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劇薬
処方箋医薬品注)
手術時の上室性頻脈性不整脈に対する緊急処置
洞性頻脈においては、その原因検索及びその除去が重要であることに十分留意するとともに、本剤の効果が心拍数の減少であることを踏まえて、本剤は緊急処置として必要に応じて使用すること。
通常、成人には1回0.1mL/kg(塩酸エスモロールとして1mg/kg)を30秒間で心電図の連続監視下に静脈内に投与する。なお、年齢、症状により適宜減量する。引き続き持続投与を行う場合は、0.9mL/kg/時(150μg/kg/分)の投与速度で持続静脈内投与を開始し、適宜投与速度を調節し、目標とする心拍数を維持する。なお、持続投与は、年齢、症状により適宜低用量から開始する。
心機能を抑制し、症状が悪化するおそれがある。
観察を十分に行い、慎重に投与すること。症状を引き起こすおそれがある。
症状が悪化するおそれがある。
低血糖からの回復が遷延するおそれがある。
薬物の代謝・排泄が影響を受けるおそれがある。
末梢循環障害が増悪するおそれがある。
房室伝導時間が延長し、症状が悪化するおそれがある。
本剤投与により血圧低下を来すおそれがある。
他のβ遮断剤投与により急激に血圧が上昇したとの報告がある。,
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠末期又は陣痛ないし分娩時に本剤を使用すると、胎児の徐脈を引き起こしたとの報告がある。また、動物実験(ヒツジ)において胎児移行率は低かったが、胎児の心拍数を低下させたとの報告がある。高用量持続投与時の血中代謝物濃度において子宮平滑筋のオキシトシン収縮を抑制する可能性も示唆されている(ラット)。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中への移行が認められている。
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
次の点に注意し、少量から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
麻酔剤
過剰の交感神経抑制を来すおそれがあるので、注意すること。
相互に作用(交感神経抑制作用)を増強させる。
筋弛緩剤
脱分極性筋弛緩剤の筋弛緩作用時間を延長することがあるので、注意すること。
本剤はスキサメトニウムの筋弛緩作用時間を延長したとの報告がある。
交感神経系抑制剤
交感神経系の過剰の抑制(徐脈、心不全等)を来すことがあるので、減量するなど注意すること。
カルシウム拮抗剤
低血圧、徐脈、房室ブロック等の伝導障害、心不全が発現するおそれがあるので、減量するなど注意すること。
相互に作用(心収縮力や刺激伝導系の抑制作用、降圧作用等)を増強させる。
降圧作用を有する他の薬剤
降圧作用を増強することがあるので、減量するなど適切な処置を行うこと。
相互に降圧作用を増強させる。
モルヒネ
本剤の作用が増強する可能性があるので、注意すること。
モルヒネは本剤の全血中濃度を上昇させたとの報告がある。
血糖降下剤
血糖降下作用が増強されることがあるので、減量するなど注意すること。
血糖値が低下するとカテコールアミンが副腎から分泌され、肝でのグリコーゲンの分解を促し、血糖値を上昇させる。この時、肝臓のβ受容体が遮断されていると、カテコールアミンによる血糖上昇作用が抑えられ、血糖降下作用を増強させる可能性がある。
*クラスⅠ抗不整脈剤
アナモレリン塩酸塩
過度の心機能抑制(徐脈、心停止等)があらわれることがあるので、減量するなど注意すること。
相互に作用(心機能抑制作用)を増強させる。
ジギタリス製剤
房室伝導時間が延長し、徐脈、房室ブロック等が発現することがあるので注意すること。
相互に作用(心刺激伝導抑制作用)を増強させる。
交感神経作動薬
相互の薬剤の効果が減弱する。また血管収縮、血圧上昇、徐脈を来すことがあるので注意すること。
β遮断剤により末梢血管のβ受容体が遮断された状態でアドレナリン等の交感神経作動薬が投与されるとα受容体を介する血管収縮作用だけがあらわれる。副交感神経の反射による徐脈を来す可能性がある。
*コリンエステラーゼ阻害剤
