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日本薬局方
クロピドグレル硫酸塩錠
処方箋医薬品注)
急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
PCIが適用予定の虚血性心疾患患者への投与は可能である。冠動脈造影により、保存的治療あるいは冠動脈バイパス術が選択され、PCIを適用しない場合には、以後の投与は控えること。
通常、成人には、クロピドグレルとして75mgを1日1回経口投与するが、年齢、体重、症状によりクロピドグレルとして50mgを1日1回経口投与する。
通常、成人には、投与開始日にクロピドグレルとして300mgを1日1回経口投与し、その後、維持量として1日1回75mgを経口投与する。
通常、成人には、クロピドグレルとして75mgを1日1回経口投与する。
出血の危険性が高くなるおそれがある。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
減量などを考慮し、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること。高齢者では造血機能、腎機能、肝機能等の生理機能が低下していることが多く、また体重が少ない傾向があり、出血等の副作用があらわれやすい。
非ステロイド性消炎鎮痛薬(ナプロキセン等)
本剤との併用により、消化管からの出血が助長されたとの報告がある。
本剤は血小板凝集抑制作用を有するため、これら薬剤と併用すると消化管出血を助長すると考えられている。
抗凝固薬(ワルファリン、ヘパリン等)、血小板凝集抑制作用を有する薬剤(アスピリン等)、血栓溶解薬(ウロキナーゼ、アルテプラーゼ等),,
出血した時、それを助長するおそれがある。併用時には出血等の副作用に注意すること。
本剤は血小板凝集抑制作用を有するため、これら薬剤と併用すると出血を助長するおそれがある。
本剤の作用が減弱するおそれがある。
CYP2C19を阻害することにより、本剤の活性代謝物の血中濃度が低下する。
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(フルボキサミンマレイン酸塩、セルトラリン塩酸塩等)
出血を助長するおそれがある。
SSRIの投与により血小板凝集が阻害され、本剤との併用により出血を助長すると考えられる。
レパグリニドの血中濃度が増加し、血糖降下作用が増強するおそれがある。
本剤のグルクロン酸抱合体によるCYP2C8阻害作用により、これら薬剤の血中濃度が増加すると考えられる。
セレキシパグ
セレキシパグの活性代謝物(MRE-269)のCmax 及びAUC が増加したとの報告がある。本剤と併用する場合には、セレキシパグの減量を考慮すること。
本剤の血小板阻害作用が増強されることにより出血リスクが高まるおそれがある。リファンピシン等の強力なCYP2C19誘導薬との併用は避けることが望ましい。
クロピドグレルは主にCYP2C19によって活性代謝物に代謝されるため、CYP2C19酵素を誘導する薬剤との併用により本剤の活性代謝物の血漿中濃度が増加する。
モルヒネ
本剤の血漿中濃度が低下するおそれがある。
モルヒネの消化管運動抑制により、本剤の吸収が遅延すると考えられる。
*ロスバスタチン
*本剤300mgの投与後、ロスバスタチンのCmaxが1.3倍、AUCが2倍上昇し、本剤75mgの反復投与後、ロスバスタチンのCmaxには影響せず、AUCが1.4倍上昇したとの報告がある。
*本剤により、ロスバスタチンの血中濃度が上昇する。
脳出血等の頭蓋内出血の初期症状として、頭痛、悪心・嘔吐、意識障害、片麻痺等があらわれることがある。出血を示唆する臨床症状が疑われた場合は、投与を中止し、直ちに血球算定等の適切な検査を実施すること。,,,,
出血を伴う胃・十二指腸潰瘍があらわれることがある。
ALT上昇、γ-GTP上昇、AST上昇、黄疸、急性肝不全(頻度不明)、肝炎(頻度不明)等があらわれることがある。
TTPの初期症状である倦怠感、食欲不振、紫斑等の出血症状、意識障害等の精神・神経症状、血小板減少、破砕赤血球の出現を認める溶血性貧血、発熱、腎機能障害等が発現した場合には、直ちに投与を中止し、血液検査(網赤血球、破砕赤血球の同定を含む)を実施し、必要に応じ血漿交換等の適切な処置を行うこと。
