医療用医薬品 詳細表示

ポプスカイン0.5%注シリンジ50mg/10mL

処方せん医薬品

添付文書番号
企業コード
作成又は改訂年月
日本標準商品分類番号
薬効分類名
承認等
一般的名称
2.禁忌(次の患者には投与しないこと)
3.組成・性状
3.1組成
3.2製剤の性状
4.効能又は効果
5.効能又は効果に関連する注意
6.用法及び用量
7.用法及び用量に関連する注意
8.重要な基本的注意
9.特定の背景を有する患者に関する注意
9.1合併症・既往歴等のある患者
9.2腎機能障害患者
9.3肝機能障害患者
9.5妊婦
9.6授乳婦
9.7小児等
9.8高齢者
10.相互作用
10.2併用注意(併用に注意すること)
11.副作用
11.1重大な副作用
11.2その他の副作用
13.過量投与
14.適用上の注意
15.その他の注意
15.1臨床使用に基づく情報
16.薬物動態
16.1血中濃度
16.3分布
16.4代謝
16.5排泄
17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
18.薬効薬理
18.1作用機序
19.有効成分に関する理化学的知見
20.取扱い上の注意
22.包装
23.主要文献
24.文献請求先及び問い合わせ先
26.製造販売業者等

ポプスカイン0.5%注シリンジ50mg/10mL

添付文書番号

1214407G4026_1_07

企業コード

730119

作成又は改訂年月

2024年1月改訂(第1版)

日本標準商品分類番号

871214

薬効分類名

長時間作用性局所麻酔剤

承認等

ポプスカイン0.5%注シリンジ50mg/10mL

販売名コード

YJコード

1214407G4026

販売名英語表記

POPSCAINE 0.5% inj. syringe 50mg/10mL

販売名ひらがな

ぽぷすかいん0.5%ちゅうしりんじ50mg/10mL

承認番号等

承認番号

22300AMX00518

販売開始年月

2011年9月

貯法・有効期間

貯法

室温保存

有効期間

3年

一般的名称

レボブピバカイン塩酸塩注射剤

2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分又はアミド型局所麻酔剤に対し過敏症の既往歴のある患者

3. 組成・性状

3.1 組成

ポプスカイン0.5%注シリンジ50mg/10mL

有効成分1mL中 レボブピバカイン塩酸塩   5.63mg
(レボブピバカインとして   5.0mg(0.5%) )
添加剤1mL中 塩化ナトリウム9.0mg、pH調節剤

3.2 製剤の性状

ポプスカイン0.5%注シリンジ50mg/10mL

剤形注射剤(シリンジ)
pH3.5~5.5
浸透圧比1.0~1.2(生理食塩液に対する比)
性状無色澄明の液

4. 効能又は効果

伝達麻酔

5. 効能又は効果に関連する注意

子宮頸管傍ブロックへは使用しないこと。

6. 用法及び用量

通常、成人に1回30mL(レボブピバカインとして150mg)までを目標の神経あるいは神経叢近傍に投与する。複数の神経ブロックを必要とする場合でも、総量として30mL(レボブピバカインとして150mg)を超えないこと。
なお、期待する痛覚遮断域、手術部位、年齢、身長、体重、全身状態等により適宜減量する。

