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日本薬局方
注射用ビンブラスチン硫酸塩
劇薬
処方箋医薬品注)
本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ実施すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
増量段階
投与量
第1回目
0.1mg/kg
第2回目
0.15mg/kg
第3回目
0.2mg/kg
第4回目
0.25mg/kg
第5回目
0.3mg/kg
白血球数が3000/μLまで低下した場合は4000/μL以上に回復するまでは投与を延期すること。多くの患者における1週間当たりの投与量は0.15~0.2mg/kgになるが、白血球数の減少の程度は一定ではなく、0.1mg/kgの投与で3000/μLまで低下する例もある。維持量としては、約3000/μLの白血球減少を示した投与量より1段階少ない量を1から2週間の間隔で投与する。ただし、白血球数が4000/μL以上に回復するまでは、前回の投与より7日間経過していても次回投与は行ってはならない。1週間1回投与すべき量を分割して少量連日投与しても効果の増強は認められない。一方、1週間1回の投与量の数倍量を分割して連日長期に投与した場合には痙攣、重篤かつ不可逆的中枢神経障害を起こし、死に至った例が報告されているため、上記投与方法を厳格に守ること。
本剤には骨髄抑制作用がある。
本剤には骨髄抑制作用があり、感染症を増悪させることがある。
神経障害が強くあらわれることがある。
心筋虚血症状が強くあらわれることがある。
致命的な全身障害があらわれることがある。
腎機能障害が強くあらわれることがある。
本剤の代謝及び排泄が遅延し副作用が増強する可能性がある。
小児及び生殖可能な年齢の患者に投与する必要がある場合には、性腺に対する影響を考慮すること。本剤を含む多剤併用化学療法を受けた患者で、性腺障害(精子形成不全(無精子症等)、無月経等)が認められたとの報告がある。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。動物実験で催奇形性が報告されている。
授乳しないことが望ましい。
副作用の発現に特に注意すること。
用量並びに投与間隔に留意すること。生理機能が低下していることが多く、副作用があらわれやすい。
アゾール系抗真菌剤
本剤の筋神経系の副作用が増強することがある。
アゾール系抗真菌剤は肝チトクロームP-450 3Aを阻害するため、併用により本剤の代謝を抑制することがある。
マクロライド系抗生物質
作用が増強したとの報告がある。
エリスロマイシンは肝チトクロームP-450 3Aを阻害するため、併用により本剤の代謝を抑制することがある。
フェニトイン
フェニトインの血中濃度が低下し、痙攣が増悪することがあるとの報告があるので、フェニトインの投与量を調節することが望ましい。
フェニトインの吸収を減少させる、あるいは代謝を亢進させるとの報告がある。
神経毒性を有する薬剤
神経系副作用が増強することがある。白金含有の抗悪性腫瘍剤の場合、聴覚障害(難聴)が増強する可能性がある。
神経毒性を有する。
マイトマイシンC
呼吸困難及び気管支痙攣が発現しやすいことが報告されている。
機序不明
他の抗悪性腫瘍剤
骨髄抑制等の副作用が増強することがある。患者の状態を観察しながら減量するなど用量に注意すること。
骨髄抑制作用を有する。
心筋梗塞、脳梗塞、レイノー現象等が発現したとの報告がある。
放射線照射
汎血球減少(頻度不明)、白血球減少(43.8%)、血小板減少(12.1%)、貧血(2.6%)があらわれることがある。異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、致命的な感染症(敗血症、肺炎等)や臓器出血等に至った報告がある。
知覚異常、末梢神経炎、痙攣、錯乱、昏睡、昏蒙があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には投与量を減量するか投与を中止するなどの処置を行うこと。
ショック、アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫、血圧低下等)があらわれることがある。
心筋梗塞、狭心症、心電図上虚血所見が発現したとの報告がある。
一過性又は永続的な難聴があらわれることがある。
低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム増加、高張尿、意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、水分摂取の制限等の適切な処置を行うこと。
3%以上
3%未満
頻度不明
消化器
口内炎
悪心・嘔吐、口唇炎、消化不良、食欲不振、口渇、腹痛、便秘
過敏症
発疹
皮膚
脱毛
水疱形成
精神神経系
歩行困難
味覚異常、不安、不眠、深部腱反射の消失、関節痛、筋肉痛、倦怠感、脱力感、頭痛、眩暈、抑うつ、唾液腺痛、排尿障害
生殖器
無精子症、無月経、性腺(睾丸、卵巣)障害等
循環器
高血圧、レイノー現象、頻脈
投与部位
注射局所痛・壊死
その他
眼振等の平衡感覚障害、発熱、静脈炎、腫瘤・リンパ節の疼痛
本剤の過量投与により、重篤又は致死的な結果をもたらすとの報告がある。
眼には接触させないこと。眼に入った場合は直ちに水で洗うこと。眼に入った場合重篤な刺激や角膜潰瘍が起こることがある。
本剤と他の抗悪性腫瘍剤及び放射線療法を併用した患者に、二次性悪性腫瘍(白血病、骨髄異形成症候群(MDS)等)が発生したとの報告がある。
悪性リンパ腫、悪性黒色腫、ザルコイド(類肉腫)の各1例に本剤7.0~14.0mg(平均10.3mg)を静脈内注射した後、ラジオイムノアッセイ法で測定した場合、血中濃度が投与直後より急速に低下するα期、比較的ゆるやかに低下するβ期、更に非常に緩徐な低下を示すγ期の3相性のパターンで推移した(外国人のデータ)1)。(承認最大用量は1回0.3mg/kgである。)
n
T1/2α(hr)
T1/2β(hr)
T1/2γ(hr)
消失速度定数(hr-1)
10.3mg i.v.