本剤の代謝を阻害し、作用が増強及び作用時間が延長するおそれがあるので、減量するなど慎重に投与すること。
本剤はエステラーゼで代謝されるため、これらの薬剤との併用により本剤の作用が増強及び作用時間が延長するおそれがある。
*クロニジン塩酸塩
グアナベンズ酢酸塩
クロニジン塩酸塩又はグアナベンズ酢酸塩投与中止後のリバウンド現象(血圧上昇)を増強する可能性がある。手術前数日以内にこれらの薬剤を投与中止した場合には、本剤の投与を慎重に行うこと。
クロニジン塩酸塩を中止すると、血中カテコールアミンが上昇し、血圧上昇を来す。β遮断剤を投与すると、カテコールアミンによるα刺激作用が優位になり、血管収縮がさらに増強されるおそれがある。グアナベンズ酢酸塩も作用機序から同様な反応が予想される。
*パシレオチドパモ酸塩
併用すると重度の徐脈や心ブロックが認められるおそれがあるので、注意すること。
いずれも徐脈や心ブロックを引き起こすおそれがある。
*フィンゴリモド塩酸塩
フィンゴリモド塩酸塩の投与開始時に併用すると重度の徐脈や心ブロックが認められることがあるので、注意すること。
*セリチニブ
徐脈を起こすおそれがあるので、可能な限り併用しないこと。
いずれも徐脈を起こすおそれがある。
,
必要に応じてβ2作動薬を用いるなど適切な処置を行うこと。
1~5%未満
1%未満
頻度不明
循環器
徐脈
ST低下、心室性期外収縮
蒼白、潮紅、胸痛、失神
精神神経系
味覚障害、めまい、傾眠、錯乱、頭痛、激越、感覚障害、抑うつ、思考異常、不安、ふらつき感、言語障害
呼吸器
鼻閉、ラ音
消化器
悪心、嘔吐、消化不良、食欲不振、便秘、口渇、腹痛
適用部位
血管外漏出による皮膚壊死、炎症・硬結等の注射部位反応、浮腫、紅斑、皮膚変色、灼熱感
その他
疲労、尿閉、視覚異常、骨痛、悪寒、発熱、無力症
本剤の過剰投与により予想される症状は、過度の徐脈、気管支痙攣、心不全、低血圧等がある。なお、国内未承認の高濃度製剤(エスモロール塩酸塩2500mg含有10mLアンプル)において、希釈の誤りによる過剰投与により心停止を起こしたり、心蘇生後に心筋梗塞を生じたとの報告がある。
直ちに本剤の投与を中止し、必要に応じて次のような処置を行う。
アトロピン(1~2mg)を静注し、更に必要に応じてβ1作動薬であるドブタミン(毎分2.5~10μg/kgを静注)を投与する。他のβ遮断剤では、グルカゴン(10mgを静注)が有効であったとの報告がある。
高用量のβ2作動薬(静注及び吸入-患者の反応に応じて投与量を増減)により消失させることができる。アミノフィリン(静注)、イプラトロピウム(吸入)も考慮すること。他のβ遮断剤では、グルカゴン(1~2mgを静注)が気管支拡張を促すとの報告がある。重度である場合には、酸素又は人工換気が必要である(全身麻酔の場合は、必要に応じ、吸入酸素濃度の増加、揮発性吸入麻酔薬の吸入濃度の増加を行う)。
利尿剤、血管拡張剤及び補液による処置を行い、必要に応じ強心剤の静脈内投与を行う。不十分な心収縮に起因するショックには、ドパミン、ドブタミン、コルホルシンダロパート、ミルリノン又はアムリノンの静脈内投与を考慮する。,
輸液と昇圧剤(アドレナリン、ドパミン塩酸塩等のカテコールアミン)の両剤又は一方の静脈内投与を行う。
健康成人6例にエスモロール塩酸塩を1000μg/kgの用量で30秒間かけて単回静脈内投与したとき、全血中未変化体は3.6分の半減期で消失し、AUCは3.8μg・min/mL、クリアランスは243mL/min/kg、分布容積は1320mL/kgであった(表1)。代謝物であるASL-8123は投与後100分で最高全血中濃度を示し、約3.5時間の半減期で消失した1)。
Cmax(μg/mL)
AUC(μg・min/mL)
t1/2(min)
CL(mL/min/kg)
Vd(mL/kg)
1.83±0.87
3.8±0.8
3.58±1.03
243.4±61.1
1320.3±696.3
(平均±標準偏差)
手術患者にエスモロール塩酸塩を1000μg/kgの用量で30秒間かけて単回静脈内投与したとき、投与後初期の全血中未変化体濃度は健康成人と比較して高かった(表2)2)。
対象
投与量(μg/kg)
測定時期(投与終了時)
1分
2分
15分
健康成人1)
1000
1.01±1.21