7. 用法及び用量に関連する注意

本剤に血管収縮剤(アドレナリン)を添加しても、作用持続時間の延長は認められない。

8. 重要な基本的注意

  1. 8.1 まれにショックあるいは中毒症状を起こすことがあるので、本剤の投与に際しては、十分な問診により患者の全身状態を把握するとともに、異常が認められた場合に直ちに救急処置のとれるよう、常時準備をしておくこと。なお、事前の静脈路確保が望ましい。,
  2. 8.2 本剤の投与に際し、その副作用を完全に防止する方法はないが、ショックあるいは中毒症状をできるだけ避けるために、以下の点に留意すること。,,
    1. 8.2.1 患者のバイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数等)及び全身状態の観察を十分に行うこと。
    2. 8.2.2 できるだけ必要最少量にとどめること。追加投与及び持続投与時には過量投与時の発現症状に注意すること。
    3. 8.2.3 注射の速度はできるだけ遅くすること。
    4. 8.2.4 血管の多い部位(頭部、顔面、扁桃等)に注射する場合には、吸収が速いので、できるだけ少量を投与すること。
    5. 8.2.5 注射針が、血管又はくも膜下腔に入っていないことを確かめること。血管内へ誤投与された場合、中毒症状が発現することがあり、また、くも膜下腔へ誤投与された場合、全脊椎麻酔となることがある。
    6. 8.2.6 前投薬や術中に投与した鎮静剤、鎮痛剤等による呼吸抑制が発現することがあるので、これらの薬剤を使用する際は少量より投与し、必要に応じて追加投与することが望ましい。
      なお、高齢者、小児、全身状態が不良な患者、肥満者、呼吸器疾患を有する患者では特に注意し、異常が認められた際には、適切な処置を行うこと。,,
  3. 8.3 注射針又はカテーテルが適切に位置していない等により、神経障害が生じることがあるので、穿刺に際し異常を認めた場合には本剤の注入を行わないこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者

  1. 9.1.1 全身状態が不良な患者

    生理機能の低下により麻酔に対する忍容性が低下していることがある。

  2. 9.1.2 心刺激伝導障害のある患者

    症状を悪化させることがある。

9.2 腎機能障害患者

  1. 9.2.1 重篤な腎機能障害のある患者

    中毒症状が発現しやすくなる。

9.3 肝機能障害患者

  1. 9.3.1 重篤な肝機能障害のある患者

    中毒症状が発現しやすくなる。

9.5 妊婦

  1. 9.5.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
  2. 9.5.2 子宮頸管傍ブロックへは使用しないこと。子宮頸管傍ブロックにより胎児の徐脈を起こすことが知られている。

9.6 授乳婦

治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物試験(ラット)において、乳汁移行性が認められている。

9.7 小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

9.8 高齢者

投与量の減量を考慮するとともに、患者の全身状態の観察を十分に行う等慎重に投与すること。一般に麻酔範囲が広がりやすく、生理機能の低下により麻酔に対する忍容性が低下している。,

10. 相互作用

  • 本剤は、主として肝代謝酵素CYP3A4及びCYP1A2で代謝される。

10.2 併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子

CYP3A4阻害剤(ケトコナゾール、エリスロマイシン、リトナビル、サキナビル、ベラパミル塩酸塩等)及びCYP1A2阻害剤(シメチジン、フルボキサミン、キノロン系抗菌剤等)

本剤の血中濃度が上昇することがある。

本剤の代謝には主にCYP3A4及びCYP1A2が関与しているため、CYP3A4及びCYP1A2阻害剤との併用で、本剤の代謝が阻害され、血中濃度が上昇するおそれがある。

ジゴキシン

レボブピバカインによる中毒症状が発現しやすくなる。

ラットを用いた研究で、ジゴキシンとの併用により、本剤のラセミ体であるブピバカインの中毒閾値が低下したとの報告がある。

アミド型局所麻酔剤

中毒症状が相加的に起こるおそれがある。

他の局所麻酔剤との併用で中毒症状が相加的に起こることが考えられる。

クラスⅢ抗不整脈剤(アミオダロン等)

心機能抑制作用が増強するおそれがあるので、心電図検査等によるモニタリングを行うこと。

作用が増強することが考えられる。

催眠鎮静剤(デクスメデトミジン塩酸塩等)、全身麻酔剤

鎮静・麻酔・鎮痛作用が増強し、血圧低下、心拍数低下、呼吸数低下などの症状があらわれるおそれがあるので、併用する場合には投与速度を減速するなど慎重に投与すること。抜管後に他の鎮静剤、鎮痛剤などと併用する場合は、鎮静効果が相加的に増強するおそれがあるので、本剤あるいは他の鎮静剤、鎮痛剤の投与量を減量するなどの注意が必要である。

