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日本薬局方
ピルシカイニド塩酸塩カプセル
劇薬
処方箋医薬品注)
頻脈性不整脈
通常、成人にはピルシカイニド塩酸塩水和物として、1日150mgを3回に分けて経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、重症又は効果不十分な場合には、1日225mgまで増量できる。
心不全を来すおそれのある患者では、少量から開始するなど投与量に十分注意するとともに、頻回に心電図検査を実施すること。また、開始後1~2週間は入院させること。心室頻拍、心室細動等が発現するおそれが高い。なお、心筋梗塞発症後の無症候性あるいは軽度の症状を伴う患者の場合は、治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。
心不全を来すおそれがある。
刺激伝導抑制作用により、これらの障害を更に悪化させるおそれがある。
高度の徐脈、洞停止を来すおそれがある。
催不整脈作用が発現するおそれがある。
少量から開始するなど投与量に十分注意するとともに、頻回に心電図検査を実施すること。
ペースメーカー使用中の患者に投与する場合は適当な間隔でペーシング閾値を測定すること。また、異常が認められた場合には直ちに減量又は投与を中止すること。本剤は心臓ペーシング閾値を上昇させる可能性がある。
投与量を減量するか、投与間隔をあけて使用すること。また、頻回に心電図検査を実施すること。本剤は腎臓からの排泄により体内から消失する薬剤であり、血中濃度が高くなりやすく、また高い血中濃度が持続しやすい。
,
AST、ALT、LDH等の上昇が報告されている。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で静脈内投与した場合、胎児に移行することが報告されている。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
入院させて本剤の投与を開始することが望ましい。少量から開始するなど投与量に十分注意するとともに、頻回に心電図検査を実施すること。肝・腎機能が低下していることが多く、また体重が少ない傾向があるなど副作用が発現しやすい。
リファンピシン
本剤の作用を減弱させることがある。
リファンピシンによりチトクロームP450の産生が誘導され、本剤の代謝速度が促進し、血中濃度が低下する可能性が考えられている。
カルシウム拮抗薬
β-受容体遮断薬
ジギタリス製剤
硝酸・亜硝酸エステル系薬剤
動物実験(イヌ)において、本剤の作用が増強される可能性が報告されている。
機序は明らかではないが、作用増強の可能性が考えられている。
セチリジン
両剤の血中濃度が上昇し、本剤の副作用が発現したとの報告がある。
腎でのトランスポーターを介した排泄が競合するためと考えられている。
ショック、心停止に至る場合もあるので、頻回な心電図検査、胸部X線検査等を実施すること。
ショック等による急性腎障害があらわれることがある。
AST、ALT、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害があらわれることがある。
0.1~5%未満
頻度不明
循環器
QRS幅の増大、QT延長、房室ブロック、洞房ブロック、胸部不快感、動悸、心室性期外収縮、上室性期外収縮、心房細動、上室性頻拍
胸痛、徐脈、心房粗動、血圧低下
消化器
胃痛、悪心、嘔吐、口渇、下痢、腹部不快感
便秘、食欲不振
精神神経系
めまい、頭痛、眠気
振戦、不眠、しびれ
血液
好酸球増加、リンパ球減少
白血球数減少、血小板数減少
肝臓
AST上昇、ALT上昇、LDH上昇
過敏症
発疹、蕁麻疹
そう痒感
腎臓
BUN上昇、クレアチニン上昇、尿蛋白陽性
泌尿器
排尿困難
その他
全身倦怠感、CK上昇、脱力感
熱感
過量投与又は高度の腎機能障害により、本剤の血中濃度が上昇した場合、刺激伝導障害(著明なQRS幅の増大等)、心停止、心不全、心室細動、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、洞停止、徐脈、ショック、失神、血圧低下等の循環器障害、構語障害等の精神・神経障害を引き起こすことがある。
直ちに本剤の投与を中止し、体外ペーシングや直流除細動を考慮する等適切な対症療法を行うこと。なお、本剤の血液透析による除去率は最大約30%と報告されている。
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
