(2012年1月18日承認、CTD2.6.4.4)

8) Block GA, et al.:J Bone Miner Res. 2012;27(7):1471-1479

9) 社内資料:重度腎疾患患者及び透析の必要な末期腎不全患者を対象とした第Ⅰ相臨床試験結果(2014年5月23日承認、CTD2.7.4.5)

10) Stopeck AT, et al.:J Clin Oncol. 2010;28(35):5132-5139

11) Fizazi K, et al.:Lancet. 2011;377(9768):813-822

12) Henry DH, et al.:J Clin Oncol. 2011;29(9):1125-1132

13) Ueda T, et al.:Ann Oncol. 2015;26(10):2149-2154

14) 社内資料:骨巨細胞腫患者を対象とした外国第Ⅱ相臨床試験における客観的奏効率(2014年5月23日承認、CTD2.7.3.3)

15) 社内資料:腎機能の程度が異なる被験者を対象とした薬物動態試験における低カルシウム血症の発現状況(2012年1月18日承認、CTD2.7.6.10)

16) Lacey DL, et al.:Cell. 1998;93(2):165-176

17) Roodman GD, et al.:Cancer Treat Rev. 2008;34(1):92-101

18) 社内資料:デノスマブのRANKLに対する結合試験(2012年1月18日承認、CTD2.6.2.2)

19) Kostenuik PJ, et al.:J Bone Miner Res. 2009;24(2):182-195

20) 社内資料:デノスマブの骨吸収抑制作用(2012年1月18日承認、CTD2.6.2.2)

21) Roux S, et al.:Am J Clin Pathol. 2002;117(2):210-216

22) Branstetter DG, et al.:Clin Cancer Res. 2012;18(16):4415-4424

23) 社内資料:カニクイザルにおけるデノスマブ投与試験(2012年1月18日承認、CTD2.6.2.2)

24) 社内資料:乳癌のマウス骨転移モデルにおけるOPG-Fcの効果(2012年1月18日承認、CTD2.6.2.2)

25) Morony S, et al.:Cancer Res. 2001;61(11):4432-4436

26) Canon JR, et al.:Clin Exp Metastasis. 2008;25(2):119-129

27) 社内資料:前立腺癌のマウス骨転移モデルにおけるOPG-Fcの効果(2012年1月18日承認、CTD2.6.2.2)

28) 社内資料:肺癌のマウス骨転移モデルにおけるOPG-Fcの効果(2012年1月18日承認、CTD2.6.2.2)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

第一三共株式会社 製品情報センター

〒103-8426 東京都中央区日本橋本町3-5-1

TEL:0120-065-132(がん・医療用麻薬専用)

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元

第一三共株式会社

東京都中央区日本橋本町3-5-1

26.2 提携

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