医療用医薬品 詳細表示

トルカプ錠160mg/トルカプ錠200mg

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
1.警告
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.2腎機能障害患者
9.3肝機能障害患者
9.4生殖能を有する者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
10.相互作用
10.2併用注意(併用に注意すること)
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
14.適用上の注意
15.その他の注意
15.2非臨床試験に基づく情報
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.2吸収
16.3分布
16.4代謝
16.5排泄
16.7薬物相互作用
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
18.薬効薬理
18.1作用機序
18.2抗腫瘍作用
19.有効成分に関する理化学的知見
21.承認条件
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
25.保険給付上の注意
26.製造販売業者等

トルカプ錠160mg/トルカプ錠200mg

添付文書番号

4291082F1028_1_02

企業コード

670227

作成又は改訂年月

2025年3月改訂(第2版)
2024年3月作成(第1版)

日本標準商品分類番号

874291

薬効分類名

抗悪性腫瘍剤(AKT阻害剤)

承認等

トルカプ錠160mg

販売名コード

YJコード

4291082F1028

販売名英語表記

Truqap® tablets 160mg

販売名ひらがな

とるかぷじょう

承認番号等

承認番号

30600AMX00119

販売開始年月

2024年5月

貯法・有効期間

貯法

室温保存

有効期間

36カ月

トルカプ錠200mg

販売名コード

YJコード

4291082F2024

販売名英語表記

Truqap® tablets 200mg

販売名ひらがな

とるかぷじょう

承認番号等

承認番号

30600AMX00120

販売開始年月

2024年5月

貯法・有効期間

貯法

室温保存

有効期間

36カ月

一般的名称

カピバセルチブ錠

1. 警告

本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

3. 組成・性状

3.1 組成

トルカプ錠160mg

有効成分1錠中
カピバセルチブ   160mg
添加剤結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、コポビドン、マクロゴール4000、ポリデキストロース、中鎖脂肪酸トリグリセリド、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄

トルカプ錠200mg

有効成分1錠中
カピバセルチブ200mg   200mg
添加剤結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、コポビドン、マクロゴール4000、ポリデキストロース、中鎖脂肪酸トリグリセリド、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄

3.2 製剤の性状

トルカプ錠160mg

剤形明るい灰みの黄赤色の円形のフィルムコーティング錠
外形表面
裏面
側面
大きさ直径約10mm
厚さ約4.5mm
質量約0.42g
識別コードCAV160

トルカプ錠200mg

剤形明るい灰みの黄赤色の楕円形のフィルムコーティング錠
外形表面
裏面
側面 
大きさ直径約14.5mm×約7.3mm
厚さ約5.0mm
質量約0.52g
識別コードCAV200

4. 効能又は効果

内分泌療法後に増悪したPIK3CAAKT1又はPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌

5. 効能又は効果に関連する注意

  1. 5.1 本剤の術前・術後薬物療法としての有効性及び安全性は確立していない。
  2. 5.2 臨床試験に組み入れられた患者の内分泌療法歴等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
  3. 5.3 十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、PIK3CAAKT1又はPTEN遺伝子変異が確認された患者に投与すること。検査にあたっては、承認された体外診断用医薬品又は医療機器を用いること。なお、承認された体外診断用医薬品又は医療機器に関する情報については、以下のウェブサイトから入手可能である:
    https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/cd/0001.html

6. 用法及び用量

フルベストラントとの併用において、通常、成人にはカピバセルチブとして1回400mgを1日2回、4日間連続して経口投与し、その後3日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。

7. 用法及び用量に関連する注意

  1. 7.1 他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
  2. 7.2 本剤投与により副作用が発現した場合には、以下の目安を考慮して、休薬・減量・中止すること。
    減量の目安

    減量レベル

    1回用量

    通常投与量

    400mg

    1段階減量

    320mg

    2段階減量

    200mg

    3段階減量

    投与中止

    副作用発現時の用量調節基準

    副作用

    程度注)

