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日本薬局方
イリノテカン塩酸塩注射液
劇薬
処方箋医薬品注)
小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、胃癌(手術不能又は再発)、結腸・直腸癌(手術不能又は再発)、乳癌(手術不能又は再発)、有棘細胞癌、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)、小児悪性固形腫瘍、治癒切除不能な膵癌
(1)小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌(手術不能又は再発)及び有棘細胞癌はA法を、子宮頸癌、卵巣癌、胃癌(手術不能又は再発)及び結腸・直腸癌(手術不能又は再発)はA法又はB法を使用する。また、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)はC法を、小児悪性固形腫瘍はD法を、治癒切除不能な膵癌はE法を使用する。A法:イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、成人に1日1回、100mg/m2を1週間間隔で3~4回点滴静注し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。B法:イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、成人に1日1回、150mg/m2を2週間間隔で2~3回点滴静注し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。C法:イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、成人に1日1回、40mg/m2を3日間連日点滴静注する。これを1週毎に2~3回繰り返し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。なお、A~C法の投与量は、年齢、症状により適宜増減する。D法:イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、1日1回、20mg/m2を5日間連日点滴静注する。これを1週毎に2回繰り返し、少なくとも1週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。E法:イリノテカン塩酸塩水和物として、通常、成人に1日1回、180mg/m2を点滴静注し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。なお、D法及びE法の投与量は、患者の状態により適宜減量する。(2)A法、B法及びE法では、本剤投与時、投与量に応じて500mL以上の生理食塩液、ブドウ糖液又は電解質維持液に混和し、90分以上かけて点滴静注する。C法では、本剤投与時、投与量に応じて250mL以上の生理食塩液、ブドウ糖液又は電解質維持液に混和し、60分以上かけて点滴静注する。D法では、本剤投与時、投与量に応じて100mL以上の生理食塩液、ブドウ糖液又は電解質維持液に混和し、60分以上かけて点滴静注する。
種類
程度
白血球数
3,000/mm3以上
血小板数
100,000/mm3以上
好中球数
1,500/mm3以上
75,000/mm3以上
副作用注2)
減量方法
好中球減少
以下のいずれかの条件を満たす場合:1)2クール目以降の投与可能条件を満たさず投与を延期2)500/mm3未満が7日以上持続3)感染症又は下痢を併発し、かつ1,000/mm3未満4)発熱性好中球減少症
本剤を優先的に減量する。ただし、本剤の投与レベルがオキサリプラチンより低い場合は、本剤と同じレベルになるまでオキサリプラチンを減量する。
下痢
発熱(38℃以上)を伴う
グレード3注3)以上
フルオロウラシル持続静注を減量する。
血小板減少
以下のいずれかの条件を満たす場合:1)2クール目以降の投与可能条件を満たさず投与を延期2)50,000/mm3未満
オキサリプラチンを優先的に減量する。ただし、オキサリプラチンの投与レベルが本剤より低い場合は、オキサリプラチンと同じレベルになるまで本剤を減量する。
総ビリルビン上昇
2.0mg/dL超3.0mg/dL以下
本剤を120mg/m2に減量する。
3.0mg/dL超
本剤を90mg/m2に減量する。
粘膜炎
手足症候群
投与レベル
オキサリプラチン
本剤
フルオロウラシル持続静注
-1
65mg/m2
150mg/m2
1,800mg/m2
-2
50mg/m2