外国で心筋梗塞発症後の無症候性あるいは軽度の症状を伴う心室性期外収縮の患者を対象とした比較試験において、本剤と類似のNaチャンネル阻害作用を有する薬剤を投与した群で、プラセボ投与群に比べ、死亡率が有意に増加したとの報告がある1)。
健康成人男性18例にピルシカイニド塩酸塩水和物25mg、50mg及び100mg注1)を空腹時単回経口投与したとき、消化管からの吸収は良好であり、血漿中濃度の推移は次のとおりであった2)。
投与量(mg)
例数
Tmax(hr)
Cmax(μg/mL)
t1/2(hr)
AUC(μg・hr/mL)
25
2
1.61±0.01
0.150±0.002
4.4±0.39
1.278±0.080
50
8
1.22±0.18
0.356±0.027
4.8±0.34
2.975±0.112
100
1.06±0.18
0.650±0.029
4.9±0.37
5.238±0.307
(平均±SE)
なお、本剤の有効血漿中濃度は0.2~0.9μg/mLと報告されている3),4)。
ラットに14C-ピルシカイニド塩酸塩水和物を経口投与したとき、主に十二指腸から吸収され、主として肝臓、腎臓に分布し、脳への分布は少なかった5)。また、ラットに14C-ピルシカイニド塩酸塩水和物を静脈内投与したとき、胎児及び乳汁中には母体の血漿中濃度とほぼ同程度かあるいはそれ以上の移行が認められた6)。
ヒト血漿蛋白結合率は、1.0μg/mL以下の濃度で約35%と一定であったが、50μg/mLでは約20%に低下した7)(in vitro)。
健康成人ではピルシカイニド塩酸塩水和物は代謝されにくい。代謝物2-ヒドロキシメチル体の生成に関与するヒト肝チトクロームP450分子種を検討したところ、CYP2D6により上記代謝物の生成が僅かに認められた8)。
健康成人男性18例にピルシカイニド塩酸塩水和物25mg、50mg及び100mg注1)を空腹時単回経口投与したとき、24時間以内に75~86%が未変化体として尿中に排泄された。また50mg、100mg投与群においては、24時間以内に4.5~6.5%が代謝物2-ヒドロキシメチル体として尿中に排泄された2)。
ピルシカイニド塩酸塩水和物は腎排泄型の薬剤であり、次のように腎機能障害患者、腎機能が低下している高齢者では半減期が延長する。したがって内因性クレアチニンクリアランス(CLcr)を指標とした障害の程度に応じて、投与間隔をあけるかあるいは症例によって投与量を減じるなど、用法及び用量に十分注意する必要がある9)。
腎機能CLcr(mL/min)
Vd(L/kg)
CLtot(mL/min)
CLcr≧80
6
3.1±0.6
0.41±0.08
3.4±0.2
1.48±0.19
280.0±37.5
80>CLcr≧50
10
2.7±0.8
0.46±0.03
5.7±0.3
1.46±0.11
182.8±11.8
50>CLcr≧20
3.1±0.8
0.51±0.05
9.3±1.1
1.70±0.15
123.4±19.3
20>CLcr
3.8±0.7
0.63±0.05
23.7±2.0
38.8±4.6
心室性期外収縮、発作性心室頻拍、上室性期外収縮、発作性上室性頻拍、発作性心房細動・粗動を対象とした臨床試験の概要は次表のとおりである。
疾患名
対象症例
全般改善度
著明改善
中等度改善以上
心室性期外収縮
418
194(46.4%)
295(70.6%)
発作性心室頻拍
19
17(89.5%)
18(94.7%)
上室性期外収縮
151
66(43.7%)
95(62.9%)
発作性上室性頻拍
26(52.0%)
40(80.0%)
発作性心房細動・粗動
66
35(53.0%)
54(81.8%)
臨床試験のうち、心室性期外収縮、上室性期外収縮を対象とした二重盲検比較試験において、本剤の有用性が確認された。
心室性期外収縮を対象とした二重盲検比較試験において、本剤150mg投与群88例、ジソピラミド300mg投与群87例での全般改善度は、それぞれ著名改善が51.4%(37/72例)、33.8%(26/77例)、中等度改善以上が70.8%(51/72例)、54.5%(42/77例)であった。副作用発現率は本剤投与群で8.1%(7/86例)であり、主なものは口渇、めまい等であった10)。
上室性期外収縮を対象とした二重盲検比較試験において、本剤150mg投与群41例、ジソピラミド300mg投与群39例での全般改善度は、それぞれ著名改善が41.9%(13/31例)、26.7%(8/30例)、中等度改善以上が67.7%(21/31例)、46.7%(14/30例)であった。副作用発現率は本剤投与群で5.1%(2/39例)で、頭のふらつき感、胸部不快感であった11)。