    処置

    高血糖

    症候性のGrade 2

    Grade 1以下に回復するまで休薬する。

    21日以内に回復した場合、同一用量で投与を再開する。

    21日を過ぎてから回復した場合、1段階減量した用量で投与を再開する。

    Grade 3

    Grade 1以下に回復するまで休薬する。

    21日以内に回復した場合、1段階減量した用量で投与を再開する。

    21日以内に回復しなかった場合、投与を中止する。

    Grade 4

    投与を中止する。

    下痢

    Grade 2

    Grade 1以下に回復するまで休薬する。

    21日以内に回復した場合、同一用量又は1段階減量した用量で投与を再開する。

    21日以内に回復しなかった場合、又は再発した場合、1段階減量した用量で投与を再開する。

    Grade 3

    Grade 1以下に回復するまで休薬する。

    21日以内に回復した場合、1段階減量した用量で投与を再開する。

    21日以内に回復しなかった場合、投与を中止する。

    Grade 4

    投与を中止する。

    発疹及びその他の皮膚障害

    Grade 2

    持続する場合、休薬する。

    再開する場合、同一用量で投与する。

    Grade 3

    Grade 1以下に回復するまで休薬する。

    28日以内に回復した場合、1段階減量した用量で投与を再開する。

    28日以内に回復しなかった場合、投与を中止する。

    Grade 3以上の忍容不能な発疹又はその他の皮膚障害が再発した場合、投与の中止を検討する。

    Grade 4

    投与を中止する。

    上記以外の副作用

    Grade 2(忍容不能な場合)
    及び
    Grade 3

    Grade 1以下又は忍容可能なGrade 2に回復するまで休薬する。

    21日以内に回復した場合、同一用量又は1段階減量した用量で投与を再開する。

    21日以内に回復しなかった場合、投与を中止する。

    Grade 4

    投与を中止する。

    注)高血糖のGradeはNCI-CTCAE ver4.03に、その他の副作用のGradeはNCI-CTCAE ver5.0に準じる。

  3. 7.3 強いCYP3A阻害剤と併用する場合には、本剤の1回用量を320mgに減量すること。,

8. 重要な基本的注意

  1. 8.1 *高血糖があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシスに至ることがあるので、投与開始前及び投与中は定期的に空腹時血糖値及びHbA1cの測定を行うこと。本剤投与中は血糖値、HbA1cの測定に加えて、ケトン体の測定を実施することが望ましい。
    本剤の使用にあたっては、患者に対し高血糖について十分に説明するとともに、高血糖の症状(口渇、頻尿、多尿、体重減少等)があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう指導すること。,

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 *糖尿病若しくはその既往を有する患者又は血糖コントロールが不良な患者

    *高血糖が発現又は悪化し、糖尿病性ケトアシドーシスを発現するリスクが高くなるおそれがある。臨床試験においては、1型糖尿病又はインスリンの投与を必要とする2型糖尿病患者及びHbA1c≧8.0%の患者は除外された。,

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1 重度の腎機能障害のある患者

    重度の腎機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。

9.3 肝機能障害患者

本剤は主に肝臓で代謝されるため、血中濃度が上昇する可能性がある。なお、肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。

9.4 生殖能を有する者

  1. 9.4.1 妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後1カ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。
  2. 9.4.2 生殖可能な男性に投与する場合には、造精機能の低下があらわれる可能性があることを考慮すること。ラット及びイヌを用いた反復投与毒性試験において、AUC比較で臨床曝露量の1.3倍(ラット)又は0.9倍(イヌ)の曝露量で雄生殖器への影響(精巣精細管変性/萎縮性変化、精巣上体精子数減少、細胞残渣等)が認められ、4週間の休薬後においても回復性は認められなかった。

9.5 妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。ラットにおける胚・胎児発生試験において、AUC比較で臨床曝露量の約0.7倍に相当する用量で胚致死作用及び胎児発育抑制が認められた。

9.6 授乳婦

授乳しないことが望ましい。授乳中のラット新生児において本剤の曝露が確認されており、成長への悪影響が認められている。ヒト乳汁中への移行に関するデータはないが、本剤が乳汁に移行する可能性があり、乳児が乳汁を介して本剤を摂取した場合、乳児に重篤な副作用が発現するおそれがある。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