120mg/m2
1,200mg/m2
-3
中止
十分な管理を行いながら投与すること。高度な下痢の持続により脱水、電解質異常を起こして糖尿病が増悪し、致命的となるおそれがある。
副作用が強く発現するおそれがある。
本剤の添加剤D-ソルビトールが体内で代謝されて生成した果糖が正常に代謝されず、低血糖、肝不全、腎不全等が誘発されるおそれがある。
Gilbert症候群のようなグルクロン酸抱合異常の患者においては、本剤の代謝が遅延することにより骨髄機能抑制等の重篤な副作用が発現する可能性が高い。
本剤の活性代謝物(SN-38)の主な代謝酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素(UDP-glucuronosyltransferase、UGT)の2つの遺伝子多型(UGT1A1*6、UGT1A1*28)について、いずれかをホモ接合体(UGT1A1*6/*6、UGT1A1*28/*28)又はいずれもヘテロ接合体(UGT1A1*6/*28)としてもつ患者では、UGT1A1のグルクロン酸抱合能が低下し、SN-38の代謝が遅延することにより、重篤な副作用(特に好中球減少)発現の可能性が高くなることが報告されているため、十分注意すること1),2),3)。,
腎障害が悪化及び副作用が強く発現するおそれがある。
肝障害が悪化及び副作用が強く発現するおそれがある。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。動物実験(ラット・ウサギ)で催奇形性作用、胚・胎児死亡が報告されている。
授乳しないことが望ましい。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。
骨髄機能抑制、下痢等の副作用に注意し、異常が認められた場合には、回復を十分に確認してから投与を行うなど、投与間隔に留意すること。一般に高齢者では生理機能が低下しており、排泄が遅れる。
アタザナビル硫酸塩
(レイアタッツ)
,
骨髄機能抑制、下痢等の副作用が増強するおそれがある。
本剤の活性代謝物(SN-38)は、主に肝のUDP-グルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)によりグルクロン酸抱合体(SN-38G)となる。UGT阻害作用のあるアタザナビル硫酸塩との併用により、本剤の代謝が遅延することが考えられる。
他の抗悪性腫瘍剤
放射線照射
骨髄機能抑制、下痢等の副作用が増強するおそれがある。患者の状態を観察しながら、減量するか又は投与間隔を延長する。
併用により殺細胞作用が増強される。
末梢性筋弛緩剤
末梢性筋弛緩剤の作用が減弱するおそれがある。
本剤は、動物実験で筋収縮増強作用が認められている。
CYP3A4阻害剤
グレープフルーツジュース
本剤は、主にカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物(SN-38)に変換されるが、CYP3A4により一部無毒化される。CYP3A4を阻害する左記薬剤等との併用により、CYP3A4による無毒化が阻害されるため、カルボキシルエステラーゼによるSN-38の生成がその分増加し、SN-38の全身曝露量が増加することが考えられる。
CYP3A4誘導剤
セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort:セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
本剤の活性代謝物(SN-38)の血中濃度が低下し、作用が減弱するおそれがある。本剤投与期間中は左記薬剤・食品との併用を避けることが望ましい。
本剤は、主にカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物(SN-38)に変換されるが、CYP3A4により一部無毒化される。CYP3A4を誘導する左記薬剤等との併用により、CYP3A4による無毒化が促進されるため、カルボキシルエステラーゼによるSN-38の生成がその分減少し、SN-38の全身曝露量が減少することが考えられる。
ソラフェニブトシル酸塩
本剤の活性代謝物(SN-38)は、主に肝のUDP-グルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)によりグルクロン酸抱合体(SN-38G)となる。UGT1A1阻害作用のあるソラフェニブトシル酸塩との併用により、本剤及び本剤の活性代謝物(SN-38)の血中濃度が上昇する可能性がある。
ラパチニブトシル酸塩水和物
機序は不明だが、ラパチニブトシル酸塩水和物との併用により、本剤の活性代謝物(SN-38)のAUCが約40%増加したとの報告がある。
