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劇薬
処方箋医薬品注)
本剤は,緊急時に十分対応できる医療施設において,造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで,本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また,本剤による治療開始に先立ち,患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し,同意を得てから投与を開始すること。
通常,成人にはダサチニブとして1日1回100mgを経口投与する。なお,患者の状態により適宜増減するが,1日1回140mgまで増量できる。
通常,成人にはダサチニブとして1回70mgを1日2回経口投与する。なお,患者の状態により適宜増減するが,1回90mgを1日2回まで増量できる。
疾患及び病期
好中球数/血小板数
投与量調節
慢性期慢性骨髄性白血病(CML)(初回用量1日1回100mg)
好中球数<1,000/mm3又は血小板数<50,000/mm3
①好中球数1,000/mm3以上及び血小板数50,000/mm3以上に回復するまで休薬する。②1日1回100mgで治療を再開する。③血小板数が25,000/mm3を下回るか,再び好中球数が7日間を超えて1,000/mm3を下回った場合は,①へ戻り,2回目の発現時は1日1回80mgで治療を再開する。3回目の発現時は,初発の慢性期CML患者では1日1回50mgで治療を再開し,イマチニブに効果不十分又は忍容性のない慢性期CML患者では投与を中止する。
移行期CML,急性期CML又はフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)(初回用量1回70mgを1日2回)
注1)好中球数<500/mm3又は血小板数<10,000/mm3
①血球減少が白血病に関連しているかを確認(骨髄穿刺又は生検)する。②白血病に関連しない場合は,好中球数1,000/mm3以上及び血小板数20,000/mm3以上に回復するまで休薬する。③1回70mgを1日2回で治療を再開する。④再度発現した場合には,①へ戻り,2回目の発現時は1回50mgを1日2回,3回目の発現時は1回40mgを1日2回で治療を再開する。⑤白血病に関連する場合は,1回90mgを1日2回までの増量を考慮する。
注1:原則として,患者の全身状態に十分注意し,少なくとも投与開始(第1日)から第14日までは治療を継続した後の検査値
副作用の重症度
グレード3又は4
①グレード1以下又はベースラインに回復するまで休薬する。②1日1回80mgで治療を再開する。③再び同じ副作用(グレード3又は4)が発現した場合には,初発の慢性期CML患者では①へ戻り,1日1回50mgで治療を再開し,イマチニブに効果不十分又は忍容性のない慢性期CML患者では原則として投与を中止する。
①グレード1以下又はベースラインに回復するまで休薬する。②1回50mgを1日2回で治療を再開する。③再び同じ副作用(グレード3又は4)が発現した場合には,原則として投与を中止する。
グレードはNCI-CTCに準じる。
前治療の副作用の内容を確認してから投与すること。本剤を使用する際には,慎重に経過観察を行い,副作用発現に注意すること。イマチニブの投与中止の原因となった副作用と同様の副作用が起こるおそれがある。
間質性肺疾患を増悪させるおそれがある。
QT間隔延長が起こるおそれがある。,
出血傾向を増強するおそれがある。,
心臓の副作用(急性心不全,うっ血性心不全,心筋症,拡張機能障害,駆出率低下,左室機能不全及び致死的な心筋梗塞等)が発現するおそれがある。
本剤の投与開始後は継続して肝機能検査や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど,B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤の投与によりB型肝炎ウイルスの再活性化があらわれることがある。,
肝機能障害患者に投与する場合には十分注意すること。本剤は主に肝臓で代謝されるため,肝機能障害患者では高い血中濃度が持続するおそれがある。肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。
