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日本薬局方
アルベカシン硫酸塩注射液
劇薬
処方箋医薬品注)
本剤の成分並びにアミノグリコシド系抗生物質又はバシトラシンに対し過敏症の既往歴のある患者
アルベカシンに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
敗血症、肺炎
本剤はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症に対してのみ有用性が認められている。なお、MRSAが検出されただけではMRSA感染症とは限らないので、本剤投与にあたっては、次の点に留意すること。
通常、成人にはアルベカシン硫酸塩として、1日1回150~200mg(力価)を30分~2時間かけて点滴静注する。必要に応じ、1日150~200mg(力価)を2回に分けて点滴静注することもできる。また、静脈内投与が困難な場合、アルベカシン硫酸塩として、1日150~200mg(力価)を1回又は2回に分けて筋肉内注射することもできる。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
通常、小児にはアルベカシン硫酸塩として、1日1回4~6mg(力価)/kgを30分かけて点滴静注する。必要に応じ、1日4~6mg(力価)/kgを2回に分けて点滴静注することもできる。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
難聴が発現又は増悪するおそれがある。,
観察を十分に行うこと。ビタミンK欠乏症状があらわれることがある。
投与量の設定等にも十分留意し、観察を十分に行うこと。急性腎障害等の重篤な腎障害があらわれることがある。,
神経筋遮断作用による呼吸抑制があらわれるおそれがある。
高い血中濃度が持続し、腎障害が悪化するおそれがあり、また、第8脳神経障害等の副作用が強くあらわれるおそれがある。,,
肝障害を悪化させるおそれがある。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。新生児に第8脳神経障害があらわれるおそれがある。また、ラットの筋注による器官形成期投与試験で出生児の発育遅滞が認められている。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
次の点に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
腎障害が発現、悪化することがあるので、併用は避けることが望ましい。
腎障害が発生した場合には、投与を中止し、透析療法等適切な処置を行うこと。
機序は明確ではないが、併用によりアミノグリコシド系抗生物質の血中への蓄積、近位尿細管上皮の空胞変性が生じるという報告がある。
腎障害及び聴器障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けることが望ましい。
機序は明確ではないが、併用によりアミノグリコシド系抗生物質の血中濃度の上昇、腎への蓄積が起こるという報告がある。
腎障害及び聴器障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けること。やむを得ず併用する場合は、減量するなど慎重に投与すること。
ただし、小児(特に低出生体重児・新生児)では、バンコマイシンは原則併用しないこと。
両薬剤ともに腎毒性、聴器毒性を有するが相互作用の機序は不明。
腎障害及び聴器障害が発現、悪化するおそれがある。
小児(特に低出生体重児・新生児)では腎機能が未発達であるため。
呼吸抑制があらわれるおそれがある。
呼吸抑制があらわれた場合には、必要に応じ、コリンエステラーゼ阻害剤、カルシウム製剤の投与等の適切な処置を行うこと。
両薬剤ともに神経筋遮断作用を有しており、併用によりその作用が増強される。
腎障害が発現、悪化するおそれがある。
両薬剤ともに腎毒性を有するが、相互作用の機序は不明。
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0.1~5%未満
0.1%未満
肝臓
AST、ALT、Al-P、LDH、γ-GTPの上昇
黄疸
腎臓
BUN、クレアチニンの上昇、蛋白尿、カリウム等電解質の異常
浮腫、血尿
過敏症
発疹
そう痒、発赤、発熱、蕁麻疹
血液注)
貧血、白血球減少、血小板減少、好酸球増多
消化器
下痢
下血、軟便、腹痛、悪心・嘔吐、食欲不振
注射部位
注射局所の疼痛又は硬結(筋肉内注射時)
ビタミン欠乏症
ビタミンK欠乏症状(低プロトロンビン血症、出血傾向等)、ビタミンB群欠乏症状(舌炎、口内炎、食欲不振、神経炎等)
その他
頭痛、手指しびれ感、全身倦怠感
腎障害、聴覚障害、前庭障害、神経筋遮断症状、呼吸麻痺があらわれることがある。
血液透析、腹膜透析による薬剤の除去を行う。神経筋遮断症状、呼吸麻痺に対してはコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウム製剤の投与又は機械的呼吸補助を行う。
クエン酸水和物で抗凝固処理した血液を大量輸血された患者にアミノグリコシド系抗生物質を投与すると、投与経路にかかわらず、神経筋遮断症状、呼吸麻痺があらわれることがある。
