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日本薬局方
*ビカルタミド錠
劇薬
処方箋医薬品注)
前立腺癌
通常、成人にはビカルタミドとして80mgを1日1回、経口投与する。
本剤は肝臓でほぼ完全に代謝を受けるため、定常状態時の血中濃度が高くなる可能性がある。
高齢者への投与の際には患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。本剤の臨床試験成績から、高齢者と非高齢者において血漿中濃度及び副作用の発現に差はみられていないが、一般に高齢者では、心・循環器系の機能が低下していることが多く、心・循環器系の有害事象の発現頻度が若年層より高い。
クマリン系抗凝血薬
クマリン系抗凝血薬の作用を増強するおそれがある。プロトロンビン時間を測定する、又は、トロンボテストを実施するなど、血液凝固能検査等出血管理を十分に行いつつ、凝固能の変動に注意し、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
in vitro試験で蛋白結合部位においてワルファリンと置換するとの報告がある。
トルブタミド
トルブタミドの作用を増強するおそれがある。但し、相互作用に関する報告症例はない。
本剤は、in vitro試験でトルブタミドの代謝を阻害した。
デキストロメトルファン
デキストロメトルファンの作用を増強するおそれがある。但し、相互作用に関する報告症例はない。
本剤は、in vitro試験でデキストロメトルファンの代謝を阻害した。
主にCYP3A4によって代謝される薬物
主にCYP3A4によって代謝される薬物の作用を増強するおそれがある。但し、相互作用に関する報告症例はない。
本剤は、in vitro試験でCYP3A4によるテストステロン6β-水酸化酵素活性を阻害した。
劇症肝炎、AST、ALT、Al-P、γ-GTP、LDHの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
5%以上
1~5%未満
1%未満
頻度不明
内分泌
乳房腫脹(44.7%)、乳房圧痛(46.6%)、ほてり
生殖器
勃起力低下
肝臓
AST上昇、ALT上昇、Al-P上昇
γ-GTP上昇、LDH上昇
泌尿器
腎機能障害(クレアチニン上昇、BUN上昇)
血尿、夜間頻尿
皮膚
そう痒、発疹
発汗、皮膚乾燥、脱毛、多毛、光線過敏症
精神神経系
性欲減退
傾眠
頭痛、めまい、不眠、抑うつ状態
循環器
心電図異常
消化器
便秘
口渇
食欲不振、下痢、悪心、嘔吐、消化不良、鼓腸放屁、腹痛
筋・骨格系
胸痛
骨盤痛
過敏症
血管浮腫、蕁麻疹
その他
総コレステロール上昇、中性脂肪上昇
さむけ
貧血、浮腫、倦怠感、無力症、疲労、高血糖、体重増加・減少
外国において、呼吸困難が発現したとの報告がある。
健康成人男子にビカルタミド錠80mg又はビカルタミドOD錠80mg(水なし)をクロスオーバー法にて空腹時に単回経口投与した。R-ビカルタミド(活性体)の血漿中濃度は投与後36時間に最高値を示し、消失半減期は4.9~5.2日であった。また、ビカルタミド錠とOD錠は生物学的に同等であった1)。
n
Cmax
(µg/mL)
tmax
(h)
AUC∞
(µg·h/mL)
t1/2
(日)
ビカルタミド錠80mg
23
1.21±0.23
36.0(24.0~72.0)
280±80
5.2±1.5
ビカルタミドOD錠80mg
21
1.26±0.21
36.0(15.0~72.0)
286±69
4.9±1.1
平均値±標準偏差[tmaxは中央値(範囲)]
健康成人男子にビカルタミドOD錠80mgを水とともに空腹時単回経口投与し、クロスオーバー法にてビカルタミド錠80mgと比較したところ、両製剤は生物学的に同等であった1)。
22
1.25±0.27
36.0(9.0~72.0)
262±78
4.6±0.7
1.29±0.25
36.0(5.0~72.0)
277±86
4.8±1.2
前立腺癌患者にビカルタミド80mgを単回経口投与したとき、投与後6、12及び24時間の血漿中R-ビカルタミド(活性体)濃度はほぼ一定(1.5~1.7μg/mL,n=3)であった2)。
前立腺癌患者にビカルタミド80mgを1日1回反復経口投与したとき、血漿中R-ビカルタミド濃度は約8週で定常状態(18µg/mL,n=37)に達した3)。さらに、反復投与時の血漿中濃度推移から推定したみかけの消失半減期は8.4日であった2)。
ビカルタミド錠80mg「NK」とカソデックス錠80mgを、並行群間比較試験法によりそれぞれ1錠(ビカルタミドとして80mg)健康成人男子に空腹時単回経口投与し、実質的な活性本体である(R)-ビカルタミドの血漿中濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された4)。
判定パラメータ
参考パラメータ
AUC0-672(μg ・hr/mL)
Cmax(ng/mL)
tmax(hr)
t1/2(hr)
ビカルタミド錠80mg「NK」
291±82
1360±280
36±16
118±16
カソデックス錠80mg (錠剤、80mg)
266±50
1370±120
30±24
110±22
(Mean±S.D., n=10)
ビカルタミドOD錠80mg「NK」とカソデックスOD錠80mgを、クロスオーバー試験法によりそれぞれ1錠(ビカルタミドとして80mg)健康成人男子に空腹時単回経口投与し、実質的な活性本体である(R)-ビカルタミドの血漿中濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)~log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された5)。
AUC0-508hr(μg・hr/mL)
Cmax(μg/mL)
水なし(n=22)
ビカルタミドOD錠80mg「NK」
261.07±71.50
1.21±0.26
32.7±16.2
131.0±33.8
カソデックスOD錠80mg(錠剤、80mg)
266.97±65.19
1.19±0.22
37.1±19.6
134.5±30.5
水あり(n=24)
234.65±56.45
1.14±0.24
33.3±18.7
115.9±25.4
221.77±50.98
1.09±0.19
35.5±18.2
115.1±22.3
(Mean±S.D.)