レゴラフェニブ水和物
本剤の活性代謝物(SN-38)は、主に肝のUDP-グルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)によりグルクロン酸抱合体(SN-38G)となる。UGT1A1阻害作用のあるレゴラフェニブ水和物との併用により、本剤及び本剤の活性代謝物(SN-38)のAUCがそれぞれ28%及び44%増加し、Cmaxがそれぞれ22%増加及び9%減少したとの報告がある。
汎血球減少(頻度不明)、白血球減少(84.2%)、好中球減少(80.8%)、血小板減少(20.4%)、貧血(61.4%)、発熱性好中球減少症(1.3%)等があらわれることがある。白血球減少(好中球減少)を認めた場合には、減少の程度に応じてG-CSF等の白血球増多剤の投与、発熱を伴う場合には適切な抗生剤の投与、その他必要に応じて適切な感染症対策を行うこと。また、高度な骨髄機能抑制の持続により、次のような疾患を併発し、死亡した例も報告されている。
下痢(65.5%)、大腸炎(頻度不明)、小腸炎(頻度不明)、腸炎(部位不明:頻度不明)があらわれることがある。高度な下痢の持続により、脱水、電解質異常、ショック(循環不全:頻度不明)を併発し、死亡した例も報告されている。高度な下痢の持続により、脱水及び電解質異常等をきたし、特に重篤な白血球・好中球減少を伴った場合には、致命的な経過をたどることがあるので、次のような処置を行うこと。
高度な下痢や嘔吐に伴いショック(循環不全)があらわれることがあるので、呼吸困難、血圧低下等が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。なお、本剤による下痢に関しては、以下の2つの機序が考えられている。早発型:本剤投与中あるいは投与直後に発現する。コリン作動性と考えられ、高度である場合もあるが多くは一過性であり、副交感神経遮断剤の投与により緩和することがある。遅発型:本剤投与後24時間以降に発現する。主に本剤の活性代謝物(SN-38)による腸管粘膜傷害に基づくものと考えられ、持続することがある。,,,
腸管穿孔(頻度不明)、消化管出血(下血、血便を含む:頻度不明)、腸管麻痺(2.5%)、腸閉塞(0.5%)があらわれることがある。なお、腸管麻痺・腸閉塞に引き続き腸管穿孔を併発し、死亡した例が報告されている。これらの症例の中には、腸管蠕動を抑制する薬剤(ロペラミド塩酸塩、モルヒネ硫酸塩水和物等)の併用例があるので、腸管蠕動を抑制する薬剤を併用する場合には、特に注意すること。
過敏症状(呼吸困難、血圧低下等)が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
肺塞栓症(頻度不明)、静脈血栓症(頻度不明)があらわれることがある。
50%以上
5~50%未満
5%未満
頻度不明
消化器
食欲不振(80.9%)、悪心・嘔吐(77.2%)
腹痛
しゃっくり、腹部膨満感、口内炎、口唇炎、痔核、胃腸音異常
胃潰瘍、胃・腹部不快感、胃炎、消化不良、便秘、食道炎、吐血、腸管運動亢進
肝臓
AST上昇、ALT上昇、ALP上昇、LDH上昇
ビリルビン上昇、γ-GTP上昇
腎臓
電解質異常
腎機能障害(BUN上昇、クレアチニン上昇等)、蛋白尿、血尿、尿沈渣異常
乏尿、クレアチニンクリアランス低下
呼吸器
気管支炎、咽頭炎、鼻炎、発声障害、咽頭知覚不全、口腔咽頭不快感
咽頭痛、咳嗽、呼吸困難、PaO2低下、上気道炎
過敏症
発疹、そう痒感
蕁麻疹
皮膚
脱毛
色素沈着、浮腫、紅斑、手足症候群、ざ瘡様皮膚炎、皮膚乾燥
帯状疱疹、粘膜炎、発赤
精神神経系
しびれ等の末梢神経障害、頭痛、めまい、精神症状、意識障害、傾眠、興奮・不安感、不穏
痙攣、耳鳴、味覚異常、うつ病、目のかすみ、不眠、振戦、構語障害
循環器
頻脈、血圧低下、動悸
不整脈、徐脈、心房細動、高血圧、心電図異常
その他
倦怠感、発熱、好酸球増加、総蛋白減少、アルブミン減少
発汗、顔面潮紅、疼痛、腰痛、カルシウム異常、尿酸異常、尿ウロビリノーゲン異常、糖尿
脱水、コリン作動性症候群、悪寒、胸部不快感、胸痛、関節痛、筋痛、鼻出血、脱力感、無力症、疲労、体重増加、体重減少、LDH低下、白血球増加、血小板増加、白血球分画の変動、CRP上昇、注射部位反応(発赤、疼痛等)、血管炎、流涙、熱感、腹水、鼻汁
欧州における進行性小細胞肺癌を対象とした無作為化第Ⅲ相臨床試験において、本剤とシスプラチン併用投与群(本剤80mg/m2を第1、8日目、シスプラチン80mg/m2を第1日目に投与し3週毎に繰り返す)での治療関連死が39例中4例に認められ、臨床試験が中断された。その後、本剤の投与量を65mg/m2に減量し、臨床試験は再開され、試験は終了となった。なお、本剤減量後の治療関連死は202例中7例であった4)。
ほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験及びマウス骨髄細胞を用いた小核試験において、遺伝毒性が報告されている。
各種悪性腫瘍患者に、イリノテカン塩酸塩水和物50~350mg/m2注1)を単回点滴静脈内投与したときの血漿中の未変化体と活性代謝物(SN-38)の濃度を測定した。未変化体は血漿中からの減衰速度が速く、t1/2が3.7~5.8時間であったが、SN-38のt1/2は11.4~18.5時間であり、未変化体と比べて持続的な濃度推移を示した。未変化体及びSN-38は投与後72時間程度でほぼ完全に血中から消失した5),6)。
投与量(mg/m2)
症例数
Cmax(μg/mL)
t 1/2(hr)
AUC(μg・hr/mL)
未変化体
SN-38
50
3
0.7
0.02
5.6
3.6
0.2
100
4
1.9
0.03
5.8
14.2
0.6
165
5
4.7
0.05
4.2
21.5
250
7.6
0.07
4.5
27.9
0.9
350
1
7.1
0.14
3.7
44.7
1.1
ヒト血漿にイリノテカン塩酸塩水和物又はSN-38を添加して測定した血漿蛋白結合率は、未変化体では30~40%、SN-38では92~96%であった6)。
ラットに14C-イリノテカン塩酸塩水和物を単回静脈内投与した後の組織内放射能濃度は、脳、中枢神経系、生殖系を除く各組織で血漿中放射能濃度より高く、速やかでかつ良好な組織移行性が認められた7),8)。
遺伝子多型
AUC比注2)
例数
中央値(四分位範囲)
UGT1A1*6とUGT1A1*28をともにもたない
85
5.55(4.13-7.26)
UGT1A1*6又はUGT1A1*28をヘテロ接合体としてもつ
75
3.62(2.74-5.18)
UGT1A1*6又はUGT1A1*28をホモ接合体としてもつ、もしくはUGT1A1*6とUGT1A1*28をヘテロ接合体としてもつ
16
2.07(1.45-3.62)
注2)SN-38GのAUCをSN-38のAUCで除した値
各種悪性腫瘍患者に、イリノテカン塩酸塩水和物165mg/m2又は250mg/m2注1)を単回点滴静脈内投与したときの24時間までの尿中排泄率は、未変化体が16.3~21.1%、SN-38が0.11~0.15%であった6)。注1)本剤の承認された最大投与量は、180mg/m2以下である。
手術不能な原発性肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌)を対象としたイリノテカン塩酸塩注射液単独投与(1日1回、100mg/m2を1週毎に点滴静注する)の有効性は、次表のとおりであった19)。
疾患名
奏効率%
(CR+PR/完全例)
(CR+PR/適格例)
小細胞肺癌
37.1(13/35)
31.7(13/41)
非小細胞肺癌
24.7(23/93)
21.1(23/109)
安全性評価症例(146例)の主な副作用は、食欲不振82.2%(120/146例)、白血球減少76.6%(111/145例)、悪心・嘔吐73.3%(107/146例)、ヘモグロビン減少66.2%(96/145例)、下痢62.3%(91/146例)、脱毛50.4%(71/141例)であった。
子宮頸癌、卵巣癌を対象としたイリノテカン塩酸塩注射液単独投与(1日1回、100mg/m2を1週間間隔で4回点滴静注し、2週間休薬し、これを1クールとする(A法)又は1日1回、150mg/m2を2週間間隔で3回点滴静注し、3週間休薬し、これを1クールとする(B法))の有効性は、次表のとおりであった20)。
子宮頸癌
23.6(13/55)
19.7(13/66)
卵巣癌
19.1(13/68)
安全性評価症例(126例)の主な副作用は、白血球減少92.9%(117/126例)、悪心・嘔吐88.1%(111/126例)、食欲不振86.1%(105/122例)、ヘモグロビン減少67.5%(85/126例)、下痢67.2%(84/125例)、脱毛55.4%(67/121例)であった。
再発・進行胃癌を対象としたイリノテカン塩酸塩注射液単独投与(1日1回、100mg/m2を1週毎に点滴静注する(A法)又は1日1回、150mg/m2を2週毎に点滴静注する(B法))の有効性は、次表のとおりであった21)。
胃癌
23.3(14/60)
18.4(14/76)
安全性評価症例(76例)の主な副作用は、白血球減少85.5%(65/76例)、貧血64.5%(49/76例)、食欲不振64.5%(49/76例)、悪心・嘔吐63.2%(48/76例)、脱毛63.2%(48/76例)、下痢61.8%(47/76例)、血小板減少18.4%(14/76例)、腹痛17.1%(13/76例)であった。