咳嗽、呼吸困難、発熱、肺音の異常等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT等の検査を実施すること。異常が認められた場合には、投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
初期症状として発疹、発熱がみられ、更に肝機能障害、リンパ節腫脹、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現等を伴う遅発性の重篤な過敏症状があらわれることがある。このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)等のウイルスの再活性化を伴うことが多く、投与中止後も発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること。
筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれ、これに伴って急性腎障害等の重篤な腎障害があらわれることがある。
重度の低血糖を引き起こすことがある。
0.1~5%未満
0.1%未満
頻度不明
血液
皮下出血、貧血、紫斑(病)、鼻出血、止血延長、眼出血、歯肉出血、痔出血、血痰、穿刺部位出血、処置後出血、ヘモグロビン減少、赤血球減少、ヘマトクリット減少、白血球減少、好中球減少、好酸球増多
月経過多、口腔内出血、術中出血、カテーテル留置部位血腫、口唇出血、陰茎出血、尿道出血、好酸球減少
血清病
肝臓
Al-P上昇、LDH上昇、血清ビリルビン上昇
胆嚢炎、胆石症、黄疸
消化器
消化器不快感、胃腸炎、口内炎、腹痛、嘔気、下痢、食欲不振、便秘、食道炎、嘔吐
腹部膨満、消化不良、口渇、耳下腺痛、歯肉(齦)炎、歯肉腫脹、唾液分泌過多、粘膜出血、腸管虚血
大腸炎(潰瘍性大腸炎、リンパ球性大腸炎)、膵炎
代謝異常
中性脂肪上昇、CK上昇、総コレステロール上昇、総蛋白低下、K上昇、アルブミン低下
血糖上昇、K下降、血中尿酸上昇、アミラーゼ上昇、Cl下降、Na上昇、Na下降
過敏症
発疹、そう痒感、湿疹、蕁麻疹、紅斑
光線過敏性皮膚炎、眼瞼浮腫
アナフィラキシー、斑状丘疹性皮疹、血管浮腫、気管支痙攣
皮膚
脱毛、皮膚乾燥
水疱性皮疹、扁平苔癬
感覚器
眼充血、眼瞼炎、眼精疲労、視力低下、複視、嗅覚障害、結膜炎、味覚異常
味覚消失
精神神経系
頭痛、高血圧、めまい
しびれ、筋骨格硬直(肩こり、手指硬直)、意識障害、不眠症、意識喪失、音声変調、低血圧、てんかん、眠気、皮膚感覚過敏、流涙、気分変動
循環器
浮腫、頻脈、不整脈
動悸、心電図異常、胸痛、脈拍数低下、徐脈
血管炎
腎臓
BUN上昇、血中クレアチニン上昇、尿蛋白増加、血尿、尿沈渣異常、尿糖陽性、腎機能障害
急性腎障害、尿閉、頻尿、尿路感染
糸球体症
呼吸器
咳、気管支肺炎、胸水、痰
その他
ほてり、関節炎、発熱、異常感(浮遊感、気分不良)
多発性筋炎、滑液包炎、男性乳房痛、乳汁分泌過多、乳腺炎、倦怠感、腰痛、多発性関節炎、肩痛、腱鞘炎、注射部位腫脹、CRP上昇
筋痛、関節痛、女性化乳房
特異的な解毒剤は知られていない。
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
健康成人にクロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg)を食後に単回経口投与した場合のSR26334(主代謝物)の血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりである10) 。
tmax(hr)
Cmax(μg/mL)
t1/2(hr)
AUC0-48(μg・hr/mL)
1.9±0.8
2.29±0.46
6.9±0.9
8.46±1.36
(mean±S.D., n=12)
tmax:最高血漿中濃度到達時間、Cmax:最高血漿中濃度、t1/2:半減期AUC0-48:血漿中濃度時間曲線下面積(0~48時間)
ラットに14C-4-クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして5.0mg/kg)を単回経口投与した場合、放射能濃度は、大部分の臓器において投与0.25~2時間後に最高値に達した。放射能濃度は、消化管壁・肝臓の順に高く、また脳、脊髄及び骨格筋では低かった。また、反復投与による各臓器への蓄積性は認められていない。