妊娠可能な女性に対しては,投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。外国において,妊娠中に本剤を服用した患者で,児の奇形及び胎児水腫等の胎児毒性が報告されている。また,動物実験において,ヒトでの臨床用量で得られる血漿中濃度以下で,ラットで胚致死作用及び胎児毒性,ウサギで胎児毒性が報告されている。,
授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。本剤のヒト乳汁中への移行については不明である。
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に高齢者では生理機能が低下している。なお,臨床試験において,65歳未満の患者と比較し,65歳以上の患者で胸水,呼吸困難,疲労,食欲障害,咳嗽,下部消化管出血,心嚢液貯留,体重減少,浮動性めまい,腹部膨満,及びうっ血性心不全の発現頻度が高かった。
**CYP3A4阻害剤
グレープフルーツジュース
本剤とケトコナゾールの併用により,本剤のCmax及びAUCはそれぞれ4倍及び5倍増加した。CYP3A4阻害作用のない又は低い代替薬の使用が推奨される。CYP3A4阻害作用の強い薬剤との併用が避けられない場合は,有害事象の発現に十分注意して観察を行い,本剤を減量して投与することを考慮すること。
これらの薬剤等がCYP3A4活性を阻害し,本剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。
CYP3A4誘導剤
セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort, セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
本剤の血中濃度が低下する可能性がある。リファンピシン8日間投与後に本剤を投与した場合,本剤のCmax及びAUCはそれぞれ81%及び82%低下した。CYP3A4誘導作用の強い薬剤との併用は推奨されない。CYP3A4誘導剤を処方する場合,誘導作用のない又は低い代替薬を考慮すること。
これらの薬剤等がCYP3A4を誘導し,本剤の血中濃度を低下させる可能性がある。
制酸剤(水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム含有製剤)
本剤と制酸剤の同時投与は避けること。制酸剤の投与が必要な場合には,本剤投与の少なくとも2時間前又は2時間後に投与すること。
本剤の吸収が抑制され,血中濃度が低下する可能性がある。
H2受容体拮抗剤
プロトンポンプ阻害剤
H2受容体拮抗剤又はプロトンポンプ阻害剤との併用は推奨されない。ファモチジン投与10時間後に本剤を投与したときの本剤のCmax及びAUCはそれぞれ63%及び61%低下し,オメプラゾールを4日間投与し,最終投与22時間後に本剤を投与したときの本剤のCmax及びAUCはそれぞれ42%及び43%低下した。本剤投与中は,これらの薬剤に替えて制酸剤の投与を考慮すること。
CYP3A4の基質となる薬剤
CYP3A4の基質となる薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。本剤とシンバスタチンの併用により,シンバスタチンのCmax及びAUCはそれぞれ37%及び20%上昇した。本剤を治療係数が低いCYP3A4の基質となる薬剤と併用する場合には注意すること。
本剤のCYP3A4阻害作用によりこれら薬剤の血中濃度を上昇させる可能性がある。
QT間隔延長を起こすことが知られている薬剤
QT間隔延長作用を増強する可能性がある。
本剤及びこれらの薬剤はいずれもQT間隔を延長させるおそれがあるため,併用により作用が増強する可能性がある。
抗不整脈薬
汎血球減少(0.9%),白血球減少(21.5%),好中球減少(34.3%),血小板減少(34.0%),貧血(16.4%)があらわれることがある。重篤な好中球減少又は血小板減少があらわれた場合には減量又は休薬すること。,
重篤な出血が生じた場合には減量又は休薬とともに適切な支持療法を行うこと。,