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
In vitroにおけるヒト血漿蛋白結合率(ラセミ体)は96%であった6)。
ヒトにおけるビカルタミドの代謝は、水酸化及びグルクロン酸抱合であった。血漿中には未変化体が、尿中には未変化体のグルクロン酸抱合体及び水酸化体のグルクロン酸抱合体が、糞中には未変化体及び水酸化体が認められた7)(外国人データ)。
健康成人男子にビカルタミド50mgを経口投与後9日目までの累積尿中及び糞中排泄率は、それぞれ36%及び43%であった7)(外国人データ)。
反復投与時の血漿中濃度は、年齢あるいはクレアチニンクリアランスとの間に相関関係を示さなかった8)(外国人データ)。
肝機能障害患者では、R-ビカルタミドの消失半減期が長くなる傾向が認められている9)(外国人データ)。
ビカルタミドはin vitro試験で、チトクロームP450酵素(CYP3A4)を阻害し、またそれより程度は低いが、他のチトクロームP450酵素(CYP2C9、2C19、2D6)に対しても阻害作用を示すとの報告がある10)。海外臨床試験において、ビカルタミド150mgまで投与された患者で、アンチピリン代謝に関与するチトクロームP450酵素に対しほとんど影響は認められていない11)。ビカルタミドは臨床の場で通常併用される薬剤とは相互作用を示す可能性は低いと考えられる。
承認時までに前立腺癌患者(病期C/D)を対象として国内で総計197例について実施された二重盲検比較試験を含む臨床試験2),3),12),13)の概要は次のとおりである。
試験名
投与量
投与期間
症例数
有効率
(部分奏効以上)
第I相試験
80mg/日
12週間
3
66.6%(2/3)
前期第II相試験
41
61.0%(25/41)
後期第II相試験
59
64.4%(38/59)
長期投与試験
48週間
26
76.9%(20/26)
副作用は、ビカルタミド錠の承認用量(80mg/日)において、第I相試験で3例中3例(100.0%)に認められ、主な副作用は、乳房圧痛(66.7%)、乳房腫脹(33.3%)、ほてり(33.3%)であった。前期第II相試験では41例中25例(61.0%)に認められ、主な副作用は、乳房圧痛(41.5%)、乳房腫脹(36.6%)、ほてり(12.2%)等であった。後期第II相試験では59例中38例(64.4%)に認められ、主な副作用は、乳房圧痛(33.9%)、乳房腫脹(33.9%)、性欲減退(11.9%)等であった。(承認時)
また、未治療進行前立腺癌患者(病期C/D)を対象としたビカルタミド錠とLH-RHアゴニストとの併用療法とLH-RHアゴニスト単独療法を比較した国内第III相二重盲験比較試験14),15)の成績は次のとおりである。
ビカルタミド錠及びLH-RHアゴニスト併用
LH-RHアゴニスト単独
P値(95%信頼区間)
ハザード比
PSA正常化注1)率(投与12週時)
79.4%
(81/102例)
38.6%
(39/101例)
<0.001
(27.6-52.0)
-
PSA正常化注1)までの期間
(中央値)
8.1週
24.1週
(2.77-5.66)
3.96
奏効率
(投与12週時)
77.5%
(79/102例)
65.3%
(66/101例)
0.063
(-0.3-24.1)
TTTF注2)
117.7週
60.3週
(0.38-0.77)
0.54
TTP注3)
未到達
96.9週
(0.26-0.63)
0.40
本試験において、副作用はビカルタミド錠及びLH-RHアゴニスト併用療法群で66.7%に認められ、主な副作用は、ほてり(16.7%)、血中アルカリフォスファターゼ増加(10.8%)、貧血(8.8%)等であった。
海外において、標準治療として経過観察又は根治的治療(放射線療法、前立腺全摘除術)を施行した早期前立腺癌患者8,113例を対象としたビカルタミド錠150mg/日注4)による無作為化プラセボ対照二重盲検比較臨床試験16)が実施されている。ビカルタミド錠投与群全体で無増悪生存率は有意に改善した(HR=0.79、95%信頼区間0.73-0.85、P<0.001)が、全生存率についてはプラセボ群との差は認めなかった(HR=0.99、95%信頼区間0.91-1.09、P=0.89)。病期別解析において、限局性前立腺癌の経過観察を行った患者におけるビカルタミド錠投与群では、統計学的な有意差はないもののプラセボ群と比較して全生存率の減少傾向が認められた(HR=1.16、95%信頼区間0.99-1.37)(追跡期間中央値7.4年時点)。ビカルタミド錠投与群で認められた主な有害事象は、乳房痛(73.6%、2962/4022例)及び女性化乳房(68.8%、2766/4022例)等であった。