クロピドグレル硫酸塩は吸収された後、肝臓で主に2つの経路で代謝される。すなわち、(1)エステラーゼにより非活性代謝物であるSR26334(主代謝物)を生成する経路と、(2)薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)による酸化型代謝物を生成する経路である。後者の経路を経由して、活性代謝物H4が生成される11) 。血漿中においては、未変化体の濃度は極めて低くSR26334が主に存在した。クロピドグレルの肝酸化型代謝に関与するチトクロームP450分子種は主にCYP2C19であり、その他にCYP1A2、CYP2B6、CYP3A4等が関与する12),13) 。また、SR26334はCYP2C9を阻害し、グルクロン酸抱合体はCYP2C8を阻害する14) (in vitro)。,
健康成人に14C-4-クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg)を単回経口投与した場合、投与5日後までの放射能の累積排泄率は投与放射能の約92%に達し、尿中には約41%、糞中には約51%が排泄された15) (外国人データ)。
慢性腎不全患者をクレアチニンクリアランスにより重度(5~15mL/分)と中等度(30~60mL/分)の2グループに分け、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg/日)を8日間反復経口投与した結果、重度慢性腎不全患者において中等度慢性腎不全患者に比べSR26334のAUCは低かった16) (外国人データ)。
肝硬変患者と健康成人にクロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg/日)を10日間反復経口投与した結果、未変化体のCmaxが肝硬変患者において健康成人に比較して大きく上昇し、肝機能の低下によるクロピドグレル硫酸塩の代謝への影響が示唆された。SR26334の薬物動態パラメータには差が認められなかった17) (外国人データ)。
健康成人をCYP2C19の代謝能に応じて3群(各群9例)に分け、クロピドグレルとして初日に300mg、その後75mg/日を6日間投与する試験を実施した。CYP2C19の2つの遺伝子多型(CYP2C19*2、CYP2C19*3)についていずれかをホモ接合体又はいずれもヘテロ接合体としてもつ患者群(PM群)では、活性代謝物H4のAUC0-24及びCmaxが、野生型ホモ接合体群(EM群:CYP2C19*1/*1)と比較して低下した2) 。なお、日本人におけるPMの頻度は、18~22.5%との報告がある18) 。
投与量
CYP2C19遺伝子型注1)
EM
IM
PM
Cmax(ng/mL)
300mg(1日目)
29.8±9.88
19.6±4.73
11.4±4.25
75mg(7日目)
11.1±4.67
7.00±3.81
3.90±1.36
AUC0-24(ng・hr/mL)
39.9±16.8
25.7±6.06
15.9±4.73
11.1±3.79
7.20±1.93
4.58±1.61
(mean±S.D.)
注1)EM:CYP2C19*1/*1IM:CYP2C19*1/*2あるいはCYP2C19*1/*3PM:CYP2C19*2/*2、CYP2C19*2/*3あるいはCYP2C19*3/*3
健康成人にクロピドグレル硫酸塩(1日1回3日間、クロピドグレルとして1日目300mg、2~3日目75mg)を投与し、1日目と3日目にレパグリニド(0.25mg)を併用した結果、レパグリニドのCmax及びAUC0-∞は、レパグリニドを単独投与したときと比較して1日目は2.5及び5.1倍、3日目は2.0及び3.9倍に増加した。また、t1/2は1.4及び1.2倍であった14) (外国人データ)。
健康成人男性22例にセレキシパグ0.2mgを1日2回10日間経口投与し、クロピドグレルを投与4日目に300mg(n=21)、投与5日目から10日目に75mg(n=20)を経口投与した。単独投与と比較して、セレキシパグのCmax及びAUC0-12は、投与4日目では1.3倍及び1.4倍に増加し、投与10日目は0.98倍及び1.1倍であった。同様に、セレキシパグの活性代謝物(MRE-269)のCmax及びAUC0-12は、投与4日目では1.7倍及び2.2倍、投与10日目では1.9倍及び2.7倍に増加した。