相互に作用(鎮静・麻酔・鎮痛作用、循環動態への作用)を増強すると考えられる。

11. 副作用

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

11.1 重大な副作用

  1. 11.1.1 ショック(頻度不明)

    徐脈、不整脈、血圧低下、呼吸抑制、チアノーゼ、意識障害等を生じ、まれに心停止を来すことがある。また、まれにアナフィラキシーショックを起こすおそれがある。,

  2. 11.1.2 意識障害、振戦、痙攣(いずれも頻度不明)

    意識障害、振戦、痙攣等の中毒症状があらわれることがある。,,

  3. 11.1.3 異常感覚、知覚・運動障害(いずれも頻度不明)

    注射針又はカテーテルの留置時に神経(神経幹、神経根)に触れることにより一過性の異常感覚が発現することがある。また、神経が注射針や薬剤あるいは虚血によって障害を受けると、まれに持続的な異常感覚、疼痛、知覚障害、運動障害、硬膜外麻酔及び術後鎮痛では膀胱直腸障害等の神経学的疾患があらわれることがある。

11.2 その他の副作用

5%以上

1%以上5%未満

1%未満

頻度不明

循環器系

血圧低下(23.5%)

徐脈、洞性徐脈、上室性頻脈、心室性期外収縮、ST低下

狭心症、期外収縮、頻脈、高血圧、固有心室調律

呼吸器系

鼻閉、呼吸抑制、酸素飽和度低下

喘息、呼吸困難、低換気、低酸素症、呼吸障害、肺出血

中枢・末梢系

感覚鈍麻

頭痛、頭部不快感、運動機能障害、運動障害、耳鳴

浮動性めまい、錯感覚、麻痺、感覚障害、傾眠、昏迷、失神、振戦、運動低下、脳浮腫、脳症

消化器系

悪心、嘔吐

腹痛

便秘、下痢、便失禁、吐血

血管系

出血、総蛋白減少

潮紅、静脈炎、末梢性虚血

泌尿器系

排尿困難、膀胱膨満

乏尿、尿失禁、尿閉、尿流量減少、アルブミン尿、血尿、無尿、ビリルビン尿

皮膚

そう痒症、多汗症、発疹、紅斑性皮疹、水疱性皮膚炎

血液・リンパ系

白血球数減少、低カリウム血症、血液量減少、好塩基球数増加

精神神経系

悪寒

発熱、激越、不安、無感情、錯乱状態、幻覚

筋骨格筋系

背部痛、筋痙縮、筋力低下、四肢痛

肝臓

AST/ALT/γ-GTP/ALPの増加

高ビリルビン血症

腎臓

尿検査異常

その他

処置疼痛、胸痛、注射部位疼痛、疼痛、創部分泌、偶発的針穿刺

13. 過量投与

  1. 13.1 症状

    局所麻酔剤の過量投与や血管内誤投与又は非常に急速な吸収等による血中濃度の上昇に伴い、中毒が発現する。特に血管内誤投与となった場合には、数分以内に発現することがある。その症状は、主に中枢神経系及び心血管系の症状としてあらわれる。
    また、腕神経叢ブロックや坐骨神経ブロック等の伝達麻酔や硬膜外麻酔で、蘇生術が困難及び死亡に至った報告がある。,

    1. 13.1.1 中枢神経系の症状

      初期症状として視覚障害、聴覚障害、口周囲の知覚麻痺、眩暈、ふらつき、不安、刺痛感、感覚異常があらわれる。また、構音障害、筋硬直、攣縮等があらわれる。症状が進行すると意識消失、全身痙攣があらわれ、これらの症状に伴い低酸素血症、高炭酸ガス血症が生じるおそれがある。より重篤な場合には呼吸停止を来すこともある。

    2. 13.1.2 心血管系の症状

      血圧低下、徐脈、心筋収縮力低下、心拍出量低下、刺激伝導系の抑制、心室性頻脈及び心室細動等の心室性不整脈、循環虚脱、心停止等があらわれる。
      これらの心血管系の症状は、鎮静下又は全身麻酔下において、中枢神経系症状を伴わずに発生することがある。