健康成人に本剤200mg(力価)を1時間かけて点滴静注したときの血清中濃度は、図1のとおりで、薬物動態パラメータは、表1のとおりであった。また、75mg(力価)又は100mg(力価)を1時間かけて点滴静注又は筋注したときの薬物動態パラメータは、表1のとおりであった1),2),3)。
投与法
1時間点滴静注
筋注
投与量(mg(力価))
200
100
75
例数
5
3
4
Tmax(hr)
点滴終了時
0.5
Cmax(μg/mL)
13.2
7.56
6.80
5.6
4.2
T1/2(hr)
2.3
2.1
2.8
1.68
1.66
Vd(L/man)
15.4
12.5
12.7
14.2
17.8
CLtot(L/hr/man)
5.11
4.55
4.01
5.75
5.40
AUC(μg・hr/mL)
40.5
22.0
18.7
17.4
13.9
乳児・幼児(生後29日以上6歳未満まで)、新生児(生後28日まで)に本剤2~3mg(力価)/kgを30分間点滴静注したときの血漿中濃度は、図2のとおりで、薬物動態パラメータは表2のとおりであった。CLtotは新生児よりも乳児・幼児の方が大きかった4)。
年齢区分(実測年齢)
乳児・幼児(n=3)(1歳9ヵ月~4歳8ヵ月)
新生児(n=4)(1~18日)
投与量(mg(力価)/kg)
2.38~2.92
1.99~2.99
0.53
0.88
7.91
6.64
1.73
3.20
Vdss(L/kg)
0.304
0.382
CLtot(L/hr/kg)
0.154
0.091
AUC0-∞(μg・hr/mL)
17.77
28.71
平衡透析法により測定したヒト血清蛋白との結合率は5~20μg/mLの濃度範囲で3~12%であった5)(in vitro)。
慢性気道感染症患者に本剤100mg(力価)を点滴静注したときの喀痰中濃度の最高値は1.15~1.32μg/mLを示した6),7)。
腹膜炎患者に本剤75mg(力価)を点滴静注したときの最高腹水中濃度は0.36~5.29μg/mLであった8),9)。
胆道手術患者に本剤75mg(力価)を筋注したときの胆汁中濃度は2時間後に最高値0.67μg/mLを示した10)。
尿中に抗菌活性代謝物は認められていない11)。
本剤は、主として腎臓より排泄される。健康成人に本剤200mg(力価)を1時間点滴静注(単回投与)したとき、投与24時間までの尿中排泄率は約80%であった。また、75mg(力価)又は100mg(力価)を投与したとき、投与8時間までの尿中排泄率は点滴静注で70~80%、筋注で約70%であった1),2),3)。
腎機能障害程度の異なる患者に本剤200mg(力価)を30分間点滴静注したときの血中濃度は図3のとおりで、薬物動態パラメータは表3のとおりであった。腎機能が正常な患者と軽度腎機能障害患者では各パラメータはほぼ同様であり、中等度-高度腎機能障害患者では、腎機能正常患者と比較してCmin、T1/2、AUC0-24が大きく、CLtotは小さかった12)。,
腎機能程度(mL/min)
正常Ccr≧80
軽度腎機能障害50≦Ccr<80(n=3)
中等度-高度腎機能障害Ccr<50(n=4)
n
0.47±0.08
10
0.42±0.00
0.50±0.09
15.2±5.7
14.8±2.4
19.8±3.7
Cmin(μg/mL)
0.3±0.4
0.2±0.3
3.9±1.1
3.51±2.67
3.95±2.32
16.82±6.02
Vdss(L/man)
14.6±4.3
15.9±3.9
15.7±3.5
3.71±1.31
3.30±1.06
0.70±0.14
AUC0-24(μg・hr/mL)
58.6±22.5
62.9±18.0
188.8±24.0
(Mean±S.D.)
健康成人及び腎機能障害程度の異なる患者に本剤100mg(力価)を1時間点滴静注したところ、障害の程度に応じてT1/2の延長が認められた13)(表4)。
健康成人Ccr100
腎機能障害患者
50≦Ccr<70
30≦Ccr<50
T1/2β(hr)
2.46±0.40
2.91±1.20
4.85±1.63
Vdβ(L/man)
19.12±4.20
16.05±2.34
15.74±3.44
5.40±0.31
4.10±1.03
2.35±0.51
18.56±1.04
25.51±6.72
43.85±8.63
(Mean±S.D.、n=3)
また、クレアチニン・クリアランス(Ccr)が50未満の患者の24時間までの尿中排泄率は56.9%でCcrが100の健康成人のそれは90.3%で明らかに障害程度が高くなるにつれ、尿中排泄の遅延傾向が認められた。
アミノグリコシド系抗生物質による副作用発現の危険性は、最高血中濃度(ピーク値)あるいは最低血中濃度(次回投与直前値)が異常に高い値を繰り返すほど大きくなるといわれており、特に本剤の場合は、最低血中濃度が2μg/mL以上が繰り返されると第8脳神経障害や腎障害発生の危険性が大きくなる可能性がある。また、最高血中濃度は薬効と関係しており、本剤では、その標準的な目安は9~20μg/mLと考えられている。特に新生児、低出生体重児、高齢者及び大量投与患者では適切な間隔で最高血中濃度(A,A′)と最低血中濃度(B,B′)を測定し、異常な高値を示す場合には、次回投与より投与量や投与間隔を調整することが望ましい。例えば、異常に高い最高血中濃度が繰り返されている場合は投与量を減量し、異常に高い最低血中濃度が繰り返されている場合は投与間隔を延長するなど調整を行う。,,,