虚血性脳血管障害患者を対象に、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg/日)についてチクロピジン塩酸塩200mg/日を対照薬として行なわれた二重盲検比較試験(1,151例)における血管性事故の発現率を解析したところ、チクロピジン塩酸塩2.6%(15/578例)に対し本剤3.0%(17/573例)であり、本剤がチクロピジン塩酸塩と同等の血管性事故のリスク低減効果を有することが示された(ハザード比0.977)。また、血液検査所見(白血球減少、好中球減少、血小板減少)、肝機能障害、非外傷性の出血及びその他の重篤な副作用の総計の発現率は、チクロピジン塩酸塩15.1%(87/578例)に対し本剤7.0%(40/573例)であり、本剤において有意に低かった(p<0.001)19) 。本剤の主な副作用はγ-GTP上昇8.2%(47/575例)、ALT上昇7.5%(43/575例)、AST上昇5.9%(34例)、皮下出血4.9%(28/575例)、Al-P上昇4.2%(24/575例)、鼻出血3.0%(17/575例)であった。
非ST上昇急性冠症候群患者を対象に、アスピリン81~100mg/日を基礎薬とし、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして初回量300mg、維持量75mg/日)についてチクロピジン塩酸塩200mg/日を対照薬として行われた二重盲検比較試験(799例)における有効性イベント(死亡、急性心筋梗塞、血行再建術の施行)の発現率を解析したところ、チクロピジン塩酸塩9.52%(38/399例)に対し本剤10.25%(41/400例)であり、本剤の有効性はチクロピジン塩酸塩と同程度であることが示唆された(群間差点推定値-0.73%[両側95%信頼区間:-4.87, 3.41])。一方、副作用発現率は、チクロピジン塩酸塩55.3%(219/396例)に対し本剤44.9%(178/396例)と本剤で低かった(群間差点推定値10.35%[両側95%信頼区間:3.43, 17.28])。本剤の主な副作用は、ALT増加15.2%(60/396例)、AST増加11.6%(46/396例)、γ-GPT増加9.3%(37/396例)、血中ALP増加6.1%(24/396例)であった。また、重大な出血、血液障害、肝機能障害及び投与中止に至った副作用の発現率の総計は、チクロピジン塩酸塩29.57%(118/399例)に対し本剤が24.25%(97/400例)であり、冠動脈バイパス術施行の有無を考慮した検定では本剤が有意に低かった(p=0.0358)。出血性イベント(有害事象)の発現率は本剤で7.75%(31/400例)、チクロピジン塩酸塩で5.01%(20/399例)(Pearson's χ2検定:p=0.1135)であり、出血性イベント(副作用)の発現率は本剤で2.00%(8/400例)、チクロピジン塩酸塩で2.01%(8/399例)(Pearson's χ2検定:p=0.9960)であった。また、投与開始1~7日目に発現した出血性イベント(有害事象)は本剤で3.50%(14/400例)、チクロピジン塩酸塩で3.01%(12/399例)であった。重大な出血の発現率は、チクロピジン塩酸塩における冠動脈バイパス術非施行例では2.62%(10/382例)、冠動脈バイパス術施行例では70.59%(12/17例)であったのに対し、本剤ではそれぞれ1.88%(7/373例)、59.26%(16/27例)であった。また、本剤の冠動脈バイパス術施行例における重大な出血の発現率は、冠動脈バイパス術施行前の休薬期間が7日以上の症例では3/7例(42.9%)であったのに対し、同7日未満の症例では13/20例(65.0%)であった。,
経皮的冠動脈形成術が適用される安定狭心症/陳旧性心筋梗塞患者を対象に、アスピリン81~100mg/日を基礎薬とし、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして初回量300mg、維持量75mg/日)についてチクロピジン塩酸塩200mg/日を対照薬として行われた二重盲検比較試験(931例)において12週目までの主要心イベント(全ての死亡、急性心筋梗塞、血行再建術の施行、ステント血栓症)の累積発現率を解析したところ、チクロピジン塩酸塩9.7%(発現割合:45/465例)に対し本剤9.0%(発現割合:43/466例)であった(ハザード比0.945[両側95%信頼区間:0.622, 1.436])。また、主要心・脳血管イベント(全ての死亡、急性心筋梗塞、血行再建術の施行、ステント血栓症、脳卒中)の累積発現率も同様に、チクロピジン塩酸塩10.4%(発現割合:48/465例)に対し本剤9.0%(発現割合:43/466例)であり(ハザード比0.886[両側95%信頼区間:0.587, 1.337])、本剤の有効性はチクロピジン塩酸塩と同程度であることが示唆された。