  2. 13.2 処置

    振戦や痙攣が著明であれば、ジアゼパム又は超短時間作用型バルビツール酸製剤(チオペンタールナトリウム等)を投与する。

14. 適用上の注意

14.1 全般的な注意

  1. 14.1.1 使用時には、以下の点に注意すること。
    • 感染に対する配慮をすること。
    • シリンジが破損するおそれがあるので、シリンジを鉗子等で叩くなど、強い衝撃を与えないこと。
    • 押子(プランジャー)が外れたり、ガスケットが変形し薬液が漏出したりするおそれがあるので押子のみを持たないこと。
    • 押子を反時計回りに回転させると接続に緩みが生じ、ガスケットから押子が外れるおそれがあるので、押子を反時計回りに回転させないこと。
    • 押子を引かないこと。
  2. 14.1.2 本剤はISO80369-6準拠品である。
  3. 14.1.3 本剤の使用にあたっては、接続する医療機器のコネクタ形状を確認すること。本剤のISO規格と医療機器のISO規格が一致した場合にのみ接続可能である。

14.2 薬剤投与時の注意

  1. 14.2.1 使用に際しては、ブリスター包装を開封口からゆっくり開け、外筒(バレル)を持って取り出すこと。
  2. 14.2.2 押子の緩みがないか確認すること。緩みが認められた場合は、押子を時計回りに回転させ締め直すこと。
  3. 14.2.3 筒先のキャップをゆっくり回転させながら外して、注射針等に確実に接続すること。キャップを外した後は、筒先に触れないこと。
  4. 14.2.4 注射針等を接続する場合は誤刺に注意し、しっかりと固定すること。
  5. 14.2.5 局所静脈内麻酔(Bier’s block)として投与しないこと。

14.3 薬剤投与後の注意

シリンジの再滅菌・再使用はしないこと。開封後の使用は1回限りとし、使用後の残液はシリンジとともに速やかに廃棄すること。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報

球後麻酔、眼球周囲麻酔に際し、類薬(リドカイン塩酸塩等)で持続性の眼筋運動障害が発現することが報告されている。本邦における本剤での球後麻酔、眼球周囲麻酔に対する使用経験はない。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度

  1. 16.1.1 伝達麻酔(腕神経叢投与)

    レボブピバカイン0.25% 20mL(50mg)、0.25% 30mL(75mg)、0.25% 40mL(100mg)、0.5% 20mL(100mg)、0.5% 30mL(150mg)及び0.5% 40mL(200mg)1)を腋窩部腕神経叢ブロックによる上肢手術を受ける患者に腋窩部神経血管鞘内へ投与した時、血漿中未変化体濃度は約0.3~0.4時間後に最高に達し、約11~16時間の半減期で消失した(図1及び表1)1),2)

    図1 腕神経叢投与時のレボブピバカイン血漿中未変化体濃度(平均値±標準偏差)
    表1 腕神経叢投与時におけるレボブピバカインの薬物動態パラメータ

    投与群

    0.25%
    20mL

    0.25%
    30mL

    0.25%
    40mL

    0.5%
    20mL

    0.5%
    30mL

    0.5%
    40mL

    評価例数

    12

    12

    11

    11

    7

    8

    Cmax
    (μg/mL)

    0.560±0.202

    0.789±0.301

    1.094±0.589

    1.079±0.344

    1.597±0.336

    2.513±1.707

    Tmax
    (h)

    0.333±0.123

    0.375±0.226

    0.386±0.131

    0.364±0.131

    0.357±0.134

    0.375±0.267

    T1/2
    (h)

    14.6±9.7

    11.4±8.2

    16.2±23.5

    12.2±4.4

    12.3±4.9

    12.2±9.4

    CL
    (L/h)