呼吸困難,乾性咳嗽等の胸水を示唆する症状が認められた場合には胸部X線の検査を実施すること。重篤な胸水は,必要に応じて胸腔穿刺,酸素吸入を行うこと。本剤投与中は患者の状態を十分に観察し,体液貯留が認められた場合には,利尿剤又は短期間の副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な支持療法を行うこと。
肺炎(1.8%),敗血症(0.3%)等の感染症があらわれることがある。また,B型肝炎ウイルスの再活性化があらわれることがある。,,
発熱,咳嗽,呼吸困難及び胸部X線検査異常等が認められた場合には投与を中止し,副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
異常が認められた場合には投与を中止し,適切な処置(生理食塩液,高尿酸血症治療剤等の投与,透析等)を行うとともに,症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること。
QT間隔延長が認められた場合には減量又は休薬とともに電解質異常(低カリウム血症,低マグネシウム血症等)の補正を行うこと。,
急性腎障害(0.3%),ネフローゼ症候群(頻度不明)等があらわれることがある。
本剤を長期にわたり投与した際に発現した例も報告されている。観察を十分に行い,呼吸困難,胸痛等の症状があらわれた場合には投与を中止するとともに,他の病因(胸水,肺水腫等)との鑑別診断を実施した上で,適切な処置を行うこと。
10%以上
10%未満
頻度不明
感染症
感染,鼻咽頭炎,気管支炎,膀胱炎,サイトメガロウイルス感染,毛包炎,胃腸炎,ヘルペスウイルス感染,眼感染,インフルエンザ,膣カンジダ症,尿路感染,気管支肺炎,蜂巣炎,帯状疱疹,爪白癬,外耳炎,足部白癬,上気道感染,歯肉感染,感染性腸炎,副鼻腔炎
感染性小腸結腸炎
血液
リンパ球数減少
網状赤血球数減少,発熱性好中球減少症,播種性血管内凝固,CD4リンパ球数増加,プロトロンビン時間延長,網状赤血球数増加,APTT延長,白血球数増加,好中球数増加,血小板数増加,リンパ球数増加,好酸球数増加,INR増加,単球数減少,プロトロンビン時間短縮,CD4リンパ球数減少,リンパ節症,鉄欠乏性貧血,血中フィブリノゲン増加,フィブリン分解産物増加
赤芽球癆
免疫系
移植片対宿主病,過敏症
結節性紅斑
代謝
電解質異常(リン,カリウム,カルシウム注),マグネシウム,ナトリウム,クロール)
甲状腺機能低下症,血中甲状腺刺激ホルモン増加,BNP増加,CRP増加,脱水,総蛋白増加,食欲不振,血中尿酸増加,血中アルブミン減少,総蛋白減少,糖尿病
高コレステロール血症
精神
不眠症,抑うつ気分,無感情
不安,感情不安定,錯乱状態,リビドー減退
神経系
頭痛
味覚異常,浮動性めまい,意識消失,傾眠,肋間神経痛,感覚鈍麻,振戦,手根管症候群,体位性めまい,頚椎症性神経炎,頚腕症候群,片頭痛,脳腫瘤,大脳石灰化
失神,健忘,痙攣,脳血管発作,一過性脳虚血発作,末梢性ニューロパチー,視神経炎
眼
霧視,角膜炎,眼球乾燥,結膜充血,羞明,アレルギー性結膜炎,結膜炎,白内障,眼脂,後嚢部混濁,網膜症,飛蚊症,眼圧上昇
流涙増加
耳
耳不快感,耳管閉塞,耳鳴,聴力低下
回転性めまい
心臓
心拡大,動悸,頻脈,大動脈弁閉鎖不全症,僧帽弁閉鎖不全症,洞性徐脈,上室性期外収縮,心室性期外収縮,左室肥大,不整脈,第一度房室ブロック,心房頻脈,脚ブロック,心肥大,心筋症,左房拡張,心電図ST部分下降
心機能障害,狭心症,心膜炎,心室性不整脈,心室性頻脈,心筋炎,急性冠動脈症候群,肺性心,心房細動,心房粗動,心電図異常T波
血管
出血(肺出血,歯肉出血,結膜出血,鼻出血,皮下出血,点状出血,カテーテル留置部位出血)
低血圧,高血圧,ほてり,血腫
血栓性静脈炎,網状皮斑,血栓症/塞栓症(肺塞栓症,深部静脈血栓症)
呼吸器
咳嗽
呼吸困難,低酸素症,発声障害,咽喉頭疼痛,上気道の炎症,咽頭紅斑,咽喉頭不快感,湿性咳嗽,鼻漏,痰貯留,鼻炎,胸膜炎,鼻痛
肺浸潤,肺臓炎,肺高血圧症,喘息,気管支痙攣,急性呼吸窮迫症候群
消化器
下痢(24.2%),悪心