一方、副作用発現割合は、チクロピジン塩酸塩39.8%(199/500例)に対し本剤20.2%(101/499例)と本剤で低かった。比較的多く認められた本剤の副作用は、皮下出血3.4%(17/499例)、γ-GTP増加2.6%(13/499例)、ALT増加2.8%(14/499例)、血中ALP増加1.0%(5/499例)並びに肝機能異常0.6%(3/499例)であった。また、重大な出血、血液障害、肝機能障害及び投与中止に至った副作用を複合した指標の12週目までの累積発現率は、チクロピジン塩酸塩30.9%(発現割合:159/465例)に対し本剤が8.9%(発現割合:47/466例)であり、本剤が有意に低かった(stratified log-rank test注1) :p<0.0001、ハザード比0.259[両側95%信頼区間:0.187, 0.359])。出血性イベントの12週目までの累積発現率は本剤1.3%(発現割合:6/466例)、チクロピジン塩酸塩0.9%(発現割合:4/465例)で有意な差は認められなかった(stratified log-rank test注1) :p=0.5292、ハザード比1.497[両側95%信頼区間:0.422, 5.306])20) 。
非ST上昇急性冠症候群患者12,562例を対象とした二重盲検比較試験(CURE)で、アスピリン75~325mg/日を基礎薬とし、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして初回量300mg、維持量75mg/日)についてプラセボを対照に、血管性事故(心血管死、心筋梗塞及び脳卒中)発症のリスク減少効果を検討し、本剤は19.6%の相対リスク減少効果を有することが示された(p<0.001)。また、血管性事故(心血管死、心筋梗塞、脳卒中及び治療抵抗性虚血)発症のリスク減少効果についても、本剤は13.7%の相対リスク減少効果を有することが示された(p<0.001)。なお、生命を脅かす出血の発現率には両群間に差は認められなかった(p=0.1251)。有害事象の発現率は、本剤群41.7%(2,612/6,259例)、プラセボ群40.1%(2,530/6,303例)であり、両群でほぼ同等であった。プラセボ群よりも本剤群の発現率が0.3%以上高かった有害事象は、浮動性めまい2.4%(148/6,259例)、疲労1.5%(93/6,259例)、挫傷1.4%(87/6,259例)、発疹1.1%(70/6,259例)であった。
末梢動脈疾患患者を対象に、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg/日)についてチクロピジン塩酸塩200mg/日を対照薬として行われた二重盲検比較試験(431例)において12週目までの血管性イベント(脳梗塞、心筋梗塞、その他の心血管死、虚血性イベントによる入院)の累積発現率を解析したところ、チクロピジン塩酸塩0.9%(発現割合:2/216例)に対し本剤0.9%(発現割合:2/215例)であり、本剤の有効性はチクロピジン塩酸塩と同程度であることが示唆された。一方、副作用の12週目までの累積発現率は、チクロピジン塩酸塩35.6%(発現割合:77/216例)に対し本剤15.5%(発現割合:35/215例)と本剤が有意に低かった(stratified log-rank test注2) :p<0.0001、ハザード比0.403[両側95%信頼区間:0.270, 0.603])。本剤の主な副作用(発現率2%以上)は、γ-GTP増加及びALT増加がそれぞれ2.3%(5/215例)であった。また、重大な出血、血液障害、肝機能障害及び重篤な副作用を複合した指標の12週目までの累積発現率は、チクロピジン塩酸塩13.6%(発現割合:30/216例)に対し本剤が2.4%(発現割合:5/215例)であり、本剤が有意に低かった(stratified log-rank test注2) :p<0.0001、ハザード比0.161[両側95%信頼区間:0.062, 0.416])。出血性有害事象の12週目までの累積発現率は本剤8.4%(発現割合:19/215例)、チクロピジン塩酸塩7.0%(発現割合:15/216例)で有意な差は認められなかった(stratified log-rank test注2) :p=0.4478、ハザード比1.300[両側95%信頼区間:0.659, 2.561])21) 。