10. 相互作用

  • 本剤は、主にCYP3Aにより代謝され、CYP3Aに弱い阻害作用を示す。また、本剤はMATE1、MATE2-K及びOCT2に阻害作用を示す。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子

強いCYP3A阻害剤

イトラコナゾール

クラリスロマイシン

ボリコナゾール 等

,

本剤の副作用が増強されるおそれがあるので、これらの薬剤との併用は可能な限り避け、CYP3A阻害作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。やむを得ず併用する場合には、本剤を減量するとともに、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。

これらの薬剤等がCYP3Aの代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。

グレープフルーツ含有食品

,

本剤の副作用が増強されるおそれがあるので、摂取しないよう注意すること。

これらの薬剤等がCYP3Aの代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。

中程度のCYP3A阻害剤

ベラパミル

エリスロマイシン

フルコナゾール 等

本剤の副作用が増強されるおそれがあるので、CYP3A阻害作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。やむを得ず併用する場合には、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。

これらの薬剤等がCYP3Aの代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。

強いCYP3A誘導剤

カルバマゼピン

フェニトイン

リファンピシン 等

本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、これらの薬剤との併用は可能な限り避け、CYP3A誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。

これらの薬剤等がCYP3Aの代謝酵素を誘導するため、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。

セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品

本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、摂取しないよう注意すること。

これらの薬剤等がCYP3Aの代謝酵素を誘導するため、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。

中程度のCYP3A誘導剤

モダフィニル

フェノバルビタール

リファブチン 等

本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、CYP3A誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。

これらの薬剤等がCYP3Aの代謝酵素を誘導するため、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。

CYP3Aの基質となる薬剤

ミダゾラム

カルバマゼピン

シクロスポリン 等

これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。

本剤がCYP3Aの代謝活性を阻害するため、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。

MATE1、MATE2-K及びOCT2の基質となる薬剤

メトホルミン

プロカインアミド 等

これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。

本剤がMATE1、MATE2-K及びOCT2を阻害するため、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副作用

  1. 11.1.1 *高血糖

    *高血糖(14.1%)があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシス(0.3%)に至るおそれがある。糖尿病性ケトアシドーシスが疑われる場合は、直ちに休薬、糖尿病性ケトアシドーシスと診断された場合は、投与を中止すること。,

  2. 11.1.2 重度の下痢(9.3%)
  3. 11.1.3 重度の皮膚障害

    多形紅斑(1.7%)、全身性剥脱性皮膚炎(0.6%)等の重度の皮膚障害があらわれることがある。

11.2 その他の副作用

10%以上

1%~10%未満

1%未満

感染症および寄生虫症

尿路感染

血液および

リンパ系障害

貧血

好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症、リンパ球減少症

免疫系障害

過敏症

代謝および栄養障害

食欲減退

神経系障害

味覚不全、頭痛

胃腸障害

下痢(67.3%)、悪心(27.3%)、嘔吐、口内炎

消化不良

皮膚および

皮下組織障害

発疹(34.1%)

そう痒症、皮膚乾燥、薬疹

皮膚炎

腎および
尿路障害

急性腎障害

腎不全、腎機能障害

一般・全身障害および
投与部位の状態

疲労

粘膜の炎症、無力症、発熱

臨床検査

血中クレアチニン増加、グリコヘモグロビン増加、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、白血球数減少

心電図QT延長、糸球体濾過率減少

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意

PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。

15. その他の注意

15.2 非臨床試験に基づく情報

ラットの骨髄小核試験において、総AUC比較で臨床曝露量の約1.3倍に相当する用量で遺伝毒性(異数性誘発作用)が認められたものの、in vitro試験においては変異原性又は染色体構造異常誘発性は認められなかった。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 単回及び反復投与

    日本人進行固形癌患者(5例)にカピバセルチブのカプセル剤1)400mgを単回経口投与し、3~7日間経過した後、カピバセルチブのカプセル剤1)400mgを1日2回連日反復経口投与2)したときの、初回投与後及び反復投与8日目のカピバセルチブの血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった1)