ビカルタミドは、前立腺腫瘍組織のアンドロゲン受容体に対するアンドロゲンの結合を阻害し、抗腫瘍効果を発揮する。なお、ビカルタミドの抗アンドロゲン活性は実質的にR体によるものであった17)。
なお、臨床上、ビカルタミドの投与の中止により一部の患者でAWS(antiandrogen withdrawal syndrome)をみることがある18)。
In vitro試験において、アンドロゲン刺激によるヒト前立腺腫瘍細胞(LNCaP)及びマウス乳腺腫瘍細胞(Shionogi S115)の増殖を抑制した19),20)。一方、in vivo試験(ラット)において、移植されたアンドロゲン依存性ラット前立腺腫瘍(Dunning R3327)の増殖を抑制し、ラットの生存期間を延長させた。また、血漿中テストステロン及びLHの上昇の程度はごく僅かであった21)。
ラット及びヒト前立腺アンドロゲン受容体に対する結合能は、ジヒドロテストステロンの約2%であった18)。
ビカルタミド(Bicalutamide)
(2RS)-N-[4-Cyano-3-(trifluoromethyl)phenyl]-3-[(4-fluorophenyl)sulfonyl]-2-hydroxy-2-methylpropanamide
C18H14F4N2O4S
430.37
白色の粉末又は結晶性の粉末である。アセトンに溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノール(99.5)に溶けにくく、水にほとんど溶けない。アセトン溶液(1→100)は旋光性を示さない。結晶多形が認められる。
192~197℃
30錠[10錠(PTP)×3]100錠[10錠(PTP)×10]
1) 鷲尾兼寿ほか 医学と薬学 2013;70(2):277-284
2) 古武敏彦ほか 泌尿器科紀要 1996;42(2):143-153
3) 古武敏彦ほか 泌尿器科紀要 1996;42(2):155-168
4) 社内資料:生物学的同等性試験(ビカルタミド錠)
5) 社内資料:生物学的同等性試験(ビカルタミドOD錠)
6) Cockshott ID, et al. Xenobiotica. 1991;21(10):1347-1355
7) McKillop D, et al. Xenobiotica. 1993;23(11):1241-1253
8) Cockshott ID, et al. Eur Urol. 1990;18(Suppl 3):10-17
9) Furr BJA, et al. Hormone Dependent Cancer. Pasqualini JR, Katzenellenbogen BS,(Eds). Marcel Dekker, New York. 1996:397-424
10) Cockshott ID. Clin Pharmacokinet. 2004;43(13):855-878
11) Kaisary A, et al. Anti-Cancer Drugs. 1996;7:54-59
12) 古武敏彦ほか 泌尿器外科 1996;9(3):243-256
13) 古武敏彦ほか 泌尿器外科 1996;9(4):343-355
14) Usami M, et al. Prostate Cancer Prostatic Dis. 2007;10(2):194-201
15) Akaza H, et al. Jpn. J Clin Oncol. 2004;34(1):20-28
16) McLeod DG, et al. BJU Int. 2006;97(2):247-254
17) 第十八改正日本薬局方解説書 C-4254
18) Furr BJA. Eur Urol. 1996;29(Suppl 2):83-95
19) Veldscholte J, et al. Biochemistry. 1992;31:2393-2399
20) Darbre PD, et al. J. Steroid Biochem. 1990;36(5):385-389
21) Furr BJA, et al. Excerpta Med. Int Cong Series. 1994;1064:157-175
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