0.65±0.58
0.01±0.01
手術患者
3.49±1.90
0.59±0.32
0.05±0.04
(平均±標準偏差)(単位:μg/mL)
健康成人にエスモロール塩酸塩を1000μg/kgの用量で30秒間かけて単回静脈内投与したときの2コンパートメントモデル解析による全血中未変化体薬物動態パラメータを用いた5分間隔の繰り返し投与のシミュレーションでは、繰り返し投与による未変化体濃度の上昇は認められなかった3)。
健康成人にエスモロール塩酸塩を25、50、100及び200μg/kg/分で1時間持続静脈内投与したとき(各用量6例)、全血中未変化体濃度(平均±標準偏差)は、それぞれ0.14±0.06、0.17±0.14、0.56±0.23及び1.07±0.47μg/mLであった4)。
手術患者にエスモロール塩酸塩を150μg/kg/分(13例)及び300μg/kg/分(9例)で1時間持続投与したときの投与終了時における全血中未変化体濃度(平均±標準偏差)はそれぞれ2.09±0.87μg/mL及び3.03±1.56μg/mLであった5)。
エスモロール塩酸塩は血球中エステラーゼにより代謝(加水分解)される1)。
健康成人6例にエスモロール塩酸塩を1000μg/kgの用量で30秒間かけて単回静脈内投与した場合、投与後24時間までに未変化体としては1%以下、代謝物であるASL-8123は約80%が尿中に排泄された1)。
血液透析又は腹膜透析患者12例にエスモロール塩酸塩を150μg/kg/分の投与量で4時間静脈内持続投与したとき、全血中のASL-8123の半減期が約10倍に延長し、尿中への排泄が遅延した6)(外国人データ)。
肝障害患者9例にエスモロール塩酸塩を200μg/kg/分の投与量で4時間静脈内持続投与したとき、未変化体及び代謝物の全血中薬物動態には影響はなかった7)(外国人データ)。
高齢者(70~76歳、6例)にエスモロール塩酸塩を1000μg/kgの用量で30秒間かけて単回静脈内投与したとき、健康成人と比較して未変化体のクリアランスが低下した(表3)1)。
5.11±2.50
7.6±2.6
10.8±10.7
135.1±69.6
2010.5±2009.4
健康成人にエスモロール塩酸塩(300μg/kg/分)とモルヒネ(3mg)を併用(10例)したとき、未変化体の定常状態での全血中濃度は単独投与時と比較して46%上昇した。ジゴキシンとの併用(12例)では、ジゴキシンの血清中濃度は単独投与時と比較して9.6~19.2%上昇したが、未変化体の定常状態での全血中濃度の有意な上昇は認められず、また、ワルファリンとの併用では、ワルファリンの血漿中及び未変化体の定常状態での全血中濃度の有意な上昇は認められなかった8)(外国人データ)。
麻酔時に頻脈を発現した患者13例に、エスモロール塩酸塩1000μg/kgを二重盲検下で急速静脈内投与したときの有効率(15%以上の徐拍化)は100%であった。副作用は、低血圧が15.4%(2/13例)にみられた9)。
麻酔時に頻脈を発現した患者92例に、エスモロール塩酸塩1000μg/kgを非盲検下で急速静脈内投与したときの有効率(15%以上の徐拍化)は95.6%であり、うち、心房細動1例の徐拍率は22.0%であった。また、9例においては20分~34分の投与間隔で再発した頻脈に対して再投与され、有効率は2回目投与で88.9%(8/9例)、3回目投与で100%(3/3例)、4回目投与で100%(1/1例)であった。副作用は、低血圧が17.4%(16/92例)にみられた10)。
冠動脈バイパス術時に頻脈を発現した患者20例に、エスモロール塩酸塩1000μg/kgを非盲検下で急速静脈内投与したときの有効率(15%以上の徐拍化)は60.0%であった。副作用は、低血圧が15.0%(3/20例)にみられた11)。
手術時に上室性頻脈性不整脈を発現した患者40例に、エスモロール塩酸塩1000μg/kgの急速静脈内投与後に引き続き持続投与を行う非盲検試験を実施し、有効性評価が行われた30例(洞性頻脈21例、心房細動8例、心房粗動1例)の有効率(15%以上の徐拍化)は83.3%であった。副作用は57.5%(23/40例)にみられ、主な副作用は低血圧が50.0%(20/40例)であった5)。