    図 日本人進行固形癌患者にカピバセルチブのカプセル剤1)400mgを単回及び1日2回連日反復経口投与2)したときの血漿中カピバセルチブ濃度推移(平均値±標準偏差)
    表 日本人進行固形癌患者にカピバセルチブのカプセル剤1)400mgを単回及び1日2回連日反復経口投与2)したときのカピバセルチブの薬物動態パラメータ(幾何平均値[幾何変動係数])

    投与時期

    例数

    Cmax
    (ng/mL)

    tmax(h)a

    AUC(0-12h)
    (ng・h/mL)

    t1/2(h)

    単回投与

    5例

    1,062
    (28%)

    1.97
    (0.98, 2.17)

    3,586
    (22%)

    10.2
    (16%)

    反復投与8日目

    5例

    2,094
    (57%)

    2.00
    (0.93, 2.00)

    9,666
    (44%)

    a:中央値(最小値, 最大値)、-:算出せず
     

    また、進行固形癌患者におけるカピバセルチブのCmax及びAUCは80~800mgの用量範囲2)で概ね用量に比例して増加した2)(外国人データ)。

16.2 吸収

  1. 16.2.1 絶対バイオアベイラビリティ

    健康成人(6例)に本剤400mgを単回経口投与及びカピバセルチブ100µgを静脈内投与3)したときの絶対バイオアベイラビリティは29%であった3)(外国人データ)。

  2. 16.2.2 食事の影響

    健康成人に本剤400mgを単回経口投与したとき、短時間絶食(投与2時間前から投与1時間後まで絶食)(21例)に対する空腹時投与(22例)におけるカピバセルチブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.72及び0.84であった。また、健康成人に本剤400mgを単回経口投与したとき、短時間絶食(投与2時間前から投与1時間後まで絶食)(21例)に対する高脂肪・高カロリー食後投与(22例)におけるカピバセルチブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.85及び1.13であった4)(外国人データ)。

16.3 分布

健康成人(6例)にカピバセルチブ100µgを単回静脈内投与3)したときの分布容積は205Lであった5)(外国人データ)。カピバセルチブのヒト血漿タンパク結合率は76.8~78.9%であった(in vitro)。カピバセルチブの血液/血漿中濃度比は1.402であった6)in vitro)。

16.4 代謝

カピバセルチブの代謝に寄与する主なCYP分子種はCYP3Aであり、UGT2B7もカピバセルチブの代謝に寄与する7),8)in vitro)。血漿中の主代謝物はエーテル型グルクロン酸抱合体と同定され、未変化体及び代謝物の総和の83%に相当した。また、血漿中に存在する未変化体及び代謝物の総和のうち、未変化体の占める割合は15%であった。活性代謝物は同定されなかった8)(外国人データ)。

16.5 排泄

健康成人(5例)に[14C]-カピバセルチブ400mgを単回経口投与したとき、投与168時間後までに投与放射能の45%が尿中に、50%が糞中に排泄された。尿中には投与168時間後までに投与放射能の7.4%が未変化体として排泄された。腎クリアランスは全身クリアランスの21%を占めた9)(外国人データ)。

16.7 薬物相互作用

  1. 16.7.1 イトラコナゾール

    健康成人(11例)にイトラコナゾール(強いCYP3A阻害剤)200mgを1日目は1日2回、2~5日目は1日1回で反復経口投与し、本剤80mg2)を単回経口投与したとき、本剤単独投与時に対するイトラコナゾール併用投与時のカピバセルチブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ1.70及び1.95であった10)(外国人データ)。,

  2. 16.7.2 ミダゾラム

    進行固形癌患者(21例)に本剤400mgを1日2回、4日間連続して経口投与、その後3日間休薬し、ミダゾラム(CYP3A基質)1mgを単回経口投与したとき、ミダゾラム単独投与時に対する本剤併用投与時(間欠投与スケジュールの4日目)のミダゾラムのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ1.25及び1.75であった11)(外国人データ)。

  3. 16.7.3 生理学的薬物動態モデルによるシミュレーション12)