上室性期外収縮を対象とした二重盲検比較試験において、本剤150mg/日群37例、225mg/日群35例での全般改善度は、それぞれ著明改善が53.3%(16/30例)、59.3%(16/27例)、中等度改善以上が66.7%(20/30例)、74.1%(20/27例)であった。副作用発現率は150mg/日群5.6%(2/36例)、225mg/日群12.1%(4/33例)であり、主な副作用は手のしびれ、房室ブロック、QRS延長等であった。
本剤は、Vaughan Williamsらの分類のクラスIcに属する不整脈治療剤で、Naチャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す。Sicilian Gambitの提唱する薬剤分類(日本版)において、本剤はNaチャンネルを選択的に抑制し、K、Caチャンネル並びにα、β及びムスカリン受容体などには影響を与えないものとして位置づけられる。
発作性上室性頻拍の患者に本剤150mg又は200mgを単回経口投与した場合、洞房伝導(SA)時間、房室結節内伝導(AH)時間、心室内伝導(HV)時間を延長させた。また、右室の有効不応期を延長させた12)。
発作性上室性頻拍の患者に本剤150mg又は200mgを単回経口投与した場合、心拍数及び平均肺動脈圧は有意に増加し、一回拍出係数は有意に減少したがいずれも正常範囲内であった12)。
モルモット乳頭筋において、静止膜電位にほとんど影響を与えることなく、最大脱分極速度(Vmax)を用量依存的に抑制した17)。
モルモット乳頭筋の活動電位持続時間(APD)及び有効不応期(ERP)に影響を与えなかった17)。
イヌにおいて電気刺激による心室細動の発生閾値を上昇させた16)。
イヌのプルキンエ線維においてアセチルストロファンチジンで誘発される遅延後脱分極及び誘発自動能を抑制した18)。
イヌ冠動脈二段結紮不整脈に対する2-ヒドロキシメチル体の抗不整脈作用強度はピルシカイニド塩酸塩水和物の1/8であった13)。
ピルシカイニド塩酸塩水和物(Pilsicainide Hydrochloride Hydrate)
N-(2,6-Dimethylphenyl)tetrahydro-1H-pyrrolizin-7a(5H)-ylacetamide monohydrochloride hemihydrate
C17H24N2O・HCl・1/2H2O
317.85
白色の結晶又は結晶性の粉末である。酢酸(100)に極めて溶けやすく、水、メタノール又はエタノール(99.5)に溶けやすい。0.1mol/L塩酸試液に溶ける。
210.5~213.5℃(あらかじめ浴液を160℃に加熱しておく)
1.73(pH7.00、クロロホルム/緩衝液)
1) CAST investigators:N Engl J Med. 1989;321(6):406-412
2) 中島光好ほか:臨床医薬 1989;5(4):661-678
3) 清水賢巳ほか:薬理と治療 1994;22(8):3717-3725
4) 横田充弘ほか:Ther Res. 1989;10(5):2135-2147
5) 林 敏郎ほか:基礎と臨床 1989;23(6):2197-2229
6) 小森谷和美ほか:応用薬理 2003;65(5/6):89-95
7) ヒト血漿蛋白結合率(サンリズム注射液50:2000年1月18日承認、申請資料概要へ.2.3.3)
8) 藤谷朝通ほか:薬物動態 1997;12(S):255
9) 高畠利一ほか:薬理と治療 1989;17(7):3195-3205
10) 新谷博一ほか:循環器科 1989;26(2):216-232
11) 新谷博一ほか:循環器科 1989;26(2):201-215
12) 井野 威ほか:臨床薬理 1989;20(4):677-685
13) 日高寿範ほか:応用薬理 1989;37(4):359-372
14) Aisaka K, et al.:Arzneimittelforschung 1985;35(Ⅱ)(8):1239-1245
15) 日高寿範ほか:基礎と臨床 1992;26(13):4927-4931
16) 日高寿範ほか:応用薬理 1988;36(6):439-447
17) Hattori Y, et al.:J Cardiovasc Pharmacol. 1986;8(5):998-1002
18) Inomata N, et al.:Eur J Pharmacol. 1988;145(3):313-322
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