手術時の頻脈処置を目的とした臨床試験(二重盲検又は非盲検)において、75及び100mg投与時の有効率(15%以上の徐拍化を認めた症例の割合)は84.9%(73/86例)であった12)。
主に心臓に存在するβ1受容体に作用し、交感神経終末及び副腎髄質より遊離されるノルアドレナリン及びアドレナリンによる心拍数増加作用に拮抗することで抗不整脈作用を発現する13),14)。
エスモロール塩酸塩はイヌにおけるイソプロテレノール投与又は右星状交感神経節後神経の電気刺激による心拍数増加を抑制し、50%抑制用量はそれぞれ35.6±4.5μg/kg/分及び249μg/kgであった15),16),17)。またハロタン-アドレナリン投与による心拍数増加及び不整脈に対し、10及び100μg/kgの急速静脈内投与、1及び10μg/kg/分の持続静脈内投与により有意な抑制作用を示した17)。
エスモロール塩酸塩は3×10-8~1×10-5mol/Lでモルモット摘出右心房の拍動数を増加(3×10-6mol/Lで最大102.4%)させたことから、ISAを有すると考えられた15)。
エスモロール塩酸塩はモルモット角膜反射を5%以上の濃度で消失させたことから、MSAを有すると考えられた15)。
エスモロール塩酸塩(esmolol hydrochloride)
(±)-methyl 3-{4-[2-hydroxy-3-(isopropylamino)propoxy]phenyl}propanoate monohydrochloride
C16H25NO4・HCl
331.83
白色の結晶性の粉末又は塊で、においはない。水又はメタノールに極めて溶けやすく、アセトニトリル又はエタノール(99.5)に溶けやすい。本品の水溶液(1→200)は旋光性がない。
約92℃
0.063(pH5.9、n-オクタノール/緩衝液)0.32(pH6.8、n-オクタノール/緩衝液)4.2(pH7.8、n-オクタノール/緩衝液)
10mL[10バイアル]
1) 立野政雄 他:麻酔と蘇生, 2002;38(3):79-86[B2020043]
2) 稲田豊 他:麻酔と蘇生, 2002;38(3):87-99[B2020042]
3) 申請資料概要(ブレビブロック注 100mg 2002年10月8日承認 申請資料概要 効能・効果、用法・用量、使用上の注意(案)及びその設定根拠)
4) 社内資料:MR5H3第Ⅰ相臨床試験
5) 社内資料:MR5H3(塩酸エスモロール注)の手術時における上室性頻脈性不整脈を対象とした持続用量検討試験
6) Flaherty J.F. et al.:Clin. Pharmacol. Ther., 1989;45, 321-327[B0890035]
7) Buchi K.N. et al.:J. Clin. Pharmacol., 1987;27, 880-884[B0870019]
8) Lowenthal D.T. et al.:Am. J. Cardiol., 1985;56, 14F-18F[B0850003]
9) 稲田豊 他:麻酔と蘇生, 2002;38(3):117-129[B2020045]
10) 稲田豊 他:麻酔と蘇生, 2002;38(3):131-144[B2020044]
11) 畔政和 他:麻酔と蘇生, 2002;38(3):145-155[B2020046]
12) 申請資料概要(ブレビブロック注 100mg 2002年10月8日承認 申請資料概要 トⅡ.1.(2))
13) 橋本敬太郎 他 監訳:グッドマン・ギルマン薬理書・第13版 -薬物治療の基礎と臨床-〔上巻〕. 廣川書店, 2022:182-184
14) 麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン 第3版. 公益社団法人 日本麻酔科学会, 2009:206-207
15) 西川淳 他:薬理と治療, 2003;31(1):21-30[B2030030]
16) 申請資料概要(ブレビブロック注 100mg 2002年10月8日承認 申請資料概要 ホ1(5)1))
17) 吉村昌和 他:薬理と治療, 2003;31(1):31-39[B2030031]
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