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一酸化窒素吸入用800ppm「ALJ」

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
9.8高齢者
10.相互作用
10.2併用注意(併用に注意すること)
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
13.過量投与
14.適用上の注意
15.その他の注意
15.1臨床使用に基づく情報
15.2非臨床試験に基づく情報
16.薬物動態
16.1血中濃度
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
17.2製造販売後調査等
18.薬効薬理
18.1作用機序
18.2肺血管拡張作用
19.有効成分に関する理化学的知見
20.取扱い上の注意
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
26.製造販売業者等

一酸化窒素吸入用800ppm「ALJ」

添付文書番号

21907A2G1023_1_01

企業コード

580692

作成又は改訂年月

2024年1月作成(第1版)

日本標準商品分類番号

872190

薬効分類名

肺血管拡張剤(吸入用ガス)

承認等

一酸化窒素吸入用800ppm「ALJ」

販売名コード

YJコード

21907A2G1023

販売名英語表記

Inhaled Nitric Oxide 800ppm

販売名ひらがな

いっさんかちっそきゅうにゅうよう800ppm「ALJ」

承認番号等

承認番号

30500AMX00237000

販売開始年月

2024年2月

貯法・有効期間

貯法

40℃以下

有効期間

3年

一般的名称

一酸化窒素

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

生命維持のために右-左シャントに完全に依存している心疾患を有する患者[右-左シャントの血流を減少させることにより血行動態が悪化し、致命的になるおそれがある。]

3. 組成・性状

3.1 組成

一酸化窒素吸入用800ppm「ALJ」

有効成分一酸化窒素   800ppm
添加剤窒素   999,200ppm

3.2 製剤の性状

一酸化窒素吸入用800ppm「ALJ」

性状無色透明のガス

4. 効能又は効果

  • 新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全の改善

5. 効能又は効果に関連する注意

  1. 5.1 肺低形成を有する患者における安全性及び有効性は確立していない。
  2. 5.2 重度の多発奇形を有する患者における安全性及び有効性は確立していない。
  3. 5.3 本剤は臨床的又は心エコーによって診断された、新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全患者にのみ使用すること。
  4. 5.4 先天性心疾患を有する患者(動脈管開存、微小な心室中隔欠損又は心房中隔欠損は除く)における安全性及び有効性は確立していない。

6. 用法及び用量

  • 出生後7日以内に吸入を開始し、通常、吸入期間は4日間までとする。なお、症状に応じて、酸素不飽和状態が回復し、本治療から離脱可能となるまで継続する。
  • 本剤は吸入濃度20ppmで開始し、開始後4時間は20ppmを維持する。
  • 酸素化の改善に従い、5ppmに減量し、安全に離脱できる状態になるまで吸入を継続する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  1. 7.1 本剤を用いる場合は、専用の一酸化窒素ガス管理システム(SoKINOX ソキノクス又はSoKINOX ソキノクスと同等以上の性能を有する装置)を用いること。,,,
  2. 7.2 本剤の吸入濃度は、20ppmを超えないこと。吸入濃度が20ppmを超えると、メトヘモグロビン血症発生及び吸入二酸化窒素(NO2)濃度増加の危険性が増加する。
  3. 7.3 本剤の投与を急に終了又は中止すると、肺動脈圧の上昇又は酸素化の悪化がみられることがある。肺動脈圧の上昇又は酸素化の悪化は本剤に反応しない患者においてもみられることがある。
  4. 7.4 本剤吸入開始時の吸入酸素濃度(FiO2)は1.0である。
  5. 7.5 吸入開始後4時間以降に動脈血酸素分圧(PaO2)>60mmHg又は経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)>92%になれば本剤の吸入濃度を5ppmに減量していく。
  6. 7.6 FiO2を減量し、FiO2=0.4~0.6でPaO2>70mmHgになるまで本剤の吸入濃度は5ppmで維持する。
  7. 7.7 離脱の際は、臨床的に安定していることを確認し、本剤を徐々に減量しながら慎重に終了する。終了前にはFiO2を0.1増量してもよい。,
  8. 7.8 投与中止の際は、本剤の吸入濃度を1ppmまで徐々に減量すること。1ppm投与中、酸素化に変化がみられない場合はFiO2を0.1増量のうえ、本剤を中止し、患者の状態を十分に観察すること。酸素化が悪化する場合は本剤を5ppmで再開し、12~24時間後に本治療の中止を再考すること。