    生理学的薬物動態モデルによるシミュレーションにより、本剤400mgを1日2回、4日間連続して経口投与、その後3日間休薬したときの薬物相互作用を推定した。

    1. (1) 本剤単独投与時に対するベラパミル及びエリスロマイシン(中程度のCYP3A阻害剤)併用投与時のカピバセルチブのAUCの幾何平均値の比は、それぞれ1.40~1.41及び1.41~1.42と推定された。
    2. (2) 本剤単独投与時に対するリファンピシン(強いCYP3A誘導剤)併用投与時のカピバセルチブのAUCの幾何平均値の比は0.27~0.31と推定された。
    3. (3) 本剤単独投与時に対するモダフィニル(中程度のCYP3A誘導剤)併用投与時のカピバセルチブのAUCの幾何平均値の比は0.76~0.79と推定された。
    4. (4) メトホルミン(MATE1、MATE2-K及びOCT2基質)単独投与時と比較して本剤併用投与時にメトホルミンの曝露量が上昇する可能性が示唆された。
  4. 16.7.4 その他
    1. (1) ラベプラゾール
      健康成人(22例)にラベプラゾール20mgを1日2回で3日間投与し、本剤400mgを単回経口投与したとき、本剤単独投与時に対するラベプラゾール併用投与時のカピバセルチブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.73及び0.94であった4)(外国人データ)。
    2. (2) カピバセルチブはCYP2C9、CYP2D6、UGT1A1、UGT1A4、BCRP、OATP1B1、OATP1B3及びOAT3を阻害した13)in vitro)。
    3. (3) カピバセルチブはP-gp及びOCT2の基質であることが示された13)in vitro)。

      1) カプセル剤は未承認である。

      2) 本剤の承認用法・用量は「1回400mgを1日2回、4日間連続して経口投与し、その後3日間休薬する」である。

      3) 注射剤は未承認である。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  1. 17.1.1 国際共同第III相試験(CAPItello-291試験)

    アロマターゼ阻害剤を含む内分泌療法後に増悪した、エストロゲン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌患者4)708例(本剤+フルベストラント併用投与群355例[日本人37例]、プラセボ+フルベストラント併用投与群353例[日本人41例])を対象に、本剤+フルベストラント併用投与とプラセボ+フルベストラント併用投与の有効性及び安全性を比較する無作為化二重盲検国際共同第III相試験を実施した14)

    4) 性別、閉経状況にかかわらず対象とされた。
     

    本剤1回400mg又はプラセボ(1日2回、4日間投与3日間休薬)とフルベストラント500mg(1サイクルを28日間として、第1サイクルの1及び15日目並びに第2サイクル以降の1日目)を病勢進行等が認められるまで投与を継続した。閉経前の乳癌患者にはLH-RHアゴニストが併用投与された。

    主要評価項目の一つであるPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異陽性集団における治験責任(分担)医師評価による無増悪生存期間について、本剤+フルベストラントの併用投与により、プラセボ+フルベストラントの併用投与と比較して統計学的に有意な延長が認められた。

    表 国際共同第III相試験(CAPItello-291試験)における成績a 層別Cox比例ハザードモデル。log-rank検定及びCoxモデルは、肝転移の有無、及びCDK4/6阻害剤の前治療歴の有無により層別化した。
    b 層別log-rank検定
     

    PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異陽性集団

    289例

    本剤+

    フルベストラント群

    プラセボ+

    フルベストラント群

    • 症例数(日本人症例数)

    155(19)

    134(19)

    無増悪生存期間中央値

    (カ月)(95%信頼区間)

    7.3(5.5, 9.0)

    3.1(2.0, 3.7)

    ハザード比a
    (95%信頼区間)

    0.50(0.38, 0.65)

    p値b

    <0.001

    図 無増悪生存期間のKaplan-Meier曲線(PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異陽性集団、治験責任[分担]医師評価)
     

    本剤とフルベストラントが併用投与された355例(日本人37例を含む)中343例(96.6%)に有害事象が認められた。主な有害事象は、下痢257例(72.4%)、悪心123例(34.6%)、発疹78例(22.0%)、疲労74例(20.8%)及び嘔吐73例(20.6%)等であった。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

カピバセルチブは、AKTのキナーゼ活性を阻害する15)。カピバセルチブは、AKT及びその下流のシグナル伝達分子を阻害することにより、腫瘍増殖抑制効果を示すと考えられている16)