    15.7±7.4

    15.2±5.8

    16.7±7.2

    14.8±4.2

    17.1±6.3

    19.1±7.0

    Vd
    (L)

    283±170

    201±86

    253±118

    264±120

    281±90

    314±191

    AUC0-∞
    (μg・h/mL)

    4.84±5.21

    5.93±3.17

    9.25±10.73

    7.33±2.39

    10.12±4.37

    12.39±6.44

    平均値±標準偏差

  2. 16.1.2 静脈内投与

    健康成人男子及び男性健康高齢者にレボブピバカイン0.25% 8mL(20mg)を1mL/minの投与速度で前腕部皮下静脈内2)に投与した時、血漿中未変化体濃度は速やかに低下し、最高血中濃度は、それぞれ、1.27及び1.29μg/mL、消失半減期は2.1及び2.5時間、クリアランスは543.9及び380.0mL/minであり高齢者で排泄が遅延する可能性が示唆された3),4)

    評価例数

    Cmax
    (μg/mL)

    T1/2
    (h)

    CL
    (mL/min)

    健康成人男子

    6

    1.27

    2.1

    543.9

    男性健康高齢者

    6

    1.29

    2.5

    380.0

    平均値

16.3 分布

in vitroにおける14C-レボブピバカインの血漿蛋白結合率は、0.1μg/mLの濃度では94.8%であり、10μg/mLの濃度では74.5%と高濃度で血漿蛋白結合の飽和がみられた。また、精製蛋白に対する結合率では、ヒト血清アルブミン、ヒトα1-酸性糖蛋白及びヒトグロブリンに対する結合率は0.1μg/mLでそれぞれ49.7%、82.0%及び11.1%、10μg/mLでそれぞれ53.7%、55.0%及び8.3%であり、ヒトα1-酸性糖蛋白において蛋白結合の飽和が認められた5)

16.4 代謝

本剤は主として肝代謝酵素CYP3A4及びCYP1A2で代謝を受け、CYP3A4はデスブチル体、CYP1A2は3-ヒドロキシ体への代謝に関与することが示されている6)
健康成人男子及び男性健康高齢者にレボブピバカイン0.25% 8mL(20mg)を1mL/minの投与速度で前腕部皮下静脈内2)に投与したところ、静脈内投与後の尿中主要代謝物としてデスブチル体、3-ヒドロキシ体及び4-ヒドロキシ体が検出された3),4)

16.5 排泄

健康成人男子及び男性健康高齢者にレボブピバカイン0.25% 8mL(20mg)を1mL/minの投与速度で静脈内投与2)した結果、投与終了後48時間までに、未変化体、代謝物であるデスブチル体、3-ヒドロキシ体(抱合体を含む)及び4-ヒドロキシ体(抱合体を含む)が、健康成人男子でそれぞれ0.18%、3.01%、5.18%及び0.25%が、男性健康高齢者でそれぞれ0.26%、3.37%、6.38%及び0.27%が尿中に排泄された3),4)

評価例数

未変化体

デスブチル体

3'-OH体

4'-OH体

健康成人男子

6

0.18%

3.01%

5.18%

0.25%

男性健康高齢者

6

0.26%

3.37%

6.38%

0.27%

1) 本剤の承認された用量は、1回30mLまでである。

2) 本剤の承認された用法は、伝達麻酔(目標の神経あるいは神経叢近傍に投与)であり、0.25%製剤に対し承認されている用法は、アンプル及びシリンジ製剤で術後鎮痛(硬膜外腔投与)及び伝達麻酔(目標の神経あるいは神経叢近傍に投与)、バッグ製剤で術後鎮痛(硬膜外腔投与)である。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験