8. 重要な基本的注意

  1. 8.1 本剤は、肺高血圧の治療に十分な経験を持つ医師が使用すること。投与に際しては緊急時に十分な措置ができる医療機関で行うこと。
  2. 8.2 本剤の効果を最大限に発揮するため、十分な呼吸循環管理等を行うこと。
  3. 8.3 離脱の際には、吸気中NO濃度、吸気中NO2濃度、PaO2、血中メトヘモグロビン(MetHb)濃度等のモニタリング項目の評価を参考にすること。
  4. 8.4 離脱の際には、心エコー検査による右-左シャント消失の確認等、血行動態の評価も参考にすること。
  5. 8.5 本剤の使用によっても酸素化の改善が認められない場合は、体外式膜型人工肺(ECMO)等の救命療法を考慮すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 在胎期間34週未満の患者

    脳室内出血、肺出血があらわれることがある。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。

9.7 小児等

国内臨床試験では、出生後21日齢未満(出生後7日未満に吸入開始し、最長14日まで)の新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全について試験が行われた1) 。海外臨床試験では、出生後7日まで(生後96時間以内に開始し、最長96時間又は生後7日までのどちらか早い時期まで)の新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全について2) 、及び出生後17日齢未満(出生後72時間以内に開始し最長14日間)の新生児について3) 試験が行われた。,

9.8 高齢者

一般に生理機能が低下している。

10. 相互作用

    10.2 併用注意(併用に注意すること)

    薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子

    低酸素性呼吸不全の治療に用いられNOを供給する薬剤
    ニトロプルシドナトリウム
    ニトログリセリン
    スルフォンアミド

    血中MetHb濃度が増加し、血液の酸素運搬能が低下する可能性がある。併用する場合、血中MetHb濃度を十分観察すること。

    相加作用により血中MetHb濃度を増加させる。

    11. 副作用

    次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

    11.1 重大な副作用

    1. 11.1.1 メトヘモグロビン血症(頻度不明)
    2. 11.1.2 徐脈(0.9%)
    3. 11.1.3 心停止(0.4%)
    4. 11.1.4 重篤なビリルビン血症(0.4%)
    5. 11.1.5 気胸(0.4%)

    11.2 その他の副作用

    1~10%未満

    1%未満

    一般全身障害

    発熱
    全身性浮腫
    多臓器不全
    周産期障害
    過量投与
    炎症1)

    心臓・血管系障害

    徐脈
    高血圧症
    低血圧

    不整脈
    二段脈
    心血管障害
    心停止
    出血
    頻脈

    消化器系障害

    胆汁うっ滞性黄疸
    胃腸障害
    吐血
    メレナ
    胃潰瘍
    嘔吐
    腹腔内出血1)

    血液・リンパ球障害

    白血球増加症
    メトヘモグロビン血症
    血小板減少症

    貧血
    凝固障害
    白血球減少症
    血小板血症

    代謝・栄養障害

    ビリルビン血症
    浮腫
    高血糖
    低カリウム血症

    アシドーシス
    高カルシウム血症
    高カリウム血症
    低カルシウム血症
    低マグネシウム血症
    低ナトリウム血症
    NPN(非蛋白性窒素)増加

    神経系障害

    痙攣

    脳出血
    脳梗塞
    脳血管障害
    高血圧
    頭蓋内出血

    呼吸器系障害

    無気肺
    低酸素血症

    喘息
    過換気
    肺障害
    肺水腫
    肺出血
    胸水
    気胸
    喘鳴

    皮膚・付属器官障害

    発疹
    皮膚硬化症1)

    特殊感覚障害

    ろう
    耳の障害
    聴覚過敏
    網膜障害
    未熟児網膜症1)

    泌尿・生殖器障害

    血尿

    腎尿細管壊死
    ミオグロビン尿1)