MRSA感染症における臨床効果は、敗血症(敗血症の疑い1例を含む)に対して5例中4例、肺炎に対して13例中9例に有効であった14),15)。
高齢者(70歳以上)のMRSA感染症における臨床効果は敗血症及び肺炎に対して7例中5例に有効であった。
小児(16歳未満)のMRSA感染症における臨床効果は敗血症(敗血症の疑い1例を含む)及び肺炎に対して8例中5例に有効であった。
成人のMRSA感染症における臨床試験では、肺炎に対して1日1回200mg(力価)を30分かけて点滴静注し、14例中10例に有効であった12)。
成人では、1日1回150~200mg(力価)を投与し、敗血症に対して19例中17例、肺炎に対して78例中63例に有効であった。小児(15歳未満)では、1日1回4~6mg(力価)/kgを投与し、敗血症に対して2例中1例、肺炎に対して1例中1例に有効であった16)。
細菌のリボソームの30Sサブユニットに結合し、タンパク合成の開始反応を阻害することにより抗菌作用を示す17)。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対して強い抗菌力を有し、アミノグリコシド系抗生物質の中で最も優れた抗菌力を示した18),19)。また、MRSAの産生する各種の不活化酵素に対して安定であった20)。
マウスにシクロホスファミドを投与して感染防御機能を低下させた実験的MRSA感染症に対して優れた防御効果を示した。また、MRSAによる実験的マウス皮下膿瘍に対しても優れた防御効果を示した21),22)。
MRSAのマウスを用いた生体内耐性獲得試験では耐性獲得は認められなかったが、増量的継代培養法による試験管内耐性獲得試験ではMICの上昇がみられたことから、臨床における耐性菌発現の可能性は否定できない23),24)。
アルベカシン硫酸塩(Arbekacin Sulfate)
3-Amino-3-deoxy-α-D-glucopyranosyl-(1→6)-[2,6-diamino-2,3,4,6-tetradeoxy-α-D-erythro-hexopyranosyl-(1→4)]-1-N-[(2S)-4-amino-2-hydroxybutanoyl]-2-deoxy-D-streptamine sulfate
C22H44N6O10・xH2SO4(x=2-21/2)
552.62(ただし遊離塩基)
アルベカシン硫酸塩は白色の粉末である。本品は水に極めて溶けやすく、エタノール(99.5)にほとんど溶けない。
ABK
10アンプル
1) 戸塚恭一ほか:Jpn. J. Antibiot. 1994;47(6):676-692
2) 山作房之輔ほか:Chemotherapy. 1986;34(S-1):117-128
3) 山本 敬ほか:Chemotherapy. 1986;34(S-1):104-116
4) 砂川慶介ほか:日本化学療法学会雑誌. 2003;51(2):91-96
5) 三富奈由ほか:Jpn. J. Antibiot. 1987;40(2):357-364
6) 重野芳輝ほか:Chemotherapy. 1986;34(S-1):317-331
7) 吉田俊昭ほか:Chemotherapy. 1986;34(S-1):332-343
8) 田中承男ほか:Chemotherapy. 1986;34(S-1):583-592
9) 中村 孝ほか:薬理と治療. 1986;14(11):7115-7130
10) 岡 隆宏ほか:Chemotherapy. 1986;34(S-1):575-582
11) 社内資料:HBKのヒト尿中代謝物の検索
12) 相川直樹ほか:日本化学療法学会雑誌. 2008;56(3):299-312
13) 公文裕巳ほか:Jpn. J. Antibiot. 1989;42(1):200-207
14) 社内資料:MRSAに対する臨床試験(1990年9月28日承認、申請資料概要)
15) 社内資料:MRSAに対する臨床試験(1998年12月25日承認、申請資料概要)
16) 河野 仁ほか:TDM研究. 2010;27(2):55-71
17) 吉田眞一ほか:戸田新細菌学. 2010;33 版:165-167、㈱南山堂
18) 神田佳代子ほか:Chemotherapy. 1988;36(4):289-293
19) 出口浩一ほか:Chemotherapy. 1987;35(6):476-481
20) 松橋祐二ほか:Jpn. J. Antibiot. 1988;41(5):523-529
21) 社内資料:Arbekacinの実験的メチシリン耐性ブドウ球菌感染症に対する有効性評価
22) 渡辺忠洋ほか:Jpn. J. Antibiot. 1987;40(2):349-356
23) 社内資料:MRSAのHBKに対する試験管内耐性獲得試験
24) 社内資料:HBKに対するMRSAの生体内耐性獲得試験
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