  1. 17.1.1 国内第Ⅲ相比較試験

    伝達麻酔(腋窩部腕神経叢ブロック)による上肢手術患者61例(レボブピバカイン群31例、ブピバカイン群30例)を対象に、レボブピバカイン0.25% 40mL(100mg)の知覚神経遮断効果についてブピバカイン0.25% 40mL(100mg)を対照薬として用いた二重盲検比較試験を実施した。その結果、主要評価項目であるPPSでの知覚神経遮断における痛覚消失効果の平均作用持続時間(平均値±標準偏差)は、本剤群8.86±1.53時間、ブピバカイン群8.44±1.82時間であり、本剤群のブピバカイン群に対する非劣性が検証された(片側p=0.0014、△上乗せによる2標本t検定、△=1時間)。両群間の差とその95%信頼区間は0.42時間[-0.49, 1.33]であった。
    副作用発現頻度は、レボブピバカイン群で3.2%(1/31例)であった。発現した副作用は、頭痛及び悪心であった7)

  2. 17.1.2 国内第Ⅲ相一般試験

    伝達麻酔(腋窩部腕神経叢ブロック)による上肢手術患者24例を対象にレボブピバカイン0.5% 30mL(150mg)を投与し、その知覚神経遮断効果を評価する臨床試験を実施した。その結果、主要評価項目であるFASでの知覚神経遮断における痛覚消失効果の平均作用持続時間(平均値±標準偏差)は9.09±2.91時間であり、95%信頼区間は[7.86, 10.31]であった。
    副作用発現頻度は8.3%(2/24例)であった。発現した副作用は、悪心4.2%(1/24例)、血圧低下4.2%(1/24例)及び酸素飽和度低下4.2%(1/24例)であった8)

    ※橈骨、正中、尺骨、筋皮、内側前腕皮及び内側上腕皮の6つの各神経支配領域での作用持続時間の平均値を示す。

  3. 17.1.3 海外第Ⅲ相試験(アドレナリンとの併用)

    外国人背部手術患者117例(各群39例)を対象に二重盲検下で0.5%レボブピバカイン単独(LEVO Plain群)、0.5%レボブピバカイン+アドレナリン(1:400,000)(LEVO400群)又は0.5%レボブピバカイン+アドレナリン(1:200,000)(LEVO200群)を15~20mL硬膜外腔に投与し麻酔効果について比較した。ITT集団における知覚神経ブロック及び運動神経ブロックの作用持続時間は下表のとおりであり、いずれにおいても3群間で統計学的に有意な差は認められなかった。
    副作用発現頻度は、LEVO Plain群で38.5%(15/39例)、LEVO400群で51.3%(20/39例)及びLEVO200群で46.2%(18/39例)であった。主な副作用は低血圧であり、その発現頻度はLEVO Plain群で17.9%(7/39例)、LEVO400群で35.9%(14/39例)及びLEVO200群で38.5%(15/39例)であった9)

    感覚神経遮断の持続時間(ITT集団)

    投与群

    評価症例数

    平均値±標準偏差
    (min)

    最小値
    (min)

    最大値
    (min)

    投与群比較

    P値a)

    レボブピバカイン単独

    35

    186.3±66.9

    90.0

    375.0

    レボブピバカイン単独vsレボブピバカイン+アドレナリン(1:200,000)

    0.294

    レボブピバカイン+アドレナリン(1:400,000)

    36

    200.3±65.5

    75.0

    360.0

    レボブピバカイン単独vsレボブピバカイン+アドレナリン(1:400,000)

    0.365

    レボブピバカイン+アドレナリン(1:200,000)

    37

    202.4±62.2

    105.0

    375.0

    レボブピバカイン+アドレナリン(1:400,000)vsレボブピバカイン+アドレナリン(1:200,000)

    0.890

    a)ANOVA Bonferroni-Holm procedure

    運動神経遮断の作用持続時間(ITT集団)

    投与群

    評価症例数

    平均値±標準偏差
    (min)

    最小値
    (min)

    最大値
    (min)

    投与群比較

    P値a)

    レボブピバカイン単独

    13

    204.4±63.9

    135.0

    345.0

    レボブピバカイン単独vsレボブピバカイン+アドレナリン(1:200,000)

    0.890

    レボブピバカイン+アドレナリン(1:400,000)

    19

    238.6±109.9

    122.0

    635.0

    レボブピバカイン単独vsレボブピバカイン+アドレナリン(1:400,000)