    1) 特定使用成績調査でのみ認められた副作用。頻度は当該調査結果より算出した。

    13. 過量投与

    1. 13.1 症状

      過量投与により、血中MetHb濃度の増加に伴う血液の酸素運搬能低下及び吸気中NO2濃度の増加により急性の肺損傷をきたすことがある。

    14. 適用上の注意

    14.1 薬剤調製時の注意

    1. 14.1.1 本剤治療の不慮の中断を避け、適時に交換できるように本剤の容器残圧を表示し、予備の薬剤を用意しておくこと。吸引、患者の搬送及び救急蘇生法などの用手換気でも本剤を使用できるようにしておくこと。
    2. 14.1.2 NO2の吸入を防ぐため、使用開始時には必ず圧力調整器や一酸化窒素ガス管理システム等の中の空気を本剤で置換すること。圧力調整器や一酸化窒素ガス管理システムの使用にあたっては、それぞれの取扱説明書や添付文書を参照すること。
    3. 14.1.3 停電や一酸化窒素ガス管理システムの故障に備え、補助発電機による電力供給や予備の医療機器が利用できるようにしておくこと。

    14.2 薬剤投与時の注意

    1. 14.2.1 バルブの開閉は静かに行い、使用時は全開にすること。バルブを全開にして使用しない場合、本剤消費に伴い供給圧が低下し、ボンベ残量が十分であっても本剤の供給が停止することがある。
    2. 14.2.2 本剤は、吸気中NO濃度、吸気中NO2濃度、PaO2、血中MetHb濃度をモニターしながら投与すること。
    3. 14.2.3 血中MetHb濃度は、本剤吸入開始後1時間以内に測定し、以降12時間以内は頻回に測定すること。また、24時間以降は少なくとも1日毎に測定すること。
    4. 14.2.4 本剤の吸入濃度は吸気回路の患者近位で測定すること。吸気中NO2濃度及び吸気中酸素濃度についても同じ場所でアラームがついたモニタリング装置を用いて測定すること。
    5. 14.2.5 血中MetHb濃度が2.5%を超える場合は、本剤吸入濃度の減量又は投与を中止すること。その後も改善がみられない場合には、必要に応じてビタミンC、メチレンブルー又は輸血で対処すること。
    6. 14.2.6 吸気中NO2濃度は、可能な限り定常状態において0.5ppm未満を維持すること。濃度が0.5ppmを超えた場合は、一酸化窒素ガス管理システムを点検し、原因を精査すること。可能であれば本剤又はFiO2を減量すること。
    7. 14.2.7 本剤使用中の医療従事者へのNO及びNO2曝露について試験が行われ、NO及びNO2曝露は短時間かつ米国の労働安全衛生局(OSHA)等の基準値より十分に低かったと報告されているが4) 、本剤投与中室内の換気には十分に注意すること。
    8. 14.2.8 医療従事者が本剤に曝露すると、胸部不快感、めまい、のどの渇き、呼吸困難、頭痛があらわれることがある。
    9. 14.2.9 容器からガス漏れのある場合は直ちにバルブを閉じてガスの使用を中止すること。
    10. 14.2.10 安全弁からのガス噴出の場合は、通風の良い安全な場所に容器を移動すること。

    14.3 薬剤投与後の注意

    使用後はバルブを閉じ、アウトレットキャップをつけること。

    15. その他の注意

    15.1 臨床使用に基づく情報

    生後4週から18歳までの特発性肺動脈性肺高血圧症、心筋症、先天性心疾患の患者を対象とした海外臨床試験において、左心不全の既往のある患者では、肺水腫等を伴う心不全が発症するおそれがあると報告されている5)

    15.2 非臨床試験に基づく情報

    1. 15.2.1 ウサギを対象とした試験で、出血時間の延長が報告されている6),7),8) 。ヒト成人を対象とした試験では一貫したデータが得られておらず9),10) 、新生児遷延性肺高血圧症におけるプラセボ対照二重盲検比較試験では、出血性合併症が増加することはなかった2),3)
    2. 15.2.2 細菌を用いた復帰突然変異試験では、5,000ppmで有意な復帰変異体数の増加がみられ11) 、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いた染色体異常試験では1,650ppm以上で染色体異常誘発性(構造的染色体異常)を示した12) 。また、マウスリンフォーマTK試験では、4.23mM(2,062ppm)以上で濃度依存性のある突然変異頻度の増加がみられた13)