遠隔転移を有する結腸・直腸癌を対象としたイリノテカン塩酸塩注射液単独投与(1日1回、100mg/m2を1週毎に点滴静注する(A法)又は1日1回、150mg/m2を2週毎に点滴静注する(B法))の有効性は、次表のとおりであった22)。
結腸・直腸癌
27.0(17/63)
安全性評価症例(63例)の主な副作用は、食欲不振84%(51/61例)、白血球減少76%(47/62例)、悪心・嘔吐73%(46/63例)、下痢63%(39/62例)、脱毛62%(39/63例)、貧血50%(31/62例)、腹痛16%(10/62例)であった。
再発・進行乳癌を対象としたイリノテカン塩酸塩注射液単独投与(1日1回、100mg/m2を1週間間隔で3回点滴静注し、2週間休薬し、これを1クールとする)の有効性は、次表のとおりであった23)。
乳癌
23.1(15/65)
20.0(15/75)
安全性評価症例(75例)の主な副作用は、白血球減少92%(68/74例)、悪心・嘔吐89%(67/75例)、食欲不振87%(65/75例)、好中球減少80%(45/56例)、下痢64%(48/75例)、ヘモグロビン減少(貧血)50%(37/74例)、脱毛47%(34/73例)、ALT上昇20%(15/74例)、AST上昇18%(13/74例)、腹痛17%(13/75例)、好酸球増加16%(9/56例)、倦怠感12%(9/75例)、血小板減少11%(8/74例)、総蛋白減少10%(7/74例)であった。
有棘細胞癌を対象としたイリノテカン塩酸塩注射液単独投与(1日1回、100mg/m2を1週間間隔で、3~4回点滴静注し、2週間休薬し、これを1クールとする)の有効性は、次表のとおりであった24)。
有棘細胞癌
39.4(13/33)
悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)を対象としたイリノテカン塩酸塩注射液単独投与(1日1回、40mg/m2を3日間連日点滴静注し、1週毎に繰り返す)の有効性は、次表のとおりであった25)。
悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)
41.9(26/62)
37.7(26/69)
化学療法未治療の遠隔転移を有する膵癌を対象とした第Ⅱ/Ⅲ相試験におけるFOLFIRINOX法群(1クールを2週間として第1日目にオキサリプラチン85mg/m2、ホリナート400mg/m2、イリノテカン塩酸塩注射液180mg/m2を点滴静注し、引き続きフルオロウラシル400mg/m2を急速静脈内投与、フルオロウラシル2,400mg/m2を46時間かけて持続静注)とゲムシタビン塩酸塩(GEM)単独投与群(GEM 1,000mg/m2の週1回点滴投与を7週連続し、8週目は休薬する。その後は、週1回点滴投与を3週連続し、4週目は休薬として、これを4週毎に繰り返す)の中間解析時の有効性は次表のとおりであった26)(外国人データ)。対象患者はECOG注1)Performance status 0及び1であった。登録において2つの遺伝子多型(UGT1A1*6、UGT1A1*28)に関する基準は設定されなかった。また、登録時の選択基準として、好中球数(1,500/mm3以上)、総ビリルビン値(施設基準値上限の1.5倍以下)等が設定された。
投与群
例数(ITT)
生存期間(主要評価項目)
中央値(月)
ハザード比P値注2)
化学療法未治療の遠隔転移を有する膵癌
FOLFIRINOX法
127
10.5
0.62P<0.001
GEM単独投与
128
6.9
FOLFIRINOX法群において、安全性評価症例167例のうち、有害事象が収集できなかった1例を除く166例における有害事象発現頻度は100%であった。主な有害事象は、貧血90.4%(150/166例)、疲労87.3%(144/165例)、γ-GTP上昇83.7%(139/166例)、ALP上昇83.0%(137/165例)、好中球減少79.9%(131/164例)、悪心79.5%(132/166例)、血小板減少75.2%(124/165例)、下痢73.3%(121/165例)、末梢性感覚ニューロパチー70.5%(117/166例)、ALT上昇64.8%(107/165例)、AST上昇64.6%(106/164例)、嘔吐61.4%(102/166例)、体重変動54.2%(90/166例)、食欲不振48.8%(81/166例)、便秘45.2%(75/166例)、脱毛32.5%(54/166例)であった。注1) Eastern Cooperative Oncology Group。注2) log-rank検定。