18.2 抗腫瘍作用

  1. 18.2.1 In vitro

    カピバセルチブは、PIK3CA/PTEN遺伝子変異陽性、PIK3CA遺伝子変異陽性、及びPTEN遺伝子変異陽性の乳癌由来細胞株に対して増殖抑制作用を示した17)

  2. 18.2.2 In vivo

    カピバセルチブは、PIK3CA/PTEN遺伝子変異陽性、PIK3CA遺伝子変異陽性、AKT1遺伝子変異陽性、及びPTEN遺伝子変異陽性の乳癌患者由来腫瘍組織片を皮下移植したヌードマウス等において、腫瘍増殖抑制作用を示した18)

19. 有効成分に関する理化学的知見

一般的名称

カピバセルチブ(Capivasertib)(JAN)

化学名

4-Amino-N-[(1S)-1-(4-chlorophenyl)-3-hydroxypropyl]-1-(7H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)piperidine-4-carboxamide

分子式

C21H25ClN6O2

分子量

428.92

性状

本品は白色の粉末である。

化学構造式

21. 承認条件

医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

22. 包装

  • トルカプ錠160mg

    32錠[8錠(PTP)×4]

  • トルカプ錠200mg

    32錠[8錠(PTP)×4]

23. 主要文献

1) 社内資料:日本人の安全性/薬物動態試験(2024年3月26日承認、CTD2.7.2.6)

2) 社内資料:単回投与時の用量比例性(2024年3月26日承認、CTD2.7.2.3.1.4)

3) 社内資料:カピバセルチブの吸収(2024年3月26日承認、CTD2.7.2.3.1.1)

4) 社内資料:食事の影響(2024年3月26日承認、CTD2.7.6.2.8.2.2)

5) 社内資料:カピバセルチブの分布(2024年3月26日承認、CTD2.7.2.3.1.2)

6) 社内資料:カピバセルチブのin vitroタンパク結合と血球移行性(2024年3月26日承認、CTD2.6.4.4.1)

7) 社内資料:In vitro代謝試験(2024年3月26日承認、CTD2.6.4.5.2)

8) 社内資料:カピバセルチブの代謝(2024年3月26日承認、CTD2.7.2.3.1.3.1)

9) 社内資料:ADME試験(2024年3月26日承認、CTD2.7.6.2.9.3)

10) 社内資料:イトラコナゾールの影響(2024年3月26日承認、CTD2.7.6.2.7.2.2)

11) 社内資料:ミダゾラムへの影響(2024年3月26日承認、CTD2.7.6.2.6.2.2)

12) 社内資料:生理学的薬物速度論モデルによるシミュレーション(2024年3月26日承認、CTD2.7.2.3.3.3.1)

13) 社内資料:In vitro相互作用試験(2024年3月26日承認、CTD2.6.4.7)

14) Turner NC, et al. N Engl J Med. 2023;388(22):2058-2070

15) 社内資料:カピバセルチブのAKT阻害活性(2024年3月26日承認、CTD2.6.2.2.1.1)

16) 社内資料:カピバセルチブによるリン酸化阻害(2024年3月26日承認、CTD2.6.2.2.1.2)

17) 社内資料:カピバセルチブのin vitro細胞増殖抑制作用(2024年3月26日承認、CTD2.6.2.2.1.3)

18) 社内資料:異種移植モデルにおけるカピバセルチブの抗腫瘍効果(2024年3月26日承認、CTD2.6.2.2.2.3)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

アストラゼネカ株式会社 メディカルインフォメーションセンター

〒530-0011 大阪市北区大深町3番1号

TEL 0120-189-115

https://www.astrazeneca.co.jp

25. 保険給付上の注意

本剤は新医薬品であるため、厚生労働省告示第107号(平成18年3月6日付)に基づき、2025年5月末日まで、投薬期間は1回14日分を限度とされています。

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元

アストラゼネカ株式会社

大阪市北区大深町3番1号

〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル

画面を閉じる

Copyright © Pharmaceuticals and Medical Devices Agency, All Rights reserved.