    0.323

    レボブピバカイン+アドレナリン(1:200,000)

    18

    206.1±62.6

    130.0

    345.0

    レボブピバカイン+アドレナリン(1:400,000)vsレボブピバカイン+アドレナリン(1:200,000)

    0.353

    a)ANOVA Bonferroni-Holm procedure

18. 薬効薬理

18.1 作用機序

神経膜のナトリウムチャネルをブロックし、神経における活動電位の伝導を可逆的に抑制し、知覚神経及び運動神経を遮断することで局所麻酔作用を発現する。

18.2 局所麻酔作用

  1. 18.2.1 ラットへの硬膜外投与(0.25、0.5、0.75及び1.0%)により、痛覚神経遮断作用が認められた。その強度及び持続性は、ブピバカインと同程度であり、その効力比は約1であった。また、0.25%における運動神経遮断作用の持続時間はブピバカインと比べ短く、その効力比は0.78であった10)
  2. 18.2.2 ラットへの硬膜外投与(0.25、0.5及び1.0%)により、痛覚神経遮断作用が認められた。その強度及び持続性は、ロピバカインの約2倍であった。また、1.0%における運動神経遮断作用の持続時間はロピバカインの約1.5倍であった11)

18.3 中枢神経系に対する作用

イヌに静脈内投与(2mg/kg/分)したときの痙攣誘発用量は、レボブピバカインで5.34mg/kg、ブピバカインで4.23mg/kg、ロピバカインで6.43mg/kgであり、差は認められなかった12)

18.4 心循環系に対する作用

イヌにレボブピバカイン、ブピバカイン及びロピバカインを痙攣誘発量の2倍量(それぞれ10.68mg/kg、8.46mg/kg、12.86mg/kg)を静脈内投与し痙攣を誘発させた。その後の痙攣に対する処置(ペントバルビタール投与及び酸素吸入)により、レボブピバカインでは不整脈の発現は認められなかったが、ブピバカインでは6例中2例で発現(内1例死亡)、ロピバカインでは6例中3例で発現(内2例死亡)した13)

19. 有効成分に関する理化学的知見

一般的名称

レボブピバカイン塩酸塩(Levobupivacaine Hydrochloride)(INN:levobupivacaine)

化学名

(2S)-1-Butyl-N-(2,6-dimethylphenyl)piperidine-2-carboxamide monohydrochloride

分子式

C18H28N2O・HCl

分子量

324.89

性状

白色の粉末で、水又はエタノール(99.5)にやや溶けやすい。

化学構造式

融点

約258℃

20. 取扱い上の注意

  1. 20.1 ブリスター包装内は滅菌しているので、使用時まで開封しないこと。
  2. 20.2 以下の場合には使用しないこと。
    • ブリスター包装が破損している場合
    • シリンジから薬液が漏れている場合
    • 性状その他薬液に異状が認められる場合
    • シリンジに破損等の異状が認められる場合
    • キャップが外れている場合

22. 包装

10mL[10シリンジ(ISO80369-6準拠品)]

23. 主要文献

1) 伝達麻酔(腕神経叢ブロック)時の薬物動態(ポプスカイン0.5%注シリンジ50mg/10mL他:2011年4月22日承認、申請資料概要2.7.2.2 2)(2)①)

2) 伝達麻酔(腕神経叢ブロック)における第Ⅱ相臨床試験(ポプスカイン0.5%注シリンジ50mg/10mL他:2011年4月22日承認、申請資料概要2.7.6 1))

3) 薬物動態試験-健康成人男子における単回静脈内投与-(ポプスカイン0.25%注25mg/10mL他:2008年4月16日承認、申請資料概要2.7.6 8))

4) 薬物動態試験-高齢者における単回静脈内投与-(ポプスカイン0.25%注25mg/10mL他:2008年4月16日承認、申請資料概要2.7.6 9))