    16. 薬物動態

    16.1 血中濃度

    吸入されたNOは肺血管から血中に移行すると、速やかにヘモグロビンと結合しニトロシルヘモグロビンを形成し、酸化により硝酸塩及び亜硝酸塩に代謝不活化される14) 。吸入量の73±5%が硝酸塩として尿中に排泄される15) 。形成されたニトロシルヘモグロビンも酸化により、速やかにMetHbに変換される。このようにNOの代謝は速やかにおこるため、NO自体の血中濃度を直接測定するのは困難である。しかし、NOにより産生される血中MetHb濃度がNOの代替指標となると考えられ、海外および国内の試験では、血中MetHb濃度が測定されている16)
    新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全の国内臨床試験では一酸化窒素を20ppmから開始したが、血中MetHb濃度は全11例で2%を超えることはなかった1)
    新生児遷延性肺高血圧症と診断された新生児患者では一酸化窒素の吸入濃度が高いほど血中MetHb濃度は増加し、一酸化窒素を80ppm吸入した36例中13例(36%)で血中MetHb濃度が7%を超えた。血中MetHb濃度が7%を超えた患者から得られた血中MetHb濃度のピーク到達時間は平均10.5±9.5時間であった3),17) (外国人データ)。

    17. 臨床成績

    17.1 有効性及び安全性に関する試験

    1. 17.1.1 国内第III相試験

      在胎期間34週以上で生後7日未満の、新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全患者11例を対象に、臨床試験(INOT12試験)を実施した。一酸化窒素20ppmを4時間吸入させ、吸入開始後4時間以降にPaO2>60mmHg又はSpO2>92%の条件を満たした場合は一酸化窒素吸入濃度を5ppmに減量した。また、FiO2=0.4~0.6でPaO2>70mmHgになるまで5ppmで維持した。臨床的に安定していることが確認されればNO吸入濃度を徐々に減量しながら終了し、終了前にはFiO2を0.1増量してもよいこととした。投与期間は最長14日間とした。
      その結果、有効性解析対象例となった10例において、吸入後30分、1時間及び24時間の酸素化指数(OI)の変動(平均値±SD)はそれぞれ-21.3±37.0、-19.7±37.9及び-27.2±33.0であり、海外臨床試験と同様酸素化の改善を示した1) 。本試験ではNO吸入開始後、除外基準に抵触していることが明らかになった1例が死亡したが、一酸化窒素吸入による副作用は認められなかった。

    2. 17.1.2 海外第III相試験

      在胎期間34週以上で生後4日以内の新生児遷延性肺高血圧症患者186例(プラセボ吸入群:89例、一酸化窒素吸入群:97例)を対象に、プラセボ対照無作為割付比較試験(CINRGI試験)を実施した。一酸化窒素を20ppmより開始し、4時間以降24時間までにPaO2≧60mmHgかつpH7.35~7.55であれば吸入濃度を5ppmに減量し、FiO2が0.7未満となるか、96時間又は生後7日までのいずれか早い時期まで吸入を継続した。ただし、吸入中止後にPaO2≧60mmHgを維持するためにFiO2>0.8にする必要がある場合には、NO吸入を再開した。最初の吸入開始後24時間以内に再開する場合は20ppmで、24時間以降の場合は5ppmで再開した。NO吸入を再開しても効果がみられない場合や(FiO2=1.0でPaO2<60mmHg)、血中MetHb>4%又は吸気中NO2濃度>5ppmの場合はNO吸入を中止した。
      その結果、ECMO適用例は、プラセボ吸入群(57.3%)に比較して一酸化窒素吸入群(30.9%)で有意に少なかった(P=0.001)2),18)

      ECMO適用率

      プラセボ
      吸入群

      一酸化窒素
      吸入群

      P値

      ECMO適用

      51/89例
      (57.3%)