腹痛,腹部膨満,口唇炎,歯肉炎,胃不快感,異常便,変色便,胃炎,痔核,口唇水疱,心窩部不快感,口内乾燥,歯肉腫脹,口唇乾燥,口の感覚鈍麻,便秘,嘔吐,口内炎,びらん性胃炎,歯痛,裂肛,齲歯,腸炎,腸憩室,消化不良,胃潰瘍,歯肉痛,裂孔ヘルニア,鼡径ヘルニア,歯周炎,肛門周囲痛,逆流性食道炎,唾液腺痛,胃異形成,痔出血,口の錯感覚,腹壁障害,口腔粘膜びらん,腹部不快感,食道炎,歯根嚢胞
粘膜炎,大腸炎,嚥下障害,上部消化管潰瘍,膵炎,タンパク漏出性胃腸症
肝臓
AST上昇,ALT上昇,LDH上昇
胆嚢炎,ビリルビン上昇,Al-P上昇,γ-GTP上昇,脂肪肝
胆汁うっ滞,肝炎
皮膚
発疹
紅斑,ざ瘡,脱毛症,湿疹,そう痒症,紫斑,皮膚乾燥,多汗症,爪の障害,丘疹,皮膚剥脱,皮膚肥厚,全身性そう痒症,蕁麻疹,皮膚色素脱失,皮膚嚢腫,皮膚炎,皮脂欠乏性湿疹,結節性紅斑,毛髪変色,脂漏性皮膚炎,皮膚潰瘍,皮下結節,手掌・足底発赤知覚不全症候群
水疱形成,色素沈着障害,光線過敏性反応,急性熱性好中球性皮膚症,脂肪織炎,手足症候群
筋・骨格系
筋痛,CK上昇
関節痛,四肢痛,背部痛,筋力低下,筋骨格硬直,側腹部痛,関節腫脹,骨関節炎,滑液嚢腫,腱痛,CK減少,筋痙縮,頚部痛,筋骨格痛,変形性脊椎炎,滑膜炎,顎関節症候群,腱鞘炎,椎間板突出,骨痛
筋肉の炎症,横紋筋融解,腱炎,投与中止に伴う筋骨格系疼痛
腎臓
血尿,蛋白尿,夜間頻尿,クレアチニン上昇,血中尿素増加,頻尿,血中クレアチニン減少
生殖器
乳房痛,女性化乳房,月経困難症,不正子宮出血,性器潰瘍形成,不規則月経,腟分泌物
全身
発熱,表在性浮腫(浮腫,眼瞼浮腫,咽頭浮腫,顔面腫脹,末梢性浮腫,顔面浮腫,腫脹,口腔浮腫)(26.3%),倦怠感
胸痛,悪寒,疲労,熱感,疼痛,胸部不快感,口渇,異常感,末梢冷感,限局性浮腫,インフルエンザ様疾患
無力症,温度変化不耐症
その他
体重増加
腫瘍熱,体重減少,尿沈渣異常,潜血,血中アミラーゼ増加,尿中ウロビリン陽性,尿中ブドウ糖陽性,血中トリグリセリド増加,血中葉酸減少,ビタミンB12減少
挫傷
健康成人229例の単回投与時及び白血病患者137例の1日1回又は2回投与時の血漿中濃度は,ダサチニブを経口投与後,0.5~6時間(Tmax)でCmaxに到達した。白血病患者に15~240mg/日投与時のAUCは投与量比例的に増加し,t1/2は投与量によらずおおむね3~5時間であった(海外データ)1)。
慢性期慢性骨髄性白血病の日本人患者にダサチニブ50mg,70mg又は90mgを1日2回*反復経口投与後,ダサチニブは速やかに吸収され,血漿中濃度は投与後1時間付近で最高血漿中濃度(Cmax)に到達した。Cmax到達後,血漿中濃度はおおむね4~5時間の消失半減期(t1/2)で比較的速やかに低下した。Cmax及び投与間隔当たりの血漿中濃度時間曲線下面積(AUC0-12h)は投与量に依存して増加した2)。*:慢性期慢性骨髄性白血病の承認用法用量は1日1回100mgである。
1回投与量(mg)
投与日
n
Cmaxa(ng/mL)
AUC0-12ha(ng・h/mL)
t1/2b(h)
Tmaxc(h)
50
1
7
94.10(37)
283.17(28)
4.90(1.86)
0.97(0.50, 1.05)
28
5
117.83(50)
342.87(41)
4.53(1.30)
0.93(0.50, 1.07)
70
113.89(53)
304.78(53)
3.85(0.36)
0.95(0.50, 1.97)
129.14(72)
398.80(55)
3.99(1.17)
0.98(0.50, 1.97)
90
4
150.55(57)
384.75(30)
3.51(0.65)
0.75(0.48, 1.00)
2
65.90
285.95
11.70
0.52(0.50, 0.53)
a 幾何平均値(変動係数 %)b 算術平均値(標準偏差)c 中央値(最小,最大)
固形癌の日本人患者にダサチニブ100mg,150mg又は200mg*を1日1回反復経口投与後,ダサチニブは速やかに吸収され,血漿中濃度は投与後0.5~3.3時間で最高血漿中濃度(Cmax)に到達した3)。*:承認1日最大用量は180mgである。
AUCa(ng・h/mL)
100
9
139.83(54)
537.98(33)
4.77(0.61)
1.0(0.5, 4.0)
14
137.03(55)
499.69(36)