動脈硬化性疾患(虚血性脳血管障害、末梢動脈疾患等)19,185例を対象とした二重盲検比較試験(CAPRIE)で、クロピドグレル硫酸塩(クロピドグレルとして75mg/日)についてアスピリン325mg/日を対照に、血管性事故(虚血性脳血管障害、心筋梗塞症及び血管死)発症のリスク減少効果を検討し、本剤は8.7%の相対的リスク減少効果を有することが示された(p=0.045)。また、両群の有害事象発現率(本剤群86.25%、アスピリン群86.48%)に差は認められなかった(p=0.640)。
クロピドグレル硫酸塩の活性代謝物が、不可逆的に血小板のADP受容体サブタイプP2Y1222) に作用し、ADPの結合を阻害することにより、血小板の活性化に基づく血小板凝集を抑制する23) 。また、ラットにおいて認められたコラーゲン及び低濃度トロンビンによる血小板凝集に対する本薬の抑制作用は、これらの刺激によって血小板から放出されたADPによる血小板凝集24) を抑制することに基づくと考えられる。
クロピドグレル硫酸塩はin vitroでは血小板凝集抑制作用を発現せず、経口投与後、肝で代謝を受けて活性代謝物となり、ADP刺激による血小板の活性化に基づく血小板凝集を抑制する24) 。ラットではコラーゲン及び低濃度トロンビンによる血小板凝集の抑制も認められている。健康成人男子24例にクロピドグレル10~75mg/日を10日間反復経口投与した時、血小板凝集抑制率の増加及び出血時間の延長が認められている。健康成人10例を対象に、クロピドグレルのローディングドーズ(初回投与300mg、翌日以降は75mgを1日1回5日間反復経口投与)と非ローディングドーズ(75mgを1日1回6日間反復経口投与)の用法・用量でのクロスオーバー法による投与を行い、血小板凝集抑制作用について検討した。その結果、ローディングドーズ群は、非ローディングドーズ群に比べ、初回投与後2時間から血小板凝集抑制作用(血小板活性化の抑制)を示した。300mgのローディングドーズにより、投与初日の血小板凝集抑制率は約30~40%を示し、薬力学/薬理作用的に定常状態と考えられる血小板凝集抑制率のレベルに投与初日より達していたが、ローディングドーズをしない場合では投与初日の血小板凝集抑制率は約15%であった。健康成人男子15例を対象にクロピドグレル(75mgを1日1回)を10日間反復投与後、最大血小板凝集能(5μM ADP惹起maximum platelet aggregation intensity(MAI))の回復期間を検討した。その結果、クロピドグレルの最終投与後7日目にはMAIは投与前値(クロピドグレル投与前MAI±15%以内)に回復した25) 。
クロピドグレル硫酸塩は、経口投与により、血小板の活性化に基づく血栓形成を抑制する。本薬は中大脳動脈血栓モデル(ラット)26) 、動静脈シャントモデル(ラット)、冠状動脈周期的血流減少モデル(イヌ)27) 、頸動脈バルーン内皮傷害モデル(ウサギ)28) 、ステント留置動静脈シャントモデル(ウサギ)28) において血栓形成を抑制し、中大脳動脈脳血栓モデルでは血栓形成抑制に基づいて梗塞サイズを縮小した。頸動脈バルーン内皮傷害モデル、ステント留置動静脈シャントモデルにおける血栓形成抑制効果はアスピリンと併用したとき増強した。
クロピドグレル硫酸塩(Clopidogrel Sulfate)
Methyl(2S)-2-(2-chlorophenyl)-2-[6, 7-dihydrothieno[3, 2-c]pyridin-5(4H)-yl] acetate monosulfate
C16H16ClNO2S・H2SO4
419.90
白色~微黄白色の結晶性の粉末又は粉末である。水又はメタノールに溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けやすい。光によって徐々に褐色となる。結晶多形が認められる。
約177℃(分解)
外箱開封後は、湿気を避けて保存すること。
100錠[10錠×10;PTP]140錠[14錠×10;PTP]500錠[プラスチックボトル;バラ]
100錠[10錠×10;PTP]140錠[14錠×10;PTP]500錠[10錠×50;PTP]700錠[14錠×50;PTP]500錠[プラスチックボトル;バラ]
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