      30/97例
      (30.9%)

      0.001
      (Cochran-Mantel-Haenszel検定)

      ECMO非適用

      38/89例
      (42.7%)

      67/97例
      (69.1%)

      さらに、一酸化窒素吸入群ではプラセボ吸入群に比べ、OI、PaO2、肺胞気・動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)、動脈血・肺胞気酸素分圧比(a/A)を指標とした酸素化の有意な改善がみられた(いずれも分散分析でP≦0.001)。
      安全性解析対象例110例中61例に副作用が認められた。主な副作用は、血小板減少症19例(17.3%)、低カリウム血症10例(9.1%)、無気肺8例(7.3%)、ビリルビン血症7例(6.4%)及び低血圧6例(5.5%)であった19)

    17.2 製造販売後調査等

    1. 17.2.1 特定使用成績調査

      総症例1441症例中、一酸化窒素との因果関係が否定できない副作用は、63例84件(副作用発現症例率4.4%)であった。主な副作用は、メトヘモグロビン血症17例(1.2%)、脳室内出血12例(0.8%)、肺出血9例(0.6%)であった20)

    18. 薬効薬理

    18.1 作用機序

    一酸化窒素は血管平滑筋細胞のcGMP濃度を増加させ、その結果、血管平滑筋を弛緩させることにより、肺血管が拡張し、肺動脈圧を低下させる16)

    18.2 肺血管拡張作用

    NOは吸入投与によりラット(5~40ppm)21) 、ヒツジ(8~512ppm)22) 、イヌ(17~47ppm)23) 及びブタ(5~40ppm)24) を用いたin vivo低酸素性肺血管収縮モデル、ヒツジを用いたU-46619誘発肺血管収縮モデル(5~80ppm)25) 並びにラットモノクロタリン誘発肺高血圧症モデル(20~100ppm)26) において、いずれも最低濃度から迅速かつ濃度依存的な肺血管拡張作用を示した。また、ヒツジ新生児遷延性肺高血圧症モデル(6~100ppm)27) においてもNO吸入は最低濃度より濃度依存的な血管拡張作用を示し、細菌及びLPS注入によるブタ敗血症/エンドトキシンショックモデルに対しても二相性の肺動脈圧及び肺血管抵抗の上昇を抑制した28),29)

    19. 有効成分に関する理化学的知見

    一般的名称

    一酸化窒素(Nitric Oxide)

    分子式

    NO

    分子量

    30.01

    性状

    室温で無色・無臭の気体。

    融点

    -161℃(101.3kPa)

    沸点

    -151.77℃(101.3kPa)

    比重

    1.04

    燃焼

    水素と共に熱したときのみ燃焼する。

    20. 取扱い上の注意

    本剤は、高圧ガスの状態で充てんされているので、高圧ガス保安法に則り下記のことに注意すること。

    1. 20.1 取扱い時の注意
      1. 20.1.1 容器は転落・転倒、打撃などの衝撃を与えないよう静かに取扱うこと。
      2. 20.1.2 本剤の有効成分であるNOは空気中の酸素と結合し、人体に有害なNO2に変化するため、本剤の使用及び保管に際しては換気等に十分注意すること。
      3. 20.1.3 本剤を他の医療用ガスの代わりに使用しないこと。
      4. 20.1.4 容器が転落、転倒しないようロープ等で固定して使用すること。
      5. 20.1.5 容器の授受に際しては、あらかじめ容器を管理する者を定め、その者が立会い、容器の記号番号による管理を行うこと。
      6. 20.1.6 使用に当たっては、ラベル等により本剤であることを確かめること。
      7. 20.1.7 使用に先立って、ガス漏れ、その他異常のないことを確認すること。
      8. 20.1.8 NOに適した材質の圧力調整器を使用すること。
      9. 20.1.9 バルブ、圧力調整器、一酸化窒素ガス管理システム、呼吸器の回路等、本剤と接触する部分に油脂類、または塵埃等の付着がないことを確かめること。
      10. 20.1.10 パッキン類は所定のものを使用すること。
      11. 20.1.11 パッキン等を破損する恐れがあるため、バルブや継ぎ手を工具等で締めないこと。
    2. 20.2 保管(貯蔵)時の注意
      1. 20.2.1 容器は、「高圧ガス容器置場」であることを明示した所定の場所に、充填容器と空容器に区別し、直立させ、固定して保管すること。
      2. 20.2.2 容器は、直射日光を避け、通風・換気のよいところに貯蔵し、常に40℃以下に保つこと。
      3. 20.2.3 容器置場には作業に必要な用具以外のものは置かないこと。
      4. 20.2.4 容器置場には関係者以外の立ち入りを禁止すること。
      5. 20.2.5 容器は湿気水滴等による腐食を防止する措置を講じること。
      6. 20.2.6 バルブは損傷を防止する措置を講じること。
      7. 20.2.7 使用済みの容器は販売業者が回収するため廃棄しないこと。
    3. 20.3 搬送時の注意