5.75(1.67)
1.0(0.5, 3.0)
150
3
127.10(83)
544.36(54)
4.68(0.84)
1.0(1.0, 1.0)
166.43(109)
694.90(77)
5.04(1.19)
200
124.48(69)
595.62(56)
7.62(4.11)
1.3(0.5, 3.0)
102.61(127)
716.27(114)
7.95(5.62)
2.3(1.5, 3.0)
a 幾何平均値(変動係数 %)b 算術平均値(標準偏差)c 中央値(最小,最大)AUC:投与1日目はAUC(INF)及び投与14日目はAUC(TAU)を示す。
慢性骨髄性白血病患者及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病患者1216例を対象とした母集団薬物動態解析の結果,全症例における平均全身クリアランス値は283L/hであった。このうち,初発の慢性期慢性骨髄性白血病の日本人患者26例に対する100mg1日1回経口投与時の定常状態におけるCmax,AUC0-24h及びトラフ濃度(Cmin)の推定値は,それぞれ91.0ng/mL,456ng・h/mL及び2.21ng/mLであった4)。
例数
平均値(変動係数%)
Cmin(ng/mL)
Cmax(ng/mL)
AUC0-24h(ng・h/mL)
26
2.21(46%)
91.0(64%)
456(49%)
母集団薬物動態解析により推定された個別値から算出
健康成人54例を対象に薬物動態に及ぼす食事の影響を検討した結果,絶食時投与と比較して高脂肪食を摂取30分後に100mgを単回経口投与した時のAUCの平均値は,14%増加した(海外データ)5)。
白血病患者における見かけの分布容積は大きく,ダサチニブは血管外に広く分布することが示唆された。In vitro試験において,ヒト血漿に対するダサチニブ及び活性代謝物の蛋白結合率は,100~500ng/mLの濃度範囲でそれぞれ約96%及び93%であり,濃度に依存しなかった6)。
ダサチニブは主にCYP3A4により代謝され,活性代謝物は主にこのCYP3A4を介して生成される。その他にも,ダサチニブはフラビン含有モノオキシゲナーゼ酵素3(FMO-3)及びUDP-グルクロニルトランスフェラーゼ(UGT)により代謝される。ヒト肝ミクロソームを用いた試験では,ダサチニブは時間依存的な弱い阻害作用を示した。ダサチニブと同程度の薬理活性を示す代謝物のAUCはダサチニブの約5%である。したがって,この活性代謝物は本剤を服用することにより観察される薬理作用にあまり寄与しないと考えられる。また,この他にも薬理活性を有していない代謝物が数種類存在する1),7)。
主要な消失経路は糞便中への排泄である。[14C]ダサチニブを単回経口投与後,10日以内に投与放射能の約4%が尿中に,約85%が糞便中に排泄された。尿中及び糞便中に排泄された未変化体は,投与放射能のそれぞれ0.1%及び19%であり,尿中及び糞便中に排泄された放射能の大部分が代謝物であった(海外データ)8)。
ダサチニブの薬物動態に対する年齢及び性別の影響は認められていない(海外データ)。
初発の慢性期慢性骨髄性白血病患者を対象とした日本を含む国際共同臨床第Ⅲ相試験の成績を以下に示す9)。
ダサチニブ
イマチニブ
例数(例)
259
260
投与量
100mg1日1回
400mg1日1回
確定した細胞遺伝学的完全寛解注2(12ヵ月間以内)
76.8%(199/259)
66.2%(172/260)
細胞遺伝学的完全寛解注2(12ヵ月間以内)
85.3%(221/259)
73.5%(191/260)
分子遺伝学的Major寛解注3
52.1%(135/259)
33.8%(88/260)
例数:日本人 ダサチニブ26例,イマチニブ23例を含む。投与期間:ダサチニブ14.0ヵ月,イマチニブ14.3ヵ月(中央値)
本剤(初回用量100mg1日1回)の投与を受けた初発の慢性期慢性骨髄性白血病患者258例(日本人安全性評価対象26例を含む)の副作用発現頻度は,79.8%(206/258例)であった。主な副作用は,下痢17.4%(45/258例),頭痛11.6%(30/258例),胸水10.1%(26/258例)であった。また,主なグレード3又は4の臨床検査値異常は,好中球減少症20.7%(53/256例),血小板減少症19.1%(49/256例),貧血10.2%(26/256例)であった。