化学療法未治療の遠隔転移を有する膵癌を対象とした第Ⅱ相試験におけるFOLFIRINOX法(1クールを2週間として第1日目にオキサリプラチン85mg/m2、レボホリナート200mg/m2、イリノテカン塩酸塩注射液180mg/m2を点滴静注し、引き続きフルオロウラシル400mg/m2を急速静脈内投与、フルオロウラシル2,400mg/m2を46時間かけて持続静注)の有効性は次表のとおりであった27)。対象患者はECOG Performance status 0及び1であった。2つの遺伝子多型(UGT1A1*6、UGT1A1*28)について、いずれかをホモ接合体(UGT1A1*6/*6、UGT1A1*28/*28)又はいずれもヘテロ接合体(UGT1A1*6/*28)としてもつ患者は除外された。また、1クール目の投与可能条件として、好中球数(2,000/mm3以上)、総ビリルビン値(施設基準値上限以下)等が設定された。
奏効率(有効例/適格例)
38.9%(14/36)
安全性評価症例36例における副作用発現頻度は100%であった。主な副作用は、好中球減少94.4%(34/36例)、白血球減少91.7%(33/36例)、悪心88.9%(32/36例)、血小板減少88.9%(32/36例)、貧血86.1%(31/36例)、食欲不振86.1%(31/36例)、下痢83.3%(30/36例)、末梢性感覚ニューロパチー75.0%(27/36例)、脱毛66.7%(24/36例)、CRP上昇66.7%(24/36例)、リンパ球数減少66.7%(24/36例)、アルブミン減少63.9%(23/36例)、体重減少58.3%(21/36例)、AST上昇55.6%(20/36例)、ALT上昇55.6%(20/36例)、口内炎52.8%(19/36例)、味覚異常47.2%(17/36例)、便秘47.2%(17/36例)、倦怠感44.4%(16/36例)、LDH上昇44.4%(16/36例)であった。
国内においてイリノテカン塩酸塩注射液単独投与(55例)の各種癌患者について、UGT1A1遺伝子多型と副作用との関連性について検討した3)。イリノテカン塩酸塩注射液は、100mg/m2を1週間間隔又は150mg/m2を2週間間隔で投与した。グレード3以上の好中球減少及び下痢の発現率は次表のとおりであった。,
グレード3以上の好中球減少発現率(例数)
グレード3の下痢発現率(例数)
14.3%(3/21)
24.1%(7/29)
6.9%(2/29)
80.0%(4/5)
20.0%(1/5)
イリノテカン塩酸塩水和物は、1983年に抗腫瘍性アルカロイドであるカンプトテシンから合成された抗悪性腫瘍剤である6),28)。イリノテカン塩酸塩注射液は生体内でカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物(SN-38)に加水分解されるプロドラッグである29),30)。Ⅰ型DNAトポイソメラーゼを阻害することによって、DNA合成を阻害する29)。殺細胞効果は細胞周期のS期に特異的であり、制限付時間依存性に効果を示す薬剤である。
移植腫瘍に対して広い抗腫瘍スペクトラムを有する。マウスS180肉腫、Meth A線維肉腫、Lewis肺癌、L1210及びP388白血病、ラットWalker 256癌肉腫ならびにヌードマウス可移植性ヒト腫瘍MX-1(乳癌)、Co-4(大腸癌)、St-15(胃癌)、QG-56(肺癌)等に強い抗腫瘍効果を示す31),32),33)。また、in vitro試験においてヒト膵癌由来BxPC-3、PANC-1、SPA及びSUIT-2細胞株の増殖を抑制した34)。
イリノテカン塩酸塩水和物(Irinotecan Hydrochloride Hydrate)
(4S)-4,11-Diethyl-4-hydroxy-3,14-dioxo-3,4,12,14-tetrahydro-1H-pyrano[3',4':6,7]indolizino[1,2-b]quinolin-9-yl[1,4'-bipiperidine]-1'-carboxylate monohydrochloride trihydrate
C33H38N4O6・HCl・3H2O
677.18
微黄色~淡黄色の結晶又は結晶性の粉末である。メタノールにやや溶けにくく、水又はエタノール(99.5)に溶けにくい。光によって徐々に黄褐色となり、分解する。結晶多形が認められる。
約255℃(分解)
凍結しないように注意すること。
2mL[1バイアル]
5mL[1バイアル]
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