5) 血漿蛋白結合(ポプスカイン0.25%注25mg/10mL他:2008年4月16日承認、申請資料概要2.6.4.4 2))

6) チトクロムP450による代謝(ポプスカイン0.25%注25mg/10mL他:2008年4月16日承認、申請資料概要2.6.4.5 3))

7) 伝達麻酔(腕神経叢ブロック)における第Ⅲ相比較臨床試験(ポプスカイン0.5%注シリンジ50mg/10mL他:2011年4月22日承認、申請資料概要2.7.6 3))

8) 伝達麻酔(腕神経叢ブロック)における第Ⅲ相一般臨床試験(ポプスカイン0.5%注シリンジ50mg/10mL他:2011年4月22日承認、申請資料概要2.7.6 4))

9) 硬膜外投与による麻酔効果(アドレナリンとの併用)(ポプスカイン0.25%注25mg/10mL他:2008年4月16日承認、申請資料概要2.7.6 26))

10) ラットへの硬膜外投与における知覚および運動神経遮断作用の塩酸ブピバカインとの比較(ポプスカイン0.25%注25mg/10mL他:2008年4月16日承認、申請資料概要2.6.2.2 2)添付資料4.2.1.1-2)

11) ラットへの硬膜外投与における知覚および運動神経遮断作用の塩酸ロピバカインとの比較(ポプスカイン0.25%注25mg/10mL他:2008年4月16日承認、申請資料概要2.6.2.2 2)添付資料4.2.1.1-3)

12) イヌにおける痙攣誘発用量の類薬(塩酸ブピバカイン、塩酸ロピバカイン)との比較(ポプスカイン0.25%注25mg/10mL他:2008年4月16日承認、申請資料概要2.6.6.8 6)添付資料4.2.3.7.7-5)

13) イヌにおける痙攣誘発に対する蘇生処置の影響の類薬(塩酸ブピバカイン、塩酸ロピバカイン)との比較(ポプスカイン0.25%注25mg/10mL他:2008年4月16日承認、申請資料概要2.6.6.8 6)添付資料4.2.3.7.7-6)

14) 伝達麻酔(指神経ブロック)における第Ⅲ相一般臨床試験(ポプスカイン0.5%注シリンジ50mg/10mL他:2011年4月22日承認、申請資料概要2.7.6 5))

15) 伝達麻酔(下肢末梢神経ブロック)における第Ⅲ相一般臨床試験(ポプスカイン0.5%注シリンジ50mg/10mL他:2011年4月22日承認、申請資料概要2.7.6 6))

24. 文献請求先及び問い合わせ先

丸石製薬株式会社 学術情報部

〒538-0042 大阪市鶴見区今津中2-4-2

TEL. 0120-014-561

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元

丸石製薬株式会社

大阪市鶴見区今津中2-4-2



  • 〈製品仕様(構成と各部の名称)〉
  • 〈操作方法〉
  • 〈参考:伝達麻酔法の一般的な推奨容量〉

    麻酔法

    容量

    三叉神経ブロック※1

    0.5~1mL

    星状神経節ブロック※2

    5~10mL

    肋間神経ブロック※1

    1神経あたり2~3mL
    (最大20~25mL)

    腰部交感神経節ブロック※1,2

    10mL

    大腰筋筋溝ブロック※3,4

    15~30mL

    胸膜腔局所麻酔※1

    20mL

    腕神経叢ブロック7),8)

    30~40mL3)

    指神経ブロック14)

    4mL

    大腿神経ブロック15)

    20~30mL

    坐骨神経ブロック15)

    20~30mL

    3) 本剤の1回の伝達麻酔における最大投与量は、複数の神経ブロックを実施する場合でも総量30mL(レボブピバカインとして150mg)までである。

    ※1:「図解局所麻酔法マニュアル」吉矢生人、根岸孝明監訳より引用

    ※2:「麻酔科入門」吉矢生人、真下節編集より引用

    ※3:「局所麻酔マニュアル」花岡一雄編集より引用

    ※4:「ミラー麻酔科学」武田純三監修より引用

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