イマチニブに対し治療抵抗性又は忍容性のない慢性骨髄性白血病及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病患者を対象とした国内臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験及び臨床第Ⅱ相試験の成績を以下に示す10),11)。
慢性骨髄性白血病
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病
慢性期
移行期・急性期
11
13
70mg1日2回
血液学的完全寛解注1
90.9%(10/11)
54.5%(6/11)
15.4%(2/13)
血液学的Major寛解注1
―
72.7%(8/11)
46.2%(6/13)
細胞遺伝学的完全寛解注2
36.4%( 4/11)
18.2%(2/11)
細胞遺伝学的Major寛解注2
54.5%( 6/11)
27.3%(3/11)
53.8%(7/13)
投与期間:慢性骨髄性白血病 慢性期20.7ヵ月,移行期・急性期8.7ヵ月,フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病2.7ヵ月(中央値)
イマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の患者77例*の副作用の概要を以下に示す。副作用発現頻度は,98.7%(76/77例)であった。主な副作用は,血小板数減少75.3%(58/77例),好中球数減少74.0%(57/77例),白血球数減少64.9%(50/77例),リンパ球数減少58.4%(45/77例),ALT増加51.9%(40/77例),LDH増加50.6%(39/77例),AST増加48.1%(37/77例),下痢46.8%(36/77例),貧血44.2%(34/77例),胸水41.6%(32/77例),発疹40.3%(31/77例),頭痛,発熱各39.0%(30/77例),血中リン減少37.7%(29/77例),CK増加,ヘモグロビン減少,赤血球数減少各36.4%(28/77例),ヘマトクリット減少33.8%(26/77例),倦怠感,咳嗽各32.5%(25/77例),尿中蛋白陽性31.2%(24/77例),血中アルブミン減少29.9%(23/77例),鼻咽頭炎,γ-GTP増加各28.6%(22/77例),浮腫,便秘,悪心,ALP増加各26.0%(20/77例),体重増加23.4%(18/77例),筋痛22.1%(17/77例),CD4リンパ球減少,血中尿酸増加,総蛋白減少,尿中血陽性各20.8%(16/77例)であった。*:安全性評価症例77例。慢性期慢性骨髄性白血病の承認用法用量は1日1回100mgである。承認外用法用量の50mg,70mg又は90mg1日2回の投与を受けた慢性期慢性骨髄性白血病患者を含む。
イマチニブに対し治療抵抗性又は忍容性のない慢性骨髄性白血病及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病患者を対象として,海外の臨床第Ⅱ相試験(2年間成績)及び臨床第Ⅲ相試験の成績を以下に示す12),13),14),15),16)。
移行期
骨髄芽球性急性期
リンパ芽球性急性期
167
174
109
48
46
89.8%(150/167)
50.0%(87/174)
25.7%(28/109)
29.2%(14/48)
34.8%(16/46)
64.4%(112/174)
33.0%(36/109)
35.4%(17/48)
41.3%(19/46)
41.3%(69/167)
33.3%(58/174)
26.6%(29/109)
45.8%(22/48)
54.3%(25/46)
58.7%(98/167)
40.2%(70/174)
33.9%(37/109)
52.1%(25/48)
56.5%(26/46)
投与期間:慢性骨髄性白血病 慢性期8.3ヵ月,移行期13.5ヵ月,骨髄芽球性急性期3.5ヵ月,リンパ芽球性急性期2.9ヵ月,フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病3.0ヵ月(中央値)