      容器は、直射日光を避け40℃以下に保ち、固定して安全に運搬すること。

    22. 包装

    耐圧金属製密封容器(ボンベ内容積2L、11L)

    23. 主要文献

    1) 国内第III相臨床試験(アイノフロー吸入用:2008年7月16日承認、申請資料概要2.7.6.3.4)

    2) Clark R H, et al. New Eng J Med. 2000;342(7):469-74.

    3) Davidson D, et al. Pediatrics 1998;101(3):325-34.

    4) Phillips ML, et al. Pediatrics. 1999;104(5):1095-100.

    5) Barst RJ, et al. Pediatr Cardiol. 2010 Jul;31(5):598-606.

    6) Huang QW, et al. Biol Neonate. 1999;76(6):374-82.

    7) Hedenstierna G, et al. Abstract A657 Anaesthesiology.1993;78:1.

    8) Högman M, et al. Acta Physiol Scand 1994, 151, 125-129.

    9) Radomski MW, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 1990;87(13):5193-7.

    10) 臨床薬力学試験(アイノフロー吸入用:2008年7月16日承認、申請資料概要2.7.6.2.1)

    11) 復帰突然変異試験(アイノフロー吸入用:2008年7月16日承認、申請資料概要2.6.7.8)

    12) 染色体異常試験(アイノフロー吸入用:2008年7月16日承認、申請資料概要2.6.7.8)

    13) マウスリンフォーマTK試験(アイノフロー吸入用:2008年7月16日承認、申請資料概要2.6.7.8)

    14) Wennmalm A, et al. Br J Pharmacol. 1992;106(3):507-8.

    15) Westfelt UN, et al. Br J Pharmacol. 1995;114:1621-4.

    16) 背景及び概観(アイノフロー吸入用:2008年7月16日承認、申請資料概要2.7.2.1)

    17) メトヘモグロビン血症(アイノフロー吸入用:2008年7月16日承認、申請資料概要2.7.4.2)

    18) 第III相臨床試験(アイノフロー吸入用:2008年7月16日承認、申請資料概要2.7.3.1、2.7.3.2)

    19) 有害事象の解析(アイノフロー吸入用:2008年7月16日承認、申請資料概要2.7.4.2)

    20) 特定使用成績調査(アイノフロー吸入用:2020年2月17日、再審査報告書)

    21) Kouyoundjian C, et al. J Clin Invest. 1994;94:578-84.

    22) Young JD, et al. Br J Anaesth. 1994;73:511-6.

    23) Romand JA, et al. J Appl Physiol. 1994;76:1350-5.

    24) Jacob TD, et al. J Appl Physiol. 1994; 76:1794-801.

    25) Frostell C, et al. Circulation. 1991; 83:2038-47.

    26) Katayama Y, et al. Respir Physiol. 1994; 97:301-7.

    27) Zayek M, et al. J Pediatr. 1993; 122:743-50.

    28) Berger JI, et al. Am Rev Respir Dis. 1993; 147:1080-6.

    29) Ogura H, et al. Surgery. 1994; 116:313-21.

    24. 文献請求先及び問い合わせ先

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    〒660-0891 兵庫県尼崎市扶桑町1番36号

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