3
0.062±0.040
1.64±0.34
24.8±7.5
0.190±0.058
(Mean±S.D.)
分布容積(L/kg)
血清クリアランス(L/kg/hr)
27.3±14.9
0.740±0.317
主要代謝部位は肝臓であり、肝チトクロームP-450 3Aが関与するとされている(in vitro)3)。活性代謝物:デスアセチルビンブラスチン(ビンデシン)
転移性副腎腫患者に3H-ビンブラスチン硫酸塩10mgを静脈内投与した後、放射活性を調べた結果、72時間以内に尿中には投与量の約13.6%、糞中には約9.9%が排泄され、代謝を受けることが示唆された(外国人のデータ)4)。(承認最大用量は1回0.3mg/kgである。)
承認時の悪性リンパ腫及び絨毛性疾患における有効率は次の表のとおりであった。
疾患名
治験例数
有効例数
有効率(%)
悪性リンパ腫
ホジキン病
11
7
63.6
9
6
66.7
細網肉腫
13
8
61.5
小計
33
21
絨毛性疾患
絨毛上皮腫
25
28.0
破壊性胞状奇胎
42.9
胞状奇胎
14
50.0
60
23
38.3
18歳未満のランゲルハンス細胞組織球症患者を対象に、本剤6mg/m2を導入療法(週1回で4回)及び維持療法(3週に1回で8回)として、プレドニゾロン及び他の抗悪性腫瘍剤と併用投与したとき、治療期間中の奏効率は86%(91/106例)、奏効例における再発率は23%(21/91例)、観察期間(中央値)6年9ヵ月における生存率は90%(96/106例)であった。本剤を含む化学療法における副作用発現頻度は28%(30/106例)であった。主な副作用は感染、白血球減少症(いずれも頻度不明)であった5)。
18歳未満のランゲルハンス細胞組織球症患者を対象に、本剤6mg/m2を導入療法(週1回で4回)及び維持療法(3週に1回で6回)として、プレドニゾロン及び他の抗悪性腫瘍剤と併用投与したとき、導入療法開始6週後の奏効率は79%(50/63例)、奏効例における再発率は30%(15/50例)、観察期間(中央値)7年6ヵ月における生存率は81%(51/63例)であった6)。
18歳未満のランゲルハンス細胞組織球症患者を対象に、本剤6mg/m2を1週に1回24週間投与したとき、投与開始後6週後の奏効率は57%(42/74例)、寛解後3年時における再発率は61%、生存率は76%であった7)。副作用発現頻度は47%であった。
18歳未満のランゲルハンス細胞組織球症患者を対象に、本剤6mg/m2を導入療法(週1回で6回)及び維持療法(3週に1回で6回)として、プレドニゾロン及び他の抗悪性腫瘍剤と併用投与したとき、導入療法開始後6週後の奏効率は67%(118/175例)、寛解後3年時における再発率は46%、5年生存率は74~79%であった8)。
紡錘体を形成している微小管のチュブリンに結合することにより、細胞周期を分裂中期で停止させると考えられている9)。
ビンブラスチン硫酸塩はマウスのP-1534白血病、Ehrlich腹水型腫瘍、Freund腹水型腫瘍、S-180腹水型腫瘍及びB-82A白血病に対して著明な生存日数の延長をもたらし、また、マウスの乳腺腫瘍(DBA腺癌)、ラットのWalker癌及び横紋筋肉腫に対しても、明らかな腫瘍増殖抑制効果を示した10),11)。
ビンブラスチン硫酸塩1.0mg/kgをマウスの腹腔内へ投与し経時的に腹水腫瘍細胞の分裂像を観察したところ、マウス腫瘍細胞(Ehrlich腹水型腫瘍及びL1210腹水型腫瘍)において、分裂細胞の増加とともに分裂中期細胞の蓄積がみられた12)。
ビンブラスチン硫酸塩(Vinblastine Sulfate)
Methyl(3aR,4R,5S,5aR,10bR,13aR)-4-acetoxy-3a-ethyl-9-[(5S,7R,9S)-5-ethyl-5-hydroxy-9-methoxycarbonyl-1,4,5,6,7,8,9,10-octahydro-3,7-methano-3-azacycloundecino[5,4-b]indol-9-yl]-5-hydroxy-8-methoxy-6-methyl-3a,4,5,5a,6,11,12,13a-octahydro-1H-indolizino[8,1-cd]carbazole-5-carboxylate monosulfate
C46H58N4O9・H2SO4
909.05
ビンブラスチン硫酸塩は、白色~微黄色の粉末である。水にやや溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノール(99.5)にほとんど溶けない。吸湿性である。
10mg[1バイアル]
1) Nelson RL.:Med. Pediatr. Oncol. 1982;10:115-127
2) Beer CT, et al.:Lloydia 1964;27:352-362
3) Zhou-Pan XR, et al.:Cancer Res. 1993;53:5121-5126
4) Owellen RJ.:Cancer Res. 1977;37:2597-2602
5) Gadner H, et al.:Med Pediatr. Oncol. 1994;23:72-80
6) Minkov M, et al.:Klin. Padiatr. 2000;212:139-144
7) Gadner H, et al.:J Pediatr. 2001;138:728-734
8) Gadner H, et al.:Blood 2008;111:2556-2562
9) Cancer 5th edition, Lippincott-Raven 1997;468-469
10) Johnson IS, et al.:Can. Cancer Conf. 1961;4:339-353
11) Johnson IS, et al.:Cancer Res. 1963;23:1390-1427
12) Cutts JH.:Cancer Res. 1961;21:168-172
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