ダサチニブは特定の蛋白チロシンキナーゼのキナーゼドメインにあるATP結合部位においてATPと競合する。BCR-ABLのみならずSRCファミリーキナーゼ(SRC,LCK,YES,FYN),c-KIT,EPH(エフリン)A2受容体及びPDGF(血小板由来増殖因子)β受容体を阻害する(IC50=0.2~28nM)17)。
ダサチニブ(5~50mg/kg)は,イマチニブ感受性及び耐性のヒト慢性骨髄性白血病細胞を皮下移植した重症複合免疫不全症(SCID)マウスにおいて,治癒あるいは腫瘍増殖遅延作用を示した19)。
ダサチニブ水和物(Dasatinib Hydrate)
N-(2-Chloro-6-methylphenyl)-2-({6-[4-(2-hydroxyethyl)piperazin-1-yl]-2-methylpyrimidin-4-yl}amino)-1,3-thiazole-5-carboxamide monohydrate
C22H26ClN7O2S・H2O
488.01(無水物)506.02(一水和物)
ダサチニブ水和物は白色~微黄白色の粉末である。ジメチルスルホキシド又はN,N-ジメチルアセトアミドに溶けやすく,エタノール(99.5)に溶けにくく,水にほとんど溶けない。
30錠[10錠(PTP)×3]
1) 社内資料:外国人における単回経口投与試験(平成21年1月21日承認,CTD2.7.2.3)
2) 社内資料:日本人における反復経口投与試験(平成21年1月21日承認,CTD2.7.2.2)
3) **Takahashi S,et al.:Cancer Sci.2011;102(11):2058-2064.
4) 社内資料:母集団薬物動態解析
5) 社内資料:外国人における薬物動態に及ぼす低脂肪食及び高脂肪食の影響(平成21年1月21日承認,CTD2.7.6.2.13)
6) 社内資料:分布(平成21年1月21日承認,CTD2.7.2.3)
7) 社内資料:代謝(動物間の比較)(平成21年1月21日承認,CTD2.6.4.5)
8) 社内資料:排泄(平成21年1月21日承認,CTD2.7.2.3)
9) 社内資料:初発の慢性期慢性骨髄性白血病患者における国際共同臨床第Ⅲ相試験
10) 社内資料:Philadelphia染色体陽性又はBCR-ABL陽性の慢性期慢性骨髄性白血病患者における国内臨床第Ⅱ相試験-1回100mg(1日1回)又は1回50mg(1日2回)投与法
11) 社内資料:Philadelphia染色体陽性慢性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病患者における国内臨床第Ⅱ相試験-継続投与試験-
12) 社内資料:イマチニブに抵抗性又は不耐容の慢性期慢性骨髄性白血病患者におけるダサチニブ100mg1日1回投与法設定のための海外臨床第Ⅲ相無作為化試験(平成21年1月21日承認,CTD2.7.6.2)
13) 社内資料:イマチニブに抵抗性又は不耐容の移行期慢性骨髄性白血病患者における海外臨床第Ⅱ相試験(平成21年1月21日承認,CTD2.7.6.2)
14) 社内資料:イマチニブに抵抗性又は不耐容の骨髄芽球性急性期慢性骨髄性白血病患者における海外臨床第Ⅱ相試験(平成21年1月21日承認,CTD2.7.6.2)
15) 社内資料:イマチニブに抵抗性又は不耐容のリンパ芽球性急性期慢性骨髄性白血病又はPhiladelphia染色体陽性急性リンパ性白血病患者における海外臨床第Ⅱ相試験(平成21年1月21日承認,CTD2.7.6.2)
16) 社内資料:2年間投与による有効性のまとめ-EU clinical summary of efficacy(平成21年1月21日承認,CTD2.7.3 Appendix 1)
17) 社内資料:In vitroでの生化学的及び構造学的実験(平成21年1月21日承認,CTD2.6.2.2.1)
18) 社内資料:細胞アッセイ(平成21年1月21日承認,CTD2.6.2.2.2)
19) 社内資料:CMLモデルにおける抗腫瘍活性(In vivo)(平成21年1月21日承認,CTD2.6.2.2.3)
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